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JP3570418B2 - 超伝導デバイス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液体窒素温度あるいはそれ以上の温度で動作する超電導デバイスに係り、特に製造が容易で動作が安定な超電導デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高温で動作する超電導デバイスの材料としては、Nb3Ge等の材料が使用されていた。この技術については、エイチ・ロガラ等(H.Rogalla et al.)が、アイ・イー・イー・イー・トランザクション・マグ−15,536(1985)(IEEE Trans.MAG−15,536(1985))において論じている。
【0003】
また、従来超電導性を示す複数の電極を半導体あるいは常伝導体を介して結合させた超電導デバイスについては、アール・ビー・バン・ドーバー等(R.B.Van.Dover et al.)が、ジェイ・アプライド・フィジックス・Vol.52,第7327,1981(J.Appl.Phys., Vol.52,P.7327,1981)において論じている。また上記超電導デバイスに電界効果によって超電導性を示す電極間の結合を変化させる手段を加えた三端子型の超電導デバイスについては、ティー・ディー・クラーク等(T.D.Clark et al.)が、ジェイ・アプライド・フィジックス・Vol.5,第2736頁,1980年(J.Appl.Phys.,Vol.5,P.2736,1980)において論じている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この三端子型の超電導デバイスの断面構造を図1に示す。このデバイスは、半導体層2に接して設けられた2つの超電導電極3a,3bに半導体層2を通して流れる超電導電流の値を両電極3a,3b間に設けた制御電極5に印加した電圧によって超電導近接効果を変化させて制御するものである。制御電極5は半導体層2の上に、絶縁膜4を介して設けられている。
【0005】
上記従来技術は、超電導電極の材料としてPb,Pb合金,Nb,Nb系化合物を用いていた。従って、これらの材料を用いた超電導デバイスを動作させるためには、液体ヘリウム温度(4.2K)付近の極低温中にデバイスを設置しなければならなかった。さらに2つの超電導電極間の超電導近接効果の影響を大きくするためには、2つの超電導電極間の距離を0.5μm以下に離して設置しなければならず、このことがデバイス作製を非常に困難なものとしていた。
【0006】
また、上記従来技術においては、超電導電極と半導体あるいは常伝導体とは、それぞれ別々の元素の組合せから成る材料によって構成されていた。例えば超電導電極の材料としてはNbやPb合金、Sn等が用いられ、また半導体あるいは常伝導体の材料としては、Si,InAs,Cu等が用いられていた。しかしながら、これらの材料を組合せるということは、超電導体と半導体又は常伝導体のように電気的な性質が全く異なる材料を重ねてデバイスを構成することを意味している。従って、この超電導デバイスは半導体あるいは常伝導体の表面上にこれとは異なる材料の超電導体が重ねて形成された構造となる。このとき、超電導体の特性は、半導体等の表面状態に敏感に反応するため、このような構造のデバイスは、その特性が変化し易く、この種の超電導デバイスを再現性よく製造することは、困難であった。
【0007】
また、超電導体の超電導転移温度(Tc)も高々10〜20K程度であり、このことはデバイスの特性がそのデバイスの温度変化によって不安定になり易いことを意味している。
【0008】
また、従来の超電導デバイスは、主として液体ヘリウム温度で動作することから、その温度までの冷却には、液体ヘリウムへの浸漬又は、ヘリウム・ガスによる冷却という方法が用いられていた。しかしながら、液体ヘリウムは非常に高価であり、冷却剤として経済的でない。また、液体ヘリウムは室温に比べて極低温であるため、その取扱い自体が難しいといった問題を有していた。そして、この液体ヘリウムの問題は、そのまま超電導デバイス自身の経済性及び取扱いといった問題に結びついていた。
【0009】
また、従来用いられていた超電導材料は、多結晶状あるいはアモルファス状であった。多結晶性の材料においては0.5μm以下の微細加工を精密に行うことは困難であり、また超電導体としての性質が結晶の方位に依存する材料を使用した場合には、作製のたびに多結晶材料の結晶粒の配向性の程度を厳密に制御する必要がある。しかしながら、一般にはこれが困難であるために、製造の際の特性ばらつきが大きくなるという問題があった。
【0010】
従来の超電導弱結合素子を有する超電導デバイスの構造は超電導膜の一部を細くしてくびれを形成し、くびれ部分に弱結合性を持たせた、いわゆるマイクロブリッジが代表的なものである。とくにNb系超電導材料に対しては光学的なパタン形成技術あるいは電子ビーム描画技術と超電導膜の加工技術を組合せて、超電導弱結合素子が作製されて来た。このような弱結合素子は微弱な磁界を検出できる量子磁束計として、あるいは高感度のマイクロ波・ミリ波検出器として利用される。量子磁束計は10−9Oeという高い磁束分解能を有し、脳磁計や心磁計に利用される。弱結合素子のマイクロ波検出領域は他の半導体素子では不可能な高い周波数帯域1012Hzまで可能である。
【0011】
このように超電導弱結合素子を備えた超電導デバイスは電磁波の検出素子として優れた性能を有する。しかしながら従来のNb系超電導材料は臨界温度が23K以下であるから、Nb系超電導材料を用いて形成される超電導材料も液体ヘリウム中(4.2K)での動作を余儀なくされてきた。
【0012】
このような公知例として、IEEE Transaction on Magnetics,Vol.MAG−21,No.2,MARCH 1985,pp.932−934がある。
【0013】
本発明の第1の目的は、温度変化に対する動作が安定で、かつ、液体窒素温度以上の高温で動作可能な超電導デバイスを提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、経済性に優れ、かつ、その取扱いが容易な超電導デバイスを提供することにある。
【0015】
本発明の第3の目的は、容易に構造でき、かつ、特性の均一な超電導デバイスを提供することにある。
【0016】
本発明の第4の目的は、効率の良い超電導電子の流れを与える超電導デバイスを提供することにある。
【0017】
本発明の第5の目的は、デバイス感度及び利得の大きな超電導デバイスを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記第1,第2,第3及び第4の目的は、超電導デバイスを構成する酸化物超電導体の結晶のc軸を、その酸化物超電導体内を流れる超電導電波の方向と略垂直になるように配向することによって達成される。又は、この超電導体をその超電導性が結晶学的な方位に依存しており、面内での2次元性が強くなるように形成し、上記超電導体を流れる電流の方向を上記超電導性の高い方向と一致させることによって達成される。
【0019】
上記第1,第2,第3及び第5の目的は、超電導体と常伝導体(半導体)とが接する面に対して超電導体の結晶のc面が垂直になるように接続することによって、達成される。
【0020】
すなわち、たとえば酸素欠陥型層状ペロブスカイト結晶構造又はK2NiF4型結晶構造を有する超電導材料は、超電導的な性質が結晶学的な方位に依存しており、c軸に垂直な面、すなわちc面内での超電導性が強く、キャリアが面内で動く2次元性が強い。このためデバイスとして使用するために充分大きな電流を流すことのできる方向はc面内であり、他の面に比較して約10倍の超電導電子の流れをもつ。そこで超電導体の結晶のc軸を超電導体内を流れる電流方向と略直角にすることによって、効率良く超電導電流を流すことができる。
【0021】
本発明によれば、超電導体と常伝導体もしくは半導体とを組合せて使用する超電導デバイスにおいて、超電導体と常伝導体もしくは半導体との界面の結晶格子を整合させて製造し、なおかつデバイス中の電流が流れる方向と、材料の超電導性の高い方向とが一致しているために、充分に大きな超電導電流を流すことができるので、特性が安定で再現性良く製造でき、しかも回路動作も安定な超電導デバイスを実現できる効果がある。
【0022】
超電導体から半導体又は常伝導体に電子対あるいは電子がしみ出す確率が高くなる。すなわち超電導体と半導体又は常伝導体界面の電子波の整合性が良好であり、効率の良い電子の流れとなる。従って動作の安定した高利得の超電導デバイスの実現が可能となる。同様の効果は結晶粒が配向した多結晶材料を用いた場合にも得ることができる。
【0023】
さらに、(La1−xAx)2CuO4(AはSr1ーy−zBayCazなどの材料)なる組成のK2NiF4型結晶構造を有する超電導材料は、超電導的な性質が結晶学的な方位に依存しており、c面、すなわちc軸に垂直な面内での超電導体が強い異方的な電気伝導特性を有する。このため、デバイスとして充分に大きな電流を流す方法は、結晶のc軸に垂直な面内にあることが必要であって、このため超電導体、及び常伝導体が、超電導デバイスをその上に形成する基板に接している面、すなわち基板の表面が、超電導体あるいは常伝導体を構成する単結晶材料のc軸に垂直であることが望ましいのである。この場合には、超電導デバイスにおいて電波を流す方向が、超電導性の最も高い方向と一致しており、このため、デバイスの動作を安定なものにすることができる。
【0024】
以上は、単結晶性の材料を超電導電極と、半導体とに使用した場合について述べたが、同様の効果は結晶粒が配向した多結晶材料を用いた場合にも得ることができる。この場合にも、結晶粒の配向方向は基板の表面に対し結晶粒のc軸が垂直となることが望ましい。配向した常伝導体もしくは半導体上に、やはり同じ配向性を有する超電導電極を形成することは容易であり、このような場合には、上で述べた単結晶性の材料を用いた場合と同様の効果を得ることが可能である。
【0025】
また、以上の説明においては、先に常伝導体又は半導体を形成しておき、次いで超電導体を形成するものとしているが、この順序を変更しても全く同様の効果を得ることができる。
【0026】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0027】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図2を用いて本発明の第1の実施例を説明する。基板1は、SrTiO3単結晶からなり、その主表面は結晶のc軸と垂直である。この基板1の主表面上にスパッタリング法によって厚さ約100nmの(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する常伝導体又は半導体2を形成する。この常伝導体又は半導体は、平坦な基板1上に形成されているため、膜厚は一定である。これを高周波加熱法によって約1000℃で約10秒程度の加熱処理を行なう。すると、常伝導体又は半導体2はそのc軸が基板1のc軸と同じ方向に配向した単結晶薄膜になる。続いて(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する厚さ約100nmの超電導体3を同じくスパッタリング法によって形成する。この超電導体3は下地となる常伝導体又は半導体2の配向性に依存した結晶配向性を有するため、やはり基板1及び常伝導体又は半導体2同じc軸方向に配向する。この超電導体3の表面にホトレジストによるパターンを形成し、これをマスクにしてArイオンによるスパッタ・エッチングを行い、超電導体3を対向する2つの超電導電極3a,3bに加工する。この二つの超電導電極3a,3bの間の長さは、常伝導体又は半導体のコヒーレンス長さの約3〜10倍程度である。次に、化学的気相成長法(CVD法)によって厚さ約150nmのSiO2より成る保護膜6を形成する。この保護膜6は、超電導体2の材料に希土類元素を含む酸化物を使用した場合には、水素,酸素の拡散や表面の組成変化によって材料の超電導特性が変化し、デバイスの特性が時間とともに劣化することを防止するために設けたものである。従って、本実施例のような酸化物系の材料を超電導体に用いる場合には、この保護膜6を使用することが望ましい。保護膜6の材料としてはSiO2の他にSiO,Si3N4などの絶縁物や、有機高分子材料等を使用しても良い。
【0028】
以上によって、超電導体3a−常伝導体(半導体)2−超電導体3bの構造を有する超電導デバイスを得ることができる。この場合、常伝導体2と超電導体3の間の界面は、両層を連続的に形成したために、汚染等が無く、また結晶格子の整合が良いために、キャリアの反射が少なく理想的な状態を保って形成できた。このため特性の均一性と再現性に優れ、回路動作が安定になる効果があった。なお、本実施例においては、基板1の材料としてSrTiO3あるいはサファイアを用いたが、この他にSiC等のセラミクス材料あるいはGGG等のガーネット材料を用いてもよい。
【0029】
(実施例2)
次に図3を用いて本発明の第2の実施例を説明する。第1の実施例においては常伝導体又は半導体2を先に形成したが、すでに述べたように超電導体3を先に形成することもできる。形成の際の条件等は第1の実施例と同様で良い。即ち、主表面が結晶のc軸と垂直である基板1(SrTiO3単結晶)の上に(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する厚さ約100nmの超電導体をスパッタリング法によって形成する。超電導体3の表面にホトレジストによるパターンを形成し、これをマスクにしてエッチングを行い、超電導体3を加工して対向する2つの超電導電極3a,3bを形成する。次に(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する厚さ約200nmの常伝導体2をスパッタリング法によって堆積形成する。これを高周波数加熱法により約1000℃で約10秒間の加熱処理を施す。すると、常伝導体又は半導体2と超電導体3は、実施例1と同様に、そのc軸が基板1のc軸と同じ方向(いいかえれば、基板1の主表面と垂直方向)に配向した多結晶あるいは単結晶の薄膜になる。このようにして、本発明の超電導体3a−常伝導体(半導体)2−超電導体3bの構造を有するデバイスを得ることができる。
【0030】
(実施例3)
次に図4を用いて、本発明の第3の実施例を説明する。図2の第1の実施例による超電導デバイスの表面に保護膜6を形成せずに、CVD(化学的気相成長法)によってSiO2から成る厚さ約20〜120nmの絶縁膜4を形成する。次に厚さ約300nmのNbより成る制御電極5をスパッタリング法による堆積とCF4ガスを用いた反応性イオンエッチング法によって形成する。これによって三端子型の超電導デバイスを実現することができる。この制御電極5は2つの超電導電極間を流れる電流を制御することができる。このデバイスは制御電極5を有しているが、前記の2つの実施例と同様に、特性の均一性と再現性とに優れた超電導デバイスを実現できることは言うまでもない。
【0031】
(実施例4)
次に図5を用いて、本発明の第4の実施例を説明する。主表面が結晶のc軸に垂直な基板1(SrTiO3単結晶あるいはサファイヤ)の上に、スパッタリング法により厚さ約100nmの(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する超電導体3aを形成する。これを酸素雰囲気中で加熱して、約920℃,2時間の熱処理を行なう。これにより、超電導体3aはc軸が基板1のc軸と同じ方向に配向した多結晶薄膜あるいは単結晶薄膜とすることができる。続いてイオンビーム・スパッタリング法により厚さ約100nmの(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する常伝導体又は半導体2と、厚さ約200nmの(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する第2の超電導体3bを形成する。
【0032】
超電導体3aの加工はホトレジストのパターンをマスクとした化学エッチングを用いる。常伝導体2と第2の超電導体3bとは、メタルマスクを通して形成する。そして超電導体3bを酸素雰囲気中で加熱して、約920℃、2時間の熱処理を行なう。これにより第2の超電導体3bも超電導体3aと同様にc軸が基板1のc軸と同じ方向に配向した多結晶薄膜となる。次に化学的気相成長法(CVD法)によって厚さ約150nmのSiO2より成る保護膜6を形成する。以上によって超電導体3a−常伝導体(半導体)2−超電導体3bの構造を有する超電導デバイスを得ることができる。本実施例においては、超電導体3aと第2の超電導体3bとが常伝導体2をはさみ込んだ、サンドイッチ型の構造を有している。この点が本発明の第1の実施例とは異っている。このようなサンドイッチ型の構造においても、本発明の目的を充分に達することができる。また本実施例では常伝導体をはさみ込んでいるが、これが半導体であっても良いことは言うまでもない。この場合には超電導体と半導体の間にはショットキ障壁が存在し、電気伝導のメカニズムにおいては、トンネル効果が重要となるが、このようなトンネル接合に対しても、本発明は充分な効果を有することは言うまでもない。
【0033】
(実施例5)
上記図2から図5までの実施例に示された超電導デバイスに用いられた超電導電極材料は、高い超電導臨界温度を有するペロブスカイト型の酸化物超電導材料である。この材料において超電導電子対は結晶構造上にa−b面方向(c軸と垂直方向)に流れやすく、c軸と同じ方向には流れ難い。したがってこのような材料を超電導電極として用いた超電導デバイスの超電導電流の流れは超電導電極3a→常伝導体(半導体)2→超電導電極3bとなる。そこで超電導電極3a,3bと常伝導体(半導体)2の界面の電子の流れが重要となる。つまり超電導電極3aから常伝導体(半導体)2に対する電流の流れ及び常伝導体(半導体)2から超電導電極3bに対する電流の流れをそれぞれ大きくしなければならない。
【0034】
図3の場合、超電導電極3a,3bの電流は、基板1の主表面と平行(c軸と垂直)方向に流れる。従って、超電導電極3a,3bと常伝導体(半導体)2との間には、最大超電導電流が流れる。しかしながら、図2および図4のように、超電導電極3a,3bと常伝導体(半導体)2とが異なる層で形成されている場合には、超電導電極3aから常伝導体(半導体)2への電流の流れ及び常伝導体(半導体)2から超電導電極3bへの電流の流れは、超電導電極3a,3bの電流の流れと直交することになる。従って、このような超電導デバイスは、超電導電極3a−常伝導体(半導体)2−超電導電極3bの構造において、超電導体(3a,3b)と常伝導体(半導体)2との間に充分な超電導電流を流すことができないという問題があった。
【0035】
この問題を解決した実施例について、以下説明する。
【0036】
図6は本実施例の第5の実施例である超電導デバイスの断面図である。基板11は、第1から第4の実施例とは異なり、SrTiO3からなり、その主表面は結晶のc軸と平行である。この基板11上にスパッタリング法で厚さ200nmの(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する常伝導体(半導体)2を形成する。その後これを高周波加熱法で1000℃,10秒の加熱処理を行なう。すると、常伝導体(半導体)2は、そのc軸が基板11のc軸と平行な単結晶薄膜になる。次に(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する厚さ約300nmの超電導薄膜をスパッタリング法によって形成する。この超電導薄膜は、下地となる常伝導体(半導体)2の結晶の配向性に依存した結晶配向性を有するため、常伝導体(半導体)2の表面に対してc軸が平行、すなわちc面が垂直になるように配向している。次に950℃の酸素雰囲気中で1時間の加熱を行った後この超電導薄膜表面にホトレジストによるパターンを形成し、これをマスクとしてArイオンによるスパッタエッチングを行い、対向する2つの超電導電極3a,3bを形成する。
【0037】
次に、化学的気相成長法(CVD法)によって、SiO2からなる厚さ約120nmの絶縁膜7を形成する。続いて、イオン・ビーム・スパッタリング法により、厚さ約100nmの(La0.9Ca0.1)2CuO4の組成を有する超電導配線3c,3dを形成する。そして、この超電導配線3c,3dを約950℃の酸素雰囲気中で1時間の加熱を行なう。超電導配線3c,3dの下地材料は、アモルファス状のSiO2より成る絶縁膜であるために、超電導配線3c,3dを構成する材料の結晶粒のc軸は、基板に対し垂直方向に配向し易い。これにより、超電導配線3c,3dのc軸は基板11の主表面に対して垂直に配向し易くなる。この結晶粒の配向は完全なものではないが、このように超電導電極3a,3bと、超電導配線3c,3dの配向性を変えることにより、より大きな超電導電流を安定に流すことができる。このようにして超電導体3a−半導体2−超電導体3bの構造を有する超電導デバイスを得ることができる。このデバイスは超電導体3a,3bと半導体2との界面の電流の流れが良好であり、流れの方向が超電導性の高い方向と一致するので超電導電極3a,3b間を流れる臨界超電導電流が増大して安定した動作を示す。
【0038】
(実施例6)
次に図7を用いて、本発明の第6の実施例である超電導デバイスを説明する。図6の実施例である超電導デバイスに、超電導電流を制御するための制御電極5を付加したものである。尚、図7においては、図面を簡略化するために、図6の超電導配線3c,3dを記号的に示し、絶縁膜7を省略して示した。
【0039】
第5の実施例で示したデバイスの表面に化学的気相成長(CVD)法によってSiO2からなる厚さ100nmの絶縁膜4を堆積する。その後DCマグネトロンスパッタリング法で厚さ約300nmのNb膜を堆積し、ホトレジストをマスクとしてCF4ガスでエッチングし、制御電極5を形成する。このようにして三端子型の超電導デバイスを得ることができる。このデバイスは、第5の実施例と同様に超電導近接効果を高めることができるので、制御電極に印加する一定の電圧に対する臨界超電導電流の変化量を増加させることができる。従ってデバイスの利得が大きくなり、安定した動作を示す。
【0040】
(実施例7)
図8は本発明の第7の実施例である超電導デバイスの断面図である。基板1は、図1と同様に、その主表面がc軸に垂直なSrTiO3単結晶からなる。この基板1上にスパッタリング法で厚さ500nmの(La0.9Ca0.1)2CuO4からなる常伝導体(半導体)2を堆積する。その後、高周波加熱法で1000℃,10秒の加熱を行なう。なお半導体2はそのc軸が基板1のc軸と同じ方向、即ち基板1の主表面と垂直になっている。これをホトレジストをマスクとしてCF4ガスによるプラズマエッチングによって深さ300nmまでエッチングして、常伝導体(半導体)2に幅0.5μm以下の突起2aを設ける。続いてCVD法でSiO2からなる厚さ100nmの層間絶縁膜7を形成した後スパッタリング法で(La0.9Sr0.1)2CuO4の組成を有する厚さ200nmの超電導薄膜を形成する。ここで常伝導体(半導体)2からなる突起部2aの側面に対して超電導薄膜のc面が垂直になるように配向している。続いてホトレジストを溶媒によって除去することにより、図8に示した超電導デバイスを得ることができる。このデバイスは、図2の実施例と同様に超電導近接効果を高めることができるので臨界超電導電流が増し、安定した動作を示す。
【0041】
(実施例8)
図9は本発明の第8の実施例である超電導デバイスの断面図である。図8の実施例のデバイスに超電導電流を制御するための制御電極5を付加した超電導デバイスである。図8の実施例に示したデバイスの表面にCVD法によってSiO2からなる厚さ100nmの絶縁膜4を形成する。その後、DCマグネトロンスパッタ法で厚さ300nmのNb膜を形成する。そして、これをCF4ガスにより反応性イオンエッチング法を用いて加工し、制御電極5を形成する。このように図9に示した超電導デバイスを得ることができる。このデバイスによれば制御電極に印加する一定の電圧に対する臨界超電導電流の変化量を増加させることができるデバイスの利得が大きくなり、安定した動作を示す。
【0042】
(実施例9)
次に図10を用いて本発明の第9の実施例を説明する。SrTiO3の単結晶より成る基板1に、スパッタリング法によって(La0.9Sr0.1)2CuO4の組成を有する厚さ約1μmの超電導体3を、結晶のc軸が基板に垂直になるごとく堆積させる。これはあらかじめ基板1の主表面の結晶方位をc面に運んでおけば良い。次に950℃の酸素雰囲気中で2時間加熱を行った熱超電導体の一部分を、Arイオンエッチング法によって加工し、厚さ約0.2μm,幅約0.1μmの弱結合部9を形成する。引きつづいて、弱結合部上にCdSよりなる光導電性半導体8を形成し、本発明の超電導デバイスを作製する。以上によって光導電性半導体8にc面が垂直に接し弱結合部9によって区切られた2つの超電導電極3a,3bからなる構成の超電導デバイスを実現できる。このような構造をもつデバイスの光導電性半導体8に光10を照射したところ超電導電極3a,3bの最大超電導電流が流れる方向と超電導電極3a−光導電性半導体8−超電導電極3bへの電流の流れは、図に示したx軸方向で一致するために大きな電流を流すことができる。それに従ってx軸方向に流れる電流の値を照射する微小な強度の光で容易に制御することができ、高感度で高速の光検出デバイスとして動作する。
【0043】
(実施例10)
次に図11を用いて、本発明の第10の実施例を説明する。CdSよりなる光導電性半導体8上にスパッタリング法によって(La0.9Sr0.1)2CuO4なる組成を有する厚さ1μmの超電導体と、結晶のc軸が基板に平行になるごとく堆積させる。次に950℃の酸素雰囲気中で2時間の加熱を行った後、Arイオンエッチング法で超電導体の一部分を加工して、厚さ0.2μm,幅0.1μmの弱結合部9を形成して本発明の超電導デバイスを作製する。このデバイスの光導電性半導体8に光10を照射したところ、超電導電極3a,3bの最大超電導電流が流れる方向と超電導電極3aから光導電性半導体8への電流の流れ、及び光導電性半導体8から超電導電極3bへの流れと一致するために大きな電流を流すことができる。したがって微量な光で電流の値を容易に制御することができる高感度で高速の光検出デバイスとして動作する。
【0044】
(実施例11)
次に図12を用いて本発明の第11の実施例を説明する。CdSよりなる光導電性半導体8をホトレジストをマスクとしてArイオンエッチング法で加工し、高さ1μm,幅0.1μmの突起を形成する。次にマスクを除去した後、(La0.9Sr0.1)2CuO4なる組成を有する厚さ2μmの超電導体を、結晶のc軸が表面に垂直となるように堆積させる。これにCF4ガスによるプラズマエッチングを施して、超電導体の表面が均一となり、かつ突起上の超電導体の厚さが0.2μmになるようにする。続いて酸素雰囲気中で950℃,2時間の加熱を行って、本発明の超電導デバイスを作製する。
【0045】
このデバイスの光導電性半導体8に光10を照射したところ、超電導電極3a,3bの最大超電導電流が流れる方向と超電導電極3a−光導電性半導体8−超電導電極3bの電流の流れる方向は一致するために大きな電流を流すことができる。従って、流れる電流の値を光によって容易に制御することができ、高感度で高速の光検出デバイスとして動作する。
【0046】
(実施例12)
次に図13を用いて本発明の第12の実施例を説明する。SrTiO3よりなりc軸に垂直な表面を有した基板1上に、CdSよりなる厚さ1μmの光導電性半導体8を堆積し、Arガスイオンエッチング法で幅0.1μmに加工する。次に(La0.9Sr0.1)2CuO4なる組成を有する厚さ2μmの超電導体を、結晶のc軸が垂直に平行となるように堆積させる。これにCF4ガスによるプラズマエッチングを施して、超電導体の表面が均一となり、かつ光導電性半導体上の超電導体の厚さが0.2μmになるようにする。続いて酸素雰囲気中で950℃,2時間の加熱を行って、本発明の超電導デバイスを作製する。
【0047】
このデバイスの光導電性半導体8に光10を照射したところ、超電導電極3a,3bの最大超電導電流が流れる方向と、超電導電極3a−光導伝性半導体8−超電導電極3bの電流の流れる方向は一致するために大きな電流を流すことができる。従って、流れる電流の値を光によって容易に制御することができ、高感度で高速の光検出デバイスとして動作する。
【0048】
(実施例13)
次に、Ba−Y−Cu酸化物をはじめとするペロブスカイト型結晶構造の変形構造を有する酸化物超電導材料を電極材および弱結合部材として用いた実施例について述べる。電極部分において酸化物超電導材料は結晶のc軸が膜面と垂直であるようにする。弱結合部分は電流を流す方向に対して垂直で幅10μm以内の帯状とし、この弱結合部分において酸化物超電導材料は結晶のc軸が膜面方向に向いた構造にする。あるいは弱結合部における酸化物超電導材料が多結晶体から成り、結晶方位があらゆる方向を向いている構造とする。
【0049】
このような構造は以下のごとき方法によって形成する。基板材料としてたとえばSrTiO3単結晶を用いる。SrTiO3結晶の(100)面は基板面に対して平行とする。この上にたとえばBa−Y−Cu酸化物を成長させることによって結晶のc軸が基板面に垂直な方向を向くように制御する。弱結合部に関しては、弱結合に対応する部分に多結晶性でかつ結晶方位の揃わない多結晶薄膜を形成する。この上に形成したBa−Y−Cu酸化物膜は多結晶性で、かつ結晶方位がすべてc軸方向に揃ってはいない膜構造になる。
【0050】
電極部分における電流容量を高めるために、電極部分の酸化物超電導膜構造を、電流の通じる方向に対して単一の結晶でかつ、弱結合部分においては膜面内で通電方向に対して垂直方向に5μmあるいはこれ以下の間隔で結晶が結晶粒界あるいは双晶面によって分かれた構造にする。このような構造を得るために、基板結晶の酸化物超電導膜の電極部位に相当する部分に対して、あらかじめドライエッチング等の方法により、線状の欠陥を設けておく。
【0051】
前記超電導弱結合素子は以下のような独自の作用をなす。すなわち、本超電導弱結合素子の形成工程において、酸化物超電導膜自体に対するパタン形成工程は全く含まれない。したがって素子の作製工程段階における酸化物超電導膜の超電導特性の劣化は問題とならない。
【0052】
つぎにこの超電導弱結合素子の原理について述べる。Ba−Y−Cu酸化物超電導体を例にとってみる。Ba−Y−Cu酸化物の結晶構造は図14に示すごとく、ペロブスカイト型結晶構造の変形構造であり、周期的な酸素原子の空孔を含む。図においてBa原子23をはさんでa軸とb軸の形成する面内でCu原子21の3d電子と酸素原子22の2p電子が結合し、結合対を構成する。超電導電子対はこのCu原子21と酸素原子22の結合対に添って流れる。Cu原子21と酸素原子22の結合対はc軸方向には連続的につながらず、Y原子24を含むa−b面において切られてしまう。したがって超電導電子はa−b面内方向に対して流れ易く、c軸方向に流れ難い。この結果として、臨界電流密度等の超電導特性はa−b面内方向における方がc軸方向における値より優れている。たとえばc軸に対して垂直方向に磁界を印加したときの臨界磁界は平行に磁界を印加したときの臨界磁界の3倍である。同様にa−b面内方向における臨界電流密度はc軸方向の臨界電流密度の3倍以上である。したがって電極部分を結晶のc軸が基板面に対して垂直な単結晶あるいは多結晶体とし、弱結合部分を結晶のc軸が基板面に対して垂直とはならない多結晶体とする。このような構造とした場合、電極膜部分と比べて弱結合部の臨界電流が低くなる。したがって素子に電流を通じた場合、弱結合部で超電導電子波位相のずれを生じ、ジョセフソン素子としての特性を示す。
【0053】
以上のごとき結晶方位の制御は下地材を選択することにより行うことができる。たとえばSrTiO3は立方晶のペロブスカイト型結晶構造で格子定数0.3905nmである。一方Ba−Y−Cu酸化物は斜方晶構造であり、格子定数はa=0.3894nm,b=0.3820nm,c=1.1688nmである。したがってSrTiO3の格子定数とBa−Y−Cu酸化物のa軸およびb軸方向格子定数はほぼ等しい。SrTiO3およびBa−Y−Cu酸化物ともにペロブスカイト型に属する結晶構造であり、原子間隔がほぼ等しいことから、SrTiO3を下地としてBa−Y−Cu酸化物を形成することによって、Ba−Y−Cu酸化物膜の結晶方位を制御することができる。下地に対してc軸が垂直となる方向にBa−Y−Cu酸化物結晶の方位が揃うのを防ぐためには、結晶方位の定まらない多結晶の絶縁膜あるいは非晶質絶縁膜を下地として用いる。
【0054】
電極部分の酸化物超電導膜構造を、電流の通じる方向に対して単一の結晶でかつ、弱結合部分においては膜面内に通電方向に対して垂直方向に5μmあるいはこれ以下の間隔で結晶が結晶粒界あるいは双晶によって分かたれた構造にすることの効果は以下の通りである。すなわち、Ba−Y−Cu酸化物の超電導電子に対するコヒーレンス長さは1nmである。したがって、電流の流れる方向に対して組成のずれを伴った結晶粒界が存在することは、電流容量の低下を招く。一方104A/cm2以上の電流容量を得ようとする場合、通電電流に伴って磁束が発生する。電極内に発生する磁束をピン止めしないと、磁束の移動によって電圧が発生し、超電導状態が破れてしまう。通電方向に対して垂直方向に結晶粒界あるいは双晶を形成し、これらの領域に対し磁束を固定するためのピン止め点としての役割を担わせる。
【0055】
以下、図15を用いて本発明の第13の実施例を説明する。酸化物超電導弱結合素子の基本構造は基板材1、超電導電極3a,3bおよび弱結合部9から成る。基板材として単結晶SrTiO3を用いる。超電導材はBa−Y−Cu酸化物であり、BとYおよびCuの組成比は2:1:3とする。これに対して酸素の組成比は6から7の間である。基板材としてはSrTiO3の単結晶で基板面が(100)配向をした状態のものを用いる。酸化物超電導弱結合素子の弱結合部に相当する基板部分には非晶質のAl2O313を用いた。
【0056】
酸化物超電導弱結合素子の製造工程は以下の通りである。すなわち、SrTiO3単結晶基板1上に幅0.8μm,間隔1μmのレジストパタンを形成する。Arによるイオンビームエッチング法によりSrTiO3基板1の露出部分のエッチングを行なう。エッチング溝14の深さは10nm程度である。つぎに、膜厚30nmのアルミナ膜13を電子ビーム蒸着法によって形成する。酸素原子の欠落を防ぐためにアルミナ膜13の形成は酸素ガス雰囲気中で行なう。弱結合以外の部位にはあらかじめレジストパタンを形成し、アルミナ膜が形成されないようにする。蒸着時の基板温度は室温である。蒸発源には単結晶アルミナ(サファイア)を用いる。このような条件で形成したアルミナ膜の構造は、X線回析測定の結果によれば非晶質であった。
【0057】
以上のごとく処理を施した基板1上にBa−Y−Cu酸化膜の形成を行なう。Ba−Y−Cu酸化膜はBa−Y−Cu酸化物ターゲットを用いて高周波マグネトロンスパッタリング法によって形成する。膜形成時の基板温度は400℃以内とする。膜厚は1μmとした。膜形成後酸素雰囲気中800℃〜1000℃の範囲で熱処理を施すことによって、Ba−Y−Cu酸化膜の結晶化を行なう。X線回析測定の結果によれば、同一条件でSrTiO3基板5上に形成したBa−Y−Cu酸化物の結晶構造は図14に示したごとく、ペロブスカイト型結晶の変形構造であり、c軸が膜面に対して垂直な方位を示す。また同一条件でアルミナ基板上に形成したBa−Y−Cu酸化物の結晶構造は図14に示したごとく、ペロブスカイト型結晶の変形構造であるが、結晶は特別な配向性を示さなかった。走査電子顕微鏡観察の結果によれば、電極部3a,3bにおけるBa−Y−Cu酸化物は基板のエッチングパタンに対応して線状の結晶の形状を有し、線状部分内において結晶粒界はほとんど存在しなかった。
【0058】
以上のごとく作製したBa−Y−Cu酸化物超電導弱結合素子の特性を測定した結果、素子の臨界電流は数エルステッドを周期として増減した。このことはBa−Y−Cu酸化物超電導弱結合素子がジョセフソン効果を有することを示すものである。さらに液体窒素温度においても素子の臨界電流は100μA存在し、臨界電流の磁場依存性等においてジョセフソン効果を示すことを確認した。
【0059】
電極膜部分の液体窒素温度における臨界電流密度は107A/m2以上であり、弱結合部分の100倍以上であった。一方、エッチング処理を施さないSrTiO3単結晶基板を下地としてBa−Y−Cu酸化膜を形成したとき、液体窒素温度における臨界電流密度は106A/cm2以下であった。
【0060】
以上述べたごとく、本実施例によれば、超電導デバイスに関して以下の効果が得られる。
(1)Ba−Y−Cu酸化物の超電導臨界温度は90K以上であり、液体窒素温度における超電導素子の動作が可能となった。
(2)Ba−Y−Cu酸化膜形成後の加工工程が無いため、Ba−Y−Cu酸化膜の超電導特性が劣化しない。
(3)磁束をピン止めする電極膜構造のため、電極膜の臨界電流密度が従来のBa−Y−Cu酸化膜と比較して高くなる。
【0061】
図16のように、図15と同じ構成の超電導デバイス上にCdSからなる厚さ約3μmの光導電性半導体16を形成した。これに光を照射したところ、入射光によって超電導電流が減少する超電導弱結合型の光検出デバイスを実現することができる。
【0062】
以上の実施例の半導体材料には(La0.9Ca0.1)2CuO4を用いた。これは(La1−XAX)2CuO4で、AはSr1−y−zBayCazの材料においてはx,yあるいはzを変化させることによって材料の結晶学的な性質を一定に保った状態で超電導転移温度を変えることが可能であるという特徴を用いている。すなわち超電導体材料がその組成を変えることにより、半導体あるいは常伝導体となる。半導体あるいは常伝導体としてこれらのセラミック材料に代えてCu,Au,Ni,Snなどの金属、Si,Ge,GaAs,InSb,InP,InAsなどの半導体を用いた場合にも同様の効果を得ることができた。
【0063】
また基板材料にはSrTiO3を用いたが、MgO,サファイア,GGG等のガーネット材料を用いてもよい。光導電性材料としてはCdSを用いたが、これに替わりSi,InP,InAs,InSb,GaAsを用いてもよい。
【0064】
以上の実施例においては超電導材料に(La0.9Sr0.1)2CuO4を用いたが、これに替えてYBa2Cu3O7−zなる組成を有する酸化物超電導材料を用いても、本発明の目的を充分に達することができることは言うまでもない。この材料において、Yに替えてLa,Yb,Lu,Tm,Dy,Sc,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Ho,Er等を用いても良く、同様の効果を得ることができる。
【0065】
【表1】
Figure 0003570418
【発明の効果】
本発明によれば、Ba−Y−Cu酸化物の超電導特性を劣化させることなく、低温で動作する超電導弱結合部分を有する超電導デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の超電導デバイスを説明するための断面図。
【図2】本発明の第1の実施例による超電導デバイスの一部分を示す断面図。
【図3】本発明の第2の実施例による超電導デバイスの一部分を示す断面図。
【図4】本発明の第3の実施例による超電導デバイスの一部分を示す断面図。
【図5】本発明の第4の実施例による超電導デバイスの一部分を示す断面図。
【図6】本発明の第5の実施例の超電導デバイスを示す断面図。
【図7】第6の実施例である超電導デバイスを示す断面図。
【図8】第7の実施例である超電導デバイスの一部分を示す断面図。
【図9】第8図の実施例である超電導デバイスを示す断面図。
【図10】本発明の第9の実施例による超電導デバイスの一部分を示す断面図。
【図11】本発明の第10の実施例を示す断面図。
【図12】第11の実施例を示す断面図。
【図13】第12の実施例を示す断面図。
【図14】Ba−Y−Cu酸化物の原子配列を示す図。
【図15】第13の実施例を示す断面図。
【図16】図15の超電導デバイスを光検出デバイスとして用いた実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1…基板、2…常伝導体又は半導体、3…超電導体、3a,3b…超電導電極、3e,3d…超電導配線、4…絶縁膜、5…制御電極、6…保護膜、7…絶縁膜、8…光導電性半導体、9…弱結合部、10…光、11…基板、21…Cu、22…酸素、23…Ba、24…Y、25…SrTiO3基板、26…SrTiO3膜、27…Al2O3膜、28…Ba−Y−Cu酸化物膜電極。

Claims (1)

  1. 半導体層もしくは常電導体層と、前記半導体層もしくは常電導体層と接して設けられた第一および第二の酸化物超伝導電極とを有し、
    前記第一の酸化物超伝導電極と前記第二の酸化物超伝導電極とは前記半導体層もしくは常電導体層上で離間しており、
    前記半導体層もしくは常電導体層上であって、かつ、前記離間した部分を埋めるように保護膜が設けられ、前記保護膜は前記第一および第二の酸化物超伝導電極上に延在して設けられ、
    前記第一および第二の酸化物超伝導電極と、前記半導体層もしくは常電導体層との界面は結晶格子が整合しており、かつ、前記第一および第二の酸化物超伝導電極を構成する酸化物超伝導体の結晶のc軸は前記界面に対して垂直であり、
    前記第一および第二の酸化物超伝導電極を流れる電流は前記第一および第二の酸化物超伝導電のc軸と垂直方向に流れることを特徴とする超伝導デバイス。
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