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JP2598357B2 - 低温靱性の優れた高張力鋼板の製造法 - Google Patents

低温靱性の優れた高張力鋼板の製造法

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JP2598357B2
JP2598357B2 JP4086635A JP8663592A JP2598357B2 JP 2598357 B2 JP2598357 B2 JP 2598357B2 JP 4086635 A JP4086635 A JP 4086635A JP 8663592 A JP8663592 A JP 8663592A JP 2598357 B2 JP2598357 B2 JP 2598357B2
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less
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好男 寺田
博 為広
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Nippon Steel Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は低温靱性に優れた高張力
鋼板の製造法に関するものである。この方法で製造した
鋼は厳しい強度、靱性(DWTT:Drop Weig
ht Tear Test)が要求される極寒冷地(−
60℃)向ラインパイプなどに用いることができる。
【0002】
【従来の技術】エネルギー源として天然ガスが注目され
るなか、北極圏の極寒冷地において新たなガス田の開発
が進められている。これに伴いガスを効率的かつ経済的
に消費地まで輸送するために、大径厚肉の高張力ガスラ
インパイプの需要も増加してきた。
【0003】また安全性の面からは、パイプラインの大
規模な破壊を防止するために、不可避的に発生したクラ
ックの伝播停止特性の目安となるDWTTの延性破面率
およびシャルピー衝撃値の優れた鋼板が要求されてい
る。
【0004】このような厳しい材質特性を満足させるた
めに、例えば特開昭52−128821号公報、特開昭
58−77528号公報などに開示されている、いわゆ
る制御圧延法(Controlled rollin
g、以下CRという)やオンライン加工熱処理法(Th
ermo−mechanical Control P
rocess、以下TMCPという)を用いることがよ
く知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、天然資源の枯渇
化に伴いラインパイプの敷設域はさらに−60℃という
極低温地域まで進み、輸送効率向上の面からは、さらな
る大径厚肉化と590N/mm2 以上の高張力化が求め
られるようになっている。しかしながら、従来のCRや
TMCPによって鋼板を製造するだけでは、この要求を
十分に満足できないという問題点がある。
【0006】本発明の目的は、このような従来法の問題
点を解決し、最適な成分および製造条件を明らかにする
ことにより、低温靱性の優れた高張力厚鋼板(590N
/mm2 以上)の製造法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、重量%
で、C:0.01〜0.08%、Si:0.6%以下、
Mn:1.2〜2.0%、Mo:0.05〜0.35
%、Nb:0.01〜0.10%、Ti:0.004〜
0.03%、N:0.001〜0.006%、Al:
0.10%以下、あるいはさらにNi:0.05〜1.
0%未満、Cu:0.05〜1.50%、Cr:0.0
5〜1.00%、V:0.005〜0.080%、C
a:0.0005〜0.005%の一種または二種以上
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片
を900〜1000℃の温度に加熱し、その後の圧延に
あたって900℃以下の累積圧下率を50%以上でかつ
圧延終了温度を830℃以下とした後、冷却速度5〜4
0℃/秒で550℃以下の温度まで加速冷却し、その後
放冷することを特徴とする低温靱性の優れた高張力鋼板
の製造法である。
【0008】
【作用】Nbはフェライト粒の微細化、析出硬化能を有
し、CR、TMCPには欠かせない重要な元素であるこ
とがよく知られている。Nb添加CR、TMCP鋼の良
好な低温靱性はフェライト粒の微細化に起因するもので
あるが、これは固溶Nbによる圧延時のオーステナイト
の未再結晶化に依存するところが大きいと考えられてい
る。スラブ再加熱時に固溶したNbは圧延で導入された
格子欠陥にNb(CN)として歪誘起析出し、オーステ
ナイトの再結晶を著しく抑制する。さらに、未再結晶化
したオーステナイトの粒内には多数の変形帯が導入さ
れ、この変形帯がフェライト核生成サイトとして働き、
フェライト粒を微細化させるからである。
【0009】さらにフェライト粒を微細化させて靱性の
向上を図るためには、スラブの再加熱温度を低下させ
て、初期オーステナイト粒を小さくすることが必要であ
る。しかしながら、スラブ再加熱温度が低くなると、N
bの固溶量が少なくなるため強度の低下を招き、高強度
化と高靱性化の両立は極めて困難となる。そこで、低温
靱性の極めて優れた590N/mm2 以上の強度を有す
る鋼を製造するための最適成分、圧延条件について検討
し、本発明に至った。
【0010】以下、本発明について説明する。
【0011】本発明の特徴は、一定量のMoとNbを含
有させた鋼を低温域に加熱し、その後適正な圧延を行
い、組織を微細フェライト−マルテンサイト化させるこ
とにより高強度でかつ低温靱性の優れた鋼板を得ること
にある。
【0012】MoもNbと同様にオーステナイトの未再
結晶化温度を上昇させ、フェライト組織の微細化に有効
であるが、MoとNbを含有させることにより、オース
テナイト未再結晶効果は著しく促進され、初期オーステ
ナイト粒を微細化させるためにスラブ再加熱温度を低く
した場合でも、オーステナイトの未再結晶化とそれに基
づくフェライトの微細化に極めて有効である。さらに、
Moは延伸化した未再結晶オーステナイトからの変態時
に、微細なフェライトの生成に引き続いて微細なマルテ
ンサイトを生成させ、組織をフェライト−マルテンサイ
トの二相組織化させるのに有効である。この微細マルテ
ンサイト内部の転位密度は非常に高く、高強度化が容易
に達成できる。
【0013】これらの効果を生じさせるためには、Mo
量は0.05〜0.35%とする必要がある。0.05
%未満では効果が薄く、0.35%以上の添加は溶接性
に好ましくないため上限を0.35%とした。またNb
量は0.01〜0.10%とする必要がある。0.01
%未満では効果が薄く、0.10%以上の添加は溶接性
に好ましくないため上限を0.10%とした。
【0014】Mo、Nbの量だけでなく加熱、圧延条件
もまた重要である。
【0015】スラブの再加熱温度は900〜1000℃
にする必要がある。これは加熱時の初期オーステナイト
粒を小さく保ち、圧延組織を微細化するためである。さ
らに、初期オーステナイト粒が小さいほど微細フェライ
ト−マルテンサイトの二相組織化が起こりやすいからで
ある。1000℃は加熱時のオーステナイト粒が粗大化
しない上限温度である。一方、加熱温度が低すぎると添
加合金元素が十分に溶体化されず、鋼の内質が劣化する
とともに、圧延終段の温度が下がり過ぎるため制御冷却
などによる十分な材質向上効果が期待できない。このた
め下限を900℃とする。
【0016】しかしながら、加熱温度を上記のように低
く制限しても、圧延条件が不適当であると良好な材質を
得ることができないため、900℃以下の未再結晶温度
域での圧下量を50%以上とする必要がある。これは低
温加熱に未再結晶温度域での十分な圧延を加えることに
よってオーステナイト粒の細粒化、延伸化を徹底し、さ
らにフェライト−マルテンサイトの二相組織化を図るた
めである。
【0017】さらに、圧延終了温度は830℃以下とす
る必要がある。830℃を超える温度で圧延終了した場
合、組織の微細化、二相組織化が十分に行われず、良好
な強度、靱性が得られないからである。
【0018】つぎに、圧延後の冷却は、圧延後空冷する
方法と、圧延後、冷却速度5〜40℃/秒で550℃以
下の温度まで加速冷却し、その後放冷する方法があり、
要求される板厚、強度レベルおよびコストなどの面から
どちらかを選択できる。特に厚手で高強度かつ高靱性が
要求される場合には、圧延後、冷却速度5〜40℃/秒
で550℃以下の温度まで加速冷却し、その後放冷する
ことが望ましい。
【0019】冷却速度を5〜40℃/秒とする理由は、
5℃/秒未満では微細なマルテンサイト組織が生成しに
くく、強度向上が望めないためであり、また40℃/秒
超では粗大かつ多量のマルテンサイトが生成し、延靱性
を劣化させるからでるある。冷却停止温度を550℃以
下としたのは、余りにも低温で冷却してしまうと脱水素
効果や十分な析出硬化が得られないためである。この場
合、350〜550℃で冷却をやめ、放冷することが望
ましい。しかし、冷却停止温度が550℃を超えると十
分な強度上昇が望めない。なお、冷却媒体としては、一
般的には噴霧水あるいは水が適当である。
【0020】また、本発明に従って製造した鋼を脱水素
などの目的で再加熱する場合、600℃超では強度の劣
化を招き好ましくない。しかし、約600℃以下の温度
に再加熱することは若干の強度低下はあるものの、本発
明の効果を損なうものでない。
【0021】つぎに、その他の成分の限定理由について
述べる。
【0022】Cは必要な引張強度を得るために0.01
%以上の添加が必要である。しかしながら、Cの過度の
添加は溶接性の劣化をもたらすことから、その上限を
0.08%とする。
【0023】Siは脱酸上鋼に含まれる元素であるが、
その過剰添加は溶接性、溶接熱影響部(HAZ)靱性を
阻害する。従って、その上限を0.6%とする。
【0024】Mnは強度、靱性および焼入性を確保する
上で有用な元素であり、1.2%以上の添加が必要であ
る。しかし、Mn量が多すぎると溶接性、HAZ靱性の
劣化を招くためその上限を2.0%とする。
【0025】Tiは溶接時のオーステナイト粒の粗大化
を抑制し、HAZ靱性を確保する上で有用である。しか
し、0.004%未満の添加では効果がなく、また0.
03%以上の添加ではTiCの析出硬化により逆にHA
Z靱性の劣化を招くため、その添加量を0.004〜
0.03%に限定する。
【0026】Nは一般に不可避的不純物として鋼中に含
まれるが、TiNとして存在することによりオーステナ
イト粒の粗大化を抑制し、HAZ靱性を確保する上で有
用である。しかし、0.001%未満の添加では効果が
なく、またNの過剰添加はHAZ靱性の劣化を招くた
め、その上限を0.006%とする。
【0027】Alは一般に脱酸上鋼に含まれる元素であ
るが、SiおよびMnあるいはTiによっても脱酸は行
われるので、本発明ではAlについては下限を限定しな
い。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くな
り、HAZ靱性が劣化するので上限を0.1%とする。
【0028】なお、P、Sは不可避的不純物として鋼中
に含まれる。本発明では、その量を特に限定しないが、
これらは母材ならびに溶接部の靱性を劣化させるため、
その量は極力少ない方が好ましく、それぞれ0.03
%、0.01%以下とすることが望ましい。
【0029】本発明においては、さらに必要によりN
i:0.05〜1.0%末満、Cu:0.05〜1.5
0%、Cr:0.05〜1.00%、V:0.005〜
0.080%、Ca:0.0005〜0.005%のう
ちいずれか一種または二種以上を含有させることができ
る。これらの元素を含有させる主たる目的は、本発明法
の効果を損なうことなく、強度、靱性の向上および製造
板厚の拡大を可能にするところにあり、その添加量は溶
接性およびHAZ靱性等の面から自ずと制限されるべき
性質のものである。
【0030】Niは溶接性、HAZ靱性に悪影響を及ぼ
すことなく、母材の強度、靱性を向上させるが、0.0
5%以下では効果が薄く、1.0%以上の添加は溶接性
に好ましくないため上限を1.0%未満とした。
【0031】CuはNiとほぼ同様の効果とともに耐食
性、耐水素誘起割れ性などにも効果があるが、1.50
%を超えると熱間圧延時にCu−クラックが発生し、製
造困難となる。このため上限を1.50%とした。
【0032】Crは母材の強度を高める元素であり、
0.05%以上添加する。しかし、Cr量が1.00%
を超えると溶接性やHAZ靱性を劣化させるため、その
上限を1.00%とする。
【0033】Vは圧延組織の細粒化と析出強化のために
含有させるもので、強度、靱性をともに向上させる元素
であるが、0.005%未満では十分にその効果が得ら
れず、また0.080%を超えると溶接性および溶接部
靱性に有害であるため、その範囲を0.005〜0.0
80%に制限した。
【0034】Caは硫化物の形態を制御し、シャルピー
吸収エネルギーを増加させ低温靱性を向上させるほか、
耐水素誘起割れ性の改善にも効果を発揮する。しかし、
Ca量は0.0005%以下では実用上効果がなく、ま
た、0.005%を超えるとCaO,CaSが多量に生
成して大型介在物となり、鋼の靱性のみならず清浄度も
害し、さらに溶接性にも悪影響を与えるので、Ca添加
量の範囲を0.0005〜0.005%とする。
【0035】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。
【0036】表1〜3に供試鋼の化学成分、製造条件お
よび機械的性質を示す。種々の板厚の鋼板を製造し、機
械的性質を調査した。引張特性はAPI引張試験片、シ
ャルピー特性は1/4t部から採取したJIS4号試験
片、DWTT特性は表面から19.05mmに減厚した
DWTT試験片を用いて調査した。また、溶接性につい
てはピーク温度1400℃の再現熱サイクルを付与して
−60℃におけるHAZ靱性を評価した。表1〜3にお
いて、鋼1〜5は本発明例、6〜16は比較例を示す。
本発明例1〜5は590N/mm2 以上の引張強度を有
し、極めて良好な低温靱性を示す。これに対して、比較
例6はスラブ再加熱温度が低すぎるために十分な強度、
靱性が得られず、内質欠陥も認められる。比較例7はス
ラブ再加熱温度が高すぎるため初期オーステナイト粒が
大きくなり、良好な強度、靱性が得られない。比較例8
は900℃以下での圧下率が少ないため良好な強度、靱
性が得られない。比較例9は圧延終了温度が高すぎるた
め良好な強度、靱性が得られない。比較例10は加速冷
却時の冷却速度が遅いため十分な強度が得られない。比
較例11は加速冷却時の冷却速度が速すぎるため十分な
靱性が得られない。比較例12は冷却停止温度が高すぎ
るため十分な強度が得られない。比較例13はMoを含
有していないため良好な強度、靱性が得られない。比較
例14はMo量が多すぎるため良好なHAZ靱性が得ら
れない。比較例15はNbを含有していないため良好な
強度、靱性が得られない。比較例16はNb量が多すぎ
るため良好なHAZ靱性が得られない。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【発明の効果】本発明により590N/mm2 以上の高
強度と良好な低温靱性を合わせ持つ画期的な鋼板を製造
することが可能となり、この鋼板を使用して製造したラ
インパイプの安全性を図ることができる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.01〜0.08%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.2〜2.0%、 Mo:0.05〜0.35%、 Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.004〜0.03%、 N:0.001〜0.006%、 Al:0.10%以下 を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼片
    を900〜1000℃の温度に加熱し、その後の圧延に
    あたって900℃以下の累積圧下率を50%以上でかつ
    圧延終了温度を830℃以下とした後、冷却速度5〜4
    0℃/秒で550℃以下の温度まで加速冷却し、その後
    放冷することを特徴とする低温靱性の優れた高張力鋼板
    の製造法。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C:0.01〜0.08%、 Si:0.6%以下、 Mn:1.2〜2.0%、 Mo:0.05〜0.35%、 Nb:0.01〜0.10%、 Ti:0.004〜0.03%、 N:0.001〜0.006%、 Al:0.10%以下 に、さらに Ni:0.05〜1.0%未満、 Cu:0.05〜1.50%、 Cr:0.05〜1.00%、 V:0.005〜0.080%、 Ca:0.0005〜0.005% の一種または二種以上を含有し、残部Feおよび不可避
    的不純物からなる鋼片を900〜1000℃の温度に加
    熱し、その後の圧延にあたって900℃以下の累積圧下
    率を50%以上でかつ圧延終了温度を830℃以下と
    た後、冷却速度5〜40℃/秒で550℃以下の温度ま
    で加速冷却し、その後放冷することを特徴とする低温靱
    性の優れた高張力鋼板の製造法。
JP4086635A 1992-03-11 1992-03-11 低温靱性の優れた高張力鋼板の製造法 Expired - Lifetime JP2598357B2 (ja)

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