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JP3014364B2 - 量子波干渉層を有した半導体素子 - Google Patents

量子波干渉層を有した半導体素子

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JP3014364B2
JP3014364B2 JP16286898A JP16286898A JP3014364B2 JP 3014364 B2 JP3014364 B2 JP 3014364B2 JP 16286898 A JP16286898 A JP 16286898A JP 16286898 A JP16286898 A JP 16286898A JP 3014364 B2 JP3014364 B2 JP 3014364B2
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band
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規構造の半導体素
子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、pn、pin接合を有したダイオ
ードが知られている。このダイオードの電流電圧特性に
おいては、電圧を上昇させる方向に変化させた時の電流
の増加特性と、電圧を下降させる方向に変化させた時の
電流の減少特性とは、同一特性を示し、特に、ヒステリ
シスを示すものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、量子波
を反射させる機能を有した量子波干渉層とバンドが多重
周期ではない平坦な構造をした中間層とを縦続に接続し
た素子を形成し、電圧電流特性を測定した。この電圧電
流特性は、所定方向に印加電圧を増加して行くと、ある
電圧で電流が急激に増加するステップ増加特性を示し
た。又、この電圧電流特性は、一旦、電流が増加した領
域から、電圧を逆方向に減少させてゆくと、異なる所定
電圧で電流が急激に減少するステップ減少特性を示し
た。即ち、ステップ変化する電圧電流特性において、ス
テップ変化する電圧値が異なるというヒステリシス特性
が見られることが明らかになった。
【0004】本発明は、このヒステリシス特性を利用し
た新規構造の半導体素子を提供することを目的とする。
この構造の半導体素子は、電圧電流特性のステップ変化
にヒステリシスがあることを利用した素子であり、シュ
ミット回路、2値化素子に応用できる。即ち、状態の変
化にチャタリングを示さない素子とすることができる。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、第1
層と第1層よりもバンド幅の広い第2層とを多重周期で
積層した量子波干渉層を有した半導体素子において、第
1層と第層の各層の厚さを、各層を伝導するキャリア
の、各層における量子波の波長の4分の1の奇数倍に設
定した量子波干渉層を、多重周期でないバンドの平坦な
中間層を介在させて複数配設したことを特徴とする。
【0006】請求項2の発明は、量子波の波長を決定す
るためのキャリアの運動エネルギをキャリアが電子であ
る場合には第2層の伝導帯の底付近、キャリアが正孔で
ある場合には第2層の価電子帯の底付近に設定したこと
を特徴とする。
【0007】請求項3の発明は、第1層の厚さDW と第
2層の厚さDB を次のように設定したことを特徴とす
る。
【数1】 DW =nW λW /4=nW h/ 4 [2mw (E+V) ]1/2 …(1)
【数2】 DB =nB λB /4=nB h/ 4 (2mB E)1/2 …(2) 但し、hはプランク定数、mw は第1層を伝導するキャ
リアの有効質量、mBは第2層におけるキャリアの有効
質量、Eは第2層を伝導する、第2層の最低エネルギレ
ベル付近におけるキャリアの運動エネルギ、Vは第1層
に対する第2層のバンド電位差、nW 、nB は奇数であ
る。
【0008】請求項4の発明は、量子波干渉層を、第2
層を伝導するキャリアの運動エネルギを複数の異なる値
k 、第1層におけるその各運動エネルギをEk +Vと
し、第2層、第1層の各エネルギに対応した各量子波長
をλBk,λWkとする時、第2層、第1層をnBkλBk
4、nWkλWk/4の厚さで、Tk 周期繰り返された部分
量子波干渉層Ik が値Ek の数だけ繰り返し形成された
層、但し、nWk、nBkは奇数、としたことを特徴とす
る。
【0009】請求項5の発明は、中間層のバンド幅は、
第2層のバンド幅以下にしたことを特徴とする。請求項
6の発明は、中間層の厚さを、量子波の波長λB の1/
2としたことを特徴とする。請求項7の発明は、第1層
と第2層との境界に、第1層と第2層の厚さに比べて充
分に薄く、エネルギバンドを急変させるδ層を設けたこ
とを特徴とする。請求項8の発明は、半導体素子は、p
in接合構造を有し、量子波干渉層及び中間層は、i層
に形成されていることを特徴とする。請求項9の発明
は、半導体素子は、pn接合構造を有し、量子波干渉層
及び中間層は、n層、又は、p層に形成されていること
を特徴とする。請求項10の発明は、電流電圧特性にお
いて、ヒステリシス特性を有することを特徴とする。
【0010】
【発明の作用及び効果】〔請求項1、2、3、8、9、
10の発明〕本発明にかかる量子波干渉層の原理を図
1、図2に基づいて説明する。図1は、p層とn層との
間に順方向に外部電圧が印加された状態を示している。
即ち、外部電圧によりi層のバンドは平坦となってい
る。図1では、i層に4つの量子波干渉層Q1 ,Q2
3 ,Q4 が形成されており、各量子波干渉層の間に
は、中間層C1 ,C2 ,C3 が形成されている。又、図
2は、1つの量子波干渉層Q1 の伝導帯のバンド構造を
示している。
【0011】電子が外部電界により図上左から右方向に
伝導するとする。伝導に寄与する電子は、第2層の伝導
帯の底付近に存在する電子と考えられる。この電子の運
動エネルギをEとする。すると、第2層Bから第1層W
に伝導する電子は第2層から第1層へのバンド電位差V
により加速されて、第1層Wにおける運動エネルギはE
+Vとなる。又、第1層Wから第2層Bへ伝導する電子
は第1層から第2層へのバンド電位差Vにより減速され
て、第2層Bにおける電子の運動エネルギはEに戻る。
伝導電子の運動エネルギは、多重層構造のポテンシャル
エネルギによりこのような変調を受ける。
【0012】一方、第1層と第2層の厚さが電子の量子
波長と同程度となると、電子は波動として振る舞う。電
子の量子波の波長は電子の運動エネルギを用いて、
(1)、(2)式により求められる。さらに、波の反射
率Rは第2層B、第1層Wにおける量子波の波数ベクト
ルをKB ,KW とする時、次式で求められる。
【数3】 R=(|KW |−|KB |)/(|KW |+|KB |) =([mw ( E+V)]1/2-[ mB E]1/2)/([mw ( E+V)]1/2+[ mB E]1/2) =[1- ( mB E/ mw ( E+V))1/2]/[1+ (mB E/ mw ( E+V))1/2] …(3) 又、mB =mw と仮定すれば、反射率は次式で表され
る。
【数4】 R=[1- ( E/ ( E+V))1/2]/[1+ (E/ ( E+V))1/2] …(4) E/ ( E+V) =xとおけば、(4)式は次式のように
変形できる。
【数5】 R=(1−x1/2 )/(1+x1/2 ) …(5) この反射率Rのxに対する特性は図3のようになる。
【0013】又、第2層Bと第1層WがそれぞれS層多
重化された場合の量子波の入射端面での反射率RS は次
式で与えられる。
【数6】 RS =〔(1−xS )/(1+xS )]2 …(6) x≦1/10の時R≧0.52となり、そのためのE,
Vの関係は
【数7】 E≦V/9 …(7) となる。第2層Bにおける伝導電子の運動エネルギEは
伝導帯の底付近であることから、(7)式の関係が満足
され、第2層Bと第1層Wとの境界での反射率Rは52
%以上となる。このようなバンド幅の異なる層で形成さ
れた多重層構造により、i層を伝導する電子の量子波を
効率良く反射させることができる。
【0014】又、xを用いて第2層Bの厚さの第1層W
の厚さに対する比DB /DW は次式で求められる。
【数8】 DB /DW =〔mw /(mB x)〕1/2 …(8)
【0015】このような量子波干渉層をi層に形成した
ダイオードにおいて、順方向に電圧を印加すると、量子
波干渉層のバンドのエネルギレベルは外部電圧により図
2(b)のように傾斜する。このようにバンドが傾斜す
ると、第1層W、第2層Bにおける電子の運動エネルギ
E+V,Eは、量子波が進行するにつれて増加し、次第
に第1層Wと第2層Bの厚さは、反射率が大きくなる最
適条件を満たさなくなる。この結果、印加電圧の大きさ
が、電子の運動エネルギを上記の量子波干渉層の厚さの
設計に用いられた運動エネルギを越えさせない範囲で
は、電子の反射が起こり電子による電流は流れない。し
かし、印加電圧の大きさが、注入される電子の運動エネ
ルギを設定された運動エネルギを越えさせる程度に増加
すると、反射していた電子が急激に流れるようになる。
この結果、ダイオードのVI特性が急峻となる。即ち、
動作抵抗が低下する。
【0016】このダイオードは、後述するように、電流
電圧特性において、図8に示すように、電流が急増する
電圧値、電流が急減する電圧値とが異なる。即ち、電流
電圧特性がヒステリシス特性を示すことが観測された。
【0017】このヒステリシス特性を示す理由は、現在
のところ明確ではないが、次のように考えられる。図4
は、nip構造の伝導帯のエネルギー図を示しており、
(a)は外部電圧が0の時の状態、(b)は電流が急激
に増加する時の立ち上がり点の電圧が印加された状態、
(c)は電流が急激に増加して大きな電流が流れている
時の状態、(d)は(c)の状態から電圧を徐々に低下
して、電流が急激に減少する時の立ち下がり点の電圧が
印加された状態を示している。
【0018】(a)から(b)に至る印加電圧の範囲で
は、量子波干渉層の各層の厚さが、注入される電子の量
子波の波長の1/4の奇数場合の条件が成立し、電子は
量子波干渉層で反射され、電子の移動はない。伝導帯の
電位傾斜が(b)の状態となるまで、外部電圧が印加さ
れると、反射条件が満たされなくなり、電子は量子波干
渉層を伝導する。この状態が図8のA点に相当する。そ
して、電子は、各中間層C1 ,C2 ,C3 に閉じ込めら
れる。この意味で、中間層C1 ,C2 ,C3 はキャリア
閉込層と定義しても良い。従って、中間層C1 ,C2
3 のバンド幅は第2層Bの伝導帯の底以下となるのが
望ましい。第2層Bと伝導帯の底が等しくとも良い。と
ころが、この中間層C1 ,C2 ,C3 の電子が多くなる
と、より高レベルに電子が存在するようになる。この高
レベルに存在する電子の運動エネルギーが増加するた
め、上記の量子波干渉層による反射条件を満たさなくな
る。この結果、電子は量子波干渉層Q2 ,Q3 ,Q4
透過してp層に流れる。このように電子がp層へ向かっ
て伝導している状態の伝導帯のエネルギー図が(c)の
ようになる。この状態が図8のB点となる。
【0019】次に、電圧が徐々に低下する場合の電流電
圧特性は、次のように説明される。電流がステップ的に
増加した伝導状態での伝導帯のエネルギー状態は、図4
(c)に示すように、最初の量子波干渉層Q1 よりもn
層側にあるi層と、最後の量子波干渉層Q4 よりもp層
側にあるi層とに、外部電圧のほとんどがかかり、量子
波干渉層Q1 からQ4 までは電位傾斜がほとんどない状
態である。この状態から印加電圧を減少させると、電位
傾斜のあるi層の電位傾斜が、(b)に示す電流がステ
ップ増する瞬間の電位傾斜に等しくなる状態となるま
で、電流は流れ続ける。この状態が図4の(d)であ
る。ところが、量子波干渉層Q1 からQ4 までは電位傾
斜が存在しないので、(d)のエネルギー状態を示す外
部電圧は、(b)図の状態の外部電圧よりも小さいこと
になる。この電圧点が、図8のC点に相当する。この電
位傾斜の時に、注入される電子の量子波の波長が上述し
た量子波干渉層による反射条件を満たすことになり、電
流がステップ減する。このような理由により、電流電圧
特性にヒステリシスが発生するものと思われる。
【0020】この半導体素子には順方向電圧が印加され
ることから、低電圧駆動が可能となり、素子間の絶縁分
離が容易となる。又、電子の移動は、量子波干渉層を波
動として伝搬すると考えられるので、応答速度が高速と
なる。
【0021】尚、量子波干渉層の価電子帯においても、
エネルギレベルが周期的に変動するが、バンド電位差V
が伝導帯のバンド電位差と異なり、さらに、第1層、第
2層における正孔の有効質量が電子の有効質量と異なる
ため、電子に対して反射率を高くするように設定された
第1層と第2層の幅の設定値は正孔に対する高反射率が
得られる条件にはならない。よって、上記の構造の量子
波干渉層は電子だけを反射するように第1層と第2層の
厚さが設計されているので、電子だけを反射させ正孔は
透過する。
【0022】よって、正孔に対して反射層として機能す
る正孔反射の量子波干渉層を上記の電子を反射する各量
子波干渉層に従属接続して設けても良い。
【0023】上記のキャリアの反射機能を有する量子波
干渉層は、0Vから所定のバイアス電圧までキャリアを
反射させ、電流が流れない状態を形成できるので、光受
光素子をn層だけ、又は、p層だけで形成し、上記の量
子波干渉層と中間層を、n層又はp層に形成しても良
い。同様に、pn接合の受光素子を形成し、そのn層、
p層に形成しても良い。
【0024】又、価電子帯においても、エネルギレベル
が周期的に変動するが、バンド電位差Vが伝導帯のバン
ド電位差と異なり、さらに、第1層、第2層における正
孔の有効質量が電子の有効質量と異なるため、電子に対
して反射率を高くするように設定された第1層と第2層
の幅の設定値は正孔に対する高反射率が得られる条件に
はならない。よって、上記の構造の量子波干渉層は、電
子だけを反射させ正孔を反射させないようにすることが
できる。又、逆に、価電子帯のバンド電位差、正孔の有
効質量を用いて、第1層、第2層の厚さを設計すること
で、量子波干渉層をn層に設け正孔を反射させ電子を透
過させる層とすることもできる。
【0025】上記の量子波干渉層は、nip構造の半導
体素子におけるn層とp層との間のi層に形成したが、
n層だけ、p層だけの半導体素子に、上記の量子波干渉
層を設けても良い。さらに、電子を反射する量子波干渉
層と正孔を反射する量子波干渉層とを縦続に接続するよ
うにしても良い。又、電子の量子波干渉層をp層に設
け、正孔の量子波干渉層をn層に設けることで、このダ
イオードのVI特性をさらに急峻とすることができ、動
作抵抗を著しく低下させることができる。
【0026】〔請求項4の発明〕 請求項4の発明は、図5に示すように、第1層と第1層
よりもバンド幅の広い第2層との多重周期から量子波干
渉層を次のように形成したことを特徴とする。第1層、
第2層を、それぞれ、厚さDWk Bk 任意周期Tk
け繰り返して部分量子波干渉層Ik とする。但し、
【数9】 DWk=nWkλWk/4=nWkh/ 4 [2mwk(Ek +V) ]1/2 …(9)
【数10】 DBk=nBkλBk/4=nBkh/ 4 (2mBkk )1/2 …(10) ここで、Ek は第2層を伝導するキャリアの運動エネル
ギの複数の異なる値、mwkは第1層における運動エネル
ギEk +Vを有するキャリアの有効質量、mBkは第2層
における運動エネルギE k 有するキャリアの有効質
量、nWk、nBkは任意の奇数である。このように形成さ
れた部分量子波干渉層Ik をI1,, j と、kの最大
値jだけ直列接続して量子波干渉層が形成される。この
運動エネルギEk の離散間隔を狭くすれば、連続したあ
るエネルギー範囲にあるキャリアを反射させることがで
きる。
【0027】〔請求項5、6〕請求項5は、中間層のバ
ンドは、電子をキャリアとする場合には、その伝導帯の
底が第2層の伝導帯の底よりも低く、正孔をキャリアと
する場合には、その価電子帯の底が第2層の価電子帯の
底よりも低くしたことを特徴とする。又、請求項6はそ
の中間層の厚さをその層の量子波の波長λB の1/2と
している。これにより、伝導キャリアの閉込を効果的に
行うことができる。
【0028】〔請求項7〕 請求項7は、図6に示すように、第1層Wと第2層Bと
の境界において、エネルギバンドを急変させる厚さが第
1層W、第2層Bに比べて十分に薄いδ層を設けても良
い。境界での反射率は(5)式で得られるが、境界にδ
層を設けることで、バンド電位差Vを大きくすることが
できx値が小さくなる。x値が小さいことから反射率R
が大きくなる。このδ層は、図6(a)に示すように、
各第1層Wの両側の境界に設けられているが、片側の境
界だけに設けても良い。又、δ層は、図6(a)に示す
ように、境界に第2層Bのバンドの底よりもさらに高い
底のンドが形成されるように設けているが、図6
(b)に示すように、境界に第1層のバンドの底よりも
さらに低い底を有するように形成しても良い。さらに、
図6(c)に示すように、境界に第2層Bのバンドの底
よりも高い底を有し、第1層Wのバンドの底よりも低い
底を有するバンドを形成するように、δ層を形成しても
良い。このようにすることで、第1層Wと第2層Bとの
境界での量子波の反射率を大きくすることができ、多重
層に形成した場合に全体での量子波の反射率を大きくす
ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的な実施例に
基づいて説明する。なお本発明は下記実施例に限定され
るものではない。 〔第1実施例〕図7は量子波干渉層をi層に形成した半
導体素子の断面図である。GaAsから成る基板10の上
に、n-GaAsから成る厚さ0.3 μm 、電子濃度 2×1018/c
m3のバッファ層12が形成され、その上にn-Ga0.51In
0.49P から成る厚さ0.13μm 、電子濃度 2×1018/cm3
n形コンタクト層14が形成されている。n形コンタク
ト層14の上には、n-Al0.51In0.49P から成る厚さ0.2
μm 、電子濃度 1×1018/cm3のn層16が形成されてい
る。そのn層16の上に不純物無添加のi層18を形成
した。そのi層18の上にはAl0.51In0.49P から成る厚
さ0.2 μm 、正孔濃度1 ×1018/cm3のp層20が形成さ
れている。さらに、そのp層20の上にp-Ga0.51In0.49
P から成る厚さ0.13μm 、正孔濃度 2×1018/cm3の第2
p形コンタクト層22とp-GaAsから成る厚さ0.06μm 、
正孔濃度 2×1018/cm3の第1p形コンタクト層24が形
成されている。さらに、基板10の裏面には厚さ0.2 μ
m のAu/Ge から成る電極26が形成され、第1p形コン
タクト層24の上には厚さ0.2 μm のAu/Zn から成る電
極28が形成されている。
【0030】上記のi層18には、Ga0.51In0.49P から
成る厚さ5nm の第1層WとAl0.51In0.49P から成る厚さ
7nm の第2層Bと第1層Wの両側に形成された厚さ1.3n
m の不純物無添加のAl0.33Ga0.33In0.33P から成るδ層
とを1組として10周期繰り返された量子波干渉層Q1
と、これと同一構造の量子波干渉層Q2,, 4 とを合
わせて、全体で4組設けられている。1つの量子波干渉
層Q1 の詳細なバンド構造は図6(a)に示すものであ
る。又、各量子波干渉層Qi,i+1 間には厚さ14nm、不
純物無添加のAl0.51In0.49P から成る中間層C1 〜C3
が形成されている。第2層Bと第1層Wの厚さの条件
は、電極28と電極26間に順方向電圧を印加して、i
層18に電位傾斜がない状態において上記した(1)、
(2)式で決定されている。
【0031】尚、n層16又はp層20に接合する第2
層Bは0.05μm である。このように最初の第2層Bを厚
くしたのは、n層16又はp層20からキャリアが第1
層Wにトンネル伝導することを防止するためである。
又、基板10は、2インチ径の大きさであり、基板の主
面は面方位(100) に対して15°方位[011] 方向にオフセ
ットしている。
【0032】この半導体素子は、ガスソースMBE法に
より製造された。ガスソースMBE法は、結晶のエレメ
ント材料全てを固体ソースから供給する従来形のMBE
法とは異なり、V族元素(As,P)等をガス状原料(AsH3,PH
3)の熱分解により供給し、III 族エレメント(In,Ga,Al)
は固体ソースから供給する超高真空下の分子線結晶成長
法である。なお、有機金属ガス気相成長法(MOCV
D)を用いることもできる。
【0033】上記の構成の半導体素子(ダイオード)に
おいて、p層20とn層16との間に順方向に電圧Vを
増加させて行くと、図1に示すように、i層18のバン
ドの傾斜が平坦となる電位が存在する。この状態では、
量子波干渉層Q1 〜Q4 において電子に対して反射条件
が設立するので、電子は流れない。
【0034】さらに、順方向電圧を増加させると、上述
したように、伝導帯の状態は、図4(b)に示した状態
となり、反射条件が満たされなくなり、電流が流れ、中
間層C1 〜C3 に電子が蓄積される。この中間層C1
3 における電子濃度が高くなり、第2層Wの伝導帯の
底付近以上の電子が多く存在するようになると、n層1
6の電子が隣の中間層C1 に伝導し、中間層C1 の電子
は隣の中間層C2 に伝導する。このようにして、電子は
各中間層C1 を介在させて、各量子波干渉層中は電子の
波としての性質により高速に伝導すると考えられる。こ
の伝導状態の時の伝導帯の状態は図4(c)に示すよう
になる。
【0035】尚、中間層C1 〜C3 に電子が励起されて
いない場合には、量子波干渉層Q1〜Q4 は電子に対し
て反射条件が満たされているが、中間層C1 〜C3 に電
子が励起された場合にのみ、電子の反射条件が満たされ
なくなり、量子波干渉層Q1〜Q4 を電子は量子波とし
て伝導すると考えられるため、スイッチグ速度も高速に
なると思われる。
【0036】この半導体素子の順方向のV−I特性を測
定した。図8に示す。電圧を増加させるとき、約5.3
Vの順方向電圧(A点)により、電流は急峻に増加して
いるのが分かる。それに対して、電圧を減少させる場合
には、約4.3Vの電圧(C点)で電流が急峻に減少し
ているのが分かる。
【0037】このように、電流電圧特性において約1V
のヒステリシス特性が観測された。この半導体素子を単
独で用いることで、チャタリングを防止したシュミット
回路を形成することができる。
【0038】上記の実施例では、量子波干渉層にδ層を
形成した。δ層を形成することで、反射率を向上させる
ことができるが、δ層がなくとも多重反射による反射率
の増加の効果は見られるので、δ層はなくとも良い。
【0039】他の実施例として、図9に示す構造のSiと
Geとの化合物半導体系のダイオードを形成した。この素
子では、量子波干渉層の第1層Wは厚さ5nmのSi0.8Ge
0.2で形成し、第2層Bは厚さ7nmのSiで形成した。
又、中間層C1 〜C3 は、厚さ14nmのSiで形成した。但
し、δ層は設けなかった。このダイオードにおいても、
図8と同様なヒステリシス特性を有する電流電圧特性が
観測された。
【0040】又、上記全実施例では、Q1 〜Q4 の4つ
の量子波干渉層を中間層Cを介在させて直列に接続した
が、量子波干渉層の多重化される層の数は任意である。
又、量子波干渉層をGa0.51In0.49P とAl0.51In0.49P と
の多重層、又は、Si0.8Ge0.2とSiとの多重周期で構成し
たが、4元系のAlxGayIn1-x-y P(0 ≦x,y ≦1の任意の
値) で組成比を異にして形成しても良い。さらに、量子
波干渉層は、他のIII 族-V族化合物半導体、II族-VI 族
化合物半導体、その他の異種半導体の多重接合で構成す
ることが可能である。
【0041】又、キャリアを閉じ込める機能を有する中
間層C1 〜C3 のバンドは、キャリアが電子の場合に、
第2層Bの伝導帯の底と同一レベルの底を有するバンド
構造としたが、第1層Wの伝導帯の底と同一レベルの底
を有するバンド構造としても良い。さらに、第1層Wと
第2層Bの伝導帯の底の中間に伝導帯の底を有するよう
に中間層を形成しても良い。キャリアを正孔とする場合
には、価電子帯について、上記と同様な関係、即ち、第
2層Bの価電子帯の底と同一レベルの底を有するバンド
構造としても、第1層Wの価電子帯の底と同一レベルの
底を有するバンド構造としても良い。さらに、第1層W
と第2層Bの価電子帯の底の中間に価電子帯の底を有す
るように中間層を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念を説明するための説明図。
【図2】本発明の理論を説明するための説明図。
【図3】第2層におけるキャリアの運動エネルギの第1
層における運動エネルギに対する比xに対する反射率R
の関係を示した特性図。
【図4】本発明素子が電流電圧特性にヒステリシス特性
を有することを説明するための説明図。
【図5】本発明の概念を説明するための説明図。
【図6】本発明の概念を説明するための説明図。
【図7】本発明の実施例に係る半導体素子(ダイオー
ド)の構造を示した断面図。
【図8】同実施例素子におけるV−I特性の測定図。
【図9】本発明の他の実施例に係る半導体素子(ダイオ
ード)の構造を示した断面図。
【符号の説明】
10…基板 12…バッファ層 14…n形コンタクト層 16…n層 18…i層 20…p層 22…第p形コンタクト層 24…第p形コンタクト層 26,28…電極 Q1 〜Q4 …量子波干渉層 B…第2層 W…第1層 C,C1 〜C3 …中間層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01L 29/48 P (56)参考文献 特開 平10−303406(JP,A) Japanese Journal of Applied Physic s,Vol.29,No.11,Novem ber,1990,pp.L1977−L1980 電子情報通信学会技術研究報告,Vo l.91,No.2(OQE91 1− 17),1991,pp.73−78 電子情報通信学会技術研究報告,Vo l.91,No.15(ED91 1−7), 1991,pp.15−21 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 31/10 H01L 29/861 H01L 29/864 - 29/87 H01L 29/88 - 29/96 H01L 29/06 H01L 31/02 H01L 31/04 H01L 33/00 H01S 5/30 JICSTファイル(JOIS)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1層と第1層よりもバンド幅の広い第
    2層とを多重周期で積層した量子波干渉層を有した半導
    体素子において、 前記第1層と前記第2層の各層の厚さを、各層を伝導す
    るキャリアの、各層における量子波の波長の4分の1の
    奇数倍に設定した量子波干渉層を、多重周期でないバン
    ドの平坦な中間層を介在させて複数配設したことを特徴
    とする量子波干渉層を有した半導体素子。
  2. 【請求項2】 前記量子波の波長を決定するための前記
    キャリアの運動エネルギをキャリアが電子である場合に
    は第2層の伝導帯の底付近、キャリアが正孔である場合
    には前記第2層の価電子帯の底付近に設定したことを特
    徴とする請求項1に記載の量子波干渉層を有した半導体
    素子。
  3. 【請求項3】 前記第1層における前記量子波の波長λ
    W はλW =h/[2mw(E+V) ]1/2で決定され、前記
    第2層における前記量子波の波長λB はλB =h/(2m
    B E)1/2で決定され、前記第1層の厚さDW はDW =n
    W λW /4、前記第2層の厚さDB はDB =nB λB
    4で決定される、但し、hはプランク定数、mw は第1
    層におけるキャリアの有効質量、mB は第2層における
    キャリアの有効質量、Eは第2層に流入されるキャリア
    の運動エネルギー、Vは第1層に対する第2層のバンド
    電位差、nW 、nB は奇数であることを特徴とする請求
    項1又は請求項2に記載の量子波干渉層を有した半導体
    素子。
  4. 【請求項4】 前記量子波干渉層は、前記第2層を伝導
    するキャリアの運動エネルギを複数の異なる値Ek 、前
    記第1層におけるその各運動エネルギをEk +Vとし、
    第2層、第1層の各エネルギに対応した各量子波長をλ
    Bk,λWkとする時、第2層、第1層をnBkλBk/4、n
    WkλWk/4の厚さで、Tk 周期繰り返された部分量子波
    干渉層Ik が前記値Ek の数だけ繰り返し形成された
    層、但し、nWk、nBkは奇数、であることを特徴とする
    請求項1又は請求項2に記載の量子波干渉層を有した半
    導体素子。
  5. 【請求項5】 前記中間層のバンドは、電子をキャリア
    とする場合には、その伝導帯の底が前記第2層の伝導帯
    の底よりも低く、正孔をキャリアとする場合には、その
    価電子帯の底が前記第2層の価電子帯の底よりも低いこ
    とを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に
    記載の量子波干渉層を有した半導体素子。
  6. 【請求項6】 前記中間層の厚さは、前記量子波の波長
    λB の1/2であることを特徴とする請求項5に記載の
    量子波干渉層を有した半導体素子。
  7. 【請求項7】 前記第1層と前記第2層との境界には、
    前記第1層と前記第2層の厚さに比べて充分に薄く、エ
    ネルギバンドを急変させるδ層が設けられていることを
    特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載
    の量子波干渉層を有した半導体素子。
  8. 【請求項8】 前記半導体素子は、pin接合構造を有
    し、前記量子波干渉層及び前記中間層は、i層に形成さ
    れていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいず
    れか1項に記載の量子波干渉層を有した半導体素子。
  9. 【請求項9】 前記半導体素子は、pn接合構造を有
    し、前記量子波干渉層及び前記中間層は、n層、又は、
    p層に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請
    求項7のいずれか1項に記載の量子波干渉層を有した半
    導体素子。
  10. 【請求項10】 前記半導体素子は、電流電圧特性にお
    いて、ヒステリシス特性を有することを特徴とする請求
    項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の量子波干渉層
    を有した半導体素子。
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