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JP3558793B2 - ポリウレタンの製造方法 - Google Patents

ポリウレタンの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温付近の広い温度範囲において優れた制振特性を示すとともに、結晶化傾向を有しないポリウレタンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車工業や電気産業などの発展に伴って、振動や騒音に対する環境改善の要求が高まっており、そのなかでも振動吸収対策や騒音低減対策などが重視されてきている。この様な振動吸収対策や騒音低減対策の一環として、各種の制振性能(振動吸収性能、騒音防止性能など)を有するゴムやエラストマーなどの材料が開発されている。一般にゴムやエラストマーなどの材料の制振性能の評価は、材料の粘弾性率を測定することによって得られる損失係数(tanδ)の値を用いて広く行われており、常温付近において損失係数の値が大きく、しかも広い温度範囲にわたって損失係数の値が大きい材料は、広範囲の使用環境において優れた制振性能を発揮し得ることから、適応範囲の広い制振材料として期待される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ポリウレタンエラストマーを用いた制振性能に優れた材料として、1,4−シクロヘキサンジメタノールを伸長剤成分として用いたポリウレタン(特開平7−292061号公報参照)からなる制振材などが知られている。これらの従来のポリウレタンエラストマーのいくつかは、常温において大きな損失係数の値を示すものである。
【0004】
本発明は広範囲の使用環境において優れた制振性能を発揮し得る材料を提供することを目的としてなされたものであって、常温付近において損失係数の値が大きく、しかも広い温度範囲にわたって大きな損失係数の値を保持する、制振性能に優れたポリウレタンを新たに提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、高分子ポリオール成分とポリイソシアネート成分を反応させてポリウレタンを製造するに際し、高分子ポリオール成分としてメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位を主体とするポリエステルポリオールを使用することを特徴とするポリウレタンの製造方法である。
本発明によれば、常温付近の広い温度範囲にわたって大きな損失係数の値を保持する、制振性能に優れたポリウレタンを製造することができる。本発明によって得られるポリウレタンは、各種の広範囲な用途において極めて有用である。しかも、本発明において使用されるポリエステルポリオールは低粘度の液体であって、作業性に優れるという特徴を有している。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、「メチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位を主体とする」とは、ポリエステルポリオールを構成するポリオール単位のうち60モル%以上がメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位であることを意味している。ポリエステルポリオールを構成するポリオール単位におけるメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位の含有量が60モル%より少ないと、得られるポリウレタンの損失係数の値が小さくなる。ポリエステルポリオールを構成するポリオール単位におけるメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位の含有量は70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましい。
【0007】
本発明では、ポリエステルポリオールを構成するポリオール単位におけるメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位の含有量が多くなるほど、得られるポリウレタンの損失係数の値が大きくなり、しかも損失係数の値が最大となる温度がより高温側に移行する傾向にある。
【0008】
上記のメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位は、例えば、1,5−シクロオクタンジメタノール、1,4−シクロオクタンジメタノール、1,3−シクロオクタンジメタノール、1,5−ジメチル−2,6−シクロオクタンジメタノール、1,6−ジメチル−2,5−シクロオクタンジメタノールなどのメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノールから誘導される。メチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノールは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0009】
なお、メチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノールは、例えば、大量生産され安価に入手できる1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエンなどのメチル基で置換されていてもよいシクロオクタジエンをヒドロホルミル化して、シクロオクタンジカルボアルデヒド類に誘導し、得られたシクロオクタンジカルボアルデヒド類を水素添加などの公知の方法によって還元することにより工業的に製造することができる。
【0010】
本発明において用いられるポリエステルポリオールは、上記のメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位以外の他のポリオール単位を含有していてもよい。かかる他のポリオール単位としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール単位;シクロヘキサンジメタノール、3,8(または4,9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02, ]デカン等の脂環ジオール単位;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香環含有ジオール単位などを挙げることができる。これらの中でも、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどの分岐を有する脂肪族ジオール単位;1,4−シクロヘキサンジメタノール、3,8(または4,9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンなどの脂環ジオール単位は、得られるポリウレタンの制振性能を低下させないので特に好ましい。これらの他のポリオール単位は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0011】
また、制振性能を低下させない範囲であれば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオールなどの3官能性以上の低分子ポリオールからなる単位を含有させてもよい。
【0012】
本発明において用いられるポリエステルポリオールを構成するポリカルボン酸単位としては特に制限はないが、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸単位;シクロヘキサンジカルボン酸などの飽和脂環式ジカルボン酸単位;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸単位などが挙げられる。
【0013】
これらのうちでもアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸単位は、常温付近の比較的高い温度領域において損失係数の値が最大となるポリウレタンを得ることができるので特に好ましい。これらのポリカルボン酸は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。また、3官能性以上のポリカルボン酸単位を含有させてもよい。
【0014】
また、本発明において使用するポリエステルポリオールは、本発明の主旨を損なわない限り、分子内に適宜ポリエーテルポリオール単位やポリカーボネートポリオール単位などの部分構造を有していてもよい。
【0015】
本発明において使用するポリエステルポリオールは、数平均分子量が500〜10000の範囲内にあることが好ましく、1500〜6000の範囲内にあることがより好ましい。
【0016】
本発明において使用されるポリエステルポリオールの製造方法には特に制限はなく、公知のポリエステル縮重合方法が適用できる。例えば、メチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノールまたはメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノールと他のポリオールとの混合物とジカルボン酸またはそのエステルとを所望の割合で仕込み、エステル化またはエステル交換反応を行い、得られる反応生成物を縮重合触媒の存在下に高温、真空下でさらに縮重合反応させることによりポリエステルポリオールを製造することができる。
【0017】
本発明では、ポリイソシアネート成分と反応させる高分子ポリオール成分として、メチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位を主体とするポリエステルポリオールに加え、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオール、ポリブタジエン系および/またはポリイソプレン系両末端ジオールまたはその水素添加物などの他の高分子ポリオールを添加して使用することもできる。これらの他の高分子ポリオールは、通常全高分子ポリオール成分に対して40重量%以下の範囲で使用される。
また、制振性能を低下させない範囲内であれば、3官能性以上の高分子ポリオールを少量併用しても差支えない。
【0018】
本発明で使用されるポリイソシアネート成分としては特に制限はなく、ポリウレタンの製造に従来から使用されているポリイソシアネート成分のいずれを使用してもよく、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環ジイソシアネートなどを挙げることができる。これらのポリイソシアネートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、制振性能を低下させない範囲内であれば、3官能性以上のポリイソシアネートを使用することもできる。
【0019】
さらに、本発明においては、必要に応じて鎖伸長剤を使用することができる。鎖伸長剤としては、ポリウレタンの製造に従来から使用されている2個以上の活性水素原子を有する低分子化合物を使用することができる。かかる低分子化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノール、3,8(または4,9)−ジヒドロキシメチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン等の脂環ジオール類;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香環含有ジオール類などを挙げることができる。これらの低分子化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明において、高分子ポリオール成分とポリイソシアネート成分および所望により鎖伸長剤成分を反応させてポリウレタンを製造するに当り、各成分の混合比率は、目的とするポリウレタンに付与すべき硬度などを考慮して、適宜決定されるが、高分子ポリオール成分と鎖伸長剤成分が有している活性水素原子の全量を基準として、該活性水素原子1モル当りのイソシアネート基が0.9〜1.3モルとなるような割合でポリイソシアネート成分を使用することが好ましく、該活性水素原子1モル当りのイソシアネート基が0.95〜1.1モルとなるような割合でポリイソシアネート成分を使用することがより好ましい。
【0021】
本発明により得られるポリウレタンは、ポリウレタン濃度が0.5g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド(以下、これをDMFと略称する)溶液として、30℃で測定した時の対数粘度が0.4〜2dl/gの範囲内にあることが望ましい。
【0022】
また、本発明では、ポリウレタンの製造において、通常使用されている触媒、反応促進剤、発泡剤、内部離型剤、充填剤、補強剤、染料・顔料、着色剤、難燃剤、紫外線吸収材、酸化防止剤、耐加水分解性向上剤、防カビ剤、安定剤などの各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維などの各種繊維;タルク、シリカなどの無機物;各種カップリング剤などの任意の成分を必要に応じて使用することができる。
【0023】
本発明において高分子ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および鎖伸長剤成分を反応させてポリウレタンを製造する方法としては、溶融重合や溶液重合などの公知のウレタン化反応技術のいずれもが使用でき、プレポリマー法およびワンショット法のいずれであってもよい。
【0024】
本発明におけるポリウレタンの製造法の具体例を示すと、
▲1▼高分子ポリオール成分と鎖伸長剤成分とを混合して40〜100℃に加熱し、得られた混合物に、該混合物における活性水素原子とイソシアネート基のモル比が1:1〜1:1.5となる量のポリイソシアネート成分を添加して短時間攪拌した後に、例えば50〜160℃に加熱してポリウレタンを製造する方法、
▲2▼高分子ポリオール成分、鎖伸長剤成分とポリイソシアネート成分の混合物を例えば180〜260℃の高温で混練してポリウレタンを製造する方法、
▲3▼多軸スクリュー型押出機等の押出機に高分子ポリオール成分、鎖伸長剤成分およびポリイソシアネート成分等を連続的に供給し、例えば180〜260℃の高温で連続溶融重合してポリウレタンを製造する方法、
▲4▼高分子ポリオール成分、鎖伸長剤成分とポリイソシアネート成分によるポリウレタン形成反応を有機溶媒中で行う方法、
などである。
【0025】
これらのなかでも上記▲4▼の方法によりポリウレタンの製造を行う際に、高分子ポリオール成分、鎖伸長剤成分およびポリイソシアネート成分の濃度を制御すると、高分子量のポリウレタンを容易に製造することができる。この際、高分子ポリオール成分、鎖伸長剤成分およびポリイソシアネート成分の濃度は、10〜40重量%の範囲とすることが好ましい。有機溶媒としてはDMF、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロパノール、エチルセルソルブ等を使用することができる。これらの有機溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
本発明により得られるポリウレタンは、常温付近の広い温度範囲において優れた制振性能を発揮するので、制振性能を必要とする機械部品、自動車部品、住宅関連部品、電気機器材料、包装材料、シート、フィルム、ロール、ソリッドタイヤ、ベルト、チューブ、パッキング材、靴底、スポーツ靴、スポーツ用品、弾性繊維、人工皮革、繊維処理剤、接着剤、コーティング剤、各種バインダー、塗料など広範囲な各種の用途に使用することができる。また本発明により得られるポリウレタンは結晶化傾向を有していないので、これらの用途に使用する際の作業性が良好である。
【0027】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、ポリウレタンの対数粘度および制振性能の評価は下記の方法により行った。
◎ポリウレタンの対数粘度の測定
濃度が0.5g/dlであるポリウレタンのDMF溶液を調製し、30℃において溶液粘度を測定し、この溶液粘度に基づいて対数粘度を求めた。
◎ポリウレタンの制振性能の評価
厚さ1mmのポリウレタンフィルムより作成した試験片について、動的粘弾性測定装置(RHEOVIBRON:(株)オリエンテック社製)を用い、周波数11Hz、昇温速度3℃/分で、貯蔵弾性率(E´)および損失弾性率(E”)を測定し、損失係数(tanδ=E”/E´)を算出して、温度に対する損失係数の値の変化を示すグラフを作成した。
損失係数の最大値(tanδのピーク値)および損失係数が最大値となる温度(tanδのピーク温度)、ならびに損失係数の値が0.5以上となる温度を求めた。損失係数は振動減衰性の尺度として用いられ、この値が大きいほど制振性能(振動吸収能、騒音防止性能など)が優れている。また、損失係数のピーク温度が常温近傍にあるポリウレタンは、常温付近の温度において優れた制振性能を示す。さらに、損失係数が0.5以上となる温度の範囲が広いポリウレタンほど、広い温度範囲にわたって優れた制振性能を発揮することができる。
【0028】
なお、実施例および比較例において使用した化合物はそれぞれ次の略号により表記する。
CODM :シクロオクタンジメタノール
DMCODM:ジメチルシクロオクタンジメタノール
CHDM :1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス、トランス混合物:シス/トランス=30/70)
MPD :3−メチル−1,5−ペンタンジオール
BD :1,4−ブタンジオール
AD :アジピン酸
MDI :4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0029】
参考例1(CODMの合成)
温度計、電磁攪拌装置およびガス吹き込み口を備えた内容量5リットルのステンレス製オートクレーブに、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート0.42gおよびトリフェニルホスフィン17gをトルエン1.5リットルに溶解して得られた触媒液と1,5−シクロオクタジエン1.5リットルを水素/一酸化炭素混合ガス(モル比=1/1)雰囲気下に仕込んだ。次いで、水素/一酸化炭素混合ガス(モル比=1/1)をオートクレーブに導入し、内圧を90絶対気圧に調節し、攪拌下に内温を60℃まで昇温した。
内圧が90絶対気圧に維持されるように水素/一酸化炭素混合ガス(モル比=1/1)を連続的に供給し、内温を60〜70℃に維持して3時間反応を行い、次いで内温を90℃に昇温してさらに3時間攪拌して反応を完結させた。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジアルデヒド体が97%含まれていることが分かった。
ワイパー式薄膜蒸留器を用いて上記で得られた反応混合物から触媒とトルエンを除去し、ヒドロホルミル化反応液を得た。
【0030】
温度計、電磁攪拌装置およびガス吹き込み口を備えた内容量5リットルのステンレス製オートクレーブに、上記で得られたヒドロホルミル化反応液1.2リットル、イソプロピルアルコール1.2リットルおよびラネーニッケル24gを仕込んだ。次いで、水素ガスをオートクレーブに導入し、内圧が10絶対気圧に維持されるように水素ガスを連続的に供給しながら攪拌下に内温を100℃に昇温した。内温を100℃に維持しながら5時間攪拌して反応を完結させた。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、未反応のジアルデヒド体は検出されなかった。この反応混合物を濾過してラネーニッケルを除去し、得られた濾液からワイパー式薄膜蒸留器を用いてイソプロピルアルコールと高沸点生成物を除去して無色透明の粘性のある液体を得た。この無色透明の粘性のある液体を、内温約200℃、減圧度1〜5torrの条件下に蒸留し、146〜160℃の留分を取得し、無色透明の液体1.05kgを得た。
H−NMR分析、元素分析および質量分析により、この液体がシクロオクタンジメタノールであることを確認した。かくして得られたシクロオクタンジメタノール(CODM)を以下の参考例、実施例および比較例において使用した。
【0031】
参考例2(DMCODMの合成)
温度計、電磁攪拌装置およびガス導入口を備えた内容量5リットルのステンレス製オートクレーブに、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート3.1gおよびトリフェニルホスフィン28.3gをトルエン2.8リットルに溶解して得られた触媒液と1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエンと1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエンの混合物[1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン/1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン=8/2(モル比)]1.2リットルを水素/一酸化炭素混合ガス(モル比=1/1)雰囲気下に仕込んだ。次いで、水素/一酸化炭素混合ガス(モル比=1/1)をオートクレーブに導入し、内圧を90絶対気圧に調節し、攪拌下に内温を60℃まで昇温した。内温を60℃に維持し、内圧が90絶対気圧に維持されるように水素/一酸化炭素混合ガス(モル比=1/1)を連続的に供給しながら、34時間反応を行った。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、ジアルデヒド体が55%含まれていることが分かった。
ワイパー式薄膜蒸留器を用いて上記で得られた反応混合物から触媒とトルエンを除去し、ヒドロホルミル化反応液を得た。
【0032】
温度計、電磁攪拌装置およびガス導入口を備えた内容量5リットルのステンレス製オートクレーブに、上記で得られたヒドロホルミル化反応液750g、イソプロピルアルコール1.5リットルおよびラネーニッケル80gを仕込んだ。次いで、水素ガスをオートクレーブに導入し、内圧が10絶対気圧に維持されるように水素ガスを連続的に供給しながら攪拌下に内温を100℃に昇温した。内温を100℃に維持しながら5時間攪拌して反応を完結させた。得られた反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、未反応のジアルデヒド体は検出されなかった。反応混合物を濾過してラネーニッケルを除去し、得られた濾液からワイパー式薄膜蒸留器を用いてイソプロピルアルコールと高沸点生成物を除去して無色透明の粘性のある液体を得た。この無色透明の粘性のある液体を、減圧度0.5torrにて蒸留精製して、130〜137℃の留分を取得し、無色透明の液体690gを得た。
H−NMR分析、元素分析および質量分析により、この液体がジメチルシクロオクタンジメタノールであることを確認した。かくして得られたジメチルシクロオクタンジメタノール(DMCODM)を以下の参考例、実施例および比較例において使用した。
【0033】
参考例3(ポリエステルポリオールの製造)
参考例1で得られたCODM360gおよびアジピン酸220gを反応容器に仕込み、常圧、窒素雰囲気下で180℃に加熱し、生成する水を系外に留出しながらエステル化反応を行った。水の留出が少なくなった時点でテトライソプロピルチタネート6mgを加え、真空ポンプで200〜100torrに減圧しながら反応を続けた。酸価が1.0KOHmg/gになった時点で真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応を完結させた。その結果、水酸基価56.1KOHmg/g、酸価0.2KOHmg/gおよび数平均分子量2000のポリエステルポリオール(以下これをポリエステルポリオールAと略称する)を得た。
【0034】
参考例4〜7(ポリエステルポリオールの製造)
参考例3において表1に示すジオールおよびジカルボン酸を参考例3と同じモル比で用いたこと以外は参考例3と同様にしてエステル化および縮重合反応を行って、ポリエステルポリオール(以下、参考例4〜7で得られたポリエステルポリオールをそれぞれポリエステルポリオールB〜Eと略称する)を得た。
ポリエステルポリオールA〜Eの中で、ポリエステルポリオールA〜Dは室温(25℃)で液状であり、ポリエステルポリオールEは室温で固体(融点99℃)であった。
【0035】
【表1】
Figure 0003558793
【0036】
実施例1
反応容器にポリエステルポリオールA0.05モル(100g)、MDI0.15モル(37.5g)、BD0.1モル(9g)およびDMF530gを仕込み、80℃で6時間反応させ、ポリウレタンのDMF溶液(不揮発分25%)を得た。得られたポリウレタンの対数粘度を表2に示す。
上記で得られたポリウレタンのDMF溶液をガラス板上に流延し、60〜70℃で乾燥してポリウレタンの乾式フィルムを得た。得られたポリウレタンの乾式フィルムを細かく裁断した後に、80℃にて24時間除湿乾燥し、次いで220℃で熱プレスすることにより、厚さ1mmのフィルムを作成し、前記の方法に従って制振性能の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0037】
実施例2〜4および比較例1、2
実施例1において表2に示す高分子ポリオール成分、ポリイソシアネート成分および鎖伸長剤成分を実施例1と同じモル比で用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリウレタン溶液を得た。ここでポリエステルポリオールEから得られたポリウレタン溶液(比較例2)は室温で流動性のないワックス状となった。このことから比較例2で得られたポリウレタンは、結晶化傾向を有していることが分かる。
次に実施例1と同様の操作により、厚さ1mmのポリウレタンフィルムを作成し、制振性能の評価を行った。ポリウレタンの対数粘度および制振性能の評価結果を表2に併せて示す。
【0038】
【表2】
Figure 0003558793
【0039】
表2から、本発明の方法により得られるポリウレタンは、損失係数の最大値が大きく、制振性能が優れており、そして損失係数が最大値となる温度が常温近傍、特に比較的高い温度領域にあることから、室温ないしやや高い温度領域において使用する場合に優れた制振性能を示すことが分かる。しかも損失係数が0.5以上となる温度の範囲が広く、広い温度範囲にわたって優れた制振性能を発揮し得る。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、常温付近、なかでも比較的高い温度領域において損失係数の値が大きく、かつ広い温度範囲にわたって大きい損失係数の値を保持する、制振性能に優れ、しかも結晶化傾向を有しないポリウレタンを製造することができる。本発明によって得られるポリウレタンは、各種の広範囲な用途において極めて有用である。

Claims (1)

  1. 高分子ポリオール成分とポリイソシアネート成分を反応させてポリウレタンを製造するに際し、高分子ポリオール成分としてメチル基で置換されていてもよいシクロオクタンジメタノール単位を主体とするポリエステルポリオールを使用することを特徴とするポリウレタンの製造方法。
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