JP2872391B2 - チップ加工用治具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、例えば両側面の角部に研磨加工が施される
被加工用チップを保持するチップ加工用治具に関する。

［従来の技術］ 従来より、例えば両側面の角部に研磨加工が施される
三角柱状チップを保持するチップ研磨加工用治具があ
る。このチップ研磨加工用治具は、三角柱状チップが嵌
め込まれる支持部を有するホルダー、および支持部との
間にチップを挟み込んでボルトによる締付け力によって
チップを支持部に押さえ付けて保持する保持部を有する
押え金を備えていた。そして、このチップ研磨加工用治
具においては、両側面の角部に研磨加工を施す際に、一
方の側面の角部の研磨加工が終了したらホルダーと押え
金との間からチップを取り外した後、このホルダーと左
右対称形状のホルダーに再度取り付けて他方の側面の角
部の研磨加工を行っていた。

ところが、このように、チップをホルダーと押え金と
の間から取り外した後に、他方の側面の角部の研磨加工
を行うと、両側面の角部の研磨箇所に寸法差ができてし
まう。

そこで、従来技術として、ホルダーと押え金との間に
チップを挟持した際に、両側面の角部の研磨加工を行う
ことが考えられる。

［発明が解決しようとする課題］ ところが、その従来技術においては、チップの他方の
側面の角部に研磨加工を施す際に、砥石が他方の側面に
当てられ、研磨し始めると、チップの他方の側面から一
方の側面方向に大きな力が加わる。

このため、チップは、この他方の側面側に何等支える
ものがないので、ホルダーと押え金との間から外れてし
まう。よって、ホルダーと押え金との間にチップを挟持
して、両側面の角部の研磨加工を行う場合には、他方の
側面の角部に研磨加工が行えないという課題があった。

そこで、押え金の他に他方の側面を保持する横部材を
設けたものもあるが、チップの挟持作業にホルダーと押
え金との間に挟持する工程と、ホルダーと横部材との間
に挟持する工程とが必要となり、チップの挟持作業の工
程が増加してしまうという課題があった。

本発明は、チップの挟持作業の工程を増加させること
なく、両側面を加工する際にチップのホルダーと押え金
との間からの脱落を防止することが可能なチップ加工用
治具の提供を目的とする。

［課題を解決するための手段］ （請求項１） 本発明のチップ加工用治具は、略平坦な取付面、この
取付面の面方向に対して略直交する方向に設けられて、
両側面に加工が施される多角柱状のチップを支持する支
持部を有するホルダーと、このホルダーの取付面に載置
される基体部、およびこの基体部より突出するように延
長されて、前記チップを保持する保持部を有する押え金
と、前記チップの側面の面方向に沿って前記押え金の基
体部を前記ホルダーの取付面に締め付ける締付け手段と
を備え、前記支持部は、前記チップの一方の側面を支え
る支持壁、およびこの支持壁より外方に膨出形成され
て、前記チップの外周面を支える凸状壁を有し、前記保
持部は、前記凸状壁に対向するように配されて、前記チ
ップの外周面を係止して前記凸状壁との間に前記チップ
を挟み込む押圧部、および前記支持壁に対向するように
配されて、前記チップの一方の側面の裏面となる他方の
側面を係止して前記支持壁との間に前記チップを挟み込
む保持片を有する構造を採用した。

なお、多角柱状チップには、三角柱状チップ、四角柱
状チップまたは五角柱状以上の多角柱状チップが適用で
きる。また、締付け手段には、ねじ、ボルトまたはナッ
ト等が適用できる。

（請求項２） 前記押え金は、前記締付け手段をやや緩めると、前記
締付け手段を中心にして回動可能とされている。

［作用］ （請求項１） ホルダーの支持壁と押え金の保持片との間に多角柱状
のチップを挟み込んで、締付け手段の締付け力によりチ
ップの側面の面方向に沿って押え金の基体部をホルダー
の取付面に締め付ける。すると、チップが押え金の押圧
部に押え付けられてホルダーの凸状壁と押え金の押圧部
との間にチップが挟持される。

このとき、チップの一方の側面が支持壁によって支え
られ、チップの他方の側面が保持片によって支えられて
いるので、チップの両側面に加工を施す際に、ホルダー
と押え金との間からチップが外れることはなく、チップ
の両側面の加工が容易に行える。

（請求項２） 押え金に保持片が設けられていると、チップを脱着す
る際に保持片が邪魔となる可能性が考えられる。

このため、支持部へチップを嵌め込む際には、押え金
の保持片をチップの側方に配置することによって、押え
金の保持片が邪魔とならずに容易に支持部へチップを嵌
め込める。

また、チップをホルダーと押え金との間に挟み込む際
には、押え金の保持片をチップの側方位置から締付け手
段を中心に回転させてチップに接触させる位置に配置す
る。

よって、締付け手段の締付け力をやや緩めるだけで、
ホルダーに対して押え金が容易に回動するので、押え金
をホルダーから大きく外すことなく、チップがホルダー
と押え金との間から脱着される。

［発明の効果］ （請求項１） チップの挟持作業の工程を増加させることなく、チッ
プを挟持でき、且つチップの両側面を加工する際にチッ
プのホルダーと押え金との間からの脱落を防止でき、１
つのチップ加工用治具にてチップの両側面の加工が可能
となる。

（請求項２） 押え金をホルダーに対して回動させるという工程でチ
ップをホルダーと押え金との間に挟み込むことができる
ので、チップの支持部の脱着時に押え金をホルダーから
大きく外すことなく挟持作業および取外し作業を行うこ
とができる。

［実施例］ 本発明のチップ加工用治具を第１図ないし第11図に示
す一実施例に基づき説明する。

第１図ないし第５図はチップ加工用治具を示す図であ
る。

チップ研磨加工用治具１は、チップ研磨加工用機械
（図示せず）に固定されるホルダー２と、スローアウェ
イチップ（以下チップと略す）３をホルダー２に押え付
けて保持する押え金４とを備える。

第６図および第７図はホルダー２の主要部を示す図で
ある。

ホルダー２は、先端部の図示上面（第１図上面）に押
え金４を取り付ける取付部（取付面）５を有する。この
取付部５には、上下方向に貫通したねじ穴６と、つの字
状の溝部７とが形成されている。また、ホルダー２は、
先端部の側面にチップ３が嵌め込まれる嵌合部８を有す
る。この嵌合部８は、本発明の支持部であって、チップ
３の第１側面に接触してチップ３を支える支持壁９と、
チップ３の第１外周面に接触してチップ３を支える突壁
部（凸状壁）10、およびチップ３の第２外周面に接触し
てチップ３を支える段壁部（凸状壁）11を有する。

突壁部10および段壁部11は、Ｖ字状に配置され、支持
壁９より前方にチップ３のほぼ厚み分だけ膨出してい
る。また、突壁部10と段壁部11との間には、逃げ溝12が
形成されている。

突壁部10は、第１図において図示左斜め方向に尖った
端部を有し、チップ３の両側面の角部の研磨加工をし易
いようにチップ３より板厚を薄く形成されている。な
お、段壁部11の図示上方には、押え金４の回動を容易に
するための切欠き13が形成される。さらに、ホルダー２
のシャンク部は、加工機械の固定部材に組み付けられ
る。

チップ３は、三角柱状を呈し、超硬合金（炭化タング
ステンを主体とした焼結物）、サーメット（炭化チタン
を主体とした焼結物またはこれに類似のもの）、または
セラミック（酸化アルミニウムを主体とした焼結物また
はこれに類似のもの）等からなり、溝入れチップなどに
利用される。このチップ３は、第１、第２側面、第１〜
第３外周面および切れ刃を有する。第２側面は、第１側
面の裏面である。

なお、チップ３は、チップ研磨加工用治具１に保持さ
れて第１、第２側面の角部が砥石によって、例えば第８
図および第９図に示す形状に研磨加工される。

また、チップ３は、第１側面がホルダー２の支持壁９
に接触し、第２側面が押え金４に接触する。さらに、チ
ップ３は、第１外周面がホルダー２の突壁部10に接触
し、第２外周面がホルダー２の段壁部11に接触し、第３
外周面が押え金４に接触する。このように、チップ３
は、ホルダー２と押え金４との間に挟み込まれて保持さ
れる。

第10図および第11図は押え金４を示す図である。

押え金４は、ホルダー２の取付部５に取り付けられる
基体部14、およびチップ３をホルダー２の嵌合部８との
間に挟み込んでチップ３を保持する保持部15を有する。

基体部14には、ホルダー２のねじ穴６に締結されるボ
ルト（締付け手段）16が貫通する貫通穴17が形成されて
いる。なお、基体部14は、ボルト16を中心に回動可能と
されている。また、基体部14とホルダー２の取付部５と
の間には、コイルスプリング（第４図参照）18が装着さ
れている。このコイルスプリング18は、ボルト16の外周
に巻回され、ボルト16をやや緩めると押え金４を第４図
において図示上方に強制的に移動させる。さらに、基体
部14の第11図において図示下面には、ホルダー２の取付
部５に形成された溝部７に嵌め込まれる突起部19が突設
されている。

保持部15は、チップ３の第１外周面に接触してチップ
３を支える押圧部20、およびチップ３の第２側面に接触
してチップ３を支える保持片21を有する。押圧部20は、
基体部14より前方に延長された部分で、一部に傾斜面22
が形成されている。保持片21は、押圧部20の端部より第
11図において図示下方に延長された部分で、押え金４を
チップ３に接触する位置に配置した際に支持壁９に対向
する位置に配置される。

チップ研磨加工用治具１の作用を第１図ないし第11図
に基づき説明する。

（チップ３をホルダー２と押え金４との間に挟持すると
き） まず、ボルト16をやや緩めると、コイルスプリング18
のばね力により押え金４がホルダー２の取付部５よりや
や上昇する。そして、第４図および第５図に示すよう
に、押え金４をボルト16を中心にして左回転させて押え
金４の保持部15をチップ３の側方に配置する。

つぎに、チップ３の第１側面を支持壁９に接触させ、
第１、第２外周面をそれぞれ突壁部10および段壁部11に
接触させるようにして、ホルダー２の嵌合部８内にチッ
プ３を嵌め込む。

つづいて、押え金４の保持部15をチップ３の側方位置
からボルト16を中心に、押圧部20がチップ３の第３外周
面に接触し、保持片21がチップ３の第２側面に接触する
位置まで右回転させる。

すると、チップ３は、ホルダー２の嵌合部８と押え金
４の保持部15との間に挟み込まれる。そして、ボルト16
をホルダー２のねじ穴６にねじ込むと、押え金４が右回
転のトルクを受けるため、保持片21がチップ３の第２側
面との接触部分にて支持壁９の方向に向かって力が与え
られ続ける。そして、ボルト16の締付け力によりチップ
３の側面の面方向に沿って押え金４の基体部14がホルダ
ー２の取付部５に締め付けられることによって、押え金
４の押圧部20がチップ３をホルダー２の突壁部10および
段壁部11に押さえ付けてホルダー２の突壁部10および段
壁部11と押え金４の保持部15との間に挟持する。また、
ボルト16の締付けが完了しても、チップ３の第２側面方
向に締付け力が生じているので、チップ３がホルダー２
と押え金との間に強固に保持される。

したがって、押え金４の基体部14をホルダー２の取付
部５から大きく外すことなく、しかも押え金４の保持片
21が邪魔とならずに容易にホルダー２の嵌合部８内にチ
ップ３を嵌め込むことができる。

ここで、チップ３の第１側面がホルダー２の支持壁９
によって支えられ、チップ３の第２側面が押え金４の保
持片21によって支えられているので、前述のような押え
金４の回転作業のみのワンタッチでチップ３の両側面を
支えることができる。

そして、チップ３の両側面の角部に研磨加工を施す際
に、砥石が側面に当たって大きな力が加わっても両側面
ともホルダー２および押え金４に支えられているので、
ホルダー２の押え金４との間からチップ３が外れること
はない。さらに、押え金４の突起部19がホルダー２の溝
部７の壁面によって係止されているため、押え金４の図
示右回転に対する位置決めが可能である。よって、チッ
プ３の挟持作業の工程を増加させることなく、チップ３
の両側面の角部の研磨加工がチップ研磨加工用治具１に
よる１回の保持にて容易に行えるので、チップ３の両側
面の角部の研磨箇所に寸法差が生ずることはない。

また、チップ３の研磨加工が終了した際には、ボルト
16をやや緩めて押え金４をボルト16を中心にして左回転
させることによって、押え金４の基体部14をホルダー２
の取付部５から大きく外すことなく、チップ３を取り外
すことができる。

（変形例） 本実施例では、本発明を両側面の角部が加工されるチ
ップのチップ研磨加工用治具に用いたが、両側面の中央
部または外周面が加工されるチップのチップ研磨加工用
治具や、面取りを施されるチップのチップ研磨加工用治
具に用いても良い。また、本発明をチップ切削加工用バ
イトホルダーなどに用いても良い。

また、押え金の突起部を短くしてホルダーの溝部を省
略しても良い。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第11図は本発明の一実施例を示す。第１図
はチップ研磨加工用治具の主要部を示す正面図、第２図
はチップ研磨加工用治具を示す平面図、第３図はチップ
研磨加工用治具の主要部を示す側面図である。第４図お
よび第５図は押え金を回転させた状態を示す正面図およ
び平面図である。第６図はホルダーの主要部を示す正面
図、第７図はホルダーの主要部を示す平面図である。第
８図は研磨加工後のスローアウェイチップの一例を示す
平面図、第９図は研磨加工後のスローアウェイチップの
一例を示す断面図、第10図は押え金を示す平面図、第11
図は押え金を示す断面図である。 図中 １……チップ研磨加工用治具（チップ加工用治具）、２
……ホルダー、３……スローアウェイチップ、４……押
え金、５……取付部（取付面）、８……嵌合部（支持
部）、９……支持壁、10……突壁部（凸状壁）、11……
段壁部（凸状壁）、12……逃げ溝、14……基体部、15…
…保持部、16……ボルト（締付け手段）、20……押圧
部、21……保持片

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】略平坦な取付面、この取付面の面方向に対
   して略直交する方向に設けられて、両側面に加工が施さ
   れる多角柱状のチップを支持する支持部を有するホルダ
   ーと、 このホルダーの取付面に載置される基体部、およびこの
   基体部より突出するように延長されて、前記チップを保
   持する保持部を有する押え金と、 前記チップの側面の面方向に沿って前記押え金の基体部
   を前記ホルダーの取付面に締め付ける締付け手段と を備え、 前記支持部は、前記チップの一方の側面を支える支持
   壁、およびこの支持壁より外方に膨出形成されて、前記
   チップの外周面を支える凸状壁を有し、 前記保持部は、前記凸状壁に対向するように配されて、
   前記チップの外周面を係止して前記凸状壁との間に前記
   チップを挟み込む押圧部、および前記支持壁に対向する
   ように配されて、前記チップの一方の側面の裏面となる
   他方の側面を係止して前記支持壁との間に前記チップを
   挟み込む保持片を有することを特徴とするチップ加工用
   治具。
2. 【請求項２】前記押え金は、前記締付け手段をやや緩め
   ると、前記締付け手段を中心にして回動可能とされてい
   ることを特徴とする請求項１に記載のチップ加工用治
   具。