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JP2707928B2 - 珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法 - Google Patents

珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法

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JP2707928B2 JP4281329A JP28132992A JP2707928B2 JP 2707928 B2 JP2707928 B2 JP 2707928B2 JP 4281329 A JP4281329 A JP 4281329A JP 28132992 A JP28132992 A JP 28132992A JP 2707928 B2 JP2707928 B2 JP 2707928B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低合金鋼板、特に珪素
含有鋼板に対して、不めっきを生じさせることなくめっ
きを施すことができる溶融亜鉛めっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、家電、建材、および自動車等の産
業分野においては溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用され
ているが、とりわけ経済性とその防錆機能および塗装後
の性能に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板が広く用いら
れている。
【0003】溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、適当な脱脂
洗浄工程を経た後、もしくは脱脂洗浄を行うことなく、
鋼板を弱酸化性雰囲気中もしくは還元性雰囲気中で予熱
した後、水素+窒素の還元性雰囲気中で焼鈍し、次い
で、めっきに適した温度まで冷却した後、溶融亜鉛に浸
漬することにより製造される。焼鈍の前工程の予熱時に
は鋼板表面に80nm程度の厚さの酸化膜が形成される方が
溶融亜鉛との濡れ性の点から望ましいとされており、そ
れ以上の厚さの酸化膜の形成はむしろドロスの発生を増
し、溶融めっきの密着性に悪影響を及ぼすと考えられて
いる。亜鉛浴は後述の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造
の範囲も含めると0.08〜0.18重量%のAlを含むものが用
いられている。
【0004】合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、前記
のようにして連続的に溶融亜鉛めっきを施した鋼板を熱
処理炉で 500〜600 ℃の材料温度に3〜30秒加熱し、亜
鉛層と鋼板素地との間でFeとZnの相互拡散を行わせ、め
っき層をFe−Zn合金とすることにより製造される。従っ
て、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層はFe−Znの金
属間化合物からなり、一般にその平均Fe濃度は8〜12重
量%になるように調整されている。
【0005】合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき付着量
は片面当たり25〜70g/m2であり、25g/m2を下回るものは
通常の手段で製造することが難しく、70g/m2を上回るも
のはめっき層の耐パウダリング性を確保することが困難
であることから一般には供給されていない。また、めっ
き皮膜中には通常0.12〜0.2 重量%前後のAlが含有され
ていることが多い。これは合金化溶融亜鉛めっき鋼板と
同一設備で製造される溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層と
鋼の界面における合金層の生成を抑制し、めっき皮膜の
加工性を保持するためにめっき浴に添加されるAlが不可
避的にめっき皮膜中に混入することもあるが、合金化溶
融亜鉛めっき皮膜の耐パウダリング性を確保し、かつ製
造時のドロスの発生を抑制するうえから、めっき浴中に
0.08〜0.11重量%程度のAlを混入させることがむしろ適
当であると考えられている。めっき浴中のAlはめっき層
中に富化する傾向があるため、0.08〜0.11重量%程度の
Alを含むめっき浴でめっきを行うと、めっき皮膜中のAl
濃度は0.12〜0.2 重量%の範囲となる。
【0006】従来、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶
融亜鉛めっき鋼板の母材には、主として低炭素Alキルド
鋼板、極低炭素Ti添加鋼板等が用いられていたが、近
年、自動車材料の高強度化が要求されることもあり、Si
を 0.2重量%以上含有する珪素含有鋼板が用いられよう
としている。Siは鋼の延性を損なわずに強度を向上させ
る利点があり、その意味では珪素添加鋼は自動車用の溶
融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の母
材として有望である。
【0007】しかしながら、珪素含有鋼板を母材とする
溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は
以下に述べるように品質面および生産面で問題がある。
【0008】珪素含有鋼板を前述の通常のプロセスで溶
融亜鉛めっきすると、めっき前の焼鈍過程でその雰囲気
中の極微量の水分と鋼板中のSiが反応し、Si-Oxideを鋼
板表面に形成するため、鋼のSi含有量の増加に伴い溶融
亜鉛との濡れ性が急激に低下する。その結果、不めっき
が多発する。このような問題に対して、予め酸化性雰囲
気中で鋼板を加熱し、その表面に鉄の酸化物を形成させ
ることによって濡れ性が改善されることが知られてい
る。しかし、Si含有量が 0.2重量%を超える鋼板の場合
には、通常の溶融亜鉛めっきプロセスにおける酸化性雰
囲気、例えば、無酸化炉の空燃比を1〜1.35とする酸化
性雰囲気中での予熱では濡れ性が改善されるまでの十分
な酸化鉄が形成されないばかりか、めっき後に合金化処
理する場合の合金化処理速度が著しく遅く、生産能率が
大きく阻害されるという欠点がある。特に、鋼板の成形
性を向上させるためにTiを添加した極低炭素鋼をベース
としてこれにSi添加とした鋼板の場合、再結晶化のため
の焼鈍温度が 800℃以上と高温になるため、鋼板表面で
のSi-Oxideの析出が一層顕著になり、濡れ性の確保がさ
らに困難となる。
【0009】溶融亜鉛との濡れ性を改善する別の方法と
して、溶融めっきに先立って鋼板の表面にNiの下地めっ
きを施す方法が知られている(例えば、特公昭61−9386
号公報)。しかし、この方法では、Si含有量が 0.2重量
%以上の鋼を対象とする場合、付着量が200mg/m2以上の
Niめっきを施すことが必要となるためコストの上昇を招
くほか、このような大量のNiめっきを施した場合には、
溶融亜鉛めっきの濡れ性は改善されるものの、合金化処
理過程でめっき表面にSi、Niに起因する欠陥が多発する
という問題が生じる。
【0010】さらに、Niめっき以外にも、例えばFeめっ
き等を予め施してSi添加鋼の不めっきを防止することは
可能であるが、このためには1g/m2以上のFeめっきを施
す必要があり、極めて不経済である。
【0011】このようなことから、自動車用高強度材料
として魅力のある珪素含有鋼板も、これを溶融亜鉛めっ
きないしは合金化処理する実際的な手段を欠いているの
が実情である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような実
情に鑑みてなされたもので、低合金鋼板、特にSi含有量
が 0.2重量%以上の鋼板を母材として、不めっきを生じ
させることなくめっきすることができ、かつ、めっき後
の鋼板の合金化処理速度を低下させず、経済性の高い溶
融亜鉛めっき方法を提供することが本発明の課題であ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の課題
を解決するために検討を重ねた結果、(a) 母材鋼板(Si
含有鋼板)の表面に予め極微量の金属電気めっきを施す
工程、(b) めっき後の鋼板を弱酸化性雰囲気中で酸化す
る工程、および、(c) 酸化処理後の鋼板を 700℃以下の
温度で還元する工程、を組み入れることにより、溶融亜
鉛めっきならびにその後の合金化処理を円滑に行えるこ
とを見いだした。前記の電気めっきに用いる極微量の金
属としては、酸素親和力が母材を構成するFeと同等もし
くはFeよりも小さいものがよく、Fe、Cu、Ni、Coなどが
好適である。
【0014】本発明は、上記の知見に基づいてなされた
もので、その要旨は、下記およびの溶融亜鉛めっき
方法にある。
【0015】 Siを 0.2重量%以上含有する鋼板の表
面に予めNi、Fe、CuおよびCoの1種以上を5〜70mg/m2
の付着量で電気めっきし、次いで 700℃以下の酸化性雰
囲気中で加熱して鋼板表面にFeに換算して 0.3〜1.5g/m
2 の酸化鉄を形成させた後、 500〜650 ℃の温度域で還
元し、続いて溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする珪
素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法。
【0016】 前記の溶融亜鉛めっきに続いて、合
金化処理することを特徴とする珪素含有鋼板の溶融亜鉛
めっき方法。
【0017】
【作用】以下に、本発明方法を工程順に詳細に説明す
る。
【0018】先ず、本発明で対象とする鋼板は、Siを
0.2重量%以上含有する鋼板である。
【0019】これは、Si含有量が 0.2重量%未満の鋼板
の場合は従来技術の範囲内で対応が可能なためである。
【0020】この鋼板は焼鈍を行った冷延鋼板(但し、
冷間圧延ままでフルハード材の場合を除く)もしくは酸
洗後の熱延鋼板である。すなわち、本発明方法では、従
来、連続溶融亜鉛めっき設備(CGL)を用いて一連の
工程の中で行っていた鋼板の焼鈍もしくは熱処理による
材質調整を行わず、予め所定の材料特性に調質された鋼
板を母材として用いる。これは、焼鈍と溶融めっきとを
分離し、焼鈍過程で表面に濃化したSiの酸化物が直接溶
融亜鉛と接触するのを避けようという観点から採られる
条件である。従って、対象が冷延鋼板であれば所定の特
性が得られるように、あらかじめバッチ式または連続式
焼鈍炉で焼鈍する。但し、冷延鋼板であっても、冷間圧
延を行ったままでフルハード材である場合は焼鈍の必要
はない。
【0021】また、熱延鋼板を対象とする場合は酸洗処
理を行ったものであればよい。
【0022】上記のSi含有鋼板をめっき母材として本発
明の最初の工程である電気めっきを行うのであるが、そ
の前処理として通常の脱脂および酸洗を行うことが望ま
しい。熱延鋼板を対象とする場合は既に酸洗処理を行っ
ているので、原則的にはその必要はないが、製板後の貯
蔵期間が長い場合等、必要に応じて再度酸洗すればよ
い。また、焼鈍を連続式焼鈍炉で行う場合、焼鈍炉の出
側に酸洗設備を備えたものもあるので、このような設備
で焼鈍された鋼板に対しては脱脂、酸洗の工程は不要で
ある。
【0023】酸洗には、塩酸、弗酸、硫酸、硝酸等の希
釈液が用いられる。酸洗は、熱延鋼板の場合は熱延工程
で、また、予め焼鈍された冷延鋼板にあっては焼鈍工程
で鋼板の表面に生成したSi系の酸化膜を幾分溶解する効
果はあるが、Ti等の酸化物を鋼板の表面に濃化させる等
の悪影響もある。従って、過度の酸洗はひかえることが
望ましい。酸洗の好ましい条件は、3〜15%の塩酸を用
い、液温:40〜95℃、酸洗時間:2〜20秒である。
【0024】酸洗後の鋼板の表面に、Fe、Cu、Niおよび
Coの少なくとも1種を電気めっきする。少なくとも1種
というのは、これら金属の単層めっきであってもよく、
例えばFeめっきをした後にその上にNiめっきを施しても
よい。あるいは、Fe−Ni合金めっきをしてもよい、とい
うことである。
【0025】めっき付着量は、 5mg/m2 未満では溶融亜
鉛との濡れ性の改善が不十分で不めっきが発生しやす
く、一方、 70mg/m2を超えるとその効果が飽和し不経済
となるので、 5〜70mg/m2 とする。このような微量の金
属めっきが何故に溶融めっき性の改善に効果があるのか
不明であるが、この金属めっきを施した後は、700℃
を超える高温での熱処理を行わないので、これらの金属
が母材中に拡散することなく鋼板表面に部分的に残留
し、鋼板が溶融亜鉛に接触した時、亜鉛が母材に付着す
る反応の活性点として機能するものと推察される。
【0026】次いで、上記の電気めっきを施した鋼板を
酸化性雰囲気中で加熱して、鋼板の表面に酸化鉄を形成
させる。加熱温度は、 700℃を超えると鋼中のSiが鋼板
表面へ拡散して不めっきが発生しやすくなるほか、酸化
膜が剥離しやすくなり、この剥離した酸化膜は炉内ロー
ルに付着して鋼板に表面欠陥を生じさせるので、 700℃
以下、好ましくは 400〜650 ℃とする。下限は特に定め
ないが 300℃以下では酸化速度が小さく適当ではない。
また、加熱時の酸化性雰囲気としては、二酸化炭素、酸
素、水などの酸化性ガスを含む雰囲気を用いればよい。
【0027】鋼板の表面に形成させる酸化鉄量は、Feに
換算して 0.3g/m2未満では不めっきが生じやすく、 1.5
g/m2を超えると次工程での酸化鉄の還元が不十分とな
り、やはり不めっきが発生しやすくなるので、Feに換算
して 0.3〜1.5g/m2 となるようにする。
【0028】鋼板表面に酸化鉄を形成させた後、 500〜
650 ℃の温度域で還元する。この目的のためには、水素
5 vol%以上を含み残部が非酸化性ガスからなる雰囲気
がよく、例えば、水素と窒素からなり、露点が−15℃以
下の雰囲気とすればよい。この場合、温度が 500℃未満
では還元力が弱く酸化鉄の還元が不十分であり、 650℃
を超えると鋼中のSiの拡散が生じやすく、鋼板表面にSi
が濃化し、不めっきが発生しやすくなる。処理時間は15
〜20秒が適当である。
【0029】還元処理後の鋼板を 380〜550 ℃程度に冷
却し、Alを0.05〜0.15%程度含有する亜鉛浴中で溶融め
っきを施す。また、必要に応じてさらに合金化処理炉で
450〜600 ℃で1〜120 秒加熱する合金化処理を行う。
【0030】上記本発明の溶融亜鉛めっき方法により、
珪素含有鋼板を母材として、不めっきのない表面特性の
優れた溶融亜鉛めっき鋼板ないしは合金化溶融亜鉛めっ
き鋼板を得ることができる。この方法によれば、Si含有
量が 1.5重量%を超える鋼板であっても溶融亜鉛めっき
が可能となる。
【0031】
【実施例】表1に示す化学組成を有する高Si鋼の熱延鋼
板 (鋼種A、板厚2.3mm 、未酸洗材)及び冷延鋼板 (鋼
種B〜D、板厚0.80mm、未焼鈍材) を 250mm×100mm に
裁断して供試材とし、B〜Dについては、水素15 vol%
で残部が窒素からなる露点−30℃の雰囲気中で、予め、
昇温速度15℃/秒、 850℃× 120秒の焼鈍を行った。
【0032】これらの鋼板を80℃の5%HCl水溶液中で
5秒間酸洗し(一部の鋼板については酸洗を実施せ
ず)、その後、鋼板表面に、表2に示す条件で、2〜70
mg/m2 のNiめっき、2〜70mg/m2 のFeめっき、5mg/m2
のCuめっき、または10〜15mg/m2のCoめっきを施した
後、竪型溶融めっき装置を用いて酸化(予熱)処理、還
元処理および溶融亜鉛めっきを行った。この装置によれ
ば、供試材を所定の雰囲気で熱処理することができ、か
つ、還元雰囲気から直接溶融めっき浴中に浸漬すること
ができる。酸化処理は表3のa〜eに示した条件で行い
(但し、aは酸化処理せず)、還元処理はN2+25 vol%
H2の雰囲気中で 600℃×60秒の条件で行い、還元処理
後、鋼板を 460℃に冷却して溶融亜鉛めっきを行った。
めっき浴の全Al濃度は 0.112%、全Fe濃度は 0.020%
で、めっき時間は1秒とし、ガスワイパーによりZn付着
量を約50g/m2 (片面当たり) に調整した。なお、不めっ
きを生じなかったものについては、さらに 500℃で合金
化処理を行った。
【0033】溶融亜鉛めっき後、不めっきの発生状況を
調査した。また、不めっきのなかったものについては合
金化処理を行い、合金化所要時間を測定した。
【0034】調査結果を表4に示す。なお、同表には、
電気めっきの前処理としての酸洗の有無、電気めっきの
目付量、酸化(予熱)方法、酸化鉄量および還元条件も
併せて示した。
【0035】表2の結果から明らかなように、本発明で
規定する条件で電気めっき、酸化(予熱)処理および還
元処理を行った場合は、不めっきを生じさせることなく
溶融亜鉛めっきを行うことができた。また、合金化も容
易であった。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4(1)】
【0040】
【表4(2)】
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、Siを含有する鋼板
に対して本発明方法を適用すれば、不めっきのない、表
面品質に優れた溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜
鉛めっき鋼板を製造することができる。
【0042】

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Siを 0.2重量%以上含有する鋼板の表面に
    予めNi、Fe、CuおよびCoの1種以上を5〜70mg/m2 の付
    着量で電気めっきし、次いで 700℃以下の酸化性雰囲気
    中で加熱して鋼板表面にFeに換算して 0.3〜1.5g/m2
    酸化鉄を形成させた後、 500〜650 ℃の温度域で還元
    し、続いて溶融亜鉛めっきを施すことを特徴とする珪素
    含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法。
  2. 【請求項2】Siを 0.2重量%以上含有する鋼板の表面に
    予めNi、Fe、CuおよびCoの1種以上を5〜70mg/m2 の付
    着量で電気めっきし、次いで 700℃以下の酸化性雰囲気
    中で加熱して鋼板表面にFeに換算して 0.3〜1.5g/m2
    酸化鉄を形成させた後、 500〜650 ℃の温度域で還元
    し、続いて溶融亜鉛めっきを施した後、合金化処理する
    ことを特徴とする珪素含有鋼板の溶融亜鉛めっき方法。
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