JP2870860B2 - 液晶表示素子 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、複屈折効果型の液晶表示素子に関するもの
である。

〔従来の技術〕

最近、テレビジョン画像等を表示するドットマトリッ
クス液相表示素子は、大画面化および高解像度化のため
に表示画素数が極めて多くなってきており、これにとも
なって、高デューティでマルチプレックス駆動できるこ
とが要求されているが、従来から広く使用されているTN
型の液晶表示素子は、高デューティでマルチプレックス
駆動すると動作マージンが低下し、そのために表示コン
トラストが低下するとともに視野角特性も悪くなるとい
う問題をもっている。

このため最近では、マルチプレックス駆動特性をよく
するために、複屈折効果型の液晶表示素子の使用が検討
されている。この複屈折効果型液晶表示素子としては、
ECB型またはSTN型のものがある。

しかし、この複屈折効果型液晶表示素子は、液晶の屈
折率異方性Δｎに波長依存性があるため、各波長光ごと
の常光線と異常光線との間の位相が異なり、可視光の全
帯域にわたって透過率を等しくすることができず、その
ために表示に着色が生じるから、良好な白黒表示または
フルカラー表示が得られないという問題をもっている。

そこで従来から、上記複屈折効果型液晶表示素子の表
示の着色をなくすことが研究されており、その手段とし
ては、表示用電極を備えたECB型またはSTN型の表示用液
晶セルの光入射側または出射側に、この表示用液晶セル
の液晶の波長依存性による透過光の着色を補償する色補
償手段（液晶セルまたは位相板）を設けて、この色補償
手段の色補償作用で表示の色づきをなくすことが考えら
れている。

第４図および第５図は色補償手段を備えた従来の液晶
表示素子を示しており、ここでは、ECB型の表示用液晶
セルの光入射側（下側）に色補償手段としてECB型の色
補償用液晶セルを配置したものを示している。

この液晶表示素子の構成を説明すると、第４図および
第５図において、図中1,2,3は、上，中，下３枚の透明
基板であり、上基板１と中間基板２および中間基板２と
下基板３とはそれぞれ枠状のシール材4a,4bを介して重
合接着されている。そして、上基板１と中間基板２との
間および中間基板２と下基板３との間にはそれぞれネマ
ティック液晶LCa,LCbが封入されており、上基板１と中
間基板２およびその間の液晶層とによって表示用液晶セ
ル（以下表示セルという）Ａが構成され、中間基板２と
下基板３およびその間の液晶層とによって色補償用液晶
セル（以下色補償セルという）Ｂが構成されている。

上記表示セルＡの両基板（上基板と中間基板）1,2の
対向面にはそれぞれ表示用の透明電極5,6が形成され、
その上には水平配向処理膜7a,8aが形成されている。こ
の配向処理膜7a,8aの配向処理方向（例えばラビング方
向）は、互いにほぼ正反対の方向（ほぼ平行でかつ逆向
き）であり、表示セルＡの液晶LCaの分子ａは、第５図
に示すように、基板縦軸ｙ方向にホモジニアス配列され
ている。

また、上記色補償セルＢの両基板（中間基板と下基
板）2,3の対向面には、表示用電極はなく、水平配向処
理膜7b,8bだけが形成されている。この配向処理膜7b,8b
の配向処理方向は、互いにほぼ正反対方向でかつ上記表
示セルＡの配向処理膜7a,8aの配向処理方向に対してほ
ぼ直交しており、色補償セルＢの液晶LCbの分子ｂは、
第５図に示すように、表示セルＡの液晶分子配列方向と
直交する方向（基板横軸ｘ方向）にホモジニアス配向さ
れている。

また、第４図において、9a,9bは上記表示セルＡと色
補償セルＢとをはさんでその両側に配置された上下一対
の偏光板であり、この両偏光板9a,9bの偏光軸（透過軸
または吸収軸）方向は互いにほぼ直交しており、また表
示セルＡおよび色補償セルＢの液晶分子配列方向に対し
てほぼ45゜の方向にある。

このECB型液晶表示素子は、その表示セルＡにおける
液相LCaの波長依存性による透過光の着色を色補償セル
Ｂによって補償するようにしたもので、表示セルＡと色
補償セルＢとの液晶分子a,bのホモジニアス配列方向を
上記のようにほぼ直交させておけば、表示セルＡにおい
て生じた各波長光ごとの常光線と異常光線との位相差が
色補償セルＢによって打ち消されるから、表示の着色を
なくして、良好な白黒表示またはフルカラー表示を得る
ことができる。

なお、ここでは表示セルＡの光入射側に色補償セルＢ
を配置したものについて説明したが、色補償セルＢを表
示セルＡの光出射側（上側）に配置しても、同様に表示
の着色をなくすことができる。

このような表示の色消しは、液晶分子配列のツイスト
角を通常のTN型液晶表示素子（90゜ツイスト）より大き
く（180゜〜270゜）したSTN型液晶表示素子においても
行なうことができる。すなわち、STN型液晶表示素子の
場合は、色補償セルとして、液晶分子を表示セルの液晶
分子配列のツイスト方向とは逆方向に同角度ツイスト配
列させたSTN型の液晶セルを用い、この色補償セルを表
示セルの光入射側または出射側に、両方セルの隣接する
側の液晶分子配向方向が互いにほぼ直交するようにして
配置すればよい。なお、このSTN型液晶表示素子におい
ても、表示セルと色補償セルとをはさんでその両側に配
置される一対の偏光板の偏光軸方向は互いにほぼ直交し
ており、また一方の偏光板例えば表示セル側の偏光板の
偏光軸方向は、この表示セルの偏光板側の液晶分子配向
方向に対して35゜〜50゜の方向にある。

また、表示セルの光入射側または出射側に配置する色
補償手段は、液晶セルに代えて位相板を用いてもよく、
その場合も、表示セルのΔｎ・ｄ（液晶の屈折率異方性
Δｎと液晶層の層厚ｄとの積）の値と液晶分子の配列状
態に応じて位相板の位相差およびその屈折率最大方向を
適当に選べば、色補償用液晶セルを使用する場合と同様
に表示の着色をなくすことができる。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、上記のように表示用液晶セルの光入射
側または出射側に色補償手段（色補償用液晶セルまたは
位相板）を配置した従来のECB型またはSTN型液晶表示素
子は、視角異存性が著しく、したがって、表示面の法線
に沿う方向から表示を観察した場合は表示の着色はほと
んど見られないが、法線に対して傾いた方向から観察す
ると、表示が色づいて見えるという問題をもっていた。
これは、色補償セルＢのΔｎ・ｄの値が視角（法線に対
する観察方向の角度）が大きくなるのにともなって小さ
くなって行くためである。

すなわち、第６図は従来の液晶表示素子の電圧−透過
率特性の視角異存性を示したもので、従来の液晶表示素
子は、法線に対する探察方向の傾き角θが30゜程度にな
ると、電圧−透過率特性が大きく変化し、表示が顕著に
色づいて見える。

そして、特に大画面の液晶表示素子では、画面の中央
付近に対する観察方向が法線の方向であっても、画面の
外周側は法線に対して傾いた方向から観察されることに
なるため、画面の外周に近くなるほど表示の着色が顕著
になり、そのために、白黒表示においては画面の外周側
の表示が色づき、フルカラー表示においては画面の外周
側の表示色の変色して見えてしまう。

本発明は上記のような実情にかんがみてなされたもの
であって、その目的とするところは、表示の着色をなく
し、しかも表示面の法線に対して傾いた方向から観察し
ても表示が着色することはないようにして視野角を広く
して複屈折効果型の液晶表示素子を提供することにあ
る。

〔課題を解決するための手段〕

本発明の液晶表示素子は、対向する表示用電極、互い
にほぼ正反対方向に配向処理された配向膜、及び前記対
向する配向膜間に介在させた液晶層とからなる複屈折効
果型の表示用液晶セルと、前記表示用液晶セルの配向方
向とほぼ直交する方向に光学軸を有する複屈折層を有
し、前記表示用液晶セルの波長依存性による透過光の着
色を補償する色補償手段と、厚さ方向に光学軸を持つ複
屈折層を有する視角補償手段と、前記表示用液晶セルと
前記色補償手段及び前記視角補償手段との積層体を挟ん
で配置され、一方の偏光軸が前記表示用液晶セルの配向
処理方向に対してほぼ45゜の方向に配置され、且つ互い
の偏光軸をほぼ直交させて配置された一対の偏光手段と
を供えたことを特徴とする。

〔作用〕

すなわち、本発明の液晶表示素子は、複屈折効果型の
表示用液晶セルにおいて生じた各波長光の位相差を色補
償手段によって打ち消して表示の着色をなくすととも
に、厚さ方向に光学軸をもつ視角補償手段を設けるとに
よって視角異存性を軽減させたものであり、したがって
この液晶表示素子によれば、表示の着色をなくすととも
に、表示面の法線に対して傾いた方向から観察しても表
示が着色するこおはないようにして、視野角を広くする
ことができる。

〔実施例〕

以下、本発明の一実施例を第１図〜第３図を参照して
説明する。

第１図および第２図は本実施例の液晶表示素子の構成
を示しており、ここでは、ECB型の表示用液晶セルＡの
光入射側（下側）に色補償手段としてECB型の色補償用
液晶セルＢを配置し、さらに上記表示用液晶セルＡと色
補償用液晶セルＢとの間に、視角補償手段としてホメオ
トロピック配向の視角補償用液晶セルＣを配置したもの
を示している。

この液晶表示素子の構成を説明すると、第１図および
第２図において、図中11,12a,12b,13は、上下に対向配
置された４枚の透明基板であり、上基板11と中間上基板
12a、中間下基板12bと下基板13、および中間上基板12a
と中間下基板12bとはそれぞれ枠状のシール材14a,14b,1
4cを介して重合接着されている。そして、上基板11と中
間上基板12aとの間および中間下基板12bと下基板13との
間にはそれぞれネマティック液晶LCa,LCbが封入されて
おり、上基板11と中間上基板12aおよびその間の液晶層
とによって表示用液晶セル（以下表示セルという）Ａが
構成され、中間下基板12bと下基板13およびその間の液
晶層とによって色補償用液晶セル（以下色補償セルとい
う）Ｂが構成されている。また、中間上基板12aと中間
下基板12bとの間には、ネマティック液晶LCcが封入され
ており、中間上基板12aと中間下基板12bおよびその間の
液晶層とによって視角補償用液晶セル（以下視角補償セ
ルという）Ｃが構成されている。

上記表示セルＡの両基板（上基板と中間上基板）11,1
2aの対向面にはそれぞれ表示用の透明電極15,16（単純
マトリックス型の液晶セルの場合は走査電極と信号電
極、TFTアクティブマトリックス型の液晶セルの場合は
画素電極と対向電極）が形成され、その上には水平配向
処理膜17a,18aが形成されている。この配向処理膜17a,1
8aの配向処理方向（例えばラビング方向）は、互いにほ
ぼ正反対の方向（ほぼ平行でかつ逆向き）であり、表示
セルＡの液晶LCaの分子ａは、第２図に示すように、基
板縦軸ｙ方向にホモジニアス配列されている。

また、上記色補償セルＢの両基板（中間下基板と下基
板）12b,13の対向面には、表示用電極はなく、水平配向
処理膜17b,18bだけが形成されている。この配向処理膜1
7b,18bの配向処理方向は、互いにほぼ正反対方向でかつ
上記表示セルＡの配向処理膜17a,18aの配向処理方向に
対してほぼ直交しており、色補償セルＢの液晶LCbの分
子ｂは、第２図に示すように、表示セルＡの液晶分子配
列方向と直交する方向（基板横軸ｘ方向）にホモジニア
ス配向されている。

一方、上記視角補償セルＣの両基板（中間上基板と中
間下基板）12a,12bの対向面には、表示用電極はなく、
垂直配向処理膜21,22だけが形成されており、この視角
補償セルＣの液晶LCcの分子ｃは、第２図に示すよう
に、視角補償セルＣの厚さ方向、つまり基板法線ｚ方向
にホメオトロピック配向されている。

また、第１図において、19a,19bは上記表示セルＡと
視角補償セルＣと色補償セルＢの積層体をはさんでその
両側に配置された上下一対の偏光板であり、この両偏光
板19a,19bの偏光軸（透過軸または吸収軸）方向は互い
にほぼ直交しており、また表示セルＡおよび色補償セル
Ｂの液晶分子配列方向に対してほぼ45゜の方向にある。

この実施例の液晶表示素子も、第４図および第５図に
示した従来の液晶表示素子と同様に、表示セルＡの波長
依存性による透過光の着色を色補償セルＢによって補償
するもので、この液晶表示素子においても、表示セルＡ
と色補償セルＢとの間にある視角補償セルＣは、その液
晶LCcの分子ｃをホメオトロピック配向したものである
ため、基板面に垂直に透過する光に対しては光学的な屈
折率異方性がないから、色補償セルＢの色補償作用が視
角補償セルＣによって影響を受けることはない。したが
って、表示セルＡと色補償セルＢとの液晶分子a,bのホ
モジニアス配列方向を上記のようにほぼ直交させておけ
ば、表示セルＡの液晶LCaの波長依存性によって生じた
各波長光ごとの常光線と異常光線との位相差が色補償セ
ルＢによって打ち消されるから、表示の着色をなくして
良好な白黒表示またはフルカラー表示を得ることができ
る。

そして、この実施例の液晶表示素子においては、表示
セルＡと色補償セルＢとの間に、液晶LCcの分子ｃをホ
メオトロピック配向させた視角補償セルＣを設けている
から、視角異存性を軽減させることができ、したがって
この液晶表示素子によれば、表示面の法線に対して傾い
た方向から観察しても表示が着色することはないように
して、視野角を広くすることができる。これは、水平配
向セルである色補償セルＢのΔｎ・ｄの値は、視角（法
線に対する観察方向の角度）が大きくなるのにともなっ
て小さくなって行くが、垂直配向セルである視角補償セ
ルＣのΔｎ・ｄの値は、視角が大きくなるのにともなっ
て大きくなって行くためであり、したがって色補償セル
Ｂと視角補償セルＣとのトータルのΔｎ・ｄによる視角
異存性が軽減される。

第３図は上記実施例の液晶表示素子の電圧−透過率特
性の視角異存性を示したもので、この液晶表示素子は、
法線に対する探察方向の傾き角θが30゜付近になっても
電圧−透過率特性の変化は小さく、したがって、広い視
野角にわたって表示の着色を抑えることができる。

なお、上記実施例では、表示セルＡの光入射側に色補
償セルＢを配置したものについて説明したが、上記色補
償セルＢは表示セルＡの光出射側（上側）に配置しても
よい。

さらに、上記実施例では、表示セルにおける透過光の
着色を補償する色補償手段として、液晶セルを用いた
が、この色補償手段は位相板でもよく、また、視角補償
手段も、厚さ方向に光学軸をもつものであれば、液晶分
子をホメオトロピック配向させた液晶セルに限られるも
のではない。

〔発明の効果〕

本発明の液晶表示素子は、複屈折効果型の表示用液晶
セルにおいて生じた各波長光ごとの常光線と異常光線と
の位相差を色補償手段によって打ち消して表示の着色を
なくすとともに、厚さ方向に光学軸をもつ視角補償手段
を設けることによって視角異存性を軽減させたものであ
るから、この液晶表示素子によれば、表示の着色をなく
すとともに、表示面の法線に対して傾いた方向から観察
しても表示が着色することはないようにして、視野角を
広くすることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図は本発明をECB型液晶表示素子に適用し
た一実施例を示したもので、第１図および第２図は液晶
表示素子の断面図およびその各液晶セルの液晶分子配列
状態の斜視図、第３図は液晶表示素子の電圧−透過率特
性の視角異存性を示す図である。第４図および第５図は
従来のECB型液晶表示素子の断面図およびその各液晶セ
ルの液晶分子配列状態の斜視図、第６図は従来のECB型
液晶表示素子の電圧−透過率特性の視角異存性を示す図
である。 Ａ……表示用液晶セル、Ｂ……色補償用液晶セル（色補
償手段）、Ｃ……視角補償用液晶セル（視角補償手
段）。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】対向する表示用電極、互いにほぼ正反対方
   向に配向処理された配向膜、及び前記対向する配向膜間
   に介在させた液晶層とからなる複屈折効果型の表示用液
   晶セルと、前記表示用液晶セルの配向方向とほぼ直交す
   る方向に光学軸を有する複屈折層を有し、前記表示用液
   晶セルの波長依存性による透過光の着色を補償する色補
   償手段と、厚さ方向に光学軸を持つ複屈折層を有する視
   角補償手段と、前記表示用液晶セルと前記色補償手段及
   び前記視角補償手段との積層体を挟んで配置され、一方
   の偏光軸が前記表示用液晶セルの配向処理方向に対して
   ほぼ45゜の方向に配置され、且つ互いの偏光軸をほぼ直
   交させて配置された一対の偏光手段とを供えたことを特
   徴とする液晶表示素子。