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JP3416312B2 - 大豆蛋白質の製造法 - Google Patents

大豆蛋白質の製造法

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JP3416312B2
JP3416312B2 JP33732194A JP33732194A JP3416312B2 JP 3416312 B2 JP3416312 B2 JP 3416312B2 JP 33732194 A JP33732194 A JP 33732194A JP 33732194 A JP33732194 A JP 33732194A JP 3416312 B2 JP3416312 B2 JP 3416312B2
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soybean protein
phytic acid
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五郎 桑田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大豆蛋白質含有原料か
ら、比較的濃度の低い無機塩溶液を用いて大豆蛋白質を
抽出し、この抽出液からフィチン酸及びその塩を効率的
に除去して、フィチン酸及びその塩の含量の低い大豆蛋
白質を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、日本人の栄養摂取状況は良好で、
栄養成分の欠乏症はほとんどないと言われている。しか
しながら、毎年行われている国民栄養調査によると、カ
ルシウムだけは、その所要摂取量が充足されないでい
る。こうしたカルシウム摂取量の不足を補うため、乳製
品、小魚、海藻等のカルシウム補給食品の摂取が奨励さ
れており、一方において、各種カルシウム剤や、カルシ
ウム強化食品などの開発が盛んに行われている。
【0003】しかしながら、カルシウムをはじめとする
ミネラルには、一般に難吸収性のものが多いために、単
に食品中のミネラルを強化しただけでは、充分なミネラ
ル補給効果が得られない。また、1種類のミネラルだけ
を強化した食品は、他のミネラルの吸収を拮抗阻害し、
却って微量ミネラルの欠乏状態を引き起こす虞れがある
ことが指摘されている(Dairy Council Digest, Vol.60
(3) )。
【0004】このため、近年、摂取が不足しがちなミネ
ラル、特にカルシウムの吸収を促進させる各種吸収促進
剤の開発が行われている。例えば、ホスホセリンを含む
アミノ酸数20程度のペプチドであるカゼインホスホペプ
チド(CPP)は、消化管内におけるカルシウムの不溶
化を抑制してカルシウムの吸収を促進させることが知ら
れている。
【0005】しかしながら、CPPはカゼイン中に50分
の1程度の量しか含まれていないため、非常に高価であ
るという問題があった。また、CPPは、アミノ酸数20
程度のペプチドであるため、胃液や腸液に含まれる蛋白
質分解酵素により消化されると、カルシウムの可溶化に
必要な分子構造が破壊され、目的とする効果が得られな
いという虞れがあった。
【0006】一方、大豆蛋白質は、主として11s、7
s、2.8 sなどのグロブリンからなる蛋白質であり、β
−カゼインとは異なり、リン酸基を持つホスホセリンは
ほとんど含まれていない。また、大豆蛋白質には、フィ
チン酸及びその塩が相当量含まれており、こうしたフィ
チン酸及びその塩は、ミネラル、特にカルシウムの体内
吸収を阻害することが知られている(早川利郎、第1回
新潟県食品バイオテクノロジー懇談会別冊)。このよう
な理由から、これまで大豆蛋白質にはミネラル吸収促進
効果はないとされてきた(日本栄養食糧学会誌、45 (4)
333 (1992))。
【0007】また、大豆蛋白質含有原料から、例えば8.
5 %の食塩水を用いて大豆蛋白質を抽出し、この抽出液
を限外濾過膜を用いて処理することにより、フィチン酸
及びその塩を0.14%まで除去できたという報告がなされ
ている(Rham and Jost, J.Food Sci. 44 (2) 596 (197
9))。
【0008】上記知見に対し、本発明者らは、大豆蛋白
質に含まれるフィチン酸及びその塩について研究する過
程で、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩による沈
殿法と、電気透析法とを組み合わせることにより、大豆
蛋白質含有原料からフィチン酸及びその塩を効率よく除
去できること、及び、そうして得られたフィチン酸及び
その塩の含量の低い大豆蛋白質が優れたミネラル吸収促
進効果を有することを見いだし、特願平6-40558 号、特
願平6-40559 号としてすでに出願している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、大豆蛋
白質含有原料から、フィチン酸及びその塩の含有量の低
い大豆蛋白質を得ようとする場合、例えば、前述のRham
and Jost の報告において、食塩水濃度が8.5 %の場合
には、フィチン酸及びその塩が除去されるが、7%の場
合には、十分には除去されないと記載されているよう
に、塩濃度が低い場合には、フィチン酸及びその塩の除
去が困難であるとされていた。しかし、高濃度の塩溶液
で抽出した場合、脱塩処理に時間がかかり、生産性が悪
く、製造コストが高くなるという問題があった。
【0010】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、その目的は、大豆蛋白質含有原料から、比較的低濃
度の無機塩溶液を用いて大豆蛋白質を抽出しても、フィ
チン酸及びその塩を十分に除去することができ、したが
って、脱塩処理を容易に、かつ、短時間で行え、経済的
にも有利な、フィチン酸及びその塩の含量の低い大豆蛋
白質の製造法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、大豆蛋白
質に含まれるフィチン酸及びその塩について研究する過
程で、電気透析又は限外濾過による脱塩処理と、等電点
沈殿とを組み合わせることにより、大豆蛋白質含有原料
から、低濃度の無機塩溶液で大豆蛋白質を抽出しても、
フィチン酸及びその塩を効率よく除去できることを見い
だし、本発明を完成するに至った。
【0012】すなわち、本発明の大豆蛋白質の製造法
は、大豆蛋白質含有原料に、1.0 重量%以上で7.5 重量
%未満の濃度の無機塩溶液を加えて大豆蛋白質を抽出す
る工程と、この抽出液を無機塩濃度が0.2〜0.3重量%に
なるまで電気透析又は限外濾過により脱塩処理した後、
等電点沈殿によりフィチン酸及びその塩を除去する工程
とを含むことを特徴とする。
【0013】以下、本発明について好ましい態様を挙げ
て詳細に説明する。
【0014】まず、大豆蛋白質を抽出する工程について
説明すると、大豆蛋白質含有原料の種類は、特に限定さ
れず、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、
豆乳など、各種のものが使用できる。これらの原料は、
各種市販のものを用いても、原料大豆から調製してもよ
い。なお、蛋白質の抽出率を高くする点から、上記原料
は変性の少ないものが好ましく、具体的には、NSI
(可溶性窒素化率)80%以上のものが好ましい。
【0015】上記原料に加える無機塩溶液は、濃度が1.
0 重量%以上で7.5 重量%未満のものを用いる。無機塩
溶液の濃度が1.0 重量%未満では、電気透析又は限外濾
過による脱塩処理と、等電点沈殿とを組み合わせても、
フィチン酸及びその塩を効率よく除去することができ
ず、7.5 重量%以上では、脱塩処理に時間がかかり、経
済的にも不利となる。
【0016】無機塩溶液としては、食塩、塩化カリウ
ム、硫酸ナトリウム等から選ばれるアルカリ金属塩の水
溶液を用いるのが好ましい。
【0017】抽出に使う無機塩溶液の量は、特に限定さ
れないが、収量、製造コスト等を考えると、大豆蛋白質
含有原料に対して5〜20倍容量が好ましい。抽出温度及
び抽出時間についても、特に限定されないが、室温で、
0.5 〜1時間程度抽出するのが好ましい。抽出時のpH
は6〜9の範囲が好ましい。pHが6よりも低いと、大
豆蛋白質が溶解しにくく、pHが9よりも高いと、蛋白
質が一部アミノ酸に分解するという問題があるので好ま
しくない。なお、抽出後における抽出液の固液分離法
は、デカンテーション、遠心分離、濾過法等、特に限定
されない。
【0018】次に、抽出液を、電気透析又は限外濾過に
より脱塩処理する。電気透析は、イオン交換膜や分子篩
膜などの分離膜を用いた電気透析装置を用いて行うのが
好ましい。
【0019】図1には、このような電気透析装置の一例
が示されている。すなわち、陽極1と陰極3との間に、
陰イオン交換膜5と陽イオン交換膜6とが多数交互に配
置され、陽極1側から見て陰イオン交換膜5、陽イオン
交換膜6の順序で配列された膜間が、被処理液が流れる
脱塩室7とされ、陽イオン交換膜6、陰イオン交換膜5
の順序で配列された膜間が、被処理液中の陽イオン及び
陰イオンが集められるイオン回収室8とされている。
【0020】陽極室2及び陰極室4には、電極液流路1
0を通してポンプ11により電極液が循環され、脱塩室
7には、被処理液流路12を通してポンプ13により被
処理液、すなわち上記抽出液が循環される。更に、イオ
ン回収室8には、回収液流路14を通してポンプ15に
より回収液が循環される。
【0021】そして、陽極1と陰極3との間に電圧を加
えると、抽出液中の陽イオンは、陽イオン交換膜6を通
して回収室8に集められ、抽出液中の陰イオンは、陰イ
オン交換膜5を通して回収室8に集められる。なお、大
豆蛋白質自体もイオン化するが、その分子量が大きいた
め、イオン交換膜を透過することができず、脱塩室7内
に残される。こうして、抽出液中の無機塩や、フィチン
酸及びその塩等が除去され、脱塩室7側から脱塩された
抽出液を得ることができる。
【0022】上記において、イオン交換膜5、6として
は、大豆蛋白質自体の透過を阻止し、フィチン酸及びそ
の塩等を選択的に透過させるため、分画分子量が好まし
くは5000以下、より好ましくは300 〜1000のイオン交換
膜又は分子篩膜が用いられる。このようなイオン交換膜
又は分子篩膜としては、例えば「AC-230-800」(カート
リッジ名、旭化成工業株式会社製)等を用いることがで
きる。なお、分画分子量が300 よりも小さい膜は、フィ
チン酸及びその塩が透過できないので好ましくない。
【0023】また、イオン回収液としては、各種無機塩
溶液等が使用できるが、中でも食塩溶液を用いるのが好
ましく、その濃度は0.1 〜1.0 重量%程度が好ましい。
【0024】一方、限外濾過は、分画分子量が好ましく
は1000〜20000 、より好ましくは1000〜5000の限外濾過
膜を用いて行う。
【0025】上記電気透析又は限外濾過による脱塩処理
の時間は、原料の種類や、抽出液の量、濃度などに応じ
て適宜決定されるが、抽出液中の無機塩濃度が大体0.2
0.3重量%程度になるまで行うのが好ましい。脱塩処
理後の無機塩濃度が高いと、精製が不充分な虞れがあ
り、無機塩濃度が低すぎると、脱塩により大豆蛋白質
が凝集を生じるので好ましくない。
【0026】次に、上記のようにして脱塩処理された抽
出液を、等電点沈殿により大豆蛋白質を沈殿させ、固液
分離して、フィチン酸及びその塩を除去する。等電点沈
殿は、脱塩処理された抽出液に、塩酸溶液等を滴下し
て、pHを4.5 〜5.5 程度に調整することにより行うこ
とができる。
【0027】こうして分離された大豆蛋白質は、適当な
濃度となるように水等に溶解してそのまま製品化するこ
ともできるが、水等に溶解した後、更に乾燥粉末化して
製品化するのが、製品の安定性の点から好ましい。乾燥
方法としては、スプレードライ法、凍結乾燥法など各種
の方法が採用できる。なお、上記いずれの方法で製品化
する場合においても、102 〜120 ℃で5〜15分程度加熱
処理を行って、大豆蛋白質の消化に問題となるトリプシ
ンインヒビターを失活させておくのが好ましい。
【0028】こうして得られた大豆蛋白質は、高蛋白質
で、かつ、ミネラル吸収促進効果を有する。なお、フィ
チン酸及びその塩を除去した大豆蛋白質のミネラル吸収
促進効果については、前述したように、本発明者らがす
でに出願した特願平6-40558号、特願平6-40559 号に詳
述されている。
【0029】したがって、本発明の製造法により得られ
る大豆蛋白質は、そのまま経口摂取してもよく、また、
ミネラル吸収促進効果を有する素材として、粉乳などの
乳製品や、豆乳、各種植物性蛋白質の代わりに使用する
こともでき、例えば、植物蛋白乳飲料、乳酸飲料、イン
スタントスープ、豆乳等の各種飲料や、チョコレート、
ケーキ、キャラメル等の各種菓子類、パン、豆腐、ハ
ム、ソーセージ、ハンバーグ等の加工食品、ちくわ、か
まぼこ等の水産練製品などの各種食品類に添加して使用
することができる。食品への添加方法に制限はなく、水
溶液として添加する方法、粉末として添加する方法な
ど、いずれを用いてもよい。
【0030】
【作用】本発明によれば、大豆蛋白質含有原料から大豆
蛋白質を抽出する際に、1.0 重量%以上で7.5 重量%未
満の濃度の無機塩溶液を用いることにより、抽出液中の
フィチン酸及びその塩の一部を不溶化して沈殿させるこ
とができ、この抽出液を通常の手段で固液分離すること
で、フィチン酸及びその塩の一部を容易に除去すること
ができる。
【0031】そして、上記工程に続いて、抽出液を電気
透析又は限外濾過により脱塩処理することにより、無機
塩と共に、抽出液中に残存するフィチン酸及びその塩な
どの成分を更に効率的に除去することができる。なお、
本発明においては、抽出に用いる無機塩溶液の濃度が、
1.0 重量%以上で7.5 重量%未満と低濃度のものとした
ので、脱塩処理を短時間に行うことができ、経済的にも
有利である。
【0032】また、脱塩処理された抽出液を、等電点沈
殿させると、大豆蛋白質が選択的に沈殿するので、これ
を固液分離することにより、残存するフィチン酸及びそ
の塩を更に徹底的に除去することができ、フィチン酸及
びその塩の含量が極めて低い大豆蛋白質を得ることがで
きる。
【0033】こうして得られた、フィチン酸及びその塩
の含有量の少ない大豆蛋白質は、カゼインよりも優れた
ミネラル吸収促進効果を有している。
【0034】また、本発明の方法によれば、大豆蛋白質
自体のアミノ酸組成や、大豆に本来含有されるイソフラ
ボン類等の各種有用成分の含量に影響を与えずに、フィ
チン酸及びその塩を除去することができる。
【0035】大豆に含有されるイソフラボン類、特にダ
イゼイン、ゲニステイン、ダイジイン、ゲニスチンに
は、女性ホルモンであるエストロゲンと同様の生理活性
効果があるとの報告があり(Cheng et al., Science 11
8 164 (1953); Brigger et al., Biochem. J. 58 278
(1954) )、例えば骨塩の溶出を抑制する効果などを有
するとされている。
【0036】このため、本発明の製造法で得られた製品
には、ミネラル吸収促進効果だけでなく、大豆が本来有
する、エストロゲン効果等の各種生理活性効果をも期待
することができる。
【0037】
【実施例】実施例1 市販の脱脂大豆フレーク(商品名「不二宝豆」、不二製
油株式会社製、NSI(可溶性窒素化率)80以上)
8kgを、4重量%食塩溶液(イオン交換水76.8k
gに精製塩3.2kgを溶解したもの)に懸濁させ、ゆ
っくりと攪拌しながら2N−水酸化ナトリウム溶液を滴
下して、pH8.0に調整し、更に攪拌を続けて、30
分間後及び1時間後に、再度pH8.0に調整して大豆
蛋白質を抽出した。抽出液を籠型連続遠心分離機(国産
遠心器株式会社製)にかけて、おから等の大きめの不溶
性残渣を除去し、次いで、バッチ型遠心分離機(商品名
「J6−HC 」、BECKMAN 社製)を用いて、
4000rpmで、30分間遠心分離して残存する不溶
物を完全に除去した。
【0038】こうして得られた大豆蛋白質抽出液を、市
販の電気透析装置(商品名「マイクロアシライザー G
4DX」、旭化成株式会社製)を用いて2〜3時間、す
なわち、食塩濃度が0.2 〜0.3 重量%程度になって大豆
蛋白質が脱塩凝集を生じる直前まで脱塩を行い、フィチ
ン酸及びその塩を除去した。なお、電気透析装置の膜カ
ートリッジとしては、分画分子量1000のイオン交換膜で
ある「AC-230-800」(カートリッジ名、旭化成株式会社
製)を使用し、イオン回収液としては、0.3 重量%食塩
水を使用した。
【0039】上記脱塩後の抽出液に水を加えて3倍容量
に希釈した後、泡立てないようにゆっくりと撹拌しつ
つ、1N−塩酸を少しづつ滴下し、pH5.5 に調整して
30分間静置し、大豆蛋白質を等電点沈殿させた後、デカ
ンテーションして上澄みを除去し、次いで、上記バッチ
型遠心分離機により、4000rpm で、10分間遠心分離し
て、得られた沈殿物に10倍量の水を加えてよく懸濁さ
せ、ホモミキサーで強く撹拌して均一な分散液とし、こ
れに2N−水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを加え
てpH6.8 に調整して、フィチン酸及びその塩を実質上
除去した大豆蛋白質含有溶液を得た。
【0040】この大豆蛋白質含有溶液を分析測定したと
ころフィチン酸及びその塩は検出されなかった。
【0041】実施例2 実施例1において、抽出に用いた4重量%食塩溶液を、
4.4 重量%塩化カリウム溶液(イオン交換水43kgに塩化
カリウム2.0 kgを溶解したもの)に変え、抽出液のpH
を8.0 に調整するのに用いた2N−水酸化ナトリウム溶
液を、2N−水酸化カリウム溶液に変え、あとは実施例
1と同様にして、フィチン酸及びその塩を実質上除去し
た大豆蛋白質含有溶液を得た。
【0042】この大豆蛋白質含有溶液を分析測定したと
ころ、フィチン酸及びその塩は検出されなかった。
【0043】実施例3 実施例2において、抽出に用いた4.4 重量%塩化カリウ
ム溶液(イオン交換水43kgに塩化カリ2.0 kgを溶解した
もの)を、4.4 重量%硫酸ナトリウム溶液(イオン交換
水43kgに硫酸ナトリウム2.0 kgを溶解したもの)に変
え、あとは実施例2と同様にして、フィチン酸及びその
塩を実質上除去した大豆蛋白質含有溶液を得た。
【0044】この大豆蛋白質含有溶液を分析測定したと
ころ、フィチン酸及びその塩は検出されなかった。
【0045】実施例4 実施例1〜3で得られた各々の大豆蛋白質含有溶液2kg
を、それぞれ3kg容のスタンディングパウチ(膜構成:
12μPET/25μNY/9μAl/100μCPP )に充填し、高圧調理
殺菌装置(商品名「PCS-40」、株式会社日阪製作所製)
を用いて、102℃で15分間加熱して、トリプシンインヒ
ビターを失活させた後、ゼリー状になった大豆蛋白質を
トレー上に広げて凍結乾燥し、それぞれ粉末状の大豆蛋
白質を得た。
【0046】実施例5 実施例1〜3で得られた各々の大豆蛋白質含有溶液に水
を加えて2倍量に希釈した後、スプレードライ法によ
り、それぞれ粉末状の大豆蛋白質を得た。
【0047】試験例1 実施例1で得られた大豆蛋白質含有溶液を、実施例4の
方法で粉末にした大豆蛋白質(以下「本発明品」と記載
する)と、比較としての、市販の分離大豆蛋白質(商品
名「ニューフジプロ−R」、不二製油株式会社製、以下
「市販品」と記載する)との化学組成及びフィチン酸含
量を測定した。
【0048】その結果を表1に示す。なお、化学組成は
常法により測定し、フィチン酸含量は MOHAMEDらの方法
(A.MOHAMED et al., Cereal Chemistry 63, 475, 198
6)により測定した。
【0049】
【表1】
【0050】表1から明らかなように、本発明の方法に
より、大豆蛋白質中のフィチン酸及びその塩の含量を、
実質的に含有しないところまで減少させることができ
た。
【0051】試験例2 試験例1で用いたのと同様の本発明品及び市販品につい
て、蛋白質中のアミノ酸組成を分析、比較した。その結
果を表2に示す。なお、アミノ酸組成の分析は、「改訂
・日本食品アミノ酸組成表」(科学技術庁資源調査会
編)に記載の方法により行った。
【0052】
【表2】
【0053】表2に示されるように、本発明の方法によ
り得られた大豆蛋白質は、原料である市販の大豆蛋白質
とほぼ同様のアミノ酸組成を有しており、本発明の製造
法が、大豆蛋白質中のアミノ酸組成にほとんど影響を及
ぼさないことが明らかとなった。
【0054】試験例3 市販の脱脂大豆フレーク(商品名「不二宝豆」、不二製
油株式会社製、変性率NSI 80以上)150 gを、0、1、
2、3、4、7、10重量%の各種濃度のアルカリ金属塩
(食塩、塩化カリウム、硫酸ナトリウム)溶液1350mlに
懸濁させ、ゆっくりと撹拌しながら1N−水酸化ナトリ
ウム溶液を滴下して、pH8.0 に調整し、更に撹拌を続
けて、30分間後及び1時間後に、再度1N−水酸化ナト
リウム溶液でpH8.0 に調整して大豆蛋白質を抽出し
た。抽出液を、豆腐製造用ナイロンメッシュで濾過し
て、おから等の大きめの不溶性残渣を除去し、濾液を、
5000gで、30分間遠心分離し、沈殿物を除去して、上清
である大豆蛋白抽出液1100mlを得た。
【0055】こうして得られた大豆蛋白質抽出液の内10
00mlを、市販の電気透析装置(商品名「マイクロアシラ
イザー G3」、旭化成株式会社製、AC-230-800)を用
いて、塩濃度が0.2 〜0.3 重量%になるまで脱塩して、
脱塩した大豆蛋白質抽出液900 〜950 mlを得た。
【0056】上記脱塩後の抽出液に2倍量の水を加えて
3倍容量に希釈した後、泡立てないようにゆっくりと撹
拌しつつ、1N−塩酸を少しづつ滴下し、pH5.5 に調
整して30分間静置し、大豆蛋白質を等電点沈殿させた
後、デカンテーションして上清みを除去し、次いで、50
00gで、10分間遠心分離して、得られた沈殿物に9倍量
の水を加えて10倍希釈とし、ホモゲナイザーで強く撹拌
して均一な分散液とし、pH6.6 〜6.8 に調整して大豆
蛋白質溶液を得た。
【0057】上記操作のフローチャートを図2、3に示
す。なお、図2の最下部の※が、図3の最上部の※に続
いている。
【0058】アルカリ金属塩溶液として、各種濃度の食
塩溶液を用いて、上記操作を行い、図2、3における大
豆蛋白質抽出液(□1)、脱塩した大豆蛋白質抽出液
(◇2)、pH6.6 〜6.8 の蛋白質溶液(△3)につい
て、それぞれの溶液1ml中の蛋白質量(mg)と、フィチン
酸量(mg)とを測定し、蛋白質量に対するフィチン酸量の
割合(%)を求めた。なお、フィチン酸量は、MOHAMED
法により測定し、蛋白質量は、ケルダール法(ケルテッ
ク社製、自動窒素分析装置)により測定した。
【0059】これらの結果を図4に示す。図4におい
て、□−□は、大豆蛋白質抽出液(□1)、◇−◇は、
脱塩した大豆蛋白質抽出液(◇2)、△−△は、pH6.
6 〜6.8 の蛋白質溶液(△3)の各1ml中の蛋白質量に
対するフィチン酸量割合(%)を表し、+−+は、大豆
蛋白質抽出液(□1)中の蛋白質含有割合を表す。
【0060】図4の結果から、食塩濃度が高いほど、大
豆蛋白質抽出液(□1)中の蛋白質量に対するフィチン
酸量割合を少なくすることができるが、7重量%以下の
低濃度の食塩溶液で抽出しても、電気透析及び等電点沈
殿の処理を行うことにより、フィチン酸量をほとんど検
出できない程度にすることができることがわかる。
【0061】また、アルカリ金属塩溶液として、各種濃
度の塩化カリウム溶液、硫酸ナトリウム溶液を用いて、
上記と同様にして大豆蛋白質の抽出操作を行い、大豆蛋
白質抽出液(□1)1ml中の蛋白質量(mg)と、フィチン
酸量(mg)とを測定し、蛋白質量に対するフィチン酸量割
合(%)を求めた。
【0062】この結果として、塩化カリウム溶液を用い
たものを図5に、硫酸ナトリウム溶液を用いたものを図
6に示す。図5、6において、□−□は、蛋白質量に対
するフィチン酸量割合(%)を表し、+−+は、大豆蛋
白質抽出液(□1)中の蛋白質含有割合を表す。
【0063】図5、6の結果から、塩化カリウム溶液、
硫酸ナトリウム溶液のいずれを用いた場合も、塩濃度が
高いほど、大豆蛋白質抽出液(□1)中の蛋白質量に対
するフィチン酸量割合を少なくすることができるが、7
重量%以下の低濃度の食塩溶液で抽出してもフィチン酸
量をかなり少なくすることができることがわかる。
【0064】実施例6 実施例1において、電気透析による脱塩を限外濾過に変
え、限外濾過膜として「ACP-3053」(商品名、旭化成株
式会社製)を用いて、濃縮、加水を繰り返して、実施例
1と同様の食塩濃度になるまで脱塩し、あとは実施例1
と同様にして、フィチン酸及びその塩を実質上除去した
大豆蛋白質含有溶液を得た。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
大豆蛋白質含有原料から、7.5 重量%未満の低濃度の無
機塩溶液を用いて大豆蛋白質を抽出しても、フィチン酸
及びその塩を効率的に除去することができる。また、低
濃度の無機塩溶液を用いて抽出するので、脱塩処理を短
時間に行うことができ、経済的にも有利である。更に、
大豆蛋白質中のアミノ酸組成やイソフラボン含量などに
影響を与えずにフィチン酸及びその塩を除去できるの
で、大豆蛋白質が本来有する栄養価や各種生理活性効果
を損なうことはなく、フィチン酸及びその塩の含量の低
い大豆蛋白質を製造することができる。なお、フィチン
酸及びその塩を除去した大豆蛋白質は、ミネラル吸収促
進効果が高いので、ミネラル吸収促進剤又はミネラル吸
収促進効果を有する食品素材としての用途が期待され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される電気透析装置の一例を示す
概略説明図である。
【図2】本発明の大豆蛋白質の製造法の一実施例の前半
を示すフローチャート図である。
【図3】同実施例の後半を示すフローチャート図であ
る。
【図4】本発明の大豆蛋白質の製造法において食塩溶液
を用いた場合の抽出液の蛋白質含量及び各工程における
蛋白質量に対するフィチン酸量の割合を示す図表であ
る。
【図5】本発明の大豆蛋白質の製造法において、塩化カ
リウム溶液を用いた場合の抽出液の蛋白質含量及び蛋白
質量に対するフィチン酸量の割合を示す図表である。
【図6】本発明の大豆蛋白質の製造法において硫酸ナト
リウム溶液を用いた場合の抽出液の蛋白質含量及び蛋白
質量に対するフィチン酸量の割合を示す図表である。
【符号の説明】
1 陽電極 2 陽電極室 3 陰電極 4 陰電極室 5 陰イオン交換膜 6 陽イオン交換膜 7 脱塩室 8 イオン回収室 10 電極液流路 12 被処理液流路 14 回収液流路 11、13、15 ポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23J 1/14 - 3/16

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大豆蛋白質含有原料に、1.0 重量%以上
    で7.5 重量%未満の濃度の無機塩溶液を加えて大豆蛋白
    質を抽出する工程と、この抽出液を無機塩濃度が0.2〜
    0.3重量%になるまで電気透析又は限外濾過により脱塩
    処理した後、等電点沈殿によりフィチン酸及びその塩を
    除去する工程とを含むことを特徴とする大豆蛋白質の製
    造法。
  2. 【請求項2】 前記大豆蛋白質含有原料が、脱脂大豆
    粉、濃縮大豆蛋白質、分離大豆蛋白質、豆乳から選ばれ
    た少なくとも一種である請求項1記載の大豆蛋白質の製
    造法。
  3. 【請求項3】 前記無機塩溶液が、食塩、塩化カリウ
    ム、硫酸ナトリウムから選ばれるアルカリ金属塩の水溶
    液である請求項1又は2記載の大豆蛋白質の製造法。
  4. 【請求項4】 前記抽出をpH6〜9の条件下で行う請
    求項1〜3のいずれか一つに記載の大豆蛋白質の製造
    法。
  5. 【請求項5】 前記電気透析を、分画分子量が5000以下
    のイオン交換膜又は分子篩膜を用いて行う請求項1〜4
    のいずれか一つに記載の大豆蛋白質の製造法。
  6. 【請求項6】 前記限外濾過を、分画分子量が1000〜20
    000 の限外濾過膜を用いて行う請求項1〜4のいずれか
    一つに記載の大豆蛋白質の製造法。
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