JP3562042B2 - セラミックス基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ICの回路基板やパッケージをはじめとする電子デバイス等に使用されるセラミックス基板、特に高い熱伝導率を有し、放熱性に優れた窒化アルミニウムからなるセラミックス基板、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウム(AlN)の熱伝導率は、理論値としては320W/m・Kであり、この値は金属アルミニウムの1.5倍に相当する。この高い熱伝導率に加えて、窒化アルミニウムは高い絶縁性と機械的強度を備え、金属導体と容易に接合できるといった優れた特性を有するため、ICの回路基板やパッケージ材料として注目を集めている。
【0003】
一般に、窒化アルミニウムを回路基板やパッケージとして用いる場合、窒化アルミニウム基板の表面を研磨加工した上で、その基板表面にメタライズ層又はめっき層等の金属化層を形成することが必要である。又、この金属化層を介して窒化アルミニウム基板上に表面平滑性に優れたポリイミド層を形成し、そのポリイミド層上に微細配線を形成して回路基板とすることも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、窒化アルミニウム基板表面に形成した金属化層には欠けや膨れ等が発生しやすく、金属化層の層厚が薄くなると欠けや膨れの発生が増大する傾向にあり、特に層厚が20μm以下においてその傾向が顕著になるという欠点があった。同様に、この金属化層の上に設けるポリイミド層においても、欠けが発生したり、ポリイミド層形成時に発泡が生じるという問題があった。
【0005】
これらの欠陥の発生は、窒化アルミニウム基板に存在する空孔が原因ではないかと考えられている。即ち、窒化アルミニウム基板は本質的に粉末を焼結して得た焼結体であるため、一般的に直径20〜50μm程度の球形状の空孔の存在が避けられず、基板表面に存在する空孔の上で金属化層やポリイミド層に欠けや膨れ等の欠陥が発生するとされている。
【0006】
そこで従来は、金属化層やポリイミド層を厚くすることにより、その欠けや膨れ等の欠陥の発生を低減させる方法が採られていた。しかし、金属化層の層厚が厚くなると、回路配線を微細化させる場合に配線間の絶縁を十分確保することができなくなる。このため、金属化層を厚くすることには限界があり、特に線幅100μm以下のような微細配線を形成する場合は、配線間の絶縁確保のため層厚の薄い金属化層が求められ、中でも層厚20μm以下の金属化層ではその欠けや膨れの発生が大きな問題となっていた。
【0007】
また、ポリイミド層についても層厚が厚くなると欠け等の欠陥が発生しやすいので、層厚を300μm以上とすることにより微細配線形成時の欠けや膨れ等を低減することが行われている。しかし、この方法では、回路配線の電気特性には優れるものの、熱伝導性に劣るポリイミド層が極めて厚くなるため、回路基板の放熱性の低下を招くという問題があった。
【0008】
このように、従来の窒化アルミニウム基板においては、その表面上に形成する金属化層やポリイミド層に欠けや膨れ等の欠陥が発生しやすく、これらの欠陥をなくすため金属化層やポリイミド層の厚さを厚くすれば、回路配線の微細化に支障を来したり、放熱性を低下させるといった問題があった。
【0009】
本発明は、かかる従来の事情に鑑み、表面に形成する金属化層やポリイミド層に欠けや膨れ等の欠陥が発生せず、特に微細配線の形成に適した窒化アルミニウム基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明が提供する窒化アルミニウム基板は、周期律表の2A族、3A族元素の化合物の少なくとも1種を当該元素換算で0.1〜15重量%含有し、非球形状の空孔を含む窒化アルミニウム基板であって、研磨加工を施した表面に現れている前記空孔の深さに対する長さの比が5.0以上で且つ深さが10μm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明によるセラミックス基板の製造方法は、周期律表の2A族、3A族元素の化合物の少なくとも1種を当該元素換算で0.1〜15重量%含有する窒化アルミニウム焼結体を、1kg/cm2以上の圧力で1軸方向に加圧しながら1300℃以上の温度にて熱処理した後、研磨加工面を前記加圧軸とほぼ直角方向にして表面研磨加工することを特徴とする。
【0012】
【作用】
窒化アルミニウム焼結体は、本質的に粉末を焼結して得られるので、一般的に直径20〜50μm程度の球形状の空孔の存在が避けられない。この空孔は焼結体内部に存在していても、表面研磨加工を施した基板においては表面に現れてくる。本発明者らは、特にこの表面に現れた空孔の形状が、表面上に形成される金属化層やポリイミド層の欠けや膨れ等の欠陥の発生に影響を及ぼすことを突き止めた。
【0013】
即ち、研磨加工を施した基板表面に現れる空孔の形状について詳細に検討した結果、表面に現れている空孔の長さLmと深さTmの比と、微細配線形成時の不良発生率との間に相関関係が存在することを見いだした。具体的には、表面に現れている空孔の形状が非球形状に偏平になり、その表面からの深さTmに対する表面上での長さLmの比Lm/Tmが5.0以上になると、金属化層等の欠けや膨れがなくなり、微細配線の不良発生率が低減する。ここで、非球形状の空孔の長さ(Lm)とは、基板表面に現れている空孔の最も長い部分における長さを言う。
【0014】
更に、より安定した微細配線の形状について検討を重ねた結果、基板表面に現れている非球形状空孔の深さTmがある一定レベル以上に深くなると、微細配線の断線等の発生頻度が急激に高くなることが判った。その深さTmのレベルは配線の種類や厚さ等にもよるが、概ね12〜20μm程度である。特に、表面に現れている非球形状空孔の深さTmが10μm以下であると、微細配線の形成に特に優れていることが判った。
【0015】
尚、金属化層等の欠けや膨れをなくすためには、基板表面に現れている全ての空孔が、上記の特徴を備えた非球形状空孔であることが必要である。この非球形状空孔の長さLmは、微動測定ステージを備えた倍率100〜1000倍の金属顕微鏡等による目視測定若しくは写真測定により求めることができる。又、この非球形状空孔の深さTmは、同じく倍率100〜1000倍の金属顕微鏡等を用いて、光学的測定法として一般的に知られている焦点深度法により求めることができる。尚、本発明では便宜上任意の視野を選んで行うものとする。以上により求めたLm及びTmの結果から、表面に現れた空孔の深さに対する長さの比Lm/Tmを算術的に求めることができる。
【0016】
セラミックス基板の研磨加工を施した表面の微細な凹凸も、上記した空孔の形状ほどではないが、微細配線の形成に影響を与える。セラミックス基板表面の表面粗さRa(JIS B0601に基づいて測定)が0.2μmを越えると、金属化層の膨れなどによる微細配線の不良発生率が増加しやすい。
【0017】
表面の研磨加工により上記のような表面平滑性に優れた窒化アルミニウム基板を得るためには、AlN結晶粒の平均結晶粒径が15μm以下であることが好ましい。AlN結晶粒の平均結晶粒径は、基板の破面における各粒子の最大寸法を走査型電子顕微鏡(SEM)の2次平面上で観測し、30個以上の粒子の算術平均として求める。
【0018】
一般に窒化アルミニウム焼結体中の空孔は等方性を有する球形状であり、特異方向に歪んだ形状の空孔は存在しない。特に、本発明のごとく、表面に現れた空孔の深さに対する長さの比Lm/Tmが5.0以上という一方向に大きく歪んだ非球形状の空孔を有する窒化アルミニウム焼結体は、従来知られておらず、空孔形状の制御を考慮した製法でなければ製造することができない。
【0019】
そこで、本発明方法では、この非球形状の空孔を有する窒化アルミニウム焼結体からなる基板を得るため、塑性変形を助長する副成分を含有した窒化アルミニウム焼結体に1軸方向の加圧熱処理を加えることにより、焼結体中の球形状空孔を加圧軸方向に圧し潰して非球形状に変形させる。
【0020】
まず、そのための窒化アルミニウム焼結体は、上記副成分として周期律表の2A族、3A族元素の化合物の少なくとも1種をその元素換算で0.1〜15重量%含有する必要がある。その理由は、窒化アルミニウムは共有結合が強く、且つ六方晶型の結晶形態となるため、熱処理を行っても限られた条件下でしか粒界滑り、塑性変形が生じず、目的とする一方向に歪んだ非球形状の空孔を有する焼結体が得られないためである。
【0021】
そこで、窒化アルミニウム焼結体に周期律表の2A族、3A族元素の化合物の少なくとも1種を含有させることにより、これらの副成分の化合物が粒界に存在して、加圧熱処理時にAlN結晶の粒界滑りを促進し、その結果十分な変形能が付与され、目的とする深さに対する長さの比Lm/Tmが5.0以上という一方向に大きく歪んだ非球形状の空孔を有する焼結体が得られる。焼結体中に存在してかかる作用を果す化合物としては酸化物、例えばY2O3、YAG(3Y2O3・5Al2O3)、YAL(Y2O3・Al2O3)、YAM(2Y2O3・Al2O3)、3CaO・Al2O3、CaO・Al2O3等のほか、窒化物YN、酸窒化物Y−Al−O−N等がある。
【0022】
上記副成分の含有量が元素換算で0.1重量%未満では粒界滑りの効果が不十分となり、逆に15重量%を越えると窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率の低下が顕著となるため、共に好ましくない。又、窒化アルミニウム焼結体中の炭素量が多い場合にも加圧熱処理時の粒界滑りが困難となりやすいため、炭素含有量は0.05重量%以下であることが好ましい。
【0023】
上記副成分を含む窒化アルミニウム焼結体は、副成分の化合物粉末又はこれらの液状体を原料粉末に混合し、通常のごとく焼結することにより製造される。この加圧熱処理前の窒化アルミニウム焼結体の平均結晶粒径は15μm以下であることが好ましい。平均粒径が15μmより大きくなると、加圧熱処理時の粒界滑りと塑性変形が生じにくく、目的とする非球形状の空孔を得ることが難しくなるからである。又、加圧熱処理前の焼結体の密度は、相対密度90%以上であることが好ましい。
【0024】
上記の副成分を含む窒化アルミニウム焼結体は、次に加圧熱処理が施される。加圧熱処理における加圧力は1kg/cm2以上とし、一方向に圧し潰された形状の空孔を得るため1軸方向に加圧する。加圧力が1kg/cm2未満では、目的の非球形状の空孔を得るために長時間を必要とし、経済性の低下を招く。又、加圧力が1000kg/cm2を越えると、加圧設備のコスト上昇を招くので好ましくない。
【0025】
又、加圧熱処理の温度が1300℃未満では、焼結体の塑性変形能が不十分であるため空孔が圧し潰されず、目的の非球形状の空孔を得ることができない。従って、加圧熱処理の温度は1300℃以上とするが、大気雰囲気の場合は1500℃を越えると酸化による変質が生じやすく、その他のガス雰囲気の場合は2100℃を越えるとAlNの分解が始まるので好ましくない。尚、加圧熱処理の雰囲気としては、真空、大気、その他の窒素、水素、アルゴン等のガス雰囲気を用いることができ、大気やガス雰囲気の場合は加圧雰囲気でも良い。
【0026】
加圧熱処理の後、非球形状に圧し潰された空孔を有する窒化アルミニウム焼結体を、研磨加工面が前記加圧軸とほぼ直角方向になるように面方向に制御を行いながら、表面研磨加工する。研磨加工面の直角度は±10°以内とすることが好ましい。又、研磨加工は、固定砥石を用いる研磨加工のほか、遊離砥粒を用いる研磨加工等を用いることもでき、研磨砥粒の粒度は#1000以上が好ましく、#2000以上が更に好ましい。
【0027】
この研磨加工によって、得られるセラミックス基板の表面に非球形状空孔が現れ、その表面における空孔の深さTmに対する長さの比Lmの比Lm/Tmが、5.0以上という一方向に大きく歪んだ非球形状の空孔が得られる。尚、得られるAlNセラミックス基板は緻密で、相対密度が90%以上であることが好ましく、特に相対密度が99.5%以上であることが更に好ましい。
【0028】
このような本発明のAlNセラミックス基板を用いることにより、その表面上に、層厚20μm以下という薄さでも欠けや膨れ等の欠陥の発生しない金属化層を形成したセラミックス回路基板が得られる。その結果、従来のAlNセラミックス基板では困難であった線幅100μm以下のような微細で、且つ絶縁性に優れる配線を備えた回路基板の提供が可能となった。ここで、金属化層の層厚とは、メタライズ層の他にめっき層も含めた合計の厚さをいい、半田層やロウ材層の厚さは含まないものとする。又、金属化層は、このセラミックス基板上に直接形成する方法及び/又はグレーズ層を介してセラミックス基板上に形成する方法のいずれで形成したものであっても良い。
【0029】
更に、このAlNセラミックス基板の上に、層厚20μm以下の金属化層を介して、層厚250μm以下のポリイミド層を形成したセラミックス回路基板を得ることもできる。これにより、基板の放熱性を損なうことなく、表面平滑性に優れたポリイミド回路基板を作成することが可能となる。この場合、金属化層としては、銅、クロム、チタンから選択された2層以上の積層構造が好ましく、特にチタン/クロムの2層構造、又はチタン/クロム/銅/クロムの4層構造が好適に用いられる。
【0030】
【実施例】
実施例1
AlN粉末にY2O3粉末とCaO粉末を添加して窒素雰囲気中にて常圧焼結することにより、3Y2O3・5Al2O3及びCaO・Al2O3を形成し、副成分元素としてYとCaを含有するAlN焼結体を製造した。この焼結体中の副成分元素の含有量は、ICP(誘導結合型プラズマ発光分光)分析法により求めた結果、Yが2.4重量%及びCaが0.3重量%であった。又、この焼結体中の炭素含有量は、LECO法により求めた結果、0.03重量%であった。この焼結体の見掛け密度をアルキメデス法により測定し、相対密度を求めた結果、99.7%であった。更に、焼結体破面の各結晶粒の最大寸法を走査型電子顕微鏡(SEM)により測定し、結晶粒30個について求めた平均粒径は3.8μmであった。
【0031】
このAlN焼結体を、下記表1に示す温度と加圧力の条件下に、窒素ガス雰囲気中において1軸加圧しつつ1時間の加圧熱処理を行った。この加圧熱処理後、研磨加工面が1軸加圧の加圧軸方向と直角方向となるように面方向の制御を行いながら、#1200のダイヤモンド砥石を用いた粗研磨、#2000のダイヤモンド砥石を用いた中研磨、及びダイヤモンド遊離砥粒を用いた仕上げ研磨を順次実施した。
【0032】
その結果、得られた基板の表面粗さはRaで0.03μmであった。又、得られた各基板表面に現れている全ての空孔について、微動測定ステージを備えた金属顕微鏡を用いて、最大長さ方向の長さLm及び表面からの深さTmをそれぞれ測定し、深さに対する長さの比Lm/Tmを求め、試料ごとに表1にLm/Tmについては全空孔の最小値を及び深さTmについては全空孔の最大値を示した。
【0033】
一方、80重量%W、10重量%Mo、5重量%Al2O3、5重量%CaO、0.1重量%Ni、及びバインダー成分としてエチルセルロース、希釈剤成分として酢酸ブチルカルビトールを、3本ロールにて混練し、メタライズペーストを作製した。このペーストを、上記の各基板表面にスクリーン印刷により線幅70μm幅で塗布し、窒素雰囲気中にて1550℃で焼成した。このメタライズ層上に、電解法にて厚さ2μmのNiめっき層と0.5μmのAuめっき層を順次形成し、回路基板とした。メタライズ層とめっき層との金属化層の合計層厚は、断面研磨法により測定したところ32〜35μmであった。
【0034】
得られた各加圧熱処理条件ごとの試料について、配線抵抗を4端子法により測定した。これから、目標抵抗値の±10%以内の配線抵抗規格値に対する配線20本での配線抵抗の工程能力指数(Cp)を求め、その結果を表1に併せて示した。
【0035】
【表1】
【0036】
上記の結果から、空孔の深さに対する長さの比Lm/Tmが5.0以上の範囲において、配線抵抗の工程能力指数が高いことが判る。尚、比較のため、別途平均粒径が17μmであること以外は前記と同様のAlN焼結体を、上記試料1と同様に加圧熱処理及び研磨加工したものについて同様に評価したところ、配線抵抗の工程能力指数(Cp)は1.10となり、試料1に比べてCpが低下する傾向が認められた。
【0037】
実施例2
3kg/cm2の加圧窒素ガス雰囲気中にて焼結し、副成分元素としてYとCaを含有する平均粒径9.2μmのAlN焼結体を製造した。実施例1と同様に求めた焼結体中の副成分元素の含有量はYが0.9重量%及びCaが0.02重量%であり、炭素含有量は0.02重量%であった。又、この焼結体の相対密度は99.3%であった。
【0038】
このAlN焼結体を、75体積%窒素−25体積%水素の混合ガス雰囲気中において、100kg/cm2の加圧力を1軸方向に加えながら1800℃で3時間の加圧熱処理を行った。その後、種々の加工方法により、研磨加工面が上記加圧軸方向と直角になるように面方向の制御を行いつつ研磨加工を施した。得られた各基板について、表面粗さRaを求め、実施例1と同様に測定した空孔の長さLmと深さTmから求めたLm/Tmの最小値及びTmの最大値と共に、表2に示した。
【0039】
更に、各基板について実施例1と同様に金属化層を形成し、回路基板とした。メタライズ層とめっき層の金属化層の合計層厚は32〜35μmであった。得られた各試料について、配線抵抗を4端子法により測定し、実施例1と同様に配線抵抗の工程能力指数(Cp)を求め、その結果を表2に併せて示した。
【0040】
【表2】
【0041】
上記の結果から、回路基板の配線抵抗の工程能力指数(Cp)は、空孔の比Lm/Tm及び深さTmがほぼ一定の条件下では表面粗さRaに依存し、Raが0.2μmを越える領域では配線抵抗の工程能力指数(Cp)が低くなる傾向にあることが判る。
【0042】
実施例3
平均粒径1.1μmのAlN粉末に平均粒径0.6μmのY2O3粉末を下記表3に示す割合(Y元素に換算)で添加し、更に有機バインダーとしてポリメタクリレート10重量%を加え、ボールミルを用いて粉砕混合した後、ドクターブレード法により50mm×50mm×0.6mmのシート成形体とした。この各シート成形体を、窒素ガス雰囲気中において脱脂後、常圧窒素ガス雰囲気中にて1800℃で焼結した。得られた各AlN焼結体の炭素含有量はいずれも0.02〜0.03重量%であり、また各焼結体について求めた相対密度を表3に示した。
【0043】
得られた各AlN焼結体を、窒素ガス雰囲気中において、300kg/cm2の加圧力を1軸方向に加えながら1700℃で1時間の加圧熱処理を行った。その後、実施例1と同様に表面を研磨加工し、基板の表面粗さRaを全て0.05μmとした。各基板について、実施例1と同様に測定した空孔の長さLmと深さTmから求めたLm/Tmの最小値及びTmの最大値を表3に併せて示した。
【0044】
更に、各基板について、その表面にTiを0.1μm、Ptを0.15μm、及びAuを1.0μmの厚さに順次コーティングし、線幅10μmのメタライズ層を形成し、回路基板を作製した。この金属化層の合計の層厚は1.12〜1.17μmであった。得られた各試料について、配線抵抗を4端子法により測定し、実施例1と同様に配線抵抗の工程能力指数(Cp)を求め、その結果を表3に併せて示した。
【0045】
【表3】
(注)表中の*を付した試料は比較例である。尚、試料24は金属化層に膨れが発生したため配線形成ができなかった。
【0046】
上記の結果から、周期律表の2A族、3A族元素が0.1〜15重量%含まれるAlN焼結体を用いることにより、1軸方向の加圧熱処理で非球形状の空孔を形成でき、従って工程能力指数(Cp)の高い配線抵抗が得られることが判る。尚、比較のため、同一条件で焼結したY含有量0.1重量%で炭素含有量0.06重量%のAlN焼結体について同様の加圧熱処理を行ったところ、研磨加工した表面の空孔の深さに対する長さの比Lm/Tmは5.1であった。
【0047】
実施例4
0.5kg/cm2の減圧窒素雰囲気中にて焼結し、副成分元素としてYbを含有する平均粒径0.8μmのAlN焼結体を製造した。実施例1と同様に求めた焼結体中の副成分元素Ybの含有量は5.5重量%であった。又、この焼結体の炭素含有量は0.02重量%であり、相対密度は99.8%であった。
【0048】
このAlN焼結体を、アルゴンガス雰囲気中において、下記表4に示す温度条件で100kg/cm2の加圧力で1軸方向に加圧しながら1分間の加圧熱処理を行った。その後、実施例1と同様に研磨加工面の面方向を制御しながら研磨加工を施し、得られた各基板の表面粗さRaを0.07μmとした。又、得られた各基板について、実施例1と同様に測定した空孔の長さLmと深さTmから求めたLm/Tmの最小値及びTmの最大値を表4に示した。
【0049】
更に、各基板について実施例3と同様に金属化層を形成し、回路基板とした。得られた各試料について、配線抵抗を4端子法により測定し、実施例1と同様に配線抵抗の工程能力指数(Cp)を求め、その結果を表4に併せて示した。加圧熱処理の温度が1300℃未満では、目的とするLm/Tmが5μm以上でTmが10μm以下の非球形状空孔が得られず、工程能力指数(Cp)が低下することが判る。
【0050】
【表4】
【0051】
実施例5
実施例4で作製した各AlN基板上に、TiとCrの金属化層を順次形成し、金属化層の合計の層厚を15μmとした。更に、この金属化層の上に、ポリイミド前駆体をスピンコート法により塗布し、窒素ガス雰囲気中にて450℃で熱処理してポリイミド層を形成した。得られた各ポリイミド層の層厚はいずれも30μmであった。
【0052】
各試料について、20倍の実態顕微鏡によりポリイミド層の状態を評価し、その結果を表5に示した。その結果から明らかなように、本発明の加圧熱処理の温度範囲において、膨れや欠け等の欠陥の発生のないポリイミド層を形成することができる。
【0053】
【表5】
【0054】
実施例6
実施例4で作製した各AlN基板上に、Ti、Cr、Cu、Crの金属化層を順次形成し、金属化層の合計の層厚を35μmとした。更に、この金属化層の上に、ポリイミド前駆体をスピンコート法により塗布し、窒素ガス雰囲気中にて450℃で熱処理してポリイミド層を形成した。得られた各ポリイミド層の層厚はいずれも70μmであった。
【0055】
各試料について、20倍の実態顕微鏡によりポリイミド層の状態を評価し、その結果を表6に示した。その結果から明らかなように、本発明の加圧熱処理の温度範囲において、膨れや欠け等の欠陥の発生のないポリイミド層を形成することができる。
【0056】
【表6】
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、表面に形成する金属化層やポリイミド層に欠けや膨れ等の欠陥が発生せず、従来のAlNセラミックス基板では対応できなかった特に金属化層の薄い微細回路配線の形成に対応することができ、高集積化・小型化が求められているエレクトロニクス材料として好適な窒化アルミニウム基板を提供することができる。
Claims (7)
- 周期律表の2A族、3A族元素の化合物の少なくとも1種を当該元素換算で0.1〜15重量%含有し、非球形状の空孔を含む窒化アルミニウム基板であって、研磨加工を施した表面に現れている前記空孔の深さに対する長さの比が5.0以上で且つ深さが10μm以下であることを特徴とするセラミックス基板。
- 研磨加工を施した表面の表面粗さRaが0.2μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のセラミックス基板。
- 窒化アルミニウム結晶粒の平均粒径が15μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセラミックス基板。
- 相対密度が99%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス基板。
- 周期律表の2A族、3A族元素の化合物の少なくとも1種を当該元素換算で0.1〜15重量%含有する窒化アルミニウム焼結体を、1kg/cm2以上の圧力で1軸方向に加圧しながら1300℃以上の温度にて熱処理した後、研磨加工面を前記加圧軸とほぼ直角方向にして表面研磨加工することを特徴とするセラミックス基板の製造方法。
- 窒化アルミニウム焼結体に含まれる窒化アルミニウム結晶粒の平均粒径が15μm以下であることを特徴とする、請求項5に記載の窒化アルミニウム基板の製造方法。
- 研磨加工を施した表面に現れている空孔が、その深さに対する長さの比が5.0以上で且つ深さが10μm以下である非球形状空孔であることを特徴とする、請求項5又は6に記載のセラミックス基板の製造方法。
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