JP3561862B2 - ハロゲン化銀カラー写真感光材料 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に関する。更に詳しくは、高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンパクトカメラ及び自動焦点1眼レフカメラ更にはレンズ付きフィルム等の普及により、高感度でかつ画質の優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料の開発が強く望まれている。そのために、写真用のハロゲン化銀乳剤に対する性能改良の要求はますます厳しく、高感度、優れた粒状性及び優れたシャープネス等の写真性能に対して、より高水準の要求がなされている。
【0003】
かかる要求に対して、例えば、米国特許第4,434,226号、同4,439,520号、同4,414,310号、同4,433,048号、同4,414,306号、同4,459,353号等に平板状ハロゲン化銀粒子(以下、単に〔平板粒子〕ともいう)を使用した技術が開示されており、増感色素による色増感効率の向上を含む感度の向上、感度/粒状性の改良、平板粒子の特異的な光学的性質によるシャープネスの向上、カバーリングパワーの向上などの利点が知られている。しかしながら、近年の高水準の要求に応えるには不十分であり、より一層の性能向上が望まれている。
【0004】
こうした高感度化、高画質化の流れに関連して、ハロゲン化銀カラー写真感光材料における圧力特性の向上に対する要請も従来以上に高まってきている。以前から様々な手段により圧力特性を改良することが検討されてきたが、可塑剤を添加する等の添加剤を用いる技術よりも、ハロゲン化銀粒子自体の耐応力性を向上させる技術の方が実用上好ましく、又、効果も大きいという見方が有力である。これらの要望に対して、沃化銀含有率の高い沃臭化銀層を有するコア/シェル型のハロゲン化銀粒子からなる乳剤が盛んに研究されてきた。特に、粒子内部に10mol%以上の高沃化銀相を有するコア/シェル型粒子含有の沃臭化銀乳剤は、例えばカラーネガフィルム用の乳剤として大変注目されてきた。
【0005】
コア/シェル型粒子で圧力特性を改良した技術としては、例えば特開昭59−99433号、同60−35726号、同60−147727号に開示の技術が知られている。又、特開昭63−220238号及び特開平1−201649号には、ハロゲン化銀粒子に転位線を導入することにより、高感度で粒状性、圧力特性、露光照度依存性等の改良技術が開示されている。また、特開平6−235988号には、中間殻に高沃度層を有する多重構造型の単分散平板粒子により、圧力耐性を向上した技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの技術においては、高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良されたハロゲン化銀乳剤として近年の高水準の要求に耐えうるものとして未だ満足できるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を鑑み、高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0009】
支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該乳剤層の少なくとも何れか1層のハロゲン化銀乳剤層に含まれる全ハロゲン化銀粒子の粒径の変動係数が20%以下であり、かつ該ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上が、アスペクト比9以上のハロゲン化銀粒子であり、該粒子が、沃化銀含有率15mol%未満のコアと、沃化銀含有率8mol%以上のシェルを有し、かつ、コアとシェルとが、X線回折法により測定される回折角度(2θ)が71〜74度の範囲に、2つのピークを有する回折曲線が得られる構造を有し、該粒子の平均沃化銀含有率が4mol%以上であり、かつ前記シェルの外側に設けられた、シェルとは沃化銀含有率の異なる最表面から50Å深さまでの最外層である該粒子表面の沃化銀含有率が、粒子の平均沃化銀含有率よりも高いことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
なお、上記X線回折法による測定は、ターゲットとしてCuを用い、CuのKα線を線源として、管電圧40kV、管電流100mAで、粉末X線法によりハロゲン化銀の(420)面の回折パターンを測定する。
【0010】
以下、本発明について、詳細に述べる。
【0011】
本発明のハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子はハロゲン化銀乳剤層に含まれる全ハロゲン化銀粒子の粒径の変動係数が20%以下であり、かつ該ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上が、アスペクト比9以上のハロゲン化銀粒子である。
【0012】
即ち、本発明のハロゲン化銀粒子は、結晶学的には双晶に分類される。
【0013】
双晶とは、一つの粒子内に一つ以上の双晶面を有するハロゲン化銀結晶であるが、双晶の形態の分類はクラインとモイザーによる報文フォトグラフィッシェコレスポンデンツ(Photographishe Korrespondenz)第99巻、p100,同第100巻,p57に詳しく述べられている。
【0014】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、主平面に平行な双晶面を2枚有することが好ましい。双晶面は透過型電子顕微鏡により観察することができる。具体的な方法は次の通りである。まず、含有されるハロゲン化銀粒子が、支持体上にほぼ主平面が平行に配向するようにハロゲン化銀写真乳剤を塗布し、試料を作成する。これをダイヤモンド・カッターを用いて切削し、厚さ0.1μm程度の薄切片を得る。この切片を透過型電子顕微鏡で観察することにより双晶面の存在を確認することができる。
【0015】
本発明のハロゲン化銀粒子における2枚の双晶面間距離は、上記の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察において、主平面に対しほぼ垂直に切断された断面を示すハロゲン化銀粒子を任意に1000個以上選び、主平面に平行な2枚の双晶面間距離をそれぞれの粒子について求め、加算平均することにより得られる。
【0016】
本発明において、双晶面間距離の平均は0.01μm〜0.05μmが好ましく、更に好ましくは0.013μm〜0.025μmである。
【0017】
本発明において、双晶面間距離は、核形成時の過飽和状態に影響を及ぼす因子、例えばゼラチン濃度、ゼラチン種、温度、沃素イオン濃度、pBr、pH、イオン供給速度、攪拌回転数等の諸因子の組み合わせにおいて適切に選択することにより制御することができる。一般に核形成を高過飽和状態で行なうほど、双晶面間距離を狭くすることができる。
【0018】
過飽和因子に関しての詳細は、例えば特開昭63−92924号或いは特開平1−213637号等の記述を参考にすることができる。
【0019】
本発明のハロゲン化銀粒子の厚さは、前述の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察により、同様にしてそれぞれの粒子について厚さを求め、加算平均することにより得られる。ハロゲン化銀粒子の厚さは0.05μm〜1.5μmが好ましく、更に好ましくは0.07μm〜0.50μmである。
【0020】
本発明におけるアスペクト比とは、ハロゲン化銀粒子の厚みに対する直径の比、即ち個々の粒子の投影面積と同一の面積を有する円の直径(投影面積直径)をその粒子の厚さで除した値を意味する。
【0021】
個々のハロゲン化銀粒子の体積や粒径、アスペクト比及びそれらの平均値を算出するための、個々の粒子の直径や厚みを測定する一つの方法としては、レプリカ法により透過電子顕微鏡写真を撮影して、画像処理装置等を用いて個々の粒子の円相当直径と厚みを求める方法がある。この場合、厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出することができる。
【0022】
本発明のハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも何れか1層の全ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比(粒径/粒子厚さ)が9以上のものを言うが、好ましくは該全投影面積の60%以上がアスペクト比9以上であり、更に好ましくは該全投影面積の70%以上がアスペクト比9以上である。
【0023】
本発明のハロゲン化銀粒子の粒径は、該ハロゲン化銀粒子の投影面積の円相当直径(該ハロゲン化銀粒子と同じ投影面積を有する円の直径)で示されるが、0.1〜5.0μmが好ましく、更に好ましくは0.2〜2.0μmである。
【0024】
粒径は、例えば該粒子を電子顕微鏡で1万倍から7万倍に拡大して撮影し、そのプリント上の粒子径又は投影時の面積を実測することによって得ることができる(測定粒子個数は無差別に1000個以上あることとする)。
【0025】
ここに、平均粒径rは、粒径riを有する粒子の頻度niとri3との積ni×ri3が最大となるときの粒径riと定義する(有効数字3桁,最小桁数字は4捨5入する)。
【0026】
本発明のハロゲン化銀粒子は、単分散のハロゲン化銀乳剤からなる。ここで単分散のハロゲン化銀乳剤としては、平均粒径rを中心に±20%の粒径範囲内に含まれるハロゲン化銀重量が、全ハロゲン化銀粒子重量の60%以上であるものが好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0027】
本発明の高度の単分散乳剤は、
(標準偏差/平均粒径)×100=粒径分布(粒径の変動係数)〔%〕
によって分布の広さを定義したとき、本発明の平板状ハロゲン化銀粒子の粒径分布は20%以下のものであり、更に好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下のものである。ここに平均粒径及び標準偏差は、上記定義した粒径riから求めるものとする。
【0028】
本発明のハロゲン化銀粒子は核となるコアと該コアを被覆するシェルとから構成される粒子であり、シェルは1層或いはそれ以上の層によって形成される。
【0029】
本発明のハロゲン化銀粒子のコアの沃化銀含有率は15mol%未満であるが、13mol%以下のものが好ましく、更に好ましくは10mol%以下である。また、上記シェルの内、少なくとも1層のシェルは沃化銀含有率が8mol%以上であるが、10mol%以上のものが好ましく、更に好ましくは15mol%以上である。
【0030】
本発明のコア/シェル型ハロゲン化銀粒子においては、コアの沃化銀含有率はシェルの沃化銀含有率よりも低いことが好ましい。
【0031】
コアの占める割合は、粒子全体の銀量の1〜60%とするのが望ましく、4〜40%が更に望ましい。
【0032】
本発明のハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率は4mol%以上であるが、6mol%以上が好ましく、更に好ましくは8mol%以上、12mol%以下である。
【0033】
本発明のハロゲン化銀粒子は上記のように沃臭化銀を主として含有する乳剤であるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の組成のハロゲン化銀、例えば塩化銀を含有させることができる。
【0034】
本発明のハロゲン化銀粒子の作成においては、種粒子から成長させる方法が好ましく用いられる。具体的には、反応容器に予め保護コロイドを含む水溶液及び種粒子を存在させ、必要に応じて銀イオン、ハロゲンイオン、或いはハロゲン化銀微粒子を供給して種粒子を結晶成長させて得るものである。ここで種粒子は当該分野でよく知られているシングル・ジェット法、コントロールド・ダブルジェット法等により調製することができる。種粒子のハロゲン組成は任意であり、臭化銀、沃化銀、塩化銀、沃臭化銀、塩沃化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀の何れであってもよいが、臭化銀、沃臭化銀が好ましく、沃臭化銀の場合は、平均沃化銀含有率は1モル%〜10モル%が好ましい。
【0035】
本発明のハロゲン化銀粒子を種粒子から出発して成長させる場合、粒子中心部にコアとは異なるハロゲン組成領域を持つことがあり得る。また、種乳剤の全ハロゲン化銀に占める割合は銀量で50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、特に好ましくは10%以下である。
【0036】
上記コア/シェル型ハロゲン化銀粒子における沃化銀の分布状態は、各種の物理的測定法によって検知することができ、例えば日本写真学会・1981年度年次大会講演要旨集に記載されているような、低温でのルミネッセンスの測定やX線回折法によって調べることができる。
【0037】
本発明のハロゲン化銀粒子においては、コアとシェルが明確なコア/シェル構造を有するものである。ここで言う明確なコア/シェル構造とは、以下に述べるX線回折法により測定される回折角度(2θ)が71〜74度の範囲に、少なくともコアとシェルに対応する2つのピークを有する回折曲線が得られるものである。
【0038】
即ち、本発明における明確なコア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子は、その構造をX線回折法により測定することができる。
【0039】
ターゲットとしてCuを用い、CuのKα線を線源として、管電圧40kV、管電流100mAで、粉末X線法によりハロゲン化銀の(420)面の回折パターンを測定した場合、乳剤粒子が明確なコア/シェル構造をもつと回折角度(2θ)が71〜74度の範囲に少なくともコアとシェルに対応する2つのピークを有する回折曲線が得られる。ここで2つのピークをもつとは、最も低いピーク強度に対し、ピーク間の最低強度の比が0.9以下、好ましくは0.7以下になることを言う。2つのピーク強度を比べたとき、シェルの回折ピーク強度がコアの回折ピーク強度に対して1/1〜20/1であることが好ましく、更に好ましくは2/1〜15/1の場合である。
【0040】
また、本発明のハロゲン化銀粒子においては、前記のごとくX線回折パターンを求めた場合に、コア及びシェル部分に相当する2つのピークの形状に実質的な影響を与えない範囲でコアとシェル以外の層(シェルと区別するために中間層と呼ぶ)が存在しても良い。
【0041】
本発明のハロゲン化銀粒子の形成手段としては、当該分野でよく知られている種々の方法を用いることができる。即ち、シングル・ジェット法、コントロールド・ダブルジェット法、コントロールド・トリプルジェット法等を任意に組み合わせて使用することができるが、高度な単分散粒子を得るためには、ハロゲン化銀粒子の生成される液相中のpAgをハロゲン化銀粒子の成長速度に合わせてコントロールすることが重要である。pAg値としては7.0〜11.0の領域を使用し、好ましくは7.5〜10.5、更に好ましくは8.0〜10.0の領域を使用することができる。
【0042】
添加速度の決定にあたっては、特開昭54−48521号、特開昭58−49938号に記載の技術を参考にできる。
【0043】
本発明のハロゲン化銀粒子の製造時に、アンモニア、チオエーテル、チオ尿素等の公知のハロゲン化銀溶剤を存在させることもできるし、ハロゲン化銀溶剤を使用しなくても良い。
【0044】
本発明のハロゲン化銀粒子は、潜像が主として表面に形成される粒子或いは主として粒子内部に形成される粒子の何れであっても良い。
【0045】
本発明のハロゲン化銀粒子は、分散媒の存在下に即ち、分散媒を含む溶液中で製造される。ここで、分散媒を含む水溶液とは、ゼラチンその他の親水性コロイドを構成し得る物質(バインダーとなり得る物質など)により保護コロイドが水溶液中に形成されているものをいい、好ましくはコロイド状の保護ゼラチンを含有する水溶液である。
【0046】
本発明を実施する際、上記保護コロイドとしてゼラチンを用いる場合は、ゼラチンは石灰処理されたものでも、酸を使用して処理されたものでもどちらでもよい。ゼラチンの製法の詳細はアーサー・グアイス著、ザ・マクロモレキュラー・ケミストリー・オブ・ゼラチン(アカデミック・プレス、1964年発行)に記載がある。
【0047】
保護コロイドとして用いることができるゼラチン以外の親水性コロイドとしては、例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一或いは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質がある。
【0048】
ゼラチンの場合は、パギー法においてゼリー強度200以上のものを用いることが好ましい。
【0049】
本発明のハロゲン化銀粒子は、該粒子を形成する過程及び/又は成長させる過程で、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、鉄塩、ロジウム塩、イリジウム塩、インジウム塩(錯塩を含む)から選ばれる少なくとも1種を用いて金属イオンを添加し、粒子内部及び/又は粒子表面にこれらの金属元素を含有させることができる。
【0050】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子の成長終了後に、不要な可溶性塩類を除去したものであってもよいし、或いは含有させたままのものでも良い。
【0051】
また、特開昭60−138538号記載の方法のように、ハロゲン化銀成長の任意の点で脱塩を行なう事も可能である。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure、以下RDと略す)17643号II項に記載の方法に基づいて行なうことができる。
【0052】
更に詳しくは、沈澱形成後、或いは物理熟成後の乳剤から可溶性塩を除去するためには、ゼラチンをゲル化させて行なうヌーデル水洗法を用いても良く、また無機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(たとえばポリスチレンスルホン酸)、或いはゼラチン誘導体(たとえばアシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチンなど)を利用した沈澱法(フロキュレーション)を用いても良い。
【0053】
本発明において、個々のハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率及び平均沃化銀含有率は、EPMA法(Electron Probe Micro Analyzer法)を用いることにより求めることが可能である。この方法は、乳剤粒子を互いに接触しないように良く分散したサンプルを作成し、電子ビームを照射する電子線励起によるX線分析より極微小な部分の元素分析が行える。この方法により、各粒子から放射される銀及び沃度の特性X線強度を求めることにより、個々の粒子のハロゲン組成が決定できる。少なくとも50個の粒子についてEPMA法により沃化銀含有率を求めれば、それらの平均から平均沃化銀含有率が求められる。
【0054】
本発明のハロゲン化銀粒子は、粒子間の沃化銀含有率がより均一になっていることが好ましい。EPMA法により粒子間の沃化銀含有率の分布を測定した時に、相対標準偏差が30%以下、更に20%以下であることが好ましい。
【0055】
本発明のハロゲン化銀粒子の表面とは、ハロゲン化銀粒子の最表面を含む粒子の最外層であって、粒子の最表面から約50Åまでの深さをいう。本発明のハロゲン化銀粒子の表面のハロゲン組成はXPS法(X−ray Photoelectron Spectroscopy法:X線光電子分光法)によって次のように求められる。
【0056】
即ち、試料を1×10E−8torr以下の超高真空中で−110℃以下まで冷却し、プローブ用X線としてMgKαをX線源電圧15kV、X線源電流40mAで照射し、Ag3d5/2、Br3d、I3d3/2の電子について測定する。測定されたピークの積分強度を感度因子(Sensitivity Factor)で補正し、これらの強度比から表面のハライド組成を求める。
【0057】
XPS法は従来から、ハロゲン化銀粒子表面の沃化銀含有率を求める方法として特開平2−24188号等に開示されている。しかし、室温で測定を行った場合、X線照射に伴う試料が破壊されるため、最表層の正確な沃化銀含有率は求められなかった。本発明者らは試料を破壊の起きない温度まで冷却する事により、表層の沃化銀含有率を正確に求めることに成功した。その結果、特にコア/シェル粒子のような表面と内部の組成が異なる粒子や、最表面に高沃度層や低沃度層が局在している粒子では、室温での測定値はX線照射によるハロゲン化銀の分解とハライド(特に沃度)の拡散のために真の組成とは大きく異なることが明らかになった。
【0058】
ここで用いられるXPS法とは具体的には次の通りである。
【0059】
乳剤に蛋白質分解酵素(プロナーゼ)0.05重量%水溶液を加え、45℃で30分間撹拌してゼラチンを分解した。これを遠心分離して乳剤粒子を沈降させ、上澄み液を除去する。次に蒸留水を加えて乳剤粒子を蒸留水中に分散させ、遠心分離し、上澄み液を除去する。乳剤粒子を水中に再分散させ、鏡面研磨したシリコンウエハー上に薄く塗布して測定試料とする。このようにして作成した試料を用いて、XPSによる表面沃度測定を行った。X線照射による試料の破壊を防ぐため、試料はXPS測定用チャンバー内で−110〜−120℃に冷却した。プローブ用X線としてMgKαをX線源電圧15kV、X線源電流40mAで照射し、Ag3d5/2、Br3d、I3d3/2電子について測定した。測定されたピークの積分強度を感度因子(Sensitivity Factor)で補正し、これらの強度比から表面のハライド組成を求めた。
【0060】
本発明のハロゲン化銀粒子は、粒子表面の沃化銀含有率が粒子の平均沃化銀含有率よりも高いという関係を満たすものである。好ましくは、粒子表面の沃化銀含有率/平均沃化銀含有率=1.3〜30の関係を満たし、更に好ましくは、粒子表面の沃化銀含有率/平均沃化銀含有率=1.5〜15の関係を満たすものである。
【0061】
本発明のハロゲン化銀粒子は、常法により化学増感することができる。即ち、硫黄増感、セレン増感、金その他の貴金属化合物を用いる貴金属増感法などを単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0062】
本発明のハロゲン化銀粒子は、写真業界において増感色素として知られている色素を用いて所望の波長域に光学的に増感できる。増感色素は、単独で用いてもよいが2種類以上を組み合わせて用いても良い。増感色素と共にそれ自身分光増感作用をもたない色素、或いは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、増感色素の増感作用を強める強色増感剤を乳剤中に含有させても良い。
【0063】
本発明のハロゲン化銀粒子には、カブリ防止剤、安定剤などを加えることができる。バインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利である。乳剤層、その他の親水性コロイド層は、硬膜することができ、また、可塑剤、水不溶性又は可溶性合成ポリマーの分散物(ラテックス)を含有させることができる。
【0064】
本発明のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料の乳剤層にはカプラーが用いられる。更に色補正の効果を有している競合カプラー及び現像主薬の酸化体とのカップリングによって現像促進剤、現像剤、ハロゲン化銀溶剤、調色剤、硬膜剤、カブリ剤、カブリ防止剤、化学増感剤、分光増感剤及び減感剤のような写真的に有用なフラグメントを放出する化合物を用いることができる。
【0065】
本発明のハロゲン化銀粒子を含有する感光材料には、フィルター層、ハレーション防止層、イラジュエーション防止層等の補助層を設けることができる。これらの層中及び/又は乳剤層中には現像処理中に感光材料から流出するか、若しくは漂白される染料が含有されても良い。
【0066】
本発明のハロゲン化銀粒子を含有する感光材料には、マット剤、滑剤、画像安定剤、ホルマリンスカベンジャー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、界面活性剤、現像促進剤や現像遅延剤を添加できる。
【0067】
支持体としては、ポリエチレン等をラミネートした紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、バライタ紙、三酢酸セルロース等を用いることができる。
【0068】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
実施例1
双晶種乳剤T−1の調製
以下に示す方法によって、2枚の平行な双晶面を有した種乳剤を調製した。
【0070】
(A液)
オセインゼラチン 24.2g
臭化カリウム 10.75g
硝酸(1.2N) 118.6ml
HO(CH2CH2O)m(C(CH3)HCH2O)19.8(CH2CH2O)nH
(m+n=9.77)の10重量%メタノール溶液 6.78ml
蒸留水で9686mlに仕上げる
(B液)
硝酸銀 1200.0g
蒸留水で2826mlに仕上げる
(C液)
臭化カリウム 823.8g
沃化カリウム 23.46g
蒸留水で2826mlに仕上げる
(D液)
オセインゼラチン 120.9g
蒸留水で2130mlに仕上げる
(E液)
臭化カリウム 76.48g
蒸留水で376mlに仕上げる
(F液)
水酸化カリウム 10.06g
蒸留水で340mlに仕上げる
35℃で激しく撹拌したA液に、B液464mlとC液464mlをダブルジェット法により2分間かけて添加し、核粒子の形成を行なった。この間、必要に応じてE液を使用して、pAgを9.82に保った。
【0071】
その後、66分間かけて温度を60℃に上げた。温度上昇中、反応系内の温度が55℃まで上がったところでD液を7分間かけて単独で添加した。更に、温度が60℃に上昇した時点でF液を1分間で添加し、引き続きB液2362mlとC液2362mlを43分間かけて添加した。温度上昇開始直後からはE液を使用してpAgを8.97に保った。
【0072】
B液及びC液の添加終了後、常法に従って脱塩を行なった。脱塩後の乳剤に、10重量%のゼラチン水溶液を加え、55℃で30分間攪拌分散させた後、蒸留水を加えて5360gの乳剤として仕上げた。
【0073】
この種乳剤粒子を電子顕微鏡観察したところ、互いに平行な2枚の双晶面を有する平板状粒子であった。
【0074】
この種乳剤粒子の平均粒径は0.445μm、全投影面積の50%がアスペクト比5.0以上であった。
【0075】
本発明乳剤EM−1の作成
以下に示す6種類の溶液(溶液Aには、種乳剤T−1を含む)を用いて、本発明の乳剤EM−1を調製した。
【0076】
(溶液A)
オセインゼラチン 163.4g
HO(CH2CH2O)m(C(CH3)HCH2O)19.8(CH2CH2O)nH
(m+n=9.77)の10重量%メタノール溶液 2.50ml
種乳剤(T−1) 674.50g
臭化カリウム 3.0g
蒸留水で3500mlに仕上げる
(溶液B)
硝酸銀 2581.7g
蒸留水で4342mlに仕上げる
(溶液C)
臭化カリウム 1828.3g
蒸留水で4390mlに仕上げる
(溶液D)
臭化カリウム水溶液(1.75N)
(溶液E)
酢酸水溶液(56重量%)
(溶液F)
3重量%のゼラチンと、沃化銀粒子(平均粒径0.05μm)から成る
微粒子乳剤(*) 2793g
* 調製法は以下の通り(0.06モルの沃化カリウムを含む6.0重量%のゼラチン溶液5000mlに、7.06モルの硝酸銀と、7.06モルの沃化カリウムを含む水溶液、それぞれ2000mlを、10分間かけて添加した。微粒子形成中のpHは硝酸を用いて2.0に、温度は40℃に制御した。粒子形成後に、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0に調整した。仕上がり重量は12.53kgであった)。
【0077】
75℃に保った溶液Aを激しく攪拌し、溶液B、C及びFを表1に示した組み合わせに従って、トリプルジェット法又はシングルジェット法による添加を行ない、種結晶を成長させて平板状ハロゲン化銀乳剤を調製した。
【0078】
ここで、トリプルジェット添加時の溶液B、C及びFの添加流量及びシングルジェット添加時の溶液Fの添加流量は、それぞれハロゲン化銀粒子の臨界成長速度に見合ったように時間に対して関数様に変化させ、成長している種結晶以外に小粒子の発生及びオストワルド熟成により多分散化しないように適切な添加速度にコントロールした(表1には代表的なポイントデータを記載した)。
【0079】
また、結晶成長の全域に渡って、pAg及びpHをコントロールした。pAg及びpHコントロールのために、必要に応じて溶液D、Eを添加した。
【0080】
粒子成長後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い脱塩処理を施し、その後ゼラチンを加え分散し、40℃にてpHを5.80、pAgを8.06に調整した。
【0081】
得られた乳剤粒子の電子顕微鏡写真から、平均粒径1.348μm(投影面積の円換算直径の平均値)、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布18.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0082】
【表1】
【0083】
(本発明乳剤EM−2〜EM−4の調製)
乳剤EM−1の製造方法において、混合時間192.3分以降のpAgを10.0に変更し、各反応溶液の添加流量もハロゲン化銀粒子の成長速度に見合ったように関数様に変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、乳剤EM−2を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.613μm、アスペクト比12.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比12.0)、粒径分布18.5%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0084】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、シェル形成時の反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、乳剤EM−3を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.348μm、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布18.2%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0085】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、乳剤EM−4を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.350μm、アスペクト比7.2以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.2)、粒径分布19.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0086】
(比較用乳剤EM−5〜EM−8の調製)
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、コアとシェルの沃化銀含有率が同じ乳剤EM−5を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.349μm、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布18.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0087】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、pAgを混合開始から8.2に一定にコントロールし、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、アスペクト比の低い乳剤EM−6を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.118μm、アスペクト比4.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比4.0)、粒径分布19.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0088】
尚、EM−6はアスペクト比5以上の粒子は投影面積の50%に達しなかった。
【0089】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を一律に下げて、混合時間を1.5に延長し、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、粒径分布の広い乳剤EM−7を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.342μm、アスペクト比6.7以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比6.7)、粒径分布26.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0090】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、コアの沃化銀含有率がシェルの沃化銀含有率よりも高い乳剤EM−8を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.349μm、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布19.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0091】
乳剤EM−1〜EM−8の組成、構造等の結果を表2にまとめた。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例2(感光材料試料の作成)
乳剤EM−1〜EM−8に、金−硫黄増感を最適に施し、これらの乳剤を用いてトリアセチルセルロースフィルム支持体上に下記に示すような組成の各層を順次支持体側から形成して、多層カラー写真感光材料を作成した。
【0094】
以下の全ての記載において、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中の添加量は、特に記載のない限り1m2当たりのグラム数を示す。また、ハロゲン化銀及びコロイド銀は、銀に換算して示し、増感色素は、ハロゲン化銀1モル当たりのモル数で示した。
【0095】
多層カラー写真感光材料試料101(本発明の乳剤EM−1を使用)の構成は以下の通りである。
【0096】
試料101
第1層:ハレーション防止層
黒色コロイド銀 0.16
紫外線吸収剤(UV−1) 0.20
高沸点溶媒(OIL−1) 0.16
ゼラチン 1.60
第2層:中間層
化合物(SC−1) 0.14
高沸点溶媒(OIL−2) 0.17
ゼラチン 0.80
第3層:低感度赤感性層
沃臭化銀乳剤A 0.15
沃臭化銀乳剤B 0.35
増感色素(SD−1) 2.0×10−4
増感色素(SD−2) 1.4×10−4
増感色素(SD−3) 1.4×10−5
増感色素(SD−4) 0.7×10−4
シアンカプラー(C−1) 0.53
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.04
DIR化合物(D−1) 0.025
高沸点溶媒(OIL−3) 0.48
ゼラチン 1.09
第4層:中感度赤感性層
沃臭化銀乳剤B 0.30
沃臭化銀乳剤C 0.34
増感色素(SD−1) 1.7×10−4
増感色素(SD−2) 0.86×10−4
増感色素(SD−3) 1.15×10−5
増感色素(SD−4) 0.86×10−4
シアンカプラー(C−1) 0.33
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.013
DIR化合物(D−1) 0.02
高沸点溶媒(OIL−1) 0.16
ゼラチン 0.79
第5層:高感度赤感性層
沃臭化銀乳剤D 0.95
増感色素(SD−1) 1.0×10−4
増感色素(SD−2) 1.0×10−4
増感色素(SD−3) 1.2×10−5
シアンカプラー(C−2) 0.14
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.016
高沸点溶媒(OIL−1) 0.16
ゼラチン 0.79
第6層:中間層
化合物(SC−1) 0.09
高沸点溶媒(OIL−2) 0.11
ゼラチン 0.80
第7層:低感度緑感性層
沃臭化銀乳剤A 0.12
沃臭化銀乳剤B 0.38
増感色素(SD−4) 4.6×10−5
増感色素(SD−5) 4.1×10−4
マゼンタカプラー(M−1) 0.14
マゼンタカプラー(M−2) 0.14
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.06
高沸点溶媒(OIL−4) 0.34
ゼラチン 0.70
第8層:中間層
ゼラチン 0.41
第9層:中感度緑感性層
沃臭化銀乳剤B 0.30
沃臭化銀乳剤C 0.34
増感色素(SD−6) 1.2×10−4
増感色素(SD−7) 1.2×10−4
増感色素(SD−8) 1.2×10−4
マゼンタカプラー(M−1) 0.04
マゼンタカプラー(M−2) 0.04
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.017
DIR化合物(D−2) 0.025
DIR化合物(D−3) 0.002
高沸点溶媒(OIL−5) 0.12
ゼラチン 0.50
第10層:高感度緑感性層
本発明乳剤EM−1 0.95
増感色素(SD−6) 7.1×10−5
増感色素(SD−7) 7.1×10−5
増感色素(SD−8) 7.1×10−5
マゼンタカプラー(M−1) 0.09
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.011
高沸点溶媒(OIL−4) 0.11
ゼラチン 0.79
第11層:イエローフィルター層
黄色コロイド銀 0.08
化合物(SC−1) 0.15
高沸点溶媒(OIL−2) 0.19
ゼラチン 1.10
第12層:低感度青感性層
沃臭化銀乳剤A 0.12
沃臭化銀乳剤B 0.24
沃臭化銀乳剤C 0.12
増感色素(SD−9) 6.3×10−5
増感色素(SD−10) 1.0×10−5
イエローカプラー(Y−1) 0.50
イエローカプラー(Y−2) 0.50
DIR化合物(D−4) 0.04
DIR化合物(D−5) 0.02
高沸点溶媒(OIL−2) 0.42
ゼラチン 1.40
第13層:高感度青感性層
沃臭化銀乳剤C 0.15
沃臭化銀乳剤E 0.80
増感色素(SD−9) 8.0×10−5
増感色素(SD−11) 3.1×10−5
イエローカプラー(Y−1) 0.12
高沸点溶媒(OIL−2) 0.05
ゼラチン 0.79
第14層:第1保護層
沃臭化銀乳剤(平均粒径0.08μm、沃化銀含有率1.0モル%)
0.40
紫外線吸収剤(UV−1) 0.065
高沸点溶媒(OIL−1) 0.07
高沸点溶媒(OIL−3) 0.07
ゼラチン 0.65
第15層:第2保護層
アルカリ可溶性マット剤(平均粒径2μm)(PM−1) 0.15
ポリメチルメタクリレート(平均粒径3μm) 0.04
滑り剤(WAX−1) 0.04
ゼラチン 0.55
尚上記組成物の他に、塗布助剤Su−1、分散助剤Su−2、粘度調整剤、硬膜剤H−1、H−2、安定剤ST−1、かぶり防止剤AF−1、平均分子量:10,000及び平均分子量:1,100,000の2種のAF−2、及び防腐剤DI−1を添加した。
【0097】
上記試料に用いた乳剤は、下記のとおりである。各乳剤は、金・硫黄増感を最適に施した。尚、表3中の直径、厚みは各乳剤中のハロゲン化銀粒子の直径、厚みである。
【0098】
【表3】
【0099】
【化1】
【0100】
【化2】
【0101】
【化3】
【0102】
【化4】
【0103】
【化5】
【0104】
【化6】
【0105】
【化7】
【0106】
【化8】
【0107】
【化9】
【0108】
【化10】
【0109】
【化11】
【0110】
乳剤EM−2〜EM−8についても以下にに示すとおり試料101の乳剤EM−1に変えてこれらの各乳剤を用いる事により、同様に感光材料試料102〜108を作成した。
【0111】
【表4】
【0112】
発色現像処理工程を以下に示す。
【0113】
処理工程
1.発色現像 3分15秒 38.0±0.1℃
2.漂 白 6分30秒 38.0±3.0℃
3.水 洗 3分15秒 24〜41℃
4.定 着 6分30秒 38.0±3.0℃
5.水 洗 3分15秒 24〜41℃
6.安 定 3分15秒 38.0±3.0℃
7.乾 燥 50℃以下
各処理工程において使用した処理液組成は下記の通りである。
【0114】
〈発色現像液〉
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)
アニリン・硫酸塩 4.75g
無水亜硫酸ナトリウム 4.25g
ヒドロキシルアミン・1/2硫酸塩 2.0g
無水炭酸カリウム 37.5g
臭化ナトリウム 1.3g
ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩(一水塩) 2.5g
水酸化カリウム 1.0g
水を加えて1リットルとし、pH=10.1に調整する。
【0115】
〈漂白液〉
エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム塩 100.0g
エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム塩 10.0g
臭化アンモニウム 150.0g
氷酢酸 10.0g
水を加えて1リットルとし、アンモニア水を用いてpH=6.0に調整する。
【0116】
〈定着液〉
チオ硫酸アンモニウム 175.0g
無水亜硫酸ナトリウム 8.5g
メタ亜硫酸ナトリウム 2.3g
水を加えて1リットルとし、酢酸を用いてpH=6.0に調整する。
【0117】
〈安定液〉
ホルマリン(37%水溶液) 1.5cc
コニダックス(コニカ(株)製) 7.5cc
水を加えて1リットルとする。
【0118】
得られた各試料について、緑色光(G)を用いてセンシトメトリー用ウエッジ露光(1/200”)を施し、相対感度、粒状性、及び圧力特性の評価を行なった。
【0119】
相対感度は、露光後1分以内にカラー現像処理を開始し、Dmin(最小濃度)+0.15の濃度を与える露光量の逆数の相対値として求め、試料101の感度を100とする値で示した(100に対して、値が大きい程、高感度であることを示す)。
【0120】
粒状性は、Dmin+0.5の濃度を開口走査面積250μm2のマイクロデンシトメーターで走査した時に生じる濃度値の変動の標準偏差(RMS値)の相対値で示した。RMS値は小さい程粒状性が良く、効果があることを示す。試料101のRMS値を100とする値で示した(100に対して値が小さい程改良していることを示す)。
【0121】
圧力特性は、23℃/55%(相対湿度)の条件下で、引掻強度試験器(新東科学製)を用い、先端の曲率半径が0.025mmの針に5gの荷重をかけて一定速度で走査した後、露光、現像処理を行い、Dmin、及びDmin+0.4の濃度において、それぞれ荷重がかけられた部分の濃度変化ΔD1(Dmin)、及びΔD2(Dmin+0.4)を求め、試料101のΔD1、及びΔD2をそれぞれ100とする値で示した(それぞれ100に対して値が小さい程改良していることを示す)。
【0122】
その結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
表5に示す結果から明らかなように、本発明の乳剤を含むEM−2を用いた試料102が特に優れている。
【0125】
上述のごとく、本出願の発明によれば、高感度で、粒状性に優れ、かつ圧力カブリ/減感を改良したハロゲン化銀写真乳剤及びハロゲン化銀カラー写真感光材料を得ることができる。
【0126】
【発明の効果】
本発明によるハロゲン化銀カラー写真感光材料は高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良された優れた効果を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀カラー写真感光材料(以下、単に感光材料ともいう)に関する。更に詳しくは、高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンパクトカメラ及び自動焦点1眼レフカメラ更にはレンズ付きフィルム等の普及により、高感度でかつ画質の優れたハロゲン化銀カラー写真感光材料の開発が強く望まれている。そのために、写真用のハロゲン化銀乳剤に対する性能改良の要求はますます厳しく、高感度、優れた粒状性及び優れたシャープネス等の写真性能に対して、より高水準の要求がなされている。
【0003】
かかる要求に対して、例えば、米国特許第4,434,226号、同4,439,520号、同4,414,310号、同4,433,048号、同4,414,306号、同4,459,353号等に平板状ハロゲン化銀粒子(以下、単に〔平板粒子〕ともいう)を使用した技術が開示されており、増感色素による色増感効率の向上を含む感度の向上、感度/粒状性の改良、平板粒子の特異的な光学的性質によるシャープネスの向上、カバーリングパワーの向上などの利点が知られている。しかしながら、近年の高水準の要求に応えるには不十分であり、より一層の性能向上が望まれている。
【0004】
こうした高感度化、高画質化の流れに関連して、ハロゲン化銀カラー写真感光材料における圧力特性の向上に対する要請も従来以上に高まってきている。以前から様々な手段により圧力特性を改良することが検討されてきたが、可塑剤を添加する等の添加剤を用いる技術よりも、ハロゲン化銀粒子自体の耐応力性を向上させる技術の方が実用上好ましく、又、効果も大きいという見方が有力である。これらの要望に対して、沃化銀含有率の高い沃臭化銀層を有するコア/シェル型のハロゲン化銀粒子からなる乳剤が盛んに研究されてきた。特に、粒子内部に10mol%以上の高沃化銀相を有するコア/シェル型粒子含有の沃臭化銀乳剤は、例えばカラーネガフィルム用の乳剤として大変注目されてきた。
【0005】
コア/シェル型粒子で圧力特性を改良した技術としては、例えば特開昭59−99433号、同60−35726号、同60−147727号に開示の技術が知られている。又、特開昭63−220238号及び特開平1−201649号には、ハロゲン化銀粒子に転位線を導入することにより、高感度で粒状性、圧力特性、露光照度依存性等の改良技術が開示されている。また、特開平6−235988号には、中間殻に高沃度層を有する多重構造型の単分散平板粒子により、圧力耐性を向上した技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの技術においては、高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良されたハロゲン化銀乳剤として近年の高水準の要求に耐えうるものとして未だ満足できるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を鑑み、高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0009】
支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該乳剤層の少なくとも何れか1層のハロゲン化銀乳剤層に含まれる全ハロゲン化銀粒子の粒径の変動係数が20%以下であり、かつ該ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上が、アスペクト比9以上のハロゲン化銀粒子であり、該粒子が、沃化銀含有率15mol%未満のコアと、沃化銀含有率8mol%以上のシェルを有し、かつ、コアとシェルとが、X線回折法により測定される回折角度(2θ)が71〜74度の範囲に、2つのピークを有する回折曲線が得られる構造を有し、該粒子の平均沃化銀含有率が4mol%以上であり、かつ前記シェルの外側に設けられた、シェルとは沃化銀含有率の異なる最表面から50Å深さまでの最外層である該粒子表面の沃化銀含有率が、粒子の平均沃化銀含有率よりも高いことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
なお、上記X線回折法による測定は、ターゲットとしてCuを用い、CuのKα線を線源として、管電圧40kV、管電流100mAで、粉末X線法によりハロゲン化銀の(420)面の回折パターンを測定する。
【0010】
以下、本発明について、詳細に述べる。
【0011】
本発明のハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀粒子はハロゲン化銀乳剤層に含まれる全ハロゲン化銀粒子の粒径の変動係数が20%以下であり、かつ該ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上が、アスペクト比9以上のハロゲン化銀粒子である。
【0012】
即ち、本発明のハロゲン化銀粒子は、結晶学的には双晶に分類される。
【0013】
双晶とは、一つの粒子内に一つ以上の双晶面を有するハロゲン化銀結晶であるが、双晶の形態の分類はクラインとモイザーによる報文フォトグラフィッシェコレスポンデンツ(Photographishe Korrespondenz)第99巻、p100,同第100巻,p57に詳しく述べられている。
【0014】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、主平面に平行な双晶面を2枚有することが好ましい。双晶面は透過型電子顕微鏡により観察することができる。具体的な方法は次の通りである。まず、含有されるハロゲン化銀粒子が、支持体上にほぼ主平面が平行に配向するようにハロゲン化銀写真乳剤を塗布し、試料を作成する。これをダイヤモンド・カッターを用いて切削し、厚さ0.1μm程度の薄切片を得る。この切片を透過型電子顕微鏡で観察することにより双晶面の存在を確認することができる。
【0015】
本発明のハロゲン化銀粒子における2枚の双晶面間距離は、上記の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察において、主平面に対しほぼ垂直に切断された断面を示すハロゲン化銀粒子を任意に1000個以上選び、主平面に平行な2枚の双晶面間距離をそれぞれの粒子について求め、加算平均することにより得られる。
【0016】
本発明において、双晶面間距離の平均は0.01μm〜0.05μmが好ましく、更に好ましくは0.013μm〜0.025μmである。
【0017】
本発明において、双晶面間距離は、核形成時の過飽和状態に影響を及ぼす因子、例えばゼラチン濃度、ゼラチン種、温度、沃素イオン濃度、pBr、pH、イオン供給速度、攪拌回転数等の諸因子の組み合わせにおいて適切に選択することにより制御することができる。一般に核形成を高過飽和状態で行なうほど、双晶面間距離を狭くすることができる。
【0018】
過飽和因子に関しての詳細は、例えば特開昭63−92924号或いは特開平1−213637号等の記述を参考にすることができる。
【0019】
本発明のハロゲン化銀粒子の厚さは、前述の透過型電子顕微鏡を用いた切片の観察により、同様にしてそれぞれの粒子について厚さを求め、加算平均することにより得られる。ハロゲン化銀粒子の厚さは0.05μm〜1.5μmが好ましく、更に好ましくは0.07μm〜0.50μmである。
【0020】
本発明におけるアスペクト比とは、ハロゲン化銀粒子の厚みに対する直径の比、即ち個々の粒子の投影面積と同一の面積を有する円の直径(投影面積直径)をその粒子の厚さで除した値を意味する。
【0021】
個々のハロゲン化銀粒子の体積や粒径、アスペクト比及びそれらの平均値を算出するための、個々の粒子の直径や厚みを測定する一つの方法としては、レプリカ法により透過電子顕微鏡写真を撮影して、画像処理装置等を用いて個々の粒子の円相当直径と厚みを求める方法がある。この場合、厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出することができる。
【0022】
本発明のハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも何れか1層の全ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上がアスペクト比(粒径/粒子厚さ)が9以上のものを言うが、好ましくは該全投影面積の60%以上がアスペクト比9以上であり、更に好ましくは該全投影面積の70%以上がアスペクト比9以上である。
【0023】
本発明のハロゲン化銀粒子の粒径は、該ハロゲン化銀粒子の投影面積の円相当直径(該ハロゲン化銀粒子と同じ投影面積を有する円の直径)で示されるが、0.1〜5.0μmが好ましく、更に好ましくは0.2〜2.0μmである。
【0024】
粒径は、例えば該粒子を電子顕微鏡で1万倍から7万倍に拡大して撮影し、そのプリント上の粒子径又は投影時の面積を実測することによって得ることができる(測定粒子個数は無差別に1000個以上あることとする)。
【0025】
ここに、平均粒径rは、粒径riを有する粒子の頻度niとri3との積ni×ri3が最大となるときの粒径riと定義する(有効数字3桁,最小桁数字は4捨5入する)。
【0026】
本発明のハロゲン化銀粒子は、単分散のハロゲン化銀乳剤からなる。ここで単分散のハロゲン化銀乳剤としては、平均粒径rを中心に±20%の粒径範囲内に含まれるハロゲン化銀重量が、全ハロゲン化銀粒子重量の60%以上であるものが好ましく、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0027】
本発明の高度の単分散乳剤は、
(標準偏差/平均粒径)×100=粒径分布(粒径の変動係数)〔%〕
によって分布の広さを定義したとき、本発明の平板状ハロゲン化銀粒子の粒径分布は20%以下のものであり、更に好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下のものである。ここに平均粒径及び標準偏差は、上記定義した粒径riから求めるものとする。
【0028】
本発明のハロゲン化銀粒子は核となるコアと該コアを被覆するシェルとから構成される粒子であり、シェルは1層或いはそれ以上の層によって形成される。
【0029】
本発明のハロゲン化銀粒子のコアの沃化銀含有率は15mol%未満であるが、13mol%以下のものが好ましく、更に好ましくは10mol%以下である。また、上記シェルの内、少なくとも1層のシェルは沃化銀含有率が8mol%以上であるが、10mol%以上のものが好ましく、更に好ましくは15mol%以上である。
【0030】
本発明のコア/シェル型ハロゲン化銀粒子においては、コアの沃化銀含有率はシェルの沃化銀含有率よりも低いことが好ましい。
【0031】
コアの占める割合は、粒子全体の銀量の1〜60%とするのが望ましく、4〜40%が更に望ましい。
【0032】
本発明のハロゲン化銀粒子の平均沃化銀含有率は4mol%以上であるが、6mol%以上が好ましく、更に好ましくは8mol%以上、12mol%以下である。
【0033】
本発明のハロゲン化銀粒子は上記のように沃臭化銀を主として含有する乳剤であるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の組成のハロゲン化銀、例えば塩化銀を含有させることができる。
【0034】
本発明のハロゲン化銀粒子の作成においては、種粒子から成長させる方法が好ましく用いられる。具体的には、反応容器に予め保護コロイドを含む水溶液及び種粒子を存在させ、必要に応じて銀イオン、ハロゲンイオン、或いはハロゲン化銀微粒子を供給して種粒子を結晶成長させて得るものである。ここで種粒子は当該分野でよく知られているシングル・ジェット法、コントロールド・ダブルジェット法等により調製することができる。種粒子のハロゲン組成は任意であり、臭化銀、沃化銀、塩化銀、沃臭化銀、塩沃化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀の何れであってもよいが、臭化銀、沃臭化銀が好ましく、沃臭化銀の場合は、平均沃化銀含有率は1モル%〜10モル%が好ましい。
【0035】
本発明のハロゲン化銀粒子を種粒子から出発して成長させる場合、粒子中心部にコアとは異なるハロゲン組成領域を持つことがあり得る。また、種乳剤の全ハロゲン化銀に占める割合は銀量で50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、特に好ましくは10%以下である。
【0036】
上記コア/シェル型ハロゲン化銀粒子における沃化銀の分布状態は、各種の物理的測定法によって検知することができ、例えば日本写真学会・1981年度年次大会講演要旨集に記載されているような、低温でのルミネッセンスの測定やX線回折法によって調べることができる。
【0037】
本発明のハロゲン化銀粒子においては、コアとシェルが明確なコア/シェル構造を有するものである。ここで言う明確なコア/シェル構造とは、以下に述べるX線回折法により測定される回折角度(2θ)が71〜74度の範囲に、少なくともコアとシェルに対応する2つのピークを有する回折曲線が得られるものである。
【0038】
即ち、本発明における明確なコア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子は、その構造をX線回折法により測定することができる。
【0039】
ターゲットとしてCuを用い、CuのKα線を線源として、管電圧40kV、管電流100mAで、粉末X線法によりハロゲン化銀の(420)面の回折パターンを測定した場合、乳剤粒子が明確なコア/シェル構造をもつと回折角度(2θ)が71〜74度の範囲に少なくともコアとシェルに対応する2つのピークを有する回折曲線が得られる。ここで2つのピークをもつとは、最も低いピーク強度に対し、ピーク間の最低強度の比が0.9以下、好ましくは0.7以下になることを言う。2つのピーク強度を比べたとき、シェルの回折ピーク強度がコアの回折ピーク強度に対して1/1〜20/1であることが好ましく、更に好ましくは2/1〜15/1の場合である。
【0040】
また、本発明のハロゲン化銀粒子においては、前記のごとくX線回折パターンを求めた場合に、コア及びシェル部分に相当する2つのピークの形状に実質的な影響を与えない範囲でコアとシェル以外の層(シェルと区別するために中間層と呼ぶ)が存在しても良い。
【0041】
本発明のハロゲン化銀粒子の形成手段としては、当該分野でよく知られている種々の方法を用いることができる。即ち、シングル・ジェット法、コントロールド・ダブルジェット法、コントロールド・トリプルジェット法等を任意に組み合わせて使用することができるが、高度な単分散粒子を得るためには、ハロゲン化銀粒子の生成される液相中のpAgをハロゲン化銀粒子の成長速度に合わせてコントロールすることが重要である。pAg値としては7.0〜11.0の領域を使用し、好ましくは7.5〜10.5、更に好ましくは8.0〜10.0の領域を使用することができる。
【0042】
添加速度の決定にあたっては、特開昭54−48521号、特開昭58−49938号に記載の技術を参考にできる。
【0043】
本発明のハロゲン化銀粒子の製造時に、アンモニア、チオエーテル、チオ尿素等の公知のハロゲン化銀溶剤を存在させることもできるし、ハロゲン化銀溶剤を使用しなくても良い。
【0044】
本発明のハロゲン化銀粒子は、潜像が主として表面に形成される粒子或いは主として粒子内部に形成される粒子の何れであっても良い。
【0045】
本発明のハロゲン化銀粒子は、分散媒の存在下に即ち、分散媒を含む溶液中で製造される。ここで、分散媒を含む水溶液とは、ゼラチンその他の親水性コロイドを構成し得る物質(バインダーとなり得る物質など)により保護コロイドが水溶液中に形成されているものをいい、好ましくはコロイド状の保護ゼラチンを含有する水溶液である。
【0046】
本発明を実施する際、上記保護コロイドとしてゼラチンを用いる場合は、ゼラチンは石灰処理されたものでも、酸を使用して処理されたものでもどちらでもよい。ゼラチンの製法の詳細はアーサー・グアイス著、ザ・マクロモレキュラー・ケミストリー・オブ・ゼラチン(アカデミック・プレス、1964年発行)に記載がある。
【0047】
保護コロイドとして用いることができるゼラチン以外の親水性コロイドとしては、例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一或いは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質がある。
【0048】
ゼラチンの場合は、パギー法においてゼリー強度200以上のものを用いることが好ましい。
【0049】
本発明のハロゲン化銀粒子は、該粒子を形成する過程及び/又は成長させる過程で、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、鉄塩、ロジウム塩、イリジウム塩、インジウム塩(錯塩を含む)から選ばれる少なくとも1種を用いて金属イオンを添加し、粒子内部及び/又は粒子表面にこれらの金属元素を含有させることができる。
【0050】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子の成長終了後に、不要な可溶性塩類を除去したものであってもよいし、或いは含有させたままのものでも良い。
【0051】
また、特開昭60−138538号記載の方法のように、ハロゲン化銀成長の任意の点で脱塩を行なう事も可能である。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure、以下RDと略す)17643号II項に記載の方法に基づいて行なうことができる。
【0052】
更に詳しくは、沈澱形成後、或いは物理熟成後の乳剤から可溶性塩を除去するためには、ゼラチンをゲル化させて行なうヌーデル水洗法を用いても良く、また無機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(たとえばポリスチレンスルホン酸)、或いはゼラチン誘導体(たとえばアシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラチンなど)を利用した沈澱法(フロキュレーション)を用いても良い。
【0053】
本発明において、個々のハロゲン化銀粒子の沃化銀含有率及び平均沃化銀含有率は、EPMA法(Electron Probe Micro Analyzer法)を用いることにより求めることが可能である。この方法は、乳剤粒子を互いに接触しないように良く分散したサンプルを作成し、電子ビームを照射する電子線励起によるX線分析より極微小な部分の元素分析が行える。この方法により、各粒子から放射される銀及び沃度の特性X線強度を求めることにより、個々の粒子のハロゲン組成が決定できる。少なくとも50個の粒子についてEPMA法により沃化銀含有率を求めれば、それらの平均から平均沃化銀含有率が求められる。
【0054】
本発明のハロゲン化銀粒子は、粒子間の沃化銀含有率がより均一になっていることが好ましい。EPMA法により粒子間の沃化銀含有率の分布を測定した時に、相対標準偏差が30%以下、更に20%以下であることが好ましい。
【0055】
本発明のハロゲン化銀粒子の表面とは、ハロゲン化銀粒子の最表面を含む粒子の最外層であって、粒子の最表面から約50Åまでの深さをいう。本発明のハロゲン化銀粒子の表面のハロゲン組成はXPS法(X−ray Photoelectron Spectroscopy法:X線光電子分光法)によって次のように求められる。
【0056】
即ち、試料を1×10E−8torr以下の超高真空中で−110℃以下まで冷却し、プローブ用X線としてMgKαをX線源電圧15kV、X線源電流40mAで照射し、Ag3d5/2、Br3d、I3d3/2の電子について測定する。測定されたピークの積分強度を感度因子(Sensitivity Factor)で補正し、これらの強度比から表面のハライド組成を求める。
【0057】
XPS法は従来から、ハロゲン化銀粒子表面の沃化銀含有率を求める方法として特開平2−24188号等に開示されている。しかし、室温で測定を行った場合、X線照射に伴う試料が破壊されるため、最表層の正確な沃化銀含有率は求められなかった。本発明者らは試料を破壊の起きない温度まで冷却する事により、表層の沃化銀含有率を正確に求めることに成功した。その結果、特にコア/シェル粒子のような表面と内部の組成が異なる粒子や、最表面に高沃度層や低沃度層が局在している粒子では、室温での測定値はX線照射によるハロゲン化銀の分解とハライド(特に沃度)の拡散のために真の組成とは大きく異なることが明らかになった。
【0058】
ここで用いられるXPS法とは具体的には次の通りである。
【0059】
乳剤に蛋白質分解酵素(プロナーゼ)0.05重量%水溶液を加え、45℃で30分間撹拌してゼラチンを分解した。これを遠心分離して乳剤粒子を沈降させ、上澄み液を除去する。次に蒸留水を加えて乳剤粒子を蒸留水中に分散させ、遠心分離し、上澄み液を除去する。乳剤粒子を水中に再分散させ、鏡面研磨したシリコンウエハー上に薄く塗布して測定試料とする。このようにして作成した試料を用いて、XPSによる表面沃度測定を行った。X線照射による試料の破壊を防ぐため、試料はXPS測定用チャンバー内で−110〜−120℃に冷却した。プローブ用X線としてMgKαをX線源電圧15kV、X線源電流40mAで照射し、Ag3d5/2、Br3d、I3d3/2電子について測定した。測定されたピークの積分強度を感度因子(Sensitivity Factor)で補正し、これらの強度比から表面のハライド組成を求めた。
【0060】
本発明のハロゲン化銀粒子は、粒子表面の沃化銀含有率が粒子の平均沃化銀含有率よりも高いという関係を満たすものである。好ましくは、粒子表面の沃化銀含有率/平均沃化銀含有率=1.3〜30の関係を満たし、更に好ましくは、粒子表面の沃化銀含有率/平均沃化銀含有率=1.5〜15の関係を満たすものである。
【0061】
本発明のハロゲン化銀粒子は、常法により化学増感することができる。即ち、硫黄増感、セレン増感、金その他の貴金属化合物を用いる貴金属増感法などを単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0062】
本発明のハロゲン化銀粒子は、写真業界において増感色素として知られている色素を用いて所望の波長域に光学的に増感できる。増感色素は、単独で用いてもよいが2種類以上を組み合わせて用いても良い。増感色素と共にそれ自身分光増感作用をもたない色素、或いは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、増感色素の増感作用を強める強色増感剤を乳剤中に含有させても良い。
【0063】
本発明のハロゲン化銀粒子には、カブリ防止剤、安定剤などを加えることができる。バインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利である。乳剤層、その他の親水性コロイド層は、硬膜することができ、また、可塑剤、水不溶性又は可溶性合成ポリマーの分散物(ラテックス)を含有させることができる。
【0064】
本発明のハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀カラー写真感光材料の乳剤層にはカプラーが用いられる。更に色補正の効果を有している競合カプラー及び現像主薬の酸化体とのカップリングによって現像促進剤、現像剤、ハロゲン化銀溶剤、調色剤、硬膜剤、カブリ剤、カブリ防止剤、化学増感剤、分光増感剤及び減感剤のような写真的に有用なフラグメントを放出する化合物を用いることができる。
【0065】
本発明のハロゲン化銀粒子を含有する感光材料には、フィルター層、ハレーション防止層、イラジュエーション防止層等の補助層を設けることができる。これらの層中及び/又は乳剤層中には現像処理中に感光材料から流出するか、若しくは漂白される染料が含有されても良い。
【0066】
本発明のハロゲン化銀粒子を含有する感光材料には、マット剤、滑剤、画像安定剤、ホルマリンスカベンジャー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、界面活性剤、現像促進剤や現像遅延剤を添加できる。
【0067】
支持体としては、ポリエチレン等をラミネートした紙、ポリエチレンテレフタレートフィルム、バライタ紙、三酢酸セルロース等を用いることができる。
【0068】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
実施例1
双晶種乳剤T−1の調製
以下に示す方法によって、2枚の平行な双晶面を有した種乳剤を調製した。
【0070】
(A液)
オセインゼラチン 24.2g
臭化カリウム 10.75g
硝酸(1.2N) 118.6ml
HO(CH2CH2O)m(C(CH3)HCH2O)19.8(CH2CH2O)nH
(m+n=9.77)の10重量%メタノール溶液 6.78ml
蒸留水で9686mlに仕上げる
(B液)
硝酸銀 1200.0g
蒸留水で2826mlに仕上げる
(C液)
臭化カリウム 823.8g
沃化カリウム 23.46g
蒸留水で2826mlに仕上げる
(D液)
オセインゼラチン 120.9g
蒸留水で2130mlに仕上げる
(E液)
臭化カリウム 76.48g
蒸留水で376mlに仕上げる
(F液)
水酸化カリウム 10.06g
蒸留水で340mlに仕上げる
35℃で激しく撹拌したA液に、B液464mlとC液464mlをダブルジェット法により2分間かけて添加し、核粒子の形成を行なった。この間、必要に応じてE液を使用して、pAgを9.82に保った。
【0071】
その後、66分間かけて温度を60℃に上げた。温度上昇中、反応系内の温度が55℃まで上がったところでD液を7分間かけて単独で添加した。更に、温度が60℃に上昇した時点でF液を1分間で添加し、引き続きB液2362mlとC液2362mlを43分間かけて添加した。温度上昇開始直後からはE液を使用してpAgを8.97に保った。
【0072】
B液及びC液の添加終了後、常法に従って脱塩を行なった。脱塩後の乳剤に、10重量%のゼラチン水溶液を加え、55℃で30分間攪拌分散させた後、蒸留水を加えて5360gの乳剤として仕上げた。
【0073】
この種乳剤粒子を電子顕微鏡観察したところ、互いに平行な2枚の双晶面を有する平板状粒子であった。
【0074】
この種乳剤粒子の平均粒径は0.445μm、全投影面積の50%がアスペクト比5.0以上であった。
【0075】
本発明乳剤EM−1の作成
以下に示す6種類の溶液(溶液Aには、種乳剤T−1を含む)を用いて、本発明の乳剤EM−1を調製した。
【0076】
(溶液A)
オセインゼラチン 163.4g
HO(CH2CH2O)m(C(CH3)HCH2O)19.8(CH2CH2O)nH
(m+n=9.77)の10重量%メタノール溶液 2.50ml
種乳剤(T−1) 674.50g
臭化カリウム 3.0g
蒸留水で3500mlに仕上げる
(溶液B)
硝酸銀 2581.7g
蒸留水で4342mlに仕上げる
(溶液C)
臭化カリウム 1828.3g
蒸留水で4390mlに仕上げる
(溶液D)
臭化カリウム水溶液(1.75N)
(溶液E)
酢酸水溶液(56重量%)
(溶液F)
3重量%のゼラチンと、沃化銀粒子(平均粒径0.05μm)から成る
微粒子乳剤(*) 2793g
* 調製法は以下の通り(0.06モルの沃化カリウムを含む6.0重量%のゼラチン溶液5000mlに、7.06モルの硝酸銀と、7.06モルの沃化カリウムを含む水溶液、それぞれ2000mlを、10分間かけて添加した。微粒子形成中のpHは硝酸を用いて2.0に、温度は40℃に制御した。粒子形成後に、炭酸ナトリウム水溶液を用いてpHを6.0に調整した。仕上がり重量は12.53kgであった)。
【0077】
75℃に保った溶液Aを激しく攪拌し、溶液B、C及びFを表1に示した組み合わせに従って、トリプルジェット法又はシングルジェット法による添加を行ない、種結晶を成長させて平板状ハロゲン化銀乳剤を調製した。
【0078】
ここで、トリプルジェット添加時の溶液B、C及びFの添加流量及びシングルジェット添加時の溶液Fの添加流量は、それぞれハロゲン化銀粒子の臨界成長速度に見合ったように時間に対して関数様に変化させ、成長している種結晶以外に小粒子の発生及びオストワルド熟成により多分散化しないように適切な添加速度にコントロールした(表1には代表的なポイントデータを記載した)。
【0079】
また、結晶成長の全域に渡って、pAg及びpHをコントロールした。pAg及びpHコントロールのために、必要に応じて溶液D、Eを添加した。
【0080】
粒子成長後に、特開平5−72658号に記載の方法に従い脱塩処理を施し、その後ゼラチンを加え分散し、40℃にてpHを5.80、pAgを8.06に調整した。
【0081】
得られた乳剤粒子の電子顕微鏡写真から、平均粒径1.348μm(投影面積の円換算直径の平均値)、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布18.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0082】
【表1】
【0083】
(本発明乳剤EM−2〜EM−4の調製)
乳剤EM−1の製造方法において、混合時間192.3分以降のpAgを10.0に変更し、各反応溶液の添加流量もハロゲン化銀粒子の成長速度に見合ったように関数様に変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、乳剤EM−2を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.613μm、アスペクト比12.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比12.0)、粒径分布18.5%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0084】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、シェル形成時の反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、乳剤EM−3を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.348μm、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布18.2%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0085】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、乳剤EM−4を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.350μm、アスペクト比7.2以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.2)、粒径分布19.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0086】
(比較用乳剤EM−5〜EM−8の調製)
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、コアとシェルの沃化銀含有率が同じ乳剤EM−5を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.349μm、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布18.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0087】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、pAgを混合開始から8.2に一定にコントロールし、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、アスペクト比の低い乳剤EM−6を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.118μm、アスペクト比4.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比4.0)、粒径分布19.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0088】
尚、EM−6はアスペクト比5以上の粒子は投影面積の50%に達しなかった。
【0089】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を一律に下げて、混合時間を1.5に延長し、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、粒径分布の広い乳剤EM−7を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.342μm、アスペクト比6.7以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比6.7)、粒径分布26.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0090】
更に、乳剤EM−1の製造方法において、各反応溶液の添加流量を変化させ、それ以外は乳剤EM−1と同様の製造方法により、コアの沃化銀含有率がシェルの沃化銀含有率よりも高い乳剤EM−8を調製した。得られた乳剤粒子の走査型電子顕微鏡写真から、平均粒径1.349μm、アスペクト比7.0以上の粒子が全投影面積の70%以上(平均アスペクト比7.0)、粒径分布19.0%のハロゲン化銀粒子であることが確認された。
【0091】
乳剤EM−1〜EM−8の組成、構造等の結果を表2にまとめた。
【0092】
【表2】
【0093】
実施例2(感光材料試料の作成)
乳剤EM−1〜EM−8に、金−硫黄増感を最適に施し、これらの乳剤を用いてトリアセチルセルロースフィルム支持体上に下記に示すような組成の各層を順次支持体側から形成して、多層カラー写真感光材料を作成した。
【0094】
以下の全ての記載において、ハロゲン化銀カラー写真感光材料中の添加量は、特に記載のない限り1m2当たりのグラム数を示す。また、ハロゲン化銀及びコロイド銀は、銀に換算して示し、増感色素は、ハロゲン化銀1モル当たりのモル数で示した。
【0095】
多層カラー写真感光材料試料101(本発明の乳剤EM−1を使用)の構成は以下の通りである。
【0096】
試料101
第1層:ハレーション防止層
黒色コロイド銀 0.16
紫外線吸収剤(UV−1) 0.20
高沸点溶媒(OIL−1) 0.16
ゼラチン 1.60
第2層:中間層
化合物(SC−1) 0.14
高沸点溶媒(OIL−2) 0.17
ゼラチン 0.80
第3層:低感度赤感性層
沃臭化銀乳剤A 0.15
沃臭化銀乳剤B 0.35
増感色素(SD−1) 2.0×10−4
増感色素(SD−2) 1.4×10−4
増感色素(SD−3) 1.4×10−5
増感色素(SD−4) 0.7×10−4
シアンカプラー(C−1) 0.53
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.04
DIR化合物(D−1) 0.025
高沸点溶媒(OIL−3) 0.48
ゼラチン 1.09
第4層:中感度赤感性層
沃臭化銀乳剤B 0.30
沃臭化銀乳剤C 0.34
増感色素(SD−1) 1.7×10−4
増感色素(SD−2) 0.86×10−4
増感色素(SD−3) 1.15×10−5
増感色素(SD−4) 0.86×10−4
シアンカプラー(C−1) 0.33
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.013
DIR化合物(D−1) 0.02
高沸点溶媒(OIL−1) 0.16
ゼラチン 0.79
第5層:高感度赤感性層
沃臭化銀乳剤D 0.95
増感色素(SD−1) 1.0×10−4
増感色素(SD−2) 1.0×10−4
増感色素(SD−3) 1.2×10−5
シアンカプラー(C−2) 0.14
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.016
高沸点溶媒(OIL−1) 0.16
ゼラチン 0.79
第6層:中間層
化合物(SC−1) 0.09
高沸点溶媒(OIL−2) 0.11
ゼラチン 0.80
第7層:低感度緑感性層
沃臭化銀乳剤A 0.12
沃臭化銀乳剤B 0.38
増感色素(SD−4) 4.6×10−5
増感色素(SD−5) 4.1×10−4
マゼンタカプラー(M−1) 0.14
マゼンタカプラー(M−2) 0.14
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.06
高沸点溶媒(OIL−4) 0.34
ゼラチン 0.70
第8層:中間層
ゼラチン 0.41
第9層:中感度緑感性層
沃臭化銀乳剤B 0.30
沃臭化銀乳剤C 0.34
増感色素(SD−6) 1.2×10−4
増感色素(SD−7) 1.2×10−4
増感色素(SD−8) 1.2×10−4
マゼンタカプラー(M−1) 0.04
マゼンタカプラー(M−2) 0.04
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.017
DIR化合物(D−2) 0.025
DIR化合物(D−3) 0.002
高沸点溶媒(OIL−5) 0.12
ゼラチン 0.50
第10層:高感度緑感性層
本発明乳剤EM−1 0.95
増感色素(SD−6) 7.1×10−5
増感色素(SD−7) 7.1×10−5
増感色素(SD−8) 7.1×10−5
マゼンタカプラー(M−1) 0.09
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.011
高沸点溶媒(OIL−4) 0.11
ゼラチン 0.79
第11層:イエローフィルター層
黄色コロイド銀 0.08
化合物(SC−1) 0.15
高沸点溶媒(OIL−2) 0.19
ゼラチン 1.10
第12層:低感度青感性層
沃臭化銀乳剤A 0.12
沃臭化銀乳剤B 0.24
沃臭化銀乳剤C 0.12
増感色素(SD−9) 6.3×10−5
増感色素(SD−10) 1.0×10−5
イエローカプラー(Y−1) 0.50
イエローカプラー(Y−2) 0.50
DIR化合物(D−4) 0.04
DIR化合物(D−5) 0.02
高沸点溶媒(OIL−2) 0.42
ゼラチン 1.40
第13層:高感度青感性層
沃臭化銀乳剤C 0.15
沃臭化銀乳剤E 0.80
増感色素(SD−9) 8.0×10−5
増感色素(SD−11) 3.1×10−5
イエローカプラー(Y−1) 0.12
高沸点溶媒(OIL−2) 0.05
ゼラチン 0.79
第14層:第1保護層
沃臭化銀乳剤(平均粒径0.08μm、沃化銀含有率1.0モル%)
0.40
紫外線吸収剤(UV−1) 0.065
高沸点溶媒(OIL−1) 0.07
高沸点溶媒(OIL−3) 0.07
ゼラチン 0.65
第15層:第2保護層
アルカリ可溶性マット剤(平均粒径2μm)(PM−1) 0.15
ポリメチルメタクリレート(平均粒径3μm) 0.04
滑り剤(WAX−1) 0.04
ゼラチン 0.55
尚上記組成物の他に、塗布助剤Su−1、分散助剤Su−2、粘度調整剤、硬膜剤H−1、H−2、安定剤ST−1、かぶり防止剤AF−1、平均分子量:10,000及び平均分子量:1,100,000の2種のAF−2、及び防腐剤DI−1を添加した。
【0097】
上記試料に用いた乳剤は、下記のとおりである。各乳剤は、金・硫黄増感を最適に施した。尚、表3中の直径、厚みは各乳剤中のハロゲン化銀粒子の直径、厚みである。
【0098】
【表3】
【0099】
【化1】
【0100】
【化2】
【0101】
【化3】
【0102】
【化4】
【0103】
【化5】
【0104】
【化6】
【0105】
【化7】
【0106】
【化8】
【0107】
【化9】
【0108】
【化10】
【0109】
【化11】
【0110】
乳剤EM−2〜EM−8についても以下にに示すとおり試料101の乳剤EM−1に変えてこれらの各乳剤を用いる事により、同様に感光材料試料102〜108を作成した。
【0111】
【表4】
【0112】
発色現像処理工程を以下に示す。
【0113】
処理工程
1.発色現像 3分15秒 38.0±0.1℃
2.漂 白 6分30秒 38.0±3.0℃
3.水 洗 3分15秒 24〜41℃
4.定 着 6分30秒 38.0±3.0℃
5.水 洗 3分15秒 24〜41℃
6.安 定 3分15秒 38.0±3.0℃
7.乾 燥 50℃以下
各処理工程において使用した処理液組成は下記の通りである。
【0114】
〈発色現像液〉
4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)
アニリン・硫酸塩 4.75g
無水亜硫酸ナトリウム 4.25g
ヒドロキシルアミン・1/2硫酸塩 2.0g
無水炭酸カリウム 37.5g
臭化ナトリウム 1.3g
ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩(一水塩) 2.5g
水酸化カリウム 1.0g
水を加えて1リットルとし、pH=10.1に調整する。
【0115】
〈漂白液〉
エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム塩 100.0g
エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム塩 10.0g
臭化アンモニウム 150.0g
氷酢酸 10.0g
水を加えて1リットルとし、アンモニア水を用いてpH=6.0に調整する。
【0116】
〈定着液〉
チオ硫酸アンモニウム 175.0g
無水亜硫酸ナトリウム 8.5g
メタ亜硫酸ナトリウム 2.3g
水を加えて1リットルとし、酢酸を用いてpH=6.0に調整する。
【0117】
〈安定液〉
ホルマリン(37%水溶液) 1.5cc
コニダックス(コニカ(株)製) 7.5cc
水を加えて1リットルとする。
【0118】
得られた各試料について、緑色光(G)を用いてセンシトメトリー用ウエッジ露光(1/200”)を施し、相対感度、粒状性、及び圧力特性の評価を行なった。
【0119】
相対感度は、露光後1分以内にカラー現像処理を開始し、Dmin(最小濃度)+0.15の濃度を与える露光量の逆数の相対値として求め、試料101の感度を100とする値で示した(100に対して、値が大きい程、高感度であることを示す)。
【0120】
粒状性は、Dmin+0.5の濃度を開口走査面積250μm2のマイクロデンシトメーターで走査した時に生じる濃度値の変動の標準偏差(RMS値)の相対値で示した。RMS値は小さい程粒状性が良く、効果があることを示す。試料101のRMS値を100とする値で示した(100に対して値が小さい程改良していることを示す)。
【0121】
圧力特性は、23℃/55%(相対湿度)の条件下で、引掻強度試験器(新東科学製)を用い、先端の曲率半径が0.025mmの針に5gの荷重をかけて一定速度で走査した後、露光、現像処理を行い、Dmin、及びDmin+0.4の濃度において、それぞれ荷重がかけられた部分の濃度変化ΔD1(Dmin)、及びΔD2(Dmin+0.4)を求め、試料101のΔD1、及びΔD2をそれぞれ100とする値で示した(それぞれ100に対して値が小さい程改良していることを示す)。
【0122】
その結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
表5に示す結果から明らかなように、本発明の乳剤を含むEM−2を用いた試料102が特に優れている。
【0125】
上述のごとく、本出願の発明によれば、高感度で、粒状性に優れ、かつ圧力カブリ/減感を改良したハロゲン化銀写真乳剤及びハロゲン化銀カラー写真感光材料を得ることができる。
【0126】
【発明の効果】
本発明によるハロゲン化銀カラー写真感光材料は高感度で粒状性に優れ、圧力特性が改良された優れた効果を有する。
Claims (1)
- 支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料において、該乳剤層の少なくとも何れか1層のハロゲン化銀乳剤層に含まれる全ハロゲン化銀粒子の粒径の変動係数が20%以下であり、かつ該ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上が、アスペクト比9以上のハロゲン化銀粒子であり、該粒子が、沃化銀含有率15mol%未満のコアと、沃化銀含有率8mol%以上のシェルを有し、かつ、コアとシェルとが、X線回折法により測定される回折角度(2θ)が71〜74度の範囲に、2つのピークを有する回折曲線が得られる構造を有し、該粒子の平均沃化銀含有率が4mol%以上であり、かつ前記シェルの外側に設けられた、シェルとは沃化銀含有率の異なる最表面から50Å深さまでの最外層である該粒子表面の沃化銀含有率が、粒子の平均沃化銀含有率よりも高いことを特徴とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
なお、上記X線回折法による測定は、ターゲットとしてCuを用い、CuのKα線を線源として、管電圧40kV、管電流100mAで、粉末X線法によりハロゲン化銀の(420)面の回折パターンを測定する。
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