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JP3433124B2 - 熱式空気流量センサ - Google Patents

熱式空気流量センサ

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JP3433124B2
JP3433124B2 JP35597898A JP35597898A JP3433124B2 JP 3433124 B2 JP3433124 B2 JP 3433124B2 JP 35597898 A JP35597898 A JP 35597898A JP 35597898 A JP35597898 A JP 35597898A JP 3433124 B2 JP3433124 B2 JP 3433124B2
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air flow
resistor
air temperature
heating resistor
air
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圭一 中田
渡辺  泉
浩志 米田
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Hitachi Automotive Systems Engineering Co Ltd
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Hitachi Ltd
Hitachi Car Engineering Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発熱抵抗体を用い
て空気流量を計測する熱式空気流量センサに係り、例え
ば、内燃機関の吸入空気流量等を測定するのに好適な熱
式空気流量センサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、熱式空気流量センサは、自動
車などの内燃機関の吸入空気通路に流れる吸入空気量を
測定するセンサとして用いられ、特に、質量流量を直接
検知できるものとして評価されている。
【0003】近年、このような熱式空気流量センサにお
いて、シリコン(Si)等の半導体基板上に半導体微細
加工技術を用いて製造された熱式空気流量センサが、比
較的容易にしかも大量生産方式で生産できることから経
済性があり、また、低電力で駆動できることから注目さ
れてきている。
【0004】このような従来の半導体技術を用いた熱式
空気流量センサの基本的な原理方式としては、例えば、
図12に示すものがある。
【0005】図12の(a)は熱式空気流量センサの回
路図、(b)はこの空気流量センサに用いる空気流量測
定用の発熱抵抗体Rh及び空気温度測温抵抗体Rcの半
導体基板300上のレイアウトを示す平面図である。
【0006】本例の発熱抵抗体Rhは空気流量測定素子
とヒータの双方を兼ねるものであり、一方、空気温度測
温抵抗体Rcは吸入空気の温度が変化しても、上記発熱
抵抗体と空気温度の温度差を一定に保つための制御に用
いられる。これらの抵抗体Rh及びRcは、温度に対す
る抵抗値の変化の方向性に共通性を有する感温抵抗体よ
り成る。発熱抵抗体Rhには発熱を生じさせる大きな電
流が流れ、空気温度測温抵抗体Rcには、発熱がほとん
ど生じない微小電流が流れるように、それぞれの抵抗値
が設定されて、これらの発熱抵抗体Rhと空気温度測温
抵抗体Rcとが固定抵抗R1,R2とともにブリッジ回
路を構成する。抵抗Rh・R1間の電圧及び抵抗Rc・
R2間の電圧がオペアンプOpに入力され、空気流量に
応じて発熱抵抗体Rhで奪われる熱量が変化しても、オ
ペアンプOp及びトランジスタTrを介して発熱抵抗体
Rhに空気温度(空気温度測温抵抗体Rc)との温度差
が所定温度ΔThになるように発熱抵抗体Rhに流れる
加熱電流を制御する。この加熱電流の値が空気流量に対
応した値となり、この電流を抵抗R1で電圧に置き換え
て、空気流量が検出される。
【0007】図12(b)に示すように、半導体基板3
00上に半導体微細加工により発熱抵抗体Rh及び空気
温度測温抵抗体Rcを形成する場合には、シリコン(S
i)等の半導体基板300上に電気絶縁膜(電気絶縁
層)を介して発熱抵抗体Rh及びRcを形成するが、発
熱抵抗体Rhについては、半導体基板300の一部を除
去して空間(空洞部)301を確保し、この除去空間3
01上に発熱抵抗体Rh全体を電気絶縁膜を介して配置
している。このようにして、発熱抵抗体Rhの熱が半導
体基板300を伝わって逃げるのを防止する(空気流量
以外による放熱をできるだけ防ぐ)。一方、空気温度測
温抵抗体Rcは、空気温度の測温精度を高めるため、発
熱性を極力抑える必要があり、そのため、上記の除去空
間301から外れて半導体基板300上に配置されてい
る。
【0008】図13は、熱式空気流量センサの他の公知
例の原理図である。
【0009】本例は、発熱抵抗体Rhによって加熱され
る測温抵抗体Rs(測温抵抗体Rsはいわば発熱抵抗体
Rhの熱を検出する感温抵抗体である)と空気温度測温
抵抗体Rc,及び固定抵抗R1,R2でブリッジ回路を
構成する。抵抗Rs・R1間の電圧及び抵抗Rc・R2
間の電圧がオペアンプOp1に入力され、空気流量に応
じて発熱抵抗体Rhで奪われる熱量が変化しても、上記
ブリッジ回路及びオペアンプOp1及びトランジスタT
rを介して、測温抵抗体Rsひいては発熱抵抗体Rhに
空気温度(空気温度測温抵抗体Rc)との温度差が所定
温度になるように発熱抵抗体Rhに流れる加熱電流を制
御する。このようにして温度管理される発熱抵抗体Rh
は、Rhよりも上流側に配置される測温抵抗体Ru及び
下流側に配置される測温抵抗体Rdも加熱し、この測温
抵抗体Ru,Rdが固定抵抗R1′,R2′とともにブ
リッジ回路を構成する。空気流が発生すると、その空気
流量に応じて上流,下流側の測温抵抗体Ru,Rdで奪
われる熱量にその抵抗体の配置関係から差が生じ、その
差をオペアンプOp2で検出することで、空気流量を検
出することができる。
【0010】このようなタイプの場合であっても、発熱
抵抗体Rhと空気温度との温度差を所定温度差に保持す
るために用いる空気温度測温抵抗体Rcは、図13
(b)に示すように、半導体基板300上に除去空間部
301を外して配置され、一方、発熱抵抗体Rhやそれ
により加熱されることを意図する測温抵抗体Rs,R
u,Rdは、それらの抵抗全体が除去空間部301上に
電気絶縁層(電気絶縁膜)を介して配置される。
【0011】これらの原理を利用した熱式空気流量セン
サとしては、例えば、特開平2−259527号公報、
特開平4−320927号公報、特開平6−27320
8号公報、特開平6−50783号公報、特開平8−1
4976号公報、特開平10−160538号公報、特
表平10−500490号公報等に記載されたものがあ
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来技術に
は、吸入空気流に含まれる塵埃などの汚損物質が熱式空
気流量センサ素子表面へ付着、堆積した場合による空気
流量検出誤差に関して十分な配慮がされておらず、使用
を続けていくと、以下に述べる理由により初期精度を維
持できない結果を招くことが予想される。
【0013】内燃機関の吸入空気に含まれる、前記熱式
空気流量センサに対する汚損物質としては、例えば、砂
に代表される固体粒子に含まれるSi、Fe、Ca、M
g、Na、および融雪剤に含まれるNaCl、MgCl
2、CaCl2、および排気ガス、ブローバイガスに含ま
れるエンジンオイル、H2O、C、および湿式エアクリ
ーナのエアフィルターの含浸オイルなどが挙げられ、上
記の物質は、例えば、分子間引力、液架橋力、静電気
力、およびそれらの複合力などにより、熱式空気流量セ
ンサ素子表面に付着する。
【0014】汚損物質が熱式空気流量センサ素子表面に
付着すると、付着物により発熱抵抗体から空気中への熱
伝導及び熱伝達の様相が変化するため、吸入空気流量の
計測精度が不十分となる。このような問題は、図12,
図13で示したタイプの異なる熱式空気流量センサであ
っても生じる可能性を有している。
【0015】本発明は以上の点に鑑みてなされ、その目
的は、吸入空気に含まれる汚損物質の付着,堆積による
熱式空気流量センサの特性変化を補正し、初期精度を維
持できる熱式空気流量センサを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の基本的な構成は
次の通りである。
【0017】半導体微細加工により形成される発熱抵抗
体及び空気温度測温抵抗体を用いて空気流量を測定する
熱式空気流量センサにおいて、半導体基板の一部が除去
されて、この除去空間上に電気絶縁層を介して前記発熱
抵抗体と前記空気温度測温抵抗体の一部とが形成されて
おり、前記空気温度測温抵抗体の残りの部分が前記除去
空間から外れて前記半導体基板上に電気絶縁層を介して
形成され、前記空気温度測温抵抗体のうち前記除去空間
上に位置する部分の電圧を検出する手段と、この検出電
圧を用いて空気流量計測誤差を補正する手段と、を備え
ていることを特徴とする。
【0018】空気温度測温抵抗体の抵抗値は、発熱抵抗
体よりも十分に大きくして、発熱を抑えるために微少の
電流が流れる。この電流により空気温度測温抵抗体は僅
かながら発熱しようとするが、空気温度測温抵抗体の大
部分は前記半導体基板の除去空間部から外れた位置に設
けてあるので、電気絶縁層を介して半導体基板の方に熱
伝導するため、空気温度測温抵抗体はほとんど発熱しな
い。
【0019】ただし、本発明では、前記除去空間部上に
空気温度測温抵抗体の一部を配置したので、この空気温
度測温抵抗体の一部については、前記除去空間部により
熱絶縁されるので、半導体基板への熱伝導がほとんど無
くなるため、僅かながら自己発熱する。この自己発熱
は、流れる電流値以外は発熱抵抗体と全く同じ発熱の仕
方である。また、空気温度測温抵抗体は、発熱抵抗体と
全く同様に吸入空気に触れているため、発熱抵抗体と同
様に汚損物質が付着する。従って、汚損物質の付着によ
り、発熱抵抗体と同様に熱伝導及び熱伝達に変化が生じ
る。
【0020】上記のように空気温度測温抵抗体の一部に
自己発熱性を与えた場合、上記のようにこの空気温度測
温抵抗体に汚損物質が付着して熱伝導及び熱伝達が変化
すると、空気温度測温抵抗体に所定の電圧を印加しても
発熱の様相ひいてはその抵抗特性に変化が生じその特性
変化に付随した電圧の変化が生じる。したがって、空気
温度測温抵抗体の一部(発熱性を与えた箇所)の電圧
(電位差)を検出すると、汚損物質付着による発熱抵抗
体の特性変化を間接的に検知することができ、この検出
電圧の変化を利用して、空気流量検出値を補正すること
が可能になる。
【0021】なお、発熱抵抗体と空気温度の差を一定に
保つための制御に用いる空気温度測温抵抗体は、本来は
発熱性をできるだけ抑制することが好ましいが、本発明
のように空気温度測温抵抗体の一部だけに発熱性を与え
た場合には、ほとんど空気流量測定精度に支障をきたす
ことがなく、かえって、汚損物質付着による発熱抵抗体
の特性変化に伴う計測誤差を補正することで、空気流量
精度の向上に貢献することになる。
【0022】なお、空気温度測温抵抗体を発熱させると
いう事例として、特開平8−14976号公報に記載の
技術がある。この従来技術は、熱式空気流量センサの応
答速度向上を目的としたものであり、空気温度測温抵抗
体全体を加熱している。本発明では、空気温度測温抵抗
体全体を加熱しておらず、また、空気温度測温抵抗体の
一部電圧(空気温度測温抵抗体のうち半導体基板の除去
空間部上に部分的に配置される抵抗部の電圧)を計測誤
差補正に利用している点で、特開平8−014976号
公報に記載の技術とは相違する。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
図面を参照しながら説明する。
【0024】図1は本発明に係る熱式空気流量センサの
第1実施例に係り、特に検出部(検出エレメント)11
0の平面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0025】本実施例による熱式空気流量センサ素子1
10(以下、エレメントと称する)に用いる要素のう
ち、符号140a,140bで示す抵抗体が図12,1
3で述べた発熱抵抗体Rhに相当するが、本例では、空
気流の方向性も検出するために、内燃機関の吸気管の本
来の空気流10aの方向を基準にして上流側発熱抵抗体
140aと下流側発熱抵抗体140bとに分けて、これ
らの抵抗体140a,140bを直列に接続し、また、
抵抗体140a・140b間の電圧を引出線150e,
端子160e及び引出線150f,端子160fを介し
て引き出せるようにしてある。上流側発熱抵抗体140
a,下流側発熱抵抗体140bを用いての方向性検知原
理は、後述する。
【0026】符号140c,140dで示す抵抗体が、
図12,図13で述べた空気温度測温抵抗体(感温抵抗
体)Rcに相当する。
【0027】図2に示すように、単結晶シリコン基板
(半導体基板)120上に電気絶縁層(電気絶縁膜)1
30を形成し、その上に上流側発熱抵抗体140a、下
流側発熱抵抗体140b,空気温度測温抵抗体140c
(140dを含む)とが形成されている。
【0028】上流側発熱抵抗体140aは吸入空気流1
0aの方向に対して上流側に配置されており、下流側発
熱抵抗体140bは上流側発熱抵抗体140aの下流側
に配置されている。空気温度測温抵抗体140cは吸入
空気の温度を測定する。
【0029】これらの各抵抗体は、多結晶シリコンに不
純物としてリン(P)をドーピングした材料である。
【0030】上流側発熱抵抗体140aと下流側発熱抵
抗体140bとは、図2を用いて後述するように単結晶
シリコン基板120に形成された空洞部(基板120の
一部を除去した空間)121の上に膜状の電気絶縁層1
30を介して微細加工技術により形成されている。ま
た、空気温度測温抵抗体140cの一部140dも電気
絶縁層130を介して空洞部121上に位置するように
引き出されて形成されている。空気温度測温抵抗体14
0cの残りの部分は、空洞部121上から外れた単結晶
シリコン基板120上に形成され、発熱抵抗体140
a,140bからの熱の影響をほとんど受けないように
してある。
【0031】エレメント110の端部(基板120の端
部)には、端子電極160a〜160gが形成されてい
る。
【0032】上流側発熱抵抗体140aの一端は、引出
線150eにより端子電極160eに接続され、下流側
発熱抵抗体140bの一端は引出線150fにより、端
子電極160fに接続されている。上流側発熱抵抗体1
40aと下流側発熱抵抗体140bの接続点170は引
出線150gにより端子電極160gに接続されてい
る。
【0033】空気温度測温抵抗体140cの両端は、そ
れぞれ引出線150b,150cにより端子電極160
b,160cに接続されている。また、空気温度測温抵
抗体の一部140dの電圧(電位差)を検出するための
引出線150a,150dが端子電極160a,160
dに接続されている。
【0034】上記した抵抗体及び引出線,端子電極を設
けた基板120上は、端子電極160a〜160g以外
の部分が保護層180により覆われている。
【0035】エレメント110の実寸の大きさは、例え
ば図示の例では、短辺が2mm、長辺が6mm程度であ
る。
【0036】次に図2を用いて、エレメント110の断
面構造について詳述する。
【0037】単結晶シリコン基板120の上には、電気
絶縁層130となる二酸化シリコン(SiO2)層13
0a及び窒化シリコン(Si34)層130bが積層さ
れる。二酸化シリコン層130aは単結晶シリコン基板
120に比較して熱膨張係数が約1/10と小さいた
め、その上に、単結晶シリコン基板120より熱膨張係
数が若干大きく、しかも機械的強度に優れる窒化シリコ
ン層130bを形成することにより、単結晶シリコン基
板120と電気絶縁層130間の熱応力を低減して強度
を向上させている。
【0038】窒化シリコン層130bの上に、多結晶シ
リコンに不純物としてPを高濃度にドーピングした各抵
抗体140a,140b,140c,140d及び引出
線150a〜150gが形成される。
【0039】各抵抗体140a,140b,140c,
140d及び引出線150a〜150gの上に、窒化シ
リコン層180b及び二酸化シリコン層180aの積層
構造よりなる保護層180が形成される。保護層180
は吸入空気中に含まれる油,水,汚損物質等から各抵抗
体140a,140b,140c,140dを保護する
ために形成される。
【0040】単結晶シリコン基板120のほゞ中央部に
発熱抵抗体140a,140bの設置箇所が設定してあ
り、この発熱抵抗体設置箇所の下部の領域に基板除去空
間部である空洞部121が形成される。
【0041】空洞部121は、単結晶シリコン基板12
0を異方性エッチングにより電気絶縁層130との境界
面まで除去することで形成される。空洞部(除去空間
部)121を形成することにより、発熱抵抗体140
a,140bは、電気絶縁層130と保護層180によ
り支持される構造となり、空洞部121により熱絶縁さ
れた構造となる。したがって、空洞部121が存在しな
い場合に比較して発熱抵抗体140a,140bの熱絶
縁に優れ、熱式空気流量センサの応答速度を向上するこ
とができる。
【0042】次に、図1、図2を用いて、本実施例によ
るエレメント110の製造プロセスについて説明する。
【0043】単結晶シリコン基板120上に電気絶縁層
130として、厚さ約0.4μmの二酸化シリコン層1
30aを熱酸化あるいはCVD(Chemical V
apor Deposition)等の方法で形成後、
厚さ約0.2μmの窒化シリコン層130bをCVD等
の方法で形成する。
【0044】次に各抵抗体140a,140b,140
c,140d及び接続線(引出線)150a〜150g
として厚さ約1μmの多結晶シリコン層をCVD等の方
法で形成し、不純物としてリンを熱拡散またはイオン注
入によりドーピングする。その後、公知のホトリソグラ
フィ技術によりレジストを所定の形状に形成し、反応性
イオンエッチング等の方法により半導体薄膜をパターニ
ングすることにより各抵抗体140a,140b,14
0c,140d及び接続線150a〜150gを形成す
る。
【0045】次に、保護層180として厚さ約0.2μ
mの窒化シリコン層180bをCVD等の方法で形成
後、厚さ約0.4μmの二酸化シリコン層180aをC
VD等の方法で形成する。その後、端子電極160a〜
160gを形成する部分の保護層180をエッチングに
より取り除きアルミニウムにより端子電極160a〜1
60gを形成する。
【0046】最後に単結晶シリコン基板120の裏面よ
り、窒化シリコンをマスク材として、異方性エッチング
により空洞部121を形成し、ダイシングすることによ
り熱式空気流量センサのエレメント110が得られる。
【0047】次に、図3〜図5を用いて、上記構成のエ
レメント110を備えた熱式空気流量センサの構成につ
いて説明する。
【0048】図3はエレメント110を備えた熱式空気
流量センサモジュールの一部を省略した平面図、図4は
図3のB−B断面図、図5は前記センサモジュールを吸
入空気通路240へ取り付けた状態を示す。
【0049】図3に示すように、支持体200の上にエ
レメント110及び信号処理回路210が固定される。
【0050】エレメント110の複数の端子電極160
(160a〜160gの総称)は、それぞれ金線220
等によるボンディングにより、信号処理回路210の複
数の端子電極230に接続される。信号処理回路210
はアルミナ等の電気絶縁基板211の上に形成されてい
る。
【0051】図4に示すように、エレメント110は、
その単結晶シリコン基板120が支持体200に取付け
られ、空洞部121の開口が支持体200側に面してい
る。
【0052】図5に示すようにエレメント110が固定
された支持体200は、吸入空気通路240の内部にあ
る副通路250中にエレメント110が配置されるよう
に固定される。
【0053】次に、本実施形態による熱式空気流量セン
サ100による空気流量検知の原理について図6の回路
図を用いて説明する。
【0054】上流側発熱抵抗体140a,下流側発熱抵
抗体140b,空気温度測温抵抗体140c,空気温度
測温抵抗体の一部140dは、固定抵抗R1,R2と共
にブリッジ回路を構成している。上流側発熱抵抗体14
0a及び下流側発熱抵抗体140bの熱量は空気流量に
応じて奪われるが、オペアンプOp及びトランジスタT
rにより、上流側発熱抵抗体140a及び下流側発熱抵
抗体140bには、空気温度測温抵抗体140cにより
検出される吸入空気の温度に対して所定温度ΔTh(例
えば、150℃)だけ高くなるように加熱電流が制御さ
れる。吸入空気量は発熱抵抗体140a、140bから
奪われる熱量に比例するため、発熱抵抗体140a、1
40bに流れる電流の値が空気量に対応した値となり、
この電流を抵抗R1で電圧V2に置き換えて出力する。
【0055】次に、本実施形態による熱式空気流量セン
サ100による空気流の方向検知の原理について図5、
図6を用いて説明する。
【0056】空気流量が零の場合は上流側発熱抵抗体1
40aと下流側発熱抵抗体140bの間に温度差は生じ
ない。それに対して、吸入空気流10aが流れる場合に
は、上流側発熱抵抗体140aの方が下流側発熱抵抗体
140bより、吸入空気流10aによる冷却効果が大き
く、また、このとき上流側発熱抵抗体140aと下流側
発熱抵抗体140bは直列接続であり同じ加熱電流が流
れているため、発熱量は一定であることから、上流側発
熱抵抗体140aの温度の方が下流側発熱抵抗体140
bよりも低い値となる。また、吸入空気流の流れ方向が
逆流10bの場合には、先ほどの場合とは反対に、下流
側発熱抵抗体140bの方が上流側発熱抵抗体140a
より逆流10bによる冷却効果が大きく、下流側発熱抵
抗体140bの方が上流側発熱抵抗体140aの温度よ
りも低くなる。従って、上流側発熱抵抗体140aと下
流側発熱抵抗体140bの両端電圧を比較して、両抵抗
体の温度(抵抗値)をオペアンプOp3で比較すること
により、空気流の方向を検出することができる。
【0057】自動車等の内燃機関で吸入空気通路中に熱
式空気流量センサを装着する場合、通常、空気はエアク
リーナ側からエンジンの方向10aに流れているが、内
燃機関の運転条件によってはエンジンからエアクリーナ
の方向に空気が流れる(逆流10b)ため、上述した方
向検知機能が重要性を持つことになる。
【0058】次に、熱式空気流量センサ表面に汚損物質
が付着、堆積した場合の特性変化の補正方法について説
明する。
【0059】熱式空気流量センサ100を通過する吸入
空気は大気中の汚損物質を取り除くために、エアクリー
ナを通過しているが、全ての汚損物質は除去されず、砂
に代表される固体粒子に含まれるSi,Fe,Ca,M
g,Na、融雪剤に含まれるNaCl,MgCl2,C
aCl2、排気ガス,ブローバイガスに含まれるエンジ
ンオイル,H2O、C、およびエアクリーナのフィルタ
が湿式の場合はフィルタの含浸オイルを含んでいる。
【0060】熱式空気流量センサ素子110はこの汚損
物質を含んだ吸入空気に直接触れているために、長時間
の使用により、その表面に汚損物質が付着,堆積する。
図7は汚損物質が付着,堆積した場合の計測誤差を示
す。
【0061】熱式空気流量センサ素子110に汚損物質
が付着,堆積した場合には、図7の汚損物質付着誤差の
ように空気流量に対する出力電圧は、マイナス側にシフ
トする。これは、汚損物質付着前は、発熱抵抗体140
a,140bの熱量が保護層180に熱伝導し、空気に
熱伝達されるが、汚損物質が付着すると発熱抵抗体14
0a,140bからの熱量は、保護層180,汚損物質
層を熱伝導し、空気に熱伝達される。このように汚損物
質層に熱伝導する熱量の分だけ空気に接する最表面の温
度が下がるため、同じ空気流量に対して、発熱抵抗体に
流れる電流が減少するためである。換言すれば、空気流
量と発熱抵抗体との熱交換感度が鈍くなる。
【0062】そこで本発明では、空気温度測温抵抗体1
40cの一部140dを、空洞部(基板除去空間部)1
21上の絶縁層130(いわゆる図2の符号130´で
示すダイヤフラム)上に配置し、その空気温度測温抵抗
体140d両端の電位(電圧)の変化を検出することに
より特性変化の補正を行う。以下、その詳細を説明す
る。
【0063】空気温度測温抵抗体140cは、図1に示
すようにダイヤフラム130´外部に配置されており、
その空気温度測温抵抗体の一部140dが、発熱抵抗体
140a,140bと共に図6に示すようにブリッジ回
路を形成している。
【0064】空気温度測温抵抗体140cの抵抗値は発
熱抵抗体140a,140bの抵抗値の20倍程度であ
るため、空気温度測温抵抗体140cには発熱抵抗体1
40a,140bに流れる電流の1/20程度の電流が
流れる。この電流により空気温度測温抵抗体140cは
僅かながら発熱しようとするが、電気絶縁層130を介
して単結晶シリコン基板120の方に熱伝導するため、
空気温度測温抵抗体140cはほとんど発熱しない。し
かし、空洞部121上に電気絶縁層(電気絶縁膜)13
0´を介して配置された空気温度測温抵抗体の一部14
0dは、空洞部121により熱絶縁されるので、単結晶
シリコン基板120への熱伝導が無くなるため、僅かな
がら自己発熱する。この自己発熱は、流れる電流値以外
は発熱抵抗体140a,140bと全く同じ発熱の仕方
である。また、発熱抵抗体140a,140bと全く同
様に吸入空気に触れているため、発熱抵抗体140a,
140bと同様に汚損物質が付着する。従って、汚損物
質の付着により、発熱抵抗体140a,140bと同様
の熱伝導及び熱伝達の変化をする。ここで、図1に示す
ように空気温度測温抵抗体の一部140dの両端を、引
出線150a,150dにより電極160a,160d
に接続し、その電位差Vrを検出すると、既述したよう
に汚損物質付着による特性変化に付随した電圧の変化が
生じる。
【0065】この電圧(電位差)Vrを用いてのマイコ
ン制御による第一の補正法を示す演算アルゴリズムのブ
ロック図を図8に示す。
【0066】電極160a,160d間(空気温度測温
抵抗体140d)に生じる電位Vrと、電極160c,
160d間の電位Vs及び電流Irを算出する。ここ
で、電流Irは抵抗R2とその電位V3により算出され
る。Vr、Vs、Irより、
【0067】
【数1】Ra=(Vr−Vs)/Ir を算出する。空気温度測温抵抗体のうち空洞部(ダイア
フラム)121上にある一部抵抗体140dの電位Vr
から空洞部121外部の空気温度測温抵抗体の一部の電
位Vsを減算することにより、吸気温度の変化による抵
抗変化成分を取り除き、汚損物質付着による発熱の様相
の変化(抵抗体140dから生じた熱の熱伝導及び熱伝
達変化に伴う発熱様相の変化)に伴う抵抗変化成分のみ
を取り出すことができる。このRaを係数化したα1に
よりV2を演算することによって、図7に示すように汚
損物質付着による熱伝導、熱伝達の変化を補正した数2
式の出力が得られる。
【0068】
【数2】Vo=α1×A×V2+B A、Bは係数である。
【0069】次に、電位差Vrを用いてのマイコン制御
による第二の補正法を示す演算アルゴリズムのブロック
図を図9に示す。本補正法は、前述した汚損物質付着に
よる特性変化と吸気温度の変化による特性変化をまとめ
て補正する方法である。
【0070】電極160a、160d間の電位Vrと電
流Irを算出する。ここで、電流Irは抵抗R2とその
電位V3により算出される。Vr、Irにより空気温度
測温抵抗体の一部140dの抵抗は、
【0071】
【数3】R=Vr/Ir と算出される。ここで、Rは、数4式で表される。
【0072】
【数4】R=Ra+Rt Raは汚損物質付着による発熱抵抗変化成分、Rtは吸
気温度変化による抵抗変化成分である。このRを係数化
したα2によりV2を演算することによって、汚損物質
付着による熱伝導、熱伝達の変化を補正した数5式の出
力が得られる。
【0073】
【数5】Vo=α2×A×V2+B A、Bは係数である。
【0074】なお、上記実施例では、基板の除去空間
(空洞部)121上にダイアフラム状の絶縁層130´
を形成して、この絶縁層130´上に発熱抵抗体140
a,140b及び空気温度測温抵抗体の一部14dを形
成しているが、ダイアフラムにかえてブリッジ状に空洞
部121上にかけわたした絶縁層を形成して、この絶縁
層上に発熱抵抗体及び空気温度測温抵抗体の一部を形成
してもよい。
【0075】次に、本発明の第2実施例に係る熱式空気
流量センサ100の構造について、図10及び図11を
参照して説明する。図10は本実施例に用いる熱式空気
流量センサエレメント110の平面図、図11は図10
のC−C断面図である。
【0076】本実施例によるエレメント110は、図1
で説明した第1実施例のエレメント同様に、単結晶シリ
コン基板上120に電気絶縁層130を形成し、その上
に上流側発熱抵抗体140a,下流側発熱抵抗体140
b,空気温度測温抵抗体140c,140dが形成され
ている。第1実施例と相違する点は、空気温度測温抵抗
体140c,140dを複数(ここでは二つ)に分け、
これらの抵抗体140c,140dを直列に接続して成
り、このうちの一つの抵抗体140dを空洞部(基板一
部を除去した除去空間部)121上に配置した点にあ
る。
【0077】なお、各抵抗体は第1実施例の場合と同様
に、多結晶シリコンに不純物としてリン(P)をドーピ
ングした材料であり、上流側発熱抵抗体140aと下流
側発熱抵抗体140bは、単結晶シリコン基板120に
形成された空洞部121の上に形成されている。また、
空気温度測温抵抗体の一部140dはこの空洞部上であ
り、発熱抵抗体140a、140bからの熱の影響を受
ける位置に配置されている。
【0078】エレメント110の端部には、端子電極1
60a〜160gが形成されている。上流側発熱抵抗体
140aの一端は、引出線150eにより端子電極16
0eに接続され、下流側発熱抵抗体140bの一端は引
出線150fにより、端子電極160fに接続されてい
る。上流側発熱抵抗体140aと下流側発熱抵抗体14
0bの接続点170は引出線150gにより端子電極1
60gに接続されている。また、空気温度測温抵抗体1
40cの両端はそれぞれ引出線150b、150cによ
り端子電極160b、160cに接続されている。ま
た、一方の空気温度測温抵抗体140dの一端は引出線
150a、150dにより端子電極160a、160d
に接続されている。また、端子電極160以外の部分は
保護層180により覆われている。
【0079】エレメント110の断面構造、製造プロセ
ス及び熱式空気流量センサ100の構成は第1実施例の
場合と同様であるので説明は省略する。
【0080】また、空気流量検知の原理及び吸入空気流
の方向検知の原理も、第1実施例の場合と同様であるの
で説明は省略する。
【0081】次に、本発明の第二の実施例による、熱式
空気流量センサ表面に汚損物質が付着、堆積した場合の
特性変化の補正方法について説明する。空気温度測温抵
抗体140cは、第一の実施例の場合と同様に、図8に
示すようにダイヤフラム外部に配置されており、発熱抵
抗体と共にブリッジ回路を形成している。
【0082】第2実施例では、図10に示すように、空
気温度測温抵抗体の一部140dは発熱抵抗体140
a、140bの熱の影響を受ける位置に配置されている
ため、発熱抵抗体140a、140bの所定温度ΔTh
付近(例えば、150℃付近)にまで加熱される。この
とき、第1実施例の場合と同様に、自己発熱も起こる
が、発熱抵抗体140a、140bによる加熱に比較す
ると、ほとんど無視できる程度である。
【0083】発熱抵抗体140a、140bによる空気
温度測温抵抗体の一部140dの加熱は、発熱抵抗体1
40a、140bの熱量に比例する。従って、汚損物質
の付着、堆積により、発熱抵抗体140a、140bの
熱伝導及び熱伝達が変化すると、空気温度測温抵抗体の
一部140dが発熱抵抗体140a、140bから受け
る熱量も同様に変化する。
【0084】図10に示すように空気温度測温抵抗体の
一部140dの両端を引出線150a、150dにより
電極160a、160dに接続し、その電位差Vrを検
出すると、汚損物質付着による特性変化に付随した電圧
の変化が生じる。
【0085】この電位差Vrを用いて、第一の実施例の
場合と同様に図8、図9に示す方法により汚損物質付着
による熱伝導、熱伝達の変化を補正した出力を得ること
ができる。
【0086】
【発明の効果】本発明によれば、吸入空気に含まれる汚
損物質の熱式空気流量センサ素子表面への付着、堆積に
よる熱式空気流量センサの出力特性の変化を防止するこ
とが可能であり、熱式空気流量センサの初期精度を維持
することが可能となる。また、補正法によっては、吸気
温度の変化による特性誤差を含めて補正することが可能
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の熱式空気流量センサに係
るエレメントを示す平面図。
【図2】図1の熱式空気流量センサエレメントのA−A
断面図。
【図3】第1実施例の熱式空気流量センサモジュール示
す部分平面図。
【図4】図3の熱式空気流量センサモジュールのB−B
断面図。
【図5】上記熱式空気流量センサモジュールを吸入空気
通路に取り付けた断面図。
【図6】本発明の熱式空気流量センサ駆動回路図。
【図7】汚損物質付着による計測誤差を示すグラフ。
【図8】本発明の計測誤差補正方法を示すブロック図。
【図9】本発明の補正方法を示すブロック図。
【図10】本発明の第2実施例の熱式空気流量センサに
用いるエレメントを示す平面図。
【図11】図10のA−A断面図。
【図12】熱式空気流量センサの基本原理を示す説明
図。
【図13】熱式空気流量センサの基本原理を示す説明
図。
【符号の説明】 10a,10b…吸入空気、100…熱式空気流量セン
サ、110…熱式空気流量センサのエレメント、120
…単結晶シリコン基板(半導体基板)、121…空洞部
(基板の一部を除去した除去空間部)、130…電気絶
縁層、140a…上流側発熱抵抗体、140b…下流側
発熱抵抗体、140c…空気温度測温抵抗体、140d
…空気温度測温抵抗体の一部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米田 浩志 茨城県ひたちなか市高場2477番地 株式 会社日立カーエンジニアリング内 (56)参考文献 特開 平10−19626(JP,A) 特開 平9−53968(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01F 1/00 - 9/02

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体微細加工により形成される発熱抵
    抗体及び空気温度の測温抵抗体(以下、空気温度測温抵
    抗体と称する)を用いて空気流量を測定する熱式空気流
    量センサにおいて、 半導体基板の一部が除去されて、この除去空間上に電気
    絶縁層を介して前記発熱抵抗体と前記空気温度測温抵抗
    体の一部とが形成されており、前記空気温度測温抵抗体
    の残りの部分が前記除去空間から外れて前記半導体基板
    上に電気絶縁層を介して形成され、 前記空気温度測温抵抗体のうち前記除去空間上に位置す
    る部分の電圧を検出する手段と、この検出電圧を用いて
    空気流量計測誤差を補正する手段と、を備えていること
    を特徴とする熱式空気流量センサ。
  2. 【請求項2】 前記空気温度測温抵抗体のうち前記除去
    空間上に位置する部分は、前記発熱抵抗体により加熱さ
    れる位置に配置されている請求項1記載の熱式空気流量
    センサ。
  3. 【請求項3】 前記電気絶縁層は、膜状に形成されてい
    る請求項1又は2記載の熱式空気流量センサ。
  4. 【請求項4】 前記空気温度測温抵抗体は、その一部が
    前記半導体基板上から前記除去空間上に引き出されてい
    る請求項1ないし3のいずれか1項記載の熱式空気流量
    センサ。
  5. 【請求項5】 前記空気温度測温抵抗体は、複数の抵抗
    体を直列に接続して成り、このうちの一つの抵抗体を前
    記除去空間上に位置するようにしてある請求項1ないし
    3のいずれか1項記載の熱式空気流量センサ。
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