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JP2024537925A - 巨大なオルガネラの回収及びその使用 - Google Patents

巨大なオルガネラの回収及びその使用 Download PDF

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JP2024537925A JP2024546360A JP2024546360A JP2024537925A JP 2024537925 A JP2024537925 A JP 2024537925A JP 2024546360 A JP2024546360 A JP 2024546360A JP 2024546360 A JP2024546360 A JP 2024546360A JP 2024537925 A JP2024537925 A JP 2024537925A
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サンティーノ,アレクサンドル
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Ecole Normale Superieure
Sorbonne Universite
Paris Sciences et Lettres Quartier Latin
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Abstract

本発明は、当該巨大な細胞外オルガネラ小胞を産生するための、特定の浸透圧膨潤と、適応し、制御された原形質膜溶解及び除去との組合せに基づく新規方法、並びにタンパク質又は外来分子の活性をスクリーニングするための当該巨大な細胞外オルガネラ小胞の使用に関する。

Description

本発明は、体積に対する表面積の比が増大してマイクロメートルを超える、膨潤細胞内オルガネラを生み出す、特定の低張水性培養液への浸漬による浸透圧膨潤と、続いて安定し、かつ機能的で巨大な細胞外オルガネラ小胞(giant extracellular organelle vesicle、GEOV)を細胞から単離かつ回収するための適当な細胞膜溶解との組合せに基づく新規方法、並びにタンパク質又は外来分子若しくは薬物の活性のスクリーニングを含むいくつかの用途向けの、かかる巨大な細胞外オルガネラ小胞の使用に関する。
細胞生物学、生化学、創薬、病理発生における主な目標と限界は、所与の環境変化時に各オルガネラに起こる事象を知ることである。タンパク質が局在している正確な場所、タンパク質が動員状態となってオルガネラの特性にいかに影響するか、タンパク質の機能が何であるのかを知ることは重要である。イオンチャネル又は酵素などの細胞内タンパク質は、例えば重要な薬理学的薬物標的を構成する。こうした限界は、オルガネラ(その大部分が二重膜結合コンパートメント)がサイズにして数マイクロメートルを超えており、かつ自体の宿主細胞の外部で調整可能である場合に回避された可能性がある。
細胞内断片を抽出するための現在の方法は、多くの場合、細胞溶解バッファ(低張バッファ、バッファ+界面活性剤分子)、続いて均質化を組み合わせた工程による細胞膜断片の回収に基づいており、この方法によって、ナノ断片(数百ナノメートルサイズ)が入手される。この方法については、所望のオルガネラのナノ断片が存在していることを同定するために精製工程が必要となる限りは、光学的可視化及び操作が不可能であり、このことによって工業的用途が難しいものとなっている。細胞手術はまた、オルガネラ(ミトコンドリア、リソソーム、核)の1つの微小断片を抽出するために光ピンセット、レーザ、AFM、ピペット吸引を用いてその多くを実施してきた。かかる技術によって、それぞれの型のオルガネラについてマイクロメートルのオルガネラを回収することは可能ではないが、細胞につきオルガネラ1つのみを一度に回収することは可能である。このことによって工業的用途が難しいものとなっている。
近年の研究では、2D培養細胞を低張バッファに数分間供することで、その支持体から細胞を分離することなくオルガネラの膨潤がもたらされることが示されている。これらの実験では、細胞は無傷のまま維持されており、中でも細胞外マトリックスのおかげで依然としてその支持体に付着している。そのため、内部のオルガネラは中に限定されており、サイズと利用のしやすさといった点ではその潜在能力すべてを呈さず、2D付着細胞での空間を十分有さない(支持体付着膨潤は、分離可能である細胞よりも効率的ではない)。オルガネラは捕捉もされるが、細胞の原形質膜を破壊し、かつオルガネラをナノ断片へと破壊することなく完全に取り外した状態にするのが非常に困難であることによる。
細胞溶解キットを販売している一部の企業は、界面活性剤を含むわずかに低張な培養液を使用し、続けて肉眼で視認可能なシリンジ(半径0.5mm超)を使用し、高圧(1bar超)で細胞に誘発されるせん断によって細胞溶解をもたらすプロトコール(https://www.thermofisher.com/sn/en/home/life-science/protein-biology/protein-biology-learning-center/protein-biology-resource-library/pierce-protein-methods/traditional-methods-cell-lysis.html;https://www.sigmaaldrich.com/FR/fr/product/sigma/mcl1?gclid=Cj0KCQjw0K-HBhDDARIsAFJ6UGgiWEUGjKbual-z_q3z21w7hBtnBD_z3iEBRTtuqNDZ4NRz_rFxdXwaAqM5EALw_wcB)を開発した。これらのキットと古典的なプロトコールでは、抽出前に巨大な細胞内オルガネラ小胞は形成されない:この膨潤プロトコールは、安定し、かつ機能的な巨大なオルガネラ小胞を生み出すには十分なものではなく、原形質膜を破壊するためのそのせん断プロセスが非常に強力なものであるので、オルガネラは、生化学的組成物(内腔タンパク質及び膜タンパク質は、プロセス中に緩む可能性がある)、活性、機能性及び/又は膜の生理学的特性が潜在的に欠損した状態のオルガネラの細胞外ナノ断片へとばらばらに破壊される。
そのため、供給源である細胞質基質を含まず、原形質膜に囲まれておらず、かつ工業的及び学術的な操作目的の両方にとって十分大きく(例えば、5~20μm)、安定し、かつ機能的な細胞由来の巨大なオルガネラ(その他の場合では、巨大な細胞外オルガネラ小胞と呼ばれる)を、任意の細胞から生み出し、抽出及び回収する必要性が依然として存在している。
発明の説明
したがって、本発明者らは、安定し、かつ機能的な細胞由来の巨大なオルガネラを産生、抽出及び回収する、すなわち巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)を生み出すための、浸透圧摂動、生理学的摂動及び物理化学的摂動と、原形質膜を標的とした破壊アプローチとの特定の組合せに基づいた方法を確立した。この目的のために、本発明者らは、(i)その元々の形態と比較して、体積に対する表面積の比が増大した細胞内オルガネラを生み出すための浸透圧膨潤工程であって、細胞は、0.5分間、3分間、5分間、7分間、10分間、15分間、20分間~30分間の間、0.1~100mOsm/L、好ましくは1~50mOsm/L、より好ましくは5~50mOsm/L、最も好ましくは10mOsm/L~40mOsm/Lの範囲の浸透圧を有する低張水溶液と接触した状態であり、水性培養液は、最終的に化学物質と組み合わせられて細胞内オルガネラ小胞(二重膜結合コンパートメント)のサイズを増大させ、巨大な(細胞内)オルガネラ小胞(GIOV)と呼ばれる、先行技術文献で報告されたことがないサイズ分布で拡大した小胞の形成をもたらし、原形質膜溶解の張力値を減少させる、工程と、(ii)低張水性培養液の前後運動が生成されて0.01秒~10分間にわたって0.01m/s~10m/sの範囲の速度で細胞を移動させる工程であって、この工程が、原形質膜溶解張力を減少させ、かつ溶解後、原形質膜の完全開口を引き起こすために細胞の細胞骨格及び細胞外マトリックスの両方の破裂を促進させる、工程と、(iii)細胞の細胞膜張力が、10-4~100秒間にわたって、工程(i)又は工程(i)+(ii)の細胞から、機械的に増大(10-3~5mN/m、好ましくは5.10-3~4mN/m、より好ましくは10-2~2mN/m、更により好ましくは10-2~1mN/m、最も好ましくは5.10-2~0.75mN/m)し、原形質膜の溶解及び完全な除去と、平均サイズが概して約5~20μmの範囲であり、体積に対する表面積の比(幾何学的形状、大半の場合には球状の体積で表面を除する)が3μm-1~0.15μm-1、好ましくは2μm-1~0.15μm-1、より好ましくは1.5μm-1~0.15μm-1、最も好ましくは1.2μm-1~0.15μm-1の範囲であり、溶解することなく低張培養液中で安定し、かつ機能的である巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)の放出をもたらす、工程と、に基づいた方法を開発した。例えば、GEOVは、概して1.2μm-1(5μm超のサイズの場合)~0.3μm-1(20μm未満のサイズの場合)の範囲である、増大した体積に対する表面積の比を有する。要約すると、プロトコール全体では、強力な浸透圧ショックによって巨大な細胞内小胞が生み出され、かつ細胞の原形質膜が特に不安定な状態となるが、原形質膜溶解と除去のために本発明者らが開発したプロトコールによって破壊されることがない巨大な細胞外オルガネラ小胞を完全に破壊し、放出するためには、小さな機械的摂動のみを必要とする。
本発明によれば、「巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)」という用語は、その宿主細胞から生み出され、抽出かつ回収され、これを取り囲んでいる原形質膜を含まない、小胞(二重膜結合した内腔を有する)としての膨潤二重膜結合オルガネラを意味している。これは、3μm-1~0.15μm-1、好ましくは2μm-1~0.15μm-1、より好ましくは1.5μm-1~0.15μm-1、最も好ましくは1.2μm-1~0.15μm-1の範囲の体積に対する表面積の平均比(S/V)を有する。これは、約2~40μm、好ましくは3~40μm、より好ましくは4~40μm、最も好ましくは5~40μmの範囲の平均サイズに対応する。かかる巨大な細胞外オルガネラ小胞は、小胞体、ミトコンドリア、リソソーム、ゴルジ体、液胞、葉緑体、オートファゴソーム、オートリソソーム、エンドソーム、ペルオキシゾーム、多胞体からなる群からのオルガネラに由来する。かかる巨大な細胞外オルガネラ小胞の膜と内腔の両方は、タンパク質、脂質及び代謝産物から構成されている。かかる巨大な細胞外オルガネラ小胞の生化学物質の総量は、産生されているオルガネラの全組成の一部である。この一部は、少なくとも0.01%よりも大きく、好ましくは0.1%よりも大きく、より好ましくは1%よりも大きく、最も好ましくは10%よりも大きい。かかる巨大な細胞外オルガネラ小胞が産生されるが、これは、他のGEOVと接触しないか、1箇所で接触するか、複数箇所で接触する。かかる巨大なオルガネラ小胞が産生されるが、細胞質基質生体分子、微小管、アクチン、フィラメント、細胞核、脂質滴、リボソーム、中心小体、原形質膜といった細胞成分と一切接触しないか、1箇所で接触するか、複数箇所で接触する。
本発明の巨大な細胞外オルガネラ小胞によって、今では業界関係者にとって以前には考えられなかった用途への転向が可能になる。加えて、かかる巨大なオルガネラ小胞間での接触を保持することができる。別の利点は、顕微鏡(例えば、約5~20μmのサイズ)を用いて容易に画像化された巨大なオルガネラ小胞の迅速な単離であり、例えばこれによって薬物相互作用及び/又はタンパク質活性における作用の迅速な定量化が可能になる。これによって、オルガネラの断片を濃縮し、次いでいくつかの生化学定量化を行う必要がある当技術分野の他の技術と比較するとこのプロセスが容易となる。
かかる巨大な細胞外オルガネラ小胞は機能的であり、標識可能であり、その上に所望する任意のタンパク質を有し、かつ容易に採取かつ操作することができる。そのため、この技術によって、膜/内腔タンパク質の活性及び/又は外来分子若しくは薬物の作用のスクリーニングを含む、いくつかの用途に使用され得る巨大な細胞外オルガネラ小胞の産生が可能になる。製薬研究開発分野では、この活性は、薬物の存在の有無にかかわらず測定されることができる。これは、例えばイオンチャネル、リボソームなどといった膜及び可溶性タンパク質又は酵素に関する。更に全体的には、この技術によって、薬物-オルガネラ相互作用のマッピング可能性が最初に提供され、所与のオルガネラに局在しているタンパク質と相互作用する薬物候補の選択性/特異性、及び/又は毒性が確立される。
そのため、本発明は、巨大な細胞外オルガネラ小胞を任意の細胞から産生するための方法であって、当該方法が、
a)細胞とその細胞内二重膜結合オルガネラの両方を膨潤すること、細胞骨格と細胞外マトリックスの両方を破壊すること、細胞を球状化することを目的として、細胞と、0.1~100mOsm/Lの範囲の浸透圧を有する低張水性培養液とを0.5~30分間にわたって接触させることと、
b)細胞原形質膜の溶解及び除去を目的として、10-4~100秒間にわたって10-3~5mN/mの範囲の細胞への膜張力を印加することと、
c)低張水性培養液中での巨大な細胞外オルガネラ小胞の回収
を含む、方法に関する。
本発明の方法の特定の実施形態によれば、巨大な細胞外オルガネラ小胞が得られる細胞は、支持体上で、若しくは当技術分野で周知の任意の適切な培養液中にバルクが存在する懸濁液中での培養、又はオルガノイド、組織、器官若しくは生物からの回収が可能になる。任意の種類の細胞(哺乳動物、植物又は細菌細胞)は、本発明の方法に従って巨大なオルガネラを生み出すために使用することができる。例えば、Cos7、Huh、哺乳動物細胞、ヒト細胞、腫瘍細胞由来の細胞は、市場、研究所及び病院の患者から得られる。
本発明の方法の特定の実施形態によれば、工程a)は、安定し、かつ機能的な巨大なオルガネラ小胞を生み出すことを目的として、0.5分間、3分間、5分間、7分間、10分間、15分間、20~30分間にわたって、例えば、バッファ溶液(希釈DPBS)、希釈細胞培地(DMEM)、イオン溶液、塩溶液(例えば、CaCl又はKCl溶液)、希釈バッファ、水などの0.1~100mOsm/L、好ましくは1~50mOsm/L、より好ましくは、5~50mOsm/L、最も好ましくは10~40mOsm/Lの範囲の浸透圧を有する任意の水溶液である低張水性培養液を使用して実施される。そのため、例えば、COS-7細胞については、細胞質の浸透圧は約300mOsm/Lである。これは、巨大なオルガネラ小胞を生み出すためには、約100mOsm/L未満、0.1mOsm/L超の浸透圧を有するすべての種類の水溶液を使用することができることを意味している。かかる低張水性培養液によって、適度に非破壊的であり、迅速かつ効果的な浸透圧ショックを細胞及びその細胞内オルガネラに即座に適用して、球状の膨潤細胞及び拡大したオルガネラ小胞を生み出すことが可能になる。これ以外の手段では、膨潤プロトコールが過度に長く、かつ効果的ではないため、非球状のコンパートメント及びタンパク質分解がもたらされ、GEOVの産生が困難になる。膨潤速度パラメータの制御は、巨大な細胞外オルガネラ小胞の産生にとって重要である。
いくつかの添加された分子(ノコダゾール、ナベルビン、ラトランクリンA、ラトランクリンB、サイトカラシンなどの細胞骨格破壊剤;ブレビスタチン、ベンジルトルエンスルホンアミド、ブタンジオンモノオキシムといったキネシン、ミオシン及びダイニンモータ阻害剤)によってもまた、細胞骨格を分解し、かつ細胞の溶解張力を減少することが可能になる。かかる低張水性培養液によって、大半の場合、細胞内コンパートメントは細胞溶解後、先行技術によるプロセスでは以前は決して到達できなかったサイズ及び体積に対する表面積の比を備えたオルガネラから巨大な細胞外球状小胞を形成することが確実となる。そのため、本発明の方法の低張培養液はまた、巨大な細胞外オルガネラ小胞の分解を防止しつつ、巨大な細胞外オルガネラ小胞の体積に対する表面積の比分布及び原形質膜を溶解する表面張力値を調節する1つ以上の分子を含有することができる(例えば、プロテアーゼ阻害剤、分子モータ阻害剤、オルガネラ-細胞骨格接触阻害剤、細胞骨格破壊剤、界面活性剤)。いくつかの添加された分子(例えば、イオンチャネル調節剤/遮断剤:タプシガルギン、カフェイン、ベンゾチアセピン;トリプシンなどの細胞外マトリックス破壊剤;タンパク質輸送阻害剤;キセロスポンギンなどのタンパク質シグナル伝達阻害剤;Triton-X-100、オクチル-グルコシド、DDM、カルボン酸などの化学洗剤)によって、細胞はより速く膨潤することが可能になり、それによって産生された巨大な細胞外オルガネラ小胞の体積に対する表面積の比をより迅速に低下させることが可能になる。最終的には、細胞膨潤速度は、工程b)での細胞の原形質膜を溶解するための入力エネルギーを減少させるためだけでなく、工程c)の終わりに産生されたGEOVのサイズを制御するためにも重要である。
本発明の方法の特定の実施形態によれば、低張水性培養液は、ノコダゾール、ラトランクリン、トリプシン、ミサキノライド、ミカロライド、アプリロニド(aplyronides)、ビンブラスチン、ロテノン、スウィンホライド、ジャスプラキノリド、ビンクリスチン、デメコルシン、サイトカラシン、コルヒチン、ビンカアルカロイド、ジヒドロピリジン、フェニルアルキルアミン、ベンゾチアゼピン、ガバペンチノイド、ブレビスタチン、ベンジルトルエンスルホンアミド、ブタンジオンモノオキシム、タプシガルギン、キセロスポンギン、Triton-X-100、Tween、SDS、Brij、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、マグネシウムからなる群から選択される1つ以上の分子を含み、当該分子は、工程a)前、工程a)にて、工程a’)にて、工程b)にて、及び/又は工程c)にて添加される。
本発明の方法の特定の実施形態によれば、巨大な細胞外オルガネラ小胞を生み出す前に、細胞は、タンパク質分解を防ぎ、オルガネラでの生化学反応を調節する分子で処理されてもよい。この結果、巨大な細胞外オルガネラ小胞は特定の生化学特性を有することができる。そのため、代謝条件並びに細胞及びそのオルガネラの構造は、化学物質によって、並びに/又は細胞及び/若しくはそのオルガネラの構造及び/若しくは代謝条件に影響を及ぼすタンパク質の発現レベルを修飾することによって、工程b)前に更に修飾され得る。実際に、工程a)前には、細胞は化学物質を用いて処理され得るか、細胞及びそのオルガネラの構造(特に、体積に対する表面積の比及び複数のオルガネラによる互いに対する相対的な位置づけ)並びに代謝条件に影響を及ぼすいくつかのタンパク質のレベルを過剰発現又は抑制するように修飾され得る。これらの操作によって、回収した巨大な細胞外オルガネラ小胞のサイズ及びそれらの接触を制御すること、浸透圧膨潤前に、近い将来に回収される巨大なオルガネラのサイズに影響を及ぼす体積に対する表面積の比を適切な浸透圧膨潤によって調整すること、が可能になる。例えば、浸透圧膨潤を誘発する前に、近い将来産生される巨大な細胞外オルガネラ小胞の体積に対する表面積の比は、(1)オルガネラ形状並びに他のオルガネラ、原形質膜及び細胞骨格との接触部位に影響を及ぼすタンパク質の発現レベルを変更することで、(2)細胞骨格及び分子モータ、(他のオルガネラ、原形質膜及び細胞骨格との)オルガネラの接触部位、原形質膜及びオルガネラに局在している分子輸送タンパク質活性、シグナル伝達タンパク質活性のいずれもを変性する分子で細胞を処理することで、(3)オルガネラの数及び形状、表面に影響を及ぼす細胞の代謝経路を変性することによって、(4)オルガネラの体積に対する表面積の比及びオルガネラ内での接触における任意の処理媒介変更を、調節することができる。例えば、巨大な細胞外オルガネラ小胞の生成及び回収前にClimp63を過剰発現することによって、30μmよりも大きいサイズを有する小胞体から放出するより大きく巨大な細胞外オルガネラ小胞がもたらされる。同様の方法で、巨大な細胞外オルガネラ小胞の生成及び回収前にMfn2を過剰発現することによって、0.75μm-1よりも小さい体積に対する表面積の比を有するミトコンドリアから放出するより大きく巨大な細胞外オルガネラ小胞がもたらされる。膨潤前に1~90分、ノコダゾール(又はラトランクリンA)で細胞を前処理することによって、ERからより大きく巨大なオルガネラの形成が可能となる。膨潤形成前に12~24時間、ラパマイシンを添加することによって、エンドソーム、リソソーム、オートリソソーム及び多胞体からより大きく巨大な細胞外オルガネラ小胞を形成することが可能になる。膨潤及び抽出前にバフィロマイシンを添加することによっても、オートファゴソームに由来する、より大きな巨大な細胞外オルガネラ小胞を得ることが可能になる。
本発明の方法の特定の実施形態によれば、当該方法は更に、工程a)の後及び工程b)の前に、細胞の細胞骨格及び細胞外マトリックスの両方を破壊するために、約0.01秒~10分間にわたって、約0.01m/s~10m/sの範囲の速度で細胞を移動させる、低張水性培養液の前後運動を発生させることを含む工程a’)を含む。したがって、工程a)の膨潤細胞に適用されるこの任意の工程a’)によって、工程b)にてさほど重要ではない伸展膜張力を更に印加して細胞を溶解し、これらを完全開口して溶解なしでGEOVを放出することが可能になる。これは、細胞骨格が細胞の原形質膜に更なる抗力をもたらすことが理由である。そのため、工程a)の膨潤細胞及びオルガネラがかかる運動に供されないときには、工程b)で必要となる平均溶解張力は、約7mN/m(一部の細胞溶解は、実施例に示されるように、約1mN/m未満、その他は約10mN/m)であるが、工程a’)で前述の運動に供された工程a)の膨潤細胞及びオルガネラが工程b)で必要となる平均溶解張力は、約2mN/m(細胞溶解の大部分は、実施例に示されるように、1mN/m未満の張力)である。したがって、溶解することなく細胞に運動を供することによって、依然として内部にある巨大な(細胞内)オルガネラ小胞に損傷を与えることなく更なる溶解張力を低下させることが可能になる。本文献では、膜破裂は、ほぼ常に細胞溶解に関係する。本発明の方法では、細胞溶解によって、細胞の内容物(オルガネラを含む)のすべて、又はほぼすべてが細胞外培養液へと放出される。最新の技術は、膜破裂後に何が起こるかを示してはおらず、細胞内化合物の放出がないことを理由にして細胞溶解という用語が誤って使用されている。事実、原形質膜破裂によって小胞形成、又は閉鎖する二重膜孔の開口がもたらされることは極めて一般的である。こうした場合、最新の技術は原形質膜破裂及び/又は細胞溶解測定といった用語に言及しているが、オルガネラは全く放出されていない。このことは膜破裂及び/又は細胞溶解があることが理由なのではなく、細胞内含有物が放出されることが理由である。本発明の方法によって、穏やかな溶解により細胞を溶解させることなく、細胞溶解に達する膜張力、原形質膜のすべての除去、及び細胞由来のGEOV(実施例1に示される)のすべて、又はほぼすべての放出を劇的に減少(2mN/m以下)することが可能になる。
本発明の方法の特定の実施形態によれば、工程b)は、細胞の原形質膜を迅速に破壊するものの、低張水性培養液中で溶解細胞から放出された巨大な(細胞外)オルガネラ小胞の構造を保持するために、10-4~100秒間にわたって、10-3~5mN/m、好ましくは5.10-3~4mN/m、より好ましくは10-2~2mN/m、更により好ましくは10ー2~1mN/m、最も好ましくは5.10-2mN/m~0.75mN/mの範囲である伸展膜張力(二重膜張力)を細胞に印加するために実施される。概して、本発明の方法によって、約2mN/m未満の値に伸展膜張力を低下させて、GEOVを培養液中へと抽出かつ回収することが可能になる。細胞を溶解するための最新の技術から公知である通常の伸展膜張力が平均で5mN/mより高いものである場合であっても、すべてのオルガネラは、培養液中へとその内容物を放出する細胞外ナノ小胞へと断片化される。したがって、特許請求されるGEOVとは異なり、それ以上操作可能ではない。工程b)は、機械的力(例えば、吸引圧、伸展、せん断又は音波)、化学薬剤及び/又は界面活性剤、電界又はレーザ(光)励起を使用することで実施され得る。例えば、機械的力は、予想される細胞への伸展膜張力を発生させる吸引圧(概して、約0.1~600mbar、より好ましくは約5~200mbar(前述のバルク技術は、1barよりもはるかに大きい圧力を使用する)を有するマイクロピペット(約0.5~20μmの半径)を用いて印加され、これによって原形質膜の溶解と、巨大な細胞外オルガネラ小胞の回収がもたらされる(実施例の節を参照されたい)。例えば、本発明の方法の工程a)による細胞膨潤及び巨大な細胞内オルガネラ小胞形成後、数秒間(例えば、0.1~100秒間)にわたる超音波範囲(好ましくは、約16khz~1000khz、より好ましくは約20khz~400khz)の音場(圧力波)によって予想される細胞への伸展膜張力を発生させることが可能になり、これによって原形質膜の溶解と、巨大な細胞外オルガネラ小胞の回収がもたらされる(実施例の節を参照されたい)。例えば、本発明の方法の工程a)による細胞膨潤及び巨大な細胞内オルガネラ小胞形成後、例えば、カルボン酸(原形質膜溶解を発生させるのに十分な濃度を有する)、TritonX、Tween、SDS、Brij、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHPSO及びその他のものなど、界面活性剤として機能する化学物質は、制御方式で添加され、原形質膜の溶解と巨大な細胞外オルガネラ小胞の回収をもたらす、予想される細胞への伸展膜張力を生成することができる。界面活性剤を使用することで、巨大なオルガネラの特性が修飾される(実施例の節を参照されたい)。
本発明の方法によれば、巨大な細胞外オルガネラ小胞は、任意の標識を行うことなく工程c)から回収され、光学的アプローチ、形態学的アプローチ、機械的アプローチを含むいくつかの非侵襲的方法を使用することで後で分類され得る。ただし、本発明の方法の特定の実施形態によれば、工程a)の細胞は、オルガネラ同定を容易にするために、少なくとも1種のオルガネラタンパク質マーカ、又はオルガネラについて伝える受容分子によってトランスフェクトされた細胞、を含むことができる。例えば、細胞は、膨潤前後に使用される蛍光物質又は化学マーカを用いてタグ付けされた少なくとも1種のオルガネラタンパク質でトランスフェクトされる。例えば、KDELはER内腔に印をつけ、Tom20はミトコンドリアに印をつけ、LC3Bはオートファゴソームに印をつけ、Lamp1はリソソームに印をつけ、Golgi7はゴルジ体に印をつける。
本発明はまた、本発明の方法で得られる巨大な細胞外オルガネラ小胞に関し、当該巨大な細胞外オルガネラ小胞が、以下を特徴とする。
a)二重膜結合した内腔体積を有し、少なくとも3μm-1、2μm-1、1.5μm-1、1.2μm-1、1μm-1、0.85μm-1、0.75μm-1、0.66μmー1、0.6μm-1、0.5μm-1、0.42μm-1、0.38μm-1、0.33μm-1、0.28μm-1、0.25μm-1、0.2μm-1、0.15μm-1未満の体積に対する表面積比を有する。
b)小胞体、ミトコンドリア、リソソーム、ゴルジ体、液胞、葉緑体、オートファゴソーム、オートリソソーム、エンドソーム、ペルオキシゾーム、多胞体を包含する、供給源である細胞のオルガネラから産生される。
c)それらが産生される供給源となる細胞の原形質膜によって取り囲まれているが、これは、GEOVが細胞外培養液中にあることを意味している。
d)タンパク質、脂質及び代謝産物から構成される膜及び内腔を有し、生化学組成物は、GEOVが産生されるオルガネラの全組成の一部であり、この割合は、少なくとも、0.01%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、90%、100%よりも大きい。
e)少なくとも5μm、15μm、30μm、60μm、100μm、180μm、260μm、380μm、520μm、1000μm、1500μm、2000μm、3000μm、4500μmよりも大きい体積を有する。
f)すべての空間方向において、少なくとも2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、12μm、14μm、16μm、18μm、20μmよりも大きいサイズを有する。
g)他のGEOVとの接触を一切有さないか、1箇所有するか、複数箇所有する。
h)細胞質基質生体分子、微小管、アクチン、フィラメント、細胞核、脂質滴、リボソーム、中心小体、ペルオキシゾーム、原形質膜及びその他のオルガネラといった細胞成分と一切接触しないか、1箇所で接触するか、複数箇所で接触する。
本発明の巨大な細胞外オルガネラ小胞は、異なる細胞成分、又はその他のGEOV(図4A~図4Cに示される)と接触した状態である対象の任意の種類のタンパク質とともに回収することができる。最初にこれらの細胞外複合構造を産生かつ操作することによって、新規方法による細胞成分間でのオルガネラの相互作用と、細胞内タンパク質及び脂質の役割とを研究することが可能になる。創薬、標的とバイオマーカの同定における新規用途は、かかるGEOV複合構造を使用して展開され得る。
本発明の巨大な細胞外オルガネラ小胞は、機能的であり、当該GEOVが中性種及びイオンを輸送し(例えば供給源となる細胞といった参照用細胞における膜輸送活性の膜輸送タンパク質活性のうち、少なくとも0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の範囲である膜輸送タンパク質活性)、例えば供給源となる細胞といった参照用細胞における膜輸送活性の膜輸送タンパク質活性のうち、少なくとも0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の範囲であるタンパク質活性を含む。本発明の巨大な細胞外オルガネラ小胞は貯蔵されることができ、後に研究目的で送達され得る。本発明の巨大な細胞外小胞は、少なくとも1、2、3、6若しくは12時間、1、2、3、4、5若しくは6日間、1、2、3若しくは4週間、1、2、3若しくは6ヶ月間、又は1、2、3、4若しくは5年間にわたって、4℃未満、又は-20℃未満、又はー80℃未満の温度で安定状態にある。
本発明はまた、対象の分子の活性をスクリーニングするための方法であって、当該方法が、
a)少なくとも1種類の本発明の巨大な細胞外オルガネラ小胞と対象の分子を接触させることと、
b)当該少なくとも1種類の巨大な細胞外オルガネラ小胞のフラックスとの相互作用を通じて、対象分子の活性の調整を測定することと、
c)工程b)で測定された活性と、何らかの接触前の対象分子の初期活性とを任意選択的に比較することと
を含む、方法に関する。
そのため、本発明のスクリーニングのための方法によって、巨大な細胞外オルガネラ小胞上の少なくとも1種のタンパク質と相互作用する対象分子の能力を測定すること、例えば、本発明によって得られる巨大な細胞外オルガネラ小胞に局在する少なくとも1種のタンパク質を有する任意の薬物候補の有効性、親和性、選択性、特異性、毒性、バイオアベイラビリティ、薬理動態、透過性をスクリーニングすることが可能になる。更には、本発明の方法によって、例えば巨大な細胞外オルガネラ小胞間の接触伝達の調節、当該巨大な細胞外オルガネラ小胞を標的とする分子の同定、巨大な細胞外オルガネラ小胞の活性を遮断する分子の毒性の検査も可能になり得る。そのため、この方法によって、正確な医療と、健常な/疾患状態の患者から直接抽出した巨大な細胞外オルガネラ小胞上で認識される早期診断が可能になる。
本発明はまた、対象の分子の活性をスクリーニングするための、本発明による少なくとも1種類の巨大な細胞外オルガネラ小胞の使用に関する。本発明の当該少なくとも1種類の巨大な細胞外オルガネラ小胞薬物、タンパク質(例えば、障害に関与するもの)又はイオンといった化合物の相互作用又は影響並びにその間の接触及び伝達はしたがって、巨大な細胞外オルガネラ小胞の生成及び回収前に評価され得る。本発明の巨大な細胞外オルガネラ小胞はしたがって、生化学反応を研究するため、又は例えば疾患状態の患者から疾患のパターンを定義し、彼らと健常な患者とを比較することによって疾患を診断するために使用され得る。
本発明はまた、本発明による担体としての巨大な細胞外オルガネラ小胞の少なくとも1種類の使用に関する。こうした使用によって、薬物送達用途については、外因性分子、又は巨大な細胞外オルガネラ小胞の生成前に細胞によって発現される分子/タンパク質といった、対象の分子のカプセル化又は隔離が可能になる。
(A)上部:蛍光原形質膜タンパク質(GPI-mcherry)を過剰発現しているCos7細胞の共焦点顕微鏡のスナップを表し、核はHoetschを用いて探索された。下部:工程a)の低張水性培養液と接触した状態である膨潤Cos7の共焦点顕微鏡のスナップを表し、細胞は上述のものと同じトランスフェクションを有する。(B)工程a)前に蛍光性の体積ERタンパク質(RFP-Kdel)と膜ミトコンドリアタンパク質(Mfn2-YFP)との両方を過剰発現するCos7細胞の、共焦点顕微鏡のスナップを表す。(C)工程a)後に蛍光性の体積ERタンパク質(RFP-Kdel)と膜ミトコンドリアタンパク質(Mfn2-YFP)との両方を過剰発現する膨潤Cos7細胞の、共焦点顕微鏡のスナップを表す。これらのスナップは、巨大な(細胞内)オルガネラ小胞(GIOV)の形成を明確に示した:ここでは、小胞体の巨大な細胞内オルガネラ小胞(ER-GIOV)と、ミトコンドリアの巨大な細胞内オルガネラ小胞(Mito-GIOV)とが可視化されており、一部は、0.6μm-1未満の体積に対する表面積の比を有する(サイズについては10μmよりも大きい)。(D)以下のオルガネラ:ER(ER-GIOV)、ミトコンドリア(Mito-GIOV)、ゴルジ体(Golgi-GIOV)、オートファゴソーム/オートリソソーム(Auto-GEOV)、リソソーム(Lyso-GEOV)、エンドソーム(Endo-GIOV)、多胞体(MVB-GIOV)から生み出される各種類のGIOVを区別するための長方形のパネルを表す。核は、GIOVとは見なされない。(E)化学物質を添加することなく、工程a)後の各種類のオルガネラについてのGIOVの平均直径のプロットを表す。図1Dに関連する。平均+/-標準偏差であり、nは、各条件について分析されたオルガネラ数を報告する。分析されたすべてのGIOVは球状であった。これは、3μmよりも大きい球状サイズを有する(例えば、2μm-1未満の体積に対する表面積の比を有する)GIOVの形成を示す。核は、GIOVとは見なされない。(F)オルガネラの種類に応じたGIOV直径の相対頻度分布のプロットを表す。図1D~図1Eに関する。核は、GIOVとは見なされない。 (A)工程a)後に、以下の蛍光タンパク質:RFP-Kdel(ER-GIOVの体積マーカ)、mcherry-TOMM20-N(Mito-GIOVの膜マーカ)並びにER-GIOV(RFP-Kdelを含むP58シグナル)及びGolgi-GIOV(Golgiの巨大な細胞内オルガネラ小胞)(RFP-Kdelを含まないP58シグナル)について伝えるP58-GFPを過剰発現する膨潤Cos7細胞の共焦点顕微鏡のスナップを表す。(B)化学物質(ノコダゾール)を用いて、工程a)前及び工程a中(低張培養液と混合される)に1時間インキュベートされた、図2Aと同じタンパク質を過剰発現する膨潤Cos7細胞の共焦点顕微鏡のスナップを表す。工程a)前後でノコダゾールを添加することによって、微小管の組織化を妨害することが可能になり、平均してより大きなER-GIOVの産生がもたらされる。(C)工程c)後に産生されたER(ER-GEOV)の巨大な細胞外オルガネラ小胞の可視化を表す。工程a)前にCos7細胞中のmCherry-climp63タンパク質を過剰発現することによって、より大きな(サイズにして20μm超であり、0.3μm-1よりも小さい体積に対する表面積の比を有する)ER-GEOVを産生することが可能になる。(D)工程a)で検査された3つの異なる条件を区別するために使用される異なるマーカを示す長方形パネルを表しており、これによって工程c)後にER-GIOVの異なるサイズ分布がもたらされる。(E)パネル2Dの各条件についての、工程c)後に産生されたER-GIOVの平均直径のプロットを表す。平均+/-標準偏差であり、nは、各条件について分析された小胞の数を報告する。(F)パネル2Dの各条件についての、ER-GIOV直径の相対頻度分布のプロットを表す。(G)工程c)後に産生された、すなわち、mcherry-TOMM20-N又はMfn2-YFPを過剰発現する細胞から回収された2つの異なる種類のMito-GIOVを定義する長方形パネルを表す。(H)図2Gの両方の条件についてのMito-GIOVの平均直径のプロットを表す。平均+/-標準偏差であり、nは、各条件について分析された小胞の数を報告する。Mfn2-YFP(ミトコンドリア接触部位及び融合に関連するミトコンドリアタンパク質)を過剰発現することによって、5μmよりも大きい(すなわち、1.2μm-1よりも小さい体積に対する表面積の比)より多くのER-GIOVを更に産生することが可能になる。(I)Mito-GIOV直径(図2G~図2Hに関連する)の相対頻度分布のプロットを表す。 工程c)後に産生された異なるオルガネラから誘導されたGEOV(蛍光レポータ:ER-GEOV:RFP-Kdel;Mito-GEOV:mcherry-TOMM20-N;Endo-GEOV:pmCherry-2X-FYVE;Golgi-GEOV:P58-GFP;Lyso-GEOV:pMRXIP Lamp1-Venus;Auto-GEOV:LC3-EGFP)の共焦点顕微鏡を表す。これらの工程後、本発明者らはまた、示されている膨潤核(Hoestch33342)及び原形質膜小胞(GPI-2xmCherry)も得る。このパネルは、サイズ(すなわち、体積に対する表面積)にして5μmよりも大きい各種類のGEOVを示す。(B)膜溶解を引き起こすために、例えばマイクロピペットを用いて印加され得る、細胞又はGEOVの膜表面張力を計算するための、ラプラスの法則から導出された数式を表す。ΔPは、マイクロピペットへと加えられる吸引圧に対応し、Rは、GEOVの吸引された膜部分の半径に対応し(この場合では、これはマイクロピペット半径に対応する)、R小胞は、GEOVの半径に対応する。(C)GEOV及び原形質膜小胞の溶解を引き起こすために印加される膜張力のプロットを表す。これらの測定は、工程c)後に産生されたGEOV及び原形質膜小胞に実施された。 対象の異なる種類のタンパク質を過剰発現するCos7細胞から、工程c)後に産生されたGEOV:上段は、YFP-セイピン及びsec61β-mCherryによって覆われたER-GEOV、中段は、dGAT1-EGFP及びsec61β-mCherryによって覆われたER-GEOV、下段は、Mfn2-YFP及びmcherry-TOMM20-Nによって覆われ、ER-GEOVと接触した状態で回収されたMito-GEOVの共焦点顕微鏡のスナップを表す。(B)共焦点顕微鏡のスナップを表し、ここではGEOVは、他のGEOV又は細胞成分と接触した状態で産生される:上段には、脂質滴(Bodipy-FLでタグ付けされている)と接触した状態で産生かつ単離されたER-GEOV(sec61β-mcherry)が示されている。中段には、Mito-GEOV(mcherry-TOMM20-N)と接触した状態で産生かつ単離されたER-GEOV(RFP-Kdel)が示されている。下段は、ペルオキシゾームと接触した状態で産生かつ単離されたER-GEOV(RFP-Kdel)を表す。(C)工程c)後に回収された核(Hoestch33342)と接触した状態で産生かつ単離されたER-GEOV(半球状小胞のように見える)の共焦点顕微鏡のスナップを表しており、これらのオルガネラ間の大きな接触領域を明らかにした。これらのER-GEOVは特定の場合である。これは、球状ではないが依然として二重膜結合しており、かつ核と接触した状態で2μm-1よりも小さい体積に対する表面積の比で細胞外に存在するからである。 (A)工程c)後に産生され、次いで37℃でオレオイルCoA(NBD-オレイルCoAで補完)とジアシルグリセロール(DAG)とを与えたER-GEOV(sec61β-mcherry)のスナップを表す。ER-GEOVが、その膜上にdGAT酵素を有するため(図4Aに関連する、中段)、ER-GEOVにオレイルCoA-NBDシグナルを組み込むことで、期間中、ER-GEOV膜上でのトリグリセリド合成が可視化されている。以下のこのシグナルによって、ERタンパク質活性を介したER-GEOV機能性を提供することが可能になる。(B)供給実験(図5Aに関連する)中にER-GEOV膜におけるオレオイルCoA-NBDの蛍光シグナルのプロットを表す。 (A)工程a)後の膨潤Cos7細胞の共焦点顕微鏡のスナップを表す。細胞は球状であり、その原形質膜は無傷である。膨潤細胞内部に捕捉された大量のGIOVは、可視化されることができる。(B)工程a)、及び工程b)として蛍光性界面活性剤と混合された界面活性剤(オレイン酸)の添加後のCos7細胞の共焦点顕微鏡のスナップを表す。a)後でこうした界面活性剤を添加することによって、原形質膜の破壊及びGEOVの放出によるバルク中でのGEOVの産生が可能になる。GEOVの膜は界面活性剤もまた組み込むが、界面活性剤は、組成、特性、膜の生物物理学的パラメータ並びにタンパク質の折りたたみ及び活性の両方を修飾することができる。(C)原形質膜を音場に供することによって実施された工程a)、工程b)後のCos7細胞の共焦点顕微鏡のスナップを表す。正確には、細胞は超音波(約40khzの音波)に5分間供された。この音場によって、バルク中で一部のER-GEOV(RFP-Kdelとともに伝えられる)の放出が可能になる。一部の細胞は依然として無傷であるが、超音波パラメータの正確な制御は、細胞を破壊することなくGEOVを回収するために重要であることを意味する。 工程a)後の膨潤cos7細胞の共焦点顕微鏡のスナップを表す。工程a)は、低張水性バッファの浸透圧を150mOsmから75mOsm、30mOsm、最終的に20mOsmへと順次変更することによって実施された。細胞は、各培養液で5分間インキュベートし、最後のものと接触した状態で画像化した。工程a)前には、細胞をトランスフェクトして、ER-GIOV(RFP-Kdel及びkde-EGFP)並びにMito-GIOV(mcherry-TOMM20-N)を可視化した。細胞及び内部オルガネラ小胞は、効率的には膨潤しない:一部のER-GIOVは球状ではなく、一部は非常に小さい(Mito-GIOVは、3μmよりも大きい)。連続的な膨潤のこれらの工程a)によって、大きなGIOV及び球状細胞形成(溶解がより容易である)はもたらされない。これは、工程a)を調節することがGEOVの産生にとって非常に重要であることを示している。 A)工程a)+a’)に供された細胞に対して、工程a)に供された無傷の膨潤細胞(GIOVを含有する)の原形質膜溶解張力のプロットを表す。工程b)の張力は、59秒未満にわたって印加された。平均+/-標準偏差が示される。B)工程a)のみに供された無傷の膨潤細胞(GIOV)についての原形質膜溶解張力事象の相対頻度分布を表す。工程b)の張力は、59秒未満にわたって印加された。このプロットは、細胞が大きな二峰性分布を有することを示す。一部の細胞は、2mN/m未満の溶解張力を有するが、その他の細胞は、5mN/mよりも大きい溶解張力(先行技術の範囲内)を有する。これらのうち最高の溶解張力を有するものは、GEOVを破壊することなく穏やかな条件で溶解することが困難である(これは、図3Cに示されるその溶解張力値による)。C)工程a)とa’)(工程a)と同様)との両方に供された無傷の膨潤細胞についての原形質膜溶解張力の相対頻度分布を表す。工程b)の張力は、59秒未満にわたって印加された。膨潤細胞の大部分は、2mN/m未満の非常に低い溶解張力を有する(細胞の50%超は、これらの条件では0.75mN/m未満の溶解張力を有する)。これは、ほとんどすべてのGEOVの溶解張力値よりも低い(図3C)。工程a’)によって、細胞の溶解が容易になり、工程c)後により大きく、より多くのGEOVを回収することが可能になる。 A)工程a)(インキュベーション=13分)、a’)、b)及びc)後に産生されたER-GEOVの共焦点顕微鏡のスナップを表す。これらのER-GEOVは、10μmよりも大きいサイズ(すなわち、0.6μm-1よりも小さい体積に対する表面積の比)を呈し、1つの細胞のみを抽出する。非常に強い浸透圧ショックで工程a)を調節し、工程a’)を加え、工程b)の印加された張力を減少させることによって、最終的には1つの単独細胞からこれらのより大きなER-GEOVすべてを産生することが可能になる。
実施例1:膨潤後に機械的力(吸引圧)を使用して巨大なオルガネラ小胞を生み出し、これを回収するための方法
細胞培養
Cos7哺乳動物細胞を、10%熱不活性化FBS及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充したダルベッコ変性イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium、DMEM)にて維持した。GEOVの産生プロトコール前に、DMEM培地中にて、37℃、5%COで細胞を48時間培養した。更には、細胞を指示されるプラスミドで24時間トランスフェクトし、本発明の方法の工程a)前のオルガネラ、工程a)のGIOV及び工程c)後のGEOVを探索した。細胞を、接着剤で前処理した、又は前処理していない接着皿で培養した。
巨大な細胞外オルガネラ小胞について伝える細胞トランスフェクション
GEOV産生の24時間前に、細胞を蛍光タンパク質構築物(例えば、eGFP又はmCherry)と融合した異なるプラスミドでトランスフェクトした。これらのプラスミドは、異なるGEOVについて伝えるタンパク質を発現するように機能する。Kdel及びSec61βプラスミドを使用して小胞体を同定し、Tom20及び/又はMitofusinIIプラスミドを使用してミトコンドリアを同定し、ゴルジ体についてはGP58又はKde、エンドソームについてはFYVE、オートファゴソームについてはLC3、並びにリソソームについてはLamp1を同定した。
巨大な細胞内オルガネラ小胞形成及びサイズ分布測定
巨大な細胞内オルガネラ小胞の形成については、細胞がコンフルエントになる前に、細胞培地を、37℃及び5%COで、HO、pH7.4を用いて希釈した。工程a)後、すなわち膨潤後及びGEOV産生前の膨潤細胞を参照されたい(図1C)。細胞の種類(100mOsm/L~0.1mOsm/L)に応じて、膨潤溶液の浸透圧勾配を制御し、工程a)前及び/又は工程a)中にこれを調整した。工程a)中には、浸透圧勾配をある一定時間にわたって変更して調節し(図7A)、GIOVのサイズ分布及び細胞膨潤速度を制御することもできる。細胞膨潤(工程a))後、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumine、BSA)10%v/vで前処理したガラスプレート上の透明な低張培養液中に、細胞溶液を注入した。次いで、各種類のGIOVを同定するための異なるタンパク質マーカを使用し、無傷の膨潤細胞について、共焦点顕微鏡のスナップを撮影した。GIOVのサイズ分布について伝えるこれらの膨潤細胞の各スタック(スライスあたり1μm)について、各GIOVの直径を測定した(図1E~図1F)。本発明者らはマイクロメートルを超える小胞に関心があったため、サイズ分布測定については0.75μm超のサイズを有する小胞のみを検討した。
巨大な細胞外小胞のサイズ制御
GEOVの産生を制御するために、低張水性培養液を使用してオルガネラの膨潤を実行した(図2A)。化学薬剤をこの培養液に加えることによって、工程c)後に産生されるGEOVの分布を更に制御することが可能になる(図2)。
巨大な小胞体(ER-GEOV)のサイズを増大させるために、本発明者らは工程a)の1時間前と工程a)中に、培地に2.5μMノコダゾールを加えた(図2B)。他の条件を示すが、ここでは、工程a)前にER膜形成タンパク質であるClimp63で細胞をトランスフェクトした(図2C)。ノコダゾールを用いるプロトコールによって、ノコダゾールを用いない場合よりも高い割合で巨大なERを形成することが可能であった(図2D~図2F)。更には、細胞中でタンパク質Climp63を過剰発現することによって、巨大なER-GEOV(15μm~35μm)の形成が可能になった(図2D~図2F)。
膜形成タンパク質を過剰発現するというこの考えに従い、Mito-GEOVのサイズもまた調節した。TOM20ミトコンドリア膜タンパク質の代わりにmitofusinIIタンパク質を過剰発現させた(図2H対図2I)。mitofusinIIタンパク質を過剰発現させることによって、より大きなMito-GEOVを形成することが可能になった(図2G~図2I)。
工程a’)及び近い将来に産生されたGEOVの実行可能性
細胞を膨潤し、低張培養液の前後運動にこれを供する条件下において(工程a’)。
工程a’)は5秒間にわたって実施される。前後運動は、低張水性培養液の全体積に対して、続けて3回実施される。この工程によって、細胞の細胞骨格を不安定化し、その溶解張力を減少させることが可能になる(図8)。これによって、原形質膜溶解中にこれらを溶解し、除去することなく(より良好なサイズ分布の)GEOVの産生がもたらされる(図9)。
巨大な細胞外オルガネラ小胞及び細胞溶解張力測定:
巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)の二重膜溶解張力の推定値を決定するため、マイクロピペット吸引技術を使用した。マイクロピペット半径は約1μmであった。わずかな吸引によって、GEOVの舌状の二重膜(又は原形質膜)をマイクロピペットへと吸引した。次いでおよそ10mbar/分で吸引を増加させ、これによって二重膜表面張力の比例的な増加を引き起こした。印加された特定の張力では、GEOV(又は原形質膜)は、細孔開口によって破裂した。したがって、測定された溶解張力を二重膜の破裂直前に到達したより高い張力として利用した。ラプラスの法則、並びにピペットの内径(R)、小胞半径(R小胞)及び界面の吸引圧ΔP、印加された表面張力γを計算した。
小胞
シリンジを使用して印加された吸引圧を実行した。得られた圧力を、圧力変換器(DP103、Validyne Engineering,North-ridge,CA)を用いて測定し、デジタル電圧計を用いてこの出力電圧をモニタリングした。実験前に圧力変換器(範囲55kPa)を較正した。
細胞溶解及び原形質膜の開口による、巨大な細胞外オルガネラ小胞の放出の調整。
工程b)についての一例として、共焦点顕微鏡下で細胞を顕微鏡操作した。巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)を培地で観察した。原形質膜の溶解及び除去によって、巨大な細胞外オルガネラ小胞を放出した(データは示さず)。GEOVを破壊することなくこれらの放出を生み出すように原形質膜に印加する張力を定量化するために、GEOVの溶解表面張力、原形質膜小胞及び無傷の膨潤細胞(a)又はa)+a’)に供される)を測定し、平均化した(図3C及び図8A~図8C)。平均して、工程a’)の無傷の膨潤細胞は、工程a’)に供されていない無傷の膨潤細胞よりも著しく低い溶解表面張力を有する(図8A~図8CD)。工程c)後には、原形質膜小胞の溶解張力は、その他のGEOVすべてよりも大幅に低いことが見出された(図3C)。平均して、GEOVは、工程a’)に供された異なる種類の原形質膜(a)+a’)の無傷の膨潤細胞、a)の一部の無傷の膨潤細胞、c)の原形質膜小胞)よりも高い膜溶解張力(図3C及び図8A~図8C)を有する。最終的には、a)とa’)とを組み合わせることによって、大部分の細胞にとっては、非常に低い範囲の表面張力(0.75mN/m未満)で細胞溶解を引き起こすことが可能になる。これは、抽出中にGEOV溶解を引き起こすことを防止する。かかる方法によって、機能的かつ安定しており、他のGEOV又は細胞成分と接触している状態又は接触していない状態である、巨大な細胞外オルガネラ小胞を回収することが可能になる。
対象のタンパク質を発現する巨大な細胞外オルガネラ小胞
本発明の非常に大きな可能性のうちの1つは、選択されたタンパク質又はいくつかの選択されたタンパク質を過剰発現しているGEOVの産生である(図4A)。
接触状態にある巨大な細胞外オルガネラ小胞は単離される
工程c)後に、その他のGEOVと接触した状態のGEOVもまた産生し、これを単離する(ER-GEOV/Mito-GEOV接触及びER-GEOV/脂質滴)(図4B)。特定の系もまた、ER-GEOV/核接触と同様に単離した(図4C)。
実施例2:膨潤後に工程B)にて界面活性剤を使用して巨大な細胞外オルガネラ小胞を生み出すための方法
巨大な細胞内オルガネラ小胞形成:実施例1と同様のプロトコール
化学物質又は界面活性剤を加えることによる細胞溶解によっての巨大な細胞外オルガネラ小胞の放出の制御(図6B)
細胞の培養、トランスフェクション及び浸透、すなわち工程a)後に、界面活性剤として作用する化学物質を加えた。オレイン酸(界面活性剤)溶液(10%BSAを含むHO中に可溶化)を、400μM膨潤細胞溶液に加えた(Bodipy-C12蛍光プローブを加え、膜でのオレイン酸の組み込みを可視化した)。数分後、細胞を画像化した。巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)を産生し、原形質膜溶解及び除去を呈する細胞の外側で可視化された。
内部に捕捉された巨大な(細胞内)オルガネラ小胞を含む膨潤細胞上にこれらの化学物質を加えることによって、巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)の抽出及び回収が可能になる。予想されるように、GEOVの膜内部に界面活性剤を蓄積させることによってGEOVの膜を修飾した(図6B)。
実施例3:膨潤後に超音波を使用して巨大な細胞外オルガネラ小胞を産生し、これを生み出すための方法(図6C)
巨大な細胞内オルガネラ小胞形成:実施例1と同様のプロトコール
細胞を音場に供する巨大な細胞外オルガネラ小胞の放出の制御
細胞培養、トランスフェクション及び浸透、すなわち工程a)後に、原形質膜表面張力の摂動を印加し、細胞溶解を引き起こすために、膨潤細胞溶液を数秒間、バスソニケータにて音場に供した。40kHz超音波周波数を使用し、細胞を溶解してバルク中に巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)を放出した。
実施例4:巨大な細胞外オルガネラ小胞の機能性
本ステップでは、GEOVのタンパク質によってオレイル-CoAの同化と形質転換との両方に関する回収された巨大な細胞外オルガネラ小胞(GEOV)の機能性を研究した。
トリグリセリド合成ERの巨大な細胞外オルガネラ小胞(ER-GEOV)における油の合成
トリグリセリド合成:低張培地(DMEM:HO 5:95)にてBSA(0.5重量%)と複合体化された8mMジオレイン、2mMオレイル-CoA(+20μMNBD-オレイル-CoA)の混合物を実験前に調製した。これらの産生後(すなわち、工程c後)、ER-GEOVを、50μLの供給混合物を添加し、37℃、5%COで30分間にわたりインキュベートした。最終濃度は、2mLの低張培地中でジオレイン、オレイル-CoA及びNBD-オレイル-CoAについてそれぞれ200μM、50μM及び0.5μMであった。図5Aについては、ER-GEOV膜におけるNBD-オレイル-CoAの蛍光シグナルによって、ER-GEOVにおけるオレイン酸の組み込みをモニタリングした。トリグリセリド、ジグリセリド及びリン脂質合成を同定し、薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography、TLC)及び質量分析(Mass Spectrometry、MS)によって定量化した(データは示さず)。
装置
すべての顕微鏡写真を、Carl ZEISS LSM 800にて作製した。ガラス製カバークリップは、Menzel Glaser(24~36mm #0)製であった。マイクロピペットは、マイクロピペットプラー(モデルP-2000;Sutter Instruments)を用いて、キャピラリ(1.0 OD 0.58 ID 150 Lmm 30-0017 GC100-15b;Harvard Apparatus)から作製した。TransferMan 4r(Eppendorf)を用いて、顕微鏡操作を実施した。圧力測定ユニット(DP103)は、Validyne Engineeringから提供された。

Claims (12)

  1. 細胞から巨大な細胞外オルガネラ小胞を産生するための方法であって、前記方法が、
    a)前記細胞を、0.5~30分間にわたって、0.1~100mOsm/Lの範囲の浸透圧を有する低張水性培養液と接触させることと、
    b)10-4~100秒間にわたって、10-3~5mN/mの範囲の細胞への膜張力を印加することと、
    c)前記巨大な細胞外オルガネラ小胞を前記低張水性培養液へと回収することと
    を含む、方法。
  2. 工程a)後及び工程b)前に、0.01秒~10分間にわたって0.01m/s~10m/sの範囲の速度で細胞を移動させるための低張水性培養液の前後運動を発生させる工程a’)を更に含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記低張水性培養液が、ノコダゾール、トリプシン、ラトランクリン、ミサキノライド、ミカロライド、アプリロニド、ビンブラスチン、ロテノン、スウィンホライド、ジャスプラキノリド、ビンクリスチン、デメコルシン、サイトカラシン、コルヒチン、ビンカアルカロイド、ジヒドロピリジン、フェニルアルキルアミン、ベンゾチアゼピン、ガバペンチノイド、ブレビスタチン、ベンジルトルエンスルホンアミド、ブタンジオンモノオキシム、タプシガルギン、キセロスポンギン、TritonX、Tween、SDS、Brij、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、マグネシウムからなる群から選択される1つ以上の分子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記巨大な細胞外オルガネラ小胞が産生される前記細胞が、支持体上で、若しくはバルク中で培養される、又は組織、器官、オルガノイド若しくは生物から回収される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 工程c)が、3μm-1~0.15μm-1の体積に対する表面積の比を有する巨大な細胞外オルガネラ小胞を生み出す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 工程b)が、機械的力、化学薬剤、界面活性剤、電界又は音場、及びレーザ励起を使用して実行される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 工程a)及び工程b)の前記細胞が、少なくとも1種類のオルガネラタンパク質マーカ又はオルガネラについてリポートする受容分子で予めトランスフェクトされている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって得られた巨大な細胞外オルガネラ小胞であって、前記巨大な細胞外オルガネラ小胞が、3μm-1~0.15μm-1の体積に対する表面積の比を有することを特徴とする、巨大な細胞外オルガネラ小胞。
  9. 前記巨大な細胞外オルガネラ小胞が、内腔を有し、二重膜結合しており、宿主細胞の原形質膜を含まないことを特徴とする、請求項8に記載の巨大な細胞外オルガネラ小胞。
  10. 小胞体、ミトコンドリア、リソソーム、ゴルジ体、液胞、葉緑体、オートファゴソーム、オートリソソーム、エンドソーム、ペルオキシゾーム、多胞体、プラスチドからなる群から選択される、請求項8又は9のいずれか一項に記載の巨大な細胞外オルガネラ小胞。
  11. 対象の分子の活性をスクリーニングするための方法であって、前記方法が、
    a)請求項8~10のいずれか一項に記載の少なくとも1種の巨大な細胞外オルガネラ小胞のフラックスと、対象の前記分子とを接触させることと、
    b)前記少なくとも1種の巨大な細胞外オルガネラ小胞の前記フラックスとの相互作用を介して対象の前記分子の前記活性を測定することと、
    c)工程b)で測定された前記活性と、任意の接触前の対象の前記分子の初期活性とを場合により比較することと
    を含む、方法。
  12. 対象の分子の活性をスクリーニングするための、請求項8~10のいずれか一項に記載の少なくとも1種の巨大な細胞外オルガネラ小胞の使用。
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