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JP3129110B2 - 透明導電膜およびその形成方法 - Google Patents

透明導電膜およびその形成方法

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JP3129110B2
JP3129110B2 JP06237311A JP23731194A JP3129110B2 JP 3129110 B2 JP3129110 B2 JP 3129110B2 JP 06237311 A JP06237311 A JP 06237311A JP 23731194 A JP23731194 A JP 23731194A JP 3129110 B2 JP3129110 B2 JP 3129110B2
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JP
Japan
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transparent conductive
forming
conductive film
film
group
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明 西原
年治 林
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Mitsubishi Materials Corp
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  • Surface Treatment Of Glass (AREA)
  • Non-Insulated Conductors (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、導電性および電磁界シ
ールド性に優れた塗布型の透明導電膜の形成方法と、こ
の方法で得られた透明導電膜に関する。本発明の方法で
形成された透明導電膜は、極めて低抵抗かつ低ヘーズ
で、しかも基体との密着性および膜強度が高いため、O
A機器等のディスプレイやTVブラウン管の画像表面の
帯電防止用および電磁界シールド用の透明導電膜の形成
に特に好適であり、またタッチパネルや液晶ディスプレ
イ等のディスプレイ装置の透明電極にも利用できる。
【0002】
【従来の技術】TVブラウン管やコンピュータ等のOA
機器のCRT(陰極線管)の画像表面に、ホコリの付着
や電撃ショックを防ぐための帯電防止膜として透明導電
膜を形成することは以前より行われている。近年、これ
らの透明導電膜に、帯電防止性のみならず、電磁波シー
ルド性も要求されるようになってきた。
【0003】即ち、ブラウン管やCRTでは、電子銃と
偏向ヨーク付近から発生した電磁波が周囲に漏洩して、
人体に悪影響を及ぼすことが懸念されている。TVにつ
いてはブラウン管の大型化に伴って漏洩電磁波が増大
し、CRTではOA機器の高性能化に伴って、漏洩電磁
波が周囲コンピュータの誤動作を起こす危険性が高くな
っている。従って、安全基準をクリヤーするようにブラ
ウン管やCRTからの漏洩電磁波を遮断する必要があ
り、そのために透明導電膜が電磁波シールド性を示すこ
とが望まれているのである。
【0004】透明導電膜に要求される導電性は、帯電防
止のみを目的とする場合には表面抵抗で108 Ω/□台で
十分とされてきたが、電磁波シールドを達成するには10
5 Ω/□台以下、好ましくは 104Ω/□台以下、さらに
好ましくは103 Ω/□台以下への一層の低抵抗化が必要
である。また、画像を妨害しないようにヘーズ (直接透
過光に対する拡散透過光の%) が極力低い値であること
が望ましく (例、5%以下、特に1%以下) 、基体への
密着性も当然要求される。
【0005】透明導電膜は、より最近開発されたタッチ
パネルや液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エ
レクトロルミネッセンスディスプレイ、蛍光表示用ディ
スプレイなどの各種ディスプレイの透明電極としても利
用されている。この用途に用いる透明導電膜にも、電磁
波シールド用と同等以上の導電性が要求される。
【0006】透明導電膜の形成法は、CVD、スパッタ
リング法などを含む気相法と、塗布法とに大別される。
気相法は高性能の透明導電膜を形成することができる
が、大量生産には向かず、実用的ではない。
【0007】塗布法は導電膜を形成する基体 (基板) の
寸法や形状の制限が少なく、特殊な装置を必要とせずに
大量、簡便、かつ安価に透明導電膜を形成することがで
きる。塗布法による透明導電膜の形成は、ガラス、プラ
スチックなどの基体に塗布、印刷、スプレーなどの手段
で透明導電性塗料を塗布し、必要により加熱または紫外
線照射により塗膜を乾燥ないし硬化することにより行わ
れる。
【0008】透明導電性塗料としては、例えば特開昭62
−232466号、同63−54473 号、特開平2−77473 号、同
4−26768 号各公報に記載されるような、溶媒に透明導
電性微粉末と膜形成に必要なポリマー (樹脂) 系バイン
ダーとを含有させた組成物がある。このような塗料の塗
布による透明導電膜の形成は、同じ塗布法に属するゾル
−ゲル法による透明導電膜の形成とは異なり、導電性微
粉末の種類を選ばず、高温での焼成工程が必要ないの
で、プラスチックのような焼成できない基体に対しても
透明導電膜を形成することができる。従って、透明導電
膜の形成方法として、最も安価かつ簡便で、適用範囲の
広い方法である。
【0009】この透明導電性塗料に用いる透明導電性微
粉末としては、Snを含有する酸化インジウム、Sbを含有
する酸化錫、ならびにAlその他の金属を含有する酸化亜
鉛等の導電性材料の微粉末があり、粒径は一般に0.2 μ
m以下、特に0.1 μm以下である。
【0010】バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリ
カーボネート、ポリエステルなどの有機ポリマーまたは
重合により有機ポリマーを形成しうる重合性の有機モノ
マーもしくはオリゴマー、ならびにテトラアルコキシシ
ランの加水分解・縮合により生成するシリカ (シロキサ
ン系ポリマー) などの、有機および無機のポリマー系バ
インダーが一般に使用される。なお、本明細書において
は、「ポリマー系バインダー」とは、無機および有機
ポリマーと、重合によりこのようなポリマーを生成す
る重合性モノマーおよびオリゴマー、の両者を包含する
意味である。即ち、ポリマーに限らず、モノマーやオリ
ゴマーもポリマー系バインダーに含める。なお、ポリマ
ー系バインダーを、単にバインダーということもある。
【0011】また、導電性微粉末とバインダーとの密着
性を改善するために、適当なカップリング剤 (例、ビニ
ルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリ
メトキシシラン、γ−メタアクロキシプロピルトリメト
キシシランなどのシランカップリング剤) を塗料中に少
量配合することも知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような透
明導電性塗料から形成された透明導電膜は、絶縁性のマ
トリックス (バインダー) 中に導電性微粉末が分散した
構造をとるため、導電性が低く、帯電防止用には使用で
きても、電磁波シールドや透明電極に要求されるレベル
まで低抵抗化することは困難であった。
【0013】ごく最近になって、電磁波シールド性を備
えた透明導電膜を形成できる透明導電性塗料がいくつか
提案された。例えば、特開平5−290634号公報には、Sb
を含有する酸化錫 (ATO) 微粉末と界面活性剤との混
合物を含むアルコール分散液を基体に塗布し、乾燥して
高屈折率の透明導電膜を形成した後、その上にアルコキ
シシラン溶液を塗布し、焼付けて低屈折率膜を形成して
得た、2層型の透明導電膜が開示されている。この透明
導電膜は実用上十分な電磁波遮蔽性を示すと説明されて
いるが、実施例で達成された表面抵抗は107 Ω/□台で
あり、不十分である。
【0014】特開平6−234552号には、第1層がSnを含
有する酸化インジウム (ITO) の超微粒子が分散した
シリケート膜、第2層 (オーバーコート) がITOを含
有しないシリケート膜という2層構造の電界シールド用
透明導電膜が開示されている。第1層が、超微粒子のI
TOを含有し、かつインク型の [即ち、バインダーであ
るシリケート (=テトラアルコキシシラン) の割合が低
い] 塗料から形成するため、第1層単独では表面抵抗で
103〜104 Ω/□台の低抵抗化が実現できる。しかし、
第1層のみでは劣化し易く、硬度も不足するため、第2
層が必須であり、第2層を形成すると、表面抵抗は7×
104 〜107 Ω/□まで低下する。
【0015】これらはいずれも2層型の透明導電膜であ
り、上層が絶縁性であるため、2層全体としての導電性
が低下し、電磁波シールド用に十分な導電性を必ずしも
得ることができない。本発明の目的は、電磁波シールド
用に要求されるレベルの高い導電性を有し、ヘーズが小
さく、基体への密着性および膜強度が高い透明導電膜の
形成方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく検討を重ねた結果、溶媒、導電性微粉末、
およびバインダーからなる従来型の透明導電性塗料で
は、導電性の改善に限界があり、目的とするレベルまで
低抵抗化した透明導電膜を得ることは困難であるとの結
論に達した。
【0017】なぜなら、透明導電性塗料では、ヘーズの
小さい塗膜を得るために、塗料中の導電性微粉末を一次
粒子に近い状態にまで分散させる必要がある。しかし、
バインダーが共存する従来型の塗料では、導電性微粉末
をこのように分散させると、各粉末粒子の表面にバイン
ダー成分が吸着し、粒子を被覆するため、絶縁性のバイ
ンダーからなる被覆層が形成される。その結果、導電性
微粉末の粒子間の直接接触が被覆層によって阻止され、
粒子の直接接触を通じて起こる電子移動が阻害され、導
電性が必然的に低下することになる。基体との密着性を
高めるには十分な量のバインダーが必要であるので、密
着性と低ヘーズを確保しながら、透明導電膜の導電性を
高める (低抵抗化する) ことは困難である。
【0018】そこで、本発明者等は、ポリマー系バイン
ダーを使用しない透明導電膜の形成方法について探究
し、ある種の非ポリマー系の有機化合物 (例、2−アル
コキシアルコール、β−ジケトン、アルキルアセテー
ト) が結合力を発揮することを見出し、この有機化合物
を膜形成剤として使用した透明導電膜形成用組成物を先
に提案した。具体的には、この透明導電膜形成用組成物
は、導電性微粉末、溶媒、および上記の非ポリマー系膜
形成剤を含有し、さらには任意成分として低抵抗化剤と
低ヘーズ化剤の一方または両方を添加した、ポリマー系
バインダーを含有しない組成物である。
【0019】この組成物を基体に塗布し、塗膜を焼付け
ると、ヘーズが1%以下で、表面抵抗が 101〜105 Ω/
□の範囲内という、低ヘーズかつ低抵抗の透明導電膜を
得ることができる。この低いヘーズ値は、上記の非ポリ
マー系膜形成剤でも、導電性微粉末を一次粒子に近い状
態に十分に分散できることを意味している。一方、上記
の低い抵抗値は、分散した導電性微粉末の各粒子がバイ
ンダーで被覆されていないため、塗膜内で粒子同士が直
接接触していることを意味している。しかし、バインダ
ーの不存在は、一方で、粉末の基体との密着性や粉末相
互間の密着性 (膜強度) の低下を生じ、膜の耐擦傷性が
不十分になるという問題点があることが判明した。
【0020】そこでさらに研究を続けた結果、上記組成
物から形成された塗膜は、バインダーを含有しないた
め、導電性微粉末の粒子間に空隙があり、この空隙に浸
透するようにポリマー系バインダーを塗膜に含浸させる
と、この塗膜の低ヘーズ、低抵抗という利点を著しく損
なわずに、粉末相互間および粉末と基体との密着性を高
めることができ、低ヘーズ、低抵抗、かつ高密着性の塗
膜を形成できることを見出し、本発明に到達した。
【0021】本発明によれば、導電性微粉末、溶媒、お
よび非ポリマー系膜形成剤を含有し、ポリマー系バイン
ダーを含まない透明導電膜形成用組成物を基体に塗布す
る第1工程、および第1工程で得られた塗膜に、ポリマ
ー系バインダーを含有する粘度25 cps以下の液体を含浸
させ、塗膜を乾燥または硬化させる第2工程、からなる
ことを特徴とする、透明導電膜の形成方法が提供され
る。
【0022】但し、前述した通り、ポリマー系バインダ
ー (単にバインダーともいう) とは、有機系および無機
系のポリマーのみならず、このようなポリマーを重合
(架橋を含む)により生成する重合性のモノマーおよび
オリゴマーをも包含する意味である。また、非ポリマー
系膜形成剤とは、この膜形成剤が重合体ではなく、また
重合または架橋反応性を有していないことを意味する。
【0023】好適態様においては、下記〜の1また
は2以上の構成を採用できる。 導電性微粉末が、Snを含有する酸化インジウム (以
下、ITOと略記) 、Sbを含有する酸化錫 (以下、AT
Oと略記) 、またはAl、Co、Fe、In、SnおよびTiから選
ばれた1種もしくは2種以上を含有する酸化亜鉛からな
る導電性材料の微粉末からなる。 非ポリマー系膜形成剤が2−アルコキシエタノール、
β−ジケトン、およびアルキルアセテートよりなる群か
ら選ばれ、透明導電膜形成用組成物のpHが 2.0〜7.0
の範囲内である。
【0024】透明導電膜形成用組成物が、低ヘーズ化
・膜補強剤として、アセトアルコキシ基を含有するアル
ミネート系カップリング剤またはジアルキルパイロホス
フェート基もしくはジアルキルホスファイト基を含有す
るチタネート系カップリング剤をさらに含有する。 透明導電膜形成用組成物が、低抵抗化剤として、Co、
Fe、In、Ni、Pb、Sn、Ti、およびZnの鉱酸塩または有機
酸塩をさらに含有する。
【0025】第2工程で使用するポリマー系バインダ
ーが、テトラアルコキシシランの加水分解・縮合生成物
であるか、或いはSi、Ti、Zr、Al、Sn、Fe、Co、Ni、C
u、Zn、Pb、Ag、In、Sb、Pt、およびAuの鉱酸塩、有機
酸塩、アルコキシド、および錯体、ならびにそれらの部
分加水分解物から選ばれる。
【0026】本発明の方法により、表面抵抗が105 Ω/
□台以下、好ましくは 101〜104 Ω/□台、ヘーズが1
%以下、好ましくは0.5 %以下の透明導電膜を確実に形
成することができる。
【0027】以下、本発明について、各構成要素ごとに
詳しく説明する。
【0028】第1工程の使用材料 第1工程では、導電性微粉末、溶媒、および非ポリマー
系膜形成剤を含有し、ポリマー系バインダーを含まない
透明導電膜形成用組成物を使用して基体を塗布する。
【0029】[導電性微粉末]導電性微粉末の種類は特に
制限されず、従来より透明導電性塗料に用いられてきた
ものを使用すればよい。このような導電性微粉末の例に
は、ITO微粉末、ATO微粉末、ならびにAl、Co、F
e、In、SnおよびTiから選ばれた1種もしくは2種以上
の金属を含有する酸化亜鉛微粉末がある。各導電性微粉
末中に含有させる他金属 (ドープ金属) の含有量は、金
属元素の合計量に対して、ITO微粉末(ドープ金属はS
n) では1〜15原子%、ATO微粉末 (ドープ金属はSb)
では1〜20原子%、酸化亜鉛微粉末では1〜25原子%
の範囲が好ましい。
【0030】導電性微粉末は、形成された膜の透明性を
阻害しないように、平均一次粒子径(以下、平均粒径と
いう) が0.5 μm以下、より好ましくは0.2 μm以下、
特に0.1 μm以下のものが好ましい。特に好ましい導電
性微粉末は、平均粒径が0.2μm以下のITO微粉末で
ある。
【0031】[非ポリマー系膜形成剤]一般に、バインダ
ーを使用せずに粉末を塗料化しても、粉末間および粉末
と基体間の付着力がほとんどないため、膜を形成するこ
とはできない。しかし、本発明者等は、或る種の非ポリ
マー系有機化合物が、導電性微粉末間およびこれと基体
間を結合させ、膜形成剤として有効に機能することを見
出した。
【0032】現在までに膜形成剤として機能することが
見出されている非ポリマー系有機化合物は、2−アルコ
キシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテ
ート(即ち、酢酸アルキルエステル) である。しかし、
本発明の方法で使用する膜形成剤はこれらに限定される
ものではなく、導電性微粉末を結合することのできるも
のであれば、あらゆる非ポリマー系有機化合物を膜形成
剤として使用することができる。
【0033】本発明で膜形成剤として使用できる化合物
の具体例を次に例示する。2−アルコキシエタノールと
しては、2-エトキシエタノール、 2-(メトキシエトキ
シ) エタノール、2-(n, iso-) プロポキシエタノール、
2-(n, iso-, tert-)ブトキシエタノール、2-ペンチルオ
キシエタノール、2-ヘキシルオキシエタノール等が挙げ
られる。β−ジケトンの例には、2,4-ペンタンジオン、
3-メチル-2,4-ペンタンジオン、3-イソプロピル-2,4-ペ
ンタンジオン、2,2-ジメチル-3,5-ヘキサンジオン等が
ある。アルキルアセテートの例には、メチルアセテー
ト、エチルアセテート、(n, iso-) プロピルアセテー
ト、(n, iso-, tert-)ブチルアセテート、ペンチルアセ
テート、ヘキシルアセテート等がある。
【0034】[低ヘーズ化・膜補強剤]第1工程で使用す
る透明導電膜形成用組成物は、任意成分として、アセト
アルコキシ基を含有するアルミネート系カップリング
剤、ならびにジアルキルパイロホスフェート基もしくは
ジアルキルホスファイト基を含有するチタネート系カッ
プリング剤から選ばれた低ヘーズ化・膜補強剤をさらに
含有してもよい。この種のカップリング剤は、膜のヘー
ズと膜強度を改善するので、特に低ヘーズ化および/ま
たは膜強度の増大を図りたい場合に、少量を添加するこ
とができる。
【0035】アセトアルコキシ基を含有するアルミネー
ト系カップリング剤の例としては、下記(1) 式で示され
る化合物がある。また、ジアルキルパイロホスフェート
基を有するチタネート系カップリング剤の例には、下記
(2)〜(4) 式で示される化合物があり、ジアルキルホス
ファイト基を有するチタネート系カップリング剤の例に
は、下記 (5)〜(7) 式で示される化合物がある。
【0036】
【化1】
【0037】[低抵抗化剤]第1工程で使用する透明導電
膜形成用組成物には、別の任意成分として、Co、Fe、I
n、Ni、Pb、Sn、Ti、およびZnの鉱酸塩および有機酸塩
から選ばれた金属塩を低抵抗化剤として添加することが
できる。鉱酸塩の例は、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などで
あり、有機酸塩の例は、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸
塩、オクチル酸塩、アセチル酢酸塩、ナフテン酸塩、安
息香酸塩などである。これらはイオン性化合物であり、
膜の導電性向上に寄与する。
【0038】[溶媒]溶媒としては、上記導電性微粉末以
外の成分を溶解することのできる (あるいは、液体成分
については、これと相溶性を有する) 任意の有機溶媒を
使用できる。但し、本発明において膜形成剤として使用
する成分は、有機溶媒から除外される。
【0039】使用可能な有機溶媒の例には、メタノー
ル、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの
アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチル
イソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、4-
ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン類、トル
エン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水
素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセト
アミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのス
ルホキシド類などが挙げられ、使用する成分に応じて、
それらを溶解するよう1種もしくは2種以上の溶媒を選
択する。
【0040】[透明導電膜形成用組成物の調製]第1工程
で用いる透明導電膜形成組成物は、導電性微粉末がそれ
以外の成分からなる溶液中に分散した分散液を生ずるよ
うに、上記各成分を混合することにより調製する。各成
分はいずれも1種または2種以上を使用することができ
る。得られた組成物は、pHが 2.0〜7.0 の範囲内であ
ることが好ましい。各成分の配合量は、導電性微粉末に
対する重量%で、膜形成剤の2−アルコキシエタノール
が10〜900 %、β−ジケトンが 0.2〜500 %、アルキル
アセテートが 0.2〜500%、低ヘーズ化・膜補強剤が5
%以下、低抵抗化剤が0.2 〜15%である。組成物のpH
および各成分の添加量がこの範囲外であると、目的とす
る低ヘーズおよび低抵抗化を確保できないことがある。
【0041】好ましくは、組成物のpHが 6.5〜3.0 の
範囲内であり、各成分の添加量は、2−アルコキシエタ
ノールが15〜200 %、β−ジケトンが0.4 〜100 %、ア
ルキルアセテートが0.4 〜100 %、低ヘーズ化・膜補強
剤が3.5 %以下、低抵抗化剤が 0.5〜10%である。溶媒
の量は、塗布に適した粘度の組成物が得られるような量
であればよく、特に制限されない。
【0042】本発明で用いる透明導電膜形成用組成物に
は、所望により、上記以外の添加成分 (ただし、バイン
ダーを除く) をさらに添加することもできる。このよう
な添加成分の例には、界面活性剤 (カチオン系、アニオ
ン系、ノニオン系) 、pH調整剤 (有機酸または無機
酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクチ
ル酸、塩酸、硝酸、過塩素酸等) がある。
【0043】第2工程の使用材料 [ポリマー系バインダー]第2工程では、ポリマー系バイ
ンダーを含有する粘度25 cps以下の液体を含浸に用い
る。ポリマー系バインダーとしては、従来より透明導電
性塗料にバインダーとして用いられてきた各種の有機お
よび無機ポリマーならびに重合性の反応型モノマーおよ
びオリゴマーから選ばれた1種もしくは2種以上の材料
を使用することができる。後述するように、バインダー
の種類によって膜特性 (電気、光学、機械特性) が変化
するので、用途に応じて適当なバインダーの種類を選択
する。例えば、有機ポリマー、特に熱可塑性ポリマー
は、可撓性の高い膜を生ずる。一方、熱または紫外線硬
化性の有機ポリマー、ならびに無機ポリマーは、硬い膜
を生成する。
【0044】バインダーとして用いる有機ポリマーは、
炭素骨格に結合した極性官能基を有するものが好まし
い。極性官能基としては、カルボキシル基、エステル
基、ケトン基、ニトリル基、アミノ基、燐酸基、スルホ
ニル基、スルホン酸基、ポリアルキレングリコール基、
およびアルコール性水酸基などが例示される。バインダ
ーとして有用なポリマーの例には、アクリル樹脂、アル
キッド樹脂、ポリウレタン、アクリルウレタン、ポリカ
ーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアセタ
ール、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビ
ニル、およびセルロースなどがある。また、無機ポリマ
ーの例には、テトラアルコキシシラン (=アルキルシリ
ケート) の加水分解・縮合により生成するシリカゾル
(=シロキサン系ポリマー) がある。
【0045】重合性の有機モノマーもしくはオリゴマー
の例には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メ
トキシポリエチレングリコールメタクリレート、グリシ
ジルアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸アク
リレート、ウレタンアクリレート、ポリエチレングリコ
ールメタクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポ
リエステルアクリレートなどで代表されるアクリレート
およびメタクリレート型のモノマーおよびオリゴマー;
モノ(2−メタクロイルオキシエチル) アシッドホスフェ
ート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アクリ
ロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ビニルト
ルエンなどの他のビニルモノマー;ビスフェノールAジ
グリシジルエーテルなどのエポキシド化合物、などがあ
る。
【0046】重合性の無機モノマーの例は、Si、Ti、Z
r、Al、Sn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pb、Ag、In、Sb、P
t、Auなどの金属の鉱酸塩、有機酸塩、アルコキシド、
および錯体 (キレート) である。これらは加水分解また
は熱分解を経て重合し、最終的に無機物 (金属酸化物、
水酸化物、炭化物、金属など) になるので、本発明では
無機モノマーとして扱う。これらの無機モノマーは、そ
の部分加水分解物の状態で使用することもできる。次に
各金属化合物の具体例を例示するが、これらに限定され
るものではない。
【0047】使用可能なケイ素化合物としては、テトラ
エトキシシラン、メチルエトキシシラン、ジメチルジメ
トキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアル
コキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジク
ロロシラン、フェニルトリクロロシランなどのクロロシ
ラン;さらには tert-ブチルジメチルクロロシラン、N,
N-ビス (トリメチルシリル) ウレア、N,O-ビス (トリメ
チルシリル) アセトアミド、ヘキサメチルジシラザン、
γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプ
トプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルト
リメトキシシラン、γ、グリシドキシプロピルトリメト
キシシラン、γ−クリシドキシメチルジエトキシシラ
ン、γ− (メタクリロキシプロピル) トリメトキシシラ
ン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシ
ラン、N−β (アミノエチル) γ−アミノプロピルトリ
メトキシシラン、N−β (アミノエチル) γ−アミノプ
ロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシク
ロヘキシル) エチルトリメトキシシラン、ビニルトリク
ロルシラン、ビニルトリス (βメトキシエトキシ) シラ
ン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシ
ランなどの他の有機ケイ素化合物がある。
【0048】チタン化合物しては、チタニウムテトライ
ソプロポキシド、テトラキス(2−エチルヘキソキシ) チ
タン、テトラステアロキシチタン、ジイソプロポキシ・
ビス(アセチルアセトナト) チタン、ジ−n−ブトキシ
・ビス (トリエタノールアミナト) チタン、ジヒドロキ
シ・ビス (ラクタト) チタン、チタン−i−プロポキシ
オクチレングリコレート、チタニウムステアレートなど
が使用できる。
【0049】ジルコニウム化合物の例には、ジルコニウ
ムテトライソブトキシドなどのアルコキシドがある。ア
ルミニウム化合物の例には、アルミニウムイソプロポキ
シド、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレー
トなどがある。錫化合物の例は、ジ−n−ブトキシ錫、
テトライソアミロキシ錫などである。
【0050】その他の金属 (Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pb、
Ag、In、Sb、Pt、Au) についても、硝酸塩 (例、硝酸イ
ンジウム) 、塩化物 (例、塩化亜鉛) などの鉱酸塩、カ
ルボン酸塩 (例、オクチル酸インジウム) などの有機酸
塩、さらにはアセチルアセトネート、エチレンジアミン
などのキレート化剤との錯体などの形態で、無機モノマ
ーとして使用できる。
【0051】好ましいポリマー系バインダーは無機系の
ものである。即ち、無機ポリマーであるテトラアルコキ
シシランの加水分解・縮合生成物か、或いは無機モノマ
ーであるSi、Ti、Zr、Al、Sn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、P
b、Ag、In、Sb、Pt、およびAuの鉱酸塩、有機酸塩、ア
ルコキシド、もしくは錯体、またはそれらの部分加水分
解物が好ましい。中でも、無機モノマー、特にIn、Zn、
Co、Sb、Ag、Pbの各金属の化合物をポリマー系バインダ
ーとして使用した時に、非常に低抵抗の透明導電膜を形
成することができる。
【0052】[含浸用液体]上記のポリマー系バインダー
(ポリマー、モノマーまたはオリゴマー) の1種または
2種以上を必要により有機溶媒で溶解または希釈して、
粘度が25 cps以下、好ましくは10 cps以下の液体を調製
し、第1工程で形成された塗膜の含浸に使用する。この
液体の粘度が25 cpsより高いと、塗膜含浸時に、基体に
達するように塗膜内部に十分に液体が浸透せず、目的と
する密着性および膜強度の向上効果を得ることができな
い。また、液体が高粘度であると、過剰の液体が第1工
程で形成された塗膜の上に堆積して、導電性微粉末を含
有しない絶縁性の層を形成するので、導電性が著しく低
下する。
【0053】溶解または希釈に用いる有機溶媒は特に制
限されず、第1工程に関して例示したような各種の有機
溶媒のほかに、第1工程で膜形成剤として使用する液状
有機化合物、および水も溶媒として使用可能である。
【0054】この含浸用液体には、必要により、硬化触
媒 (熱硬化の場合) 、光重合開始剤(紫外線硬化の場合)
、架橋剤、加水分解触媒 (例、酸) 、界面活性剤、p
H調整剤などを添加することができる。
【0055】透明導電膜の形成方法 本発明の方法によれば、上記のポリマー系バインダーを
含まない透明導電膜形成用組成物を基体に塗布する第1
工程と、この工程で得られた塗膜にポリマー系バインダ
ーを含有する粘度25 cps以下の液体を含浸させ、塗膜を
乾燥または硬化させる第2工程を実施することにより、
基体上に透明導電膜を形成する。
【0056】第1工程における透明導電膜形成用組成物
の塗布は、スプレー、浸漬、バーコート、ロールコー
ト、フローコート、スピンコートなどの一般的に行われ
る任意の塗布法を採用して行うことができる。この塗布
により形成する塗膜の厚みは、乾燥膜厚で好ましくは0.
02〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5 μmである。膜
厚が1μm以上になると、第2工程でバインダー含有液
体が基体まで浸透しにくくなり、密着性が不十分となる
ことがある。
【0057】塗布後、必要により放置あるいは加熱・焼
付けにより溶媒を除去し、塗膜を乾燥させる。それによ
り、導電性微粉末が膜形成剤で結合した塗膜が得られ
る。焼付けを行う場合、加熱温度は80〜500 ℃の範囲内
が好ましく、雰囲気は特に制限されず、大気中、不活性
雰囲気、還元性雰囲気のいずれでもよい。また、塗布後
の焼付けに代えて、または焼付けに併用して、塗膜に紫
外線を照射してもよい。紫外線照射により、塗膜中の導
電性微粉末間の接触界面に見られる残留物が分解され、
膜特性が一層向上する。
【0058】第2工程におけるポリマー系バインダー含
有液体の含浸も、やはり上記のような塗布法によって行
うことができる。含浸用の液体が低粘度で、膜厚が薄い
ので、スピンコートのような接触時間の短い塗布法で含
浸を行っても、含浸用液体を基体に達するように塗膜中
に浸透させることができる。含浸用液体は、塗膜全体が
含浸されるように過剰に使用する。含浸用液体が低粘度
であるため、含浸されなかった余分な液体は塗膜から容
易に除去され、塗膜上部に残留する含浸用液体は、あっ
てもごく薄膜である。従って、塗布作業を2回行うが、
最終的に得られる塗膜は実質的に1層である。
【0059】第2工程における塗膜の乾燥または硬化
は、使用したポリマー系バインダーの種類に応じて、放
置 (風乾) 、焼付け、紫外線照射のいずれか、またはこ
れらの併用によって行うことができる。焼付け条件 (温
度および雰囲気) はバインダーの種類に応じて適当に選
択する。一般に焼付け温度は700 ℃以下、好ましくは80
〜500 ℃である。基体がプラスチックのように耐熱性が
比較的低い材料である場合には、必要な焼付け温度を考
慮して、第2工程で用いるバインダーの種類を選択する
必要がある。焼付け雰囲気は、大気、不活性雰囲気、還
元性雰囲気のいずれでもよい。
【0060】本発明の方法により得られる透明導電膜
は、一般に1%未満、好ましくは0.5%未満のヘーズ、
105Ω/□台以下、好ましくは 101〜104 Ω/□台の表
面抵抗を有し、導電性微粉末間およびこの微粉末と基体
との密着性が向上したため、膜の密着性および強度が高
く、耐擦傷性に優れている。なお、透明導電膜の導電性
は焼付け雰囲気によって変動し、雰囲気が不活性または
還元性雰囲気、特に水素または一酸化炭素を含有する還
元性雰囲気であると、導電性が一層向上する。
【0061】本発明の方法で形成された透明導電膜は、
基体との密着性および膜強度が十分に高いので、オーバ
ーコートを施さずにそのままで各種用途に使用できる
が、所望により、オーバーコートでさらに被覆してもよ
い。ただし、オーバーコートが絶縁性の膜である場合に
は、導電性の低下を防ぐために、オーバーコートは可及
的に薄膜とすることが好ましい。適当なオーバーコート
は、アルコキシシランなどの加水分解により形成したシ
リカ膜である。
【0062】
【作用】従来の透明導電性塗料では、前述したように、
導電性微粉末の分散により各粉末粒子が絶縁体であるバ
インダーで被覆される結果、導電性が低下し、低ヘーズ
と密着性を確保したまま低抵抗化することが困難であっ
た。
【0063】これに対し、本発明の方法によれば、第1
工程で導電性微粉末を非ポリマー系膜形成剤を用いて塗
料化し、基体に塗布する。こうして形成された塗膜は、
バインダーが存在しないため、絶縁体が介在せずに導電
性微粉末の各粒子が直接接触した塗膜構造を有してい
る。膜形成剤が導電性微粉末の表面に多少は吸着される
にしても、その吸着は強くなく、粉末粒子の直接接触を
妨げるほどではない。そして、第2工程で導電性微粉末
間の隙間にバインダーが含浸される。このバインダーを
非常に低粘度の液体状で使用するため、バインダーは容
易に基体に到達し、導電性微粉末を基体と一体化して、
密着性のある膜が得られる。バインダーが硬化すると、
そのバインダーの体積収縮 (内部応力) により、導電性
微粉末間の接触圧力が一層高くなり、理想的な電子移動
が発現するため、優れた導電性を発揮することができる
ものと推定される。
【0064】[用途例]本発明の方法で形成された透明導
電膜は、OA機器のディスプレー (CRT、液晶ディス
プレーなど) やTVブラウン管の画像表面の帯電防止お
よび電磁波シールド用に好適である。この場合、第1工
程で使用する透明導電膜形成用組成物は、必須成分であ
る導電性微粉末、溶媒、および非ポリマー系膜形成剤に
加えて、低ヘーズ化・膜補強剤を含有するものが好まし
い。この組成物をスプレー、スピンコート、浸漬などの
方法で塗布した後、第2工程において、例えば、テトラ
エトキシシランを加水分解・縮合させて得た、10 cps以
下の低粘度のシリカ (シロキサン系ポリマー) 含有アル
コール溶液を同様の方法で塗布して、この液体を塗膜中
に含浸させ、次いで80〜250 ℃程度の比較的低温で焼付
けを行うと、ヘーズが0.5 %以下、表面抵抗が103 Ω/
□台の密着性に優れた透明導電膜がディスプレーまたは
ブラウン管表面に形成される。焼付けは大気中で十分で
あるが、還元性雰囲気で焼付けを行うと、0.1 μm程度
の薄膜でも安定して103 Ω/□台の低抵抗化を実現する
ことができる。
【0065】また、この透明導電膜形成用組成物を基体
に塗布した後、In、Zn、Co、Sb、Ag、Pbなどの金属化合
物 (無機モノマー) の低粘度溶液を含浸させ、300 ℃以
上の高温で焼付けを行うと、101 Ω/□台の非常に低抵
抗で、かつ密着性に優れた透明導電膜が得られる。
【0066】本発明の方法で形成された透明導電膜は、
タッチパネルや各種ディスプレイ装置の透明電極、透明
面発熱体としても使用できる。可撓性が要求されるよう
な用途 (例、タッチパネル) では、含浸に用いるバイン
ダーとして有機バインダーを使用することが好ましい。
【0067】本発明の方法で形成された透明導電膜は、
その導電性を生かした用途以外に、導電性微粉末が有す
る他の特性を生かした用途にも使用できる。例えば、使
用する導電性微粉末が近赤外線をカットオフする機能を
有するITO微粉末または近紫外線をカットオフする機
能を有する酸化亜鉛系微粉末である場合には、それぞれ
可視光に対して低ヘーズで高透明性を保持し、密着性に
も優れた近赤外線カットオフ膜または近赤外線カットオ
フ膜として有用である。この場合も、従来の塗料から形
成した膜に比べて、カットオフ効果の高い透明膜が得ら
れる。
【0068】
【実施例】
[透明導電膜形成用組成物の調製]表1に組成をまとめて
示すように、下記の成分 (表1には< >内の番号または
記号で記載) を使用して、透明導電膜形成組成物を調製
した。これらの成分を表1に示す配合比となるように、
合計量を60gとして100 ccのガラス瓶中に入れ、直径0.
3 mmのジルコニアビーズ (ミクロハイカ、昭和シェル石
油製) 100 gを用いてペイントシェーカーで6時間分散
することにより、各透明導電膜形成用組成物を得た。
【0069】溶媒 (1) イソプロパノール <IPA> (2) イソプロパノール/エタノール/N,N-ジメチルホル
ムアミドの混合溶媒(重量比10:10:1) <混合1> (3) イソホロン/キシレンの混合溶媒 (重量比4:1) <混
合2> (4) トルエン <T>導電性微粉末 (いずれも平均粒径0.02μm) (1) Sn:5原子%を含有する酸化インジウム微粉末 <IT
O> (2) Sb:10原子%を含有する酸化錫微粉末 <ATO> (3) Al:5原子%を含有する酸化亜鉛微粉末 <AZO> (4) Fe:2原子%とAl:1原子%とを含有する酸化亜鉛
微粉末 <F-AZO> (5) In:4原子%を含有する酸化亜鉛微粉末 <IZO> (6) Sn:3原子%を含有する酸化亜鉛微粉末 <TZO>非ポリマー系膜形成剤 (1) 2-エトキシエタノール/2,4-ペンタンジオン混合液
(重量比6:1) <a> (2) 2-イソプロポキシエタノール/2,4-ペンタンジオン
/エチルアセテート混合液 (重量比6:1:2) <b> (3) 2,4-ペンタンジオン <c>低ヘーズ化・膜補強剤 前記の式 (1)〜(7) で示されるアルミニウム系またはチ
タネート系カップリング剤 <(1)〜(7)> [バインダー含有含浸用液体の調製]下記のポリマー系バ
インダー成分と上記の溶媒 (表1にはいずれも< >内の
番号または記号で記載) の1種づつを表1に示す配合比
で混合して、バインダーを含有する含浸用液体を調製し
た。この液体のE型粘度計 (形式ELD :トキメック製)
により測定した室温での粘度を表1に示す。
【0070】ポリマー型バインダー (1) テトラエトキシシランの加水分解・縮合により得た
シロキサン系ポリマー(SiO2換算固形分20重量%) <P-1> 調製方法:500 mLの4ツ口フラスコに水冷コンデンサ
ー、攪拌プロペラ、およびマントルヒーターを取付け、
テトラエトキシシラン (コルコート製)385 gとエタノ
ール/イソプロパノール混合溶媒 (重量比2:1) 105
gとを加え、180 rpm での攪拌下、濃塩酸1gを含有す
るイオン交換水 650gを滴下し、60℃で1時間反応させ
た。
【0071】(2) アクリル樹脂溶液 (固形分38重量%:
LR980 、三菱レーヨン製) <P-2>モノマー型バインダー (1) テトラエトキシシラン <M-1> (2) テトラエトキシシラン/アルミニウムイソプロポキ
シドとジルコニウムイソブトキシドの混合物 (重量比1
0:2:1) <M-2> (3) モノ (2-メタクリロイルオキシエチル) アシッドホ
スフェート/2-エチルヘキシルメタアクリレート/グリ
セリンジグリシジルエーテル/メチルエチルケトンパー
オキサイドの混合物 (重量比4:20:6:1) <M-3> (4) モノ (2-メタクリロイルオキシエチル) アシッドホ
スフェート/2-エチルヘキシルメタアクリレート/ベン
ジルジメチルケタールの混合物(重量比8:40:1) <M-4> (5) 酢酸鉛 <M-5> (6) 硝酸インジウム <M-6> (7) オクチル酸亜鉛 <M-7> (8) ナフテン酸コバルト <M-8> [従来の透明導電塗料] (1) <透明導電性塗料A> 導電性微粉末として前記 <
ITO>7g、溶媒として前記 <混合2> 49.75g、およびバ
インダーとして前記 <P-2> 3.25 g (合計量60g) を10
0 ccのガラス瓶中に入れ、直径0.3 mmのジルコニアビー
ズ100 gを用いてペイントシェーカーで4時間分散させ
た。
【0072】(2) <透明導電塗料B> 導電性微粉末と
して前記 <ATO>7g、溶媒として前記<IPA> 49.75g、
およびバインダーとして前記 <P-1>5g (合計量48g)
を100 ccのガラス瓶中に入れ、直径0.3 mmのジルコニア
ビーズ100 gを用いてペイントシェーカーで6時間分散
した。
【0073】[透明導電膜の作製]ガラス板 (長さ75mm×
幅55mm×厚さ2mm、可視光透過率91%、ヘーズ0.0 %)
に、透明導電膜形成用組成物および含浸用バインダー
含有液体を、下記のいずれかの成膜方法を使用して室
温で順に塗布した後、下記のいずれかの硬化条件で焼付
けまたは紫外線照射により膜を硬化させ、透明導電膜を
形成した。
【0074】成膜条件 (1) をスピンコート/をスピンコート/硬化 <成膜
1> (2) をスピンコート/10% H2+N2の還元性雰囲気中 2
00℃、5分間の焼付け/をスピンコート/硬化 <成膜
2> (3) を浸漬塗布/を浸漬塗布/硬化 <成膜3> (4) をスピンコート/硬化 <成膜4> (5) をバーコート/硬化 <成膜5> なお、(2) 以外は、の塗布後に塗膜の乾燥のために放
置 (例、1〜3分間)してから、を塗布した。
【0075】硬化条件 (1) 大気中 100℃、30分の焼付け <硬化1> (2) 大気中 160℃、30分の焼付け <硬化2> (3) 大気中 350℃、30分の焼付け <硬化3> (4) 大気中 550℃、30分の焼付け <硬化4> (5) 10% H2+N2の還元性ガス雰囲気中160 ℃、30分の焼
付け <硬化5> (6) 不活性(N2)ガス雰囲気中250 ℃、30分の焼付け <硬
化6> (7) 不活性(N2)ガス雰囲気中650 ℃、30分の焼付け <硬
化7> (8) 大気中室温で高圧水銀灯にて 600 mJ/cm2 の紫外線
照射 <硬化8> (9) 5% H2 + N2の還元性ガス雰囲気中450 ℃、30分の焼
付け <硬化9> 得られた各透明導電膜の膜厚をSEM (断面) により、
表面抵抗値を四探針法(ロレスタAP:三菱油化製) によ
り、ヘーズをヘーズメーター (HGM-3D:スガ試験機製)
により、密着性を基盤目クロスカット試験 (1mm×1m
m、テープ剥離後に残留した枡目 (総数100)の数で示す)
により測定した。測定結果も表1に併せて示す。
【0076】なお、参考のために、図1(イ) に最初の透
明導電膜形成用組成物の塗布後の乾燥塗膜のSEM写真
を、図1(ロ) に2回目のバインダー液塗布後の塗膜のS
EM写真をそれぞれ示す。図1(イ) から、最初の塗布後
に、導電性微粉末が高密度に充填され、微粉末どうしが
互いに直接接触した塗膜が形成されることがわかる。ま
た、図1(ロ) から、2回目の塗布によって、最初の塗布
で形成された塗膜の空隙中にバインダーが浸透し、基板
にまで到達していることがわかる。しかも、表面にバイ
ンダーのみからなる層が生成せず、実質的に1層の透明
導電膜になっている。
【0077】
【表1】
【0078】
【発明の効果】本発明の方法により、バインダーを含有
する従来の透明導電性塗料の塗布・硬化によって得られ
る膜に比べて、低ヘーズかつ低抵抗で、しかも密着性に
も優れた透明導電膜を形成することができる。具体的に
は、ヘーズが1%以下、好ましくは0.5 %以下、表面抵
抗が 105Ω/□台以下、好ましくは 101〜104 Ω/□
台、密着性 (碁盤目試験結果) が50/100以上、好ましく
は100/100 の透明導電膜が形成された。また、低ヘーズ
化・膜補強剤の配合の有無や硬化条件の調整により、同
じ基本組成の組成物を利用して特に表面抵抗値を大きく
変化させることができ、このような調整により、用途に
応じた要求特性を満たす透明導電膜を提供できる。
【0079】特に、第1工程で使用する透明導電膜形成
用組成物に低ヘーズ化・膜補強剤を添加し、第2工程で
の含浸に用いるバインダーとしてテトラアルコキシシラ
ンを加水分解縮合して得たシロキサン系ポリマーを用
い、焼付けを比較的低温 (250℃以下) で行うか、或い
はIn、Zn、Co、Sb、Ag、Pbなどの金属の化合物を用いて
高温で焼付けを行うと、 101〜103 Ω/□台の非常に低
抵抗で、OA機器ディスプレイおよびTVブラウン管の
電磁波シールド膜に要求される性能を満たした透明導電
膜を得ることができる。
【0080】本発明によれば、塗布法という簡便かつ効
率的な方法を利用して、従来の塗布法では得ることので
きなかった、ブラウン管等の電磁波シールド用に使用可
能な高性能の透明導電膜を安価に形成することが可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(イ) は、本発明の方法により、ポリマー系
バインダーを含有しない透明導電膜形成用組成物を基板
に塗布した後の乾燥塗膜の走査式電子顕微鏡(SEM)
写真、図1(ロ) は、さらに2回目の塗布によりバインダ
ーを含浸させ、膜を硬化させた後のSEM写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01B 13/00 H01B 1/22 H01B 5/14 C09D 5/24

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性微粉末、溶媒、および非ポリマー
    系膜形成剤を含有し、ポリマー系バインダーを含まない
    透明導電膜形成用組成物を基体に塗布する第1工程、お
    よび第1工程で得られた塗膜に、ポリマー系バインダー
    を含有する粘度25 cps以下の液体を含浸させ、塗膜を乾
    燥または硬化させる第2工程、からなることを特徴とす
    る、透明導電膜の形成方法。 (ただし、ポリマー系バインダーとは、ポリマーならび
    に重合性のモノマーおよびオリゴマーを包含する意味で
    ある。)
  2. 【請求項2】 前記導電性微粉末が、Snを含有する酸化
    インジウム、Sbを含有する酸化錫、ならびにAl、Co、F
    e、In、SnおよびTiから選ばれた1種もしくは2種以上
    を含有する酸化亜鉛、よりなる群から選ばれた1種もし
    くは2種以上の導電性材料の微粉末である、請求項1記
    載の透明導電膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記非ポリマー系膜形成剤が2−アルコ
    キシエタノール、β−ジケトン、およびアルキルアセテ
    ートよりなる群から選ばれ、前記透明導電膜形成用組成
    物のpHが 2.0〜7.0 の範囲内である、請求項1または
    2記載の透明導電膜の形成方法。
  4. 【請求項4】 前記透明導電膜形成用組成物が、アセト
    アルコキシ基を含有するアルミネート系カップリング
    剤、ならびにジアルキルパイロホスフェート基もしくは
    ジアルキルホスファイト基を含有するチタネート系カッ
    プリング剤、よりなる群から選ばれた1種または2種以
    上の化合物を低ヘーズ化・膜補強剤としてさらに含有す
    る、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透明導電
    膜の形成方法。
  5. 【請求項5】 前記透明導電膜形成用組成物が、Co、F
    e、In、Ni、Pb、Sn、Ti、およびZnの鉱酸塩および有機
    酸塩よりなる群から選ばれた1種または2種以上の化合
    物を低抵抗化剤としてをさらに含有する、請求項1ない
    し4のいずれか1項に記透明導電膜の形成方法。
  6. 【請求項6】 前記第2工程で使用するポリマー系バイ
    ンダーが、テトラアルコキシシランの加水分解・縮合生
    成物である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の
    透明導電膜の形成方法。
  7. 【請求項7】 前記第2工程で使用するポリマー系バイ
    ンダーが、Si、Ti、Zr、Al、Sn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、
    Pb、Ag、In、Sb、Pt、およびAuの鉱酸塩、有機酸塩、ア
    ルコキシド、および錯体、ならびにそれらの部分加水分
    解物よりなる群から選ばれる、請求項1ないし5のいず
    れか1項に記載の透明導電膜の形成方法。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれか1項に記載
    の方法により形成された、表面抵抗が105 Ω/□台以
    下、ヘーズが1%以下の透明導電膜。
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