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JP3555244B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

アンチスキッド制御装置 Download PDF

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JP3555244B2
JP3555244B2 JP13044995A JP13044995A JP3555244B2 JP 3555244 B2 JP3555244 B2 JP 3555244B2 JP 13044995 A JP13044995 A JP 13044995A JP 13044995 A JP13044995 A JP 13044995A JP 3555244 B2 JP3555244 B2 JP 3555244B2
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真次 松本
秀明 井上
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両のアンチスキッド制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両のブレーキ液圧制御をするアンチスキッドシステム(ABS)は、低μ路等での制動時の車輪ロックを回避するのに効果を発揮するものであるが、このようなシステムにおけるアクチュエータ及び制御として、1チャンネル当たり2個の電磁弁構成のアクチュエータによるもの(減圧、保持、増圧の各モードが弁開閉の組み合わせでなされる、いわゆる3モードABS)は、既知である。また、3位置弁を電磁弁として1チャンネル当たり1個設けるものもある。
ABSの装置構成は、このように数々のものが提案されているが、アンチスキッド装置の普及に伴い、より廉価なシステムが望まれている。
【0003】
このような状況から、1チャンネル当たり2個の2位置弁を持つタイプのアンチスキッド制御装置(3位置弁の場合は1チャンネル当たり1個でよい)に対し、1チャンネル当たり1個の2位置弁を持つタイプのものもについても提案がされており、本出願人は、先に、特願平6−279242号による、改良されたアンチスキッド制御装置に係る技術について提案している。このものは、絞りによる緩増圧効果を利用する2モードABSで、電磁弁は1チャンネル当たり1個の電磁弁でも足りるものでもあり、装置構成及び制御の改善が図られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、アンチスキッド装置は、例えば、車輪速センサを備えて検出される車輪速情報を基にABS制御に必要な制御情報を得るようにするのが常套であり、多くのシステムがこれを採用する。この場合、センシングされた車輪速より車体速を推定し、また車輪速より車輪加速度を演算することができ、そして、車体速と車輪速より求めるスリップ量及び車輪加速度により車輪の状態を判断し、車輪の状態に応じてブレーキ圧の制御を行うことができる。
【0005】
このようにABSシステムは、車輪速によるフィードバック(F/B)制御を行うことができるが、この場合、車輪の状態の判断方法として、或る設定された制御しきい値(または目標値)との比較が一般的であり、そのしきい値などは、アンチスキッド装置を個々の車両に適用する時にチューニングにより設定される。
【0006】
しかるに、制動時の車輪ロック回避のブレーキ液圧制御時、実際の路面μの状態は、多様であり、図13(いわゆるμ−S特性(摩擦係数−スリップ量特性))に示すように一定したものではない。路面とタイヤの摩擦係数は、その制動中の路面の状態等で異なり、同図にも示されるように、一般的には、乾燥した状態(ドライ路)では大きく(図中、上部側の2つの特性)、またぬれた状態(ウエット路等)では小さくなる(図中、下部側の2つの特性)。
このように、路面μの状態は一定したものではないので、上記のようなチューニングにより例えば或る制御しきい値を設定した場合は、或る程度の制御はできるが、どのような路面状態でも最適に制御されることはなくなるという問題がある。
また、そのため、路面μを推定し、アンチスキッド制御をより最適に行うことが考えられるが、より好ましいのは、上述の如くにより廉価なシステムが望まれる中で、そのような要求をも同時に満たしつつこれを実現し路面μに応じた制御の最適化を図れるようにすることである。
【0007】
また、特に、上述の如き1チャンネル当たり1個の2位置弁のタイプのアンチスキッド装置の場合、ブレーキ液の制御モードは、従来の保持の可能なアクチュエータが減圧、保持、増圧の3モードを基本にした5モード(急減圧、緩減圧、保持、緩増圧、急増圧)が行えるものであるのに対し、減圧(急減圧)と緩増圧の2モードを基本にするものである。
【0008】
しかして、このようなタイプの場合、急増圧がないために、ABS作動時、制動場面等如何では、不適切に一度大きく減圧してしまうと増圧が遅いため減速度不足などが生ずるに至る場合がある(急増圧があればリカバリーが効くが、緩増圧ゆえにそのようなリカバリーは期待しにくくなる)。
従って、必要最小限の減圧を行うことは重要であり、そのためにも適切に路面μ推定をし得て最適制御ができれば、かかるタイプのシステムにとってABS制御の実効性をより高める上で有効なものとなる。
【0009】
本発明は、上述のような考察を基に、絞りによる緩増圧効果を利用したアンチスキッド制御において、適切に路面μに応じた最適な制御が行え、廉価なシステムを用いても充分なアンチスキッド性能を発揮し得る制御装置を実現しようというものである。
また、他の目的は、上記の本出願人の先の提案に係るアンチスキッド制御装置に更なる改良を加えることの可能な、より改良されたアンチスキッド制御装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によって、下記のアンチスキッド制御装置が提供される。
即ち、絞りによる緩増圧効果を利用した1チャンネル当たり1電磁弁により制御されるアンチスキッド装置と、
前記緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、それを基に路面μ−スリップ率特性を推定する推定手段と、
該推定手段に応じてアンチスキッド制御内容を変更する制御変更手段と
を備えてなることを特徴とするアンチスキッド制御装置である。
【0011】
また、上記において、前記推定手段は、路面μ変化量の履歴より路面μ−スリップ率特性を推定するものとしてなる、
ことを特徴とするアンチスキッド制御装置である。
【0012】
また、前記制御内容の変更は、
推定手段よりμピークをとるスリップ率を推定し、それに応じてアンチスキッド制御の目標スリップ量もしくはスリップ量しきい値か、目標車輪加速度もしくは車輪加速度しきい値かのいずれかを変更するものである、
ことを特徴とするアンチスキッド制御装置である。
【0013】
また、アンチスキッド制御の増減圧指令に対し、増圧時または減圧時の増圧量または減圧量の推定とその後の減圧時または増圧時の減圧量または増圧量の推定を行ことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁弁に出力する駆動パルスのデューティ比を演算する駆動パルスデューティ比演算手段を、更に備え、
前記緩増圧中の増圧量に、該演算手段による推定増圧量が適用される、
ことを特徴とするアンチスキッド制御装置である。
【0014】
【作用】
本発明アンチスキッド制御装置は、制動時の車輪ロック回避のアンチスキッド制御において、絞りによる緩増圧効果を利用した1チャンネル当たり1電磁弁の構成により制御対象車輪の制動が制御されるが、この場合、その推定手段及び制御変更手段を有して、その緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、それを基に路面μ−スリップ率特性(μ−S特性)を推定し、これに応じてアンチスキッド制御内容を変更する。
【0015】
よって、かかる推定手段及び制御変更手段を備えることで、絞りによる緩増圧効果を利用する場合における、短時間での緩増圧時の増圧速度はほぼ一定とみなせ単位時間当たりの増圧量が一定になるという特性を活かした路面μ−スリップ率特性の推定も可能で、適切に路面μに応じた最適な制御を行わしめ得て、廉価なシステムを用いても充分なアンチスキッド性能を発揮させるよう制御することを実現することを可能ならしめる。
【0016】
本発明アンチスキッド制御装置において、好ましくは、前記電磁弁は2位置弁とできる。また、好ましくは、前記電磁弁が、アンチスキッド制御時、その閉弁位置ではホイールシリンダのブレーキ液を抜き、その閉弁位置では該ブレーキ液の抜きを遮断するよう、供給されるパルス信号により駆動制御されるソレノイドバルブであり、マスターシリンダから該ホイールシリンダへ至る経路には、上流側と下流側との差圧により駆動されるバルブであって、絞りによりアンチスキッド制御の緩増圧を行うバルブを有する構成とすることができる。
好ましくはまた、車輪速センサからの出力より車輪速を演算する車輪速演算手段と、車輪速より車体速を推定する車体速推定手段と、車輪速より車輪加速度を演算する車輪加速度演算手段と、それら車輪速と車輪加速度と推定された車体速より増減圧量を演算する手段と、駆動パルスを出力する駆動パルス出力手段とを備えるよう構成とすることができる。
【0017】
また、前記推定手段は、路面μ変化量の履歴より路面μ−スリップ率特性を推定するよう構成して、本発明アンチスキッド制御装置は実施でき、同様に上記のことを実現することを可能ならしめる。この場合は、その履歴をみることで、適切なμ−S特性の推定が可能となる。
【0018】
また、前記制御内容の変更は、推定手段よりμピークをとるスリップ率を推定し、それに応じてアンチスキッド制御の目標スリップ量もしくはスリップ量しきい値か、目標車輪加速度もしくは車輪加速度しきい値かのいずれかの変更をするよう構成して、本発明アンチスキッド制御装置は実施でき、同様に上記のことを実現することを可能ならしめる。加えて、この場合は、例えば、ドライ路やウエット路等の異なるμ−S特性の路面での対応性に優れ、最大μのスリップを有効に活用し得て、路面μがピークとなるスリップを目標に制御可能となり、ホイールシリンダ液圧の込め過ぎや抜き過ぎによる減速度減少や舵の効き低下の防止などにも効果的なものとなる。
【0019】
また、アンチスキッド制御の増減圧指令に対し、増圧時または減圧時の増圧量または減圧量の推定とその後の減圧時または増圧時の減圧量または増圧量の推定を行ことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁弁に出力する駆動パルスのデューティ比を演算する駆動パルスデューティ比演算手段を更に備えるようにするとともに、前記緩増圧中の増圧量に、該演算手段による推定増圧量が適用されるよう構成して、本発明アンチスキッド制御装置は実施でき、同様に上記のことを実現することを可能ならしめる。
【0020】
この場合にあっては、更に、その駆動パルスデューティ比演算手段を備えることで、常に液圧を推定しながら任意の液圧の制御可能となり、1チャンネル当たり1個の電磁弁に対する上記駆動パルスのデューティ制御をもって、例えば任意の液圧での保持も可能な保持モードも簡単かつ容易に達成できるなど、より効果的なアンチスキッド制御を実現できる上、かかるデューティ比演算での処理過程で算出される当該推定増圧量が路面μ−スリップ率特性の推定に用いられることから、新たにホイールシリンダ圧センサを付加しないでも済み、それに要するコスト増やそのセンサ付加に起因するフェイルセーフ対策をも施すといったような必要がない分も、なお一層有利であって、より廉価なシステムで充分なアンチスキッド性能を発揮するアンチスキッド制御装置を実現することが可能となる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施例の構成を示す図である。
適用する車両は、本実施例では、前後輪とも左右のブレーキ液圧(制動液圧)を独立に制御できる4チャンネルアンチスキッドシステム(4chABS)のものとする。
【0022】
図中、1はブレーキペダル、2はブレーキの倍力装置としてのブースタ、3はリザーバ、4はマスターシリンダ(M/C)をそれぞれ示し、また10,20は車両の左右前輪、30,40は左右後輪をそれぞれ示す。
各車輪10,20,30,40は、ホイールシリンダ(W/C)11,21,31,41を備え、マスターシリンダ4とそれらホイールシリンダとの間には、車輪ロックを回避するためのアクチュエータが設けられる。
【0023】
図示例では、各輪ごとのチャンネルにインレットバルブ12,22,32,42及びアウトレットバルブ13,23,33,43を有し、また、リザーバ8,9と、モータ5駆動のポンプ6,7とを要素として含み、これらを図示のように配管、接続してABS油圧回路を構成するアンチスキッド装置が備わっている。マスターシリンダ4からこれらホイールシリンダ11〜41へ至るブレーキ液圧系において、前輪(フロント)ブレーキ系では、マスターシリンダ液路は、これをインレットバルブ12,22個々に接続し、それらインレットバルブ12,22からは各ホイールシリンダ側の液路を経て前輪10,20の各ホイールシリンダ11,21に至らしめる。後輪(リア)ブレーキ系も、同様に、マスターシリンダ液路は、これをインレットバルブ32,42個々に接続し、それらインレットバルブ32,42からは各ホイールシリンダ側の液路を経て後輪30,40の各ホイールシリンダ31,41に至らしめる。
【0024】
前輪の各ホイールシリンダ11,21に接続の各ホイールシリンダ液路は、それぞれ途中から分岐し、それら分岐液路をアウトレットバルブ13,23を介して前輪用リサーバ8に接続するとともに、前輪用ポンプ6を通して、上流側のマスターシリンダ液路へ接続する。また、後輪の各ホイールシリンダ31,41に接続のホイールシリンダ液路も同様、それぞれ途中から分岐し、それら分岐液路をアウトレットバルブ33,43を介して後輪用リサーバ9に接続するとともに、後輪用ポンプ7を通して、上流側のマスターシリンダ液路へ接続する。
【0025】
各インレットバルブ12,22,32,42は、ここでは、上流側(マスターシリンダ側)と下流側(各ホイールシリンダ側)の差圧により駆動されるインレットバルブであり絞りによる緩増圧をつくる。また、アウトレットバルブ13,23,33,43のそれぞれは、ここでは、ON・OFF制御の2位置電磁弁である。
かかるアウトレットバルブは、1チャンネル当たり1個設けられるもので、常態(そのソレノイドへの非通電状態)で図示の第1の位置にあってそのバルブ入出力ポート間の接続、従って対応リザーバ8,9との接続を断ち、その切り換え時、該入出力ポート間を接続する第2の位置、従ってホイールシリンダを対応リザーバ8,9へ接続させる位置をとる、2ポート2位置の電磁弁である。これは、アンチスキッド制御時、対応ホイールシリンダのブレーキ液をリザーバに導いてホイールシリンダ圧を減圧するのに用いられる。
本実施例制御では、かかるインレットバルブ(メカ式)12,22,32,42をマスターシリンダ4とホイールシリンダ11,21,31,41間の経路に介挿するとともに、上記アウトレットバルブ13,23,33,43に対する駆動制御として後述のデューティ制御を行うことにより、該当チャンネルにおいて、それぞれ対応車輪のホイールシリンダ11,21,31,41につき、そのブレーキ液圧(制動液圧P)を個々に制御する。
【0026】
図示例の場合、インレットバルブ12,22,32,42は、上流側と下流側に差圧を生じない状態では絞りを作用させない位置をとる。また、アウトレットバルブ13,23,33,43はOFF時図示の閉位置を維持する。かかる状態では、ブレーキぺダル1の踏み込みにより各ホイールシリンダにマスターシリンダ4からの液圧を供給される時、そのマスターシリンダ圧はマスターシリンダ液路、各インレットバルブ、及びホイールシリンダ液路を通してそのまま伝わり、よって、ブレーキ液圧を元圧であるマスターシリンダ液圧に向け増圧でき、各車輪は個々に制動されて、通常のブレーキングが行える。
【0027】
このような制動時、各チャンネルのアウトレットバルブ13,23,33,43は、それを開閉するよう作動させると、その開弁位置では対応リザーバ8,9への分岐液路を開通させ、対応ホイールシリンダのブレーキ液は該リザーバへ導かれて抜かれる。また、その閉弁位置をとる期間は該リザーバとの連通を断って上記のブレーキ液圧の抜きを遮断する。
かくして、こうしたアウトレットバルブの開閉駆動制御で、ブレーキ液圧を対応リザーバへ逃がして低下させる減圧状態となる。
【0028】
減圧によってリザーバ8,9に溜まったブレーキ液は、モータ5によって駆動されるポンプ6,7によってインレットバルブ12,22,32,42の上流に戻される。そして、戻されたブレーキ液は、増圧の用に供される。
アウトレットバルブの13,23,33,43の作動による減圧によって対応ホイールシリンダ側液路の圧がマスターシリンダ側液路より低下すると、インレットバルブ12,22,32,42はその上流側と下流側に差圧が生じて作動し、これによりマスターシリンダ4と対応ホイールシリンダとの連通は絞りがついた連通に切り替わり、ホイールシリンダ圧は徐々に増圧されるものとなる。
【0029】
アンチスキッド装置の各アウトレットバルブ13,23,33,43、及びポンプ駆動用モータ5は、コントローラ50の出力信号によって制御し、コントローラ50には、各輪10,20,30,40に配した車輪速検出用の車輪速センサ51,52,53,54からの信号をそれぞれ入力する。
また、コントローラ50には、本実施例では、ブレーキスイッチ(SW)55の信号も入力される。
【0030】
上記コントローラ50は、入力検出回路と、演算処理回路と、該演算処理回路で実行されるアンチスキッド制御等の制御プログラム、及び演算結果等を格納する記憶回路と、アウトレットバルブ13,23,33,43及びモータ5に制御信号を供給する出力回路等とを含んでなる。
【0031】
本実施例では、このように、差圧駆動のメカ式のバルブ機構である各チャンネルごとのインレットバルブ12,22,32,42での絞りによる緩増圧効果を利用し、また、1チャンネル当たり1個の電磁弁であるアウトレットバルブ13,23,33,43によって制御対象車輪の液圧が制御されるアンチスキッド装置であり、制動時、コントローラ50は、入力情報を基に、車輪の制動ロックを防止すべく上記のアウトレットバルブ13,23,33,43に対する駆動制御をもってアンチスキッド制御を実行する。
従って、本装置では、各輪ごとに配設した電磁弁に駆動パルスを出力しホイールシリンダ液圧の減圧及び緩増圧を行う。
本例の如き4チャンネル4センサ方式のABS制御の場合、基本的には、前後左右4輪の各チャンネルごとの車輪速情報を得、車輪速より車体速度を推定し、車輪加速度を用いる場合にあっては更に各輪ごと車輪速より車輪加速度をも算出し、かかる車輪速、車輪加速度、車体速度より目標の増減圧量を求め、対応車輪のホイールシリンダ液圧を制御することで、制動時の車輪ロックを回避する制御を行うことができる。
【0032】
更には、コントローラ50は、上記のように、1チャンネル当たり1個の2位置弁のアウトレットバルブ13,23,33,43を使用する構成であり、緩増圧モードと減圧モードを有して電磁弁をパルス信号に基づき制御するABSであっても、必要に応じ、減圧、及び増圧のみならずブレーキ液圧を所望の液圧に保持する保持モードの達成等もできるABS制御としうるように、その演算処理回路においてアウトレットバルブ13,23,33,43に対する駆動パルスのデューティ比を演算する処理をも実行し、それらの駆動制御を行うようにする。
【0033】
コントローラ50はまた、この場合、、液圧を推定して任意の液圧に制御可能とするよう、液圧を推定しながら駆動パルスのデューティ比を演算するところ、これに加えて、次のような機能をも有する。
【0034】
即ち、アウトレットバルブを駆動するための増減圧指令に対し、増圧、減圧制御の組合せの態様により制御量推定を行うことで、各周期ごとの液圧を推定しながら駆動パルスのデューティ比を演算し、アウトレットバルブをデューティ比に応じて制御するが、制動中のその路面状態に合わせ、広範にどの路面状態でも最適化制御の実現を図るべく、緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、それを基に路面μし、ABS制御をより適切に行うよう、アンチスキッド制御内容を変更する制御をも実行する。
この場合において、かかる路面μ変化量の算出の基礎に用いるその緩増圧中の増圧量については、上記駆動パルスのデューティ比演算における増圧時の推定増圧量値を好適に適用することができる。
また、好ましくは、そのABS制御の変更の制御では、路面μ推定手段よりμピークをとるスリップ率を推定し、それに応じてABS制御の目標スリップ量(またはスリップ量しきい値)や目標車輪加速度(または車輪加速度しきい値)を変更する。
【0035】
図2に示すものは、そのようなABS制御のための図1に示した実施例システムでの機能の概要の一例をブロックとして表したものである。
図示の如く、制御対象車輪ごと設けられる車輪速センサ(4センサ)からの出力より車輪速を演算する車輪速演算手段a、車輪速より車体速を推定する車体速推定手段b、同じく車輪速より車輪加速度を演算する車輪加速度演算手段c、車輪速と車輪加速度と推定された車体速より増減圧量を演算する増減圧量演算手段d、及び駆動パルスを出力する駆動パルス出力手段hを備えるとともに、駆動パルス・デューティ比演算手段eを備えるアンチスキッド装置であって、路面μ推定手段f、制御内容変更(アンチスキッド制御変更)手段gを備えている。
【0036】
路面μ推定手段fは、緩増圧中の増圧量とスリップ変化量より路面μを演算し、それを基に路面μを推定する推定手段であり、制御内容変更手段gは、該路面μ推定手段fに応じてアンチスキッド制御内容を変更する変更手段として機能する。
また、好ましくは、駆動パルス・デューティ比演算手段eは、アンチスキッド制御(制御内容変更手段gにより、例えば目標スリップが変えられる等その制御内容が変更せしめられたものを含む)における増減圧指令に対し、電磁弁駆動パルスのオフ/オフ(またはオン/オフ)に応じた増圧(または減圧)時の増圧(または減圧)量の推定とその後の減圧(または増圧)時の減圧(または増圧)量の推定を行うことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁弁駆動パルスのデューティ比を演算処理する内容のものとすることができる。
【0037】
ここに、車輪速演算手段a、車体速推定手段b、車輪加速度演算手段c、増減圧量演算手段dの部分、及び駆動パルス出力手段fは、これらによって既知の通常のアンチスキッド制御系を構成するが、そのアンチスキッド制御系に対し、本実施例のアンチスキッド制御装置では、更に上記駆動パルス・デューティ比演算手段eが具備せしめられた構成としてあるとともに、更には、かかる改良されたアンチスキッド制御装置において、上記路面μ推定手段f、及びアンチスキッド制御内容変更手段gを具備せしめた改良構成となっており、かつ、絞りによる緩増圧効果利用の1ch1電磁弁のアンチスキッド(ABS)・アクチュエータg(4ch)が組み合わされる構成である。
駆動パルスデューティ比演算手段eは、上記の如く増圧量推定部と減圧推定部とを含む構成とされ、駆動パルス出力手段fは、その駆動パルス・デューティ比演算手段eにより得られるデューティ比に従う駆動パルスを該アンチスキッドアクチュエータgへ出力して、対応車輪の制動液圧P、従ってホイールシリンダ圧を制御する。
好ましくは、路面μ推定手段fは、これを、路面μ変化量の履歴により路面μを推定するものとすることができる。
【0038】
上記車輪速演算手段a、車体速推定手段b、車輪加速度演算手段c、増減圧量演算手段dは、本実施例においては、図1の車輪速センサ51〜54及びコントローラ50の一部を含んで構成される。コントローラ50はまた、駆動パルス・デューティ比演算手段e、駆動パルス出力手段f、路面μ推定手段f、及び制御内容変更手段gを構成し、更にアンチスキッドアクチュエータgは、ソレノイドバルブとしてのアウトレットバルブ13,23,33,43を含む、マスターシリンダ4とホイールシリンダ11,21,31,41の間の図1図示のABS油圧回路によって構成される。
【0039】
ここで、路面μの推定、及びこれによるアンチスキッド制御の変更制御についての上記構成の原理内容等につき、図3をも参照して述べると、次のように説明できる。
絞りによる緩増圧効果利用した1ch当たり1電磁弁により制御されるABSシステムに対し、本発明に従う上記した構成の制御は適用できるものであるところ、この場合、絞りによる緩増圧効果を利用するアンチスキッド装置では、短時間での緩増圧時の増圧速度はほぼ一定とみなせるということに、まず、その着想の基礎をおくものである。具体的には、そのように増圧速度はほぼ一定とみなせるが、この増圧速度一定=単位時間当たりの増圧量が一定になるというアクチュエータの特性を活かすものであり、これを活かして、路面μを推定する。
【0040】
図3は、車輪の運動方程式の解析のためのモデルを表し、いま、制動時の各車輪の運動方程式を考えると、これは、次式の如くである。
【数1】
I・(d/dt)ω=μ・W・R−k・Pw・r ・・・1
ただし、
I;車輪のイナーシャ
(d/dt)ω;車輪角加速度
μ;路面μ
W;輪荷重
R;車輪半径
k;ブレーキ諸元係数(パットμ,ホイールシリンダ面積等)
Pw;ホイールシリンダ圧
r;ロータ有効径
【0041】
車輪の運動方程式はこのように表されるが、この式1より路面μを算出するためには、ホイールシリンダ圧の絶対値(値Pw)が必要となり、ホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサがないと算出が困難となり、また、圧力センサを付けるとなると、それだけコストや信頼性といった点に問題が生じることにもなる。
そこで、第二として、更にはかかる点をも考慮し、或る時間間隔で(例えば、或る時刻t1と所定時間間隔の或る時刻t2で)、運動方程式をたてて差をとり、路面μの変化を算出する場合を考えると、次のようになる。
【0042】
即ち、この場合、それぞれの時点で運動方程式として、
【数2】
I・(d/dt)ω=μ・W・R−k・Pw・r ・・・2
【数3】
I・(d/dt)ω=μ・W・R−k・Pw・r ・・・3
が、それぞれ成立する。
ここで、W,R,k,rはほぼ一定とみなす。
【0043】
従って、上記から、或る時間間隔における、時刻t1での路面μ(=μ)と時刻t2での路面μ(=μ)の差(μ−μ)、即ち変化の程度は、
【数4】
Figure 0003555244
となり、路面μの変化量(=μ−μ)は、車輪加速度とホイールシリンダ圧の変化量ΔPwにより算出されることが分かる(図11参照)。
【0044】
かくて、前記アンチスキッドアクチュエータi(図1図示のABS油圧回路)の特性も活用して、路面μの変化は、その時間間隔内ではW等の要素部分は一定で変化しない(あるいは、短時間内ではほぼ一定で実質変化しない)とする条件の下、上記の他の変化パラメータ値を知ることで、これらに応じたものとして式4に基づき演算されることとなる。
一方、車輪のスリップ量は、例えば、従来既知の方法同様に車輪速より算出され、時間当たりのスリップ量の変化量も算出されるものである(同図参照)。
【0045】
そして、路面μの変化量、スリップ量の変化量が得られると、このスリップ量の変化量と路面μの変化量よりスリップ変化に対する路面μの変化が分かり、その履歴をみればμ−S特性が推定できる(同図参照)。
また、μ−S特性が分かればμピークをとるスリップ量が推定可能となり、アンチスキッド制御は車輪のスリップをそのスリップ量に合わせるように制御(可変制御))すればよくなる。つまり、実際の路面において、その路面μ特性に応じた最適なスリップ量に車輪を制御できるようになる(路面μ推定手段f、制御内容変更手段g)。
【0046】
制動時の路面μの状態が、その制動場面の路面いかんでたとえ大きく異なっても、以上に原理を示したような路面μ推定、制御変更を伴う本アンチスキッド制御であれば、常に、路面μに応じた最適な制御が可能で、しかも、廉価なシステムを用いても充分なアンチスキッド性能を発揮することができる。
【0047】
更にまた、上記式4中のホイールシリンダ圧の変化量ΔPw(同右辺分子中のk・r・R値に対する乗算値(=Pw−Pw)の値として、前記駆動パルス・デューティ比演算手段e(コントローラ50)によってなされる、増圧と減圧の組み合わせの態様により制御時の制御量推定を行うことで所定周期ごとの電磁弁駆動パルスのデューティ比を演算する場合におけるその演算処理過程で算出され、用いられる当該推定増圧量値が適用可能で、こうするときは、別途新たにホイールシリンダ圧センサを付加しないで済む等のことは勿論、かかる絞りによる緩増圧効果利用した1ch当たり1電磁弁による廉価なABSシステムとの組み合わせの効果はより大であり、この点でも、廉価なシステムで路面μに応じた最適な制御を行わせ得て、充分なアンチスキッド性能を発揮させられ、その実効性は一層上がるものとなる。
【0048】
図4乃至図6は、コントローラ50により実行される、上記の駆動パルス・デューティ比演算処理、及び路面μ推定並びに制御内容変更処理を含むアンチスキッド制御プログラムの一例のフローチャートである。この処理は、図示せざるオペレーティングシステムで一定時間毎の定時割り込みによって遂行される。
また、図7,8は、それぞれ増圧量推定、減圧量推定のため用いるアクチュエータモデルの一例を示す特性図であり、その特性データについては、コントローラ50の記憶回路に予め格納しておくことができる。また、図9乃至図12は、本制御内容の説明に供する図である。
【0049】
以下、これらの図も参照して説明するに、図4の制御プログラムは、車輪速の読込み、車輪加速度の算出、疑似車体速の算出、緩増圧中か否かの判別、路面μ変化量(Ks)の算出、μピーク推定、Ks=Ksoの設定、目標スリップ率(S)の算出、目標増減圧量(ΔP)演算、ソレノイドバルブ・駆動パルスデューティ比演算ルーチン、及び駆動パルス出力の各処理(ステップS100〜S110)からなる。本実施例では、車輪速のF/BによるPD制御にてABS制御するものとしている。
【0050】
図4において、まず、ステップS100では、車輪速センサ51〜54からの信号に基づき、各車輪速Vwi(i=1〜4)を読み込む。
次に、ステップS101において車輪速Vwiより車輪加速度Vwdを算出する。本実施例では、例えば30msec間の速度差から求めることにする。
【0051】
続くステップS102では、疑似車体速Viを算出する。
本実施例では、通常のABSで用いられる方法でViを算出することにする。即ち、ここでは、各輪の車輪速Vwにフィルタをかけ、より車体速度に近い値Vwfi(i=1〜4)を各輪で算出し、制動時/非制動時などの条件により、各Vwfiから最も大きいものを選択するなどして最も車体速度に近いVwf(車体速中間値と呼ぶ)を算出し、更にこのVwfをもとに疑似車体速度Viを求めることとする。
【0052】
次に、本プログラム例では、ステップS102に続くステップS103にてホイールシリンダ圧(W/C圧)が緩増圧中か否かにより、路面μを推定するか否かを選択する。
本実施例では、該チェックに当たっても、後述するW/C圧の制御信号DT(DTは、パルス出力周期T、例えば50msec中のアウトレットバルブを閉じている時間であって、例えばDT=10msecなどとして定義する)を有効に利用し、活用することができ、かかるDT値が、パルス出力周期Tに等しいか否か、即ちDT=Tが成立するか否かにより選択する。DT=Tの時は、アウトレットバルブは閉じっぱなしになるため、周期Tの間は緩増圧中となる。
【0053】
しかして、ステップS103のチェックの結果、DT=Tの時は、ステップS104以下に進み、路面μの変化量を算出する等する一方、DT≠Tの時はステップS110に進み、スリップ率に対する路面μの変化量Ksを或る設定所期値Ksoとし、その後ステップS106の処理に進む。
【0054】
ステップS104においては、スリップ率に対する路面μの変化量Ksを算出する。
本実施例では、一定時間毎の定時割り込みごとに算出されている車輪速Vwと車輪加速度Vwdと擬似車体速度Vi、及び緩増圧中のホイールシリンダ圧変化量ΔPw/c(本プログラム例では、後述するソレノイドバルブ駆動パルス・デューティ比演算ルーチン内で算出されることとなるW/C圧(Pw/ci)の増圧量ΔPinc値(前回値)が用いられる)より路面μ変化量を算出する。
【0055】
まず、前述の原理説明に準じ、以下の計算により一定時間内の路面μ変化量(=μ−μ)を求める(図3,11)。
【数5】
I・(d/dt)ω=μ・W・R−k・Pw/c・r ・・・5
【数6】
I・(d/dt)ω=μ・W・R−k・Pw/c・r ・・・6
(ここで、W,R,k,rは、ほぼ一定とみなす)
【数7】
Figure 0003555244
【0056】
次に、以下の計算により一定時間内のスリップ率変化量(=S−S)を、車輪速Vwと擬似車体速度Viより求める(図11)。
【数8】
Figure 0003555244
以上より、スリップ率に対する路面μの変化量Ks=(μ−μ)/(S−S)が求められる。
【0057】
次に、本プログラム例では、続くステップS105においてμピークを推定する。
本実施例では、上記ステップS104で求めた路面μ変化量Ksが負の値(または前記所定の設定値Kso以下)になる時のスリップ率Soの時のμをμピークと推定する。
【0058】
図11は、μピーク推定の原理も表し、ここでは、比較的に乾燥したドライ路とかなり低μ値のウエット路の場合の異なる2種のμ−S特性が例示されており、かつ、それぞれで最大μのスリップ率も図示のように異なるものとなっている。
図で、特性上、例えば各スリップ率S,S,S,S点、及びそれらに対応する路面μのポイントに注目すると、上記ドライ路特性の場合、μピークは、スリップ率S〜S,S〜S,S〜Sの範囲のうち、スリップ率S〜S部分にあることが分かり、路面μ変化量Ks値は、スリップ率S〜Sとスリップ率S〜Sとの間では、符号が転換しており(ここでは、前者の部分は(μ−μ)/(S−S)でKs>0であるが、後者の部分は(μ−μ)/(S−S)でKs<0となり、負の値を示す)、最大μはそのスリップ率S〜S範囲にあることが分かる。
【0059】
一方、上記ウエット路特性の場合、上記ドライ路の特性に比し、各スリップ率S,S,S,S点に対応する路面μがそれぞれ図示の如くの値μ′,μ′,μ′,μ′である結果、μピークは、低スリップ率側にずれた特性のものとなっており、スリップ率S〜S部分にあるが、このような場合も、上記に準じ得られる路面μ変化量Ks値を用いることで、最大μはそのスリップ率S〜S範囲にあることが分かり、μピーク推定は同様に行われる。
従って、実際の制動場面での路面が、これらいずれのμ−S特性であっても、その路面μの状態に対応して、スリップ率に対する路面μの変化の度合いを示すKs値をみることで、μピークのスリップ率の推定ができる。
そして、このような推定が行えると、基本的には、ABS作動時、常に、実際のスリップ率がその該当する対応μ−S特性上の最大μのスリップ率近傍となるように、ABS制御を行わせることができる。
【0060】
図4に戻り、ステップS106に進むと、本ステップでは、目標スリップ率Sを算出する。本実施例では、ステップS105で求めたμピーク時のスリップ率Soより目標スリップ率S=min(So,Solmit)として求める。ここで、μピークがスリップ率の非常に大きなところにある路面への対策として(このような路面では、前後力は発生するが横力が小さくなり過ぎ、舵が効きにくくなる傾向を呈する)、目標スリップ率Sを算出する際にSoに最大値の制限Solimtを設けたものである。
従って、ここでは、かかるリミットチェック処理も含められ、その結果、上記μピーク推定で得られることとなる値So(実際のABS作動時のその対応路面に応じ、推定μ−S特性ごと(例えば、図11のそれぞれの特性ごと)、異なる値を示すこととなる可変値)と、上記値Solmit(所定の固定値)との2つのうち、いずれか小さい方の値のものが、目標値Sとして選択されることなる(具体的には、ステップS105で得られる値Soが値Solmitを下まっわていれば、そのまま値Soが、また値Soが値Solmitを越えることとなる場合にあってはその値Soに代え値Solmitが、それぞれ、選ばれるようにすることができる)。
μピーク推定に基づく目標スリップ率の設定をする態様で本制御を実施するとき、このようにもすると、更に、よりきめ細かな制御が可能となる。
【0061】
次に、ステップS107にて、目標増減圧量ΔPを算出する。
本実施例では、アンチスキッド制御は、上述したように例えばPD制御とする。
簡単に説明すると、上記ステップS100〜S102で得られた各輪の車輪速Vwと疑似車体速Viと車輪加速度Vwdより、次式9に従って目標増減圧量ΔPを算出する。
【数9】
ΔP=kp×(Vw−Vw)+kd×(Vwd−Vwd) ・・・9
【0062】
ここに、kp,kdは、それぞれ制御ゲイン(比例制御ゲイン,微分制御ゲイン)であり、走行状態に応じて変更される。
また、Vwは、車輪速の目標値であり、ここでは、上記ステップS106で求めた目標スリップ率の値Sを用いて、例えばVw=Vi×Sとして求める。
また、Vwdは、車輪加速度の目標値であり、ここでは例えばVwd=1.2gなどとして求める。
【0063】
こうして、μピークをとるスリップ率Soに着目しこれを推定して、それに合わせて目標値Vwが設定、変更されることでABS制御の目標増減圧量ΔPが適切に設定される。そして、以下の処理でアウトレットバルブに対するデューティ比制御が実行されていくときは、常に、路面μがピークとなるスリップを目標に制御可能ともなる。
【0064】
即ち、上述の如くに目標増減圧量ΔPを演算したら、該算出値ΔPを用い(図6ステップS209参照)、次のステップS108において、アウトレットバルブ13〜43として各チャンネルに設けられている電磁弁への駆動パルス出力処理(ステップS109)のため、ソレノイドバルブ駆動パルス・デューティ比を演算し、これに基づき、ステップS109実行ごと駆動パルスを出力することにより、アウトレットバルブのデューティ制御を実行する。
上記ソレノイドバルブ駆動パルス・デューティ比演算ルーチンの一例を示したたものが、図5,6である。
本実施例では、常に増圧した後減圧することで該当チャンネルのW/C圧を制御するものとする。
【0065】
図5において、まず、ステップS200にてマスターシリンダ圧を推定する。本実施例では、ブレーキSW55のon信号にて、或る傾きでM/C圧を立ち上げ、例えば最大M/C圧を16MPaとし、最大M/C圧まで上昇するものとする。ここで、更に精度を向上させるために、ABS作動中は、その減速度などに応じてM/C圧を修正するなどとしてもよい。
次に、ステップS201にてW/C圧(Pw/ci)の推定を行う。
本実施例では、後述する方法で算出された前回のパルスデューティ比より、W/C圧を推定するものとする(次のステップ以降参照)。
【0066】
そして、ステップS202以降でソレノイドバルブ駆動パルス・デューティ比を算出する。
詳しく説明すると、まず、ステップS202でパルス・デューティ比DTの初期値を設定する。
本プログラム例では、DT=0とする。
なお、前述もしたが、DTは、パルス出力周期T(例えばT=50msec)中のアウトレットバルブを閉じている時間を表し、例えば、DT=10msecなどとして定義するものであり、よって、この場合は、上記初期値のとき、つまり、DT=0の場合はフル減圧(T=50msecの全期間、開位置をとり、バルブは開きっぱなし)ということになる。そしてまた、DT≠0のとき、例えばDT=10msecの場合なら、これは、上記周期T=50msec中、10msecの間はアウトレットバルブは閉位置をとり、40msecの間は開位置をとることを意味することになる。
【0067】
次に、ステップS203では、値DTが0か否かを判断する。ここで、DT=0の場合は、上記のようにフル減圧なので、ステップS204に進み、増圧量ゼロ、即ちΔPinc=0とする。しかして、ステップS206へ処理を進める。これに対し、DT≠0(DT=Tを含む)の場合は、増圧も(もしくは増圧(緩増圧)のみ)行うのでステップS205に進み、増圧量の推定を行う。
【0068】
この処理内容は、次のようである。
即ち、ステップS205では、例えば図7のようなアクチュエータモデル(特性)により、M/C圧と現在のW/C圧とデューティ比DTより増圧量ΔPincを算出する。かかる値ΔPincは、次のステップS206、及び後述のステップS209での演算に適用されるものであるが、本例では、例えばDT=5msecの時の特性を基本として、そのアクチュエータモデル(特性)を持ち、M/C圧と現在のW/C圧よりDT=5msecの時の増圧量ΔPincを算出し、例えばDT=10msecの時は、その2倍とするなどしてモデルの簡略化を行っている。
【0069】
ここで、本実施例では、更には、DT=Tの時の増圧量ΔPincが、次回ループでの路面μ推定に用いられるΔPw/c値(前記式7)となる。
本例にあっては、路面μ推定に使用されるW/C圧の変化量は、こうして上記のDT=Tのときの推定増圧量がそのまま利用できる。
【0070】
次にステップS206では、W/C圧Pw/ciとステップS205にて推定された増圧量ΔPincとから増圧後のW/C圧Pw/ciM(推定中間値と呼ぶ)を推定する。
つまり、
【数10】
増圧後のW/C圧Pw/ciM=Pw/ci+ΔPinc ・・・10
より増圧後のW/C圧を算出する。
【0071】
次に、ステップS207では、次式11より、パルス出力周期Tからデューティ比DTを減算することにより、減圧時間DTDを算出する。
【数11】
DTD=T−DT ・・・11
【0072】
そして、ステップS208にて減圧量の推定を行う。
本実施例では、例えば図8のようなアクチュエータモデル(特性)により、ステップS206で推定した推定中間値Pw/ciMと上記で求めた減圧時間DTDより減圧量ΔPdecを算出する。算出値ΔPdecは、前記増圧量ΔPincとともに、次のステップS209での演算に適用される。
ここに、図8の如く、減圧側も増圧側(ステップS205,図7)と同じく、例えば減圧時間DTD=5msecの時の特性を基本として、例えばDTD=10msecの時は、その2倍とするなどしてモデルの簡略化を行っている。
【0073】
しかして、上述のようにして推定増圧量と推定減圧量を得たら、次のステップS209以降(図6)では、現在のデューティ比DTが適切かどうかを判断する。
まず、ステップS209では、前記ステップS107(図4)で算出の目標増減圧量ΔPと、上記ステップS205,S208でそれぞれ求めた推定増圧量ΔPincと推定減圧量ΔPdecとのトータルの変化量(つまりΔPinc−ΔPdec)との差であるΔPnを、
【数12】
ΔPn=ΔP−(ΔPinc−ΔPdec) ・・・12
により計算する。
【0074】
次いでステップS210では、この差値ΔPnの正負を判断する。 かかる判断の結果、ΔPn≦0が成立しないとき、つまり、ΔPnが正の場合は、現在のデューティ比DTでは目標の増減圧量まで増減圧されていない(減圧分が多い)ことになるため、ステップS211に進み、更に、DT<Tか否かをチェックする。
その結果、DT<Tであったなら、つまり、増圧時間がパルス出力周期Tに達しておらず、まだ増圧分を増やせる状態ならば、ステップS212に進み、デューティ比をインクリメントして前記ステップS203(図5)の上流に戻し、こうしてインクリメントした後の当該デューティ比を適用して、前述した処理に従い、もう一度推定し直す。この場合、ステップS203→S205→S206→S207→S208→S209という処理が繰り返えされ、その過程で、ステップS210、及び該当するときは更にステップS211の判別が行われることとなる。
【0075】
なお、ここで、ステップS212では、1だけインクリメント(DT=DT+1)しているが、ステップS205で適用するアクチュエータモデル(特性)の基本をDT=5msec(図7)とした場合には、当該インクリメント処理では5インクリメントするようにする(この点については、後述のステップS214でデクリメント処理の場合に関しても同様である)。
【0076】
こうして、DT<TならばDTのインクリメントをする。DT=Tならば、これ以上DTは大きくできないので、DT=T(緩増圧)に決定される。
このようにして本演算ルーチンを終了する場合は、ステップS109(図4)では、これに従い、周期T=50msecの全期間にわたりアウトレットバルブが閉位置をとるよう、その駆動パルス出力の態様を設定して出力処理を実行することになる。
【0077】
ステップS209で前記差値ΔPnが演算されてステップS210へと進む場合において、逆にΔPnが負またはゼロの場合は、現在のデューティで十分に目標の増減圧量が可能であると判断できるために、ステップS213以下へ処理を進めて本演算ルーチンを終了するものである。
【0078】
本プログラム例では、一つ前のΔPn−1値(目標増減圧量ΔPと上で求めた推定増圧量ΔPincと推定減圧量ΔPdecとのトータル変化量との差)と、現在のΔPn(今回値)を比較して、小さいほうを選択する。つまり、ステップS203で|ΔPn|≧|ΔPn−1|の場合は、前回のデューティ比を選択するように、ステップS214にて値DTをデクリメントする。このようにすると、アンチスキッド制御に必要な目標量ΔP(ステップS107)に対し、前記式12による差値として、|ΔPn|≧|ΔPn−1|となるために一つ前のデューティ比を選択した方が、目標量ΔPに近い値に制御できるからである。よって、こうしてデューティ比DTが設定されるときは、デクリメント処理が行われることから、一つ前のデューティ比に相当するパルスデューティ比DTがステップS109(図4)の処理に適用され、結果、それに従った駆動パルスが出力されてデューティ制御が実行されることとなり、アンチスキッド制御において目標量ΔPに合わせた液圧制御が行われる。
【0079】
逆に、|ΔPn|<|ΔPn−1|の場合(これは、上記とは逆に、式12により演算される差値は、今回演算値の方が小さくなることを意味する)は、パルスデューティ比DTとしては、一つ前の前回デューティ比相当にものに設定するよりも、今回のデューティ比でデューティ制御した方が、目標量ΔPに近い値に制御できることから、今回デューティ比を選択するためにステップS214のデクリメントは行わずに、本ルーチンを終了し、図4のステップS109の処理に進み、駆動パルスを出力して、今回ループでの制御を終了するものである。
この場合も、上記のようにして、目標により近い値に制御できるパルスデューティ比DTが設定され、これが駆動パルス出力処理に適用される結果、適切なアウトレットバルブデューティ制御が実行されることとなり、アンチスキッド制御において目標量ΔPに合わせた液圧制御を行うことができる。
【0080】
図9に、アウトレットバルブデューティ制御を行った場合の一例を示す。
説明するに、いま、現在のW/C圧をPw/co、現在の時刻をtoとする。DT=0の時は(この時をn=0とする)、周期Tの間、時刻t+Tまで減圧しつづける。この場合、目標増減圧量ΔPと推定増圧量ΔPincと推定減圧量ΔPdecとのトータル変化量との差ΔPnは、ΔPo=ΔP+ΔPdec(o)となり、ΔPo>0でDT<Tのため(図6、ステップS210,211)、DTをインクリメント(同ステップS212)して再度推定をやり直す。これを繰り返し、例えばDT=n−1の時は、まず、増圧量ΔPinc(n−1)を推定し、推定中間値Pw/cMn−1を算出し、ΔPn−1を求める。この時、推定される最終的なW/C圧をPw/cn−1とする。この時も、ΔPn−1>0でDT<Tのため、更に推定をやり直す。
次のDT=nの時も、同様に、Pw/cMn、ΔPnを求める。この時は、はじめてΔPn≧0となり、既述のとおり、次のステップ(同ステップS213)で、DT=nの場合の|ΔPn|とDT=n−1の場合の|ΔPn−1|の大きさを比較し、どちらを選べばより目標に近い値に制御できるか判断する。
図の例の場合は、図に示すように、|ΔPn|≦|ΔPn−1|のため、DT=nが選択される。この場合、アウトレットバルブデューティ制御は、前述のようにその選択に従って実行されることになる。
【0081】
なお、本プログラム例に従い、上記のような駆動パルスデューティ比演算(ステップS108、図5,6)の実行によりABSアクチュエータの制御が行われるときは、アンチスキッド制御による増減圧指令である目標増減圧量ΔP(ステップS107)に対し、アウトレットバルブ駆動パルスのオフ/オンに応じた増圧時の増圧量ΔPincの推定とその後の減圧時の減圧量ΔPdecの推定を行うことで、各周期Tごとの液圧を推定しながら駆動パルスデューティ比DTを演算する処理を行うことができ、常に液圧を推定しながら任意の液圧に制御可能となる。このため、基本的には、絞りによる緩増圧モードと減圧モードの2モード制御でも、制御性を良くする等のことから、たとえ液圧を保持することが要求されてもこれに容易に応え得て、必要に応じ、例えば図10のように任意の液圧での保持(増減圧の組み合わせによる保持モード)も可能となり(図中、ISOL は、アウトレットバルブの駆動パルスを示す)、実質的に、1チャンネル当たり1個の電磁弁であるアウトレットバルブに対する駆動パルスのデューティ比制御をもって、3モードABS制御も可能で、簡単かつ廉価な構成で効果的なABS制御が行えるものである。
【0082】
従ってまた、既述の本出願人による先の提案のアンチスキッド制御装置の場合と同様、車輪ロック回避のブレーキ液圧制御を実現する場合において装置構成及び制御の改善が図られ、液圧保持等のため格別のスイッチ手段を新たに付加しないでも済み、それ故サイズアップ/コストアップ等をも招かずに、かつまた電磁弁は1チャンネル当たり1個でも足り、しかも、新たにハードを付け加えるとしたら必要となるであろうその付加部分に対するフェイルセーフ対策を施す必要もない分も、有利である。
【0083】
そして、これに加えて、本実施例にあっては、そのような絞りによる緩増圧効果を利用したアンチスキッド装置において、目標増減圧量ΔPを設定するのに、緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、路面μ推定を行い、μピークをとるスリップ率Soに着目してアンチスキッド制御内容を変更するよう(ステップS104〜S106)、制御することで路面μに応じた最適な制御が行われる。
【0084】
図12は、上記の本実施例制御が実行された場合の一例を示す、諸量のタイミングチャートである。
図(a)〜(d)は、それぞれ、ABS作動時における車輪速Vw、疑似車体速Vi、スリップ率S、路面μ変化量Ks、及びW/C圧Pw/cの変化、推移を表しており、これによって、実際の路面において、その路面μ特性に応じた最適なスリップ量に制御できる。
先に図11では2種の代表的なμ−S特性を示したが、車輪の状態の判断方法として既述したような手法(制御しきい値または目標値を、アンチスキッド装置を個々の車両に適用する時にチューニングにより或る値に設定して、制御時、これとの比較で判断する方法)を専ら採用するシステムのものにあっては、例えば、こうした図11のようにμ−s特性の異なる路面であっても、スリップ量と車輪加速度をもとに、一律、その或る設定された目標スリップ量に合わせて制御されることとなって、必ずしも最大μのスリップを有効に活用していたとはいえないのに対し、本制御によれば、常に路面μがピークとなるスリップを目標に制御可能となり、結果、そのドライ路、ウエット路のどのような路面状態でも最適に制御され、ABS制御をより最適に行うことができるとともに、これにより、W/C圧の込め過ぎや抜き過ぎによる減速度減少や舵の効き低下といったこと等も防ぐことができる。
【0085】
特に、制御モードを、急減圧と緩増圧の2モードを基本にする1チャンネル当たり1個の2位置弁のABSの場合、緩増圧がないが故に、もし必要以上に一度大きく減圧してしまったとすると、W/C圧の増圧が遅いため、その分、減速度不足などの問題が生じ、そのとき、急増圧モードを有する場合のようにはリカバリーも効きにくい。従って、この点から、減圧時、必要最小限の減圧を行うことが重要になってくるのであり、そのためには路面μが推定できることが大きなポイントとなってくるところ、本制御に従えば、そのような要求にも容易に応えられ、2モードABSでも減速度不足などの事態を適切に回避することができるものである。
【0086】
更に、その場合に、路面μ推定のための路面μ変化量を計算するのに用いる緩増圧中の増圧量を、上述の駆動パルスデューティ比DT演算(ステップS108)における推定増圧量(ΔPinc)値として用いるような技術と組み合わせると、W/C圧を検出する液圧センサを新たなハードとして付加せずに済むことは既に述べたとおりであり、この点のおいても、それに要するコスト増やそのセンサ付加に起因するフェイルセーフ対策をも施す必要がない分も、なお一層有利であって、より廉価なシステムで充分なアンチスキッド性能を発揮する、一層改良されたアンチスキッド制御装置を実現することができる。
【0087】
なお、本発明は、以上の実施例等に限定されるものではない。
例えば、上記制御では、ホイールシリンダ圧の増減サイクルからみると前回のホイールシリンダ圧の増減圧サイクルの増圧時に推定した路面μをもとに今回の増圧時での制御を決定するが、前回1回の推定に応じてのみ路面μを推定するのではなく、数回の推定の平均などにより制御用の目標スリップ量を求めるものとしてもよい。
【0088】
また、例えば、上記例では路面μ推定を行い、μピークをとるスリップ率Soに着目してABS制御を行っているが、μピーク自体に着目し、路面μに応じた制御変更を行ってもよい。例えば、低μ時は、目標増減圧量ΔPを算出する場合に、車輪加速度の目標値VwdをVwd=1.2g+β(βは路面μピークにより変更)などとして求めるとしてもよい。
【0089】
また、例えば、駆動パルスデューティ比演算処理と組み合わせる場合において、上記例では、電磁弁駆動パルスのオフ/オンに応じた増圧時の増圧量の推定とその後の減圧時の減圧量の推定を行うものであったが、これは、例えば電磁弁駆動パルスのオン/オフに応じた減圧時の減圧量の推定とその後の増圧時の増圧量の推定を行う態様でもよく、その他の更に改良された態様のものにも広く適用可能である。
い。
【0090】
また、上記では4チャンネルABSを例としたが、そのほか3チャンネルABSでも同様に本発明は適用できることは勿論である。
また、例えば、インレットバルブとアウトレットバルブによるABSアクチュエータの好適例を図1に示したが、それは、図示のものに限られるものではない。
【0091】
【発明の効果】
本発明によれば、制動時の車輪ロック回避のアンチスキッド制御において、絞りによる緩増圧効果を利用する1チャンネル当たり1電磁弁構成の場合に、緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、それを基に路面μを推定し、これに応じてアンチスキッド制御内容を変更することができ、絞りによる緩増圧効果を利用する場合における、短時間での緩増圧時の増圧速度はほぼ一定とみなせ単位時間当たりの増圧量が一定になるという特性を活かした路面μ推定も可能で、適切に路面μに応じた最適な制御を行わしめ得て、廉価なシステムを用いても充分なアンチスキッド性能を発揮させるよう制御することができるアンチスキッド制御装置を提供することができる。
【0092】
この場合において、好ましくは、前記電磁弁は2位置弁とする構成として、本発明は実施でき、また、好ましくは、前記電磁弁が、アンチスキッド制御時、その閉弁位置ではホイールシリンダのブレーキ液を抜き、その閉弁位置では該ブレーキ液の抜きを遮断するよう、供給されるパルス信号により駆動制御されるソレノイドバルブであり、マスターシリンダから該ホイールシリンダへ至る経路には、上流側と下流側との差圧により駆動されるバルブであって、絞りによりアンチスキッド制御の緩増圧を行うバルブを有する構成として、本発明は実施できる。好ましくはまた、車輪速センサからの出力より車輪速を演算する車輪速演算手段と、車輪速より車体速を推定する車体速推定手段と、車輪速より車輪加速度を演算する車輪加速度演算手段と、それら車輪速と車輪加速度と推定された車体速より増減圧量を演算する手段と、駆動パルスを出力する駆動パルス出力手段とを備えるよう構成して、本発明は実施できる。
【0093】
また、請求項2記載の如く、路面μ変化量の履歴より路面μを推定するよう構成して、本発明は実施でき、同様に上記を実現することができる。この場合は、その履歴をみることで、適切なμ−S特性の推定ができる。
【0094】
また、請求項3記載の如く、推定手段よりμピークをとるスリップ率を推定し、それに応じてアンチスキッド制御の目標スリップ量もしくはスリップ量しきい値か、目標車輪加速度もしくは車輪加速度しきい値かのいずれかの変更をするよう構成して、本発明は実施でき、同様に上記を実現することができる。
加えて、この場合は、例えば、ドライ路やウエット路等の異なるμ−S特性の路面での対応性に優れ、最大μのスリップを有効に活用し得て、路面μがピークとなるスリップを目標に制御可能となり、ホイールシリンダ液圧の込め過ぎや抜き過ぎによる減速度減少や舵の効き低下の防止などにも効果的である。
【0095】
また、請求項4の場合は、その駆動パルスデューティ比演算手段を更に備えるようにするとともに、前記緩増圧中の増圧量に、該演算手段による推定増圧量が適用されるよう構成して本発明は実施でき、同様に上記を実現することができるとともに、この場合にあっては、更に、その駆動パルスデューティ比演算手段を備えることで、常に液圧を推定しながら任意の液圧の制御可能となり、1チャンネル当たり1個の電磁弁に対する上記駆動パルスのデューティ制御をもって、例えば任意の液圧での保持も可能な保持モードも簡単かつ容易に達成できるなど、より効果的なアンチスキッド制御を実現できる上、かかるデューティ比演算での処理過程で算出される当該推定増圧量が路面μ推定に用いられることから、新たにホイールシリンダ圧センサを付加しないでも済み、それに要するコスト増やそのセンサ付加に起因するフェイルセーフ対策をも施すといったような必要がない分も、なお一層有利であって、より廉価なシステムで充分なアンチスキッド性能を発揮するアンチスキッド制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成を示すシステム図である。
【図2】同例での制御内容の基本構成の一例を表す機能ブロック図である。
【図3】路面μ推定等の原理説明に供する図である。
【図4】同例のコントローラにより実行される制御プログラムの一例を示すフローチャートである。
【図5】同プログラムにおけるソレノイド・バルブ駆動パルス・デューティ比演算ルーチンの一例にして、その一部を示すフローチャートである。
【図6】同じく、他の一部を示すフローチャートである。
【図7】同ルーチンに適用できる、増圧量推定のために用いるアクチュエータモデルの一例を示す図である。
【図8】同じく、同ルーチンに適用できる、減圧量推定のために用いるアクチュエータモデルの一例を示す図である。
【図9】同じく、その駆動パルスデューティ比演算ルーチンによる制御の説明に供する線図である。
【図10】液圧の保持をも行わせた場合での、2モードABS制御の概要を例示する図である。
【図11】μピークの推定、路面μ変化量等の説明の用に供する説明図である。
【図12】制御内容の説明に供するタイミングチャートの一例である。
【図13】μ−S特性の各種例を示す図である。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル
2 ブースタ
3 リザーバ
4 マスターシリンダ
5 モータ
6,7 ポンプ
8,9 リザーバ
10,20 左右前輪
11,21,31,41 ホイールシリンダ
12,22,32,42 インレットバルブ(メカ式)
13,23,33,43 アウトレットバルブ(電磁弁)
30,40 左右後輪
50 コントローラ
51,52,53,54 車輪速センサ
55 ブレーキスイッチ(SW)

Claims (2)

  1. 絞りによる緩増圧効果を利用した1チャンネル当たり1電磁弁により制御されるアンチスキッド装置と、
    前記緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、それを基に路面μ−スリップ率特性を推定する推定手段と、
    該推定手段に応じてアンチスキッド制御内容を変更する制御変更手段と
    を備え、
    前記推定手段は、路面μ変化量の履歴より路面μ−スリップ率特性を推定し、
    前記制御内容の変更は、
    推定手段よりμピークをとるスリップ率を推定し、それに応じてアンチスキッド制御の目標スリップ量もしくはスリップ量しきい値か、目標車輪加速度もしくは車輪加速度しきい値かのいずれかを変更するものである、
    ことを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  2. 絞りによる緩増圧効果を利用した1チャンネル当たり1電磁弁により制御されるアンチスキッド装置と、
    前記緩増圧中の増圧量と車輪のスリップ変化量より路面μ変化量を演算し、それを基に路面μ−スリップ率特性を推定する推定手段と、
    該推定手段に応じてアンチスキッド制御内容を変更する制御変更手段と、
    アンチスキッド制御の増減圧指令に対し、増圧時または減圧時の増圧量または減圧量の推定とその後の減圧時または増圧時の減圧量または増圧量の推定を行ことで、各周期ごとの液圧を推定しながら電磁弁に出力する駆動パルスのデューティ比を演算する駆動パルスデューティ比演算手段を備え、
    前記緩増圧中の増圧量に、該演算手段による推定増圧量が適用される、
    ことを特徴とするアンチスキッド制御装置。
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