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JP3052010B2 - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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JP3052010B2
JP3052010B2 JP3202200A JP20220091A JP3052010B2 JP 3052010 B2 JP3052010 B2 JP 3052010B2 JP 3202200 A JP3202200 A JP 3202200A JP 20220091 A JP20220091 A JP 20220091A JP 3052010 B2 JP3052010 B2 JP 3052010B2
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JP
Japan
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surface layer
sliding
crystal
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crystals
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義和 藤沢
誠 辻
丈志 成重
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Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は摺動部材、特に、相手部
材との摺動面を持つ合金製表面層を備えた摺動部材に関
する。
【0002】
【従来の技術】本発明者等は、この種摺動部材として、
前記表面層を、その摺動特性を向上させるべく、Pb−
Sn系合金の柱状晶より構成したすべり軸受を開発し
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記摺動部
材を基本として、それをさらに発展させることにより、
部材本体に対する表面層の剥離強度および摺動面に沿う
面内における表面層の引張強さを向上させることができ
るようにした前記摺動部材を提供することを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、相手部材との
摺動面を持つ合金製表面層を備えた摺動部材において、
前記表面層は、分散状態で存在する複数の柱状晶と、そ
れら柱状晶間を埋める粒状晶の集合体とを有し、前記柱
状晶は、角錐体状先端部を前記集合体から突出させた柱
状晶および角錐台状先端部を前記集合体から突出させた
柱状晶の少なくとも一方であることを特徴とする。
【0005】
【実施例】図1,図2において、摺動部材としてのすべ
り軸受1は、エンジンにおけるクランクシャフトのジャ
ーナル部、コンロッドの大端部等に適用されるもので、
第1および第2半体11 ,12 よりなる。両半体11
2 は同一構造を有し、部材本体としての基板2と、そ
の基板2の内周面に形成されて相手部材xとの摺動面3
aを持つ合金製表面層3とを備えている。基板2は裏金
1 と、その裏金21 表面に形成されて表面層3を支持
するライニング層22 とよりなる。裏金21 およびライ
ニング層22 間にはCuメッキ層が、またライニング層
2 および表面層3間にはNiメッキバリヤ層がそれぞ
れ必要に応じて設けられる。
【0006】裏金21 は圧延鋼板より構成され、その厚
さはすべり軸受1の設定厚さにより決められる。ライニ
ング層22 はCu、Cu系合金、Al、Al系合金等よ
り構成され、その厚さは50〜500μm、通常は、3
00μm程度である。表面層3はPb合金より構成さ
れ、その厚さは5〜50μm、通常は、20μm程度で
ある。
【0007】表面層3を構成するPb合金は、80〜9
7重量%のPbと、3〜20重量%のSnとを含有し、
必要に応じてCu、In、Ag、Tl、Nb、Sb、N
i、Cd、Te、Bi、Mn、Ca、Baから選択され
る少なくとも一種を10重量%以下含有する。
【0008】Cu、Ni、Mnは表面層3の硬さを向上
させる機能を有するが、その含有量が10重量%を上回
ると、硬さが高くなり過ぎて初期なじみ性が低下する。
Cu等を添加する場合には、表面層3の硬さHmvが1
5〜25になるように、その含有量を調整するのが望ま
しい。
【0009】In、Ag、Tl、Nb、Sb、Cd、T
e、Bi、Ca、Baは、表面層3を軟化して初期なじ
み性を改善する機能を有するが、その含有量が10重量
%を上回ると、表面層3の強度が低下する。In等を添
加する場合には、表面層3の硬さHmvが8〜15にな
るように、その含有量を調整するのが望ましい。
【0010】表面層3は、電気メッキ法により形成され
るもので、メッキ液としては、例えば1リットル当り4
0〜180gのPb2+、1リットル当り1.5〜35g
のSn2+、必要に応じて1リットル当り15g以下のC
2+を含むホウフッ化系メッキ液が用いられる。またメ
ッキ液の温度は10〜35℃、陰極電流密度は3〜15
A/dm2 にそれぞれ設定される。
【0011】図3(a)は、摺動面3aにおけるPb合
金の結晶構造を示す電子顕微鏡写真(10,000倍)であ
り、同図(b)は(a)の要部概略図である。図4
(a)は、表面層3を縦断した場合におけるPb合金の
結晶構造を示す電子顕微鏡写真(5,000 倍)であり、同
図(b)は(a)の要部概略図である。表面層3は8重
量%のSnと、2重量%のCuとを含有するPb合金よ
りなる。その表面層3はCu合金製ライニング層22
に形成され、表面層3を形成する際の電気メッキ処理に
おける陰極電流密度は4A/dm2 に設定された。
【0012】図2〜図4に明示するように、表面層3
は、ライニング層22より分散状態で延出する複数の柱
状晶41 と、それら柱状晶41 間を埋める粒状晶の緻密
な集合体5とよりなる。各柱状晶41 は集合体5から突
出する四角錐体状先端部(角錐体状先端部)6を有す
る。
【0013】摺動面3aにおける柱状晶41 の面積率は
60%以下に設定され、図3の例では60%である。こ
の面積率は、表面層3における柱状晶41 の存在率に略
匹敵する。また集合体5を形成する粒状晶の粒径は0.
5〜3μm、集合体5の密度は80%以上が適当であ
る。
【0014】図5は、柱状晶41 のX線回折図であり、
ミラー指数で(200)面および(400)面の回折ピ
ークのみが認められる。
【0015】ここで、結晶面の配向性を表わす指数とし
て配向指数Oeを、 (ただし、hklはミラー指数、Ihklは(hkl)
面の積分強度、ΣIhklはIhklの総和)と定義す
ると、或(hkl)面において、その配向指数Oeが1
00%に近ければ近いほど、その(hkl)面と直交す
る方向へ配向した結晶面が多いことになる。
【0016】前記Pb合金結晶の(200)面および
(400)面における積分強度Ihklおよび配向指数
Oeは表1の通りである。
【0017】
【表1】 表1より、Pb合金結晶の(h00)面における配向指
数Oeは100%であり、したがってPb合金結晶は、
結晶軸a,b,cにおいて各軸方向に配向した結晶面、
即ち(h00)面を持つことになる。
【0018】柱状晶41 は傾く場合があり、その傾き角
θは次のように設定される。即ち、図6に示すように四
角錐体状先端部6の底面側に、その先端部6を突出させ
て摺動面3aに沿う仮想面Aを規定し、また四角錐体状
先端部6の頂点bと底面中央部cを通る直線dが、底面
中央部cを通り仮想面Aに垂直な基準線eに対してなす
傾き角をθと規定したとき、柱状晶41 の傾き角θは0
°≦θ≦30°に設定される。傾き角θが、θ>30°
になると、(h00)面以外の結晶面が回折される。
【0019】前記のように、結晶面を(h00)面と直
交する方向に配向させると、Pb合金の結晶構造が面心
立方構造であることから、配向方向における原子密度が
高くなるので、柱状晶41 の硬度が増大する。
【0020】図7は、集合部5のX線回折図である。本
図からは特定の結晶面への配向は認められない。種々の
(hkl)面における積分強度Ihklおよび配向指数
Oeは表2の通りである。
【0021】
【表2】 図7および表2から、集合体5は、結晶面がランダムに
配向した粒状晶より構成されていることが判る。
【0022】表面層3を前記のように構成すると、摺動
面3aにおける四角錐体状先端部6を優先的に摩耗させ
て初期なじみ性を良好にすることができ、また四角錐体
状先端部6の存在により摺動面3aの表面積を拡大し
て、表面層3に十分な保油性を持たせることができる。
これにより、摺動開始初期において、表面層3の耐焼付
き性を向上させることができる。
【0023】また、粒状晶が緻密な集合体5を形成して
いること、四角錐体状先端部6の摩耗で生じた平坦面と
相手部材との間に油膜が形成されること、および柱状晶
1 の(h00)面における配向指数Oeが高いこと等
により、摺動開始初期経過後において表面層3は優れた
耐摩耗性を発揮する。
【0024】このように、(h00)面配向の柱状晶4
1 は、表面層3の摺動特性を向上させるために大いに寄
与するものである。
【0025】図8(a)は、摺動面3aにおける柱状晶
1 の面積率と表面層3の剥離強度との関係を示す。
【0026】剥離強度は、剥離幅を測定することにより
判断されたもので、その剥離幅の測定は、図8(b)に
示すように、表面層3に碁盤目状に切れ目fを入れる、
180℃にて6時間加熱した後水中で冷却し、これを1
サイクルとして5サイクル繰返す、超音波キャビティシ
ョンを行う、といった各操作後、表面層3の切れ目fで
囲まれた部分gがライニング層22 から剥離していると
き、切れ目fから密着部hまでの距離を測定して、その
最大距離を剥離幅kとした。
【0027】図9(a)は、摺動面3aにおける柱状晶
1 の面積率と表面層3の引張強さとの関係を示す。
【0028】引張テストは、次のような条件下で行われ
た。図9(b)はテストピース7を示し、そのテストピ
ース7の寸法は、全長L1 =50mm、両端部の幅W1
10.5mm、肩部間の長さL2 =32mm、平行部の長さ
3 =32mm、平行部の幅W2 =6mm、厚さ20μmで
ある。このような箔状テストピース7は、それと同一寸
法のステンレス板に電気メッキ処理を施すことによっ
て、前記表面層3と同一構成のテストピースを形成し、
次いでテストピース7をステンレス板から剥離する、と
いった方法により製作された。テスト条件は、室温下、
引張速度20mm/min である。
【0029】図8(a),図9(a)から明らかなよう
に、摺動面3aにおける柱状晶41 の面積率を60%以
下に設定することによって、表面層3の剥離強度および
引張強さを向上させることができる。摺動面3aにおけ
る柱状晶41 の面積率は好ましくは50%以下である。
【0030】このような効果が得られる理由は次の通り
である。即ち、ライニング層22 に対する柱状晶41
密着強度および柱状晶41 相互間の接合強度は、粒状晶
の集合体5に比べてやや劣るが、表面層3を、柱状晶4
1 と粒状晶の集合体5とよりなる複合構造に構成する
と、前記密着強度および接合強度に対する柱状晶41
影響を緩和することができるものである。
【0031】図10は、表面層3において、柱状晶42
が四角錐台状先端部(角錐台状先端部)8を有する場合
を示す。表面層3は、四角錐体状先端部6を有する柱状
晶41 および四角錐台状先端部8を有する柱状晶42
備えていてもよい。
【0032】これらの場合、摺動面3aの少なくとも一
部が四角錐台状先端部8の上底面mより形成されること
から、摺動開始初期より相手部材xと上底面mとの間に
油膜を形成させて初期なじみ性を良好にすると共に安定
化させることができる。
【0033】複数の柱状晶41 ,42 と粒状晶の集合体
5とよりなる複合領域が摺動面3aの一部を形成する、
即ち、複合領域が分散状態で存在するものも本発明に包
含される。この場合、摺動面3aにおける複合領域の面
積率は50%以上に設定される。
【0034】柱状晶42 が四角錐台状先端部8を持つ場
合の傾き角θは、図10に示すように、上底面中央部n
および下底面中央部pを通る直線rと下底面中央部pを
通り仮想面Aに垂直な基準線eとがなす角度として規定
される。この場合にも、傾き角θは、0°≦θ≦30°
に設定される。
【0035】前記実施例では、表面層を電気メッキ法に
より形成したが、その他の表面層形成方法としては、P
VD、イオンプレーティング、CVD、スパッタリング
等の気相を介する形成方法を挙げることができる。
【0036】本発明はすべり軸受に限らず、他の摺動部
材にも適用される。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、表面層の構造を前記の
ように特定することによって、表面層の優れた摺動特性
を損うことなく、その剥離強度および引張強さを向上さ
せた摺動部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】すべり軸受の分解平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】(a)は摺動面におけるPb合金の結晶構造を
示す顕微鏡写真であり、(b)は(a)の要部概略図で
ある。
【図4】(a)は表面層を縦断した場合におけるPb合
金の結晶構造を示す顕微鏡写真であり、(b)は(a)
の要部概略図である。
【図5】Pb合金よりなる柱状晶のX線回折図である。
【図6】柱状晶の傾き角測定法を示す説明図である。
【図7】Pb合金の粒状晶よりなる集合体のX線回折図
である。
【図8】(a)は摺動面における柱状晶の面積率と表面
層の剥離幅との関係を示すグラフであり、(b)は剥離
テストの説明図である。
【図9】(a)は摺動面における柱状晶の面積率と表面
層の引張強さとの関係を示すグラフであり、(b)はテ
ストピースの平面図である。
【図10】柱状晶の他例における傾き角測定法を示す説
明図である。
【符号の説明】
1 すべり軸受(摺動部材) 3 表面層 3a 摺動面 41 ,42 柱状晶 5 集合体 6 四角錐体状先端部(角錐体状先端部) 8 四角錐台状先端部(角錐台状先端部) x 相手部材
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−17897(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 33/12 F16C 33/10

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相手部材(x)との摺動面(3a)を持
    つ合金製表面層(3)を備えた摺動部材において、前記
    表面層(3)は、分散状態で存在する複数の柱状晶(4
    1 ,42 )と、それら柱状晶(41 ,42 )間を埋める
    粒状晶の集合体(5)とを有し、前記柱状晶(4 1 ,4
    2 )は、角錐体状先端部(6)を前記集合体(5)から
    突出させた柱状晶(4 1 )および角錐台状先端部(8)
    を前記集合体(5)から突出させた柱状晶(4 2 )の少
    なくとも一方であることを特徴とする摺動部材
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