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JP2796848B2 - 熱可塑性エラストマー - Google Patents

熱可塑性エラストマー

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JP2796848B2
JP2796848B2 JP1200884A JP20088489A JP2796848B2 JP 2796848 B2 JP2796848 B2 JP 2796848B2 JP 1200884 A JP1200884 A JP 1200884A JP 20088489 A JP20088489 A JP 20088489A JP 2796848 B2 JP2796848 B2 JP 2796848B2
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里香 秋吉
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、熱可塑性エラストマーに係り、特に高強度
で流動性に優れ、かつ柔軟性、耐油性、ゴム弾性に優れ
た熱可塑性エラストマーに関する。
近年、熱可塑性エラストマーは熱可塑性樹脂と同様の
加工方法、すなわち射出成型、中空成型、回転成型、押
出成型等の方法を用いることができ、且つ適切なるゴム
様の柔軟性を持った種々の組成物が上市され、従来の架
橋ゴムに比較して加工能率の良さ及び再生の容易さから
種々の用途に用いられている。
熱可塑性エラストマーとは、重合物系内にその使用温
度においてゴム状の性質を示すソフトセグメントと、結
晶やガラスその他の疑似架橋点とみなされるハードセグ
メントを適切に含有し、使用温度においては架橋ゴムと
同様の挙動をし、加工温度においては一般の熱可塑性樹
脂と同様の挙動を示すように分子設計されたエラストマ
ーである。
各種の熱可塑性エラストマーの中でもポリオレフィン
系のものは抜群の耐候性、および適度の耐熱性のため自
動車分野、電線分野に主として用いられている。
[従来の技術] 部分架橋されたモノオレフィン共重合体ゴムとポリオ
レフィン樹脂とのブレンドからなるオレフィン系熱可塑
性エラストマー状組成物は、特公昭53−34210号公報等
により公知である。この組成物は、柔軟性、流動性は優
れているが、強度、ゴム弾性が加硫ゴムに劣る欠点を有
する。この欠点を改良したものとして、完全架橋された
エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EP
DM)とポリオレフィン樹脂とのブレンドからなるオレフ
ィン系熱可塑性エラストマー組成物も特公昭55−18448
号公報等により公知である。しかし、この組成物は加硫
ゴムに匹敵しうる性能を有しているものの、流動性に劣
る欠点を有し、改良の余地があった。
以上のように一つの欠点を改良するための手段が他の
特性の低下をもたらす最大の原因は、使用しているゴム
成分が非晶性でランダムな共重合体であり、更に不飽和
基を含む分子量分布の狭いEPDMであるためと考えられ
る。このような共重合体ゴムは柔軟ではあるが、強度は
著しく小さく、強度を上げるために架橋する必要があ
る。
しかし、有機過酸化物等による部分架橋では、耐熱
性、圧縮永久歪み等は改善されるが、引張り強度はそれ
ほど改善されない。このため、ゴム成分量を増していく
につれて、強度を維持するために、完全架橋が必要にな
るが、反面流動性も著しく低下する。
流動性の低下を改善する手段として鉱物油系軟化剤を
添加することが行なわれるが、大量に添加する必要があ
り、これはオイルの充填のための練り時間の増加、強度
の低下、ブリード等の好ましくない影響を与えることに
なる。
結晶性のエチレン−α−オレフィン共重合体を使用し
た架橋樹脂組成物は特開昭61−152753号公報等に示され
ているが、使用されている結晶性のエチレン−α−オレ
フィン共重合体の分子量は、190℃のメルトインデック
スで0.01〜100g/10minと分子量が比較的小さいため軟質
ゴム成分としてのグリーン強度は小さく、同じ理由で架
橋特性にも劣り、その結果、柔軟性と強度、ゴム弾性の
バランスがとれた組成物を得るには不充分であった。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、ポリオレィン系樹脂とブレンドするゴム
に、結晶性を有するエチレン−プロピレン共重合ゴムと
必要に応じてエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重
合体ゴムのブレンド物を使用し、更にそのエチレン−プ
ロピレン共重合体ゴムに特定の構造のものを使用するこ
とにより、従来技術では達成できなかった高流動性を維
持し、なお加硫ゴムに匹敵し得る強度、柔軟性、ゴム弾
性、耐油性に優れる物性バランスのとれた熱可塑性エラ
ストマー組成物を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、鋭意研究を行なった結果、ポリエチレ
ン結晶を内部に含む高分子量の飽和のエチレン−プロピ
レン共重合体ゴム(EPM)、必要に応じてエチレン−プ
ロピレン−非共役ジエン重合体(EPDM)の混合物、ポリ
オレフィン系樹脂及び必要に応じて軟化剤を配合し、硬
化剤を用いて動的に熱処理を行ない、ゴム成分を部分架
橋することにより、本発明の目的を達成することを見出
し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、 (a)エチレン含有量が60〜78モル%、X−線による結
晶化度が4〜20%、融解の最高ピーク温度が100℃以
上、230℃メルトフローインデックス(MFI)が0.01未
満、、HLMFI/MFIが35以上、Mw/Mnが4以上、引張破断強
度が100kg/cm3以上であるエチレン−プロピレン共重合
体ゴムとエチレン−プロピレン非共役ジエン共重合体ゴ
ムの混合物であって、該混合物中のエチレン−プロピレ
ン−非共役ジエン共重合体ゴムの含有量が95重量%以下
であって、該混合物からなる成分45〜90重量部及び (b)ポリオレフィン系樹脂10〜55重量部 からなる組成物を硬化剤と共に処理し、その結果架橋さ
れた配合物中の(a)成分のゲル含量をシクロヘキサン
への浸漬によって求めた場合、23℃、48時間で、80重量
%を超え、97重量%未満である熱可塑性エラストマーに
関する。
本発明の(a)成分の一部として用いられるエチレン
−プロピレン共重合体ゴム(以下EPMと略す。)として
は、下記の特徴を有するものが用いられる。
すなわち、未架橋の状態で引張り破断強度(グリーン
強度)[σ]が100kg/cm2以上、好ましくは150kg/cm2
上、特に好ましくは200kg/cm2以上であり、エチレン含
有量が60〜78モル%、GPC(ゲルバーミェーションクロ
マトグラフ)で測定されたMw/Mnが4以上(但しMw,Mnは
それぞれ重量平均分子量、数平均分子量を表わす。)、
好ましくは5以上、230℃のMFIが0.01未満の高分子量で
あり、HLMFI/MFIが35以上(但し、HLMFI,MFIはJIS K721
0のそれぞれ21.6kg、2.16kg荷重の値を表わす。)、X
−線で測定した結晶化度が4〜20%、好ましくは4〜10
%で、かつ示差走査熱量計(DSC)で測定して100℃以上
にポリエチレン性結晶の融解ピーク[Tm]を持つもので
ある。
上記EPMの結晶成分は、架橋された後多少融点は低下
するが、物理的架橋点として作用し、結晶成分が結晶と
して存在できる(結晶の融解温度以下)限り、共有結合
によって結び付けられた架橋点と同じように振る舞い、
見かけ上、架橋密度を大きくする効果を持ち、強度、耐
油性を向上させる。
一方、成形加工温度(ポリプロピレンの融解温度以
上)である約160〜170℃以上、一般的には180〜230℃の
温度では、EPM中のポリエチレン結晶が融解することに
より物理的架橋点が消滅し、トータルの架橋密度を低下
させるために、流動性が維持できる。
したがって、EPMとしては結晶化度が4%以下ではエ
ラストマーの物理的架橋点の不足で強度が低下し、20%
以上では硬くなりすぎてエラストマー組成物としての柔
軟性が不足する。
EPM中のエチレン含有量は60〜78モル%の範囲のもの
であり、60%未満ではグリーン強度が不足し、78モル%
を越えると硬くなりすぎて柔軟性が不足する。ショアー
Aで示すと50〜95にほぼ対応し、ショアーA60〜80が好
ましい。
EPMのグリーン強度はポリエチレン結晶化度だけでな
く分子量にも強く依存する。グリーン強度を100kg/cm2
以上にするためには、柔軟なものほど、すなわちポリエ
チレン性結晶化度の小さいものほど高分子量にする必要
があり、このため、230℃のMFIは0.01未満であることが
必要である。
MFIを0.01未満にする別の有効性は、架橋に際しての
ゲル化効率が良くなるため、有機過酸化物架橋での架橋
剤が少量で済むこと、ゴム弾性に有利な絡み合いを増や
し、欠陥となる分子鎖末端を少なくできる。
良好な流動性を得るためには、GPCで測定した多分散
値Mw/Mnが4以上、好ましくは5以上、及び230℃で測定
したHLMFI/MFIが35以上であることが必須である。この
ように従来のEPMに比較して分子量分布を広くすること
により、架橋された後もなお流動性に優れた熱可塑性エ
ラストマー組成物を得ることができる。
以上の特徴を有するEPMは、それ自体が熱可塑性エラ
ストマーとして優れた性能を有している。すなわち、エ
チレン−プロピレンランダム共重合体よりなるソフトセ
グメントとエチレン性結晶からなるハードセグメントを
同一分子内に配置するように作られていることにより強
度と柔軟性とのバランスに優れた性能を有する。
かかる性能を有するEPMの代表的な製造方法として特
開昭57−179207号公報に示された例を挙げることができ
る。該方法によれば、エチレンとプロピレンとを、チー
グラー型触媒の存在下で、炭素数4以下の飽和あるいは
不飽和炭化水素中で50℃以下の反応温度で、スラリー状
態で共重合することにより、本発明に好適な共重合ゴム
を作ることができる。この本製造法はスラリー状態で製
造することにより、従来の溶液重合法とことなり、高融
点のポリエチレン結晶成分を含む共重合ゴムを容易に作
ることが可能となる。更に、架橋性や強度アップに有利
な共重合ゴムの高分子量化も容易となる。
このような方法に適する触媒系としては、特開昭47−
34478号公報、同51−28189号、同52−151691号、または
同56−11909号に提案されているような、チタン、塩
素、必要に応じてマグネシウムを含む固体成分とアルミ
ニウムトリアルキルのような有機アルミニウム化合物及
び必要に応じて第3成分を含む触媒系、あるいは特開昭
56−151707号公報、同57−141410号、同58−45209号、
又は同59−215304号に提案されているような、少なくと
もTi、Mg、ハロゲンを含む化合物を、塩素又は窒素を含
む環状化合物あるいはこれと有機アルミニウム化合物で
処理した固体成分と、有機アルミニウム化合物あるいは
これと酸素を含む環状化合物からなる触媒系が好適であ
る。
好ましくは特開昭56−151707号あるいは同59−215304
号に示された触媒系であり、更に好ましくは同59−2153
04号に提案された触媒系である。
しかし、上記EPMは熱可塑性エラストマーの原料とし
て優れた性能を有しているが、組成物中のゴム成分が上
記のEPM単独では、強度、耐油性に優れるものの、柔軟
性が不足する場合がある。
この場合には柔軟性を持ったエチレン−プロピレン−
非共役ジエン共重合体ゴム(以下EPDMと略す。)をゴム
成分としてブレンドすることにより、流動性に優れ、強
度、耐油性と柔軟性、ゴム弾性のバランスのとれた熱可
塑性エラストマー組成物を得ることができる。
EPDMとしては公知の方法で得られる非晶性のエチレン
−プロピレン−ジエン共重合体ゴムが使用可能である。
EPDMに使用するジエンモノマーとして、炭素原子数5
〜20の非共役ジエン、例えば1,4−ペンタジエン、1,4−
および1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキ
サジエンおよび1,4−オクタジエン、環状ジエン、例え
ばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオ
クタジエンおよびジシクロペンタジエン、アルケニルノ
ルボルネン、例えば5−エチリデン−および5−ブチリ
デン−2−ノルボルネン、2−メタリル−および2−イ
ソプロペニル−5−ノルボルネンを用いたものが挙げら
れる。これらの中でエチリデンノルボルネンまたはジシ
クロペンタジエンを用いたものが好ましい。
エチレンとプロピレンの比率はエチレン含量が60〜78
モル%、ジエン化合物は全体の1〜15重量%、好ましく
は1〜10重量%である。EPDMとしては、デカリン135℃
で測定した[η]が0.5〜4dl/g、好ましくは1〜3dl/g
である。
ゴム成分におけるEPMとEPDMの混合比率はEPDMが95重
量%以下、好ましくは75/25〜25/75、更に好ましくは70
/30〜40/60である。EPMの比率が多い場合は強度が大き
く、且つ流動性も良好であるが若干硬度が高くなる。一
方、EPDMの比率が高い場合には、永久伸びが小さく柔軟
になる。
本発明の(b)成分を構成するポリオレフィン系樹脂
としては、1種またはそれ以上のモノオレフィンの高圧
法、中圧法または低圧法いずれかによる重合から得られ
る結晶性の高分子量の固体生成物を包含する。満足すべ
きオレフィンの例は、エチレン、プロピレン、1−ブテ
ン、1−ペンテン、1−ヘキセン、2−メチル1−プロ
ペン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペ
ンテン、5−メチル−1−ヘキセンおよびそれらの混合
物である。好ましくは、ポリプロピレン系樹脂である。
ポリプロピレン系樹脂とは、アイソタクチックホモポ
リプロピレン又はエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1
等のα−オレフィンとプロピレンのランダムあるいはブ
ロック共重合であって結晶成分がポリプロピレンである
か又はこれに他のポリオレフィンをブレンドしたもので
ある。
上述のポリプロピレン系樹脂は熱可塑性エラストマー
の耐熱性、機械的強度及び流動性の向上に寄与するもの
であり、この目的のためにDSC(Differential Scanning
Galorimetry)で測定した融点(融解の最大ピーク温
度)が155℃以上に存在するものが好ましい。230℃のメ
ルトフローインデックスは0.01以上のものである。
(a)成分と(b)成分の混合比率は(a)成分45〜
90重量部、(b)成分55〜10重量部((a)+(b)=
100重量部)であり、(a)成分が45重量部未満では得
られる熱可塑性エラストマーが硬くなりすぎて、もはや
エラストマーとは言えず、一方90重量部を越えると強度
は維持できるものの流動性が低下しすぎ、成形性が悪化
する。(a)成分が75重量部以上では流動性を改善する
ために、軟化剤を添加することが好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂にホモポリプロピレンと
ランダムポリプロピレンの混合物を用いることにより、
(a)成分と(b)成分の相溶性を増し、本発明の熱可
塑性エラストマーの破断強度、破断伸びを更に大きくす
ることができる。ここで用いられるランダムポリプロピ
レンは、ポリプロピレン結晶を有するプロピレンとα−
オレフィンとのランダム共重合体であり、α−オレフィ
ンとしてはエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1等が好
ましく、特にエチレンが好ましい。α−オレフィンの含
有量は1〜15モル%、融点は120〜140℃、MFIは0.01以
上のものである。添加量は(b)成分の高結晶性ポリプ
ロピレン系樹脂のうちの90重量%以下である。(b)成
分のうちの90重量%を越えると熱可塑性エラストマーの
耐熱性が損なわれるので好ましくない。
軟化剤は本発明の熱可塑性エラストマーの流動性、柔
軟性を改善するために必要に応じて添加されるもので、
パラフィン系、ナフテン系、芳香族系、ポリブテン系等
があるが、本発明の目的にはパラフィン系、ナフテン
系、ポリブテン系が好ましい。
添加量は(a)成分の等重量以下であり、それを越え
ると軟化剤のブリードによる表面のベタツキ、強度の低
下が起こるので好ましくない。また、添加しなくても共
重合ゴムが75重量部以下までは、強度、流動性は十分保
てる。
本発明で目的とする熱可塑性エラストマー組成物は
(a)、(b)各成分、必要に応じて軟化剤の存在下に
架橋剤を添加し、動的に熱処理することにより得られ
る。
例えば、特公昭53−34210号公報に見られるようにEPR
を部分架橋しておき、ポリオレフィン樹脂とブレンドす
る方法、特公昭53−21021号公報のようにゴム成分とプ
ラスチック成分を混合しつつ架橋する方法、特開昭52−
37953号公報のようにゴム成分とプラスチック成分を混
練機中であらかじめ十分にブレンドした後に部分硬化す
る程度の架橋剤を添加し、更に混練を続ける方法等の技
術が提案されている。
以上のどの方法を用いても良好な性能を熱可塑性エラ
ストマーを得ることができるが、ゴム成分とプラスチッ
ク成分との相溶性の観点からみると架橋剤を除く各成分
をあらかじめ十分に溶融混練した後、架橋剤を加えて更
に溶融混練を続けるのが好ましい。この際に使用する架
橋剤として種々のものがあるが、得られたエラストマー
の性質が良好な圧縮永久歪みが得られる、汚染性がな
い、耐熱性が良い等の点で有機過酸化物による架橋が望
ましい。
(a)、(b)の各成分、必要に応じて軟化剤の存在
下に有機過酸化物を添加し、動的に熱処理する場合に
は、(b)成分は有機過酸化物で架橋されない(分子切
断を起こす)ポリプロピレン系樹脂が好ましい。有機過
酸化物で架橋されるポリエチレン系樹脂は、過度の粘度
上昇のために実際上使用できない。この際用いられる出
発のポリプロピレンのMFIは20以下のものが好ましい。
なぜなら、動的な処理の間にポリプロピレンは、分子切
断により次第に分子量を減ずることによる強度低下を補
うために出発の分子量をある程度大きくする必要がある
ためとゴム成分の分散性をよくするために動的処理等の
トルクを大きくするためである。
しかし、もともとのゴム成分の引張り破断強度が大き
いために、最終的なポリプロピレンのMFIが100以上、極
端な場合には延性を失うほどに分子量が低下してもなお
組成物としての強度は従来のゴム成分に比較して格段に
優れ、流動性も分子切断に応じてよくなる。
一方、イオウ加硫のような不飽和基を利用した硬化剤
を用いた場合には、EPDMは架橋されるが、EPMは架橋さ
れない。しかし、この場合でも今までに述べたような特
定の構造のEPMを用いることで強度の大きいものが得ら
れる。但し、この場合には出発のポリプロピレンは分子
切断を起こさないので、流動性をよくするためには出発
のポリプロピレンのMFIは有機過酸化物を硬化剤に用い
た場合よりも大きなものを用いることが好ましい。この
場合のMFIは10〜60が好適である。
ここで用いられる有機過酸化物としては、例えば、ジ
クミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、
2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)
ヘキサン、1,3−ビス−(tert−ブチルペルオキシ−イ
ソプロピル)−ベンゼン、tert−ブチルクミルペルオキ
シド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオ
キシ)−ヘキシン、3,1,1−ジ−tert−ブチルペルオキ
シ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、tert−ブチル
ペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソ
プロピルカーボネート等を挙げることができる。
有機過酸化物の配合量は(a)、(b)、更にこれに
軟化剤の総量100重量部に対し、0.1〜2重量部、好まし
くは0.5ないし1.0重量部である。配合量が0.05重量部未
満であると(a)成分の架橋度が小さすぎる結果、本発
明の熱可塑性エラストマーの耐熱性、圧縮永久歪み、反
発弾性等のゴム的性質が不充分となる。一方、2重量部
を越える配合では、(b)成分の過度の分子切断により
熱可塑性エラストマーの引張り破断強度、破断伸びの低
下を招来する。
その他の適当な架橋剤としては、ギ酸アジド及び芳香
族ポリアジドのようなアジドタイプの架橋剤、アルキル
フェノール樹脂や臭素化アルキルフェノール樹脂等の樹
脂加硫剤、更にN,N,N′,N′−テトラブチル−,N,N,N′,
N′−テトラメチル−およびN,N,N′,N′−テトララウリ
ル−チウラムジスルフィドのようなチウラムジスルフィ
ド、そしてまた、p−キノンジオキシム及びイオウそれ
自体が含まれる。イオウ又はイオウ供与体を用いる場合
は加硫促進剤及び活性剤、例えば金属塩又は酸化物を用
いるのが適当である。
有機過酸化物を動的に熱処理する際に、架橋助剤を用
いることができる。ここで用いられる架橋助剤として例
えば、イオウ、p−キノンジオキシム、p,p′−ジベン
ゾイルキノンジオキシム、エチレングリコールジメタク
リレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレー
ト、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリ
アリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジ
アリルフタレート、ポリエチレングリコールジメタクリ
レート、1,2−ポリブタジエン、N,N′−m−フェニレン
ビスマレイミド、無水マレイン酸、グリシジルメタクリ
レートを挙げることができる。配合量としては有機過酸
化物と等量ないし2倍量が好ましい。
本発明によれば、動的な熱処理条件下で架橋するゴム
成分は部分的に留まり、実質的な完全架橋とは異なる。
組成物中のゴム成分を架橋させることによる効果は、耐
熱性やゴム弾性の付与の他、実質的な引張り強度の改善
であるが、本発明に用いる共重合ゴムはもともとが高強
度であるため、流動性を極端に低下させるほど架橋密度
を大にする必要はなく、このことの好ましい効果として
特に、ゴム成分が75重量部を越えるような柔軟領域で、
高強度で高流動性が達成できる。
共重合ゴムの架橋度が十分である場合、すなわち実質
的に完全架橋である場合は、流動性の低下を引き起こ
し、成形品にキレツ等が生じ易く、伸びが低下するとい
う欠点を有し、架橋度がある程度以下では引張り強度、
特に高温時における引張り強度の改善効果が必ずしも十
分でない。
本発明の目的に適合したゴム成分の部分架橋の程度で
は23℃で48時間シクロヘキサン中の浸漬によって測定し
たゲル含量が、80%を越え97%未満、好ましくは90%を
越え97%未満、より好ましくは93%を越え97%未満の範
囲に入るものである。
本発明に用いられるEPMは未架橋の状態ですでにゲル
含量が約70%以上あり、比較的少量の有機過酸化物で上
記目的が達成できることが判る。
動的な熱処理で架橋された配合物のゴム成分のゲル含
量を測定するには、ゴム成分以外の配合成分の補正が必
要である。ゴム成分と樹脂成分と軟化剤及び架橋剤から
なる配合物の動的な熱処理によって得られた熱可塑性エ
ラストマーのゴム成分のゲル含量の適当な測定方法は、
先ず軟化剤及び架橋剤残渣をイソプロピルアルコールを
用いてソックスレー沸点抽出によって除き、次に残分を
23℃シクロヘキサン中に48時間浸漬し可溶分を求める。
この中から樹脂成分に基づく可溶分を補正してゴム成分
のゲル含量を求める。樹脂成分の可溶分はあらかじめ樹
脂単独で測定して求めたものを用いる。但し、有機過酸
化物を架橋剤に用いた場合にはポリプロピレン系樹脂は
分子切断を起こし動的な熱処理後の可溶分が変わるの
で、この場合にはあらかじめ用いるポリプロピレン単独
で有機過酸化物を用いて分子切断を起こし、この時の分
子量低下と可溶分の関係を用いて補正を行なう。
本発明の熱可塑性エラストマーにおいては、性能を損
なわない範囲で、タルク、カーボンブラック、シリカ、
炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、ケイ酸カルシ
ウム等の無機充填剤を配合することが出来る。更に、必
要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑
剤、帯電防止剤、難燃化剤等の添加剤を配合することが
出来る。
溶融混練装置としては、開放型のミキシングロールや
非開放型のバンバリーミキサー、押出機、ニーダー、連
続ミキサー等従来より公知のものが使用できる。これら
のうちでは非開放型の装置を用いるのが好ましく、窒素
等の不活性ガス雰囲気下で混練することが好ましい。
[実施例] 以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
なお、実施例における測定方法は下記の通りである。
(1)MFI:JIS K7210(荷重2.16kg、230℃) (2)HLMFI:JIS K7210(荷重21.6kg、230℃) (3)引張り破断強度[σ]、伸び、永久伸び:JIS K63
01 (4)ショアーA硬度:ASTM D−676−49 (5)共重合ゴム中のエチレン含量:赤外線吸収スペク
トル法による。
(6)[η]:デカリン135℃の極限粘度 (7)融点測定[Tm]:PERKIN−ELMER社製 DSC7500を
用い、スキャンスピード20℃/minで測定。
−20℃〜200℃サンプルは200℃で融解状態にあるもの
を急冷したプレスシートで、1日以上放置したものを用
いた。
(8)結晶化度:理学電機製X線回折装置を用い、常法
に従って測定を行った。
(9)ゲル分率:試料を23℃のシクロヘキサン中に48時
間浸し、不溶性成分量を決定することにより求める。こ
のとき、初期重量から、ゴム以外のシクロヘキサン可溶
性成分、例えば、軟化剤、可塑剤およびシクロヘキサン
に可溶の樹脂成分の重量を差し引いた浸漬前および浸漬
後の重量を使用する。
(EPMの製造) 無水塩化マグネシウム(市販の無水塩化マグネシウム
を乾燥した窒素気流中で約500℃において15時間乾燥す
ることによって得られるもの)2.1kgおよび0.9kgのAA型
三塩化チタン(東洋ストファ社製)を振動ボールミルで
8時間共粉砕を行ない、均一状の共粉砕物〔チタン原子
含有量7.2重量%、塩素原子含有量73.7重量%、マグネ
シウム原子含有量17.7重量%、以下「固体成分(F)と
云う」。〕を製造した。
このようにして固体成分(F)のうち、600gを100
のグラスライニング容器に入れ、40のn−ヘキサンを
加え、均一状の懸濁液になるように撹拌した。この懸濁
液に100gのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ンを加え、室温で1時間十分撹拌を行なった。その後、
静置し、上澄み液を抜き、20のトルエンを加えた。つ
いで、2kgのテトラヒドロフランを加え、室温において
2時間十分に撹拌した。処理系を室温に冷却し、生成物
をn−ヘキサンを用いて十分に洗浄し(洗浄液中にチタ
ン原子がはぼ認められなくなるまで)固体触媒成分
(A)が得られた。
290の管状ループ式連続反応器に液体プロピレンを
充たし、プロピレンを60kg/H、エチレンを液層中エチレ
ン濃度を10モル%に保ち、水素を液層中水素濃度が0.1
モル%に保ち、トリエチルアルミニウム(ヘキサン溶
液)を360ミリモル/H、テトラヒドロフランを180ミリモ
ル/H、固定触媒成分(A)を3.2g/Hの割合でこの反応器
に供給し、反応温度30℃にて重合を行った。重合体は間
欠的にスラリー状態でフラッシュホッパーに排出し、下
部より重合体を取り出し温N2気流を通じ、40℃にて乾燥
し重合体粉末を得た。これらは互着のないサラサラの粉
末状であり、収量は16kg/Hであった。従って固体触媒当
りの平均重合活性は49.3kg/g−Tiであった。
この粉末100重量部に0.05重量部の2,6ジ−t−ブチル
パラクレゾールと0.2重量部のジミリスチリルチオジプ
ロピオネート、0.05重量部のテトラキス〔メチレン−3
−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート〕メタンおよび0.2重量部のステ
アリン酸カルシウムを加えて、3インチロールを用いて
180℃で5分間素練りした。得られたシート状サンプル
を圧縮成形し、引張り試験及びショアー硬度を測定し
た。このもののエチレン含有量は67モル%、MFIは0.007
5、HLMFIは0.3g/10分、HLMFI/HFIは40、Mw/Mnは5.3、X
線の結晶化度は7.0%、DSCの融点は110℃、デカリン中1
35℃の極限粘度は5.9dl/gであった。本試料をEPM−1と
する。
同様の触媒と反応器を用い、反応条件を変えて種々の
EPM−2〜4を製造した。また、分子量分布(HLMFI/MFI
の小さい)の狭いEPMの例として市販のEPM−5を使用し
た。これらのEPMの性質は第1表に示す通りである。
一方、EPDMとしては市販のムーニー粘度65、ヨウ素価
24であり、第3成分としてエチリデンノルボルネンを使
用したものを用いた。このEPDMのその他の性質は同じく
第1表に示す。
(組成物の製造) 東洋精機製ラボプラストミル、バンバリーミキサー75
ccを用いて、架橋剤を除く各成分を185℃で5分間、ロ
ーター回転数60rpmで予め均一に分散した後に、架橋剤
および架橋助剤を加えて、更に、10分間溶融混練を続け
た後にサンプルをとり出し、230℃でホットプレスする
ことにより、各試験片を作成した。
(その他の原材料) 実施例および比較例においては、ポリプロピレン系樹
脂として、MFI0.5g/10分で融点160℃のポリプロピレン
(PP)、およびMFI0.08g/10分、エチレン含量8.8モル
%、融点130℃のランダムポリプロピレン(RPP)を用い
た。架橋剤としては、カヤヘキサAD(化薬ヌーリー製、
2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−
ヘキサン)を用い、架橋助剤としては、TAIC(トリアリ
ルイソシアヌレート)を用いた。
軟化剤としてはサンパー150(サンオイル社製、パラ
フィンオイル)を用いた。
(実施例1〜4、比較例1〜8) 前記の原料を用いて、種々の組成物を前記の方法で作
製し、下記に示す第2表の結果を得た。
実施例1〜4に示すようにゴム成分にEPDMをブレンド
することにより柔軟性が向上し、永久伸びが改善され
る。更に架橋剤配合量を多くしてゲル含率を大きくした
実施例1は実施例4に比べて破断強度、破断伸びが一層
改善される。
一方、ゴム成分がEPDMのみの場合は、流動性が極端に
低下し、強度と流動性のバランスが悪くなる(比較例
2)。
軟化剤を添加しない場合、強度は向上するが流動性が
低下する。軟化剤をゴム成分量を超える量(80部)添加
した比較例4では、流動性、柔軟性は向上するものの、
強度が極端に低下し、表面がべたつき実用性がなくな
る。
また、架橋剤の配合量を減らしゴム成分中のゲル含量
を75%と低くした比較列1の場合、実施例2に比べ、強
度の低下が著しく、ゲル含量が99%すなわち、充分に架
橋されている場合(比較例3)は、流動性に劣り、伸び
も著しく低下することがわかる。
エチレン含量が高いEPM−3を使用した比較例4で
は、組成物が硬くなり、PPとの相溶性が悪く、破断強
度、伸びも出ない。またMw/Mnが小さいEPM−5を用いた
場合は、流動性が悪い(比較例6)。MFIの大きいEPM−
4を使用した比較例7、さらに、プロピレン含量が多
く、破断強度の小さいEPM−2を使用した比較例8の配
合物の破断強度は著しく小さい。
(実施例8) EPM−1 24部;EPDM36部;MFI20g/10分、で融点160℃
のポリプロピレン40部;上記共重合体ゴム成分100重量
部に対して、酸化亜鉛5重量部、テトラメチルケウラム
ジスルフィド1.5重量部、メルカブトベンゾチアゾール
0.5重量部、ステアリン酸1部、イオウ1.5重量部を混合
し、前記実施例と同様に加熱溶融、混練し、EPDMの部分
だけ架橋した後、230℃でホットプレスし、試験片を作
成した。
得られた組成物のMFIは測定不能、HLMFIは200、引張
り破線強度は120kg/cm2、引張り破断伸び500%、永久伸
び25%、ショアーA/D:80/30、ゲル分率94のエラストマ
ーが得られた。
[発明の効果] 本発明の組成物は、ゴム成分に高融点のポリエチレン
結晶を内部に含み、かつ、分子量分布の広い、グリーン
強度の大きいエチレン−プロピレン共重合体ゴムと、柔
軟性に優れるエチレン−プロピレン非共役ジエン共重合
体のブレンド物を用いていること、および適当な架橋剤
を用い部分架橋することによって、従来公知の熱可塑性
エラストマーより高流動性で高強度をもち、かつ柔軟
性、ゴム性に優れた熱可塑性エラストマーを得ることが
できた。
本発明のエラストマーは、柔軟性、ゴム性、強度のバ
ランスに優れており、流動性がよいため、自動車部品、
例えば、バンパー、コーナーバンパー、サイドモール、
スパイラー等、弱電部品、例えば、ホース類、各種パッ
キン、絶縁シート等、電線ケーブル分野、例えば、フレ
キシブルコード、ブースターケーブル等土木・建材分
野、例えば防水シート、止水材等の材料に適しており、
これら部品は、、ブロー成形、押出成形、射出成形等の
通常の成形法で容易に成形することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−84838(JP,A) 特開 昭61−247747(JP,A) 特開 平1−247441(JP,A) 特開 平1−197544(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 23/00 - 23/36

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)エチレン含有量が60〜78%モル、X
    −線による結晶化度が4〜20%、融解の最高ピーク温度
    が100℃以上、230℃メルトフローインデックス(MFI)
    が0.01未満、HLMFI/MFIが35以上、Mw/Mnが4以上、引張
    破断強度が100kg/cm3以上であるエチレン−プロピレン
    共重合体ゴムとエチレン−プロピレン非共役ジエン共重
    合体ゴムの混合物であって、該混合物中のエチレン−プ
    ロピレン−非共役ジエン共重合体ゴムの含有量が95重量
    %以下であって、該混合物からなるゴム成分45〜90重量
    部及び (b)ポリオレフィン系樹脂10〜55重量部 からなる組成物を硬化剤と共に処理し、その結果架橋さ
    れた配合物中の(a)成分のゲル含量をシクロヘキサン
    への浸漬によって求めた場合、23℃、48時間で、80重量
    %を超え、97重量%未満である熱可塑性エラストマー。
  2. 【請求項2】(b)成分のポリオレフィン系樹脂がポリ
    プロピレン系樹脂である請求項(1)記載の熱可塑性エ
    ラストマー。
  3. 【請求項3】(b)成分のポリプロピレン系樹脂が、ホ
    モポリプロピレン10〜100重量%と、α−オレフィンを
    5〜15モル%含有するプロピレン−α−オレフィンラン
    ダム共重合体90〜0重量%である請求項(2)記載の熱
    可塑性エラストマー。
  4. 【請求項4】硬化剤が有機過酸化物であり、処理が動的
    にされたことを特徴とする請求項(1)、(2)及び
    (3)のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー。
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