JP3559249B2 - 高粘性食品の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱処理した粒状の固形野菜を分散して含有する高粘性食品の製造方法に関するものである。また、本発明は、加熱処理した粒状の特定品種馬鈴薯を、所定量、分散して含有するカレーフィリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、カレーフィリング等の高粘性食品が、種々の食品(例えば、カレーパン等)の製造のために用いられている。このような高粘性食品には、固形野菜を含ませて、その食感及び味を所望のものとすることが望まれる場合が多い。例えば、カレーパンに用いられるカレーフィリングの場合、そのカレーソース原料中に馬鈴薯を固形物として含有させることが望まれるが、馬鈴薯が一部に集中して存在していると、得られる製品の食感を所望のものとすることができず、また、その味も部分により大きく異なったものとなり、望ましくない。そこで、カレーパンにおいては、馬鈴薯を分散して含む形態のカレーフィリングを充填することが望まれている。
しかしながら、加熱処理した固形野菜は、一般に、その組織がもろくて壊れやすい。また、この加熱処理した固形野菜を高粘性原料中に分散させようとすると、原料が高粘性であるために該野菜を均一に分散させるのが困難となり、また、分散されるまで混合すれば、馬鈴薯が崩れてしまい、所望の食感を達成できず、望ましくない。
そこで、加熱処理された固形野菜がその組織を保ったまま、即ち、所望の形状のまま、高粘性原料中に良好に分散して含有されている高粘性食品を製造する方法が求められる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、加熱処理された固形野菜が均一に分散され、該固形野菜の組織が良好に保たれ、粒状感や固形物感が活かされていると同時に、食品全体として特有の食感と口解けを有する新規な高粘性食品を得ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、低粘度の流動性原料中に、加熱処理した粒状の固形野菜を分散させ、澱粉及び/又は固形油脂を添加した後、加熱し、次いで、冷却して、該原料の粘度を所定の高粘性のものとすることにより上記課題を効率的に解決することができるとの知見に基づくものである。
即ち、本発明は、低粘度の流動性原料中に、加熱処理した粒状の固形野菜を分散させる工程、該原料に澱粉及び/又は油脂を添加した後、加熱して、該澱粉をα化させかつ/又は該油脂を溶融させる工程、次いで、該原料を冷却して、品温25℃での粘度が5,000〜100,000mPa・s(B型粘度計)とする工程を含むことを特徴とする高粘性食品の製造法を提供する。
また、本発明は、品温25℃において粘度5,000〜100,000mPa・s(B型粘度計)のカレーソース中に、加熱処理した粒状のさやか品種馬鈴薯を、該ソースの質量を基準として10〜40質量%の量、分散して含有することを特徴とするカレーフィリングを提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で対象とする高粘性食品とは、品温25℃での粘度が5,000〜100,000mPa・s(B型粘度計)の食品であり、例えば、カレーフィリング、ディップソース、トッピングソース等が挙げられる。高粘性食品は、そのまま又は加熱することにより喫食することができる食品であってもよく、又は、所望の食品を得るための原料として用いるためのものであってもよい。
本発明において、低粘度の流動性原料とは、例えば、品温25℃での粘度が500〜5,000mPa・s(B型粘度計)、好ましくは1,000〜2,500mPa・sであり、流動性を有する原料を意味し、製造しようとする高粘性食品によって適宜決定することができる。流動性原料中には、油脂、野菜・果実の細断物又は磨砕物、具材又はエキス形態の肉類、各種調味料、各種香辛料、乳原料、糖類等を含ませることができる。野菜・果実の磨砕物及び/又は焙煎物を含む場合、得られる食品の風味が向上するので好ましく、その含有量は、得られる食品全体の質量を基準として、5〜30質量%(以下、単に%と称する)とすることができる。また、粘度付与剤として、例えば、小麦粉、馬鈴薯、コーンスターチ等の澱粉、白玉粉等を含ませてもよい。例えば、高粘性食品がカレーフィリング(カレーパンのフィリング用に用いるもの)である場合には、流動性原料としては、常法により得られるカレーソースを用いることができる。尚、流動性原料の粘度を、上述したような範囲内のものとすることにより、後述する馬鈴薯をその組織を崩すことなく該原料中に良好に分散することが可能となる。
【0006】
本発明では、上述の低粘度の流動性原料中に、加熱処理した粒状の固形野菜を分散させる。粒状の固形野菜としては、例えば、3mm角以上の大きさ、好ましくは3〜20mm角、より好ましくは10〜15mm角にカットされた馬鈴薯、人参、タマネギ等が挙げられる。その形状は、乱切りされたものであっても、立方体のものであってもよい。また、カットは、加熱処理を施す前に行っても、加熱処理を施した後に行ってもよいが、加熱処理を施す前に行うのが好ましい。
また、固形野菜の含量は、得られる高粘性食品全体の質量を基準として、10〜40%であるのが好ましく、より好ましくは20〜30%である。
低粘度の流動性原料中への固形野菜の分散は、常法により行うことができ、例えば、ニーダー等の混合撹拌装置により行うことができる。
固形野菜の加熱処理条件は、例えば、固形野菜の種類及び量により適宜設定することができるが、好ましくは70〜95℃、より好ましくは75〜90℃で、好ましくは1〜30分間、より好ましくは2〜10分間行うのがよい。このような加熱処理は、例えば、煮込み、蒸煮、マイクロ波加熱等により行うことができる。尚、この加熱処理は、固形野菜を低粘度の流動性原料に分散させる前に行ってもよく、又は分散後に低粘度の流動性原料中において行ってもよく、分散後に行うのが好ましい。
【0007】
また、本発明では、固形野菜として馬鈴薯を用いるのが好ましい。馬鈴薯としては、さやか品種馬鈴薯を用いるのが好ましい。さやか品種馬鈴薯とは、品種名「さやか」、登録番号「農林36号」、系統名(地方番号)「北海74号」の馬鈴薯のことをいう。その主な特徴としては、熟期が「農林1号」より3日〜18日早い中生であること、L規格以上(120g)いもの割合が高く、L規格以上いも収量は「男しゃくいも」の2.7倍であること、曝光による緑化・グルコアルカロイドの生成量が少ないこと、及び内部異常・剥皮褐変・調理後黒変も少ないことが挙げられる。さやか品種馬鈴薯を用いることにより、馬鈴薯の組織の崩れの問題が一層改善され、その粒状感や固形物感が更に活かされると同時に、食品全体としての食感と口解け感が一層改善されたものとなる。
また、本発明では、さやか品種馬鈴薯として、冷凍さやか品種馬鈴薯を解凍したものを用いることができる。この冷凍さやか品種馬鈴薯は、カットしたさやか品種馬鈴薯を、褐変起因酵素を失活させるが澱粉が実質的に完全糊化しない条件でブランチングした後に凍結することにより得ることができる。この際、ブランチングは、カットしたさやか品種馬鈴薯の中心温度が70〜95℃に達するように行い、凍結は急速凍結とするのが好ましい。解凍は常法により行うことができる。このようなさやか品種馬鈴薯を用いることにより、食感(歯応え)及び風味が優れたものとなる。
【0008】
本発明では、上記分散工程後、前記原料に澱粉及び/又は固形油脂を添加する。添加する澱粉としては、例えば、馬鈴薯、コーンスターチ、小麦粉、タピオカ等の澱粉が挙げられ、また、固形油脂としては、牛脂、ラード、パーム油等が挙げられ、澱粉及び固形油脂の混合物を用いてもよい。澱粉及び固形油脂の混合物としては、例えば、カレーフレークが挙げられる。また、澱粉及び/又は固形油脂の添加量は、得ようとする高粘性食品の種類により適宜設定することができるが、例えば、該食品全体の質量を基準として、3〜20%とするのが好ましく、より好ましくは5〜15%である。
前記原料に油脂及び/又は固形油脂を添加した後、加熱して該澱粉をα化させかつ/又は該油脂を溶融させる。この際の加熱処理条件は、例えば、70〜95℃、5〜30分間とすることができる。
【0009】
本発明では、上記加熱処理に次いで、前記原料を冷却処理する。冷却処理は、前記原料中における固形野菜が良好に分散状態で保持される程度のものとすればよく、例えば、10〜40℃にまで冷却するのが好ましい。本発明においては、上記工程により、品温25℃での粘度が5,000〜100,000mPa・s(B型粘度計)の高粘性食品が得られる。本発明の高粘性食品の品温25℃での粘度は、好ましくは10,000〜80,000mPa・s(B型粘度計)、より好ましくは20,000〜50,000mPa・s(B型粘度計)である。
また、本発明の高粘性食品の水分含量は、特に制限されることはないが、例えば、該食品の質量を基準として、40〜80%であってもよく、50〜75%であるのが好ましい。また、本発明の食品の油分含量は、該食品の質量を基準として、3〜30%であってもよく、5〜20%であるのが好ましい。
【0010】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、加熱処理された固形野菜が均一に分散され、該固形野菜の組織が良好に保たれ、粒状感や固形物感が活かされていると同時に、食品全体として特有の食感と口解けを有する新規な高粘性食品を製造することができる。また、本発明のカレーフィリングは、馬鈴薯の含量を高くすることができ、従って、粒状感や固形物感に優れたものである。
【0011】
【実施例】
実施例1
横軸ニーダーに、ラード1.7部、及び細断したタマネギ10.4部を投入して100℃にまで加熱しながら20分間焙煎した。10mm角の牛肉(具材)23部、摩り下ろしジンジャー0.3部、摩り下ろしガーリック0.3部、及びラード1.2部を加えて、再び100℃にまで加熱しながら10分間焙煎した。みじん切りしたニンジン1.5部、食塩0.1部、砂糖0.8部、ビーフエキスその他の調味料2.7部、浮き粉澱粉0.4部、カレーパウダー2.3部、クミンとコリアンダーからなる香辛料0.6部、及び水22部を加えてペースト状物を調製し、これを80℃に加熱して8分間煮込んだ。これにより、低粘度の流動性原料(1,800mPa・s、25℃、B型粘度計)を調製した。
上述のようにして調製した低粘度の流動性原料に、予め12mm角の大きさにカットしておいた、さやか品種馬鈴薯22部を加えて、横軸の混合撹拌機により10rpmの速度で撹拌しながら分散させて、80℃で3分間煮込んだ。
さやか品種馬鈴薯が良好に分散された低粘度の流動性原料に、カレーフレーク10.7部を加えて混合し、85℃にまで加熱しながら20分間煮込んだ。次いで、25℃にまで冷却して高粘度カレーソースを得た。この高粘度カレーソースは、具材を除くペーストの粘度が品温25℃において約30,000mPa・sのものであった。また、この高粘度カレーソースは、油分10%、水分65%のもので、馬鈴薯が均一に分散しており、馬鈴薯は組織が崩れておらず、所望の食感及び粒状感を有し、特にカレーパンのフィリング用に適するものであった。尚、上記食品の粘度は、各々B型粘度計(東機産業社製)を用い、ローターNo.7を60rpmで回転させる条件で測定したものである。本発明において食品の粘度は、上記の方法による測定値に基づいて規定し得る。
Claims (5)
- 低粘度の流動性原料中に、加熱処理した粒状の固形野菜を混合し分散させる工程、該原料に澱粉及び/又は油脂を添加した後、加熱して、該澱粉をα化させかつ/又は該油脂を溶融させる工程、次いで、該原料を冷却して、品温25℃での粘度が5,000〜100,000mPa・s(B型粘度計)とする工程を含むことを特徴とする、原料中に加熱処理した粒状の固形野菜を分散して含有する高粘性食品の製造法。
- 前記固形野菜が、馬鈴薯である請求項1記載の製造法。
- 前記馬鈴薯が、さやか品種馬鈴薯である請求項2記載の製造法。
- 品温25℃において粘度5,000〜100,000mPa・s(B型粘度計)のカレーソース中に、加熱処理した粒状のさやか品種馬鈴薯を、該ソースの質量を基準として10〜40質量%の量、分散して含有することを特徴とするカレーフィリング。
- 油分が3〜30%であり、かつ、水分が40〜80%の請求項4記載のカレーフィリング。
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