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JP2686248B2 - Si3N4セラミックスとその製造用Si基組成物及びこれらの製造方法 - Google Patents

Si3N4セラミックスとその製造用Si基組成物及びこれらの製造方法

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JP2686248B2
JP2686248B2 JP7298004A JP29800495A JP2686248B2 JP 2686248 B2 JP2686248 B2 JP 2686248B2 JP 7298004 A JP7298004 A JP 7298004A JP 29800495 A JP29800495 A JP 29800495A JP 2686248 B2 JP2686248 B2 JP 2686248B2
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powder
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Si34セラミッ
クスの製造に用いる水を分散媒体としたスラリー状のS
i基組成物、及びこのスラリー状Si基組成物から製造
される緻密且つ高強度なSi34セラミックス、並びに
これらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリコン(Si)粉末を原料として
セラミックスを製造する場合、混合及び成形工程におけ
る粉末の分散性を高める観点から、Mat. Res. S
oc.Symp. Proc. Vol.60、pp.51〜
61(1986)に記載されているように、分散媒体と
してアルコール類が使用されてきた。しかし、工業的に
見てアルコールを用いるプロセスは、高価な防爆設備を
使用しなければならないため、これが製品のコスト上昇
の一因となっていた。
【0003】一方、防爆設備を必要としない水を分散媒
体として利用する方法が、特開平3−261662号公
報や特開平1−212279号公報に提案されている。
これらの方法は、Si粉末を水に分散させ、更に有機バ
インダーや窒化剤等を添加してスラリーとし、これらの
スラリーを脱水して成形した後、加熱焼成してSi34
焼結体を製造するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記特開平3
−261662号公報及び特開平1−212279号公
報に記載の方法では、スラリー中に緻密化に必要な焼結
助剤が添加されるには至っていないため、例えば特開平
3−261662号公報にも明記されているように、得
られたSi34焼結体には小さい気孔が多数分散状態に
存在することが避けられず、従ってそのSi34焼結体
の抗析強度は極めて低いものと予測され、実際600M
Pa以下の抗折強度しか得られていない。
【0005】これらの従来の方法において、その水スラ
リー中に焼結助剤が添加されていない理由は、アルコー
ル中と違って水中ではSi粉末と焼結助剤の分散性が良
くなく、試料内において密度の不均一が発生するためと
考えられる。
【0006】本発明は、かかる従来の事情に鑑み、水中
での粉末の分散性を改善することにより、水を分散媒体
とし、焼結助剤を含んでいるSi34セラミックス製造
用のスラリー状Si基組成物を提供すること、及びこの
Si基組成物を用いて製造された、安価で、緻密且つ高
強度なSi34セラミックスを提供することを目的とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明が提供するスラリー状のSi基組成物は、表
面酸化膜の厚さが1.5〜15nmのSi粉末と、50
〜90重量%の水と、酸化物換算で0.2〜7.5重量%
の焼結助剤と、0.05〜3重量%の分散剤とを含み、
pHが8〜12に調整されていることを特徴とする。
【0008】このスラリー状のSi基組成物は、大気中
にて200℃〜800℃で酸化処理したSi粉末に、5
0〜90重量%の水、酸化物換算で0.2〜7.5重量%
の焼結助剤、及び0.05〜3重量%の分散剤を添加
し、pHを8〜12に調整することを特徴とする方法に
より製造される。
【0009】また、このスラリー状のSi基組成物を用
いることにより、防爆設備を必要とせずにSi34セラ
ミックスを安価に製造することができ、しかも得られる
Si34セラミックスは緻密且つ均質で、高強度であ
る。具体的には、相対密度が96%以上、抗折強度が8
00MPa以上のSi34セラミックスを得ることがで
きる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明においては、Si粉末の表
面処理、分散媒体としての水の量の制御、スラリーのp
H調整、分散剤の利用により、更に好ましくは有機バイ
ンダーの使用によって、水中でのSi粉末と焼結助剤の
分散性を向上させ、水による混合と成形の工程を可能に
した。従って、本発明のスラリー状Si基組成物は、防
爆設備を必要とせずに取り扱うことができるため、安価
なSi34セラミックスを提供することができる。
【0011】本発明において使用するSi粉末は、市販
のSi粉末を200〜800℃の大気中で酸化処理し、
表面に厚さ1.5〜15nmの厚い酸化膜を形成したも
のである。市販のSi粉末においては、表面酸化膜の厚
さは通常0.3〜1.0nmの間にあるが、これを大気中
にて200〜800℃で酸化処理することにより、酸化
膜の厚さを1.5〜15nmの範囲内に制御できる。
尚、上記酸化膜の厚さは、粉末の酸素量と比表面積の測
定結果から見積もった値である。
【0012】この酸化処理を行うことでSi粉末の分散
性を向上させることができる。分散性が向上する理由は
明らかではないが、通常の市販のSi粉末の表面の組成
はSiOであって、水との濡れ性が悪いSiの量が多い
のに対し、酸化処理を行うことにより水の1成分である
酸素の量が増えてSiO2へと変化するため、水との濡
れ性が向上してSi粉末同士の凝集がほぐれ、分散性が
向上したものと考えられる。更に、混合時に粉末同士の
接触によって表面酸化膜の剥離が部分的に発生しても、
酸化膜が厚いために、水との濡れ性の悪いSiが表面に
露出し難いことも理由の一つと考えれる。
【0013】このSi粉末の酸化処理において、処理温
度が200℃より低い場合には、充分な表面酸化処理が
なされないため、粉末同士の凝集が発生し、後に添加す
る焼結助剤と均一に混合されず、焼結したとき密度のば
らつきが発生し、低強度のSi34セラミックスしか得
られない。また、800℃を越える温度で処理を行なっ
た場合、表面にSiO2が多量に生成するため、このS
iO2がセラミックス中に粒界相不純物として多量に残
存し、やはり低強度のSi34セラミックスしか得られ
ない。
【0014】また、Si粉末の平均粒子径は0.1〜1
0μmの範囲が好ましい。その理由は、平均粒子径0.
1μm未満の粉末はカサ密度が高く、ハンドリング性に
欠けるためであり、逆に10μmを越える粉末はスラリ
ーにしたとき、凝集及び沈澱が起こり、均一なスラリー
となり難いためである。
【0015】次に、焼結助剤としては、従来からSi3
4の焼結に用いられているもので良いが、特に周期律
表のIIa族、IIIa族元素、または希土類元素からなる
化合物、更に具体的にはCa、Sr、Mg、Al、Y、
La、Sm、Nd、Ybの化合物が好ましい。特に、比
較的に安価に入手できるCa、Mg、Al、Y、La、
Smの酸化物、窒化物、酸窒化物、あるいはそれらの複
合化合物のうちの少なくとも1種類が好ましい。焼結助
剤は上記化合物の粉末を添加してもよいが、加熱すると
1500℃までに上記酸化物、窒化物、酸窒化物に変化
する前駆体、例えばラウリン酸カルシウム、ステアリン
酸イットリウム等を用いることもできる。
【0016】また、焼結助剤の添加量はスラリー状組成
物全体に対して酸化物換算で0.2〜7.5重量%(Si
粉末に対して酸化物換算で0.5〜17重量%)とす
る。焼結助剤が組成物全体に対して0.2重量%より少
ない場合、焼結助剤としての役目を果さないため、得ら
れる焼結体の相対密度は96%より低くなり、多数のポ
アが存在して低い抗析強度しか発現しない。逆に7.5
重量%を越えると、焼結体中に強度の低い粒界相の量が
多くなるため、得られるSi34セラミックスが低強度
となるので好ましくない。
【0017】分散剤としては、ポリカルボン酸アンモニ
ウム系分散剤が特に好ましい。分散剤の添加量は、スラ
リー状組成物全体に対して0.05〜3重量%(Si粉
末に対して0.5〜5重量%)、好ましくは0.05〜
2.5重量%とする。この分散剤の添加により、粉末の
分散性が向上し、粉末同士の凝集が皆無になるため、成
形時に成形体内での密度のばらつきが少なくなり、相対
密度が高くハンドリング性に優れた成形体が得られる。
ただし、添加量が0.05重量%未満では分散剤として
の機能を果さず、2.5重量%を越えても成形体の密度
に変化はないが、3重量%よりも多くなると加熱して得
られた焼結体中に分散剤が不純物として残り、強度が低
下するため好ましくない。
【0018】上記のSi粉末、焼結助剤、分散剤、及び
水を混合し、スラリー中の水量が50〜90重量%とな
るように調整を行い、アンモニア等のアルカリ性溶液を
使ってpHを8〜12に調整することにより、粉末の分
散性が著しく向上し、極めて均一なスラリー状のSi基
組成物が得られる。
【0019】この時、水の量を50重量%未満とすると
スラリーの粘度が高くなるため、Si粉末及び焼結助剤
粉末が均一に混合されない。また、水の量が90重量%
を越えると、スラリーから成型体を得る工程において密
度の低い成形体しか得られないため、成形体のハンドリ
ング性が悪くなる。また、スラリーのpHが8より小さ
いか又はpHが12よりも大きい場合には、粉末同士の
凝集が発生する。
【0020】こうして得られたスラリー状Si基組成物
からSi34セラミックスを製造する方法は、上記スラ
リーをボールミルなどを使って十分に混合し、成形した
後、成形体を窒素雰囲気中において加熱焼成する。
【0021】ここで、スラリー中に予めアクリル系等の
有機バインダーを添加混合した場合には、スラリーの水
分を加圧下で脱水しながら成形を行うことができる。有
機バインダーの添加量は、分散剤と同じく0.05〜3
重量%、好ましくは0.05〜2.5重量%の範囲とす
る。その理由は分散剤の場合と同様である。一方、有機
バインダーをスラリーに添加しない場合には、そのスラ
リーを凍結乾燥機、スプレードライヤー等を使用して乾
燥し、得られた乾燥粉末に有機バインダーを噴霧して乾
式プレス成形を行なう。
【0022】以上の工程を経て得られた成形体を脱バイ
ンダー処理した後、加熱焼成して、Si34セラミック
スを得る。こうして得られたSi34セラミックスをE
PMA(Electron Probe Micro A
nalysis)で観察した結果、図1に示すように焼
結助剤(図中に点で表示)が均一に分散した組織になっ
ていることがわかった。
【0023】参考のため、図2に酸化処理を行っていな
い市販のSi粉末を用いた場合のSi34セラミックス
の組織、及び図3にアルコールを使用した従来法で得ら
れたSi34セラミックスの組織を示す。焼結助剤の分
散を比較すると、市販Si粉末を用いた図2では焼結助
剤が凝集しているのに対し、本発明による図1ではアル
コールを用いた従来法の図3と同程度に均一に分散して
いることが分かる。
【0024】かくして得られた本発明のSi34セラミ
ックスは、上記のごとく均一であって、相対密度が96
%以上に緻密化され、しかもJIS R−1601に準
拠した3点曲げ強度による抗析試験を行った結果、80
0MPa以上の高強度を示すことがわかった。前記特開
平3−261662号公報等に記載された従来の水混合
では、抗折強度が最高でも600Mpa程度であったこ
とと比較すると、極めて高強度であることが分かる。
【0025】更に、本発明の製造方法によれば、分散媒
体が水であってアルコールを使用しないため、防爆設備
を一切必要としない安価な製造ラインを用いることがで
き、安価で且つ高品質なSi34セラミックス製品を提
供できる。
【0026】
【実施例】実施例1 平均粒子径が2.8μmの市販のSi粉末を、大気中に
おいて下記表1に示す温度でそれぞれ5時間の酸化処理
を行った。得られた各試料のSi粉末の表面酸化膜の膜
厚を表1に併せて示した。これら各Si粉末に、スラリ
ー全体に対して、水70重量%、焼結助剤としてY23
粉末2重量%とSm23粉末3重量%、ポリカルボン酸
アルミニウム系の分散剤0.5重量%とになるように添
加した。
【0027】次に、アンモニアでpHを8.5に調整
し、ボールミルで48時間混合して、それぞれスラリー
を得た。試料2では、上記スラリーに0.5重量%のア
クリル系有機バインダーを添加し、加圧下に脱水しなが
ら成形体を作製した。また、それ以外の試料では、上記
のごとく得られたスラリーをスプレードライヤーで乾燥
させつつ、アクリル系の有機バインダーを噴霧すること
で造粒を行ない、成形体を得た。
【0028】その後、これらの各成形体を窒素雰囲気中
にて800℃に加熱して脱バインダー処理を行なった
後、窒素雰囲気中において1800℃まで加熱し、4時
間保持してSi34焼結体を製造した。得られた各Si
34焼結体中に存在する焼結助剤元素は、Yが4.4重
量%及びSmが6.7重量%であった。
【0029】得られた各Si34焼結体の相対密度、及
び上記と同様にして得た各成形体の相対密度をアルキメ
デス法によって測定した。また、JIS R−1601
に準拠した3点曲げ試験により、各焼結体の抗析強度を
測定した。得られた結果を、それぞれ表1にまとめて示
した。
【0030】
【表1】 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0031】上記の結果から分かるように、本発明の試
料においては、Si粉末を200℃〜800℃で処理す
ることで、粉末表面の酸化膜の膜厚を1.5〜15nm
に制御できたため、成形体及び焼結体が均質で良好な相
対密度となり、抗析強度が800MPa以上のSi34
焼結体が得られた。
【0032】これに対して、酸化処理を行わないSi粉
末を用いた試料4では、粉末同士が凝集するため、均質
な成形体が得られず相対密度が50%と低くなり、同様
の焼結条件にも拘らず、得られた焼結体は相対密度及び
抗折強度ともに低かった。また、900℃で酸化処理し
たSi粉末を用いた試料5では、酸化膜に由来する酸化
物が焼結体の粒界に多量に存在するため、抗折強度が低
下した。
【0033】実施例2 下記表2に示すようにスラリー中の水の量を変化させた
ことを除いて、前記実施例1と同様にしてSi34焼結
体を得た。尚、使用したSi粉末は、実施例1の試料2
と同様に、市販のSi粉末を大気中にて600℃で5時
間酸化処理したものであり、その酸化膜の膜厚は5.3
nmである。
【0034】使用した焼結助剤の種類と量は実施例1と
同じであり、従って得られた各Si34焼結体中の焼結
助剤元素はYが4.4重量%及びSmが6.7重量%であ
る。尚、スラリーのpH及び分散剤も実施例1と同じで
あり、また試料8はスラリーに有機バインダーを0.5
重量%添加し、その他の試料は乾燥粉末に有機バインダ
ーを噴霧して成形した。
【0035】得られた各Si34焼結体について実施例
1と同様に相対密度及び抗折強度を測定し、同様に測定
した成形体の相対密度と共に、表2に示した。
【0036】
【表2】 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0037】上記の結果から、スラリー中の水の量を5
0〜90重量%に調整することで、良好な密度を有する
成形体が得られ、更にこれを焼結することで800Mp
a以上の抗析強度を有する焼結体を製造できることが分
かる。
【0038】実施例3 下記表3に示すように焼結助剤の種類及びその添加量を
変化させたことを除いて、前記実施例1と同様にしてS
34焼結体を得た。尚、使用したSi粉末は、実施例
1の試料2と同様に、市販のSi粉末を大気中にて60
0℃で5時間酸化処理したものであり、その酸化膜の膜
厚は5.3nmである。
【0039】また、使用した焼結助剤は、試料11〜1
3、18、19、21では酸化物として、試料14では
窒化物として、試料15と20では酸窒化物として、試
料16ではラウリン酸及び試料17ではステアリン酸の
形態で添加した。ただし、焼結助剤の添加量は全て酸化
物換算で表示した。尚、水の量、スラリーのpH及び分
散剤は実施例1と同じであり、また試料16〜19にお
いてはスラリー中に有機バインダーを0.5重量%添加
し、その他の試料では乾燥粉末に有機バインダーを噴霧
して成形した。
【0040】得られた各Si34焼結体について実施例
1と同様に相対密度及び抗折強度を測定し、同様に測定
した成形体の相対密度、及び焼結体中の焼結助剤元素量
と共に、それぞれ表3に示した。
【0041】
【表3】 焼 結 助 剤 焼結体中助剤元素 相対密度 (%) 抗折強度試料 (重量%) (重量%) 成形体 焼結体 (MPa) 11 Sm(0.15) Ca(0.1) Sm(0.33) Ca(0.22) 54 96 820 12 Sm(0.3) Y (0.2) Sm(0.67) Y (0.44) 54 96 880 13 Sm(0.5) La(0.5) Sm(1.1) La(1.1) 53 96 920 14 Sm(1.5) Nd(1.5) Sm(3.3) Nd(3.3) 54 97 840 15 Sm(2.0) Yb(2.0) Sm(4.4) Yb(4.4) 54 97 1080 16 Yb(4.0) Al(2.0) Yb(8.9) Al(4.4) 57 98 980 17 La(5.0) Sr(2.0) La(11.1) Sr(4.4) 57 98 1020 18 Sm(5.0) Mg(2.0) Sm(11.1) Mg(4.4) 56 98 1250 19 Sm(5.0) Mg(2.3) Sm(11.1) Mg(5.8) 55 97 1200 20* Sm(0.1) Ca(0.05) Sm(0.2) Ca(0.1) 53 92 410 21* Sm(5.0) Y (3.0) Sm(11.1) Y (6.7) 54 94 520 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0042】上記の結果から、焼結助剤であるIIa族、
IIIa族、希土類元素を酸化物換算で0.2〜7.5重量
%添加することで、相対密度96%以上且つ抗析強度8
00Mpa以上のSi34焼結体が得られることが分か
る。
【0043】実施例4 下記表4に示すようにスラリーのpHを変化させたこと
を除いて、前記実施例1と同様にしてSi34焼結体を
得た。尚、使用したSi粉末は、実施例1の試料2と同
様に、市販のSi粉末を大気中にて600℃で5時間酸
化処理したものであり、その酸化膜の膜厚は5.3nm
である。
【0044】また、使用した焼結助剤は実施例1と同じ
く2重量%Y23と3重量%S23であり、従って得ら
れた焼結体中の助剤元素量はYが4.4重量%及びSm
が6.7重量%である。水の量及び分散剤も実施例1と
同じであり、また有機バイダーは全て乾燥粉末に噴霧し
て添加した。
【0045】得られた各Si34焼結体について実施例
1と同様に相対密度及び抗折強度を測定し、同様に測定
した成形体の相対密度と共に、表4に示した。
【0046】
【表4】 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0047】上記の結果から、スラリーのpHを8〜1
2に保つことで、良好な密度を有する成形体が得られ、
更にこの成形体を焼結することによって、緻密で且つ抗
析強度が800Mpa以上のSi34焼結体が得られる
ことが分かる。
【0048】実施例5 分散剤あるいは有機バインダーを下記表5に示す量に調
整したことを除いて、前記実施例1と同様にしてSi3
4焼結体を得た。尚、使用したSi粉末は、実施例1
の試料2と同様に、市販のSi粉末を大気中にて600
℃で5時間酸化処理したものであり、その酸化膜の膜厚
は5.3nmである。
【0049】有機バイダーの添加方法は、試料27〜3
1ではスラリーを乾燥した粉末に有機バインダーを噴霧
し、その他の試料32〜37では有機バインダーをスラ
リー中に添加した。使用した焼結助剤の種類と量は実施
例1と同じであり、従って得られた各Si34焼結体中
の焼結助剤元素はYが4.4重量%及びSmが6.7重量
%である。また、水の量及びスラリーのpHも実施例1
と同じである。
【0050】得られた各Si34焼結体について実施例
1と同様に相対密度及び抗折強度を測定し、同様に測定
した成形体の相対密度と共に、表5に示した。
【0051】
【表5】 (注)表中の*を付した試料は比較例である。
【0052】上記の結果から分かるように、スラリー中
の分散剤量及び有機バインダー量をそれぞれ0.05〜
3重量%の範囲に保つことにより、スラリーから直接良
好な密度を有する成形体が得られ、更にはそれを焼結す
ることにより緻密でしかも抗析強度800MPa以上の
Si34焼結体が得られる。
【0053】
【発明の効果】本発明によれば、水を分散媒体とし且つ
焼結助剤を含んだSi34セラミックス製造用のスラリ
ー状Si基組成物が得られ、このSi基組成物の使用に
より防爆設備を用いずに粉末の混合、成形ができるため
安価な製品を提供でき、更には適切な条件に調整したS
i基組成物から密度の均一な成形体を経て緻密で高強度
な焼結体を製造できるため、相対密度が96%以上で抗
折強度が800MPa以上の高品質なSi34セラミッ
クス製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるSi34セラミックスをEPMA
で観察した組織の状態図であり、焼結助剤のY及びSm
を図中に点で表示してある。
【図2】酸化処理を行っていない市販のSi粉末を用い
たスラリーから製造したSi34セラミックスをEPM
Aで観察した組織の状態図であり、同じく焼結助剤のY
及びSmを図中に点で表示してある。
【図3】アルコールを使用した従来法のスラリーから製
造したSi34セラミックスをEPMAで観察した組織
の状態図であり、同じく焼結助剤のY及びSmを図中に
点で表示してある。

Claims (16)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面酸化膜の厚さが1.5〜15nmの
    Si粉末と、50〜90重量%の水と、酸化物換算で
    0.2〜7.5重量%の焼結助剤と、0.05〜3重量%
    の分散剤とを含み、pHが8〜12に調整されているこ
    とを特徴とするスラリー状のSi基組成物。
  2. 【請求項2】 前記焼結助剤がIIa族、IIIa族、希土
    類元素の化合物の少なくとも1種であることを特徴とす
    る、請求項1に記載のSi基組成物。
  3. 【請求項3】 前記IIa族、IIIa族、希土類元素がC
    a、Sr、Mg、Al、Y、La、Sm、Nd、Ybで
    あることを特徴とする、請求項2に記載のSi基組成
    物。
  4. 【請求項4】 前記IIa族、IIIa族、希土類元素の化
    合物が、酸化物、窒化物又は酸窒化物であるか、若しく
    は加熱により上記酸化物、窒化物、酸窒化物になりうる
    焼結助剤の前駆体であることを特徴とする、請求項2又
    は3に記載のSi基組成物。
  5. 【請求項5】 前記スラリー状の組成物が、更に有機バ
    インダーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のS
    i基組成物。
  6. 【請求項6】 前記有機バインダー量が0.05〜3重
    量%であることを特徴とする、請求項5に記載のSi基
    組成物。
  7. 【請求項7】 大気中にて200℃〜800℃で酸化処
    理したSi粉末に、50〜90重量%の水、酸化物換算
    で0.2〜7.5重量%の焼結助剤、及び0.05〜3重
    量%の分散剤を添加し、pHを8〜12に調整すること
    を特徴とする、スラリー状のSi基組成物の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記焼結助剤として、IIa族、IIIa
    族、希土類元素の化合物の少なくとも1種を用いること
    を特徴とする、請求項7に記載のSi基組成物の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記IIa族、IIIa族、希土類元素がC
    a、Sr、Mg、Al、Y、La、Sm、Nd、Ybで
    あることを特徴とする、請求項8に記載のSi基組成物
    の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記IIa族、IIIa族、希土類元素の
    化合物として、酸化物、窒化物又は酸窒化物の粉末、若
    しくは加熱により上記酸化物、窒化物、酸窒化物になり
    うる焼結助剤の前駆体を用いることを特徴とする、請求
    項8又は9に記載のSi基組成物の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記スラリー状の組成物に、更に有機
    バインダーを添加することを特徴とする、請求項7に記
    載のSi基組成物の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記有機バインダーの添加量が0.0
    5〜3重量%であることを特徴とする、請求項11に記
    載のSi基組成物の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項1に記載のスラリー状のSi基
    組成物から製造され、相対密度が96%以上で抗析強度
    が800Mpa以上であることを特徴とするSi34
    ラミックス。
  14. 【請求項14】 請求項1に記載のスラリー状のSi基
    組成物を成形し、その成形体を窒素雰囲気中において加
    熱焼成することを特徴とするSi34セラミックスの製
    造方法。
  15. 【請求項15】 前記スラリー状のSi基組成物が有機
    バインダーを含み、このSi基組成物を加圧下に脱水し
    ながら成形することを特徴とする、請求項14に記載の
    Si34セラミックスの製造方法。
  16. 【請求項16】 前記スラリー状のSi基組成物を乾燥
    し、得られた乾燥粉末に有機バインダーを噴霧して成形
    することを特徴とする、請求項14に記載のSi34
    ラミックスの製造方法。
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