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JP3564082B2 - 低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、その製造方法および用途 - Google Patents

低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体、その製造方法および用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を高濃度で得るための新規な方法、該方法で得られる重合体およびその用途、すなわち、該重合体を含有してなる洗剤組成物等に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、低分子量のアクリル酸系重合体等は、洗剤ビルダー、スケール防止剤、キレート剤の用途に非常に有用であることが知られている。
【0003】
そして、この低分子量アクリル酸系重合体を高濃度で得るための製造方法としては、(I)特開昭62−270605、(II)特開平5−86125、(III)特開平4−268304、(IV)特開平6−287208、(V)特開平4−266904等で、多くの製造方法が開示されている。
【0004】
上記(I)の公報に開示されている方法では(メタ)アクリル酸および10重量%以下の共重合可能なエチレン性単量体を、0.01〜5重量%の無機リン酸(塩)の存在下、アルコールを40重量%以上含有する溶媒を用いて重合させている。
【0005】
上記(II)の公報に開示されている方法ではアクリル酸またはアクリル酸塩をpH6〜9の範囲に保ち、窒素を導入しながら水溶液重合することによって、95mol%以上のアクリル酸またはアクリル酸塩を有する水溶性ポリマーを得ている。このときの重合体の平均分子量は300〜10000であり、分散度は1.3〜2.3となっている。
【0006】
上記(III)の公報に開示されている方法では(メタ)アクリル酸を主体とする単量体を過酸化物系重合開始剤とともに加熱アルカリ水溶液に添加しながら重合しており、実施例では、苛性ソーダ水溶液を初期仕込して90℃まで昇温し、残りの原材料を滴下して重合を行った例が示されている。この方法を用いれば、数平均分子量が200〜2600の低分子量の重合体を得ることができる。
【0007】
上記(IV)の公報では、ポリアクリル酸系重合体を製造する方法として、次亜リン酸またはその塩類を連鎖移動剤として用い、アクリル酸を水溶液重合する方法が開示されている。この方法を用いれば、重量平均分子量20000以下、かつ、狭い分散度をもつ重合体を得ることができる。
【0008】
上記(V)の公報に開示されている方法では(メタ)アクリル酸を主体とする単量体を、水溶液中で、アルカリにより中和しながら重合すると共に反応系で発生する熱により重合媒体である水を反応系外に蒸発留去して、低分子量(メタ)アクリル酸塩系重合体を得ている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した各方法を用いても、低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を高濃度において効率よく製造することは、未だ出来ていない。
【0010】
具体的には、上記(I)の公報に開示されている技術では、重合終了時に溶媒に用いられているアルコールを留去する必要があり、製造施設・装置の面から制限を受けるだけでなく、製造費の上昇をまねく。重合触媒として無機リン酸(塩)を用いているので、後述する富栄養化の問題もある。
【0011】
上記(II)の公報に開示されている技術では、窒素を吹き込みながら重合を行っているが、単量体や開始剤、連鎖移動剤等の飛散を伴い、製造操作の面で種々の問題を生じる。
【0012】
上記(III)の公報に開示されている技術では、強アルカリ性条件で重合を行っている。このような中和状態の重合では、反応系の固形分濃度を高くすると、重合が進行するに伴って反応系の水溶液における粘度が顕著に上昇することになり、得られる重合体の分子量が大幅に増大する傾向にある。また、実施例では腐食はおこらないとのことであり、腐食防止策の詳細は不明であるが、常に腐食防止を図らなければならないという問題点がある。
【0013】
上記(IV)の公報に開示されている技術では、連鎖移動剤として次亜リン酸またはその塩類を用いているが、近年、河川、湖の富栄養化の防止のため、洗剤ビルダー用途では無リン化の傾向にあり、この傾向に背くと言う問題がある。
【0014】
上記(V)の公報に開示されている技術では、重合媒体の水を蒸発留去しながら重合を行っていて、留去水量により重合固形分が変化するため、重合度や重合度分布の制御が困難である。また、留去水の処理工程が増える上に、回収設備など製造施設・装置の面から制御を受ける。
【0015】
その他に、連鎖移動剤として亜硫酸塩を用いる方法もあるが、該方法ではボウ硝等の不純物が生成することにより重合体の純分が低下する。また重合時に発生する亜硫酸ガスの処理設備が必要となり、製造施設・装置の面から制限を受ける。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、色調の良好な低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を、装置の腐食など製造施設・装置上の問題を生じさせることなく、アルコールや水の大量除去を必要とせず、窒素の吹き込みも必要とせずして、かつ、環境面にも配慮して、効率的に製造する方法を提供することである。本発明の別の目的は、該方法で得られる重合体の好適な用途を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
発明者等は、上記従来の問題を解決すべく鋭意検討した結果、例えば、(メタ)アクリル酸を95mol%以上含む単量体を、中和度99mol%以下で、開始剤として過酸化水素と過硫酸塩を併用して重合することにより、そして、この重合の際に過酸化水素の添加条件を巧みに制御することにより、色調のよい低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を高濃度で効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明にかかる低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法は、炭素数が3〜6のモノカルボン酸(塩)モノエチレン性不飽和単量体(a)100〜95mol%および前記単量体(a)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(b)0〜5mol%(但し、(a)と(b)の合計量は100mol%である。)からなる単量体成分を、アルカリ物質の存在下で、重合触媒を使用しかつ高濃度で水溶液重合させる方法であって、前記重合触媒として過硫酸塩および過酸化水素を併用し、かつ、前記アルカリ性物質の全使用量は前記単量体成分の全酸基を中和するのに必要な量の99mol%以下とするとともに、前記過酸化水素の滴下を前記単量体成分の滴下終了時間よりも10分以上早く終了するようにし、かつ単量体(a)および単量体(b)はそれぞれ全使用量に対し70重量%以上を実質的に連続的に滴下することにより反応系に添加することを特徴とする。
【0020】
上記本発明の方法では、過酸化水素の滴下を前記単量体成分の滴下終了時間よりも10分以上早く終了するようにすることと、単量体成分滴下開始までの前記過酸化水素の投入量はその全投入量の10%以下となるように抑えることとを同時に行っても良い。
【0021】
上記本発明の方法によれば、中和度を99mol%以下にすることにより製造設備の腐食を回避し、効率よく製造することができる。また、過硫酸塩と過酸化水素を併用することにより、添加量を大幅に低減し良好に純度の高い低分子量の重合体を製造することができる。さらに、過酸化水素投入条件量を上記のように制御することにより、重合停止反応を抑制し、低分子量の重合体を高濃度で得ることができるようになる。
【0022】
上記本発明の方法においては、重合体の最終濃度は、重量平均分子量が20000未満では重量平均分子量に0.002を乗じた値以上、重量平均分子量が20000以上では重量平均分子量に0.08を乗じた値の平方根以上であることが出来る。すなわち、重量平均分子量に応じて高濃度であることが出来る。また、重合体の最終濃度が30重量%以上であることが出来る。
【0023】
上記本発明の方法によれば、炭素数が3〜6のモノカルボン酸(塩)モノエチレン性不飽和単量体(a)100〜95mol%及び前記単量体(a)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(b)0〜5mol%(但し(a)と(b)の合計量は100mol%である。)からなる単量体成分を重合して得られる低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体であって、重量平均分子量が1000〜30000、分散度が1.5〜5.0であり、該重合体の40重量%水溶液の含有過酸化水素濃度が5〜500ppmであり、該重合体の40重量%水溶液のハーゼンが300以下であり、高硬度水下におけるクレー分散能が0.47以上であることを特徴とする、低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を得ることが出来る。該重合体は、過酸化水素を500ppm以下含むことにより、色調の良い低分子量重合体となっている。
【0024】
本発明によれば、上記本発明の方法で得られる重合体を含有させることにより、高性能の洗剤組成物、水処理剤および顔料分散剤を得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明である、低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法、及び、該製造方法により得られた重合体を含有してなる洗剤組成物その他の用途について、以下に詳細に説明する。
【0026】
<低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体>
まず、本発明の製造方法における対象物である低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体について説明する。
【0027】
本発明における低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体とは、炭素数3〜6のモノカルボン酸(塩)モノエチレン性不飽和単量体(a)100〜95mol%および前記単量体(a)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(b)0〜5mol%(但し(a)と(b)の合計量は100mol%である。)からなる単量体成分を重合させてなるものである。
【0028】
重量平均分子量は1000〜30000であり、好ましくは2000〜20000、より好ましくは3000〜18000、特に好ましくは5000〜15000である。重量平均分子量が1000未満であるとキレート能が低下するので好ましくなく、30000を越えると分散能が低下するので好ましくない。
【0029】
本発明の低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体は、分散度が1.5〜5.0であるのが良く、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜4.0であり、洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れる。分散度が1.5以上である方が、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造が繁雑とならず、生産性が良好であり、カルシウムイオン捕捉能も上昇するため好ましく、5.0以下であるとカルシウムイオン捕捉能、クレー分散能、スケール防止能などの性能が高くなるため好ましい。
【0030】
なお、重量平均分子量及び分子量分布の決定方法については実施例の項で説明する。
【0031】
また、本発明において、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体とは、(メタ)アクリル酸系重合体のカルボキシル基が酸型でも、部分塩型でも、完全塩型でも、あるいはこれらの混合物でも良いことを表し、以下これら部分塩型と完全塩型を単に(塩)とのみ表記する。塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。これらの塩は単独で用いても良いし、2種以上の混合物として用いても良い。塩とする場合においての好ましい形態は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩であり、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0032】
<低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法>
次に、本発明における最も重要かつ本質的な部分である低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法について説明する。
【0033】
本発明における低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法は、水性溶媒中均一攪拌重合により、酸に対する中和度が99mol%以下であることを特徴とする。
【0034】
以下、本発明における低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法における各構成要件について、具体的にさらに詳細に説明する。
【0035】
単量体(a)としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸などのモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体;上記モノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体をナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;上記モノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体をアンモニア、あるいはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩、などが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)であり、特に好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0036】
単量体(b)としては、単量体(a)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体であれば特に制限はないが、水溶性の単量体が好ましく、具体的には、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体;上記ジカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体をナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;上記ジカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体をアンモニア、あるいはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体;上記スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体をナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属により部分中和した塩、または完全中和した塩;上記スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和単量体をアンモニア、あるいはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により部分中和した塩、または完全中和した塩;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシメチルアクリレートなどの水酸基を含有する不飽和単量体;などが挙げられ、上記化合物の中でも、より好ましくはジカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体、スルホン酸基を含有するモノエチレン性不飽和単量体、および、それらの部分または完全中和塩より選択される1種類または2種類以上の化合物である。
【0037】
<単量体の添加方法>
本発明の重合体の製造方法における単量体の添加方法について説明する。
【0038】
単量体(a)および単量体(b)は、全使用量に対し、70重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくは全量を、実質的に連続的に滴下することにより反応系に添加する。滴下の割合が70重量%未満(即ち初期仕込量が30重量%超)であると、重合初期に単量体(a)または(b)がブロック的に重合し、また高分子量化する恐れがあるため、カルシウムイオン捕捉能、高硬度水でのクレー分散能、スケール防止能のいずれかに悪影響を及ぼし好ましくない。単量体(a)および(b)の滴下時間は、30〜360分間、好ましくは60〜240分間、特に好ましくは90〜180分間である。滴下時間が30分間より短いと単量体(a)および(b)がブロック的に重合するため、また360分を越えると製造施設・装置の点から制限を受けるだけでなく、製造費の上昇を招く。何れもカルシウムイオン捕捉能、高硬度水でのクレー分散能、スケール防止能に悪影響を及ぼし好ましくない。なお、中和度については後述する。
【0039】
<重合開始剤>
本発明において、上記単量体(a)および単量体(b)を重合させるために用いられる開始剤系としては、1種類または2種類以上の過硫酸塩および過酸化水素を併用して用いている。また場合により、連鎖移動剤や多価金属イオンを用いてもよく(ここで、多価金属イオンは開始剤の分解促進剤として働く)、これらは両方同時に用いても良い。以下、具体的に説明する。
【0040】
(ラジカル重合開始剤)
上記過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムを挙げることができる。好ましくは過硫酸ナトリウムである。
【0041】
上記過酸化水素の添加量は、単量体1molに対して2.0〜10.0gであることが好ましく、3.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。
【0042】
上記過硫酸塩の添加量は、単量体1molに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに、得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
【0043】
上記過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.5〜3.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
【0044】
また、過酸化水素の添加方法としては、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは90重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過酸化水素は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
【0045】
過酸化水素の滴下は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%以下が滴下されていることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。単量体の滴下開始時間と同時に滴下を開始することがさらに好ましく、単量体滴下開始時間より5分〜60分経過する間に滴下を開始することがより好ましく、10分〜30分経過する間に滴下を開始することが特に好ましい。単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、分解速度の違いから過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、単量体の滴下開始時間から60分より遅く開始すると、過酸化水素の添加による連鎖移動反応が起こらなくなるため、重合初期から分子量が高くなる。
【0046】
過酸化水素の滴下終了時間は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することが必要であり、30分以上早く終了することが好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、過酸化水素としての効果が得られず無駄となり、また、過酸化水素が多量に残存する恐れがあることから、得られた重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくはない。
【0047】
また、過硫酸塩の添加方法としては、その分解性等を鑑み、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
【0048】
滴下時間においても特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤においては、単量体の滴下終了時間まで滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る効果を見出せる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良いものである。
【0049】
これら比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、或は特に併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、或は終了してから別の開始剤の滴下を開始しても良い。何れも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
【0050】
添加時のラジカル重合開始剤の濃度は、特には限定されないが、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。開始剤の濃度が5重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に60重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で問題となる。
【0051】
さらに、上記の過硫酸塩と過酸化水素に加え、他のラジカル重合開始剤を併用しても良い。他のラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物があげられる。
【0052】
(連鎖移動剤)
必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として、ラジカル重合開始剤と併用で連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、次亜リン酸塩、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸等が挙げられるが特に限定はされず、これらを単独で用いても良く、2種以上の併用系でも良い。
【0053】
使用量としては、重量比で開始剤量の2倍以内であることが好ましい。2倍を越えて使用しても、もはや添加効果は現れず、重合体の純分の低下を招き好ましくない。また、連鎖移動剤の添加方法、滴下するのであればその滴下時間は特には限定されず、適宜、場合に応じて設定すれば良い。
【0054】
(多価金属イオン)
さらには、場合により必要に応じて、ラジカル重合開始剤の分解促進剤として多価金属イオンを併用しても良い。使用できる有効な多価金属イオンとしては、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Cu、V2+、V3+、VO2+等が挙げられるが、好ましくはFe2+、Fe3+である。これらを単独で用いても良いし、2種以上の併用系でも良い。
【0055】
これら多価金属イオンは添加方法は特に限定されないが、単量体の滴下終了前までに添加することが好ましく、全量初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。100ppmを越えると添加した効果はもはや見られず、また得られた重合体の着色が大きく洗剤組成物として用いる場合などには使用できない恐れがあるため好ましくない。
【0056】
多価金属イオンの供給形態については特に制限はなく、重合反応系内でイオン化するものであれば、どのような金属化合物、金属であってもよい。このような金属化合物、金属としては、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NHSO・VSO・6HO]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH)V(SO・12HO]、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセトナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩、五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄などの金属酸化物、硫化銅(II)、硫化鉄などの金属硫化物、銅粉末、鉄粉末等を挙げることができる。装置から溶出する金属であってもよい。
【0057】
本発明で用いられる重合用単量体組成物としては、上述の単量体や重合開始剤、連鎖移動剤、多価金属イオン等の添加剤を含んでいる。なお、他に、本発明の重合反応を阻害しない範囲、できた水溶性重合体の物性を阻害しない範囲で、これら例示した添加剤以外のその他の添加剤等を単量体組成物に含んでもかまわない。
【0058】
<重合中和度及びその調整方法>
重合中(即ち単量体滴下中)の中和度は、単量体(a)および単量体(b)の酸量の合計量に対して、99mol%以下、好ましくは50〜95mol%以下である。中和度が50mol%未満であると過酸化水素の分解が十分に起こらず、重量平均分子量が高くなる傾向がある。また99mol%を越えると強アルカリ性の腐食性条件となるため、高温では製造設備が腐食する恐れがあり、さらに、アルカリによって過酸化水素が分解してしまうため、添加量が多くなってしまうという恐れもある。重合終了後(即ち単量体滴下終了後)の中和度は、残存する過酸化水素の分解を促進するために、単量体(a)および単量体(b)の酸量の合計量に対して、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上とする。
【0059】
単量体の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物:アンモニア;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上の混合物として用いても良い。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物であり、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。以下、本発明ではこれらのものを単に「中和剤」とのみ表記する。
【0060】
中和は単量体を反応器に供給する前に予め行われていても良いし、単量体と中和剤とを別々に反応器に供給して反応器内で中和を行っても良い。また、重合開始時から重合終了時までの中和度は上記の範囲内であれば一定である必要はなく、具体的にいえば、重合前半に中和度を低くしても良いし、あるいは、重合後半に中和度を高くしてもかまわない。
【0061】
添加時の中和剤の濃度は、特には限定されないが、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは30〜50重量%である。中和剤の濃度が10重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に70重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で好ましくない。
【0062】
<その他の重合条件>
本発明の重合体の製造方法におけるその他の重合条件として、重合時の温度、濃度、圧力、溶媒が挙げられる。これらについて順に具体的に説明する。
【0063】
(重合温度)
重合時における温度は、初期仕込時には特に限定されず、単量体或は重合開始剤の滴下開始による重合開始時から重合終了時(即ち、単量体及び重合開始剤等全ての滴下が終了し、場合により滴下終了後にさらに熟成時間を設定する時はその終了時)までは60℃以上が好ましく、さらに90℃以上が好ましく、重合溶媒の沸点近傍が特に好ましく、重合溶媒の沸点が最も好ましい。重合終了後にpH調整、濃度調整を行う際は特に限定されず適宜行えば良い。
【0064】
重合時の温度を60℃未満とすると、重合開始剤の分解効率が悪くなり、得られる重合体における単量体の残存量が多くなる可能性があるので好ましくない。また、沸点で重合を行うことは、温度制御が非常に容易となり、そのため重合の再現性が良く、得られる重合体においても品質的に非常に安定したものとなり、非常に好ましいものである。ただし、大きな発泡がある場合は沸点以下が好ましい。
【0065】
(重合濃度)
得られる重合体の最終濃度は、下記不等式により表される。
【0066】
Mwが20000未満の時、C≧A×Mw
Mwが20000以上の時、C≧(B×Mw)1/2
ここで、C=得られる重合体の最終濃度;A=0.002かつB=0.08、好ましくはA=0.0025かつB=0.125、より好ましくはA=0.003かつB=0.18; Mw=得られる重合体の重量平均分子量である。
もしくは、得られる重合体の最終濃度は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは33重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上、さらにより好ましくは37重量%以上、特に好ましくは40〜70重量%であり、これに見合うように滴下物の濃度調整を行う。重合体の最終濃度が上記範囲未満であると、結果的に重合中の濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に70重量%を超えると、結果的に重合中の濃度が非常に高くなるため、反応液が非常に高粘度になり、均一重合とならず、また非常に高分子量化する恐れがあり、さらには得られる重合体の溶液粘度が非常に高くなりハンドリング面からも、非常に好ましくない。なお、重合終了後の重合体の最終的な濃度は濃縮や希釈により適宜調整すれば良い。
【0067】
(重合圧力)
重合時における圧力は、特に限定されず、加圧、常圧(大気圧)、減圧いずれでも良く場合により適宜設定すれば良いが、常圧が好ましい。
【0068】
(溶媒)
本発明の重合体の製造方法における溶媒としては、重合に用いる単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えても良いが、好ましくは水性溶媒であり、80重量%以上が水であることが好ましく、水単独であることが特に好ましい。
【0069】
上記有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類等が挙げられ、これらを単独で用いても良く、2種以上の混合物で用いても良いが、好ましくはイソプロピルアルコールである。イソプロピルアルコールには連鎖移動剤としての効果があり、重合体をより低分子量化することができる。これらの有機溶媒は重合終了後に除去しても良い。
【0070】
溶媒は、単量体、中和剤、重合開始剤やその他添加剤および溶媒の全使用量の10重量%以上を初期仕込みするのが好ましく、12重量%以上を初期仕込みするのがより好ましく、15重量%以上を初期仕込みするのが特に好ましい。10重量%未満では、重合開始時の単量体濃度が高くなり、高分子量化するおそれがある。
【0071】
<色調の良い低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体>
本発明において、色調の良い低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体とは、炭素数3〜6のモノカルボン酸(塩)モノエチレン性不飽和単量体(a)100〜95mol%および前記単量体(a)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(b)0〜5mol%からなる単量体成分を重合して得られるものであり、40重量%での該重合体水溶液のハーゼンは300以下である。
【0072】
重量平均分子量は1000〜30000であり、好ましくは2000〜20000、より好ましくは3000〜18000、特に好ましくは5000〜15000である。重量平均分子量が1000未満であるとキレート能が低下するので好ましくなく、30000を越えると分散能が低下するので好ましくない。
【0073】
分散度は1.5〜5.0であり、好ましくは2.0〜5.0、より好ましくは2.0〜4.0、特に好ましくは2.5〜4.0であり、洗剤ビルダーとして使用した場合の再汚染防止能に優れる。分散度が1.5未満である(メタ)アクリル酸(塩)系重合体は製造が繁雑となり、生産性が悪化し、カルシウムイオン捕捉能も低下するため好ましくなく、5.0を越えるとカルシウムイオン捕捉能、クレー分散能、スケール防止能などの性能が低下するため好ましくない。
【0074】
40重量%での該重合体水溶液の過酸化水素濃度は5〜500ppmであり、好ましくは5〜300ppm、より好ましくは5〜200ppm、特に好ましくは5〜100ppmである。過酸化水素濃度が5ppm未満であると、重合体の着色抑制効果が得られないため、好ましくなく、500ppmを超えると、安全性に問題を生じるため好ましくない。
【0075】
ハーゼンは300以下であり、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらにより好ましくは90以下、特に好ましくは80以下である。ハーゼンが300を超えるとこの重合体を添加した組成物の着色が顕著になるため好ましくない。
高硬度水下におけるクレー分散能は0.47以上であり、好ましくは0.47〜0.60である。
【0076】
なお、重量平均分子量分散度、過酸化水素濃度、ハーゼン及び高硬度水下におけるクレー分散能の決定方法については実施例の項で説明する。
【0077】
<本発明の製造方法により得られる低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の好適な用途>
(洗剤組成物)
本発明の洗剤組成物においては、本発明の重合体の配合量が洗剤組成物全体の1〜20重量%であり、界面活性剤の配合量が洗剤組成物全体の5〜70重量%であると好ましく、場合により酵素を5重量%以下の範囲で添加しても良い。
【0078】
本発明の重合体の配合量が1重量%未満であると添加効果が現れず、また20重量%を超えるともはや添加した効果が洗浄力の向上につながらず経済的にも不利となり好ましくない。また、洗剤組成物の主剤である界面活性剤の量が上記の範囲を外れると、他の成分とのバランスが崩れ洗剤組成物の洗浄力に悪影響を及ぼす恐れがあり好ましくない。酵素を配合した場合、洗浄力の向上に寄与するが、5重量%を超えると、もはや添加した効果が現れず経済的にも不利となり好ましくない。
【0079】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤およびカチオン界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用することができる。アニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。
【0080】
ノニオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。
【0081】
両性界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができ、カチオン界面活性剤としては、特には限定されないが、例えば、第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0082】
本発明における洗剤組成物に配合される酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等を使用することができる。特に、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼおよびアルカリセルラーゼが好ましい。
【0083】
さらに、本発明の洗剤組成物には、必要に応じて、公知のアルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、蛍光剤、漂白剤、漂白助剤、香料等の洗剤組成物に常用される成分を配合してもよい。また、ゼオライトを配合してもよい。
【0084】
アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等を用いることができる。キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、クエン酸等を必要に応じて使用することができる。あるいは公知の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを本発明の効果を損なわない範囲で使用しても良い。
【0085】
(水処理剤)
水処理剤は、好ましくは、本発明の重合体のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を配合した組成物とすることもできる。いずれの場合でも、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で公知の水溶性重合体を含んでもよい。
【0086】
(顔料分散剤)
顔料分散剤は、好ましくは、本発明の重合体のみからなり、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0087】
何れの場合においても、この分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイ等の無機顔料等の分散剤として良好な性能を発揮する。例えば、本発明の顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0088】
顔料分散剤の使用量は、顔料100重量部に対して0.05〜2.0重量部が好ましい。使用量が0.05部より少ないと、充分な分散効果が得られず、逆に2.0重量部を超えると、もはや添加量に見合った効果が得られず経済的にも不利となる恐れがあるため好ましくない。
【0089】
(繊維処理剤)
繊維処理剤は、本発明の重合体を単独で使用してもよいが、染色剤、過酸化物、および界面活性剤等の添加剤を配合した組成物として使用することもできる。上記添加剤としては、繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。本発明の重合体と上記添加剤の比率は特に限定されるものではないが、本発明の重合体1重量部に対して、上記添加剤を、好ましくは0.1〜100重量部、より好ましくは0.2〜80重量部、さらに好ましくは1〜50重量部という割合で配合する。上記添加剤の配合量が0.1重量部未満であると、添加効果が不十分になる傾向があり、100重量部を超えると、本発明の重合体の効果が発揮できない傾向がある。また、本発明の重合体を含む繊維処理剤は、性能や効果を阻害しない範囲で、さらに、本発明の重合体以外の重合体を含んでいてもかまわない。繊維処理剤中の本発明の重合体の含有量は、特に限定はされないが、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%、より好ましくは5〜100重量%である。
【0090】
本発明の重合体を含む繊維処理剤を使用できる繊維は特に限定はされないが、例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維;ナイロン、ポリエステル等の化学繊維;羊毛、絹糸等の動物性繊維;人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品などが挙げられる。
【0091】
本発明の重合体を含む繊維処理剤を精錬工程に利用する場合には、本発明の重合体とアルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体と過酸化物とアルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合するのが好ましい。
【0092】
【実施例】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下では、「%」は「重量%」を示す。物性の測定方法は下記のとおりである。
【0093】
<物性測定方法>
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
▲1▼ GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定に用いたカラムはGF−7M HQ(昭和電工製)であり、移動相はリン酸水素二ナトリウム12水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(何れも試薬特級、以下測定に用いる試薬は全て特級を使用)に純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45ミクロンのメンブランフィルターで濾過した水溶液を用いた。
【0094】
▲2▼ ポンプはL−7110(日立製)を使用し、移動相の流量を0.5ml/minに設定して、検出器としてはUVで波長214nm(日本ウォーターズ製モデル481型)とした。その際、カラム温度は35℃一定とした。
【0095】
▲3▼ さらに検量線としては、ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学製)を用いた。
【0096】
▲4▼ サンプルを移動相の溶媒で希釈し0.1重量%サンプル溶液を調製した。上記検量線とサンプル溶液から、重合体の重量平均分子量を測定した。
【0097】
(固形分濃度の測定方法)
▲1▼ 0.1mgまで精秤したアルミカップにサンプルを約1g採り、精秤した。
【0098】
▲2▼ 上記アルミカップを110℃に設定した乾燥機に入れ、2時間乾燥させた。
【0099】
▲3▼ 乾燥後、アルミカップをデシケーターに移し、10分間室温放冷した後に精秤した。
【0100】
▲4▼ 乾燥後のサンプルの重量を乾燥前のサンプルの重量で割った数値に100を乗じた値を固形分濃度とした。
【0101】
(過酸化水素含有量の測定方法)
▲1▼ 200mlマイヤーフラスコにヨウ化カリウム2.0gを採り、純水100mlを加え、マグネチックスターラーで攪拌し、溶解後遮光紙で覆った。
【0102】
▲2▼ 9mol/l硫酸 30mlをホールピペットで加えた。
【0103】
▲3▼ 次いで、▲2▼のフラスコに試験サンプル(重合体)を5g添加し、2分攪拌した。
【0104】
▲4▼ 0.01mol/lチオ硫酸ナトリウム水溶液を黄色が淡くなるまで滴下した。さらに1%デンプン溶液1mlを加え、ヨウ素デンプン色が消えるまで滴定した。
【0105】
▲5▼ 以上の測定結果から下式(式1)により、過酸化水素含有量を求めた。
【0106】
【数1】
Figure 0003564082
【0107】
(ハーゼンの測定方法)
▲1▼ 重合体水溶液のハーゼンは、分光式色差計SE−2000(日本電色工業製)を用いて測定した。
【0108】
(カルシウムイオン捕捉能)
▲1▼ まず、検量線用カルシウムイオン標準液として、塩化カルシウム2水和物を用いて、0.01mol/l、0.001mol/l、0.0001mol/lの水溶液をそれぞれ50g調製し、4.8%NaOH水溶液でpHを9〜11の範囲に調整し、さらに4mol/lの塩化カリウム水溶液(以下4M−KCl水溶液と略す)を1ml添加した後、マグネチックスターラーを用いて十分に攪拌して検量線用サンプル液を作成した。また、試験用カルシウムイオン標準液として、同じく塩化カルシウム2水和物を用いて、0.0012mol/lの水溶液を必要量(1サンプルにつき50g使用)調製した。
【0109】
▲2▼ 次いで、100ccビーカーに試験サンプル(重合体)を固形分換算で10mg秤量し、▲1▼で調製した試験用のカルシウムイオン標準液50gを添加しマグネチックスターラーを用いて十分に攪拌した。さらに、検量線用サンプル液と同様に、4.8%NaOH水溶液でpHを9〜11の範囲に調整し、4M−KCl水溶液を1ml添加して試験用サンプル液を作成した。
【0110】
▲3▼ このようにして作成した検量線用サンプル液、試験用サンプル液を、オリオン社製イオンアナライザーEA920を用いて、オリオン社製カルシウムイオン電極93−20により測定を行った。
【0111】
▲4▼ 検量線及び試験用のサンプル液の測定値から、サンプル(重合体)が捕捉したカルシウムイオン量を計算により求め、重合体固形分1g当りの捕捉量を炭酸カルシウム換算のg数で表わし、この値をカルシウムイオン捕捉能値とした。
【0112】
(高硬度水下におけるクレー分散能)
▲1▼ まず、グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、1mol/lのNaOH水溶液60mlにイオン交換水を加えて600gとしたグリシン緩衝溶液を調製した。
【0113】
▲2▼ 塩化カルシウム2水和物を0.3268g、▲1▼の調製液60gを取って、純水を加えて1000gとし、分散液を調製した。また、固形分換算で0.1%の重合体水溶液を調製した。
【0114】
▲3▼ 約30ccの実験に用いる一般的な試験管に、JIS試験用粉体I,8種(関東ローム,微粒:日本粉体工業技術協会)のクレー0.3gを入れ、▲2▼の分散液27g、重合体水溶液3gを添加した。この時、試験液のカルシウム濃度は炭酸カルシウム換算200ppmとなっている。
【0115】
▲4▼ 試験管をパラフィルムで密封した後、クレーが全体に分散するように軽く振り、さらに上下に20回振った。この試験管を直射日光の当たらないところに20時間静置した後、分散液の上澄みをホールピペットで5ml採取した。
【0116】
▲5▼ この液をUV分光器を用いて、波長380nmの条件で、1cmのセルで吸光度(ABS)を測定し、この値を高硬度水下におけるクレー分散能値とした。
【0117】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0118】
(実施例1−1)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコにイオン交換水(以下純水と記す)193.0gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%アクリル酸水溶液(以下80%AAと記す)450.0gを重合開始から180分間に渡って、35%過酸化水素水溶液114.3g(以下35%Hと記す)を重合開始から60分間に渡って、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下15%NaPSと略す)133.3gを重合開始から190分間に渡って、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下48%NaOHと記す)333.3gを重合開始から180分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下した。さらに全ての滴下終了後20分間に渡って、沸点還流状態を維持して、重合を完了した。
【0119】
重合終了後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 62.5gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度39.5%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−1(以下、重合体1−1とする)を得た。得られた重合体1−1の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0120】
(実施例1−2)
実施例1−1において35%H添加量を57.1gとした以外は、同様に重合を行った。その後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 62.5gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度41.5%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−2(以下、重合体1−2とする)を得た。得られた重合体1−2の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、およびハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0121】
(実施例1−3)
実施例1−2において35%Hを重合開始から90分にわたって連続的に均一速度で滴下した以外同様に重合を行った。その後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 62.5gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度41.7%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−3(以下、重合体1−3とする)を得た。得られた重合体1−3の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0122】
(実施例1−4)
実施例1−1において35%H滴下量を85.7gとし、重合開始から150分にわたって連続的に均一速度で滴下した以外は同様に重合を行った。その後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 62.5gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度40.5%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−4(以下、重合体1−4とする)を得た。得られた重合体1−4の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0123】
(実施例1−5)
実施例1−4において35%H滴下量を68.6gとした以外は同様に重合を行った。その後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 62.5gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度41.0%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−5(以下、重合体1−5とする)を得た。得られた重合体1−5の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0124】
(実施例1−6)
実施例1−5において48%NaOH滴下量を375.0gとした以外は同様に重合を行った。その後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH20.8gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度41.3%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−6(以下、重合体1−6とする)を得た。得られた重合体1−6の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0125】
(実施例1−7)
実施例1−6において35%H滴下量を114.3gとした以外は同様に重合を行った。その後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 20.8gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度39.9%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−7(以下、重合体1−7とする)を得た。得られた重合体1−7の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0126】
(実施例1−8)
実施例1−4において15%NaPS滴下量を83.3g、および48%NaOH滴下量を375.0gとした以外は同様に重合を行った。その後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 20.8gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。このようにして、固形分濃度42.1%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−8(以下、重合体1−8とする)を得た。得られた重合体1−8の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0127】
(実施例1−9)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水195.9gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AA 260.9gを重合開始5分後から175分間に渡って、37%アクリル酸ナトリウム水溶液(以下37%SAと記す)533.8gを重合開始30分後から150分間に渡って、35%H 54.9gを重合開始から150分間に渡って、15%NaPS 106.7gを重合開始から190分間に渡って、48%NaOH 200.0gを重合開始5分後から180分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下して重合を完了した。
【0128】
重合終了後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 20.8gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。さらに沸点還流状態を60分間維持しながら反応溶液を濃縮し、固形分濃度40.0%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−9(以下、重合体1−9とする)を得た。得られた重合体1−9の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0129】
(実施例1−10)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水231.3gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AA 450.0gを重合開始5分後から235分間に渡って、35%H 61.1gを重合開始から180分間に渡って、15%NaPS 106.7gを重合開始から250分間に渡って、48%NaOH 375.0gを重合開始5分後から235分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下して重合を完了した。
【0130】
重合終了後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 20.8gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。さらに沸点還流状態を90分間維持し、固形分濃度40.1%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−10(以下、重合体1−10とする)を得た。得られた重合体1−10の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例1−11)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水272.3gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AA 450.0gを重合開始から240分間に渡って、35%H 57.2gを重合開始15分後から185分間に渡って、15%NaPS 83.3gを重合開始から250分間に渡って、48%NaOH 375.0gを重合開始から240分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下して重合を完了した。
【0131】
重合終了後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 25.0gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。さらに沸点還流状態を90分間維持し、固形分濃度39.6%、最終中和度96%のポリアクリル酸ナトリウム1−11(以下、重合体1−11とする)を得た。得られた重合体1−11の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例1−12)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水258.8gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AA 450.0gを重合開始から240分間に渡って、35%H 58.9gを重合開始15分後から165分間に渡って、15%NaPS 102.8gを重合開始から250分間に渡って、48%NaOH 375.0gを重合開始から240分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下して重合を完了した。
【0132】
重合終了後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 25.0gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。さらに沸点還流状態を90分間維持し、固形分濃度39.6%、最終中和度96%のポリアクリル酸ナトリウム1−12(以下、重合体1−12とする)を得た。得られた重合体1−12の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例1−13)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水1384.8gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AA 450.0gを重合開始5分後から235分間に渡って、35%H 61.1gを重合開始から180分間に渡って、15%NaPS 106.7gを重合開始から250分間に渡って、48%NaOH 375.0gを重合開始5分後から235分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下して重合を完了した。
【0133】
重合終了後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 25.0gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。さらに沸点還流状態を90分間維持し、固形分濃度20.6%、最終中和度96%のポリアクリル酸ナトリウム1−13(以下、重合体1−13とする)を得た。得られた重合体1−13の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例1−14)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水179.1gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、還流状態を維持しながら、80%AA 418.5gを重合開始5分後から175分間に渡って、37%SA 89.2gを重合開始5分後から175分間に渡って、35%H 68.6gを重合開始から120分に渡って、15%NaPS 133.3gを重合開始から190分に渡って、48%NaOH 262.4gを重合開始5分後から175分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下して重合を完了した。
【0134】
重合終了後、沸点還流状態を30分間維持したまま48%NaOH 104.2gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。さらに沸点還流状態を60分間維持し、固形分濃度40.1%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−14(以下、重合体1−14とする)を得た。得られた重合体1−14の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
(実施例1−15)
温度計、攪拌機、及び還流冷却器を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水231.8gを初期仕込し、攪拌下、該純水を沸点還流状態まで昇温した。次いで、攪拌下、該純水の温度を98℃に維持したまま、80%AA 450.0gを重合開始5分後から175分間に渡って、35%H85.7gを重合開始から120分に渡って、15%NaPS 66.7gを重合開始から190分に渡って、48%NaOH 375.0gを重合開始5分後から175分に渡って、それぞれ別々の滴下ノズルから連続的に均一速度で滴下して重合を完了した。
【0135】
重合終了後、反応溶液の温度を98℃に30分間維持したまま48%NaOH20.8gを攪拌下、反応溶液に徐々に滴下して中和した。さらに沸点還流状態まで昇温して60分間維持し、固形分濃度40.3%、最終中和度95%のポリアクリル酸ナトリウム1−15(以下、重合体1−15とする)を得た。得られた重合体1−15の重量平均分子量Mw、過酸化水素含有量、ハーゼン、カルシウムイオン捕捉能、および、クレー分散能を測定した。その結果を表1に示す。
【0136】
なお、上記各実施例における反応条件をまとめて表2に示した。
【0137】
【表1】
Figure 0003564082
【0138】
【表2】
Figure 0003564082
【0139】
表1の結果から明らかなように、本発明にかかる重合体1−1〜1−15は、全て重量平均分子量が20000以下であり、高濃度の条件下であっても一段重合により低分子量かつ、分散度および高硬度水下におけるクレー分散能も良好な重合体が得られることがわかった。また、各重合体水溶液のハーゼンは300以下であり、非常に色調のよい重合体を得られることがわかった。
【0140】
以下では、実施例1−1〜1−15で得られた本発明の重合体について洗剤組成物としての用途の評価を行うため、次に示す通りの方法により再汚染防止能について測定を行った。その結果を表3にまとめた。
【0141】
<再汚染防止能>
▲1▼ 洗濯科学協会より入手したJIS−L0803綿布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計ND−1001DP型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
【0142】
▲2▼ 塩化カルシウム2水和物0.294gに純水を加えて5000gとし、硬水を調製した。硬水とすすぎ用の水道水を25℃の恒温槽につけておいた。
【0143】
▲3▼ ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lとクレー1gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌した。その後、白布10枚を入れ100rpmで1分間攪拌した。
【0144】
▲4▼ 5%炭酸ナトリウム水溶液4g、5%直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(以下LASと略す)水溶液4g、ゼオライト0.15g、固形分換算で1%の重合体水溶液5gをポットに入れ、100rpmで10分間攪拌した。
【0145】
▲5▼ 手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。これを2回行った。
【0146】
▲6▼ ▲3▼から▲5▼を3回繰り返した。
【0147】
▲7▼ 白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度白布の白度を反射率にて測定した。
【0148】
▲8▼ 以上の測定結果から下式(式2)により再汚染防止率を求めた。
【0149】
【数2】
Figure 0003564082
【0150】
【表3】
Figure 0003564082
【0151】
表3から明らかなように、本発明の製造方法で得られる重合体は、優れた再汚染防止能を有している。
【0152】
以下では、実施例1−1〜1−15で得られた本発明の重合体について洗剤組成物としての用途の評価をさらに行うため、次に示す通りの方法により洗浄能について測定を行った。その結果を表4にまとめた。
【0153】
<洗浄能>
▲1▼ 洗濯科学協会より入手したJIS−L0803綿布を5cm×5cmに切断し、白布を作成した。また湿式人工汚染布も洗濯科学協会より入手した。白布および汚染布を予め日本電色工業社製の測色色差計ND−1001DP型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
【0154】
▲2▼ 塩化カルシウム2水和物0.294gに純水を加えて5000gとし、硬水を調製した。硬水とすすぎ用の水道水を25℃の恒温槽につけておいた。
【0155】
▲3▼ ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水500mlと汚染布5枚、白布5枚をポットに入れ、100rpmで1分間攪拌した。
【0156】
▲4▼ 5%炭酸ナトリウム水溶液2g、5%LAS水溶液2g、ゼオライト0.075g、固形分換算で1%の重合体水溶液10gをポットに入れ、100rpmで10分間攪拌した。
【0157】
▲5▼ 手で白布と汚染布の水を切り、25℃にした水道水500mlをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌した。これを2回行った。
【0158】
▲6▼ 白布と汚染布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度白布と汚染布の白度を反射率にて測定した。
【0159】
▲7▼ 以上の測定結果から下式(式3)により洗浄率を求めた。
【0160】
【数3】
Figure 0003564082
【0161】
【表4】
Figure 0003564082
【0162】
表4から明らかなように、本発明の製造方法で得られる重合体は、優れた洗浄能を有している。
【0163】
表3と表4の結果を合わせることにより、本発明の洗剤組成物が非常に優れていることが明らかとなった。
【0164】
以下では、実施例1−1〜1−15で得られた本発明の重合体について、水処理剤としての用途の評価を行うため、次に示す通りの方法により炭酸カルシウムスケール防止能について測定を行った。その結果を表5にまとめた。
【0165】
<炭酸カルシウムスケール防止能>
▲1▼ まず、塩化カルシウム2水和物の1.56%水溶液および3.0%の炭酸水素ナトリウム水溶液、固形分換算で0.2%の重合体の水溶液を調製した。
【0166】
▲2▼ 次に、容量225mlのガラス瓶に純水を170g入れ、1.56%塩化カルシウム2水和物水溶液を10g、固形分換算で0.2%重合体の水溶液3gを混合し、さらに炭酸水素ナトリウム水溶液10gおよび塩化ナトリウム7gを加えて、全量を200gとした。
【0167】
▲3▼ 得られた炭酸カルシウム530ppmの過飽和水溶液を密栓して70℃で加熱処理を行った。
【0168】
▲4▼ 冷却した後、沈殿物を0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液をJISのK0101に従い、分析を行った。
【0169】
▲5▼ 以上の測定結果から下式(式4)により炭酸カルシウムスケール抑制率(%)を求めた。
【0170】
【数4】
Figure 0003564082
【0171】
【表5】
Figure 0003564082
【0172】
表5から明らかなように、本発明の製造方法で得られる重合体は、非常に優れたスケール防止能を有している。そのため、水処理剤としても有効に利用できることがわかった。
【0173】
以下では、実施例1−1〜1−15で得られた本発明の重合体について、顔料分散剤としての用途の評価を行うため、次に示す通りの方法によりB型粘度計を用いて無機顔料分散液の粘度の測定を行った。その結果を表6にまとめた。
【0174】
<分散液の調製とその粘度の測定>
▲1▼ まず、10wt%重合体水溶液を調製した。
【0175】
▲2▼ 次に、600mlポリ容器に純水150gを入れ、特殊機化工業製のTKホモミクサー(撹拌部はラボディスパーMR−L型を使用)を用い1000rpmで攪拌しながら、軽質炭酸カルシウム70g、重質炭酸カルシウム105g及びアルファコート175gをこの順に徐々に添加した。添加中、顔料が分散しにくくなれば上記10wt%重合体水溶液を適宜加えた。
【0176】
▲3▼ すべての顔料を添加後、上記10wt%重合体水溶液を総量で10.5gになるよう加え、3000rpmでさらに15分間攪拌した。
【0177】
▲4▼ 攪拌後25℃の恒温槽に30分入れた。その後、B型粘度計を用い、3分間ローターを回転させて粘度を測定した。
【0178】
【表6】
Figure 0003564082
【0179】
表6から明らかなように、本発明の製造方法で得られる重合体は、非常に優れた無機顔料分散能を有している。そのため、顔料分散剤としても有効に利用できることがわかった。
【0180】
【発明の効果】
本発明によれば、重合に際し、中和度を99mol%以下にすることにより、製造設備の腐食を回避し、低分子量重合体を高濃度で効率よく製造することができる。また、過硫酸塩と過酸化水素を併用することにより、添加量を大幅に低減し良好に純度の高い低分子量の重合体を製造することができる。さらに、過酸化水素投入条件を規定することにより重合停止反応を抑制し、低分子量の重合体を得ることができる。
【0181】
本発明の方法で得られる低分子量重合体は、洗剤組成物や水処理剤、顔料分散剤などの用途に、好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 炭素数が3〜6のモノカルボン酸(塩)モノエチレン性不飽和単量体(a)100〜95mol%および前記単量体(a)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(b)0〜5mol%(但し、(a)と(b)の合計量は100mol%である。)からなる単量体成分を、アルカリ物質の存在下で、重合触媒を使用しかつ高濃度で水溶液重合させる方法であって、前記重合触媒として過硫酸塩および過酸化水素を併用し、かつ、前記アルカリ性物質の全使用量は前記単量体成分の全酸基を中和するのに必要な量の99mol%以下とするとともに、前記過酸化水素の滴下を前記単量体成分の滴下終了時間よりも10分以上早く終了するようにし、かつ単量体(a)および単量体(b)はそれぞれ全使用量に対し70重量%以上を実質的に連続的に滴下することにより反応系に添加することを特徴とする、低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法。
  2. 重合体の最終濃度が、重量平均分子量が20000未満では重量平均分子量に0.002を乗じた値以上、重量平均分子量が20000以上では重量平均分子量に0.08を乗じた値の平方根以上である、請求項に記載の低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法。
  3. 重合体の最終濃度が30重量%以上である、請求項に記載の低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法。
  4. 請求項1からまでのいずれかに記載の方法で得られる、低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体。
  5. 炭素数が3〜6のモノカルボン酸(塩)モノエチレン性不飽和単量体(a)100〜95mol%及び前記単量体(a)と共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体(b)0〜5mol%(但し(a)と(b)の合計量は100mol%である。)からなる単量体成分を重合して得られる低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体であって、重量平均分子量が1000〜30000、分散度が1.5〜5.0であり、該重合体の40重量%水溶液の含有過酸化水素濃度が5〜500ppmであり、該重合体の40重量%水溶液のハーゼンが300以下であり、高硬度水下におけるクレー分散能が0.47以上であることを特徴とする、低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体。
  6. 高硬度水下におけるクレー分散能が0.47〜0.60である、請求項5記載の低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体。
  7. 請求項4から6のいずれかに記載の低分子量(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を含有してなる洗剤組成物。
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