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JP2024044447A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物 Download PDF

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JP2024044447A
JP2024044447A JP2022149962A JP2022149962A JP2024044447A JP 2024044447 A JP2024044447 A JP 2024044447A JP 2022149962 A JP2022149962 A JP 2022149962A JP 2022149962 A JP2022149962 A JP 2022149962A JP 2024044447 A JP2024044447 A JP 2024044447A
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稜人 矢野
Ayato Yano
昂太郎 佐伯
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Abstract

【課題】ポリマー色調に優れ、かつ染色性に優れたポリアミド樹脂組成物を得ること。【解決手段】ジアミン成分とセバシン酸からなるポリアミド樹脂であり、樹脂組成物の98重量%硫酸相対粘度ηrが2.4~3.0の範囲で、かつアミノ末端基量が10.0×10-5mol/gより多く、アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値が6.5×10-5mol/gより大きいポリアミド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ジアミン成分とセバシン酸を重縮合してなる、繊維とした際の染色性に優れたポリアミド樹脂組成物に関する。
ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂は、衣料用繊維、産業用繊維または樹脂成形用途として幅広く用いられており、強度、耐久性、耐熱性、ストレッチ性、染色堅牢性に優れている。近年では環境問題への関心の高まりから、植物由来成分を用いたポリアミドや染料の排水負荷が少なく、染色性に優れたポリアミドが求められている。
ジアミンとセバシン酸を重縮合してなるポリアミドはセバシン酸が植物由来成分であり、かつ石油由来の汎用ポリアミドであるポリヘキサメチレンアジパミド(N66)やポリカプラミド(N6)に劣らない強度、耐久性、耐熱性が得られることから環境配慮型のポリアミド樹脂として需要が高まっている。しかしながら、衣料用繊維で最も重要である染色性については、N66やN6と比較して大きく劣ることが課題である。
このような背景から、ジアミンとセバシン酸を重縮合してなるポリアミドの染色性を改善することが環境問題を解決する上で要望されている。
ジアミンとセバシン酸を重縮合してなるポリアミドの開発については、例えば1,5―ペンタンジアミンとセバシン酸を重縮合させたポリペンタメチレンセバカミド(N510)の開発において、立体障害性のN原子を有し、かつポリアミドを構成するアミノ基、カルボキシル基、アミド基の少なくとも一つと反応しうる含窒素官能基を有する耐熱剤を添加することで色調の優れたポリアミドが得られることが提案されている(例えば特許文献1参照)。1,5-ペンタメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族カルボン酸を主成分とするポリアミドと繊維状充填剤、耐衝撃性改良剤、難燃剤を主要構成成分とする耐熱性、低吸水性、滞留安定性に優れたポリアミド樹脂組成物を得る方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。環状アミノ末端基量を一定としたポリアミドと重量平均繊維長を一定範囲とした強度、熱時強度、耐久性に優れる長繊維強化ポリアミド樹脂組成物を得る方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。
国際公開第2013/129371号 国際公開第2010/113736号 特開2012―172086号公報
ジアミンとセバシン酸を重縮合してなるポリアミドの場合、汎用ナイロンであるN6やN66と比較して、炭素数が多いセバシン酸を含むため、衣料用繊維に適した重合度のポリアミド樹脂組成物を得ようとした場合、染色剤の染着座席となるアミド基、アミノ末端基は大幅に少なくなり、染色性が劣位となる。そのため、染色性を向上させるためには、アミノ末端基量を増加させればよく、重合時点でジアミン成分を過剰に添加する手法が一般的に知られている。
また、ポリアミド樹脂組成物は、プラスチック成形品、フィルム、繊維とその用途は多岐にわたっているため、耐久性を重視した重合度に設計されるのが一般的である。ジアミン成分を大過剰にすると、ジアミン成分とジカルボン酸成分のモルバランスが崩れる。いわば、重合度とアミノ末端基量はトレードオフの関係にある。
特許文献1に記載のポリアミド樹脂組成物は熱による黄変改善技術、特許文献2、3に記載のポリアミド樹脂組成物は耐衝撃性、耐熱安定性と耐久性改善技術であり、耐久性に優れるものの、アミノ末端基量としては一般的で、染色性は依然として劣位であった。
本発明は、ジアミン成分とセバシン酸を重縮合してなるポリアミドを、繊維化した際に、優れた染色性と強度が得られるポリアミド樹脂組成物を得ることを課題とする。
上記課題を解決するための、本発明は以下の構成からなる。
(1)ジアミン成分とセバシン酸からなるポリアミド樹脂であり、樹脂組成物の98重量%硫酸相対粘度ηrが2.4~3.0の範囲で、かつアミノ末端基量が10.0×10-5mol/gより多く、アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値が6.5×10-5mol/gより大きいポリアミド樹脂組成物。
(2)5μmフィルターでの濾圧上昇速度ΔPが3.0MPa/時間以下であることを特徴とする前記(1)のポリアミド樹脂組成物。
(3)ポリアミド樹脂組成物のペレットの黄化度YIが6.0以下である前記(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物
(4)ジアミン成分として、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサンのいずれか1種類以上を含む前記(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物。
(5)前記(1)または(2)のポリアミド樹脂組成物からなる繊維。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、繊維化した際に、優れた染色性と強度が得られるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
本発明は、ジアミン成分とセバシン酸を重縮合してなるポリアミド樹脂組成物に関する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、繰り返し単位の90モル%以上がセバシン酸単位で構成されたポリアミド樹脂組成物であることが好ましい。セバシン酸単位を多く含んでいることで、製糸工程で配向結晶化がし易くなるため得られる繊維の分子鎖の規則性が高まり、機械的特性や沸騰水収縮率、更には耐熱性に優れた繊維になるため、セバシン酸単位の比率は95モル%以上がより好ましく、98モル%以上が更に好ましい。
本発明の効果を損なわない範囲において、例えば10モル%以下のセバシン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。その他のジカルボン酸としては特に限定されないが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
セバシン酸には、石油を出発原料としたものと植物等のバイオマスを出発原料としたものがあるが、本発明においては植物由来原料等のバイオマスから得られたものが好ましい。セバシン酸がバイオマス由来であるかの同定方法として、例えば放射性炭素(C14)含有量を測定する方法がある。測定方法の詳細は、ASTM(米国材料試験協会)、CEN(ヨーロッパ標準化委員会)等で規格化されており、米国ではバイオマス割合の測定規格としてASTM-D6866法が提示されている。該測定方法は、もともと化石の年代を決定するための放射性炭素年代測定法を規格化したものであり、既に60年にわたり利用されているため、手法・技術としては確立されたものである。現在、JBPAやJORAの定めているバイオマス度の測定にもASTM-D6866法が用いられている。
本発明のジアミン成分は任意に選択することができる。例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタンなどの脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノヘキシル)メタンのような脂環式ジアミン、キシリレンジアミンのような芳香族ジアミンなどを挙げることができる。1種類のジアミン成分を用いても、2種類以上のジアミン成分を用いても良い。複数のジアミン成分を混合して使用する場合、主成分のジアミン成分は、副成分のジアミン成分の合計に対して、繰り返し単位の90モル%以上となることが好ましい。該範囲とすることで、製糸工程で配向結晶化し易くなるため得られる繊維の分子鎖の規則性が高まり、機械的特性や沸騰水収縮率、更には耐熱性に優れた繊維になる。主成分のジアミン単位の比率は95モル%以上がより好ましく、98モル%以上が更に好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、衣料用繊維、産業用繊維、あるいは樹脂成形用途として使用する場合、加工性や耐熱性の観点から、ポリマーの融点は200~300℃が好ましく、当該範囲内となるようなジアミン成分を選択することが好ましい。該融点範囲のポリマーを得るため、ジアミン成分は1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,10-ジアミノデカンが好ましい。また、工業的な入手のし易さより、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサンがより好ましい。
また、本発明におけるポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタムから誘導される構造単位を含むことができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、衣料用繊維に適した染色性と強度が得られることが重要であり、重合度を維持しつつ、アミノ末端基量を増加させることである。すなわち、98%硫酸相対粘度2.4以上、アミノ末端基量10.0×10-5mol/gより大きい、両特性を満たすことである。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、サンプル濃度0.01g/mLの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度(以下、98%硫酸相対粘度と称す)として2.4~3.0の範囲である。かかる範囲とすることで、衣料用繊維に要求される優れた強度を発現することができる。好ましくは2.5~2.9、更に好ましくは2.6~2.8である。98%硫酸相対粘度が2.4より低い場合、繊維化した際の強度が低下する。98%硫酸相対粘度が3.0より高い場合、ポリマーの総末端基量が低下し、染色性が低下する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、アミノ末端基量は10.0×10-5mol/gより大きい。10.0×10-5mol/gより大きくすることで、衣料用繊維に適した優れた染色性が発現する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ジカルボン酸成分がセバシン酸のため、N66やN6と比較して、分子中のメチレン鎖が長く、酸性染色の染着座席となるアミド結合が少ない。また、メチレン鎖が長くなるためポリマーの疎水性が高くなり、水溶性染料との親和性が悪くなる。そのため、本発明では、アミノ末端基量をN66やN6対比大幅に増やすことで染色性を改善している。一方、アミノ末端基量の増加により染色性は向上するものの、重合度は低下し繊維機械特性である強度も低下するため、強度の観点から、12.0×10-5mol/g以下とすることが好ましい。アミノ末端基量が10.0×10-5mol/g以下であると、染色性が低下し、特に濃色が得られない。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値は6.5×10-5mol/gより大きい。かかる範囲とすることで、高重合度でかつアミノ末端基量を十分に多くしたポリアミドが得られ、繊維化した際に優れた強度と染色性を発現することができる。アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値が6.5×10-5mol/g以下の場合、高重合度のポリアミドが得られず、繊維化した際に優れた強度を発現しない。アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値は、6.5×10-5mol/gより大きいことが好ましく、7.5×10-5mol/gより大きいことがさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、5μmフィルターでの濾圧上昇速度ΔPが3.0MPa/時間以下であることが好ましい。さらに好ましくは1.0MPa/時間以下である。重合時の温度を低くすることで熱劣化を十分に抑制し、かつ重合の缶壁などに付着して局部的に熱劣化を受けてゲル化することを十分に抑制しているため、ポリアミド樹脂組成物中の熱劣化物であるゲルの含有量が少なくなり、溶融紡糸時も濾圧上昇を低減することができる。ポリアミド樹脂組成中のゲルが多いと溶融紡糸する際に、ポリマーの配向性が悪化し、強度が低下する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、アミノ末端基量を十分に多くしたポリアミドであり、かつ熱劣化抑制により着色起因となる物質の発生が十分に抑制されているため、色調が良好なポリアミド樹脂組成物を得ることができる。色調が良好であれば、繊維化した際により優れた染色性を発現することができる。着色は、着色起因物量が非常に微量でも影響するため、起因物の特定および発生機構は不明であるが、熱劣化抑制のための重合温度、時間、圧力の適正化により達成できたと推定している。ペレットの黄化度YIは6.0以下が好ましい。なお、黄化度YIは後述する方法により測定された値をいう。YIが低いことは着色の少ないことを表す。着色が大きいと用途範囲が限定され、また製品価値の低下につながるためYIは低いほうが好ましい。本発明のポリアミド樹脂組成物のペレットの黄化度YIは2.0以下がより好ましく、更に好ましくは0.0以下である。黄化度YIの下限値は-10程度である。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で用途に応じてその他の添加剤を配合することができる。これら添加剤は、ポリアミドの共重合時に添加、もしくはポリアミド樹脂組成物と溶融混合することにより配合することができる。溶融混合する際には押出機を用いて溶融混合することもできる。
さらにこれら添加剤を含むマスターチップをチップブレンドしたり、ポリアミド樹脂組成物のペレットと物理的に混合したりした後、紡糸、押出成形、射出成形などの成形に供することにより配合することもできる。
このような添加剤の例としては、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、耐候剤(ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(脂肪族アルコール、脂肪族アミド等)、顔料(酸化チタン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、帯電防止剤(ポリエーテルアミド系帯電防止剤、ポリエーテルエステルアミド系帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム等)、充填剤(グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、他の重合体(他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート等)を挙げることができる。
本発明においてポリアミドの重縮合方法は特に限定されないが、本発明のポリアミド樹脂組成物を得るための好ましい製造方法を示す。
ポリアミドの重縮合方法には、一般に連続重合法およびバッチ重合法があり、いずれの方法でも生産は可能であるが、バッチ法によるポリアミドの重縮合法についてポリヘキサメチレンセバカミドを例にとり製造法の概略を示す。
セバシン酸と1,6-ジアミノヘキサンの等モル塩の水溶液を調整し、耐圧容器で加熱による濃縮を行う(濃縮工程)。前記等モル塩水溶液の水分率はハンドリングや軽量の都合を考慮して調整すればよいが、10~60%が好ましく、10~50%がさらに好ましく採用される。濃縮は、一旦重縮合装置とは別の装置で任意の水分率とすることもでき、この場合の濃縮後水分率は10~30%が好ましく、10~20%がさらに好ましい。
濃縮後の等モル塩水溶液に1,6-ジアミノヘキサンを目的のアミノ末端基量となるように追加添加する。本発明において、濃縮工程後にジアミン成分を追加添加することによって、重合度の低下を抑制しつつ、重合反応中のジアミン成分とセバシン酸成分の良好なモルバランスで重合でき、所望の重合度(98%硫酸相対粘度)、アミノ末端基量、アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値のポリアミド樹脂組成物が得られる。濃縮前に添加すると、比較的沸点の低いジアミン成分の蒸発量が多くなり、モルバランスが大きく崩れるため、所望の重合度範囲まで上げることができない。また、染色性の向上に必要となるアミノ末端基を上げるために追加添加したジアミン成分も蒸発してしまうため、所望のアミノ末端基量を得ることができない。追加添加量は目標とするアミノ末端基量となるように適宜調整すればよいが、1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸等モル塩に対して0.016~0.024モルとすることが、1,6-ジアミノヘキサンの蒸発量を抑え、セバシン酸と1,6-ジアミノヘキサンのモルバランスを保てるため好ましい。
濃縮後の等モル塩水溶液は、目標とする圧力となるまで密閉加熱を行う(昇圧工程)。容器内の圧力の最大は1.0MPa以上が好ましく、1.3MPa(絶対圧)以上がより好ましい。さらに好ましくは1.7MPa以上である。1.0MPa以上であれば、1,6-ジアミノヘキサンの蒸発を低減することができる。上限は特にないが重縮合装置の耐圧などを考慮して、好ましくは3.0MPa以下、さらに好ましくは2.0MPa以下である。
上記圧力を維持しながら、容器の内温が240~250℃となるまで水分を留去させた後(制圧工程)、さらに加熱を継続しながら容器内圧を徐々に0.1MPa(大気圧)まで放圧する(放圧工程)。放圧開始する温度は、240℃以上であれば放圧工程で内液が固化することなく重縮合ができ、また250℃以下であればポリマーの熱劣化を抑制することができる。
放圧工程の後、重縮合を進めるためには、容器内圧を大気圧の状態で不活性ガスを流通させて縮合水を除去する方法(常圧重合)と、容器内圧を減圧とする方法(減圧重合)とがある。容器内を減圧とする際にはポリマー中の水分が勢い良く気化し、発泡するため缶壁にポリマーが付着し、缶壁で熱せられて熱劣化する。この熱劣化物が再びポリマー液に混入することでミクロゲルが発生する。このミクロゲルは繊維化する際に濾圧上昇を引き起こし、原糸物性に影響を与えるため、本発明では常圧重合を行うことが好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガスなどが挙げられ、中でも窒素ガスがコストの面から好ましく用いられる。
目的の重合度まで重縮合を進めるための常圧反応時間は20~50分が好ましい。さらに好ましくは20~40分である。
また、常圧重合の容器内の最高温度は240~250℃とすることが好ましい。該範囲とすることで、長時間の常圧重合を実施しても熱劣化を抑制することができ、ポリマーの色調悪化やミクロゲルの発生低減が可能となる。より好ましくは245~250℃である。240℃以上であれば、ポリマーの溶融粘度が上がりすぎることなく容器内での流動性を良好に保つことができる。また250℃以下であれば熱劣化によるポリマーの色調悪化やミクロゲルの発生を抑制することができ、YI値やΔPを好ましい範囲に制御することができる。
1,5-ジアミノペンタンとセバシン酸からなるポリペンタメチレンセバカミドの場合の好ましい重合条件は、上述のポリヘキサメチレンセバカミドの好ましい重縮合方法と同じである。
1,4-ジアミノブタンとセバシン酸からなるポリテトラメチレンセバカミドの場合、ポリアミド樹脂組成物の融点が高くなるため、常圧重合の容器内の最高温度は250~260℃が好ましく、より好ましくは255~260℃である。250℃以上であれば、ポリマーの溶融粘度が上がりすぎることなく容器内での流動性を良好に保つことができる。また260℃以下であればポリマーの色調悪化も抑制できる。
かくして得られたポリアミド樹脂組成物は、容器からストランド状に押し出し、カッティングして、ペレットとすることが好ましい。このペレットを固相重合することによって、分子量を上昇させることも可能である。固相重合は、100℃~融点の温度範囲で、真空中、あるいは不活性ガス中で加熱することにより進行し、加熱重縮合では分子量が不十分なポリアミド樹脂組成物を高分子量化することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、繊維用途に好ましく用いられ、衣料用繊維用途に特に好ましく用いられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物から得られる繊維は、公知の溶融紡糸によって製造される。例えば、溶融されたポリアミドペレットをギヤポンプにて計量・輸送し、紡糸口金から吐出させ、紡糸口金の直下に設けられた紡糸口金面に向けて蒸気が噴射されている蒸気噴出装置と、蒸気噴射装置の下流側に設けられ、かつ冷却装置から冷却風が吹き流れている領域を通過させて糸条を室温まで冷却固化し、次いで給油装置で給油して糸条を集束し、流体交絡ノズル装置で交絡し、引き取りローラー、延伸ローラーを通過させる。その際、糸条を引き取りローラーと延伸ローラーの周速度の比に従って延伸する。さらに、糸条を延伸ローラーの加熱により熱セットし、ワインダー(巻取装置)で巻き取る。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[硫酸相対粘度ηr]
ペレット0.25gを濃度98重量%の硫酸100mlに対して1gになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98重量%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度ηrとした。
[アミノ末端基量]
ペレット1gを50mLのフェノール/エタノール混合溶液(フェノール/エタノール=80/20)に、30℃で振とう溶解させて溶液とし、この溶液を0.02Nの塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸量を求めた。また、上記フェノール/エタノール混合溶媒(上記と同量)のみを0.02N塩酸で中和滴定し要した0.02N塩酸の量を求める。そしてその差から試料1gあたりのアミノ基量を求めた。
[カルボキシル末端基量]
ペレット0.5gを精秤し、ベンジルアルコール20mlを加えて195℃の温度で溶解した後、フェノールフタレインを指示薬として、0.02規定の水酸化カリウムのエタノール溶液を用いて、195℃の状態で滴定してカルボキシル末端基量(mol/g)を求めた。
[黄化度YI]
スガ試験機(株)製のカラーコンピューターを用いてペレットの黄化度を測定した。該測定方法はJIS規格K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に従って測定した。
[濾圧上昇速度ΔP]
105℃で8時間、133Pa以下の真空下で乾燥したペレットを、濾過性試験機(富士フィルター工業(株)製メルトスピニングテスターCII)を用いて、濾圧上昇速度を測定した。フィルターは(株)渡辺義一製作所製ダイナロイフィルターX5(目開き5μm、濾過面積4.5cm)を使用し、ポリマー温度280℃、通過量4g/分で濾過を行った。フィルター取り付け後1時間経過時点の濾圧と2時間経過時点の濾圧との差を測定し、濾圧上昇速度ΔP(MPa/時間)とした。
[強度(原糸物性)]
A.強度、伸度
JIS L1013(2010)引張強さ及び伸び率に準じて繊維試料を測定した。試験条件としては、試験機の種類は定速緊張形、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/分にて行った。なお、切断時の強さが最高強さより小さい場合は、最高強さおよびそのときの伸び率を測定した。
強度、強伸度積は、下記式にて求めた。
強度=切断時の強さ(cN)/繊度(dtex)
伸度=切断時の伸び率(%) 。
B.繊度
1.125m/周の検尺器に繊維試料をセットし、500回転させて、ループ状かせを作成し、熱風乾燥機にて乾燥後(105±2℃、60分)、天秤にてかせ質量を量り、公定水分率を乗じた値から繊度(dtex)を算出した。前記A.項、B.項にて得られた、繊維試料の強度について、以下の3段階で評価した。
S:4.75cN/dtex以上、5.0cN/dtex以下
A:4.5cN/dtex以上、4.75cN/dtex未満
B:4.5cN/dtex未満 。
[染色性]
A.筒編地の作製
実施例で得られた22dtexの繊維糸条を、4本合糸(総繊度88dtex)し、筒編機にて度目が50となるように調整して筒編地を作製した。
B.筒編地の精錬
上記Aで得られた筒編地をノニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ノイゲンSS)2g/l水溶液を編み地1gに対し100ml用意し、60℃にて30分洗浄した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。
C.筒編地の染色
上記A.項、B.項で得られた筒編地を、以下の染料及び染色助剤を用いて染色した。
酸性染料:Erionyl Blue A-R 2.0質量%
染色助剤:酢酸 1.5%
酸性染料、染色助剤を含む染色浴に常圧98℃設定で45分間染色した後、流水にて20分水洗し、脱水機にて脱水、風乾した。
D.発色性
上記C.項にて得られた、染色後の筒編地の発色性について、以下の3段階で評価した。ηrが2.6、アミノ末端基量が3.5×10-5mol/g、アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値が-10.5×10-5mol/gのポリマーの発色性をBとする。
S:均一に全体が中色(淡~濃色)~濃色に着色
A:均一に全体が淡色~中色(淡~濃色)に着色
B:均一に全体が淡色に着色 。
参考例1(1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸塩の40重量%水溶液の調製)
1,6-ジアミノヘキサンをイオン交換水で希釈した水溶液を撹拌しているところに、1,6-ジアミノヘキサンと等モル量の放射性炭素(C14)含有量が70%以上であるセバシン酸((株)カーク製)を少量ずつ添加していき、中和点近傍では40℃のウォーターバスで加温して内温を33℃とし、1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸等モル塩の40重量%水溶液を調整した。同様の手法で1,5-ジアミノペンタン・セバシン酸等モル塩の40重量%水溶液、および1,4-ジアミノブタン・セバシン酸等モル塩の40重量%水溶液を調整した。
(実施例1)
参考例1で得た1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸の40重量%水溶液300kgをジャケット付きオートクレーブに仕込み、容器内を十分に窒素置換した後に加熱し、容器内温度200℃、容器内圧力0.2MPa(ゲージ圧)に制圧しながら、水溶液中の水分率が15重量%となるまで濃縮した(濃縮工程)。容器内の水溶液濃度は留出水量から判断した。濃縮終了後、1,6-ジアミノヘキサンを目標のアミノ末端基量となるように、1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸等モル塩に対して0.022モル追加添加した後、撹拌機と熱媒ジャケットを装備したオートクレーブに移液し、熱媒温度を290℃まで加熱させ、30rpmで攪拌しながら容器内圧力(ゲージ圧)1.7MPaに到達するまで昇圧した(昇圧工程)。この後容器内圧力(ゲージ圧)を1.7MPaで制圧し、容器内温度が245℃となるまで維持した(制圧工程)。その後、50分間かけて大気圧まで放圧した(放圧工程)。常圧重合終了時の内温が245℃以上250℃未満となるよう加熱温度を調節しながら、窒素ガスをポリマー1kg当り0.5L/分(50L/分)で流通させ、30分間ブローし、重合度を上昇させた(常圧工程)。その後容器内に0.5MPa(絶対圧)の窒素圧をかけ、重縮合により得られたポリアミド樹脂組成物を直径約3mmのストランド状に押し出し、長さ約4mmにカッティングし、ペレットを100kg得た(吐出工程)。得られたポリアミド樹脂組成物の結果を表1に示す。
得られたポリアミド樹脂組成物を水分率0.135重量%以下となるように乾燥後、紡糸温度280℃で、口金吐出孔96個を有する紡糸口金(孔径0.2mm、孔伸度0.7mm)より、吐出量38.6g/分で溶融吐出させた。溶融吐出させた後、冷却し、給油、交絡した後に3532m/分のゴデローラーで引き取り、続いて1.3倍に延伸した後に170℃で熱固定し、巻取速度4500m/分で総繊度22デシテックス、24フィラメントの繊維を得た。100kgのポリアミド樹脂組成物を紡糸した際の糸切れは0回であった。
(実施例2)
濃縮終了後に1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸等モル塩に対して1,6-ジアミノヘキサンを0.017モル追加添加した以外は、表1の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。なお、繊維化する際の延伸倍率は伸度が45~55%の範囲となるように任意で変更した。
(実施例3)
1,5-ジアミノペンタン・セバシン酸の40重量%水溶液を用い、濃縮終了後に1,5-ジアミノペンタン・セバシン酸等モル塩に対して0.022モルの1,5-ジアミノペンタンを追加添加した以外は、表1の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
(実施例4)
濃縮終了後に1,5-ジアミノペンタン・セバシン酸等モル塩に対して1,5-ジアミノペンタンを0.017モル追加添加した以外は、表1の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
(実施例5)
1,4-ジアミノブタン・セバシン酸の40重量%水溶液を用い、濃縮終了後に1,4-ジアミノブタン・セバシン酸等モル塩に対して0.022モルの1,4-ジアミブタンを追加添加した以外は、表1の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
(実施例6)
濃縮終了後に1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸対して1,6-ジアミノヘキサンを0.022モルと5重量%のε-カプロラクタムを追加添加した以外は、表1の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
Figure 2024044447000001
(比較例1)
濃縮終了後に1,6-ジアミノヘキサンを無添加とした以外は、表2の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
(比較例2)
濃縮終了後に1,5-ジアミノペンタンを0.013モル追加添加した以外は、表2の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
(比較例3)
濃縮前に1,6-ジアミノヘキサン・セバシン酸等モル塩に対して1,6-ジアミノヘキサンを0.017モル追加添加した以外は、表2の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
(比較例4)
濃縮終了後に1,6-ジアミノヘキサンを0.035モル追加添加した以外は、表2の重合条件でポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。
Figure 2024044447000002

Claims (5)

  1. ジアミン成分とセバシン酸からなるポリアミド樹脂であり、樹脂組成物の98重量%硫酸相対粘度ηrが2.4~3.0の範囲で、かつアミノ末端基量が10.0×10-5mol/gより多く、アミノ末端基量からカルボキシル末端基量を引いた値が6.5×10-5mol/gより大きい、ポリアミド樹脂組成物。
  2. 5μmフィルターでの濾圧上昇速度ΔPが3.0MPa/時間以下である、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物
  3. ポリアミド樹脂組成物のペレットの黄化度YIが6.0以下である請求項1または請求項2記載のポリアミド樹脂組成物
  4. ジアミン成分が、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサンから選ばれる1種類以上である請求項1または請求項2記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 請求項1または請求項2記載のポリアミド樹脂組成物からなる繊維。
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