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JP3557361B2 - 受話用電気音響変換装置 - Google Patents

受話用電気音響変換装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話機のハンドセットなどに用いられる受話用電気音響変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、携帯電話機の受話側音響特性を改善する対策として、携帯電話機のケース内に音を漏らしたり(ケース内プリリーク)する対策や、ハンドセットのケースの耳当て部を耳介に密着させて受話を行うようにする対策が講じられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ケース内プリリーク対策を講じた構造では、ハンドセットのケースの内部に音を出していたので、送話側のマイクと受話側のレシーバとの間の音の回り込みによるハウリングを阻止する分離特性ともいうべきアイソレーション特性が良好にならない。そこで、そのアイソレーション特性を改善するために、ハンドセットのケース内を送話側と受話側とに区画する仕切りを設けるなどの余分な対策を講じる必要があった。
【0004】
また、ケースの耳当て部を耳介に密着させて受話を行うという密閉型のものは、耳介部分で音のリークが生じると周波数特性が大きく変化してしまい、その変化を少なくするためには、受話側のレシーバ(電気音響変換器)の振動板の背室に大きな容積を確保するという手段が採用されていた。
【0005】
ところで、近時一般的に普及している携帯電話機では、それを衣服のポケットやバッグに入れて便利に持ち運びできるように小形化が進んでいることなどの関係から、上記したような仕切りを余分に設けたり振動板の背室の容積を大きくしたりすることは、小形化を阻害するので好ましくない。また、小形化の進んだ密閉型の携帯電話機では、ケースの耳当て部をピッタリと耳介に付けて受話音を聞き取るという動作を行いにくいのが現状であり、多くの場合には、ケースの耳当て部が耳介から少し離れたところに保たれる。そのため、実使用時にはケースの耳当て部と耳介との間に音のリークが生じて周波数特性が変化してしまい、特に低周波数帯域の音を聞き取りにくくなる。
【0006】
本発明は以上の状況のもとでなされたものであり、振動板の背室の容積を大きくしたりしなくても、ケースの耳当て部に耳介をピッタリと付けた場合の音の聞こえ方(密閉特性)と、耳介から耳当て部が離れている場合の音の聞こえ方(プリリーク特性)との差が少なくなる受話用電気音響変換装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、上記2つのいずれの場合でも、所定の周波数帯域での音響特性がほゞ平坦に保たれ、しかも、低周波数帯域の音を聞き取りやすくなる受話用電気音響変換装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、ハンドセットのケースの送話側と受話側との間に仕切りを設けることなく、上記したアイソレーション特性を改善することのできる受話用電気音響変換器を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る受話用電気音響変換装置は、磁気回路形成要素と、磁気回路内のギャップに挿入されたボイスコイルを有しかつ上記磁気回路形成要素の前側に配備された振動板と、この振動板の前側に配備された通音性を有するバッフルプレートと、を備えた電気音響変換器が、ケースに収容され、その電気音響変換器からの背方への音漏れを遮断する遮蔽部材を有すると共に、上記バッフルプレートと上記磁気回路形成要素との間の空間を取り囲む囲い壁部材を有し、上記バッフルプレートに対面して上記ケースに設けられた音孔を有する耳当て部の外周部に音漏れ通路が形成され、この音漏れ通路と上記空間内の上記振動板により仕切られた背室とを連通路を介して連通する音出し通路が上記囲い壁部材に設けられ、上記バッフルプレートの前側に出た音の一部を上記連通路及び上記音出し通路を経て上記背室に戻す音戻し通路がそのバッフルプレートと上記耳当て部とによって形成され、上記バッフルプレートと上記耳当て部との間に柔軟なパッドが配備されている、というものである。
【0010】
この発明において、上記遮蔽部材を、上記ケースに装備されかつ背板とその背板と一体の周壁とを有するフレームの上記背板と、上記背板に備わっている取付孔に嵌合状に取り付けられた上記電気音響変換器の上記磁気回路形成要素とによって形成しておくことが可能である。また、上記囲い壁部材を、周方向の一箇所が欠除された上記フレームの周壁と、その周壁の欠除部に嵌め込まれてその欠除部を塞ぐキャップとによって形成し、上記キャップに上記音出し通路を形成しておくことが可能である。
【0011】
本発明の作用については、以下の実施の形態についての説明によって明らかにされる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る受話用電気音響変換装置の実施形態の要部を示した分解斜視図、図2は同装置の要部を説明的に示した断面図である。
【0013】
図1及び図2において、レシーバとして用いられている電気音響変換器10は、磁気回路形成要素20と、磁気回路内のギャップGに挿入されたボイスコイル31を有しかつ上記磁気回路形成要素20の前側に配備されたダイアフラム型の振動板30と、この振動板30の前側に配備された通音性を有するバッフルプレート40と、フレーム50と、パッド60とを備えている。また、この電気音響変換器10には、低音響インピーダンス電気音響変換器が採用されている。
【0014】
磁気回路形成要素20は、円板型のマグネット21と、そのマグネット21の両極に振り分けて配備された円形のヨーク22及び円板型のポールピース23とを有しており、ヨーク22とポールピース23との間に上記ギャップGが形成されている。バッフルプレート40は円形の金属板でなり、その偏心箇所に放音孔41を備えている。フレーム50は、背板51とその背板51と一体の周壁52とを有する合成樹脂成形体でなり、背板51に設けられている取付孔53に、上記磁気回路形成要素20が嵌合状に取り付けられている。また、上記周壁52はその周方向の一箇所が欠除されていて、その欠除部に取り付けられた円弧状のキャップ54によってその欠除部が塞がれている。そして、周壁52とキャップ54とによって形作られた円形の囲い壁部材55(後述する)に上記振動板30の外周縁と上記バッフルプレート40の外周縁とが支持されている。さらに、フレーム50の外周部に具備された平坦部58に、コイルばね型のターミナル端子56,57が取り付けられており、これらのターミナル端子56,57に、ボイスコイル31から引き出されたリード線32,33が各別に接続されている。図1のように、上記パッド60は、柔軟素材でなる縁枠61と、この縁枠61によって形作られた開口を覆う微細網目を有する柔軟なネット62とを一体に備えている。このパッド60は、図2のように、その縁枠61がフレーム50に接着剤で貼着されていて、バッフルプレート41を覆い、かつ、上記平坦部58の上に折り返されている。
【0015】
以上の構成を備えた電気音響変換器10は、図2のように、携帯電話機のハンドセットのケース70にユニットとして組み込まれ、その組込み状態(収容状態)では、ターミナル端子56,57が、ケース70内の配線基板80の電極に弾接される。そして、パッド60がケース70に設けられた耳当て部71の裏面に当接されることにより、そのパッド60がバッフルプレート40と耳当て部71との間に配備された形になっている。なお、耳当て部71はバッフルプレート40に対面していて、その中央部分の2箇所に音孔74を有している。
【0016】
図1及び図2を参照して説明した電気音響変換装置において、ケース70に装備されているフレーム50の背板51とその背板50の取付孔53に取り付けられている電気音響変換器10の磁気回路形成要素20とによって遮蔽部材90が形成されている。この遮蔽部材90は、電気音響変換器10からの背方への音漏れを遮断する機能を持っている。また、フレーム50の周壁52とキャップ54とによって形作られている円形の上記囲い壁部材55が、バッフルプレート40と磁気回路形成要素20との間の空間をその周囲で取り囲んでいる。
【0017】
上記耳当て部71の外周部に外向きの音漏れ通路72が開設されているのに対し、上記囲い壁部材55を形成しているキャップ54に音出し通路59が開設されており、その音出し通路59は、囲い壁部材55によって囲まれている空間内の背室、すなわち振動板30によって仕切られた背室34に連通している。また、上記囲い壁部材55と上記耳当て部71の外周部との間の隙間空間によって形成されている連通路73が、その連通路73を挟んで互いに対峙している上記音漏れ通路72の始部72aと上記音出し通路59の終部59aとを連通させている。
【0018】
図2では、ケース70の一端側に設けられた受話側の電気音響変換装置だけを示してあるけれども、ケース70の他端側には送話側の電気音響変換装置が設けられている。
【0019】
この電気音響変換装置によると、電気音響変換器10で発生した音のケース内への音漏れが遮蔽部材90によって遮断されるので、受話側と送話側との間での音の回り込みによるハウリングが防止されるようになる。そのため、アイソレーション特性が改善されたものになる。
【0020】
また、振動板30の背室34の音が、その背室34から音出し通路59、連通路73を経た後、音漏れ通路72を通って矢印a,bのようにケース70の外側へ漏れ出る。このことにより、周波数特性が改善されて所定の周波数帯域での音響特性がほゞ平坦に保たれ、しかも、低周波数帯域の音を聞き取りやすくなる。さらに、一旦、バッフルプレート40の前側に出た音の一部が、バッフルプレート40とケース70の耳当て部71との隙間によって形成されている音戻し通路75を通って矢印cのように連通路73に達し、さらに、音出し通路59を通って振動板30の背室34に戻る。このことにより、耳当て部71と耳介との密閉度が周波数特性に悪影響を与えなくなる。
【0021】
なお、この電気音響変換装置では、バッフルプレート40やパッド60が、振動板30などを覆っているので、それらによって防塵作用が発揮される利点がある。
【0022】
次に、本発明に係る電気音響変換装置の音響特性を、比較例と共に図3〜図8及び図9〜図11を参照して説明する。音響特性は、電気音響変換装置に周波数特性の測定治具を設置することにより定量的に計測される。
【0023】
図3〜図8において、1は測定治具であり、人工耳2と集音用のマイクロホン3とを有している。4はリーケージリングであり、音漏れ孔5を備えている。
【0024】
図3、図5及び図7は、ケース70の耳当て部71に測定治具1の人工耳2を押し付けて耳当て部71の音孔74を取り囲ませることにより、耳当て部71と人工耳2との隙間からの音漏れを生じないようにして行う測定方法を示している。この測定方法は、ケース70の耳当て部71を、音漏れを生じないように耳介にピッタリと付けて受話音を聞くときの模擬態様であり、周波数特性の基本的な測定に適している。これに対し、図4、図6及び図8はリーケージリング4を使用して耳当て部71と人工耳2との相互間で音漏れを生じさせるようにして行う測定方法を示している。この測定方法は、耳当て部71に対して耳介が離れている状態で受話音を聞くときの模擬態様であり、図3、図5及び図7の場合よりも携帯電話の実使用状態に近い状態で周波数特性を定量的に測定できる。以下では、図3、図5及び図7の測定方法によって得られる周波数特性を密閉特性、図4、図6及び図8の測定方法によって得られる周波数特性をプリリーク特性ということにする。
【0025】
図3に本発明に係る受話側電気音響変換装置の密閉特性の測定方法、図4に同装置のプリリーク特性の測定方法をそれぞれ示してある。図5に第1比較例に係る受話側電気音響変換装置の密閉特性の測定方法、図6に同装置のプリリーク特性の測定方法をそれぞれ示してある。図7に第2比較例に係る受話側電気音響変換装置の密閉特性の測定方法、図8に同装置のプリリーク特性の測定方法をそれぞれ示してある。また、図9には本発明に係る受話側電気音響変換装置の音響特性を、図10には第1比較例による受話側電気音響変換装置の音響特性を、図11には第2比較例による受話側電気音響変換装置の音響特性を、それぞれ示してある。なお、図9〜図11において、実線は密閉特性を、破線はプリリーク特性曲線を示している。なお、本発明に係る受話側電気音響変換装置と第1及び第2の比較例との相違点は、第1比較例については、耳当て部71の2つの音孔74のうちの1つを塞いでその数を1つにしたものであり、第2比較例は、囲い壁部材55の音出し孔59を塞いだものである。その他の点については、本発明に係る受話側電気音響変換装置と第1及び第2の比較例とにおいて同様の構成になっている。
【0026】
第1比較例の音響特性を示す図10によると、密閉特性の感度が低周波数帯域(100〜500Hz付近)で110dB程度の高い数値を示しているけれども、1〜2kHzでは感度の落ち込みが激しく、密閉特性の平坦性という点からすれば満足できるものでない。また、プリリーク特性の感度は90dB程度で、ある程度の平坦性を保っている。しかし、1kHz以下の低周波数側での密閉特性とプリリーク特性との差Hが大きくなっている。このことは、耳当て部71に耳介をピッタリと付けて耳介部分での音漏れが生じないようにしたときに聞こえる低周波数帯域の音が、耳介部分で音漏れが生じているときには極端に聞こえにくくなることを示している。
【0027】
第2比較例の音響特性を示す図11によると、密閉特性の感度が1kHz以下の低周波数側で90dB近辺に納まってある程度の平坦性を保っている。プリリーク特性の感度は、1kHz以下の帯域で、低周波数になるほど急激に低下している。このため、1kHz以下の低周波数側での密閉特性とプリリーク特性との差Hが、低周波数になるほど急激に大きくなっている。したがって、この場合も、耳当て部71に耳介をピッタリと付けて耳介部分での音漏れが生じないようにしたときに聞こえる低周波数帯域の音が、耳介部分で音漏れが生じているときには極端に聞こえにくくなることを示している。
【0028】
本発明に係る受話側電気音響変換装置の音響特性を示す図9によると、密閉特性及びプリリーク特性の感度が、1kHz以下の低周波数側において近似していて共に90〜95dBの範囲に納まっており、しかも、密閉特性およびプリリーク特性の感度は共に平坦性を保っている。そして、低周波数側での両特性の差Hが小さく縮まっている。このことは、耳当て部71に耳介をピッタリと付けて耳介部分での音漏れが生じないようにしたときに聞こえる低周波数帯域の音の聞こえ方と、耳介部分で音漏れが生じているときに聞こえる低周波数帯域の音の聞こえ方との差が少なく、いずれの場合も音を聞き取りやすくなっていることを示している。
【0029】
上記した実施形態では、電気音響変換器10として低音響インピーダンスダイナミックレシーバを用いているけれども、電気音響変換器10として高音響インピーダンスダイナミックレシーバを用いた場合には、密閉特性およびプリリーク特性の感度が共に低周波数側において図9の場合よりも下がるけれども、低周波数側での両特性の差Hは小さく縮まり、感度の平坦性も確保されることを確認している。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、振動板の背室の容積を大きくしたりしなくても、密閉特性とプリリーク特性との差が少なくなると共に、所定の周波数帯域での音響特性がほゞ平坦に保たれるので、低周波数帯域の音を聞き取りやすくなる。また、本発明によれば、ケースの送話側と受話側との間に仕切りを設けることなく、アイソレーション特性を改善することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る受話用電気音響変換装置の実施形態の要部を示した分解斜視図である。
【図2】同受話用電気音響変換装置の要部を説明的に示した断面図である。
【図3】本発明に係る受話側電気音響変換装置の密閉特性の測定方法を示す説明図である。
【図4】本発明に係る受話側電気音響変換装置のプリリーク特性の測定方法を示す説明図である。
【図5】第1比較例の密閉特性の測定方法を示す説明図である。
【図6】第1比較例のプリリーク特性の測定方法を示す説明図である。
【図7】第2比較例の密閉特性の測定方法を示す説明図である。
【図8】第2比較例のプリリーク特性の測定方法を示す説明図である。
【図9】本発明に係る受話側電気音響変換装置の音響特性を示した線図である。
【図10】第1比較例の音響特性を示した線図である。
【図11】第2比較例の音響特性を示した線図である。
【符号の説明】
10 電気音響変換器
20 磁気回路形成要素
30 振動板
31 ボイスコイル
34 背室
40 バッフルプレート
50 フレーム
51 背板
52 周壁
53 取付孔
54 キャップ
55 囲い壁部材
59 音出し通路
59a 音出し通路の終部
60 パッド
70 ケース
71 耳当て部
72 音漏れ通路
72a 音漏れ通路の始部
73 連通路
74 音孔
75 音戻し通路
90 遮蔽部材
G ギャップ

Claims (3)

  1. 磁気回路形成要素と、磁気回路内のギャップに挿入されたボイスコイルを有しかつ上記磁気回路形成要素の前側に配備された振動板と、この振動板の前側に配備された通音性を有するバッフルプレートと、を備えた電気音響変換器が、ケースに収容され、その電気音響変換器からの背方への音漏れを遮断する遮蔽部材を有すると共に、上記バッフルプレートと上記磁気回路形成要素との間の空間を取り囲む囲い壁部材を有し、上記バッフルプレートに対面して上記ケースに設けられた音孔を有する耳当て部の外周部に音漏れ通路が形成され、この音漏れ通路と上記空間内の上記振動板により仕切られた背室とを連通路を介して連通する音出し通路が上記囲い壁部材に設けられ、上記バッフルプレートの前側に出た音の一部を上記連通路及び上記音出し通路を経て上記背室に戻す音戻し通路がそのバッフルプレートと上記耳当て部とによって形成され、上記バッフルプレートと上記耳当て部との間に柔軟なパッドが配備されていることを特徴とする受話用電気音響変換装置。
  2. 上記遮蔽部材が、上記ケースに装備されかつ背板とその背板と一体の周壁とを有するフレームの上記背板と、上記背板に備わっている取付孔に嵌合状に取り付けられた上記電気音響変換器の上記磁気回路形成要素とによって形成されている請求項1に記載した受話用電気音響変換装置。
  3. 上記囲い壁部材が、周方向の一箇所が欠除された上記フレームの周壁と、その周壁の欠除部に嵌め込まれてその欠除部を塞ぐキャップとによって形成されており、上記キャップに上記音出し通路が形成されている請求項2に記載した受話用電気音響変換装置。
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