JP2882139B2 - 複合浮動ヘッドスライダ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は磁気ディスク装置に用い
る複合浮動ヘッドスライダに関し、特に複合浮動ヘッド
スライダの構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の磁気ディスク装置では、装置の起
動・停止に殆どコンタクト・スタート・ストップ（ＣＳ
Ｓ）方式を用いている。これは、磁気ディスクと浮動ヘ
ッドスライダとが接触した状態で磁気ディスク装置の起
動・停止を行なう方式であり、磁気ディスク装置が停止
している状態で浮動ヘッドスライダと磁気ディスクとが
吸着することを避けるために、磁気ディスク面上を適度
に粗す必要があった。このため、浮動ヘッドスライダの
浮上量を必要以上に確保しなけばならず、記録密度向上
の妨げとなっていた。更に、ＣＳＳを行う際の摩擦・摩
耗に係わる粉塵の発生も避けられず、装置の信頼性向上
を妨げる要因となっていた。ところが、磁気ディスク装
置の高記録密度化、高速アクセス化及び高転送レート化
の要望は著しく、浮動ヘッドスライダの低浮上化を進め
なければならない状況にある。

【０００３】また、面記録密度の高密度化や、垂直磁気
記録を実現するために、磁気ヘッドの浮上量は０．０５
ミクロン以下に近づこうとしているが、それに伴って浮
動ヘッドスライダの圧力発生面及び磁気ディスク表面の
平滑度を必然的に上げる必要が生じ、その結果、先に述
べた粉塵によるヘッドクラッシュや磁気ディスクと浮動
ヘッドスライダの吸着の危険性が高まっている。浮動ヘ
ッドスライダと磁気ディスクとの吸着の問題を解決する
手段としては、浮動ヘッドスライダと磁気ディスクとを
接触させることなく磁気ディスク装置の起動・停止を行
う浮動ヘッドスライダとロードアンロード機構が開発さ
れてきている。

【０００４】一方、高速アクセスを実現するために、ア
クセス時の加速度が増大しているが、最大加減速時にお
ける浮動ヘッドスライダの姿勢変動を極力抑えると共
に、磁気ディスクとの接触を避けるために浮動ヘッドス
ライダの小型化をはかり、重心まわりの慣性モーメント
を提言する傾向にある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】磁気ヘッドの浮上量が
０．０５ミクロン以下の領域では、磁気ディスク表面の
保護膜や潤滑剤を考慮すると、浮動ヘッドスライダと磁
気ディスクとはトラッキング時においても断続的に接触
している可能性が高く、アクセス時においては更にその
可能性が高くなる。そのため、接触による磁気ヘッドの
破損や磁気ディスク表面のスクラッチ等の発生を最小限
度に抑えるには、浮動ヘッドスライダを小型にすること
が望ましい。この小型化は先に述べたように、高速アク
セスを実現するためにも好都合である。ところが、浮動
ヘッドスライダの小型化，低浮上化の過程において、浮
動ヘッドスライダにロードスプリング等によって加えら
れる荷重は相当減少する。このためロードスプリングの
曲げ加工による荷重制御が困難になってくる。

【０００６】更に、浮動ヘッドスライダそのものが小型
になっているため、サスペンションに正確に取り付ける
ことも困難になる。また、先に述べたように、磁気ディ
スク装置の停止時において、浮動ヘッドスライダと磁気
ディスクとの吸着を避ける目的でロードアンロード機構
を使用する場合、正圧利用浮動ヘッドスライダでは、小
型化によって正圧発生力が減少しているため、浮動ヘッ
ドスライダを磁気ディスク表面に接近させ、定常浮上状
態にするロード時において、磁気ディスクと浮動ヘッド
スライダとの接触の危険性が非常に高くなる。次に、負
圧利用浮動ヘッドスライダでは、流体アクチュエータ作
用によって自発的にロードされる浮上隙間まで浮動ヘッ
ドスライダをロードアンロード機構によってロードする
必要があるが、やはり浮動ヘッドスライダの小型化によ
って負圧発生力が減少しているため、ロード開始時の浮
上隙間はサブミクロン程度になり、浮動ヘッドスライダ
と磁気ディスクとをその間隔に近づけるよう制御するこ
とは決して容易でない。

【０００７】本発明の目的は以上の問題点を解決し、磁
気ヘッドを搭載する浮動ヘッドスライダの小型化を容易
にし、磁気ディスクと浮動ヘッドスライダの吸着及び接
触を抑制し、更に、アクセス中のヘッドディスクインタ
フェースの信頼性を向上しつつ、サブサブミクロン領域
の浮上量を実現する複合浮動ヘッドスライダを提供する
ことにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の複合浮動ヘッド
スライダは、双胴型の正圧空気軸受面とこの正圧空気軸
受面に囲まれた負圧発生面と負圧力を発生させるクロス
レールとこのクロスレールを昇降させる制御機構とを有
し、かつ磁気ヘッドを搭載する第１の負圧利用浮動ヘッ
ドスライダと、この第１の負圧利用浮動ヘッドスライダ
を支持するサスペンション機構と、このサスペンション
機構を支持する第２の負圧利用浮動ヘッドスライダとを
備え、前記第１及び第２の負圧利用浮動ヘッドスライダ
及び前記サスペンション機構が一体成形され、かつ前記
サスペンション機構は前記第１の負圧利用浮動ヘッドス
ライダの正圧空気軸受面の外周部分、及び前記第２の負
圧利用浮動ヘッドスライダの正圧空気軸受面に囲まれた
負圧発生面の内周部分において一体構造をなすと共に、
前記第１及び第２の負圧利用浮動ヘッドスライダの正圧
空気軸受面が同一平面上に形成してなることを特徴とす
る。また、この複合浮動ヘッドスライダに前記第１の負
圧利用浮動ヘッドスライダに搭載し前記クロスレールを
駆動する圧電素子、もしくはピエゾバイモルフを備えて
もよい。

【０００９】

【実施例】次に、本発明について図面を用いて説明す
る。

【００１０】図１は本発明の第１の実施例を示す平面図
であり、図２はその斜視図である。

【００１１】本実施例の複合浮動ヘッドスライダ１は、
大小２つの負圧利用浮動ヘッドスライダから構成されて
おり、フロントリセス２，３、テーパ４〜７、クロスレ
ール８、可動クロスレール９、正圧発生レール１０〜１
３及び負圧発生リセス１４，１５から構成され、また、
サスペンション１６は磁気ヘッド搭載スライダ１７の正
圧空気軸受面の外周部分と、もう１つの負圧利用浮動ス
ライダの正圧空気受面に囲まれた負圧発生面の内周部分
とに接合されて一体構造をなすと共に、これら大小２つ
の負圧利用浮動スライダの正圧空気軸受面が同一平面上
に形成されている。そして、このサスペンション１６は
磁気ヘッド搭載スライダ１７のピッチ及びロール方向の
運動を抑制する効果を備えている。

【００１２】次に、ロードアンロード機構を用いて複合
浮動ヘッドスライダを定常浮上状態へロードする動作を
図３及び図４を用いて説明する。

【００１３】複合浮動ヘッドスライダ１において負圧利
用大スライダ２０の定常浮上量は、０．２〜０．３ミク
ロン程度、また、負圧利用小スライダ２１は、０．０３
〜０．０５ミクロン程度に設定されている。ロードサス
ペンション２３は曲げ荷重なしで使用するため、まず、
ロードアンロード機構２４が、負圧利用大スライダ２０
を支持するロードサスペンション２３を矢印で示す磁気
ディスク２５の表面の方向へ押し下げ、負圧利用大スラ
イダ２０に生じる負圧発生力がロードサスペンション２
３の反力より大きくなる位置まで負圧利用大スライダ２
０を移動させる。

【００１４】その後、負圧利用大スライダ２０は、回転
する磁気ディスク２５との間を流れる空気流と負圧利用
大スライダ２０下面の形状とによって生じる負圧力によ
る流体アクチュエータ作用により、ロードサスペンショ
ン２３の反力と負圧力とが釣り合う定常浮上状態へ自発
的に移行する。図４（ａ）及び同図（ｂ）は負圧利用小
スライダ２１がロードされる様子を示す部分側面図であ
って、ここでは可動クロスレール駆動機構としてリニア
モータを使用した例を示している。図４（ａ）は初期状
態において、可動クロスレール９が負圧リセス１５と同
一平面上にありり、負圧利用小スライダ２１が正圧利用
スライダとして作用している状態を示す。また、図４
（ｂ）はロードを行う場合であって、可動クロスレール
９のテーパ部分をリニアモータ２６が押し、可動クロス
レール９が下げていくことによって徐々に負圧が発生し
ていき、負圧利用小スライダ２１が磁気ディスク２５上
にロードされ、負圧利用小スライダ２１を支持するサス
ペンション１６の反力と負圧力とが釣り合う定常浮上状
態へ移行し、完全にリードライトが行える状態になる。

【００１５】アンロードについては、まず、リニアモー
タ２６を戻すと、可動クロスレール９が板ばね２７の反
力で上がり、負圧発生力が減少するため、負圧利用小ス
ライダ２１が吸引される力が減少し、その結果、負圧利
用小スライダ２１のレールには正圧のみが発生し、アン
ロードが完了する。そして、負圧利用大スライダ２０の
アンロードは、磁気ディスク２５の回転数を下げ、負圧
発生力を減少させサスペンション１６の反力でアンロー
ドを行う。

【００１６】図５（ａ）及び同図（ｂ）は本発明の第２
の実施例を示す部分側面図である。ここでは可動クロス
レール９の駆動機構として積層圧電素子２８を使用して
いる。図５（ａ）は負圧小スライダがロードされていな
い状態であって、積層圧電素子２８は一端を固定台２９
に固着され、他端は可動クロスレール９のテーパ部に当
接している。また、板ばね２７は一端が可動クロスレー
ル９に接合され、他端は負圧小スライダ２１に当接して
いる。図５（ｂ）はロードを行なう場合の状態を示す。

【００１７】まず、積層圧電素子２８に電圧を印加して
伸長させ、可動クロスレール９のテーパ部分を押し下げ
て負圧発生面に負圧力を発生させ、負圧利用小スライダ
２１を磁気ディスク２５上にロードする。アンロードは
積層圧電素子２８に印加されている電圧を取り除くと、
積層圧電素子２８が元の状態（大きさ）に戻り、板バネ
２７の反力によって可動クロスレール９が持ち上がり、
負圧力が減少してアンロードを行う。

【００１８】図６（ａ）及び同図（ｂ）は本発明の第３
の実施例を示す部分側面図である。ここでは可動クロス
レール９の駆動機構としてピエゾバイモルフ３０を使用
している。図６（ａ）はロードしていない状態であっ
て、ピエゾバイモルフ３０の一端は支持台２９に固定さ
れ、他端は可動クロスレール９ａ上に当接している。そ
して、ロードする場合は、ピエゾバイモルフ３０に電圧
を引火して歪ませることにより可動クロスレール９ａを
押し下げ、負圧発生面に負圧力を発生させて負圧利用小
スライダ２１を磁気ディスク２５上にロードする。ま
た、アンロードする場合は、ピエゾバイモルフ３０に印
加していた電圧を取り除いて歪を取り去ると、可動クロ
スレール９ａは板バネ２７の反力で持ち上がり、負圧力
が減少して負圧利用小スライダ２１はアンロードを行
う。

【００１９】以上、本発明の実施例について詳細に述べ
たが、ロードアンロード機構や一体形成されたサスペン
ションについては、所定の特性を有するものであれば変
更が可能であり、これらの変更は本発明の趣旨を逸脱し
ない範囲で行なってもよく、以上の記述が本発明の範囲
を限定するものではない。

【００２０】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、現
在用いられているスライダと同程度のスライダ中に磁気
ヘッドを搭載した負圧力を制御可能な機構を備えた負圧
浮動ヘッド機構を内包することにより、磁気ヘッドと同
程度の大きさのスライダを容易にサブサブミクロン浮上
させることができ、また、ロードアンロード機構と組み
合わせることによって浮動ヘッドスライダと磁気ディス
クとの吸着を避けることができる。更に、アクセス時や
記録再生以外の時に磁気ヘッドの浮上量を高くすること
ができるため、結果として、高記録密度で信頼性の高い
磁気ディスク装置を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１の実施例を示す平面図である。

【図２】本発明の第１の実施例を示す部分斜視図であ
る。

【図３】本発明の第１の実施例において負圧利用大スラ
イダがロードされる状態を示す側面図である。

【図４】本発明の第１の実施例において負圧利用小スラ
イダのアンロード時及びロード時の状態を示す部分側面
図である。

【図５】本発明の第２の実施例において負圧利用小スラ
イダのアンロード時及びロード時の状態を示す斜視図で
ある。

【図６】本発明の第３実施例において負圧利用小スライ
ダのアンロード時及びロード時の状態を示す斜視図であ
る。

【符号の説明】 １ 複合浮動ヘッドスライダ ２，３ フロントリセス ４〜７ テーパ ８ クロスレール ９，９ａ 可動クロスレール １０〜１３ 正圧発生レール １４，１５ 負圧発生リセス １６ サスペンション １７ 磁気ヘッド搭載スライダ １８ 磁気ヘッド ２０ 負圧利用大スライダ ２１ 負圧利用小スライダ ２３ ロードサスペンション ２４ ロードアンロード機構 ２５ 磁気ディスク ２６ リニアモータ ２７ 板ばね ２８ 積層圧電素子 ２９ 固定台 ３０ ピエゾバイモルフ

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 双胴型の正圧空気軸受面とこの正圧空気
   軸受面に囲まれた負圧発生面と負圧力を発生させるクロ
   スレールとこのクロスレールを昇降させる制御機構とを
   有し、かつ磁気ヘッドを搭載する第１の負圧利用浮動ヘ
   ッドスライダと、この第１の負圧利用浮動ヘッドスライ
   ダを支持するサスペンション機構と、このサスペンショ
   ン機構を支持する第２の負圧利用浮動ヘッドスライダと
   を備え、前記第１及び第２の負圧利用浮動ヘッドスライ
   ダ及び前記サスペンション機構が一体成形され、かつ前
   記サスペンション機構は前記第１の負圧利用浮動ヘッド
   スライダの正圧空気軸受面の外周部分、及び前記第２の
   負圧利用浮動ヘッドスライダの正圧空気軸受面に囲まれ
   た負圧発生面の内周部分において一体構造をなすと共
   に、前記第１及び第２の負圧利用浮動ヘッドスライダの
   正圧空気軸受面が同一平面上に形成してなることを特徴
   とする複合浮動ヘッドスライダ。
2. 【請求項２】 請求項１記載の複合浮動ヘッドスライダ
   において、前記第１の負圧利用浮動ヘッドスライダに搭
   載し前記クロスレールを駆動する圧電素子を備えること
   を特徴とする複合浮動ヘッドスライダ。
3. 【請求項３】 請求項１記載の複合浮動ヘッドスライダ
   において、前記第１の負圧利用浮動ヘッドスライダに搭
   載し前記クロスレールを駆動するピエゾバイモルフを備
   えることを特徴とする複合浮動ヘッドスライダ。