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JP3556908B2 - フォトニッククリスタルファイバの製造方法 - Google Patents

フォトニッククリスタルファイバの製造方法 Download PDF

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JP3556908B2
JP3556908B2 JP2001006394A JP2001006394A JP3556908B2 JP 3556908 B2 JP3556908 B2 JP 3556908B2 JP 2001006394 A JP2001006394 A JP 2001006394A JP 2001006394 A JP2001006394 A JP 2001006394A JP 3556908 B2 JP3556908 B2 JP 3556908B2
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正隆 中沢
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悟基 川西
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Nippon Telegraph and Telephone Corp
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトニッククリスタルファイバ(以後「PC(photonic crystal)ファイバ」と称する)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コア部及びクラッド部からなる光ファイバは、光を伝搬する媒体として非常によく知られている。また、近年、かかる構成の光ファイバでは得ることができない大きな波長分散を発現するものとして、PCファイバが注目を集めつつある。このPCファイバは、ファイバ中心を長手方向に延び中実又は中空に形成されたコア部と、そのコア部を囲うように設けられコア部に沿って延びる多数の細孔を有する多孔部とを備えており、この多孔部が二次元的に屈折率が周期的に変動したフォトニッククリスタル構造を構成するものである。
【0003】
そして、かかるPCファイバの製造方法としては、多孔部となる多数のキャピラリをキャピラリ孔が横断面において所定格子配列を形成するように束ねると共に、中実のコア部となるコアロッドを中心軸位置に配置して又は中空のコア部となるコア空間を中心軸位置に形成して作製したプリフォームを線引き加工により細径化するというものがある。
【0004】
ところが、このような製造方法では、線引き加工時にキャピラリ孔が熱によって収縮したり潰れたりし、安定したフォトニッククリスタル構造を形成させることが困難となるという不都合がある。
【0005】
これに対し、特開平10−95628号公報には、シリカ毛管(キャピラリ)をその一端で封止し、これを封止端及び開口端がそれぞれ同じ側となるように高密充填の配置に多数束ねると共に中心のシリカ毛管(キャピラリ)をシリカ管又はシリカロッドにより置換した管束バンドルによってプリフォームを形成し、このプリフォームをシリカ毛管(キャピラリ)の開口端側から線引き加工するPCファイバの製造方法が開示されており、かかる方法によれば、シリカ毛管(キャピラリ)のボイド(キャピラリ孔)において得られる内圧がボイド(キャピラリ孔)を開いたままにする、すなわち、ボイド(キャピラリ孔)が収縮したり潰れたりすることが防止される、との内容が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のいずれの方法でも、キャピラリの少なくとも一方端が開口しているため、キャピラリ内に常時新しい空気が侵入可能な状態にあり、線引き加工時に空気中の水分との反応によってキャピラリ内面に水酸基(OH基)が形成されることとなる。そして、PCファイバに多くの水酸基が形成されると、それが信号光の特定波長(1.38μm)の光を吸収して伝送ロスを生じることとなる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、線引き加工時における水酸基の形成が抑制され、従来に比べて低伝送ロスのPCファイバを得ることができるPCファイバの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キャピラリを束ねて形成されたプリフォームを線引き加工するPCファイバの製造方法において、両端が封止されたキャピラリを用いるようにしたものである。
【0009】
具体的には、本出願の発明は、キャピラリ孔が横断面において所定格子配列を形成するように多数のキャピラリを束ねると共に、中心軸位置にコアロッドを配置して又はコア空間を形成して、該多数のキャピラリの各々が両端封止されたプリフォームを作製し、該プリフォームを線引き加工して細径化することを特徴とするフォトニッククリスタルファイバの製造方法である。
【0010】
上記製造方法によれば、キャピラリの両端が封止されることによってキャピラリ内への新しい空気の侵入が阻止されることとなるので、線引き加工時における空気中の水分との反応によるキャピラリ内面への水酸基の形成が抑制され、得られるPCファイバは従来に比べて伝送ロスが少ないものとなる。
【0011】
また、キャピラリの両端の封止を、キャピラリが線引き加工時に相似形を維持しながら細径化されるようにキャピラリの内圧を設定して行うことが好ましい。両端が封止されたキャピラリを用いた場合、線引き加工時にキャピラリ内外に圧力差が生じ、また、キャピラリはその肉厚の厚薄によって膨張又は収縮する特性を呈するが、上記のようにすれば、線引き加工時にキャピラリが相似形を維持しながら細径化されるように予めキャピラリの内圧を適当に設定しているので、所望の構造のPCファイバが安定して製造されることとなる。ここで、キャピラリの内圧は、キャピラリの肉厚、線引き温度、線引き時のキャピラリ外側の圧力等によって決定されるものである。
【0012】
さらに、キャピラリの両端の封止を、キャピラリ内に水酸基形成不活性なガスを充填して行うことが好ましい。空気を内包して両端が封止されたキャピラリでは、その空気中に含まれる水分によってキャピラリ内面に僅かながら水酸基が形成されるおそれがあるが、上記のようにすれば、水分のキャピラリ内面への接触がなくなることとなるので、キャピラリ内面に水酸基が形成されることがほとんどなくなる。ここで、水酸基形成不活性なガスとは、キャピラリ内面に水酸基を形成しないガスであり、アルゴン(Ar)等の希ガス、塩素(Cl2)ガス、窒素(N2)ガス等が挙げられる。
【0013】
そして、キャピラリの内面及び/又は外面をフッ化水素酸等によってエッチング処理することが好ましい。キャピラリは、それが製造される段階において内面及び外面に水酸基が形成されることがあるが、上記のようにすれば、キャピラリ内面及び/又は外面がフッ化水素酸等によって表層がエッチングされることとなるので、予め水酸基が除去され、得られるPCファイバは水酸基の少ないものとなる。ここで、コアロッドを用いる場合には、コアロッド外面をもフッ化水素酸等によってエッチング処理するのが好ましい。
【0014】
また、キャピラリの内面及び/又は外面を塩素ガス等によって脱水処理することが好ましい。このようにすれば、キャピラリ内面及び/又は外面が塩素ガス等によって脱水処理されて予め水酸基及び水分が除去されることとなるので、得られるPCファイバは水酸基の少ないものとなる。コアロッドを用いる場合には、コアロッド外面をも塩素ガス等によって脱水処理することが好ましい。
【0015】
そして、線引き加工を、プリフォーム内に形成された空隙を減圧した状態で行うことが好ましい。キャピラリ外面やコアロッド外面への水酸基の形成を阻止するためには、プリフォームの両端を完全に封止して線引き加工するようにすればよいが、それではキャピラリ相互間に形成された空隙の圧力が高くなり、得られるPCファイバではその空隙(インタースティシャルサイト)が消滅せずに残ってしまうこととなる。しかしながら、上記のようにプリフォーム内に形成されたキャピラリ相互間の空隙が減圧された状態で線引き加工するようにすれば、キャピラリ外面やコアロッド外面への水分の接触が抑制されると共に、減圧されたその空隙が加熱によって内部圧力の高まったキャピラリによってスムーズに押し潰され、それによってフォトニッククリスタル構造の構造安定性が高くなり、バックグラウンドの伝送損失がきわめて低いPCファイバが得られることとなる。ここで、プリフォーム内に形成されたキャピラリ相互間の空隙の減圧は、その空隙が減圧状態となるようにプリフォームの両端を封止するようにしてもよく、また、その空隙が減圧状態となるようにそこからのガス排出を実施しながら線引き加工するようにしてもよい。
【0016】
また、多数のキャピラリ及びコアロッド又は多数のキャピラリを筒状のサポート管に充填することによりプリフォームを形成することが好ましい。かかる構成によれば、キャピラリ束がサポート管で束ねられた状態にプリフォームが作製されることとなるので、各キャピラリの移動がサポート管により規制され、線引き加工の加工性が良好となると共に、得られるPCファイバが長手方向に均質なものとなる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、キャピラリの両端が封止されることによってキャピラリ内への新しい空気の侵入が阻止されることとなるので、線引き加工時における空気中の水分との反応によるキャピラリ内面への水酸基の形成を抑制することができ、得られるPCファイバを従来に比べて伝送ロスの少ないものとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係るPCファイバの製造方法について工程を追って説明する。
【0019】
<キャピラリ作製工程>
図1に示すように、円筒状の石英(SiO2)管9を電気炉10で加熱延伸することにより長尺のキャピラリ1を作製する。このとき、石英管9内及びキャピラリ1内に塩素ガスを流通させる。これによって、キャピラリ1内面の水酸基及び水分が塩素ガスによって除去されると共に空気が排除されて水分のキャピラリ1内面への付着が防止されることとなる。また、得られる長尺のキャピラリ1の両端を封止してキャピラリ1内に塩素ガスを充填した状態とする。このとき、キャピラリ1内の塩素ガス圧力は、キャピラリ1が線引き加工時に相似形を維持しながら細径化されるように所定の値に設定する。そして、この長尺のキャピラリ1をマイクロバーナー等を用いて所定長さに切り分けることにより、両端にキャピラリ封止部1a,1aが形成され塩素ガスが充填されたキャピラリ1,1,…を作製する。このキャピラリ1内に塩素ガスが充填されていることによって、キャピラリ1内面への水分の接触がなくなることとなる。
【0020】
<準備工程>
キャピラリ作製工程で作製したキャピラリ1,1,…を多数本と、キャピラリ1の同外径で同長さの石英製のコアロッド2を1本と、キャピラリ1及びコアロッド2より短尺で石英製の円筒状のサポート管3を1本と、を準備する。
【0021】
<キャピラリ及びコアロッド充填工程>
キャピラリ1,1,…及びコアロッド2を貫通状態にサポート管3内に充填する。このとき、横断面においてキャピラリ孔が三角格子を形成するようにキャピラリ1,1,…を最密状に充填すると共に、中心軸位置にコアロッド2が配置されるようにする。これによって、各キャピラリ1及びコアロッド2の移動がサポート管3により規制されることとなる。また、キャピラリ1,1,…及びコアロッド2は断面円形であるため、サポート管3内にはキャピラリ1相互間等に断面略三角形状の空隙11,11,…が形成される。そして、キャピラリ束の最外層とサポート管3の内壁との間に生じる間隙には石英粉等の充填材を充填し、各キャピラリ1の位置ずれが生じないようにする。以上のようにして、図2に示すように、キャピラリ束を形成する最密状に配設された多数のキャピラリ1,1,…と、その中心軸位置に配置されたコアロッド2と、キャピラリ1,1,…及びコアロッド2よりなるキャピラリ束を保持するサポート管3とからなるプリフォーム4を作製する。
【0022】
<塩素ガスによる脱水処理工程>
図3に示すように、プリフォーム4両端にサポート管3とほぼ同外径である石英製の補助パイプ12,12をそれぞれ溶接する。そして、一方の補助パイプ12の開口部から塩素ガスを流し込み、その塩素ガスをサポート管3内に形成された空隙11,11,…に流通させ、最終的に他方の補助パイプ12の開口部から排出するようにすると共に、火炎13をプリフォーム4の長手方向に往復移動させるようにしてその外側を加熱する。これによって、キャピラリ1,1,…外面及びコアロッド2外面の水酸基及び水分が塩素ガスによって予め除去されることとなる。そして、キャピラリ1相互間の空隙11,11,…が減圧された状態となるようにサポート管3内を真空ポンプで減圧しながらその両端を加熱してサポート管封止部3a,3aを形成する。このとき、その空隙11,11,…に空気が侵入しないようにし、空隙11,11,…に塩素ガスが充填された状態となるようにする。
【0023】
<線引き工程>
プリフォーム4から一方の補助パイプ12を取り外し、図4に示すように、残った他方の補助パイプ12が上側になるようにしてプリフォーム4を線引き加工機にセットする。そして、プリフォーム4に線引き炉14で加熱延伸する線引き加工を施すことにより細径化(ファイバー化)する。このとき、キャピラリ1,1,…が所定の内圧を有して封止されていることによって、キャピラリ1,1,…が相似形を維持しながら細径化されることとなる。また、サポート管3内に形成された空隙11,11,…が減圧された状態で封止され、しかも塩素ガスが充填されていることによって、キャピラリ1外面及びコアロッド2外面への水分の接触が防止されると共に、減圧されたそれらの空隙11,11,…が加熱によって内部圧力の高まったキャピラリ1,1,…によってスムーズに押し潰されることとなる。そして、隣接するキャピラリ1同士、キャピラリ1とコアロッド2、及びキャピラリ1とサポート管3は相互に融着一体化することとなる。そうして、図5に示すように、ファイバ中心を長手方向に延びる中実コア部5と、中実コア部5を囲うように設けられ中実コア部5に沿って延びる多数の細孔を有する多孔部6と、これらを被覆するように設けられた被覆部7とからなるPCファイバ8が製造される。
【0024】
上記構成のPCファイバ8の製造方法によれば、キャピラリ1両端がキャピラリ封止部1a,1aで封止されていることによってキャピラリ1内への空気の侵入が阻止され、また、キャピラリ1内に水酸基形成不活性な塩素ガスが充填されていることによってキャピラリ1内面への水分の接触が防止され、さらに、キャピラリ1外面及びコアロッド2外面が塩素ガスによって脱水処理されていることによってそれらの水酸基及び水分が予め除去されているので、得られるPCファイバ8は水酸基が少なく、水酸基が吸収する波長1.38μmの光の伝送ロスが極めて低いものとなる。
【0025】
また、線引き加工時にキャピラリ1が相似形を維持しながら細径化されるように予めキャピラリ1の内圧が適当に設定されており、さらに、サポート管3内に形成された空隙11を減圧した状態で線引き加工を行うことにより、減圧されたその空隙11が加熱によって内部圧力の高まったキャピラリ1によってスムーズに押し潰されることとなるので、それによってフォトニッククリスタル構造の構造安定性が高くなり、得られるPCファイバ8のバックグラウンドの伝送ロスがきわめて低いものとなる。
【0026】
そして、キャピラリ1及びコアロッド2がサポート管3で束ねられた状態にプリフォーム4が作製されることとなるので、各キャピラリ1及びコアロッド2の移動がサポート管3により規制され、線引き加工の加工性が良好なものとなり、また、得られるPCファイバ8が長手方向に均質なものとなる。
【0027】
なお、上記実施形態では、中実のコア部を有するPCファイバ8を製造するものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、中空のコア部を有するPCファイバを製造するものであってもいよい。その場合、プリフォームの中心軸位置にコアロッドを配置する代わりに、その中心軸位置にコア空間を形成するようにすればよい。
【0028】
また、上記実施形態では、石英管9に塩素ガスを流通させながら加熱延伸してキャピラリ1を作製したが、特にこれに限定されるものではなく、図6に示すように石英管9を大気雰囲気下で加熱延伸してキャピラリ1を作製するようにしてもよい。但し、その場合は、キャピラリ1内面に塩素ガス等による脱水処理及び/又は後述のフッ化水素酸等によるエッチング処理を施すことが望ましい。
【0029】
また、上記実施形態では、キャピラリ1内に塩素ガスを充填するようにしたが、特にこれに限定されるものではなく、水酸基形成不活性なガスであれば、アルゴン等の希ガス、窒素ガス等を充填するようにしてもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、プリフォーム4のサポート管3内に形成された空隙11が減圧された状態でサポート管3両端を封止し、そのプリフォーム4を線引き加工するようにしたが、特にこれに限定されるものではなく、図7に示すように、プリフォーム4上部に溶接した補助パイプ12から真空ポンプ等を用いて気体排出を行うことによりその空隙11を減圧された状態となるようにして線引き加工を行うようにしてもよい。このとき同時に、補助パイプ12から塩素ガスを流し込み、キャピラリ1外面及びコアロッド2外面の脱水処理を行うようにしてもよい。
【0031】
また、両端を封止したキャピラリ又は封止されていないキャピラリを作製し、そのキャピラリをフッ化水素酸に浸漬するエッチング処理を行うようにしてもよい。このようにすれば、キャピラリ外面がエッチングされることとなるので、予めその外面の水酸基が除去され、得られるPCファイバは水酸基の少ないものとなる。封止されていないキャピラリの場合は、キャピラリ内面も同様にエッチング処理されることとなる。もちろん、コアロッドにかかるエッチング処理を施すようにしてもよい。この処理は、塩素ガスによる脱水処理に併せて行ってもよく、また、塩素ガスによる脱水処理に代えて行ってもよい。
【0032】
【実施例】
<試験評価サンプル>
以下の各例のPCファイバサンプルを作製した。
【0033】
−例1−
石英管を大気雰囲気下で加熱延伸することにより外径500μm長さ300mmのキャピラリを多数本作製した。次いで、それらのキャピラリと外径500μm長さ300mmのコアロッドとを外径26mmで内径10mmのサポート管に最密状に充填した。このとき、端面においてキャピラリ孔が三角格子を形成すると共にコアロッドが中心軸位置に配置されるようにした。次に、各キャピラリの両端を加熱して封止することによりプリフォームを作製した。続いて、図8(a)に示すように、サポート管3の一端に補助パイプ12を溶接し、その補助パイプ12が上側となるようにしてプリフォーム4を線引き加工機にセットした。そして、プリフォーム4を線引き炉14で加熱延伸する線引き加工を行うことにより外径100μmのPCファイバを作製し、これを例1とした。
【0034】
−例2−
例1と同様プリフォームを作製し、サポート管3の両端に補助パイプを溶接して上記実施形態と同様に塩素ガスによる脱水処理を行った。次いで、一方の補助パイプを取り外し、図8(b)に示すように、残った他方の補助パイプ12が上側となるようにしてプリフォーム4を線引き加工機にセットした。そして、真空ポンプを補助パイプ12に接続してサポート管3内に形成された空隙から気体を排出することによりその空隙を4.80×104Paに減圧された状態に維持し、プリフォーム4を線引き炉14で加熱延伸する線引き加工を行うことにより外径100μmのPCファイバを作製し、これを例2とした。
【0035】
−例3−
キャピラリ及びコアロッドをサポート管に充填する前にそれらをフッ化水素酸に浸漬するエッチング処理を行ったことを除いては例2と同様の方法で作製した外径100μmのPCファイバを例3とした。
【0036】
−例4−
上記実施形態と同様に塩素ガスを流通させながら石英管を加熱延伸することにより両端が封止され塩素ガスが充填された長尺のキャピラリを作製し、マイクロバーナーを用いてそれを外径500μm長さ300mmの両端が封止されたキャピラリに切り分けた。次いで、それらのキャピラリと外径500μm長さ300mmのコアロッドとを外径26mmで内径10mmのサポート管に最密状に充填してプリフォームを作製した。このとき、横断面においてキャピラリ孔が三角格子を形成すると共にコアロッドが中心軸位置に配置されるようにした。次に、サポート管の両端に補助パイプを溶接して上記実施形態と同様に塩素ガスによる脱水処理を行った。続いて、一方の補助パイプを取り外し、他方の補助パイプが上側となるようにしてプリフォームを線引き加工機にセットした。そして、プリフォームを線引き炉で加熱延伸する線引き加工を行うことにより外径100μmのPCファイバを作製し、これを例4とした。
【0037】
−例5−
図8(c)に示すように、線引き開始側と反対側の一端部のみを封止したキャピラリ1,1,…を用いたことを除いては例1と同様の方法で作製した外径100μmのPCファイバを例5とした。
【0038】
−例6−
図8(d)に示すように、両端を封止しないキャピラリ1,1,…を用いたことを除いては例1と同様の方法で作製した外径100μmのPCファイバを例6とした。
【0039】
<試験評価方法>
例1〜5の各PCファイバについて、波長1.55μm及び波長1.38μmのそれぞれの光を伝搬させ、それぞれの伝送ロスを計測した。なお、例6は、キャピラリ孔が潰れてしまい、細孔によってフォトニッククリスタル構造が構成されなかったので計測を行わなかった。
【0040】
<試験評価結果>
表1は、試験評価結果を示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003556908
【0042】
同表によれば、波長1.55μm及び波長1.38μmのいずれの場合も、例1〜5の順に伝送ロスが低くなっているのが分かる。
【0043】
例1と例5とを比較すると、波長1.55μmの光に対する伝送ロスは両者同等であるにも関わらず、波長1.38μmの光に対する伝送ロスは例5よりも例1の方が低くなっているのが分かる。これは、例5ではキャピラリの一方の端が開口してキャピラリ内への空気の出入りが可能であるために線引き加工時にその内面に波長1.38μmの光を吸収する多くの水酸基が形成されたのに対し、例1ではキャピラリの両端が封止されてキャピラリ内への空気の出入りがないためにその内面への水酸基の形成が抑制されたためであると考えられる。
【0044】
例1と例2とを比較すると、波長1.55μmの光に対する伝送ロスは例1よりも例2の方が大幅に低くなっているのが分かる。これは、例1ではサポート管内に形成された空隙を減圧せずに線引き加工を行ったのに対し、例2ではその空隙を減圧した状態で線引き加工を行い、その結果、減圧されたその空隙が加熱によって内部圧力の高まったキャピラリによってスムーズに押し潰され、それによってフォトニッククリスタル構造の構造安定性が高まったためであると考えられる。また、波長1.38μmの光に対する伝送ロスもまた例1よりも例2の方が低くなっているのが分かる。これは、例1ではキャピラリ外面及びコアロッド外面が塩素ガスによって脱水処理されていないのに対し、例2ではそれらの外面が塩素ガスによって脱水処理されており、その結果、キャピラリ外面及びコアロッド外面の水酸基及び水分が塩素ガスによって予め除去されたためであると考えられる。加えて、サポート管内に形成された空隙が減圧されてキャピラリ外面及びコアロッド外面に接触する水分が少ないために水酸基の形成が抑止された効果もあると考えられる。
【0045】
例2と例3とを比較すると、波長1.55μm及び波長1.38μmのいずれの光に対する伝送ロスも例2よりも例3の方が低くなっているのが分かる。例2よりも例3の方が波長1.38μmの光に対する伝送ロスが低くなっているのは、例2ではキャピラリ作製時等にキャピラリ内面に形成された水酸基が残ったまま両端を封止したキャピラリを用いたのに対し、例3では両端封止前にキャピラリをフッ化水素酸に浸漬することによりその表層をエッチングして予め水酸基を除去したキャピラリを用いたので、その結果、作製されたPCファイバに残留する水酸基が少なくなったためであると考えられる。例2よりも例3の方が波長1.55μmの光に対する伝送ロスが低くなっているのは、波長1.38μmの光に対する伝送ロスの低減効果が波長1.55μmの光に対する伝送ロスに影響を与えたためであると考えられる。
【0046】
例3と例4とを比較すると、波長1.55μm及び波長1.38μmのいずれの光に対する伝送ロスも例2よりも例3の方が低くなっているのが分かる。例3よりも例4の方が波長1.38μmの光に対する伝送ロスが低くなっているのは、例3ではキャピラリ内面がフッ化水素酸によるエッチング処理が施されて予め水酸基が除去されているものの最終的にはキャピラリ内に空気が充填されるために線引き加工時にキャピラリ内面に水酸基が形成されるのに対し、例4ではキャピラリ作製時に塩素ガスが流通されてキャピラリがそのまま封止されているためにキャピラリ内面が空気に接触することがなく、その結果、例4では作製されたPCファイバに残留する水酸基が少なくなったためであると考えられる。例3よりも例4の方が波長1.55μmの光に対する伝送ロスが低くなっているのは、波長1.38μmの光に対する伝送ロスの低減効果が波長1.55μmの光に対する伝送ロスに影響を与えたためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態におけるキャピラリ作製工程を示す説明図である。
【図2】プリフォームの断面図である。
【図3】本発明の実施形態における塩素ガスによる脱水処理工程を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態における線引き工程の説明図である。
【図5】フォトニッククリスタルファイバの斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態におけるキャピラリ作製工程を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態における線引き工程の説明図である。
【図8】実施例における線引き工程の説明図である。
【符号の説明】
1 キャピラリ
2 コアロッド
3 サポート管
4 プリフォーム
5 中空コア部
6 多孔部
7 被覆部
8 PCファイバ
9 石英管
10 電気炉
11 空隙
12 補助パイプ
13 火炎
14 線引き炉

Claims (7)

  1. キャピラリ孔が横断面において所定格子配列を形成するように多数のキャピラリを束ねると共に、中心軸位置にコアロッドを配置して又はコア空間を形成して、該多数のキャピラリの各々が両端封止されたプリフォームを作製し、該プリフォームを線引き加工して細径化することを特徴とするフォトニッククリスタルファイバの製造方法。
  2. 上記キャピラリの両端の封止を、該キャピラリが上記線引き加工時に相似形を維持しながら細径化されるように該キャピラリの内圧を設定して行うことを特徴とする請求項1に記載のフォトニッククリスタルファイバの製造方法。
  3. 上記キャピラリの両端の封止を、該キャピラリ内に水酸基形成不活性なガスを充填して行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトニッククリスタルファイバの製造方法。
  4. 上記キャピラリの内面及び/又は外面をエッチング処理することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のフォトニッククリスタルファイバの製造方法。
  5. 上記キャピラリの内面及び/又は外面を脱水処理することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のフォトニッククリスタルファイバの製造方法。
  6. 上記線引き加工を上記プリフォーム内に形成された空隙を減圧した状態で行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のフォトニッククリスタルファイバの製造方法。
  7. 上記多数のキャピラリ及び上記コアロッド又は上記多数のキャピラリを筒状のサポート管に充填することにより上記プリフォームを形成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載のフォトニッククリスタルファイバの製造方法。
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