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JP2536613B2 - 自動車のスリップ検出装置 - Google Patents

自動車のスリップ検出装置

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Publication number
JP2536613B2
JP2536613B2 JP1047319A JP4731989A JP2536613B2 JP 2536613 B2 JP2536613 B2 JP 2536613B2 JP 1047319 A JP1047319 A JP 1047319A JP 4731989 A JP4731989 A JP 4731989A JP 2536613 B2 JP2536613 B2 JP 2536613B2
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JP
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wheel
slip
determined
wheels
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JP1047319A
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JPH02227338A (ja
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桂司 礒田
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Mitsubishi Motors Corp
Original Assignee
Mitsubishi Motors Corp
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Publication date
Application filed by Mitsubishi Motors Corp filed Critical Mitsubishi Motors Corp
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  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)
  • Arrangement And Mounting Of Devices That Control Transmission Of Motive Force (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、自動車のスリップ検出装置、特に回転数検
出手段により夫々検出された前輪及び後輪の回転数間の
差を基に同前輪及び後輪の駆動力が伝達されている方の
車輪のスリップ率または量を求める演算装置を備えた検
出装置に関する。
〔従来の技術〕 近年、雪道等の滑り易い路面において、駆動輪のスリ
ップを検出すると、駆動力を自動的に制御するトラクシ
ョンコントロールを備えた自動車や、2輪駆動から4輪
駆動に自動的に切換える自動車が開発されている。
この種の自動車には、駆動輪のスリップを正確に検出
する検出装置が必要であり、その一例として例えば特開
昭63−11431号公報に示されるような検出装置が知られ
ている。この公報に示される装置は、前後輪間の回転数
の差に基づき、更に前輪の操舵角から求められる前後輪
間の軌跡差に起因する回転数差を考慮して駆動輪のスリ
ップを検出している。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、上記公報に示される装置にあっては、横加
速度が小さいときにはほぼ正確な値が検出できるが、前
輪の操舵角から求められる軌跡差は車体に作用する横加
速度の大きさに応じて異なるため、該横加速度が大きく
なったときには正確な値を検出することが困難であっ
た。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は上記に鑑み創案されたもので、前輪および後
輪のいずれか一方が駆動輪となる2輪駆動状態が達成可
能な車両に設置され、前輪及び後輪の回転数を検出可能
な回転数検出手段と、同回転数検出手段により検出され
た前輪及び後輪の回転数の差を基に駆動輪のスリップ率
またはスリップ量を演算し同スリップ率またはスリップ
量を出力する前後輪回転数差演算手段と、を有する演算
装置を備えたスリップ検出装置において、前輪の操舵角
を検出する操舵角検出手段と、車体に作用する横加速度
を検出する加速度検出手段と、上記操舵角検出手段によ
り検出された上記前輪の操舵角及び前後輪間のホイール
ベースを用いて算出される前後輪間の回転数差に基いて
補正する第1補正手段と、上記加速度検出手段により検
出された上記横加速度の増大に伴って変化する前後輪間
の回転数差に基いて補正する第2補正手段とを備え、上
記スリップ率またはスリップ量を上記第1および第2補
正手段を用いて補正して駆動輪の路面に対するスリップ
率又はスリップ量と推定される補正スリップ率または補
正スリップ量を求めるよう構成されたことを特徴とす
る。
〔作用〕
本発明によれば、上記演算装置は、上記回転数検出手
段により夫々求めた前輪及び後輪の回転数を基に、上記
第1補正手段により前後輪間の内輪差に起因する前後輪
間の回転数差に基いてスリップ率またはスリップ量を補
正し、更に上記第2補正手段により車体に作用する横加
速度の増大に伴って変化する前後輪間の回転数差に基い
てスリップ率またはスリップ量を補正して駆動輪の路面
に対するスリップ率またはスリップ量を求めることがで
きる。
〔実施例〕 以下、本発明の一実施例を第1図〜第12図に従って詳
細に説明する。
第1図は本実施例の構成を示す説明図である。図中、
符号2はエンジンであって、同エンジン2の出力はクラ
ッチ4及びトランスミッション6を介して出力軸8に伝
達される。出力軸8の動力はフロントクラッチ10及びフ
ロントデファレンシャルギア12を介して左右の前輪14,1
6に伝達されると共にリヤクラッチ18及びリヤデファレ
ンシャルギア20を介して左右の後輪22,24に伝達され
る。フロントクラッチ10及びリヤクラッチ18は夫々室10
a及び18aに作用する油圧に応じてすべりが0%(直結状
態)から100%(遮断状態)までの任意の結合状態をと
ることができる湿式多板クラッチにより構成されてい
る。
符号30はエンジン2もしくは電動モータにより駆動さ
れリザーバ32内の油を吸引して吐出する油圧ポンプであ
り、同油圧ポンプ30の吐出口の油圧はリザーバ32との間
に介装されたレギュレータバルブ34により調圧されてい
る。また油圧ポンプ30の吐出口は電磁切換弁36を介して
フロントクラッチ10の室10aに接続されると共に電磁切
換弁38を介してリヤクラッチ18の室18aに接続されてい
る。これら電磁切換弁36,38は一方において電磁制御弁4
0を介して油圧ポンプ30の吐出口に接続されている。電
磁切換弁36は、制御信号に応じて、フロントクラッチ10
の室10aと油圧ポンプ30とを直接連通する位置(図示状
態)と、フロントクラッチ10の室10aと電磁制御弁40の
下流側とを連通する位置とをとることができる。同様
に、電磁切換弁38は、制御信号に応じて、リヤクラッチ
18の室18aと油圧ポンプ30とを直接連通する位置と、リ
ヤクラッチ18の室18aと電磁制御弁40の下流側とを連通
する位置(図示状態)とをとることができる。電磁制御
弁40は、制御信号に応じて同電磁制御弁40の下流側の油
圧を油圧ポンプ30の吐出油圧に等しい最大油圧Pmaxから
ゼロまでの任意の圧力に減圧調整することができる。な
お、符号32aは電磁制御弁40の下流側の油圧を下げる際
に排出する油を戻すリザーバを示し、同リザーバ32a
は、図面の便宜上リザーバ32と別個に図示してあるが、
実際はリザーバ32と同一のものである。
符号44はコントローラであり、図示しないが演算に必
要なCPU,ROM,RAM及び入出力に必要な入力回路、出力回
路を備えている。コントローラ44の入力回路には、各輪
の回転速度を独立して検出する車輪速センサ46、車両の
重心部分に作用する前後加速度センサ50、操舵状態を検
出する操舵センサ52、エンジン2のスロットルの状態を
検出するスロットルセンサ54、エンジン2の回転数を検
出するエンジン回転数センサ56、ブレーキの状態を検出
するブレーキセンサ58、トランスミッション6のシフト
位置を検出するシフトセンサ60、車体のヨーレイトを検
出するヨーレイトセンサ62の各検出信号が入力されてい
る。
符号64は、車両の運転席前方の計器盤に設けられたモ
ードセレクタであり、マニュアルでFFモード、FRモード
及び4WDモードを夫々選択するためのスイッチ66,68及び
70と、後で詳述するノーマルモード及びスポーツモード
を夫々選択するためのスイッチ72及び74とを備えてい
る。そして、同モードセレクタ64の各スイッチの操作状
態を示す信号はやはりコントローラ44の入力回路に入力
されている。
次にコントローラ44の作動を第2図〜第12図に従って
説明する。
コントローラ44は先ず第2図に示すメインルーチンの
ステップM2で制御に必要なRAM内の各フラグ、メモリ領
域を初期設定、つまりゼロ設定する。次いでステップM4
でモードセレクタ64の信号を読取り、ステップM6でその
信号がマニュアル側か否かを判定する。ステップM6で
「YES」と判定すると、ステップM8に進んでモードセレ
クタ64の出力信号がどのモードであるか判定する。ステ
ップM8において「FFモード」であると判定すると、ステ
ップM10に進んで出力回路から駆動状態がFFモードとな
る制御信号を出力する。つまり、この場合コントローラ
44はフロントクラッチ10の室10a内の油圧を最大に、リ
ヤクラッチ18の室18a内の油圧をゼロにすべく、電磁切
換弁36に同切換弁36が室10aと油圧ポンプ30とを直接連
通する位置をとる制御信号を、電磁切換弁38に同切換弁
38が室18aと電磁制御弁40の下流側とを連通する位置を
とる制御信号を、電磁制御弁40に同制御弁40の下流側の
圧力がゼロとなる制御信号を出力する。これによりフロ
ントクラッチ10は直結状態にリヤクラッチ18は遮断状態
になって前輪14,16のみにエンジン2の駆動力が伝わるF
F状態を得ることができる。
またステップM8において「RFモード」であると判定す
ると、ステップM12に進んで出力回路から駆動状態がFR
モードとなる制御信号を出力する。つまり、この場合コ
ントローラ44はフロントクラッチ10の室10a内の油圧を
ゼロに、リヤクラッチ18の室18a内の油圧を最大にすべ
く、電磁切換弁36に同切換弁36が室10aと電磁制御弁40
の下流側とを連通する位置をとる制御信号を、電磁切換
弁38に同切換弁38が室18aと油圧ポンプ30とを直接連通
する位置をとる制御信号を、電磁制御弁40に同制御弁40
の下流側の圧力がゼロとなる制御信号を出力する。これ
によりフロントクラッチ10は遮断状態にリヤクラッチ18
は直結状態になって後輪22,24のみにエンジン2の駆動
力が伝わるFR状態を得ることができる。
更にステップM8において「4WDモード」であると判定
すると、ステップM14に進んで出力回路から駆動状態が
直結4WDモードとなる制御信号を出力する。つまり、こ
の場合コントローラ44はフロントクラッチ10及びリヤク
ラッチ18の各室10a及び18a内の油圧を最大にすべく、電
磁切換弁36及び38に同切換弁36及び38が室10a及び18aと
油圧ポンプ30とを直接連通する位置をとる制御信号を夫
々出力する。これによりフロントクラッチ10及びリヤク
ラッチ18は夫々直結状態になって前輪14,16及び後輪22,
24の両方にエンジン2の駆動力が伝わる直結4WD状態を
得ることができる。
一方ステップM6で「NO」と判定すると、ステップM16
に進んでモードセレクタ64の出力信号がノーマルモード
であるか否か判定する。そしてステップM16において「Y
ES」であればステップM18に進んで後述するノーマルモ
ードルーチンの処理を実行し、「NO」であればステップ
M20に進んでやはり後述するスポーツモードルーチンの
処理を実行する。
次にメインルーチンにおけるステップM18のノーマル
モードルーチンを第3図に従って説明する。先ず、ステ
ップS100でモードセレクタ64からの検出信号が前回もノ
ーマルモードであったか否か判定する。ノーマルモード
に切換えた直後はこのステップS100で「NO」と判定され
てステップS102に進む。ステップS102ではこのノーマル
モードルーチンによる制御に必要な所要フラグ、メモリ
領域を初期設定、つまりゼロ設定する。次いでステップ
S104に進んで駆動状態がFFモードとなるように電磁切換
弁36,38及び電磁制御弁40に制御信号を出力する。な
お、この制御信号による制御内容は上述したステップM1
0の内容と同じである。次いでステップS106でフラグA
を「O」に、ステップS108でフラグCを「O」に設定
し、リターンつまりメインルーチンのステップM4に戻
る。このフラグAは後で詳述するがフロントクラッチ10
及びリヤクラッチ18を両方共に遮断状態にして駆動力を
前輪14,16及び後輪22,24の何れにも伝えないような制御
を行っているときに「1」となるものである。またフラ
グCはやはり後で詳述するがフロントクラッチ10及びリ
ヤクラッチ18を両方共にすべりゼロ、つまり直結状態に
して駆動力を前輪14,16及び後輪22,24の両方に伝える制
御を行っているときに「1」となるものである。
ステップS100で「YES」と判定すると、ステップS110
で各センサの検出信号を読込む。次いでステップS112で
フラグAが「1」であるか判定し、同ステップS112で
「NO」と判定すると、ステップS114に進む。ステップS1
14ではフラグBが「1」であるか判定する。このフラグ
Bは後で詳述するがトラクション制御を行っているとき
に「1」となるものである。ステップS114で「NO」と判
定すると、ステップS116に進んでフラグCが「1」であ
るか判定する。ステップS116で「NO」と判定すると、ス
テップS118に進む。
ステップS118では車両が発進状態にあるか判定する。
この判定の内容は、具体的には以下に述べる(i)〜
(iii)の条件を全て満足しているか否かを判定するも
のである。
(i)車速Vが設定車速(例えば10km/h)以下であるこ
と。
(ii)スロットルセンサ54により検出されたスロットル
開度θthが設定開度(例えば50%)以上であること。
(iii)操舵センサ52により検出されたステアリングホ
イールの操舵角θが設定範囲(例えば−180゜≦θ≦180
゜)であること。
なお、条件(i)における車速Vとしては車輪速セン
サ46により検出された車輪速の中で最も小さい値を採用
している。そして、ステップS118で「NO」と判定する
と、ステップS120に進む。
ステップS120では前輪12,14のスリップ比(車輪の路
面に対するスリップ率)と後輪22,24のスリップ比との
差ΔSが設定値(例えば0.03)より大きいか否か判定す
る。この判定を行うときはFFモードであるので、ΔSを
車輪速センサ46により検出される前輪12,14側の車輪速
から後輪22,24側の車輪速を差し引いた差に基づき求め
る方法が考えられるが、実際の前後輪間のスリップ比差
ΔSを求めるには、旋回時に前後輪間での回転半径差
(所謂内輪差)が生じるためその回転半径差に相当する
分を補正する必要があり、更には車体に作用する横加速
度の増大により車両の旋回中心が前方へ移動して内輪差
が減少するためその減少分を補正する必要がある。この
ためこのステップS120の判定では次のような演算を行っ
ている。
すなわち、第4図に示すモデルにおいてfは前輪、r
は後輪、Gは車両の重心、lはホイールベース、lrは後
輪fの中心から重心Gまでの距離、Cは旋回中心、Rfは
旋回中心Cから前輪fの中心までの距離、RGは旋回中
心Cから重心Gまでの距離、Rrは旋回中心Cから後輪r
の中心までの距離、δは前輪fの操舵角、rは旋回中心
C周りの車両重心Gの角速度である。
ここでアツカマンジオメトリに従えば、 Vf=γ・Rf=(VG/RG)・Rf …(1) であるので、(1)式は、 また、 Vr=γ・Rr=(VG/RG)・Rr …(3) Rr=l/δであるので、(3)式は となる。
ここで(2)式において とすれば、 Vf=αf・VG …(6) (4)式において とすれば、 Vr=αr・VG …(8) となる。(αf,αr:アツカマン補正係数) したがって、(6),(8)式における補正係数αf,
αrは第5図に示されるように操舵角δに対する特性を
定義できる。
他方、上述のとおり車両の重心Gに作用する横加速度
GYの増大に伴い旋回中心Cが前方へ移動して内輪差が
減少するのであり、一般に横加速度GYがゼロのときは
上述のアツカマン補正係数に伴う内輪差が生じるのに対
し横加速度GYが設定値GYPのときに内輪差がゼロとな
り、またその間の大きさの横加速度GYに対してはその
横加速度GYの大きさに応じ内輪差がほぼ比例して変化
して大体線形を呈することが確認されている。なお、実
験によれば、通常の一般的な乗用車においてGYPは約0.
5Gであることが確認されている。このため、横加速度G
Yに対する内輪差の補正係数αYの特性を第6図に示す
ように GY≦GYPのとき、 αY=(GY−GYP)+1.0 …(9) GY>GYPのとき、 αY=0 …(10) と定義できる。
その結果、最終的には、 によって前後輪間のスリップ比差を求めることができ
る。なお、(11)式においてωfは前輪fの車輪速、ω
rは後輪rの車輪速である。
これにより、ステップS120では、車輪速センサ46から
検出した前輪12,14の車輪速及び後輪22,24の車輪速、横
加速度センサ50から求めた横加速度、操舵センサ52から
求めた操舵角に基づき上述の式(9)に従ってスリップ
比差ΔSを演算し、そのΔSが設定値(例えば0.03)よ
りも大きいか否かを判定している。なお、その演算にお
いて(11)式中のαf,αr,αYについては式(5),
(7),(9),(10)により求めるが、代わりに第5
図及び第6図に示される特性をマップ化してコントロー
ラ44内のROMに記憶させ、その都度このマップを参照し
て求めることも可能である。
ステップS120で「NO」と判定すると、ステップS122に
進んで旋回限界であるか否か判定する。このステップS1
22の判定内容をここに説明する。第7図に示すモデルに
おいて、fは前輪、rは後輪、mは車両質量、Gは車両
の重心、Iは重心Gまわりのヨー慣性モーメント、Lは
前後輪間のホイールベース、Lfは前輪fと重心Gの距
離、Lrは後輪rと重心Gの距離、rは重心Gまわりのヨ
ーレイト、δは前輪fの操舵角、UXは重心Gの前進速
度、UYは重心Gの横速度、Vは車速、GXは重心Gの前
後加速度、GYは重心Gの横加速度、βは重心Gでの横
滑り角、βfは前輪fの横滑り角、βfは後輪rの横滑
り角、Cfは前輪のコーナリングフォース、Crは後輪rの
コーナリングフォースである。
このモデルにおいて、車両の横方向の運動は、 m・V(dβ/dt+γ)=2Cf+2Cr …(12) ヨーイング運動は、 I・dr/dt=2Lf・Cf−2Lr・Cr …(13) で表わせる。
更にKfを前輪fの等価コーナリングパワー,Krを後輪
rの等価コーナリングパワーとすると、 Cf=Kf・βf=Kf・(δ−β−γ・Lf/V) …(14) Cr=Kr・βr=Kr・(−β+γ・Lr/V) …(15) となる。
今ここで、定常円旋回の条件dβ/dt=0,dr/dt=0を
あてはめ、更にγ=V/R=GY/Vの関係を考慮すると、式
(12)〜(15)から γ2/δ=GY/L・1/(1+A・R・GY) …(16) ただし、 A=−m/2L2・(Lf・Kf−Lr・Kr)/(Kf・Kr) …(17) :スタビリティファクタ を得ることができる。
この式(17)は横加速度GYに対して発生する舵角δ
で基準化されたヨーレイトγを表すもので、式中のAの
値により第8図に示すように旋回特性がUS(アンダステ
ア)側かOS(オーバステア)側かを判別できるのであ
る。
そして、一般的なFF車においては第9図に示すように
横加速度GYの増大に伴い弱US特性から強US特性へとス
テア特性が変化する。この特性は駆動力が大きくなるに
つれて強US特性へ変化するときの横加速度GYの大きさ
が小さくなる傾向を有しているが、γ2/δの値について
注目すると、どの駆動力の大きさであってもその値は横
加速度GYの増大に伴なって増大し極大値をとった後急
激に減少して操縦不能な状態となりかつ極大値は旋回限
界の直前に生じていることがわかる。したがって、この
旋回限界の直前に生じる極大値をとる条件は d(γ2/δ)/dGY=0 …(18) で得ることができる。
ところで、実際の旋回走行においては、前輪fの操舵
角が増大する側にあれば実際の旋回限界は式(18)から
求められる値よりも小さくなり、またエンジンのスロッ
トルが踏込み側であればやはり実際の旋回限界は式(1
8)から求められる値よりも小さくなる。
このため、ステップS122では、所要のセンサからの検
出信号を基に、 を満足したときに旋回限界を越えていると判定してい
る。この式(19)に従って判定する場合は、ヨーレイト
センサ62の検出値、操舵センサ52の検出値、横加速度セ
ンサ50の検出値及びスロットルセンサ54の検出値に基づ
き判定される。また、式(19)に代えて同式(19)にγ
=GY/Vを代入することにより を採用することも可能である。この式(20)に従って判
定する場合は、操舵センサ52の検出値、横加速度センサ
52の検出値及び車輪速センサ46の検出値に基づき判定さ
れる。この判定で車輪速センサ46の検出値(4輪)の中
で最も小さい値を車速Vとして採用するが、仮に回転数
が最も小さい車輪さえもスリップ状態にあり、その値が
実際のVよりも大きい場合でも、その誤差は安全側に働
くので問題ない。むしろ、現状において高価なヨーレイ
トセンサを用いなくて済む効果が大である。
なお、これら式(19),(20)におけるε及びε
はその車両の特性によって適宜定められる係数である。
また式(19),(20)の何れにおいても右辺が「0」と
なっているが車両の特性に応じて適宜設定した数値とす
ることも可能である。
そして、このステップS122で「NO」と判定すると、前
述のステップS104に進む。これにより、このノーマルモ
ードルーチンにおいては、ステップS104で一度FFモード
となった後、ステップS118で「NO」(発進の条件を満足
せず)、ステップS120で「NO」(スリップ比差が小)で
あり、かつステップS122で「NO」(旋回限界にはない)
と判定されている限り、ステップS100,S110,S112,S114,
S116,S118,S120,S122,S104,S106,S108の処理が繰り返さ
れて駆動状態がFFモードに保たれる。
一方ステップS122で「YES」、つまり車両が旋回限界
にあると判定すると、ステップS124に進んで駆動状態が
遮断モードとなる制御信号を出力する。つまり、この場
合コントローラ44は、フロントクラッチ10および、リヤ
クラッチ18の各室10a及び18a内の油圧をゼロにすべく電
磁切換弁36及び38に同切換弁36及び38が室10a及び18aと
電磁制御弁40の下流側とを連通する位置をとる制御信号
を、電磁制御弁40に同制御弁40の下流側の圧力がゼロと
なる制御信号を出力する。これによりフロントクラッチ
10及びリヤクラッチ18は遮断状態になって前輪12,14及
び後輪22,24の両方にエンジン2の駆動力が全く伝わら
ない遮断状態となる。
次いでステップS126でエンジン2の回転数制御が行わ
れる。制御内容はフロントクラッチ10(またはリヤクラ
ッチ18)のエンジン2側の前輪12,14(または後輪22,2
4)側の回転数と同じになるようにエンジン2の制御装
置2aを制御するものである。このため、車輪速センサ46
から求めた車輪速及びシフトセンサ60から求めたシフト
位置に基づき各動力伝達系路のギア比を考慮してエンジ
ン2の目標回転数を定め、エンジン回転数センサ56から
求めるエンジン回転数をフィードバックして同エンジン
回転数が目標回転数となるように制御する。なお、この
実施例においては制御装置2aとして、第10図に示すよう
に、通常時のエンジン2の制御を行うメインスロットル
バルブ2bの他に第2スロットルバルブ2c及び同バルブ2c
を駆動するサーボ装置2dを有するものが採用されてお
り、エンジン2の回転数制御において更にメインスロッ
トルバルブ2bの開度を検出するスロットルセンサ54の検
出信号をも考慮している。
次いでステップS128でブザーまたはランプ等の運転者
に警報を与える警報装置76を作動させる制御信号を出力
し、メモリ内のフラグAに「1」を設定する。このた
め、次にステップS112の判定で「YES」と判定されるた
め、フラグAが「1」である限りステップS100,S110,S1
12,S122,S124,S126,S128,S130の処理が繰り返されて駆
動力が前輪12,14及び後輪22,24の何れにも伝達されない
遮断モードが継続される。これにより、前輪12,14及び
後輪22,24はコーナリングフォースが増大される。
一方、ステップS118で「YES」、つまり上述した発進
に係る条件を満足すると、ステップS132に進んで駆動状
態が直結4WDモードとなるように電磁切換弁36,38に制御
信号を出力する。なお、この制御信号による制御内容は
上述したステップM14の内容と同じである。同様に、ス
テップS120で「YES」と判定すると、ステップS121の処
理を経てステップS132に進む。なお、ステップS121では
そのときの重心Gに作用していた加速度の大きさGc(つ
まり、 をメモリする。
ステップS132で制御信号を出力すると、ステップS134
でフラグCに「1」を設定し、次いでステップS136に進
んで車両が旋回限界であるか否か判定する。このステッ
プS136での判定内容は実質的に上述のステップS122で行
う判定内容と同様に、 または、 に従い、所要センサからの検出信号に基づいて行うもの
である、なお、このステップS136で行う判定は直結4WD
モードにおけるものなので、旋回走行中において前輪の
操舵角が増大する側にあるとき、あるいはエンジンのス
ロットルが踏込み側にあるときの旋回限界に対する影響
が、FFモードにおけるステップS122で行う判定の場合と
比べて小さく、このため式(21),(22)中の係数ε1,
εについては式(19),(20)中の係数ε1より
も適宜小さく設定されている。また勿論、式(21),
(22)の何れにおいても右辺を車両の特性に応じて適宜
設定した数値とすることも可能である。
このステップS136で「NO」と判定すると、ステップS1
38に進んで縦スリップがあるか否か判定する。この判定
は車輪速センサ46により検出された車輪速rω及び前後
加速度センサ48により検出された前後加速度GXを基に
前後方向のスリップ率を求め、同スリップ率が設定値
(例えば1.1)以上であるか否かを判定するものであ
る。具体的には、 (drω/dt)/GX≧1.1 …(23) を満足したときに、縦スリップありと判定する。ステッ
プS138で「NO」と判定すると、ステップS140でフラグB
に「ゼロ」を設定する。次いでステップS142で直結4WD
モードからFFモードへ切換える復帰条件を満足したか否
か判定する。この判定内容は、今回加速度センサ50によ
り検出された前後加速度GX及び横加速度GYから求めた
重心Gに作用する加速度の大きさ(つまり、 が、ステップS120で「YES」と判定されたとき、つまり
前後輪間のスリップ比差ΔSが設定値以上となってFFモ
ードから4WDモードへ切換える必要があると判定したと
きに、ステップS121でメモリした重心Gに作用していた
加速度の大きさGC(つまり、そのときの よりも小さいときに復帰条件を満足したと判定するもの
である。
ステップS142で「NO」と判定すると、ステップS144に
進んでブレーキセンサ58により検出したブレーキの状
態、つまり図示しないブレーキスイッチがオンであるか
を判定する。このステップS144で「NO」と判定すると、
メインルーチンのステップM4に戻る。
ステップS136で「YES」と判定したときは、ステップS
146でフラグCを「0」に設定し、ステップS148でメモ
リGCをクリアし、次いでステップS124に進んで駆動状
態を遮断モードとする制御信号を出力する。
ステップS138で「YES」と判定したときは、ステップS
150に進んで車輪のスリップ率に応じてエンジン2の駆
動出力を制御するトラクション制御を行う制御信号を出
力する。このトラクション制御の方法については周知の
種々の方法が採用可能であるが、この実施例においては
ステップS126で説明した第10図の第2スロットルバルブ
2c及び同バルブ2cを駆動するサーボ装置2dを備えている
のでエンジン2の出力制御にはこのサーボ装置2dを制御
することが好ましい。ステップS150で制御信号を出力す
ると、ステップS152でフラグBを「1」に設定し、メイ
ンルーチンのステップS4に戻る。なお、このフラグBに
関連して、ステップS114で「YES」と判定すると、ステ
ップS138に進むように構成されている。
ステップS142またはS144で「YES」と判定すると、ス
テップS154でフラグCに「0」を設定し、ステップS156
でGCをクリアし、メインルーチンのステップM4に戻る。
このように、ノーマルモードルーチンにおいては、ス
テップS118またはS120で「YES」と判定してステップS13
2で4WDモードになった後は、ステップS136,S138,S142,S
144で「NO」と判定している限り、ステップS116で「YE
S」と判定してステップS132に進むので、駆動状態が4WD
モードに保持される。そして、ステップS132で4WDモー
ドにされている状態で、旋回限界となればステップS136
で「YES」と判定してステップS124で駆動状態が遮断モ
ードとなり、その後操縦性が回復すればステップS122で
「NO」と判定してステップS104でFFモードとなる。また
ステップS138で「YES」と判定すると駆動状態が4WDモー
ドのままステップS150でトラクション制御が行われる。
更に4WDモードからFFモードへの復帰条件を満足する
か、またはブレーキスイッチがオンとなったときは、ス
テップS142またはS144で「YES」と判定して駆動状態がF
Fモードとなる。
次にメインルーチンにおけるステップM20のスポーツ
モードルーチンについて説明する。このスポーツモード
ルーチンにおいて第3図に示すノーマルモードのフロー
チャートと同じ内容の処理(ステップ)には、第3図で
用いた符号と同一の符号を付して詳細な説明は省略す
る。
このスポーツモードルーチンにおいて、第3図のノー
マルモードルーチンと比べて異なる点は、ステップS20
0,S202,S204及びS208であり、ここでこれらのステップ
について順に説明する。
ステップS200では、モードセレクタ64からの検出信号
が前回スポーツモードであったか否かを判定し、「YE
S」であればステップS110に進み、「NO」であればステ
ップS102に進む。ステップS202では、駆動状態がFRモー
ドとなるように電磁切換弁36,38及び電磁制御弁40に制
御信号を出力する。なお、この制御信号による制御内容
は上述したステップM12の内容と同じである。
ステップS204では、後輪22,24のスリップ比(車輪の
路面に対するスリップ率)と前輪12,14のスリップ比と
の差ΔSが設定値(例えば0.05)より大きいか否か判定
する。このステップS204においては、ステップS120の場
合と同様に、後輪22,24側の車輪速から前輪12,14側の車
輪速を差し引いた差に基づき、旋回時の前後輪間での回
転半径差に相当する分の補正及び車体に作用する横加速
度の増大により低減する該回転半径差の分の補正を行っ
ている。このため、詳細には、 に従って演算を行っている。なお、この式(24)中のω
rは後輪rの車輪速、ωfは前輪の車輪速、αf、αr
は夫々上述の式(5),(7)により求める補正係数、
αYは式(9),(10)により求める補正係数である。
そして、ステップS204で「YES」であるとステップS121
へ進んでその時の メモリし、「NO」であるとステップS206へ進む。ステッ
プS206では、旋回限界であるか否か判定する。この判定
内容について説明する。ノーマルモードルーチンのステ
ップS122に関連して、 γ2/δ=GY/L・1/(1+A・R・GY) …(16) を挙げ、更に第9図を参照して説明したが、同様に一般
的なFR車について横加速度GYとγ2/δの関係を求める
と、第12図に示すように横加速度GYの増加に伴い弱US
特性から強OS特性へとステア特性が変化するものであ
る。γ2/δの値について注目すると、どの駆動力の大き
さであってもその値は横加速度GYの増大に伴って増大
し、1/Lのラインを横切った後急増して操縦不能な状態
となることがわかる。
したがって、この旋回限界の直前に生じる条件は d(γ2/δ)/dGY≧ε・(1/L) …(25) で得ることができる。εはその車両の特性によって適
宜定められる係数である。また更に、実際の旋回走行に
おいては、前輪fの操舵角が増大する側にあれば実際の
旋回限界は式(25)から求められる値よりも小さくな
り、またエンジンのスロットルが踏込み側であればやは
り式(25)から求められる値よりも小さくなる。
このため、ステップS206では、 を満足したときに旋回限界を超えていると判定してい
る。この式(26)に従って判定する場合は、ヨーレイト
センサ62の検出値、操舵センサ52の検出値、横加速度セ
ンサ50の検出値及びスロットルセンサ54の検出値に基づ
き判定される。また、式(26)に代えて同式(26)にγ
=GY/Vを代入することにより を採用することも可能である。この式(27)に従って判
定する場合は、操舵センサ52の検出値、横加速度センサ
52の検出値及び車輪速センサ46の検出値に基づき判定さ
れる。この判定で車輪速センサ46の検出値(4輪)の中
で最も小さい値を車速Vとして採用するが、仮に回転数
が最も小さい車輪さえもスリップ状態にあり、その値が
実際のVよりも大きい場合でも、その誤差は安全側に働
くので問題ない。むしろ、現状において高価なヨーレイ
トセンサを用いなくて済む効果が大である。
なお、式(25)〜(27)におけるε34はその
車両の特性によって適宜定められる係数である。
そして、このステップS206で「YES」であるとステッ
プS124へ進み、「NO」であるとステップS202へ進む。
なお、ステップS142における復帰条件は、ステップS2
04で「YES」と判定してステップS121で求めたGCより
も、 小さいときに成立するものである。このように、スポー
ツモードルーチンにおいては、ステップS202で一度FRモ
ードとなった後、ステップS118で「NO」(発進の条件を
満足せず)、ステップS204で「NO」(スリップ比差が
小)であり、かつステップS206で「NO」(旋回限界には
ない)と判定されている限り、駆動状態がFRモードに保
たれる。またステップS118またはS204で「YES」と判定
してステップS132で4WDモードとなった後は、ステップS
136,S138,S142,S144で「NO」と判定している限り、駆動
状態が4WDモードに保たれる。そして、ステップS132で4
WDモードにされている状態で、旋回限界となればステッ
プS136で「YES」と判定してステップS124で駆動状態が
遮断モードとなり、その後操縦性が回復すればステップ
S206で「NO」と判定してステップS202でFRモードとな
る。またステップS138で「YES」と判定すると駆動状態
が4WDモードのままステップS150でトラクション制御が
行われる。更に4WDモードからFRモードへの復帰条件を
満足するか、またはブレーキスイッチがオンとなったと
きは、ステップS142またはS144で「YES」と判定して駆
動状態がFRモードとなる。
上記のように構成された本実施例によれば、モードセ
レクタ64の操作により、マニュアルモードとして駆動状
態をFFモード、FRモード及び4WDモードの何れかに設定
できるばかりでなく、オートモードとして、通常走行時
は駆動状態がFFモードになり必要に応じて4WDモードに
切換わるノーマルモードと、通常走行時は駆動状態がFR
モードになり必要に応じて4WDモードに切換わるスポー
ツモードとを設定できるので、これらノーマルモードま
たはスポーツモードのいずれかに制御モードを設定して
おくことにより4輪駆動状態が必要でないときは2輪駆
動状態となって燃費が向上すると共に、その2輪駆動状
態は運転者の好みに応じて選択された方の駆動状態が保
たれるという効果を奏する。
また、ノーマルモードにおいては、第3図に示すフロ
ーチャートに従って説明したように、FFモードで走行中
に旋回限界を検知すると自動的に遮断モードに切換えて
タイヤ(前輪)のコーナリングフォースを増大させかつ
同時にその状態を運転者に警報することができる。そし
て、旋回限界よりも安定側に回復すると、FFモードに復
帰するが、旋回限界を越えていると判定して遮断モード
に切換えているときに同時にフロントクラッチ10の入力
側の回転数と出力側の回転数とを一致させるべくエンジ
ン2の回転数を制御しているので、遮断モードからFFモ
ードに復帰するときにフロントクラッチ10が急激に接続
されてもそのショックの発生を防止できる。特に、旋回
限界の判定を式(19)または式(20)に沿う条件に従い
行っているので、高い精度で旋回限界を検出することが
でき、これにより旋回中に操縦不能という事態に陥るこ
とを防止できる。またFFモードで走行中に車両が発進状
態にあること、あるいは前輪12,14側のスリップ比から
後輪22,24側のスリップ比を差し引いたスリップ比差Δ
Sが設定値以上であること(つまり、駆動輪である前輪
12,14がスリップ状態にあること)を検出すると、自動
的に4WDモードに切換えて駆動力が前輪12,14及び後輪2
2,24の両方を介して路面に伝わるので、発進時のスリッ
プあるいは滑り安い路面でのスリップが防止される。な
お、発進時であっても操舵角が大きければ、4WDモード
へは移行しないので、所謂直結4WDのブレーキング現象
を防止できる。また特にスリップ比差ΔSの判定を式
(11)に沿う条件に従い行っているので、高い精度でス
リップ比差ΔSを検出して4WDモードへの切換えを適切
に行うことができる。この4WDモードで走行中に、旋回
限界であることを検出すると、やはり自動的に遮断モー
ドに切換えて操縦安定性を確保でき、また縦スリップ
(車体前後方向のスリップ)を検出すると、自動的にト
ラクション制御を行って滑り安い路面での駆動力をより
確実に得ることができる。そして、4WDモードで走行中
に車体に作用する加速度から、もはや4WDモードで走行
する必要がないと判定すると、自動的にFFモードに復帰
することができる。更に4WDモードで走行中にブレーキ
がオン状態にあると判定すると、やはり自動的にFFモー
ドに復帰するので、所謂3チャンネル型または4チャン
ネル型のアンチスキッドブレーキ装置の作動が阻害され
ることを防止できる。他方、スポーツモードにおいて
は、第11図に示すフローチャートに従って説明したよう
に、FRモードで走行中に旋回限界を検出すると自動的に
遮断モードに切換えてタイヤ(後輪)のコーナリングフ
ォースを増大させ操縦安定性を回復させかつ同時にその
状態を運転者に警報することができる。そして、旋回限
界よりも安定側に回復すると、FRモードに復帰するが、
旋回限界を越えていると判定して遮断モードに切換えて
いるときに同時にリヤクラッチ18の入力側の回転数と出
力側の回転数とを一致させるべくエンジン2の回転数を
制御しているので、遮断モードからFRモードに復帰する
ときにリヤクラッチ18が急激に接続されてもそのショッ
クの発生を防止できる。特に、旋回限界の判定を式(2
6)または式(27)に沿う条件に従い行っているので、
高い精度で旋回限界を検出することができ、これにより
旋回中に操縦不能という事態に陥ることを防止できる。
なお、式(26)または式(27)において係数εの値を
1より若干大きく設定することにより、ステアリングホ
イールの操作に対して車両の旋回応答性に優れた弱オー
バステア特性を得ることができる。またFRモードで走行
中に車両が発進状態にあること、あるいは後輪22,24側
のスリップ比から前輪12,14側のスリップ比を差し引い
たスリップ比差ΔSが設定値以上であること(つまり、
駆動輪である後輪22,24がスリップ状態にあること)を
検出すると、自動的に4WDモードに切換えて駆動力が前
輪12,14及び後輪22,24の両方を介して路面に伝わるの
で、発進時のスリップあるいは滑り易い路面でのスリッ
プが防止される。なお、発進時であっても操舵角が大き
ければ、4WDモードへは移行しないので、所謂直結4WDの
ブレーキング現象を防止できる。また、特にスリップ比
差ΔSの判定を式(24)に沿う条件に従い行っているの
で、高い精度でスリップ比差ΔSを検出して4WDモード
への切換えを適切に行うことができる。なお、このFRモ
ードにおけるスリップ比差ΔSに関する設定値(具体例
として、0.05)は、ノーマルモードにおける設定値(具
体例として、0.03)よりも大きく設定されているが、こ
れはやはりFRモードで走行しているときはやや大きめの
スリップ比差ΔSでもってFRモードのまま走行できるよ
うにしてステアリングホイールの操作に対して車両の旋
回応答性に優れた弱オーバテア特性領域まで運転可能と
するためである。またこのスポーツモードにおいても、
上述したノーマルモードの場合と同様に、4WDモードで
走行中に、旋回限界であることを検出すると、やはり自
動的に遮断モードに切換えて操縦安定性を確保でき、ま
た縦スリップを検出すると、自動的にトラクション制御
を行って滑り易い路面での駆動力をより確実に得ること
ができる。そして、4WDモードで走行中に車体に作用す
る加速度から、もはや4WDモードで走行する必要がない
と判定すると、あるいはブレーキがオン状態にあると判
定すると、やはり自動的にFRモードに復帰する。
なお、上記実施例において、ノーマルモードルーチン
及びスポーツモードルーチンの何れにおいてもステップ
S144の判定内容がブレーキスイッチがオンであるか否か
を検出するブレーキセンサ58の検出信号を用いたもので
あるが、その代わりにアンチスキッドブレーキ装置がア
ンチスキッドのために作動したか否かをブレーキセンサ
58により検出させ、その検出信号に基づきアンチスキッ
ドブレーキ装置がアンチスキッドのために作動したと判
定すると、4WDモードからFFモードまたはFRモードに切
換えるように構成することも可能である。
次に上記実施例の変形例を説明する。
第13図及び第14図は、上記実施例における第11図に示
したスポーツモードルーチンの変形例である。この変形
例において第11図に示すスポーツモードルーチンのフロ
ーチャートと比べて異なる点は、第11図のステップS132
の代わりに、4WD制御ルーチンであるステップN2を採用
したものである。
ステップN2の4WD制御ルーチンを第14図に示すフロー
チャートに従って説明する。先ず、ステップS300でリヤ
クラッチ18が直結状態となるように制御信号を出力す
る。つまり、この場合リヤクラッチ18の室18a内の油圧
を最大にすべく、電磁切換弁38に同切換弁38が室18aと
油圧ポンプ30とを直接連通する位置をとる制御信号を出
力する。次いでステップS302で初回制御済か否かを判定
する。この初回制御とはステップS302で「NO」であった
ときに進むステップS304で行われるものであり、それ故
ステップS116,S118,S204の何れかで「YES」と判定して
最初にステップS302で判定するときは「NO」となる。ス
テップS304で行われる初回制御の内容は、フロントクラ
ッチ10の室10a内の油圧を設定油圧PSに制御するもので
あり、詳しくは電磁切換弁36に同切換弁36が室10aと電
磁制御弁40の下流側とを連通する位置をとる制御信号
を、電磁制御弁40に同制御弁40の下流側の油圧が設定油
圧PSとなる制御信号を出力する。次いでステップS306
で式(24)で求めたスリップ比差ΔSが設定値S1(例え
ば0.04)より小さいか判定する。ステップS306で「YE
S」、つまりスリップ比差ΔSが設定値S1よりも小さい
と判定すると、ステップS308に進んでフロントクラッチ
10の室10a内の油圧をΔP0だけ減圧すべく電磁制御弁40
に制御信号を出力する。ステップS306で「NO」、つま
り、スリップ比差ΔSが設定値S1以上であると判定する
と、ステップS310に進んでスリップ比差ΔSが設定値S2
(例えば、0.06)よりも大きいか判定する。ステップS3
10で「YES」、つまりスリップ比差ΔSが設定値S2より
も大きいと判定すると、ステップS312に進んでフロント
クラッチ10の室10a内の油圧をΔP0だけ増圧すべく電磁
制御弁40に制御信号を出力する。ステップS310で「N
O」、つまりスリップ比差ΔSが設定値S2以下であると
判定すると、ステップS314に進んでスリップ比差ΔSを
時間で微分した値dΔS/dtがゼロ以上であるか判定す
る。ステップS314で「YES」、つまりスリップ比差ΔS
が変わらないもしくは増大する傾向にあると判定する
と、ステップS316に進んでフロントクラッチ10の室10a
内の油圧をΔP1だけ増圧すべく電磁制御弁40に制御信号
を出力する。ステップS314で「NO」、つまりスリップ比
差ΔSが減少する傾向にあると判定すると、ステップS3
18に進んでフロントクラッチ10の室10a内の油圧をΔP1
だけ減圧すべく電磁制御弁40に制御信号を出力する。そ
して、ステップS308,S312,S316またはS318の何れかを終
えると、第13図のフローチャートのステップS134に進む
ものである。なお、スリップ比差ΔSに関する判定を行
うステップS306及びS308において設定値S1を0.04、設定
値S2を0.06に設定しているが、これは最終的にスリップ
比差ΔSを目標値(0.05)に保った状態の4WDモード、
つまり前輪12,14側よりも後輪22,24側のトルクを常にそ
の目標値に応じた設定比だけ大きく保った状態の4WDモ
ードを得るためである。またステップS314でスリップ比
差ΔSの微分値dΔS/dtを判定しその結果に基づきフロ
ントクラッチ10の室10a内の油圧を制御しているが、こ
れはステップS306,S310の判定に基づくステップS308,S3
12による圧力制御のみでは室10a内の圧力が大きくハン
チングを起こす惧れがあるからである。それ故、この変
形例ではステップS316,S318のΔP1はステップS308,S312
のΔP0よりも小さな値に設定されている。
なお、ステップS314でdΔS/dt≧0であるか判定し
「YES」であればステップS316へ、「NO」であればステ
ップS318へ進むように構成されているが、同ステップS3
14とS316との間にdΔS/dt=0であるかを判定するステ
ップを設け、そのステップで「YES」と判定したときに
リターンへ進むように構成することも可能である。
したがって、この第13図及び第14図に示す変形例によ
れば、ステップS118またはS204で「YES」と判定して4WD
モードに切換わった場合、常に後輪22,24側のトルクが
前輪12,14側のトルクよりも設定比だけ大きい状態で駆
動力が伝わるので、加速性能が向上すると共に、ステア
特性もニュートラル特性に近づき、滑り易い路面での操
縦性を向上できる。
また上記実施例及び変形例においてFF時または4WD時
におけるステップS122,S136による旋回限界の判定は夫
々式(19)または(20)、式(21)または(22)に従っ
てUS側の旋回限界のみを対象とし、FR時におけるステッ
プS206による旋回限界の判定は式(26)または(27)に
従ってOS側の旋回限界のみを対象としているが、好まし
くはステップS122,S136の判定において更に式(26)ま
たは(27)をも判定条件として組み入れ、またステップ
S206の判定において式(19)または(20)、もしくは式
(21)または(22)をも判定条件として組み入れること
により、これらのステップS122,S136またはS206におい
てUS側の旋回限界及びOS側の旋回限界の両方を常に判定
することができる。
第15図は、上記実施例における第2図に示したメイン
ルーチンの変形例である。この変形例において第2図に
示すフローチャートと比べて異なる点は、第2図のステ
ップM18の後にステップM22を、ステップM20の後にステ
ップM24を追加したことにある。
このステップM22は、ステップM18のノーマルモードル
ーチンにおいてフラグA,B,Cの何れかに「1」が設定さ
れたか判定する。ステップM22で「YES」であるとステッ
プM18、つまりノーマルモードルーチンのステップS100
に進み、「NO」であるとリターン、つまりステップM4に
戻る。
またステップM24は、同様に、ステップM20のスポーツ
モードルーチンにおいてフラグA,B,Cの何れかに「1」
が設定されたかを判定する。ステップM24で「YES」であ
るとステップM20、つまりスポーツモードルーチンのス
テップS100に進み、「NO」であるとリターン、つまりス
テップM4に戻る。
したがって、ステップM18のノーマルモードルーチン
において、フラグA,B,Cの何れかに「1」が設定されて
いる限り、ノーマルモードルーチンの処理が継続され
る。つまり、フラグAが「1」であればノーマルモード
ルーチンのステップS122で「NO」と判定されるまで遮断
モードが継続され、フラグBが「1」であればステップ
S138で「NO」と判定されるまでトラクション制御が継続
され、フラグCが「1」であればステップS142またはS1
44で「NO」と判定されるまで4WDモードが継続される。
またステップM20のスポーツモードルーチンにおいて
も、フラグA,B,Cの何れかに「1」が設定されている限
り、スポーツモードルーチンの処理が継続される。つま
りフラグAが「1」であればスポーツモードルーチンの
ステップS206で「NO」と判定されるまで遮断モードが継
続され、フラグBが「1」であればステップS138で「N
O」と判定されるまでトラクション制御が継続され、フ
ラグCが「1」であればステップS142またはS144で「N
O」と判定されるまで4WD制御ルーチンの処理が継続され
る。
これにより、ノーマルモードまたはスポーツモードが
選択された状態において、操縦性を回復するために遮断
モードが実行されているとき、駆動力の路面への伝達を
向上するために4WDモードあるいは4WD制御ルーチンに基
づくモード更にはトラクション制御が実行されていると
きには、操縦性が回復する状態になるまで、または駆動
力が路面に確実に伝達される状態になるまで、その制御
モードが実行されるので、たとえその間にモードセレク
タ64により他のモードが選択されてもその信号が無視さ
れることになる。
したがって、この変形例によれば、例えば操縦性を回
復するために遮断モードが実行されているときに誤って
乗員がマニュアルモードの何れかを選択して再び操縦不
能という事態になってしまったり、滑り易い路面で駆動
力の路面への伝達を向上するために4WDモードあるいは4
WD制御ルーチンに基づくモード更にはトラクション制御
が実行されているときに誤って乗員がマニュアルモード
の何れかを選択して再び駆動力の路面への伝達が低下す
るという事態になってしまうことを避けることができ
る。
なお、上記各実施例は、何れも2輪駆動状態から4輪
駆動状態に切換えるための条件として本発明を用いたも
のであるが、本発明はこれに限らずトラクションコント
ロールにおける駆動力制御の開始の条件を決定する条件
として用いることも可能である。
また、上記各実施例は、何れも前輪及び後輪のスリッ
プ率の差を求め、更にスリップ率の差を求める検出装置
に関するものであるが、本発明はこれに限らず、駆動輪
のスリップ量、更にはスリップ量の差を求める検出装置
に適用できるのは勿論である。
〔発明の効果〕
以上述べたように、本発明によれば、上記演算装置
は、上記回転数検出手段により夫々求めた前輪及び後輪
の回転数を基に、上記第1補正手段により前後輪間の内
輪差に起因する前後輪間の回転数差に基いてスリップ率
またはスリップ量を補正し、更に上記第2補正手段によ
り車体に作用する横加速度の増大に伴って変化する前後
輪間の回転数差に基いてスリップ率またはスリップ量を
補正して駆動輪の路面に対するスリップ率またはスリッ
プ量を求めることができるので、駆動輪のスリップ率ま
たは量を正確に検出することができ、これにより2輪駆
動から4輪駆動への切換え、またはトラクションコント
ロールにおける駆動力制御の開始等のタイミングを正確
に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示すシステム全体説明図、
第2図は第1図の実施例の制御を示すフローチヤート、
第3図は第2図のノーマルモードルーチンを示すフロー
チヤート、第4図は第3図のフローチヤートにおけるス
リップ比差の判定に係る説明のための説明図、第5図は
前輪操舵角δとアッカマン補正係数αf,αrの関係を示
す特性図、第6図は横加速度GYと補正係数αYの関係
を示す特性図、第7図は第3図のフローチヤートにおけ
る旋回限界の判定に係る説明のための説明図、第8図は
同旋回限界の判定に係るγ2/δとGYの関係を示す説明
図、第9図は一般的なFF車における特性図、第10図は第
1図の制御装置2aの詳細を示す説明図、第11図は第2図
のスポーツモードルーチンを示すフローチヤート、第12
図は一般的なFR車における特性図、第13図は第11図のフ
ローチヤート(スポーツモードルーチン)の変形例を示
すフローチヤート、第14図は第13図の4WD制御ルーチン
を示すフローチャート、第15図は第2図のフローチヤー
ト(メインルーチン)の変形例を示すフローチヤートで
ある。 2……エンジン、10……フロントクラッチ、18……リヤ
クラッチ、44……コントローラ、46……車輪速センサ、
50……横加速度センサ、52……操舵センサ、54……スロ
ットルセンサ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】前輪および後輪のいずれか一方が駆動輪と
    なる2輪駆動状態が達成可能な車両に設置され、前輪及
    び後輪の回転数を検出可能な回転数検出手段と、同回転
    数検出手段により検出された前輪及び後輪の回転数の差
    を基に駆動輪のスリップ率またはスリップ量を演算し同
    スリップ率またはスリップ量を出力する前後輪回転数差
    演算手段と、を有する演算装置を備えたスリップ検出装
    置において、 前輪の操舵角を検出する操舵角検出手段と、 車体に作用する横加速度を検出する加速度検出手段と、 上記操舵角検出手段により検出された上記前輪の操舵角
    及び前後輪間のホイールベースを用いて算出される前後
    輪間の回転数差に基いて補正する第1補正手段と、 上記加速度検出手段により検出された上記横加速度の増
    大に伴って変化する前後輪間の回転数差に基いて補正す
    る第2補正手段とを備え、 上記スリップ率またはスリップ量を上記第1および第2
    補正手段を用いて補正して駆動輪の路面に対するスリッ
    プ率又はスリップ量と推定される補正スリップ率または
    補正スリップ量を求めるよう構成されたことを特徴とす
    るスリップ検出装置。
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