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JP3573689B2 - 透明樹脂基板の連続的製造方法 - Google Patents

透明樹脂基板の連続的製造方法 Download PDF

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JP3573689B2
JP3573689B2 JP2000198139A JP2000198139A JP3573689B2 JP 3573689 B2 JP3573689 B2 JP 3573689B2 JP 2000198139 A JP2000198139 A JP 2000198139A JP 2000198139 A JP2000198139 A JP 2000198139A JP 3573689 B2 JP3573689 B2 JP 3573689B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明樹脂基板の連続的製造方法に関し、詳しくは、均一且つ平坦な表面を有する透明樹脂基板の連続的製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明樹脂基板は、工業的には、液晶、有機ELなどのディスプレー基板、光学フィルター、光通信材料、太陽電池基板などの各種用途に利用されている。斯かる透明樹脂基板は、移送される下部支持シート上に光重合性モノマー組成物を供給し、その上に下部支持シートと同速度で同一方向に移送される上部支持シートを積層し、次いで、光重合性モノマー組成物に活性線を照射して硬化させた後に両支持シートを剥離する方法により、連続的に製造することが出来る。通常、上記の支持シートには合成樹脂シートが使用される。
【0003】
ところで、上記の方法においては、活性線の照射により、支持シートが熱収縮し、シート状に成形された光重合性モノマー組成物との間にズレを生じる。そのため、均一且つ平坦な表面を有する透明樹脂基板の連続的製造は困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、均一且つ平坦な表面を有する透明樹脂基板の連続的製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく種々検討を重ねた結果、意外にも、活性線の照射による硬化工程を2段に分け、前段硬化工程の後に支持シートを剥離してから段硬化工程を行なうならば、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、移送される下部支持シート上に光重合性モノマー組成物を供給し、その上に下部支持シートと同速度で同一方向に移送される上部支持シートを積層した後、光重合性モノマー組成物に活性線を照射して硬化させる透明樹脂基板の連続的製造方法であって、下部支持シート及び/又は上部支持シートを透過させて活性線の照射を行なう前段硬化工程、および、両支持シートを剥離した後に活性線の照射を行なう後段硬化工程より成ることを特徴とする透明樹脂基板の連続的製造方法に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明を実施するための製造設備の好ましい一例の説明図である。
【0008】
先ず、本発明で使用する光重合性モノマー組成物について説明する。本発明で使用する光重合性モノマー組成物は、重合性モノマーと光重合開始剤と任意の他の成分とから構成される。
【0009】
上記の重合性モノマーとしては、紫外線などの活性線の照射によって重合・硬化することにより透明樹脂を形成し得るモノマーである限り、特に制限されず、各種のモノマーを使用することが出来る。代表的には各種のアクリレート化合物、例えば、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、これらのオリゴマー、または、これらと他の重合性モノマーとの組み合せ等が挙げられる。
【0010】
本発明においては、耐薬品性、剛性などの観点から、次の一般式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート、次の一般式(II)で表される含脂環骨格モノ(メタ)アクリレートの組み合せが好適であり、特に、これらと後述の二官能性メルカプト化合物との組み合せが好適である。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートを含む総称である。
【0011】
【化1】
Figure 0003573689
【0012】
一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、mは1又は2の整数、nは0又は1の整数、p及びqは、それぞれ独立して、0〜3の何れかの整数を表す。
【0013】
上記の式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(オキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジアクリレート、ビス(オキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=ジメタクリレート、ビス(オキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=アクリレートメタクリレート及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0014】
【化2】
Figure 0003573689
【0015】
一般式(II)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、mは1又は2の整数、nは0又は1の整数、r及びsは、それぞれ独立して、0〜3の何れかの整数を表す。
【0016】
上記の一般式(II)で表される含脂環骨格モノ(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=モノアクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02, ]デカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(オキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=モノアクリレート、ビス(オキシメチル)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=モノアクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=モノメタクリレート及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0017】
含脂環骨格ビス(メタ)アクリレート及び含脂環骨格モノ(メタ)アクリレートと組み合わせて使用される二官能性メルカプト化合物としては、一般式(III)〜(V)で表されるメルカプト化合物が好適である。
【0018】
【化3】
Figure 0003573689
【0019】
一般式(III)中、Rはメチレン基またはエチレン基を示し、Rはエーテル酸素を含んでいてもよい炭素数2〜15の炭化水素残基を示し、aは2〜6の整数を示す。
【0020】
一般式(III)において、R(エーテル酸素を含んでいてもよい炭素数2〜15の炭化水素残基)の具体例としては、例えば、ペンタエリスリトール残基、ジペンタエリスリトール残基、トリメチロールプロパン残基、エチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、ブタンジオール残基などが挙げられる。
【0021】
一般式(III)で表されるメルカプト化合物は、2〜6価のチオグリコール酸エステル又はチオプロピオン酸エステルであり、その具体例としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β−チオプロピオネート)等が挙げられる。
【0022】
【化4】
Figure 0003573689
【0023】
一般式(IV)中、XはHS−(CH−CO−(OCHCH−(CH−を示す。但し、b及びcは、それぞれ独立して1〜8の整数を示す。
【0024】
一般式(IV)で表されるメルカプト化合物はω−チオール基含有イソシアヌレートであり、その具体例としては、例えば、トリス[2−(β−チオプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス(2−チオグリコニルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス[2−(β−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[(2−チオグリコニルオキシエトキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[3−(β−チオプロピオニルオキシ)プロピル]イソシアヌレート、トリス(3−チオグリコニルオキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0025】
【化5】
Figure 0003573689
【0026】
一般式(V)中、R及びRはそれぞれ独立してアルキレン基を示し、e及びfはそれぞれ独立して0又は1の整数を示し、gは1又は2の整数を示す。
【0027】
一般式(V)で表される化合物はチオール基含有炭化水素であり、その具体例としては、例えば、ベンゼンメルカプタン、キシリレンメルカプタン、4,4’−ジメルカプトジフェニルスルフィド等が挙げられる。
【0028】
本発明において、上記の各成分は、通常、次の様な割合で使用される。すなわち、一般式(I)で表される含脂環骨格ビス(メタ)アクリレートは70〜99重量部、一般式(II)で表される含脂環骨格モノ(メタ)アクリレートは1〜30重量部、これらの合計量100重量部に対し、上記の一般式(III)〜(V)で表されるメルカプト化合物は1〜10重量部である。
【0029】
上記の光重合開始剤としては、活性線の照射によってラジカルを発生し得る限り、特に制限されず、各種の光重合開始剤を使用することが出来る。代表的には各種のアセトフェノン系またはベンゾフェノン系の光重合開始剤が挙げられる。
【0030】
上記のアセトフェノン系光重合開始剤の具体例としては、例えば、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−ジフェノキシジクロロアセトフェノン等が挙げられ、上記のベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロハシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0031】
また、本発明においては、次の一般式(XI)で表される化合物も光重合開始剤として好適に使用することが出来る。
【0032】
【化6】
Figure 0003573689
【0033】
一般式(VI)中、Rは、メチル基、メトキシ基または塩素原子を示し、nは2又は3の整数示す。
【0034】
上記の一般式(VI)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスイフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロロベンゾイルフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0035】
上記の光重合開始剤は、モノマー100重量部に対し、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.3重量部の割合で使用される。
【0036】
本発明においては、任意の他の成分として、ラジカル重合可能な他の重合性モノマー、増粘剤、熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料などを使用することが出来る。
【0037】
ラジカル重合可能な他の重合性モノマーとしては、例えば、メタクリロイルオキシメチルシクロデカン、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(β−メタクリロイルオキシエトキシ)シクロヘキシル]プロパン、1,4−ビス(メタクリロイルオキメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。これらの重合性モノマーは、前述の重合性モノマー100重量部に対し、通常30重量部以下の割合で使用される。
【0038】
増粘剤としては、使用する重合性モノマーの種類より適宜選択されるが、通常、非晶質熱可塑性ポリマーが使用される。特に次の一般式(VII)又は(VIII)で表される非晶質ポリオレフンが好適である。
【0039】
【化7】
Figure 0003573689
【0040】
一般式(VII)中、Xは、シクロペンタジエン及びその誘導体、ノルボルナジエン及びその誘導体、ジシキロペンタジエン及びその誘導体、または、これらの水素添加物を示し、Rは、水素原子、炭化水素基またはC10基を示し、R10は、水素原子、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン化炭化水素基またはハロゲン原子を示し、d及びeは、それぞれ独立して1以上の整数を示す。
【0041】
【化8】
Figure 0003573689
【0042】
一般式(VIII)中、j及びkは、それぞれ独立して0又は1以上の整数を示す。また、環状5員環単位はハロゲン原子または炭化水素基などの置換基を有していてもよい。
【0043】
上記の様な非晶質ポリオレフンの具体例は、特開平10−77321号公報に記載されているのでそれを参照することが出来る。また、本発明においては、他の非晶質ポリオレフンとして、上記の公開公報に記載の、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン若しくはその誘導体と、シクロペンテン、シクロオクテン、1,5−シクロオクテンタジエン等の他の環状オレフィンとの開環重合体またはその水素添加物も使用することが出来る。
【0044】
更に、本発明においては、次の一般式(IX)で表される化合物も増粘剤として好適に使用することが出来る。
【0045】
【化9】
Figure 0003573689
【0046】
一般式(IX)中、Yは、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ等のアルコキシ基を示し、hは1以上の整数を表す。
【0047】
上記の増粘剤は、モノマー100重量部に対し、通常2〜10重量部、好ましくは4〜8重量部の割合で使用される。
【0048】
本発明で使用する光重合性モノマー組成物は、上記の各成分の配合によって調製され、非溶媒系であり、その粘度は、20℃において、剪断速度10sec−1の条件下に測定した値として、通常500〜100000mPa・sec、好ましくは1000〜10000mPa・secの範囲とされる。
【0049】
上記の熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられ、その使用量は、モノマー100重量部に対し、通常1重量部以下である。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料としては、公知のものを適宜選択して使用することが出来る。
【0050】
本発明の製造方法は、基本的には、移送される下部支持シート上に光重合性モノマー組成物を供給し、その上に下部支持シートと同速度で同一方向に移送される上部支持シートを積層した後、光重合性モノマー組成物に活性線を照射して硬化させる透明樹脂基板の連続的製造方法である。斯かる方法は、図1に示す様な製造設備で行なうことが出来る。
【0051】
図1において、下部支持シート(20)は、下部支持シート送給装置(21)から送り出され、駆動ローラ(22)、案内ローラ(23)及び(24)を経由し、下部支持シート巻取装置(25)に巻き取られる。一方、上部支持シート(30)は、上部支持シート送給装置(31)から送り出され、案内ローラ(32)、(33)及び(34)を経由し、上部支持シート巻取装置(35)に巻き取られる。下部支持シート側に配置される案内ローラ(23)及び(24)と上部支持シート側に配置される案内ローラ(33)及び(34)は、それぞれ、対向して配置されている。
【0052】
下部支持シート(20)及び上部支持シート(30)は、共に可撓性シートで構成され、また、後述する活性線の照射側のシートは透明シートで構成される。また、重合時の熱によって軟化しない様に通常100℃以上の軟化点を有するシートで構成される。斯かる特性のシートとしては、厚さ50〜300μmの合成樹脂シート、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等の合成樹脂シートが挙げられる。また、支持シートの光重合性モノマー組成物と接する側の表面粗さ(Ra)は、通常100nm以下、好ましくは20nm以下とされる。斯かる支持シートとの使用により、その表面がより一層平滑な透明樹脂基板が得られる。
【0053】
下部支持シート(20)と上部支持シート(30)は、同速度で同一方向に移送され、駆動ローラ(22)から案内ローラ(23)及び(24)の間には水平なパスライが形成されている。シートの移送速度は、通常0.5〜20m/min、好ましくは1〜10m/minとされる。
【0054】
そして、駆動ローラ(22)の近傍に配置されたダイコーター(1)から、下部支持シート(20)上に光重合性モノマー組成物(A)を供給し、その上に上部支持シート(30)を積層した後、光重合性モノマー組成物に活性線を照射して硬化させる。
【0055】
ダイコーター(1)から下部支持シート(20)上に供給される光重合性モノマー組成物(A)の厚さは、その供給速度とシートの移送速度とにより適宜調節されるが、通常0.1〜5mmとされる。上部支持シート(30)は、特に加圧される必要はなく、下部支持シート(20)上に供給され且つシート状に成形された光重合性モノマー組成物(A)に均一に積層される程度に押圧されればよい。活性線の光源としては、ケミカルランプ、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が使用される。
【0056】
本発明の製造方法の最大の特徴は、下部支持シート(20)及び/又は上部支持シート(30)を透過させて活性線の照射を行なう前段硬化工程、および、両支持シート(20)及び(30)を剥離した後に活性線の照射を行なう後段硬化工程より成る点にある。
【0057】
すなわち、図1に示す様に、先ず、前段硬化工程用活性線照射設備(4)で活性線の照射を行ない、次いで、両支持シート(20)及び(30)を夫々の巻取装置(25)及び(35)で剥離した後、後段硬化工程用活性線照射設備(6)で活性線の照射を行なう。図1に示す製造設備の場合、活性線の照射は、両工程共に両シート面から行なっているが、一方のシート面から行なってもよい。
【0058】
本発明の好ましい態様においては、前段硬化工程では、通常5〜85重量%、好ましくは20〜60重量%の光重合性モノマーの重合を行い、後段硬化工程においては、残余の光重合性モノマーの重合を行なう。硬化条件としては次の様な条件が推奨される。
【0059】
すなわち、活性線の照射強度は、両工程共に約60〜200w/cm、照射時間は、前段硬化工程の場合0.5〜3分、後段硬化工程の場合2〜5分とされる。そして、照射量は照射強度と照射時間の関係で決定されるが、後段硬化工程における照射量を大きくするのが好ましい。後段硬化工程の照射量は、前段硬化工程に対し、通常1.5〜20倍、好ましくは5〜10倍である。また、光重合性モノマー組成物(A)の温度は、重合熱によって昇温する。本発明の場合、適宜の冷却手段により、光重合性モノマー組成物(A)の温度は、前段硬化工程で約100〜150℃、後段硬化工程で約140〜180℃の範囲に制御するのが好ましい。斯かる温度制御により、製品物性(透明性、強度、均質性など)の低下が抑制される。また、活性線照射設備としては市販の設備を利用することが出来るが、後段硬化工程の雰囲気は窒素などの不活性雰囲気とするのが好ましい。なお、前段硬化工程の雰囲気は大気雰囲気であってもよい。
【0060】
また、後段硬化工程においては、前段硬化工程で得られた重合シート(完全硬化前の透明樹脂基板)に対して、長さ方向に0.2〜1N/cmの張力を掛け、且つ、幅方向に長手方向の1/5〜3/4の張力を掛けるのが好ましい。斯かる態様の後段硬化工程によれば、重合シートの歪み(うねり)が防止され、より一層平坦な透明樹脂基板が得られる。重合シートの長さ方向および幅方向に張力を掛ける方法としては、例えば、連続する多数のクリップが耳部を挟んで引張って走行するテンタークリップ方式を採用することが出来る。
【0061】
図1に示す製造設備の場合は、前段硬化工程用活性線照射設備(4)と後段硬化工程用活性線照射設備(6)との間に耳部切断用カッター(5)が配置されている。これにより、硬化したシート状光重合性モノマー組成物の長手方向両端部の耳部(盛り上がり部)が除去される。通常、耳部は、支持シートの剥離後、所定サイズに切断する製品化工程で一緒に切断して除去される。斯かる方法による場合は、耳部の切断の際に製品が破損して製品歩留まりが低下するという問題がある。ところが、上記の様に、両支持シート(20)及び(30)を夫々の巻取装置(25)及び(35)で剥離する前に耳部を切断する、すなわち、支持シートと共に耳部を切断するならば、製品の破損が防止される利点がある。耳部切断用カッター(5)としてはレーザーカッターが好適に使用される。支持シートと共に切断して除去された耳部は、耳部巻取ローラ(図示せず)に巻き取られる。
【0062】
上記の後段硬化工程終了後、得られた透明樹脂基板は、適宜の手段で切断され、透明樹脂基板製品(B)とされる。本発明においては、後段硬化工程終了後であって上記の切断処理前において、必要に応じて熱処理することが出来る。斯かる熱処理は、重合処理の仕上げてとしての意味を有する。熱処理温度は、通常、150〜200℃、好ましくは150〜170℃とされ、熱処理時間は、通常0.5時間以上、好ましくは0.5〜2時間とされる。雰囲気は、不活性雰囲気または大気雰囲気の何れであってもよい。
【0063】
なお、図示を省略したが、後段硬化工程にベルトコンベアを配置することが出来る。この場合は、通常、当該ベルトコンベアの上側に配置される活性線照射設備のみで後段硬化が行なわれる。また、図1に示す製造設備の場合、下部支持シート(20)がベルトコンベアを兼ねているが、下部支持シート(20)の下部にベルトコンベアを配置し、当該ベルトコンベアの上に下部支持シート(20)を載せて移送してもよい。更に、一方の支持シート(好ましくは下部支持シート)はシームレスのエンドレススチールシートで構成し、支持シートとして使用後に廃棄される合成樹脂シートの量を削減してコストダウンを図ることも出来る。
【0064】
本発明に係る方法で得られる透明樹脂基板は優れた光線透過率を有し、その透過率は、通常75%以上、好ましくは80%以上である。また、透明樹脂基板の厚さは、その用途によって異なるが、通常0.1〜5mm、好ましくは0.2〜1mmである。
【0065】
上記の様にして得られた透明樹脂基板は、液晶、有機ELなどのディスプレー基板、光学フィルター、光通信材料、太陽電池基板などの各種用途に好適に利用される。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
実施例1
<光重合性モノマー組成物の調製>
ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジアクリレート94重量%とペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)6重量%との混合物100重量部に対し、光重合開始剤として、ベンゾフェノン0.05重量部と2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド0.05重量部、増粘剤として日本ゼオン社製「ZEONEX450」(ノボルネン系開環重合体の水素添加物)3重量部を添加し、粘度3000mPa・secの光重合性モノマー組成物を調製した。
【0068】
<透明樹脂基板の製造設備>
図1に示すのと同様の製造設備を使用した。下部支持シート(20)及び上部支持シート(30)には幅330mmで厚さ100μmのポリエステルシート(三菱化学ポリエステル社製「O300」)、活性線照射設備(4)及び(6)にはメタルハライドランプ(日本電池社製)、耳部切断用カッター(5)には水冷式25W炭酸ガスレーザー(カンタムエレクトロニクス社製)をそれぞれ使用した。
【0069】
<透明樹脂基板の製造>
先ず、下部支持シート(20)及び上部支持シート(30)の移送速度を1m/minsとし、ダイコーター(1)から下部支持シート(20)上に光重合性モノマー組成物(A)を供給し、幅310mmで厚さ400μmのシート状に成形した。
【0070】
次いで、前段硬化工程用活性線照射設備(4)により0.5分間で2J/cmの照射を行なった。この際、光重合性モノマー組成物(A)の温度は、空冷により130℃に保持した。因みに、前段硬化においては、光重合性モノマーの約60重量%の重合が行われた。
【0071】
次いで、耳部切断用カッター(5)により両端から20mmの位置で耳部を切断して除去した後、巻取装置(25)及び(35)で両支持シート(20)及び(30)をそれぞれ剥離した。
【0072】
次いで、後段硬化工程用活性線照射設備(6)により5分間で25J/cmの照射を行なった。この際、光重合性モノマー組成物(A)の温度は、空冷により160℃に保持した。その後、所定の長さに切断して透明樹脂基板製品(B)を得た。
【0073】
得られた透明樹脂基板製品(B)について、10cm角に切り出して高さの変動(うねり)を測定した結果1mmであった。
【0074】
比較例1
実施例1において、2段硬化を行なわず、前段硬化工程用活性線照射設備(4)により5分間で25J/cmの照射のみを行なって硬化を終了した以外は、実施例1と同様にして透明樹脂基板製品(B)を得た。得られた透明樹脂基板製品(B)のうねりは8mmであった。
【0075】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、均一且つ平坦な表面を有する透明樹脂基板の連続的製造方法が提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明を実施するための製造設備の好ましい一例の説明図
【符号の説明】
1:ダイコーター
4:前段硬化工程用活性線照射設備
5:耳部切断用カッター
6:後段硬化工程用活性線照射設備
20:下部支持シート
21:下部支持シート送給装置
22:駆動ローラ
23:案内ローラ
24:案内ローラ
25:下部支持シート巻取装置
30:上部支持シート
31:上部支持シート送給装置
32:案内ローラ
33:案内ローラ
34:案内ローラ
35:上部支持シート巻取装置
A:光重合性モノマー組成物
B:透明樹脂基板製品

Claims (4)

  1. 移送される下部支持シート上に光重合性モノマー組成物を供給し、その上に下部支持シートと同速度で同一方向に移送される上部支持シートを積層した後、光重合性モノマー組成物に活性線を照射して硬化させる透明樹脂基板の連続的製造方法であって、下部支持シート及び/又は上部支持シートを透過させて活性線の照射を行なう前段硬化工程、および、両支持シートを剥離した後に活性線の照射を行なう後段硬化工程より成ることを特徴とする透明樹脂基板の連続的製造方法。
  2. 前段硬化工程において光重合性モノマーの5〜85重量%を重合させ、後段硬化工程で残余の光重合性モノマーの重合を行なう請求項1に記載の製造方法。
  3. 支持シートの光重合性モノマー組成物と接する側の表面粗さ(Ra)が100nm以下である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 後段硬化工程において、前段硬化工程で得られた重合シートに対して、長さ方向に0.2〜1N/cmの張力を掛け、且つ、幅方向に長手方向の1/5〜3/4の張力を掛ける請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
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