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JP2024541312A - 新規末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアントおよびその使用 - Google Patents

新規末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアントおよびその使用 Download PDF

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JP2024541312A JP2024527290A JP2024527290A JP2024541312A JP 2024541312 A JP2024541312 A JP 2024541312A JP 2024527290 A JP2024527290 A JP 2024527290A JP 2024527290 A JP2024527290 A JP 2024527290A JP 2024541312 A JP2024541312 A JP 2024541312A
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ファーテン ジャジリ,
ミカエル ソスキヌ,
エロディ シュヌ,
エリーズ シャンピオン,
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ディーエヌエー スクリプト
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本発明は、polXファミリーの新規DNAポリメラーゼ、特に特異的突然変異または置換を含む末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアント、およびそれらの使用について述べる。
【選択図】なし

Description

本発明は、少なくとも1つの特異的突然変異または置換を含むpolXファミリーの新規DNAポリメラーゼ、末端デオキシポリヌクレオチド(TdT)バリアント、およびその使用に関する。
現在の合成生物学は、近年急速に成長し続けている研究分野である。また、合成生物学は、生体物質を合成する可能性を提供する。したがって、天然には存在しない生体物質を得ることができ、このことによって療法または診断上の解決策、例えば、ゲノムおよび診断配列決定、多重核酸増幅、治療抗体開発、合成生物学、核酸ベースの療法、DNAオリガミ、DNAベースのデータ保存等が、もたらされる。
遺伝子合成は、化学ベースの合成方法によって通常には行われる。しかし、こういった方法にはいくつかの問題がある。一例を挙げると、付加された各ヌクレオチドについて、遺伝的エラーの確率は約0.5%であり、配列が長ければ長いほど、エラーを含有する確率は高い。
近年、化学ベースの合成法を、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)などのテンプレートフリーポリメラーゼを使用する酵素ベースの方法によって補うかまたはこれで置き換えることに関心が集まっているが、なぜなら、このような酵素の効率性が証明され、合成率が高く、エラーのリスクが制限されかつ穏和な非毒性反応条件が有利であるからである、例えば、Ybertら、国際特許公開第WO2015/159023号;Hiattら、米国特許第5763594号;Jensenら、Biochemistry、57:1821~1832頁(2018)等。
酵素ベースの合成を使用するほとんどの方法には、ポリヌクレオチド生成物において所望の配列を得るために、可逆的にブロックされたヌクレオシドトリホスフェートの使用が必要である。残念ながら、テンプレートフリーポリメラーゼは、修飾されていないヌクレオシドトリホスフェートと比較して効率が低下したそのような修飾されたヌクレオシドトリホスフェートを組み入れる。したがって、修飾されたヌクレオシドトリホスフェートに向けられたより良好な組み込み効率を備えた新規テンプレートフリーポリメラーゼバリアントが、開発されてきた、例えば、Championら、米国特許公開第US2019/0211315号の後に国際特許公開第WO2021116270号;Ybertら、国際特許公開第WO2017/216472号等。
新規テンプレートフリーポリメラーゼバリアントが開発されたが、酵素的DNA合成過程でのDNA品質は、例えば、DNA合成過程での置換、欠失、または挿入などの、所望のヌクレオチドの組み込みを欠くリスクを低めることによって改善することができる可能性がある。少なくとも部分的に、これらの欠失は、特にプライマーがヘアピン構造を有する場合に、テンプレートフリーポリメラーゼが所望のヌクレオチドを組み込むことができないことによって生じる。
ゆえに、DNA合成過程での置換または欠失の数を制限または防止し、ひいては満足なDNA品質の合成を達成するための、新規のテンプレートフリーポリメラーゼバリアントが必要である。
こういった必要性に取り組むために、本発明者らは、新規TdTバリアントを開発し、驚くべきことに、より活性なTdTバリアントが、特にDNA合成過程で、欠失、挿入または置換などの誤組み込みが少ないDNA鎖またはRNA鎖を産生することを発見した。
したがって、本発明は、一例として配列番号6に記載の配列を有することができるリンカー部分を備えるまたは備えない新規末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアントに関する。
新規末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアントは、
配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列であって、好ましくは配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号2と100%未満同一のアミノ酸配列であって、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる第1の群から選択される位置に、もしくは前記第1の群の各位置の機能的に等価な位置に置換アミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、または配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列であって、好ましくは配列番号8と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号8と100%未満同一のアミノ酸配列であって、前記アミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる第2の群から選択される位置に、もしくは前記第2の群の各位置の機能的に等価な位置に置き換えアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含み、ここで、これらの位置は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、
を含む。
一部の実施形態では、新規TdTバリアントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に、あるアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。
一部の実施形態では、新規TdTバリアントは、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる群から選択される位置に、あるアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。
別の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置にまたは前記群の各位置の機能的に等価な位置に別のアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。特に、前記置換されたアミノ酸は配列番号1において「X」により指示される。
別の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる群から選択される位置にまたは各位置の機能的に等価な位置に置き換えアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含み、ここで、これらの位置は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。特に、前記置き換えられたアミノ酸は配列番号7において「X」により指示される。
特定の実施形態では、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアントは、配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列中に2つ以上のアミノ酸置換、好ましくは少なくとも2つのアミノ酸置換、より好ましくは少なくとも3つのアミノ酸置換を含む。
特定の実施形態では、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアントは、配列番号7または配列番号8に記載のアミノ酸配列中に2つ以上のアミノ酸置き換え、好ましくは少なくとも2つのアミノ酸置き換え、より好ましくは少なくとも3つのアミノ酸置き換えを含む。
一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列において置換されるアミノ酸は、アルギニン(R)、バリン(V)、アラニン(A)、ロイシン(L)、リジン(K)、グルタミン(Q)、スレオニン(T)およびグリシン(G)からなる群から選択される。
一部の実施形態では、配列番号7または配列番号8に記載のアミノ酸配列において置き換えられるアミノ酸は、アルギニン(R)、バリン(V)、アラニン(A)、ロイシン(L)、リジン(K)、グルタミン(Q)、スレオニン(T)およびグリシン(G)からなる群から選択される。
特定の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択されるアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号9、配列番号10および配列番号11から選択されるアミノ酸配列を含む。
本発明はまた、所定の任意の配列のテンプレートフリーポリヌクレオチド伸長を実施するためのキットにも関し、ここで、キットは、本発明の少なくとも1種のTdTバリアント、少なくとも1種の3’-O-修飾されたヌクレオシドトリホスフェート、および必要に応じて少なくとも1種のイニシエーターを含む。このようなキットは、DNA伸長のためのA、C、GおよびTについてのデオキシリボヌクレオシドトリホスフェート(dNTP)、またはRNA伸長のためのrA、rC、rGおよびUについてのリボヌクレオシドトリホスフェート(rNTP)をさらに含むことができる。
したがって、キットは、本発明による少なくとも1種のTdTバリアントを含む。これに関連して、キットは1種のTdTバリアントまたは多種のTdTバリアント、例えば異なる2種のTdTバリアントを含むことができる、ことが理解される。
特定の実施形態では、キットは2種以上のTdTバリアントを含み、特にキットは本発明による2種のTdTバリアントを含み、より好ましくはキットは本発明による3種のTdTバリアントを含む。
一部の実施形態では、キットは、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも1種のTdTバリアントを含む。特定の実施形態では、キットは2種のTdTバリアントを含み、第1のTdTバリアントは配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ第2のTdTバリアントは配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択されるアミノ酸配列を含むが、前記第2のTdTバリアントは第1のTdTバリアントとは異なる。別の特定の実施形態では、キットは、本発明による3種のTdTバリアントを含み、より好ましくは、キットは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むTdTバリアントと、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むTdTバリアントと、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントとを含む。
一部の実施形態では、キットは、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む少なくとも1種のTdTバリアントを含む。特定の実施形態では、キットは2種のTdTバリアントを含み、第1のTdTバリアントは、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ第2のTdTバリアントは、配列番号3、配列番号4および配列番号5から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むが、前記第2のTdTバリアントは第1のTdTバリアントとは異なる。
一部の実施形態では、キットは、配列番号9、配列番号10および配列番号11から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む少なくとも1種のTdTバリアントを含む。特定の実施形態では、キットは2種のTdTバリアントを含み、第1のTdTバリアントは、配列番号9、配列番号10および配列番号11から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ第2のTdTバリアントは、配列番号9、配列番号10および配列番号11から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含むが、前記第2のTdTバリアントは第1のTdTバリアントとは異なる。
一部の実施形態では、第1のTdTバリアントは配列番号3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、第2のバリアントは配列番号5と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態では、第1のTdTバリアントは配列番号9と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、第2のバリアントは配列番号11と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む。
有利には、本発明によるTdTバリアントによれば、従来技術のTdTバリアントの技術的問題が解決され、核酸の酵素的合成過程で欠失、挿入が防止され、他の望ましくないトリホスフェート、例えば化学的に損傷されたdNTPの組み込みが低下する。
本発明はまた、ポリヌクレオチドを合成する方法にも関し、方法は:
a.遊離3’-ヒドロキシルを有する3’末端ヌクレオチドを有する少なくとも1種のイニシエーターを用意する工程、
b.伸長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記少なくとも1種のイニシエーターを、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートおよび本発明によるTdTバリアントと接触させ、その結果、前記少なくとも1種のイニシエーターは、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートの組み込みによって伸長されて、3’-O-ブロックされた伸長断片を形成する工程、ならびに
c.伸長断片を脱ブロッキングして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成する工程、ならびに
d.伸長条件下で工程c.で得られた伸長断片を接触させることによって、ポリヌクレオチドが形成されるまで、工程b.および工程c.を繰り返す工程、
を含む。
さらなる実施形態では、本発明には、上記のTdTバリアントをコードする少なくとも1種の核酸分子が含まれる。換言すれば、本発明は、2種以上の核酸を含むことができ、前記核酸分子それぞれは、記載されている、TdTバリアントに相当するタンパク質配列をコードする。
本発明にはまた、そのような核酸分子を含む少なくとも1種の発現ベクター、および前述の核酸分子または前述の発現ベクターを含む少なくとも1種の宿主細胞が含まれる。なおさらなる実施形態では、本発明には、本発明の少なくとも1種のTdTバリアントを生成する方法が含まれ、この場合、宿主細胞は前記TdTバリアントをコードする核酸の発現を可能にする培養条件下で培養され、かつTdTバリアントが必要に応じて回収される。
本発明のTdTバリアントを使用する、テンプレートフリーの酵素的核酸合成の方法の工程を図式的に例示する図である。 TdTの活性を測定するのに適用されたヘアピン(上)およびデュプレックス(下)のiDNAを表す、図である。 配列番号3、または配列番号4または配列番号5を有するTdTバリアント、それぞれ突然変異T264R+I298V、またはC23A+T264R+I298V、またはV262A+I298Vを有するバリアントの活性および合成性能を表す、図である。パネルA:TAGCT+Aデュプレックステストにおける+A反応の酵素速度。パネルB:CAGCAAGGCT+Gヘアピンによる+G反応の酵素速度。 配列番号3、または配列番号4または配列番号5を有するTdTバリアント、それぞれ突然変異T264R+I298V、またはC23A+T264R+I298V、またはV262A+I298Vを有するバリアントによる24の配列の合成過程で加えられた欠失、挿入、置換の平均値を、配列番号2のTdTバリアント(参照と称する)によって行われた合成と比較して、表す図である。
定義
アミノ酸は、本明細書では、以下の命名法に従って1文字コードまたは3文字コードによって表される:A:Ala(アラニン)。R:Arg(アルギニン);N:Asn(アスパラギン);D:Asp(アスパラギン酸);C:Cys(システイン);Q:Gln(グルタミン);E:Glu(グルタミン酸);G:Gly(グリシン);H:His(ヒスチジン);I:Ile(イソロイシン);L:Leu(ロイシン);K:Lys(リジン);M:Met(メチオニン);F:Phe(フェニルアラニン);P:プロ(プロリン);S:Ser(セリン);T:Thr(スレオニン);W:Trp(トリプトファン);Y:Tyr(チロシン);V:Val(バリン)およびX(未定のアミノ酸)。
本発明の文脈における「末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアント」とは、一連の突然変異または変更を共有する一群のTdT突然変異体を意味する。変更または突然変異とは、1つ以上の位置における置換、挿入、および/または欠失とすることができ、DNAポリメラーゼ活性を保存することを可能にする。例えば、同じアミノ酸残基位置に存在する1種または2種または3種の突然変異、例えばスレオニンは28位でリジンにより置換されている。特に、配列番号3、配列番号4および配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するTdTは突然変異体であり、前記TdTは一連の突然変異を共有しかつバリアントを構成する。
本発明によるTdTバリアントは、切断型TdTバリアントである。TdTバリアントは、当技術分野で周知されている種々の技法によって得ることができる。特に、野生型タンパク質をコードするDNA配列を改変するための技法の例としては、それらに限定されないが、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、および合成ポリヌクレオチドの構築が挙げられる。
「切断型TdTバリアント」とは、本発明の文脈において、相当する野生型TdTのN末端部分を含まないTdTを意味する。本発明によるTdTバリアントは、相当する野生型親NP_001036693.1[ハツカネズミ(Mus musculus)])TdT配列のアミノ酸残基1~132を欠くN末端切断型TdTである。
「未定のアミノ酸」または「未知のアミノ酸」または「X」とは、本発明の文脈において、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンからなる群から選択される20個のアミノ酸のうちの1つとすることができるアミノ酸を意味する。
本発明の文脈における「置換されたアミノ酸」または「置き換えられたアミノ酸」とは、特定の位置に、特に、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている23位、262位、264位および298位からなる第1の群から選択される位置に、または、配列番号8に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている4位、243位、245位および279位からなる第2の群から選択される位置に、本来のアミノ酸(置換または突然変異の前)の別のアミノ酸による置換を意味する。例えば、配列番号2の23位または配列番号8の4位にて、本来のアミノ酸はCであり、置換されたアミノ酸はAである。
本発明の意味において2つの核酸配列の間または2つのアミノ酸配列の間の「同一性の%」または「同一性のパーセンテージ」または「と少なくとも%同一の」とは、比較される2つの配列の間で同一であるヌクレオチドのまたはアミノ酸残基のパーセンテージを指すものと理解され、このパーセンテージは最良のアライメントの後に得られるものであり、このパーセンテージは純粋に統計学的なものであり、当該2つの配列間の差異はランダムにかつそれらの全長にわたって分布する。比較のための配列の最良のアライメントは、手作業の他に、Smith and Waterman(1981)(Ad.App.Math.2:482頁)の局所相同性アルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch(1970)(J.Mol.Biol.48:443頁)の局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman(1988)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444頁)の類似性検索方法を用いて、これらのアルゴリズムを使用するコンピューターソフトウェア(GAP、BESTFIT、FASTA and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)を用いて、オンラインアライメントソフトウェアMutalin(http://multalin.toulouse.inra.fr/multalin/multalin.html;1988、Nucl.Acids Res.、16(22)、10881~10890頁)を用いて、実施することができる。
本発明の意味において「機能的に等価な配列」とは、poIXファミリーのDNAポリメラーゼの配列、特に、配列番号1もしは配列番号2または配列番号7もしは配列番号8と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは少なくとも95%、97%、99%の同一性の配列、すなわちアミノ酸配列を有するおよび同一の機能的役割を有するTdTの配列を意味すると、理解される。
「機能的に等価な残基」とは、配列番号2または配列番号8と相同な配列を有し、同一の機能的役割を有する、poIXファミリーのDNAポリメラーゼの配列中の残基を意味すると理解される。したがって、「機能的に等価な位置」とは、相同配列における機能的に等価な残基の位置である。
機能的に等価な残基は、例えばオンラインアラインメントソフトウェアMutalin(http://multalin.toulouse.inra.fr/multalin/multalin.html;1988、Nucl.Acids Res.、16(22)、10881~10890頁)を用いて実施される配列アラインメントを使用して特定される。アラインメント後、機能的に等価な残基は、考慮される異なる配列上の相同な位置にある。配列のアラインメントおよび機能的に等価な残基の特定は、poIXファミリーのDNAポリメラーゼと種間バリアントを含めてその天然バリアントの間で行うことができる。
本発明の意味において「少なくとも1つのアミノ酸置換を含む」または「少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む」とは、バリアントは配列番号1または配列番号2の配列に関連して指示されるような1つ以上の置換または突然変異を有するが、バリアントは他の修飾、特に置換、欠失または付加を有することができる、ことを意味すると理解される。
本発明の意味において「少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む」とは、バリアントは配列番号7または配列番号8の配列に関連して指示されるような1つ以上の置換または突然変異を有するが、バリアントは他の修飾、特に置換、欠失または付加を有することができる、ことを意味すると理解される。
本発明は、poIXファミリーのDNAポリメラーゼのバリアント、特に、テンプレート鎖なしでDNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドを合成するために使用することができるTdTポリメラーゼの安定化バリアントである、TdTバリアントに関する。本発明のTdTバリアントによれば、修飾されたヌクレオチド、より具体的には3’O-可逆的に修飾されたヌクレオシドトリホスフェートを、ポリヌクレオチド合成の酵素ベースの方法において使用することが可能になる。特に、TdTバリアントは、切断型TdTバリアント、より具体的には、N末端切断型TdTバリアントである。
テンプレートフリー酵素的合成
ポリヌクレオチドのテンプレートフリー酵素的合成は、3’-O-ブロックされたデオキシヌクレオシドトリホスフェート(3’-O-ブロックされたdNTP)の組み込みにおいてより高い温度安定性またはより高い効率性などの改善された特性を有するように操作されたそのバリアントを含めて、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)などのテンプレートフリーポリメラーゼを使用する様々な既知のプロトコールによって行うことができる、例えば、Ybertら、国際特許公開第WO/2015/159023号;Ybertら、国際特許公開第WO/2017/216472号;Hyman、米国特許第5436143号;Hiattら、米国特許第5763594号;Jensenら、Biochemistry、57:1821~1832頁(2018);Mathewsら、Organic & Biomolecular Chemistry、DOI:0.1039/c6ob01371f(2016);Schmitzら、Organic Lett.、1(11):1729~1731頁(1999)である。
一部の実施形態では、酵素的DNA合成の方法は、図1に例示されるように、ヌクレオチドが各サイクルにおいて付加されるような、工程の反復サイクルを含む。イニシエーターポリヌクレオチド(100)が、例えば、固体支持体(102)に付着されて、用意され、これが遊離3’-ヒドロキシル基(103)を有する。イニシエーターポリヌクレオチド(100)(またはその後のサイクルで伸長されたイニシエーターポリヌクレオチド)に、イニシエーターポリヌクレオチド(100)(または伸長されたイニシエーターポリヌクレオチド)の3’末端上への3’-O-保護されたdNTPの酵素的組み込みにとって効果的な条件下で、3’-O-保護されたdNTPとTdTバリアント(104)とを添加する。この反応により、その3’-ヒドロキシルが保護された伸長したイニシエーターポリヌクレオチド(106)が生成される。
換言すれば、ポリヌクレオチドを合成する方法は、以下の工程を含む:
a.遊離3’-ヒドロキシルを有する3’末端ヌクレオチドを有する少なくとも1種のイニシエーターを用意する工程、
b.伸長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記少なくとも1種のイニシエーターを、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートおよび本発明によるTdTバリアントと接触させ、その結果、イニシエーターは、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートの組み込みによって伸長されて、3’-O-ブロックされた伸長断片を形成する工程、
c.伸長断片を脱ブロッキングして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成する工程、ならびに
d.伸長条件下で工程c.で得られた伸長断片を接触させることによって、ポリヌクレオチドが形成されるまで、工程b.および工程c.を繰り返す工程。
伸長したイニシエーターポリヌクレオチドが完成した配列を含有する場合、3’-O-保護基は除去されるか、または脱保護され、所望の配列が、当初のイニシエーターポリヌクレオチドから切断される。このような切断は、様々な1本鎖切断技法のうちのいずれかを使用して、例えば、切断可能なヌクレオチドまたは切断可能なリンカーを、当初のイニシエーターポリヌクレオチド内の所定の位置に挿入することによって、行うことができる。例示的切断可能なヌクレオチドまたはリンカーとしては、それらに限定されないが、(i)ウラシルDNAグリコシラーゼによって切断されるウラシルヌクレオチド;(ii)米国特許第5,739,386号に記載の、ニトロベンジルリンカーなどの光開裂性基;またはエンドヌクレアーゼVによって切断されるイノシン、が挙げられる。
一部の実施形態では、切断されたポリヌクレオチドは、遊離5’-ヒドロキシルを有することができる;他の実施形態では、切断されたポリヌクレオチドは、5’リン酸化末端を有することができる。伸長されたイニシエーターポリヌクレオチドが完成した配列を含有しない場合、3’-O-保護基が除去されて遊離3’-ヒドロキシル(103)を露出し、伸長されたイニシエーターポリヌクレオチドはヌクレオチド付加および脱保護の別のサイクルに供される。
本明細書で使用される場合、ヌクレオチドまたはヌクレオシドの3’-ヒドロキシルなどの特定の基に関しての「保護された」および「ブロックされた」という用語は、交換可能に使用され、特定の基に共有結合的に付着する部分であって、化学的または酵素的プロセス過程で当該基への化学変化を防止する、部分を意味するものである。特定の基は、ヌクレオシドトリホスフェートの3’-ヒドロキシルであるまたは3’-保護された(またはブロックされた)-ヌクレオシドトリホスフェートが組み込まれてある延長断片(または「延長中間体」)である場合は常に、防止される化学変化とは、酵素的カップリング反応による当該延長断片(または「延長中間体」)のさらなる、もしくは続いて起こる延長である。
一部の実施形態では、各合成工程において3’-O-可逆的にブロックされたdNTPの存在下でTdTを使用して、ヌクレオチドの整列配列をイニシエーター核酸にカップリングする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドを合成する方法は、(a)遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを用意する工程;(b)延長条件下で、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは延長中間体をTdTと、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートの存在下で反応させて3’-O-ブロックされた延長中間体を生成する工程;(c)延長中間体を脱ブロッキングして遊離3’-ヒドロキシルを備える延長中間体を生成する工程;および(d)ポリヌクレオチドが合成されるまで工程(b)および工程(c)を繰り返す工程を含む。時折、「延長中間体」は「伸長断片」とも呼ばれることもある。
一部の実施形態では、イニシエーターは、例えば、その5’末端により固体支持体に付着されたオリゴヌクレオチドとして用意される。また、上記の方法は、反応工程または延長工程後、ならびに脱ブロッキング工程後に、洗浄工程を含む場合もある。例えば、反応させる工程は、所定のインキュベーション期間または反応時間後に、例えば洗浄することによって、非組み込みヌクレオシドトリホスフェートを除去するサブ工程を含む場合がある。そのような所定のインキュベーション期間または反応時間は、数秒、例えば30秒~数分、例えば30分とすることができる。
上記方法はまた、反応工程または延長工程後、ならびに脱ブロッキング工程後に、キャッピング工程ならびに洗浄工程を含むことができる。上述のように、一部の実施形態では、キャッピング工程を含めることができ、その場合、非延長遊離3’-ヒドロキシルをキャッピングされた鎖のさらなるいかなる延長をも防止する化合物と反応させる。一部の実施形態では、そのような化合物は、ジデオキシヌクレオシドトリホスフェートとすることができる。他の実施形態では、遊離3’-ヒドロキシルを備える非延長鎖は、3’-エキソヌクレアーゼ活性、例えば、Exo Iを用いてそれらを処理することによって分解することができる。例えば、Hymanの米国特許第5436143号を参照されたい。同様に、一部の実施形態では、脱ブロッキングすることができない鎖は、鎖を除去するようにまたはさらなる延長に対して鎖を不活性となるように処理することができる。
ポリヌクレオチドの連続合成を含む一部の実施形態では、キャッピングが等モル量の複数のポリヌクレオチドの生成を防止する場合があるので、キャッピング工程は望ましくない場合がある。キャッピングがない場合、配列には欠失エラーの均一な分布があることになるが、複数のポリヌクレオチドのそれぞれが等モル量で存在することになる。このことは、非延長断片がキャッピングされる場合にはあてはまらないと思われる。
一部の実施形態では、延長工程または伸長工程向けの反応条件は、以下を含むことができる:2.0μM精製TdT;125~600μM 3’-O-ブロックされたdNTP(例えば、3’-O-NH-ブロックされたdNTP);約10~約500mMカコジル酸カリウムバッファー(6.5と7.5の間のpH)、および約0.01から約10mMまでの二価カチオン(例えば、CoC1またはMnC1)、この場合、伸長反応は、反応体積50μL中、室温~45℃の範囲内の温度で3分間実施することができる。3’-O-ブロックされたdNTPが3’-O-NH-ブロックされたdNTPである実施形態では、脱ブロッキング工程のための反応条件は、以下を含むことができる:700mM NaNO;1M酢酸ナトリウム(酢酸を用いて4.8~6.5の範囲のpHに調整)、この場合、脱ブロッキング反応は、体積50μL中、室温~45℃の範囲内の温度で30秒間~数分間実施することができる。
特定の適用に応じて、脱ブロッキング工程および/または切断工程は、様々な化学的または物理的条件、例えば、光、熱、pH、特定の化学結合を切断することができる酵素などの特異的試薬の存在を含むことができる。3’-O-ブロッキング基および相応する脱ブロッキング条件を選択する上での指針は、参照することにより組む込まれる以下の参考文献に見出すことができる:米国特許第5808045号;米国特許第8808988号;国際特許公開第WO91/06678号;および下に引用の参考文献。一部の実施形態では、切断剤(ここでも、脱ブロッキング試薬または脱ブロッキング剤とも呼ばれることもある)は、例えば、ジチオスレイトール(DTT)などの化学的切断剤である。代替の実施形態では、切断剤は、3’-ホスフェートブロッキング基を切断することができる、例えば、ホスファターゼなどの酵素的切断剤とすることができる。脱ブロッキング剤の選択が、使用される3’-ヌクレオチドブロッキング基のタイプに、1つまたは複数のブロッキング基が使用されているかどうか、イニシエーターが、穏和な処理を必要とする生細胞もしくは生物体にまたは固体支持体等に付着されるかどうかに左右されることは当業者には理解されるであろう。例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)などのホスフィンを使用して3’O-アジドメチル基を切断することができる、パラジウム錯体を使用して3’O-アリル基を切断することができる、または、ナトリウム亜硝酸塩を使用して3’O-アミノ基を切断することができる。特定の実施形態では、切断反応には、TCEP、パラジウム錯体またはナトリウム亜硝酸塩が関与する。
上述の通り、一部の実施形態では、直交性の脱ブロッキング条件を使用して除去することができる2種以上のブロッキング基を用いることが望ましい。以下のブロッキング基の例示的対を、上記のものなどのパラレル合成実施形態で使用することができる。他のブロッキング基の対または2つ超を含有する基が、本発明のこれらの実施形態での使用に利用可能である場合もある、と理解される。
Figure 2024541312000001
生細胞でオリゴヌクレオチドを合成するには、穏和な脱ブロッキングまたは脱保護の条件、すなわち細胞膜を破壊せず、タンパク質を変性させず、キーとなる細胞機能に干渉しない等の条件が必要である。一部の実施形態では、脱保護条件は、細胞生存と適合性である生理的条件の範囲内である。そのような実施形態では、酵素的脱保護は、生理的条件下で実施することができるので望ましい。一部の実施形態では、酵素的に除去可能な特異的ブロッキング基が、その除去に特異的な酵素と関連付けられる。例えば、エステルベースまたはアシルベースのブロッキング基は、アセチルエステラーゼなどのエステラーゼまたは類似の酵素を用いて除去することができ、ホスフェートブロッキング基は、T4ポリヌクレオチドキナーゼなどの3’ホスファターゼを用いて除去することができる。例として、3’-O-ホスフェートは、100mM トリス-HCl(pH6.5)、10mM MgC1、5mM 2-メルカプトエタノール、および1単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼなどの溶液での処理によって除去することができる。反応は、37℃の温度で1分間進行する。
「3’-ホスフェートブロックされた」または「3’-ホスフェート保護された」ヌクレオチドとは、3’位にてのヒドロキシル基がホスフェート含有部分の存在によってブロックされているヌクレオチドを指す。本発明による3’-ホスフェートブロックされたヌクレオチドの例は、ヌクレオチジル-3’-ホスフェートモノエステル/ヌクレオチジル-2’,3’-環状ホスフェート、ヌクレオチジル-2’-ホスフェートモノエステルおよびヌクレオチジル-2’または3’-アルキルリン酸ジエステル、ならびにヌクレオチジル-2’または3’-ピロリン酸である。チオホスフェートまたはそのような化合物の他のアナログも使用することができる、ただし、こういった代用が脱リン酸化を妨げず、ホスファターゼによって遊離3’-OHがもたらされることを条件とする。
3’-O-エステル保護されたdNTPまたは3’-O-ホスフェート保護されたdNTPの合成および酵素的脱保護のさらなる例は、以下の文献に記載されている:Canardら、Proc.Natl.Acad.Sci.、92:10859~10863頁(1995);Canardら、Gene、148:1~6頁(1994);Cameronら、Biochemistry、16(23):5120~5126頁(1977);Rasolonjatovoら、Nucleosides & Nucleotides、18(4&5):1021~1022頁(1999);Ferreroら、Monatshefte fur Chemie、131:585~616頁(2000);Taunton-Rigbyら、J.Org.Chem.、38(5):977~985頁(1973);Uemuraら、Tetrahedron Lett.、30(29):3819~3820頁(1989);Beckerら、J.Biol.Chem.、242(5):936~950頁(1967);Tsien、国際特許公開第WO1991/006678号。
本明細書で使用される場合、「イニシエーター」(または「イニシエーティング断片」、「イニシエーター核酸」、「イニシエーターオリゴヌクレオチド」等のような等価な用語)は、TdTなどのテンプレートフリーポリメラーゼによってさらに伸長させることができる、遊離3’末端を備える短いオリゴヌクレオチド配列を指す。一実施形態では、イニシエーティング断片はDNAイニシエーティング断片である。代替の実施形態では、イニシエーティング断片はRNAイニシエーティング断片である。一部の実施形態では、イニシエーティング断片は、3から100個の間のヌクレオチド、特に、3から20個の間のヌクレオチドを保有する。一部の実施形態では、イニシエーティング断片は一本鎖である。代替の実施形態では、イニシエーティング断片は二本鎖である。特定の実施形態では、5’-一級アミンを用いて合成したイニシエーターオリゴヌクレオチドを、製造業者のプロトコールを使用して磁気ビーズに共有結合的に連結することができる。同様に、3’-一級アミンを用いて合成したイニシエーターオリゴヌクレオチドを、製造業者のプロトコールを使用して磁気ビーズに共有結合的に連結することができる。本発明の実施形態と共に使用に適した様々な他の付着化学は、当技術分野で周知されており、例えば、Integrated DNA Technologies brochure、「Strategies for Attaching Oligonucleotides to Solid Supports」、第6巻(2014);Hermanson、Bioconjugate Techniques、第2版(Academic Press、2008);および類似の文献である。
本発明において用いられる3’-O-ブロックされたdNTPの多くは、商業ベンダーから購入してもよく、または公開された技法、例えば、米国特許第7057026号;国際特許公開第WO2004/005667号、同第WO91/06678号;Canardら、Gene(上で引用);Metzkerら、Nucleic Acids Research、22:4259~4267頁(1994);Mengら、J.Org.Chem.、14:3248~3252頁(3006);米国特許公開第2005/037991号を使用して合成してもよい。一部の実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、プリン塩基またはピリミジン塩基と、共有結合的に付着した除去可能な3’-OHブロッキング基を有するリボースまたはデオキシリボースの糖部分とを含む修飾されたヌクレオチド分子またはヌクレオシド分子を含み、したがって、3’炭素原子は構造:
-O-Z
の基を付着している
[式中、-Zは、-C(R’)-O-R’’、-C(R’)-N(R’’)、-C(R’)-N(H)R’’、-C(R’)-S-R’’および-C(R’)-Fのうちのいずれかであり、ここで、各R’’は、除去可能な保護基であるかまたはその一部であり;各R’は、独立して、水素原子、アルキル、置換されたアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式、アシル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシもしくはアミドの各基、または結合基を通して付着された検出可能な標識であり;ただし、一部の実施形態では、そのような置換基は、10個までの炭素原子および/または5個までの酸素もしくは窒素のヘテロ原子を有することを条件とし;または、(R’)は、式=C(R’’’)の基を表し、ここで、各R’’’は、同一でも異なっていてもよくかつ水素原子およびハロゲン原子ならびにアルキル基を含む群から選択され、ただし、一部の実施形態では、各R’’’のアルキルは1から3個までの炭素原子を有することを条件とし;ならびに、ここで、分子が反応して、各R’’がHと交換されている中間体か、またはZが-(R’)-Fである場合は、FがOH、SHもしくはNH、好ましくはOHと交換されている中間体をもたらし、この中間体は水性条件下で解離して遊離3’-OHを備える分子を与える;ただし、Zが-C(R’)-S-R’’である場合、両方のR’基ともHではないことを条件とする。ある特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオシドのR’は、アルキルまたは置換されたアルキルであり、ただし、そのようなアルキルまたは置換されたアルキルは、1から10個までの炭素原子と0から4個までの酸素または窒素のヘテロ原子を有することを条件とする。ある特定の実施形態では、修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオシドの-Zは、式-C(R’)-N3である。ある特定の実施形態では、Zはアジドメチル基である]。
一部の実施形態では、Zは、200以下の分子量を有するヘテロ原子を含むまたは含まない切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、100以下の分子量を有するヘテロ原子を含むまたは含まない切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、50以下の分子量を有するヘテロ原子を含むまたは含まない切断可能な有機部分である。一部の実施形態では、Zは、200以下の分子量を有するヘテロ原子を含むまたは含まない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、100以下の分子量を有するヘテロ原子を含むまたは含まない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、50以下の分子量を有するヘテロ原子を含むまたは含まない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、200以下の分子量を有する酵素的に切断可能なエステル基である。他の実施形態では、Zは、3’-ホスファターゼによって除去可能なホスフェート基である。一部の実施形態では、以下の3’-ホスファターゼのうちの1種以上を、製造業者の推奨プロトコールを用いて使用することができる:T4ポリヌクレオチドキナーゼ、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ、組換えエビアルカリホスファターゼ(例えば、New England Biolabs、Beverly、MAから入手可能)。
さらなる特定の実施形態では、3’-ブロックされたヌクレオチドトリホスフェートは、3’-O-アジドメチル、3’-O-NHまたは3’-O-アリル基のいずれかによってブロックされている。他の実施形態では、3’-ブロックされたヌクレオチドトリホスフェートは、3’-O-アジドメチル、3’-O-NH2のいずれかによってブロックされている。
一部の実施形態では、本発明の3’-O-ブロッキング基には、3’-O-メチル、3’-O-(2-ニトロベンジル)、3’-O-アリル、3’-O-アミン、3’-O-アジドメチル、3’-O-tert-ブトキシエトキシ、3’-O-(2-シアノエチル)、および3’-O-プロパルギルが含まれる。
TdTバリアント
本発明の第1の態様によれば、本発明によるTdTバリアントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に、あるアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。特に、本発明によるTdTバリアントは、(i)テンプレートなしで核酸断片を合成することができ、(ii)3’-O-修飾されたヌクレオチドを核酸断片へと組み込むことができる。
特定の実施形態では、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される2つ以上のアミノ酸置換、好ましくは少なくとも2つまたは3つを含むことができる。前記TdTバリアントは、DNA鎖および/またはRNA鎖を合成することができる。
別の実施形態では、本発明によるTdTバリアントは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有し、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に、あるアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
ここで、これらの位置は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する前記TdTバリアントは、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも1個の未定のアミノ酸を含む。配列中の未定のアミノ酸は、配列番号1において「X」により指示される。
本発明の第2の態様によれば、本発明によるTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号2と100%未満同一のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる第1の群から選択される位置にまたは前記第1の群の各位置の機能的に等価な位置に置換アミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。特に、本発明によるTdTバリアントは、(i)テンプレートなしで核酸断片を合成することができ、(ii)3’-O-修飾されたヌクレオチドを核酸断片へと組み込むことができる。
特定の実施形態では、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される2つ以上のアミノ酸置換、好ましくは少なくとも2つまたは3つを含むことができる。前記TdTバリアントは、DNA鎖および/またはRNA鎖を合成することができる。
別の実施形態では、本発明によるTdTバリアントは、配列番号1と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号1と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号1と100%未満同一のアミノ酸配列を有し、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置にまたは前記第1の群の各位置の機能的に等価な位置に置換アミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。配列番号1と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有する前記TdTバリアントは、23位、262位、264位および298位からなる第1の群から選択される位置にまたは前記第1の群の各位置の機能的に等価な位置に少なくとも1個の未定のアミノ酸を含む。配列中の未定のアミノ酸は、配列番号1において「X」により指示される。
本発明の第2の態様によれば、本発明によるTdTバリアントは、
配列番号8と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号8と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号8と100%未満同一のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる第2の群から選択される位置にまたは前記第2の群の各位置の機能的に等価な位置に置き換えアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含み、ここで、これらの位置は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。特に、本発明によるTdTバリアントは、(i)テンプレートなしで核酸断片を合成することができ、(ii)3’-O-修飾されたヌクレオチドを核酸断片へと組み込むことができる。
特定の実施形態では、前記アミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる第2の群から選択される2つ以上のアミノ酸置き換え、好ましくは少なくとも2つまたは3つを含むことができる。前記TdTバリアントは、DNA鎖および/またはRNA鎖を合成することができる。
別の実施形態では、本発明によるTdTバリアントは、配列番号7と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号7と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号7と100%未満同一のアミノ酸配列を有し、前記アミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる群から選択される位置にまたは前記第1の群の各位置の機能的に等価な位置に置き換えアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含み、ここで、これらの位置は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。配列番号7と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有する前記TdTバリアントは、4位、243位、245位および279位からなる第2の群から選択される位置にまたは前記第2の群の各位置の機能的に等価な位置に少なくとも1個の未定のアミノ酸を含む。配列中の未定のアミノ酸は、配列番号7において「X」により指示される。
別の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、C23、V262、T264およびI298からなる群から選択される一残基に相当する位置に、あるアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。例えば、残基C23は置換前の23位にてのシステインアミノ酸に相当する。
別の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、C23、V262、T264およびI298からなる群から選択される一残基に相当する位置にまたは前記群の各位置の機能的に等価な位置に置換アミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。例えば、残基C23は置換前の23位にてのシステインアミノ酸に相当する。
別の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、C4、V243、T245およびI279からなる群から選択される一残基に相当する位置にまたは前記群の各位置の機能的に等価な位置に置き換えアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含み、ここで、これらの位置は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。例えば、残基C4は置換前の23位にてのシステインアミノ酸に相当する。先の実施形態のいずれか一つによれば、上記の置換は、柔軟なループL1 - dNTPとiDNAの結合に関与するタンパク質領域 - 内に位置するTdT残基に相当するが、また、触媒ドメインのコア - 反応の化学段階(ヌクレオチジルエキソ転移酵素活性)に関与するタンパク質領域 - 内に位置するTdT残基にも、および、C末端ドメイン - iDNA結合とTdTの全体的なフォールディングに関与するタンパク質領域 - に位置するTdT残基にも、相当する。特定の位置、特に柔軟なループL1における前記置換によって、iDNAのTdT 3’OHの間のより良好なアライメントに起因して、dNTPのアルファホスフェートに対する反応収率が改善される。
一部の実施形態では、本発明によるTdTバリアントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列または配列番号2に記載の機能的に等価な配列を含み、前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に、あるアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている。
本発明の文脈において、TdTバリアントは任意の種由来であってもよく、キメラタンパク質であってもよい。「キメラタンパク質」とは、バリアントの一部が少なくとも異なる2種由来であることを意味する。前記キメラタンパク質は、ある種のタンパク質の1つ以上の所定の配列と、poIXファミリーのメンバーである、特にTdTである第2の種の少なくとも1つの所定の別の配列との付加によって、特に融合またはコンジュゲーションによって形成される。好ましくは、TdTバリアントはキメラタンパク質であり、より好ましくは、キメラタンパク質は異なる2種由来の一部、特にマウス由来の所定の配列とウシ由来の所定の配列とを含む。
特定の実施形態では、本発明によるTdTバリアントは、配列番号1にまたは配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%の同一性または相同性、好ましくは、配列番号1によるまたは配列番号2の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%および100%未満の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
別の特定の実施形態では、本発明によるTdTバリアントは、配列番号3、配列番号4および配列番号5で構成される群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%の同一性または相同性、より好ましくは、配列番号3、配列番号4および配列番号5で構成される群から選択される配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%および100%未満の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態では、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置にての置換アミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換は、R、V、A、L、K、Q、TおよびGからなる群から選択される。より好ましくは、置換されたアミノ酸は298位にあり、指示される位置は配列番号1または配列番号2とのアラインメントによって決定される。
特定の実施形態では、4位、243位、245位および279位からなる群から選択される位置にての置き換えアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置き換えは、R、V、A、L、K、Q、TおよびGからなる群から選択される。より好ましくは、置き換えられたアミノ酸は279位にあり、指示される位置は配列番号7または配列番号8とのアラインメントによって決定される。
一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも2つの置換を含む。好ましくは、第1の置換は298位にあり、第2の置換は23位、262位、および264位からなる群から選択される位置にある。
一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも2つの置換を含む。好ましくは、第1の置換は298位にあり、第2の置換は23位、262位、および264位からなる群から選択される位置にある。I
一部の実施形態では、配列番号7または配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、4位、243位、245位、および279位からなる群から選択される位置に少なくとも2つの置き換えを含む。好ましくは、第1の置換は279位にあり、第2の置換は4位、243位、および245位からなる群から選択される位置にある。
特定の実施形態では、少なくとも2つの置換は、R、V、A、L、K、Q、TおよびGからなる群から選択される。
特定の実施形態では、少なくとも2つの置き換えは、R、V、A、L、K、Q、TおよびGからなる群から選択される。一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2に記載のアミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも3つの置換を含む。好ましくは、第1の置換は298位にあり、第2の置換は23位または264位にあり、第3の置換も同様に23位または264位にある。
一部の実施形態では、配列番号1または配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも3つの置換を含む。好ましくは、第1の置換は298位にあり、第2の置換は23位または264位にあり、第3の置換も同様に23位または264位にある。
一部の実施形態では、配列番号7または配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、4位、243位、245位、および279位からなる群から選択される位置に少なくとも3つの置き換えを含む。好ましくは、第1の置き換えは279位にあり、第2の置き換えは4位または245位にあり、第3の置き換えも同様に4位または245位にある。
特定の実施形態では、3つの置換は、R、V、A、L、K、Q、TおよびGからなる群から選択される。
特定の実施形態では、3つの置き換えは、R、V、A、L、K、Q、TおよびGからなる群から選択される。
特定の実施形態では、配列番号2に記載の本発明によるTdTバリアントのアミノ酸配列は、I298V/T/Lから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。「I298V/T/L」とは、これは、イソロイシンがバリン(V)、スレオニン(T)およびロイシン(L)から選択されるアミノ酸によって298位で置換されていることを意味する。好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸置換はI298/Vである。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、I298V/T/Lから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、I279V/T/Lから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む。
別の特定の実施形態では、配列番号2に記載のTdTバリアントのアミノ酸配列は、T264R/K/Qから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。「T264R/K/Q」とは、これは、スレオニンがアルギニン(R)、ロイシン(K)およびグルタミン(Q)から選択されるアミノ酸によって264位で置換されていることを意味する。好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸置換はT264/Rである。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、T264R/K/Qから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、T245R/K/Qから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む。
別の特定の実施形態では、配列番号2に記載のTdTバリアントのアミノ酸配列は、V262A/T/Gから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。「V262A/T/G」とは、これは、バリンがアラニン(A)、スレオニン(T)およびグリシン(G)から選択されるアミノ酸によって262位で置換されていることを意味する。好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸置換はV262Aである。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、V262A/T/Gから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、V243A/T/Gから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む。
別の特定の実施形態では、配列番号2に記載のTdTバリアントのアミノ酸配列は、C23A/Tから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。「C23A/T」とは、これは、システインがアミノ酸アラニン(A)またはスレオニン(T)によって23位で置換されていることを意味する。好ましくは、少なくとも1つのアミノ酸置換はC23Aである。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C23A/Tから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C4A/Tから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む。
一部の実施形態では、配列番号2に記載のTdTバリアントのアミノ酸配列は、C23A/T、V262A/T/G、T264R/K/QおよびI298V/T/Lから選択される少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、好ましくは、2つのアミノ酸置換は、T264R/K/QおよびI298V/T/L、またはC23A/TおよびI298V/T/L、またはV262A/T/GおよびI298V/T/Lである。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C23A/T、V262A/T/G、T264R/K/QおよびI298V/T/Lから選択される少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、好ましくは、2つのアミノ酸置換は、T264R/K/QおよびI298V/T/L、またはC23A/TおよびI298V/T/L、またはV262A/T/GおよびI298V/T/Lである。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C4A/T、V243A/T/G、T245R/K/QおよびI279V/T/Lから選択される少なくとも2つのアミノ酸置換を含み、好ましくは、2つのアミノ酸置換は、T245R/K/QおよびI279V/T/L、またはC4A/TおよびI279V/T/L、またはV243A/T/GおよびI279V/T/Lである。
他の好ましい実施形態では、配列番号2に記載のTdTバリアントのアミノ酸配列は、C23A/T、およびT264R/K/Q、およびI298V/T/Lである3つのアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C23A/T、およびT264R/K/Q、およびI298V/T/Lである3つのアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C4A/T、およびT245R/K/Q、およびI279V/T/Lである3つのアミノ酸置換を含む。
一部の実施形態では、前記少なくとも1つのアミノ酸置換は298位にある。
一部の実施形態では、前記少なくとも1つのアミノ酸置き換えは279位にある。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、23位、262位、264位、および298位からなる群から選択される位置に少なくとも2つの置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、4位、243位、245位、および279位からなる群から選択される位置に少なくとも2つの置き換えを含む。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも3つの置換を含む。
一部の実施形態では、配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、4位、243位、245位、および279位からなる群から選択される位置に少なくとも3つの置き換えを含む。
好ましい実施形態では、本発明のTdTバリアントは、キメラバリアントであり、下の表1に列挙されている。
Figure 2024541312000002
一部の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号3、配列番号4、配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくはTdTバリアントは配列番号3または配列番号5に記載のアミノ酸配列を有し、より好ましくはTdTバリアントは配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する。
一部の実施形態では、TdTバリアントは、配列番号9、配列番号10、配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくはTdTバリアントは配列番号9または配列番号11に記載のアミノ酸配列を有し、より好ましくはTdTバリアントは配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する。
一部の実施形態では、配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むTdTバリアントは、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であり、好ましくはそれらと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一であり、かつ必要に応じてそれらと100%未満同一である。
配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含むTdTバリアントは、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一であり、好ましくはそれらと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一であり、かつ必要に応じてそれらと100%未満同一である。
本発明による前記特定のTdTバリアントによって、DNA合成の質が改善され、次いで技術的問題が解決される。特に、配列番号3、配列番号4および配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントの欠失率と比較してそれぞれ、工程当たり0.55%から0.36%、0.32%および0.40%まで、アラニンについて欠失率の減少を有する。同じTdTバリアントによって、全体的な合成エラー率がそれぞれ工程当たり0.04%、0.06%および0.06%だけ減少する。したがって、本発明による前記特定のTdTバリアントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントと比較して、より安定である。
また特に、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号9、配列番号10または配列番号11と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を有するTdTバリアントは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントまたは配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントの欠失率と比較してそれぞれ、工程当たり0.55%から0.36%、0.32%および0.40%まで、アラニンについて欠失率の減少を有する。同じTdTバリアントによって、全体的な合成エラー率がそれぞれ工程当たり0.04%、0.06%および0.06%だけ減少する。したがって、本発明による前記特定のTdTバリアントは、配列番号2に記載のまたは配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントと比較して、より安定である。
別の実施形態では、本発明は、poIXファミリーのDNAポリメラーゼのバリアントを、特に本発明によるテンプレート鎖なしで核酸分子を合成することができるTdTをコードする核酸に関する。本発明はまた、本発明による核酸の発現カセットに関する。本発明は、本発明による核酸または発現カセットを含むベクターにさらに関する。ベクターは、プラスミドから選択しても、ウイルスベクターから選択してもよい。
DNAポリメラーゼバリアントをコードする核酸は、DNA(cDNAまたはgDNA)であっても、RNAであっても、この2つの混合物であってもよい。上記核酸は、一本鎖形態であっても、デュプレックス形態であっても、この2つの形態の混合物であってもよい。上記核酸は、例えば、修飾された結合、修飾されたプリン塩基もしくはピリミジン塩基、または修飾された糖を含む修飾されたヌクレオチドを含むことができる。上記核酸は、化学合成、組換え、突然変異誘発等を含めて、当業者に既知の方法のいずれかによって調製することができる。
発現カセットは、本発明によるTdTバリアントの発現に必要な全てのエレメント、特に、宿主細胞における転写および翻訳に必要なエレメントを含む。宿主細胞は、原核生物のものであっても真核生物のものであってもよい。特に、発現カセットは、プロモーターおよびターミネーターを、必要に応じて増幅因子を含む。プロモーターは、原核生物のものであっても真核生物のものであってもよい。以下は好ましい原核生物プロモーターの例である:Lacl、LacZ、pLacT、ptac、pARA、pBAD、バクテリオファージT3もしくはT7のRNAポリメラーゼプロモーター、ポリヒドリンプロモーター、ラムダファージのPRもしくはPLプロモーター。以下は好ましい真核生物プロモーターの例である:CMV早期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、SV40早期または後期プロモーター、マウスのメタロチオネイン-Lプロモーター、およびある特定のレトロウイルスのLTR領域。一般に、適正なプロモーターの選択に関して、当業者は、Sambrookら(1989)による研究をまたはFullerら(1996;Immunology in Current Protocols in Molecular Biology)により記載の技法を有利に参照することができる。
本発明は、本発明によるTdTバリアントをコードする核酸または発現カセットを担持するベクターに関する。ベクターは、発現ベクターであることが好ましい、すなわち、ベクターは、宿主細胞におけるバリアントの発現に必要なエレメントを含む。宿主細胞は、原核生物、例えば大腸菌(E.coli)であっても、または真核生物であってもよい。真核生物は、酵母(例えば、P.パストリス(P.pastoris)またはK.ラクチス(K.lactis))もしくは真菌(例えばアスペルギルス(Aspergillus)属のもの)などの下等真核生物であっても、昆虫細胞(例えばSf9またはSf21)、哺乳動物細胞もしくは植物細胞などの高等真核生物であってもよい。細胞は、哺乳動物細胞、例えばCOS(ミドリザル細胞株)(例えば、COS 1(ATCC CRL-1650)、COS 7(ATCC CRL-1651)、CHO(米国特許第4,889,803号;同第5,047,335号、CHO-K1(ATCC CCL-61))、マウスの細胞およびヒト細胞であってもよい。特定の実施形態では、細胞は、非ヒトであり非胚性である。ベクターは、プラスミド、ファージ、ファージミド、コスミド、ウイルス、YAC、BAC、アグロバクテリウム(Agrobacterium)pTiプラスミド等とすることができる。ベクターは好ましくは、複製起点、多重クローニング部位および選択遺伝子から選択される1つ以上のエレメントを含むことができる。好ましい実施形態では、ベクターはプラスミドである。以下は原核生物ベクターの非網羅的例である:pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen)、pbs、pD10、ファージスクリプト、psiX174、pbluescrip SK、pbsks、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(Stratagene);ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pBR322およびpRIT5(Pharmacia)、pET(Novagen)。以下は真核生物ベクターの非網羅的例である:pWLNEO、pSV2CAT、pPICZ、pcDNA3.1(+)Hyg(Invitrogen)、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene);pSVK3、pBPV、pCI-neo(Stratagene)、pMSG、pSVL(Pharmacia);およびpQE-30(QLAexpress)。ウイルスベクターは、非網羅的様式でアデノウイルス、AAV、HSV、レンチウイルス等である。好ましくは、発現ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターである。
本発明によるTdTバリアントをコードする配列は、シグナルペプチドを含む場合もあれば含まない場合もある。上記配列がシグナルペプチドを含まない場合には、メチオニンを必要に応じてN末端に付加することができる。別の代替形態では、異種シグナルペプチドを導入してもよい。この異種シグナルペプチドは、大腸菌などの原核生物に由来しても、真核生物、特に哺乳動物細胞、昆虫細胞、または酵母に由来してもよい。
本発明は、細胞を形質転換するまたはトランスフェクションするための、本発明による、発現カセットのまたはベクターのポリヌクレオチドの使用に関する。本発明は、TdTバリアントをコードする核酸、発現カセットまたはベクターを含む宿主細胞に、および本発明によるTdTバリアントを生成するためのその使用に関する。「宿主細胞」という用語は、本細胞の培養からまたは増殖から生じる娘細胞を包含する。特定の実施形態では、細胞は、非ヒトであり非胚性である。
本発明はまた、本発明のTdTバリアントを生成するための方法にも関し、本発明によるポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターによる細胞の形質転換またはトランスフェクション;トランスフェクトされた/形質転換された細胞を培養すること;および細胞により産生されたTdTバリアントを回収すること、を含む。代替的な実施形態では、本発明によるTdTバリアントを生成するための方法は、本発明によるポリヌクレオチド、発現カセットまたはベクターを含む細胞を用意すること;トランスフェクトされた/形質転換された細胞を培養すること;および細胞により産生されたTdTバリアントを回収することを含む。特に、細胞は、バリアントをコードする核酸によって一過性のまたは安定な様式で形質転換されても/トランスフェクトされてもよい。この核酸は、エピソームの形態でまたは染色体の形態で細胞に含めることができる。組換えタンパク質を生成するための方法は、当業者には周知されている。
TdTバリアントは、共有結合または非共有結合;アミノ酸タグ(例えば、ポリ-アミノ酸タグ、ポリ-Hisタグ、6Hisタグ等);化学化合物(例えば、ポリエチレングリコール);タンパク質-タンパク質結合ペア(例えば、ビオチン-アビジン);アフィニティーカップリング;捕捉プローブ;またはこれらの任意の組み合わせを始めとするリンカー部分に動作可能に連結することができる。リンカー部分は、TdTバリアントとは別であってもよく、TdTバリアントの一部であってもよい。本発明の修飾されたTdTバリアントと共に使用するための例示的Hisタグは、MASSHHHHHHSSGSEKKIS - (配列番号6)である。タグ-リンカー部分は、TdTバリアントのヌクレオチド結合活性または触媒活性に干渉せず、TdTバリアントの容易な精製および分離を可能にする。
本発明によるTdTバリアントは、テンプレート鎖なしでの核酸の合成に特に有利である。より具体的には、本発明によるバリアントは、天然ヌクレオチドよりも大きな立体障害を呈する修飾されたヌクレオチドの収容により適切である、より柔軟なループ1を有する。また、配列番号2のT264R突然変異または配列番号8のT245Rによって、TdTとDNAイニシエーターとの間の相互作用が改善される。
したがって、本発明はまた、3’-OH修飾されたヌクレオチドから、テンプレート鎖なしで核酸分子を合成するための、本発明によるTdTバリアントの、特に出願第WO2016034807号に記載のものの、使用にも関する。
別の態様では、本発明は、特にテンプレート鎖なしでの核酸分子の酵素的合成のためのキットに関し、前記キットは:
a.上記実施形態のいずれか一つによる少なくとも1種のTdTバリアント、
b.少なくとも1種の3’-O-修飾されたヌクレオシドトリホスフェート、および
c.必要に応じて少なくとも1種のイニシエーター
を含む。
特に、修飾されたヌクレオシドトリホスフェートは保護基である。この保護基によって、3’-OHをブロックして/保護して、その結果、その他のヌクレオシドとの反応を防止することを可能にする。したがって、特に、キットは、少なくとも1種の3’-O-保護されたヌクレオシドトリホスフェートを含む。
特定の実施形態では、本発明のキットは、少なくとも2種のTdTバリアント、好ましくは少なくとも3種のTdTバリアントを含む。キットが2種以上のTdTバリアントを含む場合、キット中のTdTバリアントは互いに異なる可能性がある。例えば、キットは本発明のTdTバリアントの混合物であってもよい。
一部の実施形態では、キットは、配列番号3と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号3と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号3と100%未満同一のアミノ酸配列を含む第1のTdTバリアントと、配列番号5と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号5と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号5と100%未満同一のアミノ酸配列を含む第2のTdTバリアントと、を含む。
より好ましい実施形態では、本発明のキットは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む第1のTdTバリアントと、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む第2のバリアントとを含む。
一部の実施形態では、本発明のキットは、配列番号9と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号9と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号9と100%未満同一のアミノ酸配列を含む第1のTdTバリアントと、配列番号11と少なくとも70%同一の、好ましくは配列番号11と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一の、必要に応じて配列番号11と100%未満同一のアミノ酸配列を含む第2のTdTバリアントと、を含む。
より好ましい実施形態では、本発明のキットは、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む第1のTdTバリアントと、配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む第2のバリアントと、を含む。
本発明の前記TdTバリアントおよび前記キットは、テンプレート鎖なしでのポリヌクレオチド、すなわち核酸分子の酵素的合成に特に適切である。
したがって、本発明はまた、テンプレート鎖なしでの核酸分子の酵素的合成のための方法にも関し、本方法によれば、プライマー鎖を、少なくとも1種のヌクレオチドと、好ましくは3’-OH修飾されたヌクレオチドと、本発明によるTdTバリアントの存在下で接触させる。
したがって、本発明は、必要に応じて所定の配列を有するポリヌクレオチドを合成する方法に関し、方法は:
a.遊離3’-ヒドロキシルを有する3’-末端ヌクレオチドを有する少なくとも1種のイニシエーターを用意する工程、
b.伸長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する前記少なくとも1種のイニシエーターを、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートおよび上記実施形態のいずれか1つによるTdTバリアントと接触させ、その結果、前記少なくとも1種のイニシエーターは、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートの組み込みによって伸長されて、3’-O-ブロックされた伸長断片を形成する工程、ならびに
c.伸長断片を脱ブロッキングして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成する工程、ならびに
d.伸長条件下で工程c.で得られた伸長断片を接触させることによって、ポリヌクレオチドが形成されるまで、工程b.および工程c.を繰り返す工程、
を含む。
好ましい実施形態では、本発明によるTdTバリアントは、参照により本明細書に組み込まれる出願第WO2015/159023号に記載されている合成方法を実施するために使用することができる。
本発明の他の特徴および利点は、もちろん非限定的なものである以下の実施例および結果からより明らかになるであろう。
実施例1 - TdTバリアントの構築、発現およびスクリーニング
TdTバリアントの構築
本発明のTdTバリアントは、Miyazaki K.MEGAWHOP cloning:a method of creating random mutagenesis libraries via megaprimer PCR of whole plasmids.Methods Enzymol.2011;498:399~406頁.Doi:10.1016/B978-0-12-385120-8.00017-6.PMID:21601687により開示されたMEGAWHOPクローニング法を使用して創出した。
メガプライマーを、通常のPCR増幅および分子生物学技法に従って、少なくとも1つのプライマーは変異原性(縮重コドンまたは事前設計の突然変異を含有する)である一対のプライマーを用いるPCRによって作製した。精製メガプライマーを、第2のPCR工程でTDT環状骨格プラスミド(pet28ベクター)と組み合わせた。DpnIでの消化の後、PCR生成物をE.Cloni 10G細胞(Lucigen)にエレクトロポレーションした。形質転換体を、50mg/Lカナマイシンを補充した2YT寒天プレート上で選択した。TdTバリアントをコードするプラスミドを、形質転換プレートのバクテリアカーペットから、または一晩の液体培養物(0.5%グルコースおよび50mg/Lカナマイシンを補充した2YT)からのいずれかから直接に調製した。
発現およびスクリーニング
スクリーニングの場合、TdTバリアントをコードするプラスミドを市販の大腸菌株BL21(DE3)(Novagen)で再形質転換した。カナマイシンペトリ皿内で増殖することができたコロニーを分離し、標識した。TdTの個々のバリアントを、Ybertら、米国特許出願第US2020/0002690号により記載のように、Ni-NTAクロマトグラフィーを使用して96ウェルフォーマットで生成し、発現させ、および精製した。タンパク質の量は280nmにての吸収度によって決定した。
実施例2 - TdTバリアントの活性、特にデュプレックスおよびヘアピンの活性の研究。
本発明による様々なTdTバリアントの活性を、以下の試験によって決定した。結果を、バリアントそれぞれが由来する配列番号2のTdT(参照)を用いて得られた結果と比較した。
本研究では、国際特許出願番号第WO2020/099451号に記載のように、3’末端dNTPの組み込みにおけるTdT動態をモニタリングする。本発明者らは、単一の塩基(+A反応についてはTGGCCおよび+G反応についてはCAGCAAGGCT)の組み込みの際に一本鎖DNAから二本鎖DNA(dsDNA)へと移行する短いイニシエーターDNA(iDNA)基質を開発した。用途に応じて、2つのタイプのiDNA:主に分子内dsDNAを形成するヘアピン-DNA、または2つの分子から構成される対称なdsDNAを形成するデュプレックス-DNA、を適用した(図2を参照のこと)。デュプレックスアッセイでは、単一の組み込まれた塩基のエネルギー効果が2倍であり、このことは、容易に融解するA=Tペアを創出する+Aまたは+Tの反応をモニタリングするのに極めて重要である。
したがって、このようなシステムでは、dsDNAの形成はTdTの酵素活性を反映し、その形成をdsDNA特異的挿入色素(エチジウムブロマイド、GelRed、SYBR Green)の蛍光を測定することによってリアルタイムでモニタリングできる。TdTバリアントの比活性を、500μM 3’ONH2 dNTP、10μM iDNAおよび30nM TdTの存在下でのGelRed蛍光増加の初速度として決定した。
結果
OP2とは、キャピラリー電気泳動によって決定した、酵素的に作製したDNAの純度を表す。E12とは、固体支持体に付着させたAACTACCTGTACCGGC DNAの先端に合成したTGTTCCGGAAGAGCAACCTG DNA配列を表す。Q21とは、固体支持体に付着させたGTATGGCGCGATGACTCG DNAの先端に合成したCGCACGCTAC DNA配列を表す。Tmは、純粋なTdTバリアントの融解温度を表し、SYPRO Orange色素を使用してサーマルシフトアッセイから決定される。欠失率は、平均約50塩基長である本発明者らの標準24プライマーセットからの平均値である。
結果を下の表2に詳述する。
Figure 2024541312000003
配列番号3または配列番号4または配列番号5を有するTdTバリアントの、それぞれ突然変異T264R+I298V、またはC23A+T264R+I298V、またはV262A+I298Vを有するバリアントの、活性および合成性能を図3に表す。パネルAのプロットは、TAGCT+Aデュプレックステストにおける+A反応の酵素速度を示し、パネルBのプロットは、CAGCAAGGCT+Gヘアピンによる+G反応の酵素速度を指示する。
したがって、配列番号3、配列番号4および配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントによって、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するTdTバリアントの欠失率と比較してそれぞれ、工程当たり0.55%から0.36%、0.32%および0.40%まで、アラニンについて欠失率が減少した。同じTdTバリアントによって、全体的な合成エラー率がそれぞれ工程当たり0.04%、0.06%および0.06%だけ減少する。したがって、本発明による前記特定のTdTバリアントはより良好な品質のDNA鎖を産生する。
実施例3 - 比較研究
本研究によって、配列番号2のTdTを用いて得られたものと比較して、配列番号3、配列番号4または配列番号5のTdTバリアントによって合成された配列の置換、挿入、欠失の平均値について調査する。
24の配列を、各TdTバリアントについて二重で合成する。合成を、0.5Mカコジル酸バッファー pH7.4中で、20%DMSO、50mM NaClにての20μM酵素、2mM CoCl2、500μM ONH2ヌクレオチド、750pmol樹脂(10μM iDNA)を用いて37℃で行う。各合成は、対照として配列番号2のTdTを含む。パーセンテージとは、参照配列と比較した完全なリードのパーセンテージを指す)。
各TdTバリアントによって合成された24の配列を、Illumina,Inc.製のiSeq 100 Systemシーケンサーを使用して配列決定した。欠失、挿入、および置換のパーセンテージを、シーケンサーから得られた配列とターゲット配列を比較することによって算出する。
結果を図4に詳述する。
欠失の平均値に関して、配列番号2のTdTと比較して、配列番号3、配列番号4および配列番号5のTdTバリアントは、特に配列番号4および配列番号5のTdTバリアントは、全てより良好である。挿入の平均値も配列番号2のTdTよりも減少している。したがって、本発明によるTdTバリアントは誤組み込みが少ないDNA鎖を産生し、結果として、技術的問題は本発明のTdTによって十分に解決される。

Claims (14)

  1. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列であって、
    前記アミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる第1の群から選択される位置に、もしくは前記第1の群の各位置の機能的に等価な位置に置換アミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、
    ここで、これらの位置は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている、
    配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、
    または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列であって、
    前記アミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる第2の群から選択される位置に、もしくは前記第2の群の各位置の機能的に等価な位置に置き換えアミノ酸での少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含み、
    ここで、これらの位置は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を参照することによって付番されている、
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列
    を含む、末端デオキシヌクレオチド転移酵素(TdT)バリアント。
  2. 置換アミノ酸または置き換えアミノ酸は、R、V、A、L、K、Q、TおよびGからなる群から選択される、請求項1に記載のTdTバリアント。
  3. 前記少なくとも1つのアミノ酸置換は298位にある、または前記少なくとも1つのアミノ酸置き換えは279位にある、請求項1または2に記載のTdTバリアント。
  4. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも2つの置換を含む、または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる群から選択される位置に少なくとも2つの置き換えを含む、
    請求項1から3のいずれか一項に記載のTdTバリアント。
  5. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、23位、262位、264位および298位からなる群から選択される位置に少なくとも3つの置換を含む、または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、4位、243位、245位および279位からなる群から選択される位置に少なくとも3つの置き換えを含む、
    請求項1から4のいずれか一項に記載のTdTバリアント。
  6. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、I298V/T/Lから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、I279V/T/Lから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む、
    請求項1から5のいずれか一項に記載のTdTバリアント。
  7. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、T264R/K/Qから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、T245R/K/Qから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む、
    請求項1から6のいずれか一項に記載のTdTバリアント。
  8. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、V262A/T/Gから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、V243A/T/Gから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む、
    請求項1から7のいずれか一項に記載のTdTバリアント。
  9. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C23A/Tから選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、C4A/Tから選択される少なくとも1つのアミノ酸置き換えを含む、
    請求項1から8のいずれか一項に記載のTdTバリアント。
  10. 配列番号2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、配列番号3、配列番号4および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一である、または
    配列番号8と少なくとも70%同一のアミノ酸配列は、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%同一である、
    請求項1から9のいずれか一項に記載のTdTバリアント。
  11. a.請求項1から10のいずれか一項に記載の少なくとも1種のTdTバリアント、
    b.少なくとも1種の3’-O-修飾されたヌクレオシドトリホスフェート、および
    c.必要に応じて少なくとも1種のイニシエーター
    を含む、キット。
  12. キットは2種のTdTバリアントを含む、請求項11に記載のキット。
  13. 第1のTdTバリアントは配列番号3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、第2のバリアントは配列番号5と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、または
    第1のTdTバリアントは配列番号9と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、第2のバリアントは配列番号11と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む、
    請求項12に記載のキット。
  14. ポリヌクレオチドを合成する方法であって、方法は:
    a.遊離3’-ヒドロキシルを有する3’末端ヌクレオチドを有する少なくとも1種のイニシエーターを用意する工程、
    b.伸長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有する少なくとも1種のイニシエーターを、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートおよび請求項1から10のいずれか一項に記載のTdTバリアントと接触させ、その結果、前記少なくとも1種のイニシエーターは、3’-O-ブロックされたヌクレオシドトリホスフェートの組み込みによって伸長されて、3’-O-ブロックされた伸長断片を形成する工程、ならびに
    c.伸長断片を脱ブロッキングして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成する工程、ならびに
    d.伸長条件下で工程c.で得られた前記少なくとも伸長された断片を接触させることによって、ポリヌクレオチドが形成されるまで、工程b.および工程c.を繰り返す工程、
    を含む、ポリヌクレオチドを合成する方法。
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