JP2862166B2 - ダイカスト用射出スリーブ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はアルミニウム合金、亜鉛
合金などの非鉄金属をダイカスト鋳造やスクイズキャス
ト鋳造するためのコールドチャンバー型式の射出スリー
ブに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、横型締、横鋳込型ダイカストマシ
ンでは、一端部に注湯口１０を有する射出スリーブ７内
にプランジャチップ９を摺動自在に収納し、この射出ス
リーブ７の他端部をゲートを介して金型間に形成された
製品キャビティ６に連通してあり、上記プランジャチッ
プ９の進入により射出スリーブ７内の溶湯金属１１をキ
ャビティ６内へ充填させて凝固させるようになってい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、このような
従来の射出スリーブ７において、次のような問題があっ
た。すなわち、射出スリーブ内の上部空間１２に存在す
る空気が溶湯金属１１の射出の際射出スリーブ７内の空
気を巻込み、そのままキャビティ６内に圧入されるの
で、多数の鋳巣となって鋳造物の強度、耐圧、肌などを
劣化せしめていた。

【０００４】このような射出スリーブ内の上部空間１２
の空気の排出をスムーズに行うために、図９に示すよう
に射出スリーブ７の上部に空気抜き孔１３を設けてあ
る。特にプランジャチップ９が低速度から高速度に切替
わる位置に空気抜き孔１３を設けるとともに、この空気
抜き孔１３から導管１５を介して真空ポンプ１６より空
気を急速に真空脱気するので、より射出スリーブ内の上
部空間１２の空気の排出がスムーズに行いやすいという
利点はあるものの、プランジャチップ９の低速度から高
速度への切替え位置は例えば成形品外部に多少の湯じわ
が生じても成形品の内部に鋳巣の少ないものを所望する
場合はゲート打ちなど比較的ゲート１４部に近い位置で
行われている。

【０００５】一方、成形品内部に鋳巣が多くとも成形品
外部に湯じわのない光沢のものを所望する場合は、射出
開始から早いうちに低速度から高速度に切替え位置をそ
の都度移動する必要があり、この移動に伴って空気抜き
孔１３の位置も同時に変更しなければならない。

【０００６】また、比較的凝固しやすい溶湯金属１１を
使用してダイカスト鋳造する場合には低速度から高速度
への切替え位置を射出開始から短い時間で行う（ゲート
１４から離れた位置）必要があり、逆に凝固が遅い溶湯
金属１１を使用してダイカスト鋳造する場合には低速度
から高速度への切替え位置をゲート１４に近い位置で行
う必要があり、空気抜き孔１３の位置移動のために射出
スリーブ７をその都度交換するのは事実上不可能である
といった問題があった。

【０００７】本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ
たもので、低速度から高速度への切替え位置に合わせて
射出スリーブ内の空気を自由に抜くことができるダイカ
スト用射出スリーブを提供することを目的とするもので
ある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る第１の発明では型締された金型のキャ
ビティ内へその水平方向から溶湯を鋳込むようにした水
平状射出スリーブの内周上面に断面が逆台形状の凹欠部
を形成し、前記凹欠部に長さの異なる嵌合部材を装着可
能とするとともに、前記嵌合部材内に真空ポンプに通じ
る脱気孔を設けた構成にし、第２の発明では型締された
金型のキャビティ内へその水平方向から溶湯を鋳込むよ
うにした水平状射出スリーブの内周上面に断面が逆台形
状の凹欠部を形成し、前記凹欠部に長さの異なる嵌合部
材を装着可能とするとともに、前記嵌合部材の軸方向に
離間して真空ポンプに通じる脱気用の開閉装置を配設し
た構成にする。

【０００９】

【作用】射出時の低速度から高速度への切替え位置に合
わせて射出スリーブの内周上面に凹欠部を設け、ここに
長さの異なる嵌合部材を交換可能に装着するとともに、
この嵌合部材内に真空ポンプに通じる脱気孔や開閉装置
を設けたので、この脱気孔または開閉弁が空気抜け路と
なって射出スリーブ内の溶湯金属の上部空気をスムーズ
に排出でき成形品の内・外部に湯じわや鋳巣のない成形
品を成形できる。

【００１０】

【実施例】以下に、本発明に係るダイカスト用射出スリ
ーブの具体的実施例を図面を参照して詳細に説明する。

【００１１】図１は本発明に係る射出スリーブを有した
ダイカスト装置の実施例を示す断面図、図２は溶湯金属
の注湯完了時の射出スリーブの断面図、図３は低速度時
の射出スリーブ内の空気流れを示す説明図、図４は低速
度から高速度へ切替わる直前の射出スリーブ内の空気流
れを示す説明図、図５は高速度時の射出スリーブ内の空
気流れを示す説明図、図６は図２のＡ〜Ａからみた横断
面図、図７は本発明に係るダイカスト用射出スリーブの
別の実施例を示す縦断面図、図８は開閉装置の部分拡大
断面図である。

【００１２】図１において、符号２２は固定ベース２０
に配された可動プラテンで、この可動プラテン２２は図
示しない油圧ピストンにより左右方向に摺動自在に設け
られている。

【００１３】この可動プラテン２２の一側面にはダイベ
ース２４が固定され、さらにこのダイベース２４には可
動金型２６が固定されている。

【００１４】符号２８は、固定ベース２０上に固定され
た固定プラテンで、この固定プラテン２８には固定金型
３０が固定されている。

【００１５】この可動金型２６が図中右方向に摺動して
固定金型３０に当接すると、可動金型２６と固定金型３
０との間に製品キャビティ６が、また製品キャビティ６
とランナ部３２とを結ぶゲート１４が形成される。

【００１６】ランナ部３２内には射出スリーブ７の一端
が開口しており、この射出スリーブ７の他端側からプラ
ンジャチップ９が挿入されている。

【００１７】そして、この射出スリーブ７に設けた注湯
口１０より溶湯金属１１が注入され、プランジャチップ
９が図中左方向に前進することにより溶湯金属１１がラ
ンナ部３２、ゲート１４、製品キャビティ６に至る。

【００１８】前記製品キャビティ６およびランナ部３２
に対向する位置には押出板３６に固定された押出ピン３
８が配され、可動金型２６と固定金型３０が開いた時に
製品を押出す役目を担っている。

【００１９】符号４０は排気バルブ、４２は前記プラン
ジャチップ９の低速度から高速度への速度切替え位置を
検知するリミットスイッチである。

【００２０】本実施例では、特に、図６に示すように射
出スリーブ７の軸方向内周上面７ａに所定長さを有した
断面が逆台形状の凹欠部７ｂを形成してある。

【００２１】凹欠部７ｂは射出スリーブ７の固定プラテ
ン２８近傍から射出スリーブ７の後端側まで形成してあ
り、この凹欠部７ｂに断面が台形状の嵌合部材７ｃを装
着可能になっている。

【００２２】また、前記嵌合部材７ｃには空気抜き孔１
３が設けられており、この空気抜き孔１３は竪孔１３ａ
を有した空気抜き孔入口１３ｃと円周上面７ａに面する
側の嵌合部材７ｃの上面部に固定プラテン２８に向う射
出スリーブ７の軸芯方向に設けた横孔１３ｂと、固定プ
ラテン２８に近い射出スリーブ７の内周上面７ａに導管
１５を介して真空ポンプ１６に通じる空気抜き出口１３
ｄから構成されている。

【００２３】特に、本実施例では空気抜き孔入口１３ｃ
の位置を射出スリーブ７の軸芯方向上で種々変えた嵌合
部材７ｃを用意することにより、溶湯金属１１の種類や
所望する成形品の内・外部の初期仕様に応じて使い分け
が可能となっている。なお、符号４４は嵌合部材７ｃの
位置を固定する押えボルトである。

【００２４】次に本実施例の作動を説明する。

【００２５】まず可動金型２６を前進させて固定金型３
０に当接させ、型締を行う。そして排気バルブ４０を開
く。

【００２６】次に射出スリーブ７の注湯口１０より所定
量の溶湯金属１１を注湯させ（図２）、プランジャチッ
プ９を低速前進させ（図３、図４）、リミットスイッチ
４２をけった時点で高速前進させるのである。

【００２７】プランジャチップ９を低速前進開始後プラ
ンジャチップ９が注湯口１０を塞いだ状態下で真空ポン
プ１６を起動し射出スリーブ内の上部空間１２の空気を
減圧状態になるまで吸引排出するのである。

【００２８】ところで、低速度から高速度への速度切替
え位置に対応して射出スリーブ内の上部空間１２の空気
が嵌合部材７ｃの空気抜き孔１３から十分逃げるように
空気抜き孔入口１３ｃを射出スリーブ７の軸芯方向に変
化させ得る嵌合部材７ｃの装着が可能であるが、一般的
には次のような考え方に基づいて嵌合部部材７ｃを変え
るのである。

【００２９】まず、一般的に使用されるＡｌ−Ｓｉ−Ｃ
ｕ系ＡＤＣ１２（含胴シルミン）のアルミニウム合金を
用いた場合では溶湯金属１１の凝固が比較的遅いために
ゲート１４に近づいた位置で低速度から高速度への速度
切替え位置をリミットスイッチ４２が検知することにな
る。このことから空気抜き孔入口１３ｃがゲート１４に
近い位置に設けられた嵌合部材７ｃを用いればよい。

【００３０】次に、近年使用されるようになったＡｌ−
Ｍｇ系ＡＤＣ５やＡＤＣ６（ヒドロナリウム）のアルミ
ニウム合金を用いた場合や純Ａｌを用いたロータ鋳造で
は溶湯金属１１の凝固が早いために射出開始時から比較
的短い時間（ゲート１４から離れた位置）で低速度から
高速度へ切替えを行うこととなり、このことから空気抜
き孔入口１３ｃがゲート１４より離れた位置に設けられ
た嵌合部材７ｃを用いればよい。

【００３１】射出スリーブ７内に注湯された溶湯金属１
１がプランジャチップ９の低速度から高速度前進に切替
わり製品キャビティ６に充填する際は、プランジャチッ
プ９が既に空気抜き孔入口１３ｃを塞いでいるために引
続く射出スリーブ内の上部空間１２の空気抜きは困難で
ある（図５）。

【００３２】そして、一定時間経過後（タイマにてセッ
ト）、ロッド９ａを図５中左方向に移動させることによ
り排気バルブ４０を閉じ、前記プランジャチップ９を高
速度前進させて射出スリーブ７内の溶湯金属１１をすべ
て製品キャビティ６内に射出する。

【００３３】その後、製品キャビティ６内に充填された
溶湯金属１１が凝固し終わったら可動金型２６を図１中
左方向に移動させて型を開き、押出ピン３８を押出すこ
とにより成形品（製品）を取出す。以上のような作動を
繰返してダイカスト鋳造がなされる。

【００３４】図７は本発明の実施例に類似した実施例で
あり、射出スリーブ７の内周上面７ａには射出スリーブ
７の軸芯方向に離間して軸芯と直交する方向に開閉装置
５０が複数個（本実施例では３個）配設してある。

【００３５】この開閉装置５０はシリンダ５２、弁棒５
４および開閉弁５６から構成されている。射出スリーブ
７の外周上面には空気抜き孔１３を形成するための半円
形状のカバー６０が装着されている。

【００３６】前記カバー６０上にはシリンダ５２が佇立
してあり、このシリンダ５２から弁棒５４を介して射出
スリーブ７の内周上面７ａに設けられた嵌合部材７ｃ間
で空気抜き孔入口１３ｃを形成している。

【００３７】前記弁棒５４の周辺には透孔５８が設けら
れ、開閉弁５６を下降させて空気抜き孔入口１３ｃを保
持することによりこの透孔５８から空気抜き孔１３、導
管１５を介して真空ポンプ１６により射出スリーブ内の
上部空間１２の空気を強制排出し減圧するようになって
いる。

【００３８】この各開閉装置５０は図示しないリミット
スイッチと接続され、プランジャチップ９が前進して溶
湯金属１１を製品キャビティ６側へ射出する際に前進す
るプランジャチップ９に近い側の開閉装置５０から次々
と作動させて空気抜き孔入口１３ｃを閉止するように構
成されている。

【００３９】図７に示すような構造をしているので、射
出スリーブ７に注湯口１０より溶湯金属１１を所定量注
湯した後、プランジャチップ９を前進させるが例えばゲ
ート１４より離れた位置で低速度から高速度に切替えた
い時は開閉装置５０ａのみ使用し、他の開閉装置５０
ｂ、５０ｃは最初から空気抜き孔入口１３ｃを閉止して
おけばよい。

【００４０】そして、ゲート１４に最も近い位置で低速
度から高速度に切替えたい時は、開閉装置５０ａ、５０
ｂ、５０ｃを全てプランジャチップ９の前進によりリミ
ットスイッチをけって次々と５０ａ→５０ｂ→５０ｃの
順に閉止するようにすれば射出スリーブ内の上部空間１
２の空気を減圧状態下になるまで十分脱気することがで
きる。

【００４１】

【発明の効果】以上説明したことからも明らかなよう
に、本発明に係る第１の発明では、型締された金型のキ
ャビティ内へその水平方向から溶湯を鋳込むようにした
水平状射出スリーブの内周上面に断面が逆台形状の凹欠
部を形成し、前記凹欠部に長さの異なる嵌合部材を装着
可能とするとともに、前記嵌合部材内に真空ポンプに通
じる脱気孔を設け、さらに第２の発明では、型締された
金型のキャビティ内へその水平方向から溶湯を鋳込むよ
うにした水平状射出スリーブの内周上面に断面が逆台形
状の凹欠部を形成し、前記凹欠部に長さの異なる嵌合部
材を装着可能とするとともに、前記嵌合部材の軸方向に
離間して真空ポンプに通じる脱気用の開閉装置を配設し
たことにより、溶湯金属の種類や成形品の内・外部の仕
様に応じて低速度から高速度への切替え位置を自由に選
択しながら、射出スリーブ上部の空気抜きを十分行うこ
とができるため、強度、耐圧、肌などの優れた成形品を
容易に成形できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る射出スリーブを有したダイカスト
装置の実施例を示す断面図である。

【図２】溶湯金属の注湯完了時の射出スリーブの断面図
である。

【図３】低速度時の射出スリーブ内の空気の流れを示す
説明図である。

【図４】低速度から高速度へ切替わる直前の射出スリー
ブ内の空気の流れを示す説明図である。

【図５】高速度時の射出スリーブ内の空気流れを示す説
明図である。

【図６】図２のＡ〜Ａからみた横断面図を示す。

【図７】本発明に係るダイカスト用射出スリーブの別の
実施例を示す断面図である。

【図８】開閉装置の部分拡大断面図である。

【図９】従来の射出スリーブを有したダイカスト装置の
縦断面図である。

【符号の説明】

６ 製品キャビティ ７ 射出スリーブ ７ａ 内周上面 ７ｂ 凹欠部 ７ｃ 嵌合部材 ９ プランジャチップ １０ 注湯口 １１ 溶湯金属 １２ 射出スリーブ内の上部空間 １３ 空気抜き孔 １３ａ 竪孔 １３ｂ 横孔 １３ｃ 空気抜き孔入口 １３ｄ 空気抜き孔出口 １４ ゲート １５ 導管 １６ 真空ポンプ ２２ 可動プラテン ２６ 可動金型 ２８ 固定プラテン ３０ 固定金型 ３２ ランナ部 ３６ 押出板 ４２ リミットスイッチ ５０（５０ａ、５０ｂ、５０ｃ） 開閉装置 ５２ シリンダ ５４ 弁棒 ５６ 開閉弁 ５８ 透孔

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−133159（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−188465（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−37462（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−90195（ＪＰ，Ａ) 実開 昭59−54154（ＪＰ，Ｕ) 実開 平６−5750（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B22D 17/20 B22D 17/22 B22D 17/10

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 型締された金型のキャビティ内へその水
   平方向から溶湯を鋳込むようにした水平状射出スリーブ
   の内周上面に断面が逆台形状の凹欠部を形成し、前記凹
   欠部に長さの異なる嵌合部材を装着可能とするととも
   に、前記嵌合部材内に真空ポンプに通じる脱気孔を設け
   たことを特徴とするダイカスト用射出スリーブ。
2. 【請求項２】 型締された金型のキャビティ内へその水
   平方向から溶湯を鋳込むようにした水平状射出スリーブ
   の内周上面に断面が逆台形状の凹欠部を形成し、前記凹
   欠部に長さの異なる嵌合部材を装着可能とするととも
   に、前記嵌合部材の軸方向に離間して真空ポンプに通じ
   る脱気用の開閉装置を配設したことを特徴とするダイカ
   スト用射出スリーブ。