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JP2024118711A - 有機el素子用封止剤、硬化膜、有機el素子及び有機el素子の製造方法 - Google Patents

有機el素子用封止剤、硬化膜、有機el素子及び有機el素子の製造方法 Download PDF

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JP2024118711A JP2023025144A JP2023025144A JP2024118711A JP 2024118711 A JP2024118711 A JP 2024118711A JP 2023025144 A JP2023025144 A JP 2023025144A JP 2023025144 A JP2023025144 A JP 2023025144A JP 2024118711 A JP2024118711 A JP 2024118711A
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Abstract

【課題】インクジェット法により基材上に塗布した際の濡れ広がり性と膜の端部直進性とを両立できる有機EL素子用封止剤を提供すること。【解決手段】[A]重合性化合物と、[B]重合開始剤とを含有する有機EL素子用封止剤であって、E型粘度計を用いて25℃、20rpmの条件にて測定される粘度が1mPa・s以上40mPa・s以下であり、[A]重合性化合物として、重合性基と1価のフッ素化炭化水素基とを有する化合物(A1)を含む有機EL素子用封止剤とする。【選択図】なし

Description

本発明は、有機EL素子用封止剤、硬化膜、有機EL素子及び有機EL素子の製造方法に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、陽極、有機発光層及び陰極を含む積層構造を有する発光素子である。有機EL素子は、表示装置や照明装置等の各種用途において広く実用化されている。
有機EL素子が備える有機発光層は、水分や酸素との接触により劣化しやすく、例えば長期間の駆動に伴い素子に浸入した水分によって部分的に発光しないエリア(ダークスポット)が形成されたり、水分や酸素との接触によって発光特性が低下したりすることが懸念される。そこで従来、有機EL素子に封止構造を設け、封止構造により有機発光層が水分や酸素に接触しないようにすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、重合性化合物と重合開始剤とを含む硬化性組成物を塗布して硬化させることにより、有機発光層を被覆する有機封止層を形成することが開示されている。
また、少量の硬化性組成物によって均質な塗布膜を形成しやすいこと、スループットの点で優れていること等の理由から、近年、インクジェット塗布により硬化性組成物を基材上に塗布し硬化させることにより、有機EL素子の封止構造を形成する試みがなされている(特許文献1参照)。
国際公開第2018/225723号
有機EL素子の封止構造を形成する際にインクジェット塗布を適用可能にするためには、封止構造形成用の硬化性組成物(以下、「有機EL素子用封止剤」ともいう)には、低粘度であることのほか、有機発光層を十分に被覆するために塗布ムラの発生が少ないことが求められる。特に、有機EL素子の薄型化に伴う封止構造の薄層化(例えば、厚さ10μm以下の構造)に対応するためには、濡れ広がり性が良好であることが有機EL素子用封止剤に求められる。そこで従来、界面活性剤を有機EL素子用封止剤に配合することにより、有機EL素子用封止剤の塗布性を改善することが検討されている。
しかしながら、本発明者が検討したところ、界面活性剤の使用により有機EL素子用封止剤の塗布性を改善しようとすると、基材上に塗布して形成した膜のエッジライン(すなわち、インクジェットノズルの移動方向に対する左右両側の端部)が曲線状や鋸歯状になる等、直線性が崩れる傾向がみられた。この場合、膜の端部に未塗布部分が発生してしまい、有機発光層の封止が不十分になることが懸念される。有機EL素子の信頼性を高める観点からすると、有機EL素子用封止剤には、基材上に塗布した際に濡れ広がり性が良好であることと、膜のエッジラインが直線状となること(以下、「端部直進性」ともいう)とを両立できることが求められる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、インクジェット法により基材上に塗布した際の濡れ広がり性と膜の端部直進性とを両立できる有機EL素子用封止剤を提供することを主たる目的とする。
本発明によれば、以下の有機EL素子用封止剤、硬化膜、有機EL素子及び有機EL素子の製造方法が提供される。
[1] [A]重合性化合物と、[B]重合開始剤とを含有し、E型粘度計を用いて25℃、20rpmの条件にて測定される粘度が1mPa・s以上40mPa・s以下であり、前記[A]重合性化合物として、重合性基と1価のフッ素化炭化水素基とを有する化合物(A1)を含む、有機EL素子用封止剤。
[2] 上記[1]の有機EL素子用封止剤によって形成された硬化膜。
[3] 上記[2]の有機EL素子用封止剤により発光層が封止された有機EL素子。
[4] 有機発光層が形成された基材における発光層形成面に、上記[1]の有機EL素子用封止剤を塗布し、放射線を照射して前記有機EL素子用封止剤を硬化することにより封止構造を形成する工程を含む、有機EL素子の製造方法。
本発明の有機EL素子用封止剤によれば、インクジェット法により基材上に塗布した際の濡れ広がり性と膜の端部直進性とを両立することができる。
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
《有機EL素子用封止剤》
本開示の有機EL素子用封止剤(以下、「本封止剤」ともいう)は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の薄膜封止(TFE:Thin Film Encapsulation)に用いられる硬化性組成物である。本封止剤は、E型粘度計を用いて25℃、20rpmの条件にて測定される粘度が1mPa・s以上40mPa・s以下である。このような低粘度の本封止剤は、インクジェット塗布用として好適である。
本封止剤は、[A]重合性化合物と[B]重合開始剤とを含有する。[A]重合性化合物は、刺激に反応して重合体を生成し得る化合物である。本封止剤を加熱又は本封止剤に放射線を照射することにより[A]重合性化合物の重合反応が進行し、硬化膜が得られる。本封止剤は、[A]重合性化合物のカチオン重合により硬化が進行するカチオン重合性封止剤であってもよく、[A]重合性化合物のラジカル重合により硬化が進行するラジカル重合性封止剤であってもよい。
以下、本封止剤に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について説明する。なお、各成分については特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。芳香族炭化水素基は、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。なお、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、炭化水素構造からなる置換基を有していてもよい。「環状炭化水素基」は、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「構造単位」とは、主鎖構造を主として構成する単位であって、少なくとも主鎖構造中に2個以上含まれる単位をいう。「(メタ)アクリロ」は、「アクリル」及び「メタクリル」を包含する用語である。本明細書では、「オキシラニル基」及び「オキセタニル基」を包含して「エポキシ基」ともいう。
<[A]重合性化合物>
〔化合物(A1)〕
本封止剤は、[A]重合性化合物として、重合性基と1価のフッ素化炭化水素基とを有する化合物(A1)を含む。化合物(A1)が有する重合性基としては、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基、水酸基等が挙げられる。これらのうち、化合物(A1)が有する重合性基は、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、オキセタニル基又は(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
化合物(A1)が有する重合性基の数は特に限定されない。本封止剤の粘度の増大を抑制しつつ、本封止剤を基材上に塗布した際の濡れ広がり性と端部直進性とをバランス良く発現させる観点から、化合物(A1)が有する重合性基の数は、1個又は2個が好ましく、1個が特に好ましい。
化合物(A1)が有する1価のフッ素化炭化水素基(以下、「含フッ素基R」ともいう)は、1価の炭化水素基が有する水素原子のうち1個以上がフッ素原子で置き換えられた基である。含フッ素基Rの炭素数は、2以上が好ましく、2~20がより好ましい。含フッ素基Rは、本封止剤の濡れ広がり性と膜の端部直進性とを両立させる観点から、1価の炭化水素基が有する水素原子のうち半数以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、1個の水素原子以外がフッ素原子で置換されているか又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されていることがより好ましい。
含フッ素基Rは中でも、フッ素化鎖状炭化水素基であることが好ましい。当該フッ素化鎖状炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分岐状でもよい。フッ素化鎖状炭化水素基の好ましい具体例としては、「-C2m-1」、「-C2nH」又は「-C2n+1」で表される基が挙げられる。なお、mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である。m及びnは、本封止剤の濡れ広がり性と膜の端部直進性とをバランス良く改善する観点から、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が更に好ましい。また、濡れ広がり性の低下を抑制する観点から、m及びnはそれぞれ、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
含フッ素基Rがフッ素化鎖状炭化水素基である場合、当該フッ素化鎖状炭化水素基は、本封止剤を基材上に塗布した際の濡れ広がり性と膜の端部直進性とをバランス良く改善できる効果が高い点において、炭素-炭素不飽和結合を有することが好ましい。フッ素化鎖状炭化水素基が有する不飽和炭素-炭素結合の数は特に限定されない。フッ素化鎖状炭化水素基が有する不飽和炭素-炭素結合の数は、好ましくは1個である。なお、含フッ素基R中の炭素-炭素不飽和結合は非重合性であり、重合に関与しないと考えられる。
化合物(A1)が有する含フッ素基Rの数は特に限定されない。濡れ広がり性と膜の端部直進性とをバランス良く発現させる観点から、化合物(A1)が有する含フッ素基Rの数は、1個又は2個が好ましく、1個が特に好ましい。
化合物(A1)が有する含フッ素基Rの具体例としては、下記式(f-1)~式(f-14)のそれぞれで表される基が挙げられる。
Figure 2024118711000001
Figure 2024118711000002
(式(f-1)~式(f-14)中、「*」は結合手を表す。)
化合物(A1)の好ましい具体例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2024118711000003
(式(1)中、Xは、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリロイル基を有する1価の基である。Yは、炭素数1~10のアルカンジイル基、又は炭素数2~10のアルカンジイル基の炭素-炭素結合間に-O-を含む2価の基である。Rは、「-C2m-1」、「-C2nH」又は「-C2n+1」で表される1価のフッ素化鎖状炭化水素基である。mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である。)
上記式(1)において、Rで表される1価のフッ素化鎖状炭化水素基の具体例及び好ましい例については上記で説明したとおりである。Yは、直鎖状でも分岐状でもよい。Yの炭素数は、原料の入手容易性等の観点から、1~8が好ましく、1~5がより好ましい。
〔化合物(A2)〕
本封止剤は、[A]重合性化合物として、化合物(A1)と共重合可能であって含フッ素基Rを有しない化合物(以下、「化合物(A2)」ともいう)を更に含むことが好ましい。本封止剤に化合物(A2)を配合することにより、本封止剤の粘度を調整したり、硬化性を高めたり、架橋構造を補強したりしやすくすることができる。
化合物(A2)としては、含フッ素基Rを有しない単官能重合性化合物(以下、「単官能化合物(A2m)」ともいう)、及び含フッ素基Rを有しない多官能重合性化合物(以下、「多官能化合物(A2n)」ともいう)よりなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられる。本封止剤は、化合物(A2)として、単官能化合物(A2m)と多官能化合物(A2n)とを含むことが好ましい。単官能化合物(A2m)及び多官能化合物(A2n)が有する重合性基は、本封止剤に配合される化合物(A1)が有する重合性基に応じて適宜選択され得る。
本封止剤に含有させる多官能化合物(A2n)は、重合性基を2個以上有するシロキサン化合物(以下、「多官能シロキサン化合物」ともいう)を含んでいてもよい。本封止剤に多官能シロキサン化合物を含有させることにより、低誘電率化を図りつつ硬化性を高めることができる。多官能シロキサン化合物としては、鎖状構造又は環状構造を有するシロキサン化合物が挙げられる。多官能シロキサン化合物が有する重合性基は、本封止剤に配合される化合物(A1)が有する重合性基に応じて適宜選択され得る。
多官能シロキサン化合物の具体例としては、下記式(3-1)又は式(3-2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2024118711000004
(式(3-1)及び式(3-2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の1価の炭化水素基、又は重合性基を有する基である。aは0~100の整数である。bは1~18の整数である。ただし、式(3-1)中の複数のRのうち2個以上は、重合性基を有する基である。式(3-2)中の複数のRのうち2個以上は、重合性基を有する基である。複数のRは互いに同一又は異なり、複数のRは互いに同一又は異なる。)
[A]重合性化合物において、化合物(A1)の含有割合は、本封止剤を基材上に塗布した際の濡れ広がり性及び膜の端部直進性の改善効果を十分に得る観点から、[A]重合性化合物の全量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、濡れ広がり性の低下を抑制する観点から、化合物(A1)の含有割合は、[A]重合性化合物の全量100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
化合物(A2)における単官能化合物(A2m)の比率は、化合物(A2)の全量(すなわち、単官能化合物(A2m)と多官能化合物(A2n)との合計量)100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、単官能化合物(A2m)の含有割合は、化合物(A2)の全量100質量部に対して、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。単官能化合物(A2m)の含有割合が上記範囲であると、低粘度でありながら硬化性に優れた有機EL素子用封止剤を得ることができる。
本封止剤が多官能シロキサン化合物を含む場合、多官能シロキサン化合物の含有割合は、化合物(A2)の全量100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、多官能シロキサン化合物の含有割合は、化合物(A2)の全量100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
次に、本封止剤がカチオン重合性封止剤である場合あるいはラジカル重合性封止剤である場合に各封止剤に含まれる[A]重合性化合物及び[B]重合開始剤の詳細についてそれぞれ説明する。
<カチオン重合性封止剤>
〔[A]重合性化合物〕
・化合物(A1)
本封止剤がカチオン重合性封止剤である場合、本封止剤に含有される化合物(A1)(以下、「化合物(A1-c)」)が有する重合性基としては、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、ビニル基、水酸基等が挙げられる。これらのうち、化合物(A1-1)が有する重合性基は、オキセタニル基又はオキシラニル基が好ましく、オキセタニル基がより好ましい。化合物(A1-c)が有する含フッ素基Rの具体例及び好ましい例については、上記の説明が適用される。
化合物(A1-c)の好ましい具体例としては、下記式(1-1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2024118711000005
(式(1-1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、アルキル基、フルオロアルキル基又はアリル基である。Rは、「-C2m-1」、「-C2nH」又は「-C2n+1」で表される1価のフッ素化鎖状炭化水素基である。mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である。kは1~10の整数である。)
上記式(1-1)において、Rで表される1価のフッ素化鎖状炭化水素基の具体例及び好ましい例については上記で説明したとおりである。
で表されるアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。Rで表されるフルオロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が有する水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された基が挙げられる。Rで表されるアルキル基及びフルオロアルキル基は、炭素数1~5が好ましく、炭素数1~3がより好ましい。Rは、反応性の観点から、炭素数1~5のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
kは、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
化合物(A1-c)の具体例としては、下記式(a1-1-1)~式(a1-1-18)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2024118711000006
Figure 2024118711000007
カチオン重合性封止剤において、化合物(A1-c)の含有割合は、[A]重合性化合物の全量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、化合物(A1-c)の含有割合は、[A]重合性化合物の全量100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。化合物(A1-c)の含有割合が上記範囲であると、本封止剤を基材上に塗布した際の濡れ広がり性と膜の端部直進性とをバランス良く発現でき、しかも濡れ広がり性及び膜の端部直進性をより優れたものとすることができる点で好適である。
・化合物(A2)
本封止剤がカチオン重合性封止剤である場合、本封止剤に含有される化合物(A2)(以下、「化合物(A2-c)」)としては、重合性基としてオキセタニル基、オキシラニル基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基又は水酸基を有する化合物が挙げられる。これらのうち、カチオン重合性の観点から、化合物(A2-c)は、オキセタニル基、オキシラニル基又はビニルエーテル基を有する化合物であることが好ましく、オキセタニル基又はオキシラニル基を有する化合物であることがより好ましい。また、化合物(A2-c)は、単官能重合性化合物及び多官能重合性化合物のいずれであってもよい。化合物(A2-c)としては、単官能エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物、又はその両方を好ましく使用できる。
単官能重合性化合物としては、単官能オキセタン化合物を好ましく使用できる。単官能オキセタン化合物の具体例としては、3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3-メチル-3-メトキシオキセタン、フェニルオキセタン、フェノキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-((3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)メチル)オキセタン、3-アリルオキシオキセタン、3-エチル-3-アリルオキシオキセタン、2-メチル-2-アリル-4-プロピルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-クロロメチルオキセタン、3-アミノ-3-ジメチルオキセタン、3-エチル-3-(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(4-(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2-ジメチルプロピルオキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
多官能オキセタン化合物の具体例としては、3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン、キシリレンビスオキセタン、1,4-ビス((3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)ベンゼン、ビス((3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)エーテル、ビス((3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)エーテル、1,4-ビス((3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル)ベンゼン、並びにこれらの化合物のオリゴマー又は共重合体、フェノールノボラック型オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、あるいは上記の多官能オキセタン化合物と水酸基含有樹脂(例えば、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、カルド型ビスフェノール類、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)等)とのエーテル化物等が挙げられる。多官能オキセタン化合物は、インクジェット塗布性の観点から、これらのうち分子量500以下の化合物が好ましく、分子量400以下の化合物がより好ましい。また、同様の観点から、2官能オキセタン化合物を好ましく使用できる。
本封止剤がカチオン重合性封止剤である場合、本封止剤は、多官能重合性化合物として、カチオン重合性基を2個以上有するシロキサン化合物(以下、「多官能シロキサン化合物(A3-c)」ともいう)を含むことが好ましい。本封止剤に多官能シロキサン化合物(A3-c)を配合することにより、低誘電率化を図りつつ硬化性を高めることができる。
多官能シロキサン化合物(A3-c)としては、鎖状構造又は環状構造を有するシロキサン化合物が挙げられる。多官能シロキサン化合物(A3-c)は、カチオン重合性基としてオキセタニル基又はオキシラニル基を2個以上有することが好ましい。多官能シロキサン化合物(A3-c)が有するカチオン重合性基の数は、2~8個が好ましく、2~4個がより好ましい。インクジェット塗布性の観点から、多官能シロキサン化合物(A3-c)としては、これらのうち2官能のエポキシ基含有シロキサン化合物を特に好ましく使用できる。
多官能シロキサン化合物(A3-c)の具体例としては、商品名で、「X-22-163」、「X-22-169」、「KR-470」、「X-40-2678」、「X-40-2669」、「「X-40-2728」」(以上、信越化学工業社製)等が挙げられる。
カチオン重合性封止剤は、化合物(A2-c)として単官能重合性化合物と多官能重合性化合物とを含むことが好ましい。化合物(A2-c)の全量に対する単官能重合性化合物の比率は、化合物(A2-c)の全量100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、化合物(A2-c)の全量に対する単官能重合性化合物の比率は、化合物(A2-c)の全量100質量部に対して、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。単官能重合性化合物と多官能重合性化合物との比率を上記範囲とすることにより、低粘度と硬化性とのバランスに優れた有機EL素子用封止剤を得ることができる。
化合物(A2-c)の含有割合は、本封止剤の硬化性を確保する観点から、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物(すなわち、化合物(A1-c)及び化合物(A2-c))の合計量100質量部に対して、60質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上が更に好ましい。また、化合物(A2-c)の含有割合は、化合物(A1-c)の配合による塗布性の改善効果を十分に得る観点から、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物の合計量100質量部に対して、99.9質量部以下が好ましく、99.5質量部以下がより好ましく、99質量部以下が更に好ましい。
また、本封止剤において、多官能シロキサン化合物(A3-c)の含有割合は、化合物(A2-c)の全量100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、多官能シロキサン化合物(A3-c)の含有割合は、化合物(A2-c)の全量100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
〔[B]重合開始剤〕
本封止剤がカチオン重合性封止剤である場合、本封止剤は、[B]重合開始剤としてカチオン重合開始剤を含む。カチオン重合開始剤としては、熱に感応してプロトン酸又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤、放射線に感応してプロトン酸又はルイス酸を発生する光カチオン重合開始剤が挙げられる。熱カチオン重合開始剤としては、イオン性熱酸発生型の重合開始剤が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、イオン性光酸発生型、非イオン性光酸発生型の重合開始剤が挙げられる。本封止剤を有機EL素子用とすることを考慮すると、光カチオン重合開始剤を好ましく使用することができる。
熱カチオン重合開始剤の具体例としては、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。熱カチオン重合開始剤は、中でも、アリールスルホニウム塩、アリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩又は第4級アンモニウム塩であることが好ましく、これらのオニウム塩における対アニオンが、BF 、PF 、SbF 又はBX (ただし、Xは、フェニル基が有する2つ以上の水素原子がフッ素又はトリフルオロメチル基で置換された置換フェニル基を表す)であるオニウム塩であることがより好ましい。
光カチオン重合開始剤の具体例としては、イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤として、オニウム塩化合物、ハロゲン含有化合物、スルホン化合物、スルホン酸化合物、スルホンイミド化合物、ジアゾメタン化合物が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe塩等が挙げられる。オニウム塩化合物の具体例としては、カチオン部分が芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、又は(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Feカチオンであり、アニオン部分がBF 、PF 、SbF、BX (ただし、Xは、フェニル基が有する2つ以上の水素原子がフッ素又はトリフルオロメチル基で置換された置換フェニル基を表す)、又はPY (ただし、Yはフッ素化アルキル基である)で構成されるオニウム塩が挙げられる。
非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えばニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N-ヒドロキシイミドスホナートが挙げられる。
本封止剤におけるカチオン重合開始剤の含有割合は、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物の合計量100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、カチオン重合開始剤の含有割合は、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物の合計量100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。カチオン重合開始剤の含有割合を上記範囲とすることにより、良好な硬化性等を発揮することができる。
<ラジカル重合性封止剤>
〔[A]重合性化合物〕
・化合物(A1)
本封止剤がラジカル重合性封止剤である場合、本封止剤に含有される化合物(A1)(以下、「化合物(A1-r)」)が有する重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニルフェニル基等が挙げられる。これらのうち、化合物(A1-r)が有する重合性基は、(メタ)アクリロイル基が好ましい。化合物(A1-r)が有する含フッ素基Rの具体例及び好ましい例については、上記の説明が適用される。
化合物(A1-r)の好ましい具体例としては、下記式(1-2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2024118711000008
(式(1-2)中、Rは水素原子又はメチル基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Yは、炭素数1~10のアルカンジイル基、又は炭素数2~10のアルカンジイル基の炭素-炭素結合間に-O-を含む2価の基である。Rは、「-C2m-1」、「-C2nH」又は「-C2n+1」で表される1価のフッ素化鎖状炭化水素基である。mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である。)
上記式(1-2)において、Rで表される1価のフッ素化鎖状炭化水素基の具体例及び好ましい例については上記で説明したとおりである。Yは、炭素数1~8が好ましく、炭素数1~5がより好ましい。
及びRで表されるアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。R及びRで表されるフルオロアルキル基としては、炭素数1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が有する水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された基が挙げられる。R及びRで表されるアルキル基及びフルオロアルキル基は、炭素数1~5が好ましく、炭素数1~3がより好ましい。R及びRは、中でも、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
化合物(A1-r)の具体例としては、下記式(a1-2-1)~式(a1-2-8)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2024118711000009
(式(a1-2-1)~式(a1-2-8)中、Rは水素原子又はメチル基である。rは0~4の整数である。)
ラジカル重合性封止剤において、化合物(A1-r)の含有割合は、[A]重合性化合物の全量100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、化合物(A1-r)の含有割合は、[A]重合性化合物の全量100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。化合物(A1-r)の含有割合が上記範囲であると、本封止剤を基材上に塗布した際の濡れ広がり性と膜の端部直進性とをバランス良く改善する効果を高くできる点で好適である。
・化合物(A2)
本封止剤がラジカル重合性封止剤である場合、本封止剤に含有される化合物(A2)(以下、「化合物(A2-r)」)としては、エチレン性不飽和基を有する化合物を好ましく用いることができる。具体的には、ビニル基含有化合物、(メタ)アクリロイル基含有化合物、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。これらの中でも、化合物(A1)との共重合性の点や、本封止剤の粘度の調整を比較的容易に行うことができる点で、(メタ)アクリロイル基含有化合物を好ましく使用できる。
化合物(A2-r)は、単官能重合性化合物及び多官能重合性化合物のいずれであってもよい。化合物(A2-r)が単官能重合性化合物である場合の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
化合物(A2-r)が単官能重合性化合物である場合の更なる具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-ステアリル等が挙げられる。脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,5]デカン-8-イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。芳香環構造を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチルメチル、(メタ)アクリル酸ナフチルエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸m-フェノキシフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o-フェニルフェノキシエチル等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、t-ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
化合物(A2-r)が多官能重合性化合物である場合、化合物(A2-r)としては多官能(メタ)アクリル酸エステルを好ましく使用できる。多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2官能(メタ)アクリル酸エステル、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステル等を例示できる。これらの具体例としては、2官能(メタ)アクリル酸エステルとして、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有多塩基酸変性(メタ)アクリルオリゴマーの他、直鎖アルキレン基及び脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上のヒドロキシ基とを有し、かつ3個、4個又は5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等が挙げられる。
本封止剤がラジカル重合性封止剤である場合、多官能重合性化合物として、カチオン重合性基を2個以上有するシロキサン化合物(以下、「多官能シロキサン化合物(A3-r)」ともいう)を用いてもよい。多官能シロキサン化合物(A3-r)としては、鎖状構造又は環状構造を有するシロキサン化合物が挙げられる。多官能シロキサン化合物(A3-r)は、ラジカル重合性基として(メタ)アクリロイル基を2個以上有することが好ましい。多官能シロキサン化合物(A3-r)が有するラジカル重合性基の数は、2~8個が好ましく、2~4個がより好ましい。
ラジカル重合性封止剤は、化合物(A2-r)として単官能重合性化合物と多官能重合性化合物とを含むことが好ましい。化合物(A2-r)の全量に対する単官能重合性化合物の比率は、化合物(A2-r)の全量100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、化合物(A2-r)の全量に対する単官能重合性化合物の比率は、化合物(A2-r)の全量100質量部に対して、70質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましく、50質量部以下が更に好ましい。単官能重合性化合物と多官能重合性化合物との比率を上記範囲とすることにより、低粘度でありながら硬化性に優れた有機EL素子用封止剤を得ることができる。
化合物(A2-r)の含有割合は、本封止剤の硬化性を確保する観点から、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物(すなわち、化合物(A1-r)及び化合物(A2-r))の合計量100質量部に対して、60質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上が更に好ましい。また、化合物(A2-r)の含有割合は、化合物(A1-r)の配合による塗布性の改善効果を十分に得る観点から、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物の合計量100質量部に対して、99.9質量部以下が好ましく、99.5質量部以下がより好ましく、99質量部以下が更に好ましい。
〔[B]重合開始剤〕
本封止剤がラジカル重合性封止剤である場合、本封止剤は、[B]重合開始剤としてラジカル重合開始剤を含む。ラジカル重合開始剤としては、熱に感応してラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤、放射線に感応してラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤が挙げられる。熱ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、O-アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。本封止剤を有機EL素子用とすることを考慮すると、光ラジカル重合開始剤を好ましく使用することができる。
熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、アゾ化合物として、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、O-アシルオキシム化合物として、1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、1-(9-エチル-6-ベンゾイル-9.H.-カルバゾール-3-イル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、1-〔9-n-ブチル-6-(2-エチルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-エタン-1-オンオキシム-O-ベンゾエート、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロピラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-(2-メチル-5-テトラヒドロフラニルベンゾイル)-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-〔9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。O-アシルオキシム化合物は中でも、分子中にカルバゾール骨格を有する重合開始剤(例えば、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等)を好ましく使用できる。
アセトフェノン化合物としては、例えばα-アミノケトン化合物、α-ヒドロキシケトン化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、α-アミノケトン化合物として、例えば2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。α-ヒドロキシケトン化合物としては、例えば1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
ビイミダゾール化合物としては、例えば2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールまたは2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。
アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
本封止剤におけるラジカル重合開始剤の含有割合は、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物の合計量100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、ラジカル重合開始剤の含有割合は、本封止剤中に含まれる[A]重合性化合物の合計量100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有割合を上記範囲とすることにより、良好な硬化性等を発揮することができる。
<その他の成分>
本封止剤(カチオン重合性封止剤及びラジカル重合性封止剤を含む)は、上述した[A]重合性化合物及び[B]重合開始剤に加え、[A]重合性化合物及び[B]重合開始剤とは異なる成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、重合禁止剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、軟化剤、可塑剤、密着助剤、有機溶剤等が挙げられる。これらの成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で各成分に応じて適宜選択される。
本封止剤に配合される各成分を溶解する等の目的で必要であれば、本封止剤に有機溶剤を配合してもよい。ただし、加熱処理を行わずに硬化膜(より具体的には、有機EL素子の有機発光層を保護する有機封止層)を形成することを可能にする観点からすると、有機溶剤の使用を極力少なくすることが好ましい。具体的には、本封止剤における有機溶剤の含有割合は、0質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、実質的に含まないことが特に好ましい。ここで、本明細書において、ある特定の成分を「実質的に含まない」とは、本封止剤に含まれるその特定の成分の量が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であることをいう。
本封止剤中に有機溶剤を配合する場合、使用される有機溶剤としては、本封止剤に配合される各成分を溶解又は分散でき、かつ各成分と反応しない有機溶媒であることが好ましい。具体的には、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、アミド類が挙げられる。
これらの具体例としては、アルコール類として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。エーテル類としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。アミド類としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
本封止剤は、化合物(A1)を含有することにより、インクジェット塗布を採用した場合における塗布ムラの発生を抑制することができる。そのため、硬化性組成物の塗布性(濡れ広がり性や塗布ムラの低減)を改良する目的で使用される界面活性剤を配合しなくても、あるいは界面活性剤の配合量を極力少なくした場合にも、本封止剤の塗布性を確保することができる。これにより、本封止剤の全量に対する[A]重合性化合物の割合割合を極力多くでき、硬化性の高い封止剤を得ることができる。有機EL素子の封止構造を形成するための硬化性組成物の調製に使用される界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
優れた濡れ広がり性及び端部直進性をバランス良く発現させる観点、並びに本封止剤の全量に対する[A]重合性化合物の含有割合をできるだけ多くして硬化性を高める観点から、本封止剤中における界面活性剤の含有割合は、0質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上0.1質量%以下であることが更に好ましい。
<有機EL素子用封止剤の調製>
本封止剤は、[A]重合性化合物及び[B]重合開始剤、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を混合することにより調製することができる。本封止剤中の[A]重合性化合物の含有割合は、感度が良好な硬化性組成物とする観点や、封止効果の高い硬化膜を形成する観点から、本封止剤の全量100質量部に対して、80質量部以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
<有機EL素子用封止剤の粘度>
本封止剤は、E型粘度計を用いて25℃、20rpmの条件で測定される粘度が、1~40mPa・sの範囲である。本封止剤の粘度が40mPa・sを超えると、インクジェット塗布により本封止剤を基材上に塗布した際の濡れ広がり性が低下し、塗布ムラが生じやすくなる。特に、有機EL素子の薄型化に伴い有機封止層の薄型化に対応しようとした場合に塗布ムラが発生しやすいことが懸念される。一方、本封止剤の粘度が1mPa・s未満であると、インクジェット塗布の際に封止剤の飛び散りや液滴の垂れが生じることによって目的とする箇所以外に封止剤がドット状に付着した状態(サテライト)が発生しやすくなる。この場合、封止効果が十分に高い有機封止層を形成できないことがある。この点、本封止剤は、濡れ広がり性に加え、インクジェット塗布時の封止剤の飛び散りや液滴の垂れを抑制できる(すなわち、インクジェット吐出安定性に優れる)ため、インクジェット塗布用の硬化性組成物として特に好適である。
濡れ広がり性が良好であり、インクジェット塗布性に優れた硬化性組成物を得る観点から、本封止剤の粘度は、35mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることが更に好ましく、25mPa・s以下であることがより更に好ましい。また、インクジェット吐出安定性を高め、サテライトの発生を抑制する観点から、本封止剤の粘度は、2mPa・s以上であることがより好ましく、5mPa・s以上であることが更に好ましい。なお、本明細書において、有機EL素子用封止剤の粘度は、JIS K2283に準拠して測定された値である。
<有機EL素子用封止剤の表面張力>
本封止剤の25℃における表面張力は、15mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。表面張力が上記範囲であることにより、インクジェット塗布性に優れた硬化性組成物とすることができる。インクジェット塗布に適用した場合の塗布性を良好にする観点から、本封止剤の25℃における表面張力は、20mN/m以上がより好ましく、23mN/m以上が更に好ましい。また、本封止剤の25℃における表面張力は、35mN/m以下がより好ましく、33mN/m以下が更に好ましい。なお、本明細書において、有機EL素子用封止剤の表面張力は、表面張力計を用いてWilhelmy法にて25℃で測定した値である。
《硬化膜及び有機EL素子》
本開示の硬化膜(以下、「本硬化膜」ともいう)は、上記のように調製された本封止剤により形成される。本硬化膜は、有機EL素子の薄膜封止(TFE)構造として特に有用である。本硬化膜、及び本硬化膜により有機発光層が封止された封止構造を有する有機EL素子は、本封止剤を熱又は放射線により硬化することにより製造できる。当該有機EL素子を得る場合、本封止剤に放射線を照射することにより有機発光層の封止構造が形成されることが好ましく、具体的には、以下の工程1及び工程2を含む方法により製造することができる。
(工程1)有機発光層が形成された基材における発光層形成面に本封止剤を塗布する工程
(工程2)放射線を照射して本封止剤を硬化する工程
以下、各工程について詳細に説明する。
[工程1:塗布工程]
本工程では、有機発光層が形成された基材における発光層形成面に対し、本封止剤を塗布することにより、本封止剤からなる塗布膜を発光層形成面上に形成する。本封止剤を塗布する基材には、有機発光層のほか、例えば陽極層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、陰極層等の各種層を備える積層体が形成されており、この積層体により有機EL素子が構成されている。本封止剤を塗布する発光層形成面は無機膜(無機封止層)により被覆されていてもよい。当該無機膜を構成する無機材料としては、例えば、窒化ケイ素(SiNx)や酸化ケイ素(SiOx)等が挙げられる。この場合、有機発光層上には、封止構造として有機封止層と無機封止層とを含む薄膜封止層が形成される。
本封止剤を塗布する方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット塗布法等が挙げられる。スループットと薄膜化の点から、これらのうち、インクジェット塗布法を好ましく適用することができる。特に本封止剤は、低粘度でありながら優れた硬化性を示すため、インクジェット塗布に好適である。
[工程2:硬化工程]
本工程では、上記工程1で形成した塗布膜に放射線を照射し、塗布膜を硬化して硬化膜とする。放射線としては、例えば、紫外線、遠紫外線、可視光線、X線、電子線等の荷電粒子線が挙げられる。これらの中でも紫外線が好ましく、例えば波長350~400nmの紫外線を照射光として好ましく用いることができる。放射線の露光量としては、0.05~10J/mが好ましい。これにより、本封止剤からなる有機封止層によって有機発光層が被覆された有機EL素子を得ることができる。特に本封止剤は濡れ広がり性が良好であり、本封止剤を用いることにより有機封止層の薄膜化(ひいては、有機EL素子の封止構造の薄型化)が可能である。本封止剤により形成される硬化膜(有機封止層)の厚みは、通常、0.5~15μmであり、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~8μmである。本封止剤により形成された有機封止層は、無機膜によって更に被覆されてもよい。当該無機膜を構成する無機材料としては、例えば、窒化ケイ素(SiNx)や酸化ケイ素(SiOx)等が挙げられる。
上述した工程1及び工程2を含む方法により製造された本開示の有機EL素子は、本組成物からなる有機封止層により有機発光層が封止されている。このため、本開示の有機EL素子は、有機発光層内に水分が浸入することを十分に抑制し、水分に起因する不都合(具体的には、ダークスポットの発生や、輝度及び発光効率等の発光特性の低下)が生じることを抑制しながら、有機封止層の薄膜化を実現することができる。こうした本開示の有機EL素子は、例えば、有機EL照明装置や有機EL表示装置等として有用である。
以上説明した本開示によれば、以下の手段が提供される。
〔手段1〕 [A]重合性化合物と、[B]重合開始剤とを含有し、E型粘度計を用いて25℃、20rpmの条件にて測定される粘度が1mPa・s以上40mPa・s以下であり、前記[A]重合性化合物として、重合性基と1価のフッ素化炭化水素基とを有する化合物(A1)を含む、有機EL素子用封止剤。
〔手段2〕 前記フッ素化炭化水素基はフッ素化鎖状炭化水素基である、〔手段1〕に記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段3〕 前記フッ素化鎖状炭化水素基は炭素数2以上であり、炭素-炭素不飽和結合を有する、〔手段2〕に記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段4〕 前記フッ素化鎖状炭化水素基は、「-C2m-1」、「-C2nH」又は「-C2n+1」で表される(ただし、mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である)、〔手段2〕に記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段5〕 前記[A]重合性化合物が有する重合性基はカチオン重合性基である、〔手段1〕~〔手段4〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段6〕 前記[A]重合性化合物が有する重合性基はラジカル重合性基である、〔手段1〕~〔手段4〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段7〕 前記化合物(A1)が有する重合性基は、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリロイル基である、〔手段1〕~〔手段4〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段8〕 前記化合物(A1)は、上記式(1)で表される、〔手段1〕、〔手段2〕又は〔手段7〕に記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段9〕 前記[A]重合性化合物として、前記フッ素化炭化水素基を有しない単官能重合性化合物と、前記フッ素化炭化水素基を有しない多官能重合性化合物とを更に含む、〔手段1〕~〔手段8〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段10〕 前記単官能重合性化合物と前記多官能重合性化合物との合計量に対する前記単官能重合性化合物の比率が、5質量部以上70質量部以下である、〔手段9〕に記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段11〕 前記多官能重合性化合物として、重合性基を2個以上有するシロキサン化合物を含む、〔手段9〕又は〔手段10〕に記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段12〕 有機溶剤の含有量が0質量%以上3質量%以下である、〔手段1〕~〔手段11〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段13〕 25℃における表面張力が15mN/m以上40mN/m以下である、〔手段1〕~〔手段12〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段14〕 インクジェット塗布用である、〔手段1〕~〔手段13〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤。
〔手段15〕 〔手段1〕~〔手段14〕のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤によって形成された硬化膜。
〔手段16〕 〔手段15〕に記載の硬化膜により発光層が封止された有機EL素子。
〔手段17〕 有機発光層が形成された基材における発光層形成面に、〔手段1〕~〔手段14〕のいずれかに記載の有機EL素子用封止剤を塗布し、放射線を照射して前記有機EL素子用封止剤を硬化することにより封止構造を形成する工程を含む、有機EL素子の製造方法。
〔手段18〕 インクジェット塗布により前記有機EL素子用封止剤を前記発光層形成面に塗布する、〔手段17〕に記載の有機EL素子の製造方法。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
1.化合物の合成
[合成例1]化合物(A1-1)の合成
撹拌機、冷却機及び滴下ロートを備えた2リットルのセパラブルフラスコ内に、ヘキサフルオロプロペン三量体(752g、1.67mol)と炭酸カリウム(58.3g、0.42mol)と、塩化メチレン(125g、1.46mol)とを収容して均一に撹拌した後、更に相間移動触媒として、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(1.1g、0.003mol、和光純薬工業社製)を添加した。次いで、予め作成しておいた3-エチル-3-オキセタンメタノール(95.7g、0.83mol、東亞合成社製)と、塩化メチレン(125g、1.46mol)との混合溶液を、室温(25℃)条件で、セパラブルフラスコ内に滴下した。滴下終了後、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を35℃に保持したまま、4時間加熱を続け、ヘキサフルオロプロペン二量体と3-エチル-3-オキセタンメタノールとの反応液を得た。
得られた反応液を空気冷却した後、炭酸カリウムを濾別し、更に水(500g)を加えて激しく振とうし、水層と有機層とに分離した。その後、有機層のみを採取し、硫酸マグネシウム(20g、0.17mol)を用いて水分乾燥し、次いで、減圧下、塩化メチレンを留去し、更に真空蒸留(温度85℃、圧力3mmHg)して、無色透明の液状の精製物を得た。精製物(含フッ素オキセタン化合物、下記式(A1-1)で表される化合物)の収率は95%であった。
[合成例2]化合物(A1-2)の合成
滴下下ロートを備えた三つ口フラスコ(3L)内に、4-ヒドロキシブチルアクリレート259.5g(1.8mol)、トリエチルアミン218.6g(2.16mol)、アセトニトリル1000gを入れた。滴下ロートにヘキサフルオロプロペン三量体(973.0g、2.16mol)を入れ、フラスコ内の溶液中へ約60分間かけて撹拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温で撹拌を更に3時間継続した。
反応混合物に1N塩酸2200gを加えて反応を停止させ、次いで、反応混合物を5Lのビーカー内へ移した後、水1Lを用いる洗浄処理を3回行った。水洗処理後の溶液を減圧下脱水することにより、下記式(A1-2)で表される含フッ素アクリレート化合物を964.0g(収率93%)得た。
Figure 2024118711000010
2.有機EL素子用封止剤の調製
有機EL素子用封止剤の調製に用いた重合性化合物(A1)、重合性化合物(A2)、重合開始剤(B)、及び界面活性剤(C)の種類及び略称を以下に示す。
<重合性化合物(A1)>
(A1-1):上記式(A1-1)で表される化合物
(A1-2):上記式(A1-2)で表される化合物
<重合性化合物(A2)>
(A2-1):3-エチル-3-(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)オキセタン
(A2-2):3-エチル-3-((2-エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン
(A2-3):エポキシ基含有2官能直鎖シロキサン化合物、商品名「X-40-2669」、信越化学工業社製
(A2-4):トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、商品名「NKエステル A-DCP」、新中村化学工業社製
(A2-5):1,10-デカンジオールジアクリレート、商品名「NKエステル DOD」、新中村化学工業社製
(A2-6):ラウリルアクリレート
(A2-7):多官能アクリレート、商品名「アロニックスM-313」、東亞合成社製
<重合開始剤(B)>
(B-1):光カチオン重合開始剤、商品名「CPI-410B」(サンアプロ社製)
(B-2):2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(光ラジカル重合開始剤、商品名「IrgacureTPO」(BASF社製))
<界面活性剤(C)>
(C-1):フッ素系界面活性剤、商品名「F-563」(DIC社製)
(C-2):フッ素系界面活性剤、商品名「F-554」(DIC社製)
(C-3):フッ素系界面活性剤、商品名「フタージェントDFX-18」(ネオス社製)
[実施例1]
化合物(A1-1)を1質量部、化合物(A2-1)を40質量部、化合物(A2-2)を39質量部、化合物(A2-3)を20質量部、重合開始剤(B-1)を2質量部加え、混合撹拌した後、0.2μmのフィルターを用いてろ過を行い、有機EL素子用封止剤を調製した。
[実施例2~4、比較例1~6]
表1に示す種類及び配合量(質量部)の各成分を用いたこと以外は実施例1と同様の手法にて、実施例2~4及び比較例1~6の有機EL素子用封止剤を調製した。なお、実施例1~3及び比較例1~5はカチオン重合性封止剤であり、実施例4及び比較例6はラジカル重合性封止剤である。
3.評価
実施例1~4及び比較例1~6の有機EL素子用封止剤について、粘度及び表面張力を測定するとともに、インクジェット塗布による塗布性、濡れ広がり性及び膜の端部直進性を評価した。測定方法及び評価方法は以下のとおりである。また、評価結果を表1に示す。
<粘度の測定>
E型粘度計(東機産業社製 RE-85L)を用いて、有機EL素子用封止剤の25℃、20rpmでの粘度(mPa・s)を測定した。
<表面張力の測定>
協和界面科学社製 表面張力計DY-700を用いて、有機EL素子用封止剤の25℃での表面張力の値をWilhelmy法にて測定した。
<硬化膜の形成及びインクジェット塗布評価>
ガラス基板上にSiNxを膜厚100nm(製膜条件)で成膜し、評価用基板を作製した。この評価用基板に対して、40μm×40μmピッチで、ピエゾ方式インクジェットプリンタのインクジェットヘッドから有機EL素子用封止剤のインクジェット吐出を行い、3cm角の塗布膜を作製した。さらに、5分後に395nm LEDランプを用いて、露光量3000mJ/cmで紫外線照射を行い、塗布膜を硬化させた。その際、吐出されるインクドット1滴の量が12pLとなるようにインクジェットヘッドの電圧を調整した。得られた硬化膜の端部より内側部分を目視及び顕微鏡(5倍)にて観察し、以下の基準によりインクジェット塗布性、インクジェット濡れ広がり性及びインクジェット端部直進性の評価を行った。
・インクジェット塗布性の評価
A:目視にて未塗布箇所が観察されない。
B:目視にて未塗布箇所が観察される。
・インクジェット濡れ広がり性の評価
A:硬化膜の大きさが3.5cm角以上
B:硬化膜の大きさが2.5cm角以上3.5cm角未満
C:硬化膜の大きさが2.5cm角未満
・インクジェット端部直進性の評価
A:顕微鏡にて硬化膜端部に樹状箇所が観察されない。
B:顕微鏡にて硬化膜端部に樹状箇所が観察される。
Figure 2024118711000011
表1に示されるように、実施例1~4の有機EL素子用封止剤は、インクジェット法により基材に塗布した際に塗布ムラが少なく、濡れ広がり性も良好であった。また、硬化膜の左右両側のエッジラインは、インクジェットノズルのスキャン方向に対してほぼ平行であり、端部直進性が保持されていた。
これに対し、重合性化合物(A1)に代えてフッ素系界面活性剤を配合した比較例1~6の有機EL素子用封止剤は、インクジェット塗布において塗布ムラの発生は抑制されたものの、濡れ広がり性、膜の端部直進性又はその両方が実施例1~4よりも劣っていた。
以上の結果から、[A]重合性化合物として重合性基と1価のフッ素化炭化水素基とを有する化合物を含有する有機EL素子用封止剤によれば、インクジェット塗布により基材上に塗布した際に濡れ広がり性と膜の端部直進性とをバランス良く改善できることが明らかとなった。

Claims (18)

  1. [A]重合性化合物と、[B]重合開始剤とを含有し、
    E型粘度計を用いて25℃、20rpmの条件にて測定される粘度が1mPa・s以上40mPa・s以下であり、
    前記[A]重合性化合物として、重合性基と1価のフッ素化炭化水素基とを有する化合物(A1)を含む、有機EL素子用封止剤。
  2. 前記フッ素化炭化水素基はフッ素化鎖状炭化水素基である、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  3. 前記フッ素化鎖状炭化水素基は炭素数2以上であり、炭素-炭素不飽和結合を有する、請求項2に記載の有機EL素子用封止剤。
  4. 前記フッ素化鎖状炭化水素基は、「-C2m-1」、「-C2nH」又は「-C2n+1」で表される(ただし、mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である)、請求項2に記載の有機EL素子用封止剤。
  5. 前記[A]重合性化合物が有する重合性基はカチオン重合性基である、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  6. 前記[A]重合性化合物が有する重合性基はラジカル重合性基である、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  7. 前記化合物(A1)が有する重合性基は、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリロイル基である、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  8. 前記化合物(A1)は、下記式(1)で表される、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
    Figure 2024118711000012
    (式(1)中、Xは、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリロイル基を有する1価の基である。Yは、炭素数1~10のアルカンジイル基、又は炭素数2~10のアルカンジイル基の炭素-炭素結合間に-O-を含む2価の基である。Rは、「-C2m-1」、「-C2nH」又は「-C2n+1」で表される1価のフッ素化鎖状炭化水素基である。mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である。)
  9. 前記[A]重合性化合物として、前記フッ素化炭化水素基を有しない単官能重合性化合物と、前記フッ素化炭化水素基を有しない多官能重合性化合物とを更に含む、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  10. 前記単官能重合性化合物と前記多官能重合性化合物との合計量に対する前記単官能重合性化合物の比率が、5質量部以上70質量部以下である、請求項9に記載の有機EL素子用封止剤。
  11. 前記多官能重合性化合物として、重合性基を2個以上有するシロキサン化合物を含む、請求項9に記載の有機EL素子用封止剤。
  12. 有機溶剤の含有量が0質量%以上3質量%以下である、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  13. 25℃における表面張力が15mN/m以上40mN/m以下である、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  14. インクジェット塗布用である、請求項1に記載の有機EL素子用封止剤。
  15. 請求項1~14のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤によって形成された硬化膜。
  16. 請求項15に記載の硬化膜により発光層が封止された有機EL素子。
  17. 有機発光層が形成された基材における発光層形成面に、請求項1~14のいずれか一項に記載の有機EL素子用封止剤を塗布し、放射線を照射して前記有機EL素子用封止剤を硬化することにより封止構造を形成する工程を含む、有機EL素子の製造方法。
  18. インクジェット塗布により前記有機EL素子用封止剤を前記発光層形成面に塗布する、請求項17に記載の有機EL素子の製造方法。
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