JP3549152B2 - 集合繊維の撓みレベル制御機構を備える通気式開繊装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸引風道に多数の繊維が集合した集合繊維を移動させることにより当該集合繊維に吸引気流を作用させて撓ませながら幅方向に拡展開繊する通気式開繊装置の改良技術、更に詳しくは、前記吸引風道内における集合繊維の撓み量を所望の一定値に制御可能にすることによって加工対象とする集合繊維を正確に拡展開繊することを可能にした通気式開繊装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
給糸部から巻取部との間の移動行路に対面するごとく所要横断幅の吸引風道を配設し、其処を一定のオーバーフィード状態で移動する集合繊維(例えば、マルチフィラメント)に対し連続的に吸引気流を通過させることにより当該集合繊維を弓なりに撓ませて幅方向に開繊する通気式開繊装置(特許第3064019号公報:請求項8参照)に関しては、既に、本件発明者が提案して特許が成立している。
【0003】
この先に提案した特許第3064019号の通気式開繊装置によれば、非常に長いマルチフィラメントなどの集合繊維に対しダメージを与えることなく平行、かつ、効率的に拡展開繊加工することが可能になった。ところが、この通気式開繊装置にあっては、集合繊維が吸引風道上を弓なりに撓んで移動するため、その撓み量が不規則に増減変化したりすると、集合繊維に対する吸引気流の通気量や接触時間が変化するため当該集合繊維の拡展開繊の状態が一定に保てなくなり、均一な開繊製品が得られないという問題があった。
【0004】
このような問題を解消する手段として、吸引風道内を弓なりに撓みながら移動する集合繊維に対してレーザ光を照射し繊維レベルをCCDラインセンサーにて検出して集合繊維の位置を制御しようとする試作実験も試みたが、移動する集合繊維の厚みのバラツキや、毛羽立ち、あるいは拡展開繊されながら移動する集合繊維が横揺れや縦揺れして移動姿勢が一定しないなどの事情があって、吸引風道を移動する集合繊維の撓み量を一定に正確に制御することは困難を極めた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、先に提案した特許第3064019号の通気式開繊装置における前述の問題点を改善せんとして為されたものであって、その目的とするところは、吸引風道を移動する集合繊維の撓み量を正確に所望の一定値に制御可能な通気式開繊装置を提供するにある(第1課題)。
【0006】
また、本発明の他の目的は、加工対象とする集合繊維を正確かつ高能率に拡展開繊できて高品質の開繊製品を製造できる通気式開繊装置を実現するにある(第2課題)。
【0007】
さらに、本発明の他の目的は、必要に応じては吸引風道で拡展開繊される集合繊維の両側辺を規制することにより幅出し量を正確に保って均一な幅の開繊製品を量産できる通気式開繊装置を実現するにある(第3課題)。
【0008】
【課題を解決するために採用した手段】
本発明者らが上記目的を達成するために採用した解決手段を、添附図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、給糸部Aから解舒される集合繊維Fを引き取って送出するフロントフィーダ1と;このフロントフィーダ1が送り出す集合繊維Fに所定の弛みが生ずるごとくオーバーフィード状態に引き取って送出するバックフィーダ2と;前記フロントフィーダ1とバックフィーダ2との間に配設されており、移動する集合繊維Fに吸引気流を作用させることによって前記フロントフィーダ1とバックフィーダ2とのオーバーフィード差に応じて当該集合繊維を撓ませながら幅方向に拡展開繊せしめる吸引風洞3と;この吸引風洞3を撓曲状態で移動する集合繊維Fの上面に横断状態に接触する感知部41を備え、この感知部 41 は両側縁には規制部 41 a・ 41 aが垂設されて前記吸引風道3を移動通過して拡展開繊される集合繊維Fの幅出し量をできると共に、この集合繊維Fの撓み量が減少して集合繊維のレベルが上昇したときは測定部42が上昇動作し、逆に撓み量が増加して集合繊維のレベルが下降したときは前記測定部42が下降動作するフィーラ4と;このフィーラ4の測定部42の位置を検出して前記吸引風洞3内における集合繊維Fのレベルが基準から乖離したとき補正信号を出力して前記フロントフィーダ1またはバックフィーダ2の回転速度を制御するフィード制御器5という手段を連関統合することによって、上記第1〜第3に掲げる課題を一挙に解決した点に特徴がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添附図面に示す好ましい実施形態に基いて、さらに詳しく説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1〜図4には本発明の第1実施形態の概要が示される。図1において、符号1で指示するものはフロントフィーダである。フロントフィーダ1は、具体的には上下一対のトップロール11とボトムロール12とから成り、上側のトップロール11は集合繊維(7μ無撚
カーボン繊維:12000本)を一定の圧力によりボトムロール12に押圧して従動回転可能で
あり、下側のボトムロール12は周知の制御モータ(図示せず)によって調速自在に回転駆動されるものである。ちなみに、ここに採用される制御モータとしては、サーボモータやスピードコントロールモータが採用される。
【0012】
図1において、符号2で指示されるものはバックフィーダである。このバックフィーダ2も、具体的には上記フロントフィーダ1と同じ構成であって、上下一対のトップロール21とボトムロール22とから成り、上側のトップロール21は集合繊維を一定の圧力にてボトムロール22に押圧して従動回転可能であり、また下側のボトムロール22は周知の制御モータ(図示せず)によって調速自在に回転駆動される。
【0013】
かくして、給糸部Aから解舒される集合繊維Fは、フロントフィーダ1に引き取られてバックフィーダ2に送出される。フロントフィーダ1から送り出された集合繊維Fは、
バックフィーダ2に引き取られて巻取部Bに送り出されて巻き取られる。この場合において、フロントフィーダ1とバックフィーダ2との間には糸送りにオーバーフィード差が
生ずるように設定されており、両者の間で所定の弛みが生ずる。
【0014】
図1において、符号3で指示するものは吸引風道である。吸引風道3は、上記フロントフィーダ1とバックフィーダ2との間に配置されており、上記フロントフィーダ1から送出される集合繊維Fは当該吸引風道の吸引口31を移動してバックフィーダ2に引き取られて、前記吸引口31内で吸引気流に出会うことによって強力に吸引されると同時に、フロントフィーダ1とバックフィーダ2との間のオーバーフィード差に応じて弓なりに撓曲され、その際の通気作用により拡展開繊されることになる。ちなみに、本実施形態における吸引風道3に発生される吸引気流は、バキュームポンプ32が生成し気流調整バルブ33で一定の風速(例えば、風速50m/sec)に調節可能に構成されている。
【0015】
また図中に、符号4で指示されるものはフィーラである。本実施形態におけるフィーラ4は、上記弓なりに撓む集合繊維Fの撓み面に上から線接触する線状の感知部41と;前記集合繊維Fの撓み面の上下変動に応じて浮沈動する感知部41に従動して昇降動する測定部42とを具備している。このフィーラ4における前記線状の感知部41は、その線径が細く
(0.8mm)であるため吸引気流に乱れを起さず、また開繊作用に伴う繊維移動に悪影響も与えず、拡展開繊作用を阻害することがないのである。本実施形態におけるフィーラ4の感知部41は、図2および図3に図示する如く、両側縁に鍵状に曲がった規制部41a・41aが垂設されており、吸引口31の中で拡展開繊される集合繊維の開繊幅は必要以上に拡展されないように一定幅に規制されることになる(図4参照)。フィーラ感知部41の両端に規制部41a・41aを垂設しておくことにより、開繊作用を受ける集合繊維の一部が感知部41の何れかの側縁からの逸脱(当該フィーラ4との接触関係の喪失)や、また逸脱繊維の切断は効果的に防止できる。なお、付言しておくならば、本実施形態におけるフィーラ4は、加工対象とする開繊繊維Fの構成繊維の本数や所望する拡展開繊の幅などに応じて感知部41のサイズ、あるいは規制部41aの長さのものを適宜選択して交換できるようになって
いる。
【0016】
つぎに、図中に符号5で指示されるものは、フロントフィーダ1の回転速度を調節する制御信号を出力するフィード制御器5(具体的には、オムロン製「光学式変位センサ:Z4M−W」)である。本実施形態におけるフィード制御器5は、上記フィーラ4の測定部42に向けてレーザビームを照射するレーザダイオード51と;このレーザダイオードから照射されたレーザビームが前記測定部42に当って反射される帰還レーザを受光して、その受光位置に光電変換出力を生成するPSD受光素子52と;前記光電変換出力を生起したPSD受光素子52の位置に応じて前記フィーラの測定部42のレベル位置を演算して当該測定部42の位置がレベルαから乖離したとき補正信号を出力してフロントフィーダ1の回転速度を制御モータ(図示せず)を介して増減調速せしめるcpu(図示せず)とで構成されている。なお、云うまでもないことであるが、本実施形態においてはフィード制御器5のセンサ機構としてレーザビームを利用した光学式変位センサを例示して説明したけれども、ここに採用されるセンサ機構は何も光学式変位センサに限られるわけではなく、機械的に接触する接触式センサ、あるいは磁気変化によって変位を検知する無接触センサに置換することも可能であって、要するに、吸引風洞3内における集合繊維Fのレベルが基準から乖離したとき異常乖離を検出してフィード制御器5の cpuが平常に戻すために必要な補正値を演算して補正信号を出力できれば足りるのである。
【0017】
さらに、本実施形態の開繊装置にあっては、給糸部Aから解舒して引き出される集合繊維Fを全体的に加熱することによって当該集合繊維の結合剤を軟化せしめる予備解延機構6が上記吸引風道3の前に設置してある。それゆえ、フロントフィーダ1により給糸部Aから解舒されて引き出される集合繊維Fは、吸引風道3にて通気開繊される前段階で予備解延機構6により結合剤が加熱軟化されることになるので、当該吸引風道3における通気開繊は極めて円滑に営まれる。
【0018】
なお、本実施形態における予備解延機構6としては破線で略示的に表わす加熱ロール列が採用されているけれども、熱風器や超音波加熱器、あるいは遠赤外線加熱器などで集合繊維Fを予備解延させることも勿論可能である。
【0019】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態は図3に示される。この図3に示される第2実施形態の開繊装置は、基本的には、上記第1実施形態の開繊装置を3つ連結させた形式に構成されている。即ち、3つの給糸部A・A・Aからフロントフィーダ1・1・1により引き出される集合繊維F1 ・F2 ・F3 は各々予備解延機構6・6・6を経由することによって結合剤が軟化されて予備解延された状態で吸引風道3・3・3において吸引気流に会合することによって開繊される。本実施形態における前記各吸引風道3には其処を移動する集合繊維Fの撓み変化を的確に補足するフィーラ4が各々設けられており、これらフィーラ4の上下変動をフィード制御器5・5・5が検出して前記各々の集合繊維の撓みレベルが基準から乖離したときに補正信号を出力して乖離したフロントフィーダ1の回転速度を緩急制御して当該吸引風道3内における集合繊維Fの撓み量を適正に保たせるので、前記各列における集合繊維F1 ・F2 ・F3 は均一な状態に拡展開繊されて開繊集合繊維FS1 ・FS2 ・FS3 となる。かくして、各吸引風道3で拡展された各開繊集合繊維FS1 ・FS2 ・FS3 はバックフィーダ2に引き取られて其処で合流し、当該バックフィーダ2の下流に配置した第2吸引風道3′を通過することになる。そして、この第2吸引風道3′にも、前記フィーラと同じ機構のフィーラ4とフィード制御器5が配設されており、これらフィーラ4とフィード制御器5とが前記バックフィーダ2の回転速度を適正に制御するので、この第2吸引風道3′内における拡展開繊も合流した開繊集合繊維FS1 ・FS2 ・FS3 をバラツキを生ずることなく更に均一な状態に開繊してシート状の複合開繊繊維FSとなす。
【0020】
この第2実施形態の開繊装置を用いて異種類の集合繊維を開繊処理するならば物性を異にした集合繊維を混繊してシート状のシート状の複合開繊繊維MFS を得ることが可能となり、利用分野を樣々に拡張することが可能になる。
【0021】
この明細書に詳細説明する本発明の実施の形態は概ね前述のとおりであるが、本発明は第1・第2の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」において種々の設計変更が可能なことは謂うまでもない。
【0022】
例えば、前述した第1・第2の実施形態におけるフィーラ4は図3に示す如き片持ち方式であったけれども、図6に図示するように、フィーラ4の感知部41を吸引風洞3の両岸部に浮沈動可能に両持ち方式で支承させても良く、
さらには、このような両持ち方式のフィーラ4における一方の支承部に定滑車を介してバランスウェイトWを付設することにより、当該フィーラ4の自重を減殺して応答感度を敏感にすることも可能であって、
これらの設計変更は何れも本発明の技術的範囲に属するものである。また、前述の第1実施形態および第2実施形態の説明においては、フィード制御器5の出力する補正信号は上流フロント側のフィーダのフィード速度を増減制御するものとしたが、下流のバック側フィーダの速度を増減制御してもよく、要するに、吸引風道3における集合繊維Fの撓み量を一定に制御できれば足りるのであり、このような設計変更も本発明の技術的範囲に属することは明らかである。
【0023】
【発明の効果】
以上、具体的に実施形態を挙げて説明したとおり、本発明の通気式開繊装置にあっては吸引風道内における集合繊維の撓みレベルの変動を常時に接触検出するフィーラと同フィーラの位置変動を適時検出して集合繊維の給送量を即時に増減調節して吸引風道内の撓みレベルを適正に復元せしめるフィード制御器とより構成される集合繊維の撓みレベル制御機構を備えている。それゆえ、本発明装置によれば、加工対象とする集合繊維の厚みに
バラツキや、毛羽立ち、あるいは吸引風道内を移動する集合繊維が傾動しようとしても、フィーラが上面から抑制する機能を発揮するので、吸引風道内における集合繊維の姿勢が安定した状態で撓みレベルを的確に制御でき、対象集合繊維を正確かつ高能率に拡展開繊することができて高品質の開繊製品を製造できるのである。
【0024】
また、本発明においては、感知部の両側縁に規制部を各々垂設してあって、吸引風洞を移動通過して拡展開繊される集合繊維の両側辺を的確に規制できるので、均一な開繊幅の開繊製品を製造することが可能になる。
【0025】
このように本発明によれば、先に提案した特許第3064019号「通気式開繊装置」における問題点を確実に解消できるのであって、しかも採用する解決手段は極めて簡素でコスト的に安価に提供できる等、機能的にも経済的にも非常に有用にして、その産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態である通気式開繊装置の機構説明図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態において加工対象とする集合繊維に対するフィーラとフィード制御器との関係を表わす斜視説明図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態におけるフィーラならびにフィード制御器の部分を拡大して示した正面図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態において感知部の両端に設けた規制部が集合繊維の拡展開繊幅を規制する状態を表わす拡大正面図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態である通気式開繊装置の機構説明図である。
【図6】図6は、本発明の通気式開繊装置に適用可能なフィーラの変形例を表わす正面図である。
【符号の説明】
1 フロントフィーダ
11 トップロール
12 ボトムロール
2・2′ バックフィーダ
21 トップロール
22 ボトムロール
3・3′ 吸引風道
31 吸引口
32 バキュームポンプ
33 気流調整バルブ
4 フィーラ
41 感知部
41a 規制部
42 測定部
5 フィード制御器
51 レーザダイオード
52 PSD受光素子
6 予備解延機構
A 給糸部
B 巻取部
F 集合繊維
FS (FS1 〜 3) 開繊集合繊維
MFS 複合開繊繊維
Claims (4)
- 給糸部Aから解舒される集合繊維Fを引き取って送出するフロントフィーダ1と;このフロントフィーダ1が送り出す集合繊維Fに所定の弛みが生ずるごとくオーバーフィード状態に引き取って送出するバックフィーダ2と;前記フロントフィーダ1とバックフィーダ2との間に配設されており、移動する集合繊維Fに吸引気流を作用させることによって前記フロントフィーダ1とバックフィーダ2とのオーバーフィード差に応じて当該集合繊維を撓ませながら幅方向に拡展開繊せしめる吸引風洞3と;この吸引風洞3を撓曲状態で移動する集合繊維Fの上面に横断状態に接触する感知部41を備え、この感知部 41 は両側縁には規制部 41 a・ 41 aが垂設されて前記吸引風道3を移動通過して拡展開繊される集合繊維Fの幅出し量をできると共に、この集合繊維Fの撓み量が減少して集合繊維のレベルが上昇したときは測定部42が上昇動作し、逆に撓み量が増加して集合繊維のレベルが下降したときは前記測定部42が下降動作するフィーラ4と;このフィーラ4の測定部42の位置を検出して前記吸引風洞3内における集合繊維Fのレベルが基準から乖離したとき補正信号を出力して前記フロントフィーダ1またはバックフィーダ2の回転速度を制御するフィード制御器5とを含むことを特徴とする集合繊維の撓みレベル制御機構を備える通気式開繊装置。
- フィーラ4の感知部41が吸引風洞3の両岸部に浮沈動可能に両持ち形式で支承されている請求項1記載の通気式開繊装置。
- フィーラ4にバランスウェイトWが付設されており、自重が減殺されて軽快敏感にフィーラ4が浮沈動する請求項1または2記載の通気式開繊装置。
- フィード制御器5が、ビーム照射器51と位置検出受光素子52とを備えており、前記ビーム照射器51から照射されるビームが繊維レベル検出フィーラ4の測定部42にて反射される反射角度に応じて当該測定部42の位置変化を検出する請求項1〜3の
何れか一つに記載の通気式開繊装置。
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