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JP3011126B2 - 指紋検知装置 - Google Patents

指紋検知装置

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JP3011126B2
JP3011126B2 JP9075388A JP7538897A JP3011126B2 JP 3011126 B2 JP3011126 B2 JP 3011126B2 JP 9075388 A JP9075388 A JP 9075388A JP 7538897 A JP7538897 A JP 7538897A JP 3011126 B2 JP3011126 B2 JP 3011126B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、指紋検知装置に関
し、特に透明基体を介して指の指紋に光を照射し、その
反射光から指紋パターンを検出する指紋検知装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、透明基体に押し当てられた指の
指紋に対して光を照射し、その反射光から指紋パターン
を検出する方式の1つとして、透明基体表面における光
の全反射を利用した全反射光方式が提案されている(例
えば、特開平1−145785号公報など)。図3は全
反射光方式による従来の指紋検知装置を示す説明図であ
り、1は光学ガラスなどの透明基体、1Sは透明基体1
の表面、3は指紋3Aを有する指、4は光源、5は画像
検出部であり、光源4からの光が透明基体1を介して指
紋3Aに照射され、その反射光が画像検出部5により検
出される。
【0003】この場合、透明基体1、指紋3A、および
空気の屈折率の関係と、透明基体表面1Sへの光の入射
角とを適当に選択する。通常、指紋3Aの稜線部(凸
部)は、その表面に付着する汗や脂分を介して透明基体
1に接し、かつ、この汗や脂分の屈折率は、空気の屈折
率naより大きく、光学ガラスなどの透明基体1の屈折
率nbに近い。
【0004】これにより、指紋3Aのうち空気が存在す
る谷間部(凹部)に接する透明基体表面1Sでのみ全反
射が発生し、透明基体1の屈折率nbに近い屈折率を有
する汗や脂分を介して直接に接触する指紋3Aの稜線部
では全反射が発生せず、通過した光は指に吸収され、あ
るいは乱反射する。したがって、画像検出部5では、指
紋3Aの谷間部が明るく、稜線部が暗い指紋パターンが
得られる。
【0005】また、指紋パターンを検出する場合の他の
方式として、透明基体表面における光の散乱を利用した
散乱光方式が提案されている(例えば、特開平3−24
4092号公報など)。図4は散乱光方式による従来の
指紋検知装置を示す説明図であり、1は光学ガラスなど
の平行平板からなる透明基体、1Sは透明基体1の表
面、3は指紋3Aを有する指、4は光源、5は画像検出
部であり、光源4からの光が透明基体1を介して指紋3
Aに照射され、その散乱光が画像検出部5により検出さ
れる。
【0006】この場合も、前述の全反射光方式(図3参
照)と同様に、透明基体1、指紋3A、および空気の屈
折率の関係と、透明基体表面1Sへの光の入射角とを適
当に選択する。これにより、指紋3Aのうち空気8が存
在する谷間部(凹部)に接する透明基体表面1Sで全反
射が発生し、画像検出部5には光が届かない。
【0007】一方、透明基体1の屈折率nbに近い屈折
率を有する汗や脂分を介して接触する指紋3Aの稜線部
では全反射が発生せず、通過した光は指に吸収されるが
その一部が乱反射して、画像検出部5に到達する。した
がって、前述した全反射光方式とは反対に、画像検出部
5では、指紋3Aの谷間部が暗く、稜線部が明るい指紋
パターンが得られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の指紋検知装置では、図3に示す全反射光方式
によれば、指の稜線部に存在する微細な凹凸と透明基体
表面1Sとの隙間や、汗などの水分の影響により、指の
状態、特に乾燥状態または湿潤状態によって、得られる
指紋パターンが大幅に変化し、常に良好な指紋パターン
を得ることができないという問題点があった。図5は透
明基体表面での指の接触状態を示す説明図であり、
(a)は指が乾燥状態にある場合、(b)は指が湿潤状
態にある場合を示している。
【0009】例えば、図5(a)に示すように、指が乾
燥状態にある場合は、指紋の稜線部31の微細な凹凸に
より、稜線部31と透明基体1との間に僅かな隙間35
が生じ、この隙間35内の空気により、稜線部31でも
光が全反射される。また、図5(b)に示すように、指
が汗などにより湿潤状態にある場合は、指紋の稜線部3
1と透明基体表面1Sとの間に汗または脂36が付着
し、当初の稜線部31より大きな幅で光が吸収され、谷
間部32で全反射する光が減少する。
【0010】したがって、指の状態、特に乾燥状態にお
いては、指紋の稜線部31が一本の線とならず、いくつ
かに切断されたものとなり、また湿潤状態においては、
稜線部31と谷間部32との区別が付きにくく、全体に
つぶれたものとなり、常に良好な指紋パターンを得るこ
とができないという問題点があった。また、図3に示す
全反射光方式では、画像検出部5で得られる指紋パター
ンは、指紋3Aを斜め方向から撮影した画像データであ
ることから、この斜め画像の歪みを正面方向から見た画
像に補正処理する必要がある。
【0011】さらに、指紋を斜め方向から撮影すること
から、適正なピントを得るためには光学レンズの焦点深
度を深くとる必要があり、結果として光学距離を小さく
できず小型化が難しいという問題点があった。一方、図
4に示す散乱光方式によれば、指紋3Aを正面から見た
場合の指紋パターンが得られるものの、指紋3Aの稜線
部で乱反射した光で、画像検出部5側に到達する光の量
が僅かであることから、指紋3Aの谷間部とのコントラ
ストが小さい指紋パターンしか得られないという問題点
があった。
【0012】また、全反射光方式とは反対に、指を透明
基体1に当てていないときに全体が黒くなることから、
例えばCCDセンサなどを用いた画像検出部5で指紋パ
ターンを読み取る場合、白レベル調整のために別の光源
が必要となるという問題点があった。本発明はこのよう
な課題を解決するためのものであり、指の状態に依存せ
ず、常に良好に、指紋の正面から見た指紋パターンを得
ることができる指紋検知装置を提供することを目的とし
ている。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、本発明による指紋検知装置は、請求項1とし
て、指紋が押圧される側の表面に細かな凹凸からなる散
乱面が形成された透明な平行平板からなり、第1の屈折
率を有する透明基体と、この透明基体表面上に形成され
た第2の屈折率を有する薄膜からなり、指の押圧に応じ
て指紋の凹凸が転写される表面フィルム層と、この表面
フィルム層により透明基体表面との間に薄く密封された
第1および第2の屈折率より小さい第3の屈折率を有す
る気体または流動体からなり、指の押圧に応じて表面フ
ィルム層を介して指紋の凹凸が転写される中間層と、透
明基体の指紋が押圧される側とは反対側に設けられ、
間層に転写された指紋の凹凸に応じて透明基体表面に表
面フィルム層が接触するか否かと、透明基体および表面
フィルム層と中間層の屈折率の相違に起因して、透明基
体表面で生じる入射光の振る舞いの違いによる反射光の
変化を、指紋パターンとして検出する画像検出部とを備
えるものである。したがって、指の押圧に応じて、この
指紋の凹凸が表面フィルム層および中間層にそれぞれ転
写され、これにより透明基体表面に対し表面フィルム層
または中間層が接した場合に、透明基体表面で生じる入
射光の振る舞いの違い、すなわち吸収または散乱の違い
による反射光の変化が、指紋パターンとして検出され
る。
【0014】また、請求項2として、請求項1記載の指
紋検知装置において、透明基体の散乱面は、深さ1〜3
0μmであって、好ましくは深さ5〜20μmの凹凸か
ら形成したものである。したがって、この散乱面により
入射光が適度に散乱される。また、請求項3として、請
求項1記載の指紋検知装置において、透明基体の散乱面
は、角に丸みを有する細かな凹凸から形成したものであ
る。したがって、指の押圧時に、指紋の稜線部において
表面フィルム層と散乱面の細かな凹凸とが良好に密着す
る。
【0015】また、請求項4は、請求項1記載の指紋検
知装置において、表面フィルム層として、5〜50μm
であって、好ましくは10〜30μmの膜厚を有するプ
ラスチックフィルムを用いるものである。したがって、
表面フィルム層を指紋の凹凸に良好になじませることが
できるとともに、指紋検知時に必要な機械的な強度が確
保される。また、請求項5は、請求項4記載の指紋検知
装置において、表面フィルム層の透明基体と対向する表
面に、指の押圧により透明基体表面の散乱面の細かな凹
凸と密着する粘弾性膜を設けたものである。したがっ
て、粘弾性膜により、指の押圧時に、指紋の稜線部にお
いて表面フィルム層と散乱面の細かな凹凸とが良好に密
着する。
【0016】また、請求項6として、請求項1記載の指
紋検知装置において、表面フィルム層として、50μm
以下の膜厚を有するゴム材料を用いたものである。した
がって、指の押圧時に、指紋の稜線部において透明基体
の散乱面の細かな凹凸と密着する。また、請求項7とし
て、請求項6記載の指紋検知装置において、表面フィル
ム層の指紋が押圧される側の表面に、離型性を有する薄
膜からなる潤滑膜を設けたものである。したがって、表
面フィルム層に汚れが付着しにくく、また付着した汚れ
は容易に除去でき、さらに、指を押し当てる場合に容易
に脱着される。また、請求項8は、請求項1記載の指紋
検知装置において、中間層として、室温で5000mm
2/s以下であって、好ましくは1000mm2/s以下の
動粘度を有する流動体を用いたものである。したがっ
て、指の押圧時に、迅速に流動体内圧を平衡させること
ができる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明について図面を参照
して説明する。図1は本発明の一実施の形態である指紋
検知装置を示す説明図であり、同図において、前述の説
明(図3,図4参照)と同じまたは同等部分には同一符
号を付してあり、1は光学ガラスなどの平行平板からな
る透明基体、3Aは指3の指紋、5は光源4から透明基
体1を介して照射された入射光の透明基体表面1Sにお
ける振る舞い、すなわち散乱または吸収を、指紋3Aの
正面から見た指紋パターンとして画像にて検出する画像
検出部である。
【0018】特に、本発明では、前述の説明(図3,4
参照)と比較して、指3が押し当てられる側の透明基体
1の表面1Sに細かな凹凸を設けることにより散乱面を
形成したことを特徴としている。さらに、本発明では、
この透明基体表面1Sの近傍に対向して、指3が押し当
てられる側すなわち表側に潤滑膜を有し、あるいは透明
基体表面1S側すなわち裏側に粘弾性膜を有する薄膜か
らなる表面フィルム層12を形成し、この表面フィルム
層12と透明基体表面1Sとの僅かな隙間に気体または
流動体からなる中間層11を形成したことを特徴として
いる。
【0019】この場合、指紋3Aの押圧により、この表
面フィルム層12を介して、指紋3Aの稜線部(凸部)
および谷間部(凹部)からなる凹凸形状が中間層11に
転写され、透明基体表面1Sと表面フィルム層12とが
接するか否かによる光の振る舞いの違い、すなわち光の
散乱または吸収が、指紋3Aの正面から見た指紋パター
ンとして検出される。
【0020】次に、図2を参照して、本発明の動作とし
て、光源4から透明基体1に入射された光の振る舞いに
ついて説明する。表面フィルム層12に指を押し当てた
場合、指紋の稜線部31の部分では、表面フィルム層1
2と透明基体表面(散乱面)1Sとが密着するが、指紋
の谷間部32の部分では、そのくぼみに中間層11内の
気体または流動体が残り、表面フィルム層12と透明基
体表面1Sとは密着しない。
【0021】すなわち、表面フィルム層12は指紋の凹
凸に沿って撓み変形し、稜線部31部分のみで表面フィ
ルム層12と透明基体表面1Sとが密着するものとな
る。一方、光源4から透明基体1に入射された光は、透
明基体1の表面(散乱面)1Sに照射される。ここで、
中間層11内の気体または流動体は、表面フィルム層1
2および透明基体1を形成する各材料の屈折率nf,n
bより小さい屈折率neを有するものを用いる。
【0022】これにより、谷間部32の部分では、中間
層11が透明基体表面1Sに接していることから光が透
過しにくく、透明基体表面1Sにおいて散乱が発生し、
この散乱光の一部が画像検出部5に到達する。一方、稜
線部31では、表面フィルム層12が透明基体表面1S
と密着していることから、ほとんどの光が表面フィルム
層12に吸収される。したがって、指紋3A(図1参
照)の正面に位置する画像検出部5では、稜線部31が
暗く谷間部32が明るい、全反射光方式と同様の指紋パ
ターンが得られる。
【0023】なお、透明基体1としては、透明な平行平
板の片側を曇りガラスのように散乱面としたものを使用
し、材料としては光学ガラス材料や透明なプラスチック
材料を用いる。特に、散乱面は、砥粒を用いた研磨加工
やサンドブラスト加工などの周知加工技術を用いて形成
する。また、散乱面の凹凸形状は、使用する砥粒の粘度
に依存し、荒すぎると指紋パターンの精細度やコントラ
ストが低下し、細かすぎるとコントラストが低下する傾
向にある。
【0024】したがって、砥粒の荒さは、約600〜3
000番の範囲のものが使用に適しており、好ましくは
約900〜2000番の範囲のものがよい。このとき、
散乱面の凹凸は深さ約1〜30μm程度、好ましくは深
さ約5〜20μmとなる。また、この散乱面の凹凸に僅
かな丸みを持たせることにより、透明基体表面(散乱
面)1Sと表面フィルム層12との密着性が向上し、よ
り良好な指紋パターンが得られる。
【0025】この場合の僅かな丸みを持たせる方法とし
ては、透明基体1がガラスのときには薄めたフッ化水素
を用いて軽く研磨表面を飾刻する方法、また、透明基体
1がプラスチックのときは適当な溶解性を与えるように
選択された有機溶媒を用いて研磨表面を僅かに溶解させ
るなどの周知な方法がある。一例として、屈折率1.5
2の硼珪酸クラウンガラスの平行平面基板を用い、その
片面を1200番の砥粒で研磨することにより平均で深
さ8μmの凹凸を持つ散乱面を形成できる。次に、研磨
しない面および周辺部をワックスで保護した後、約1%
のフッ化水素に30秒間浸漬することにより、拡散面の
凹凸の角に丸みを持たせることができる。
【0026】また、中間層11については、透明基体表
面1Sと表面フィルム層12との間に、気体または流動
体を封入することにより形成する。指紋の凹凸の深さは
50μm程度なので、中間層11の厚みは50μmもあ
れば十分である。しかし、指を押し当てたとき、余分な
気体または流動体は周辺部に押し寄せられるので、中間
層11の厚みを50μm以上にしても問題はない。
【0027】一方、中間層11の厚みが50μm以下で
あっても、表面フィルム層12は、少なくとも指紋の凹
凸に良くなじんだ状態になるので何ら問題はない。封入
する気体としては、空気で十分機能する。また流動体と
しては、水をはじめ、ほとんどすべてのものが使用可能
であるが、粘度の高すぎるものは指を押し当てたとき、
中間層11の内部応力の状態が平衡状態になるまでに比
較的長い時間を要するので、使用に適さない。
【0028】室温における動粘度の値で、約5000m
2/s以下の流動体であれば使用できるが、より好まし
くは約1000mm2/s以下であれば良好である。一例
として、動粘度が約500mm2/sで屈折率1.38の
無色透明なシリコーンオイルが上げられる。
【0029】また、表面フィルム層12については、ポ
リエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチ
レンテレフタレートなどのプラスチックフィルムが使用
できる。フィルムの膜厚は、約5〜50μmの範囲で選
択され、より好ましくは約10〜30μmの範囲で選択
される。一例として、ポリエチレンテレフタレートは種
々の膜厚のものがあり、入手が容易な10μm厚のもの
は、機械的強度も十分であり、屈折率は1.65であ
る。
【0030】表面フィルム層12としては、上記のプラ
スチックフィルム以外にも、天然ゴム、シリコーンゴ
ム、ウレタンゴムなどのゴム材料で形成した膜が使用で
きる。ゴム材料は、光透過性が良好ではなく屈折率など
の光学的性質も明確ではないが、透明基体1との接触部
では、透明基体1内を伝搬する光を吸収する効果が大き
く、良好な指紋パターンを得ることができる。ゴム材料
の場合は、プラスチックフィルムよりも柔軟性が高いの
で、膜厚は約50μm程度まで厚いものでも、より良好
な指紋パターンを得ることができる。
【0031】プラスチックフィルムを使用する場合には
特に問題とはならないが、ゴム材料を使用する場合は、
押し当てた指との密着性が強いため、指の着脱の際に不
要な力を加えることになり、不用意な使い方をすると薄
いゴム膜ではすぐに破損する場合がある。これを防止す
るためには、表面フィルム層12の指を押し当てる側の
面に、離型性を有する潤滑膜12Aを形成することによ
り、十分な実用性が得られる。
【0032】潤滑膜12Aで用いる潤滑剤としては、フ
ッ素系樹脂やシリコーン系の離型剤などが適している。
できるだけ薄い膜を形成するのに適したフッ素系樹脂と
しては、パーフルオロ溶媒に溶解させたものが知られて
いる。特に、非晶質特性を持つフッ素系樹脂は溶解しや
すく、回転塗布、浸漬引き上げ、スプレーなどの方法に
より、膜厚約1μmの薄膜を形成できる。
【0033】この場合、ゴム膜表面に予めシラン系のカ
ップリング剤を塗布しておけば、塗膜とゴム膜との密着
性を高めることができる。塗布後、約180゜Cまでの
温度範囲で加熱し、溶媒を乾燥させると潤滑膜12Aが
形成される。シリコーン系の離系剤としては、溶解型や
エマルジョン型が知られており、前記塗布後方法により
薄い塗膜が形成でき、約150〜200゜Cの加熱乾燥
により潤滑膜が形成される。この場合も、ゴム膜との密
着性を高めるためにシラン系のカップリング剤の使用が
効果的である。
【0034】一方、指を当てたときの表面フィルム層1
2と透明基体表面1Sとの密着性については、ゴム材料
を用いた場合、その弾力性のため散乱面の凹凸形状に容
易になじむことができるが、プラスチックフィルムを用
いた場合には十分な密着性が得られず、その結果として
指紋パターンのコントラストが低下することが考えられ
る。これを防止するため、プラスチックフィルムの透明
基体1と接触する面に、粘弾性膜12Bを薄くコーティ
ングする。
【0035】一例としては、加熱硬化型でかつ2液混合
型のシリコーンゴムの中から選択したものは、混合後の
外観は、粘度が約1.1Pa・sで水の約千倍の値を持
つ無色透明液状である。これに希釈用のシンナーを重量
比20%添加して粘度を約1/2に低減し、予めシラン
系カップリング剤を塗布した厚さ約10μmのポリエチ
レンテレフタレートフィルムの一面に約10μmの厚み
で均一にコーティングする。この多層構造のフィルムを
表面フィルム層12として使用することにより、プラス
チックフィルムのみを使用した場合と比較して、さらに
良好な指紋パターンが得られる。
【0036】発明者の実験によれば、図3に示したよう
な、透明基体表面1Sに、直接、指を押し当てる従来の
全反射光方式の指紋検知装置では、冬季などで空気が乾
燥している中では、指紋パターンの稜線部が線として繋
がらず、ぶつぶつに切れた指紋パターンしか得られない
場合が多く発生した。この理由として、汗腺が指紋3A
の稜線部(凸部)に存在し、この汗腺により、稜線部自
体に凹凸が存在するためと考えられる。
【0037】このように、指紋3Aの稜線部が途切れた
ような指紋パターンでは、画像処理による特徴抽出が困
難であり、指紋パターンから個人を識別する個人識別で
は、通常時約95%以上の認識率がえられるものが、8
0%以下に大幅に低下した。また、このような従来の指
紋検知装置では、夏季の高温多湿の条件下において、汗
腺から汗や脂が絶えず分泌されて谷間部を埋める傾向に
ある。したがって、隣接する稜線部が繋がって、指紋パ
ターンがつぶれてしまうものとなり、このような指紋パ
ターンを用いた個人識別では、認識率が70%以下に大
幅に低下した。
【0038】また、図4に示したような、平行平板から
なる透明基体1の表面1Sに、直接、指を押し当てる従
来の散乱光方式の指紋検知装置では、透明基体1内部を
伝搬する光が、透明基体1に直接接触する指紋3Aの稜
線部(凸部)において散乱することを利用するものであ
るが、本来、この稜線部において散乱する光は僅かであ
り、多くの光は吸収される。したがって、このような従
来の散乱光方式では、稜線部が明るく谷間部(凹部)が
暗い指紋パターンが得られるが、稜線部の明るさが小さ
く、一方、谷間部は稜線部で吸収された光で照射される
ため暗さが少なくなり、全体としてコントラストが小さ
い指紋パターンしか得られなかった。
【0039】一方、図1に示す、本発明による散乱光方
式の指紋検知装置では、透明基体表面1S上に、中間層
11および表面フィルム層12を設けたので、指の乾燥
や湿潤状態の如何にかかわらず、指紋3Aの凹凸形状を
表面フィルム層12および中間層11に良好に転写する
ことができ、さらに、この転写パターンにより指紋パタ
ーンの検知を行うことにより、汗や脂あるいは浮遊ゴミ
の付着といった外的要因による光学的検知条件の変動を
抑止できる。
【0040】これにより、冬季の乾燥状態や夏季の高温
多湿条件下においても、認識率の低下が見られないばか
りでなく、むしろ平均的には97%以上と認識率の向上
を図ることができた。したがって、この種の指紋検知装
置を用いた指紋検知個人識別システムは、従来、少人数
グループ内での使用など、用途が限定されていたが、本
発明による指紋検知装置を用いることにより、様々な局
面で広く応用展開することが可能となる。
【0041】また、本発明による指紋検知装置では、透
明基体表面1Sに細かな凹凸からなる散乱面を設けたの
で、散乱光方式であるにもかかわらず、従来の散乱光方
式とは明暗が逆転した指紋パターン、すなわち指紋3A
の稜線部が暗く、谷間部が明るい指紋パターンが得られ
る。これは、前述した全反射光方式と同様の指紋パター
ンであり、指3を透明基体表面1Sに当てていない場合
には全体が白くなるため、例えばCCDセンサのように
イメージセンサでパターンを読み取るときに、センサの
白レベル調整が容易となり、従来の散乱光方式のよう
に、白レベル調整用の光源を設ける必要がなく、実用的
に好ましい。
【0042】さらに、本発明では、指紋3Aの稜線部に
おいて散乱よりも吸収が支配的であることを利用したこ
とから、非常に高いコントラストの指紋パターンを得る
ことができる。一例として、従来の全反射光方式(図3
参照)における白レベルを100とした場合、従来の散
乱光方式(図4参照)における白レベルは20以下であ
るが、本発明の散乱光方式によれば、白レベルは80以
上であり、従来の全反射光方式と同等レベルにまで高め
ることができる。
【0043】なお、白レベルにおいて入射光のほぼ全量
が出射される全反射光方式に対して、散乱光方式では散
逸する光成分を無くすことは困難であるため、全反射光
方式と同一レベルまで向上させることは原理的に不可能
であるが、本発明によれば、実用的には全く問題のない
レベルが達成される。また、本発明によれば、散乱光方
式が有する利点、すなわち指紋正面から見た指紋パター
ンが得られるという利点を十分活用できることから、全
反射光方式のように、指紋の斜めから見た指紋パターン
の歪み補正する必要がなく、光学レンズの焦点深度が浅
くて済み、装置の小型化を実現できる。
【0044】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、請求項
1として、指紋が押圧される側の表面に細かな凹凸から
なる散乱面が形成された透明な平行平板からなり、第1
の屈折率を有する透明基体と、この透明基体表面上に形
成された第2の屈折率を有する薄膜からなり、指の押圧
に応じて指紋の凹凸が転写される表面フィルム層と、こ
の表面フィルム層により透明基体表面との間に薄く密封
された第1および第2の屈折率より小さい第3の屈折率
を有する気体または流動体からなり、指の押圧に応じて
表面フィルム層を介して指紋の凹凸が転写される中間層
とを設けて、透明基体の指紋が押圧される側とは反対側
から、指の押圧に応じて透明基体表面に対し表面フィル
ム層または中間層が接した場合に、透明基体表面で生じ
る入射光の振る舞いの違い、すなわち吸収または散乱の
違いによる反射光の変化を、指紋パターンとして検出す
るようにしたものである。
【0045】したがって、従来のように、透明基体に直
接指を押し当てるものと比較して、指紋の凹凸が表面フ
ィルム層および中間層にそれぞれ転写されて、間接的に
透明基体表面に対して伝達されるものとなり、汗や脂あ
るいは埃などが指紋に付着している場合、あるいは指が
乾燥して指紋の稜線部の微細な凹凸が顕著となる場合で
あっても、常に良好な指紋パターンを得ることができ
る。また、指紋正面からの指紋パターンを得ることがで
き、従来の全反射光方式における指紋パターンに対する
斜め歪み補正が不要となるとともに、光学レンズの焦点
深度が浅くて済み、装置の小型化が実現できる。
【0046】さらに、指紋の稜線部において散乱よりも
吸収が支配的であることを利用したことから、従来の散
乱光方式と比較して、非常に高いコントラストの指紋パ
ターンを得ることができる。また、全反射光方式と同様
に、指を当てていない場合に全体が白くなるため、例え
ばCCDセンサのようにイメージセンサでパターンを読
み取るときに、センサの白レベル調整が容易となり、従
来の散乱光方式のように、白レベル調整用の光源を設け
る必要がなく、実用的に好ましい。
【0047】また、請求項2として、請求項1記載の指
紋検知装置において、透明基体の散乱面は、深さ1〜3
0μmであって、好ましくは深さ5〜20μmの凹凸か
ら形成したので、この散乱面により入射光が適度に散乱
され、良好な精細度とコントラストを有する指紋パター
ンが得られる。また、請求項3として、請求項1記載の
指紋検知装置において、透明基体の散乱面は、角に丸み
を有する細かな凹凸から形成したので、指の押圧時に、
指紋の稜線部において表面フィルム層と散乱面の細かな
凹凸とを良好に密着でき、明瞭な指紋パターンが得られ
る。
【0048】また、請求項4は、請求項1記載の指紋検
知装置において、表面フィルム層に、5〜50μmであ
って、好ましくは10〜30μmの膜厚を有するプラス
チックフィルムを用いたので、表面フィルム層を指紋の
凹凸に良好になじませることができるとともに、指紋検
知時に必要な機械的な強度を確保できる。また、請求項
5は、請求項4記載の指紋検知装置において、表面フィ
ルム層の透明基体と対向する表面に、指の押圧により透
明基体表面の散乱面の細かな凹凸と密着する粘弾性膜を
設けたので、表面フィルム層として、比較的弾性力の小
さいプラスチックフィルムを用いた場合でも、この粘弾
性膜により、指の押圧時に、指紋の稜線部において表面
フィルム層と散乱面の細かな凹凸とを良好に密着でき、
明瞭な指紋パターンが得られる。
【0049】また、請求項6として、請求項1記載の指
紋検知装置において、表面フィルム層に、50μm以下
の膜厚を有するゴム材料を用いたので、指の押圧時に、
指紋の稜線部において表面フィルム層と透明基体の散乱
面の細かな凹凸とを良好に密着できるとともに、効果的
に光を吸収できる。また、請求項7として、請求項6記
載の指紋検知装置において、表面フィルム層の指紋が押
圧される側の表面に、離型性を有する薄膜からなる潤滑
膜を設けたので、比較的密着性の高いゴム材料を用いた
場合でも、表面フィルム層に指を押し当てる場合に容易
に脱着でき、指の脱着などによる表面フィルム層の破損
を抑止できる。また、請求項8として、請求項1記載の
指紋検知装置において、中間層に、室温で5000mm
2/s以下であって、好ましくは1000mm2/s以下の
動粘度を有する流動体を用いたので、指の押圧時に、迅
速に流動体内圧を平衡(バランス)させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態による指紋検知装置を
示す説明図である。
【図2】 透明基体表面における光の振る舞いを示す説
明図である。
【図3】 従来の指紋検知装置(全反射光方式)を示す
説明図である。
【図4】 従来の他の指紋検知装置(散乱光方式)を示
す説明図である。
【図5】 透明基体表面での指の接触状態を示す説明図
である。
【符号の説明】
1…透明基体、1S…透明基体表面、3…指、3A…指
紋、31…稜線部(凸部)、32…谷間部(凹部)、3
5…隙間、36…汗または脂、4…光源、5…画像検出
部、8…空気、11…中間層、12…表面フィルム層、
12A…潤滑膜、12B…粘弾性膜。

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基体表面に押し当てられた指の指紋
    に対して透明基体内側から入射光を照射し、その反射光
    から指紋パターンを検出する指紋検知装置において、 指紋が押圧される側の表面に細かな凹凸からなる散乱面
    が形成された透明な平行平板からなり、第1の屈折率を
    有する透明基体と、 この透明基体表面上に形成された第2の屈折率を有する
    薄膜からなり、指の押圧に応じて指紋の凹凸が転写され
    る表面フィルム層と、 この表面フィルム層により透明基体表面との間に薄く密
    封された第1および第2の屈折率より小さい第3の屈折
    率を有する気体または流動体からなり、指の押圧に応じ
    て表面フィルム層を介して指紋の凹凸が転写される中間
    層と、 透明基体の指紋が押圧される側とは反対側に設けられ、
    中間層に転写された指紋の凹凸に応じて透明基体表面に
    表面フィルム層が接触するか否かと、透明基体および表
    面フィルム層と中間層の屈折率の相違に起因して、透明
    基体表面で生じる入射光の振る舞いの違いによる反射光
    の変化を、指紋パターンとして検出する画像検出部とを
    備えることを特徴とする指紋検知装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の指紋検知装置において、 透明基体の散乱面は、深さ1〜30μmであって、好ま
    しくは深さ5〜20μmの凹凸からなることを特徴とす
    る指紋検知装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の指紋検知装置において、 透明基体の散乱面は、角に丸みを有する細かな凹凸から
    なることを特徴とする指紋検知装置。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の指紋検知装置において、 表面フィルム層は、5〜50μmであって、好ましくは
    10〜30μmの膜厚を有するプラスチックフィルムか
    ら形成することを特徴とする指紋検知装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の指紋検知装置において、 表面フィルム層は、透明基体と対向する表面に、指の押
    圧により透明基体表面の散乱面の細かな凹凸と密着する
    粘弾性膜を有することを特徴とする指紋検知装置。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の指紋検知装置において、 表面フィルム層は、50μm以下の膜厚を有するゴム材
    料から形成することを特徴とする指紋検知装置。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の指紋検知装置において、 表面フィルム層は、指紋が押圧される側の表面に、離型
    性を有する薄膜からなる潤滑膜を有することを特徴とす
    る指紋検知装置。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の指紋検知装置において、 中間層は、室温で5000mm2/s以下であって、好ま
    しくは1000mm2/s以下の動粘度を有する流動体か
    ら形成することを特徴とする指紋検知装置。
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