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JP2023507016A - Boptaカルシウム錯体 - Google Patents

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JP2023507016A JP2022537709A JP2022537709A JP2023507016A JP 2023507016 A JP2023507016 A JP 2023507016A JP 2022537709 A JP2022537709 A JP 2022537709A JP 2022537709 A JP2022537709 A JP 2022537709A JP 2023507016 A JP2023507016 A JP 2023507016A
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Abstract

本発明は、塩の形態の(4RS)(4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オエート(5-))ペンタハイドロゲン(BOPTA)のカルシウム錯体、その製造方法、および該塩を含む製剤に関する。

Description

発明の分野
本発明は、一般に、塩の形態の(4RS)(4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オエート(5-))ペンタハイドロゲン(BOPTA)のカルシウム錯体、その製造、およびそれを含む医薬組成物の製造におけるその使用に関する。
発明の背景
金属キレート錯体、より一般的にはカルシウム(Ca2+)や亜鉛(Zn2+)との錯体が、金属イオンや放射性核種を含む重金属の治療のための医薬において知られている。例えば、文献1(Wax, P. M., J. Med. Toxicol. 2013, 9:303-307)には、捕捉剤として現在FDAが承認した市販のキレート剤について報告されている。
カルシウム錯体の例は、文献2(US9447053 B2 - Bayer Intellectual Property GmbH)、および文献3(EP1210353)あるいは文献4(US5876695 - Schering AG)に記載されている。
出願人は、新たなカルシウム錯体化合物、すなわち、(4RS)-[4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オエート(5-)]ペンタハイドロゲン キレートリガンド(別名BOPTAとして知られる)のカルシウム錯体化合物を見出した。出願人は、また、このような化合物の有利な製造および単離を可能にする新しい合成手順を見出した。
実のところ、本出願人が観察したところ、ガドベネート(Gd-BOPTA)ジメグルミンの固体形態を製造するための公知の製造方法(例えば、文献5(WO2016012386)参照)は、Ca-BOPTAの効果的な製造には使用できないことが分かった。
出願人は、予想外にも、BOPTAのカルシウム錯体が、適切な操作条件を用いて、塩として、固体の、そして好都合にろ過可能な物理的形態で得られることを見出した。
したがって、出願人は、初めて、医薬用途に適した、固体の形態のCa-BOPTA塩の製造方法を提案する。提案された製造方法は、その良好な溶解性、良好な流動性、良好な収率および高い品質によって医薬溶液の製造に有利に使用できる、固体の生成物を得ることを可能にする。
本発明は、一般に、(4RS)(4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オエート(5-))ペンタハイドロゲン(BOPTA)のカルシウム錯体、およびその塩、それらの製造、ならびにそれらを含む医薬組成物の製造におけるそれらの使用に関する。
好ましい態様において、本発明は、式(I):
Figure 2023507016000001
[式中、Xは、好ましくはナトリウム(Na)またはカリウム(K)などのアルカリ金属、およびアンモニウム(NH )から選択される、より好ましくはNaである、1価のカチオンを表す]
で示される、塩としてのBOPTAのカルシウム錯体に関する。
本発明の別の態様は、式Iの化合物の固体形態の製造方法に関する。
さらなる態様において、本発明は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈剤及びガレノス添加剤と混和した式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。
発明の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲において、BOPTAなる語は、
式(III):
Figure 2023507016000002
で示されるキレート剤(4RS)-[4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オエート(5-)]ペンタハイドロゲン、または
式(III’):
Figure 2023507016000003

で示されるそのアニオン形態、または
その任意の部分的アニオン形態である。
本明細書および特許請求の範囲において、キレート剤およびリガンドという表現は互換的に使用される。
本明細書で定義するように、BOPTAのカルシウム錯体(アニオン形態)は、
式(II):
Figure 2023507016000004
で示される化合物である。
「錯体」なる用語は、化学分野における慣用的な意味を有する。一般に、金属と共有できる電子対を1つ以上有するイオンまたは分子である、1つ以上のリガンドに配位する中心の金属原子またはイオンを含んでなる金属錯体を指す。
本発明の式IIで示される錯体は、配位中心としてのカルシウムイオン(すなわちCa2+)およびキレート剤としてのBOPTAを含んでなる。本発明で好ましいのは、BOPTAリガンドと錯体を形成した単一のカルシウムを有する、BOPTAモノカルシウム錯体化合物である。BOPTAリガンドは、完全または部分的なイオン形態であってよい。
本明細書および特許請求の範囲において、式IIで示されるBOPTAのカルシウム錯体は、Ca-BOPTA、またはCa-BOPTA錯体またはBOPTAのカルシウム錯体と互換的に示される。
本発明の一態様は、薬学的に許容される塩の形態である式IIで示されるCa-BOPTA錯体に関する。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される塩」は、カルシウムイオンの錯体形成に関与しないBOPTAのカルボキシル基の少なくとも1つがイオン形態(すなわち、-COO)として存在し、生理学的に適合する塩基の対応するカチオンと相互作用するCa-BOPTA錯体を指す。このフリーのカルボン酸基の実際の数は、例えば、その錯体を含む溶液のpHに依存し得る。
Ca-BOPTAの塩を製造するために使用することができる好適なカチオンの例は、無機の(一価)カチオンである。好ましいカチオンには、カリウム(K)やナトリウム(Na)などのアルカリイオンの群、またはアンモニウムイオン(NH )が含まれる。
好ましい実施形態において、本発明は、式Ia:
Figure 2023507016000005
で示される、三ナトリウム塩としてのBOPTAのカルシウム錯体に関する。
式Iaで示される化合物は、(4RS)-[4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オエート(5-)]カルシエート(3-)三ナトリウムとして示すこともできる。
「式Iaで示されるカルシウム錯体三ナトリウム塩」及び「式Iaで示される化合物」という表現は、本明細書及び特許請求の範囲において互換的に使用される。
本発明の別の態様は、式Iの化合物の固体形態を製造するための製造方法であって、
a)水性溶媒中で、カルシウムイオンを含む化合物、リガンドBOPTAおよびカチオンXを含む化合物を混和することにより、式Iの化合物の水溶液を得ること;
b)任意選択で、ステップa)で得られた溶液のpHを調整すること;
c)得られた溶液にエタノールを添加し、式Iの化合物の固体形態の沈殿を得ること;
d)得られた固体形態の式Iのカルシウム錯体を回収すること
を含んでなる製造方法に関する。
本発明の製造方法は、医薬化合物に関する国際機関が定めた品質基準に有利に適合する式Iで示される化合物の結晶性の固体形態の単離を可能にする。
ステップa)
本発明の製造方法のステップa)は、カルシウムイオンを含む化合物、リガンドBOPTA、およびカチオンXを含む化合物を、水性溶媒中で混和することによって式Iの化合物の水溶液を得ることを含んでなる。
水性溶媒は、水、生理食塩水及び極性の高い有機溶媒などの高極性溶媒の群、及びそれらの適当な混合物から好ましく選択される。より好ましくは、前記水性溶媒は、水を含んでなる。
本明細書において、「カルシウムイオン(Ca2+)を含む化合物」、略して「カルシウム化合物」という表現は、カルシウムカチオンとアニオンがイオン結合した電気的に中性な(実効電荷を持たない)化合物を指す。適当なカルシウム化合物としては、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、酢酸カルシウム(Ca(CHCOO))、酸化カルシウム(CaO)および塩化カルシウム(CaCl)などが挙げられる。本発明によれば、カルシウムイオンを含む化合物は、好ましくは水酸化カルシウム又は炭酸カルシウムである。
本発明の実施形態において、ステップa)のカチオンXを含む化合物は、塩基、好ましくは無機塩基であり、該塩基のカチオンは、BOPTAのフリーのカルボン酸基と塩を形成することが可能である。
適当な無機塩基の例としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物または炭酸塩、例えば、炭酸カリウム(KCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)や、アンモニウムの水酸化物または炭酸塩、例えば、炭酸アンモニウム((NHCO)、炭酸水素アンモニウム((NH)HCO)、水酸化アンモニウム(NHOH)などが挙げられる。好ましくは、ステップa)の塩基は、水酸化ナトリウム(すなわち、NaOH)である。
出願人によって観察されたように、例えばメグルミンまたはカルシウムの塩としてCa-BOPTA錯体を得るために、ステップa)で有機塩基またはアルカリ土類金属の塩基を添加すると、満足のいかない結果(例えば、粘着性固体の塊の形態の最終産物)が得られた。
本発明の実施形態では、ステップa)で、カチオンXを含む化合物を、水溶液として、カルシウムイオンおよびリガンドBOPTAを含む化合物と混和させる。
別の実施形態では、ステップa)で、カチオンXを含む化合物を、固体形態として、カルシウムイオンおよびリガンドBOPTAを含む化合物と混和させる。
本発明の好ましい実施形態では、ステップa)における、BOPTAとカチオンXを含む化合物とのモル比は、好ましくは1:1.5~1:3 mol/molであり、より好ましくは1:2.5~1:3 mol/mol、より好ましくは1:2.5 mol/molである。
ステップa)は、水性溶媒中で、カルシウムイオンを含んでなる化合物、リガンドBOPTA、およびカチオンXを含んでなる化合物を混和し、得られた混和物を0.5~24時間、好ましくは2~20時間、より好ましくは4時間撹拌して、式Iの化合物の水溶液を得る。
本発明によれば、ステップa)の間に、Ca2+イオンとBOPTAとの間で錯体形成反応が起こる。この錯体形成反応の生成物は、式IIで示されるCa-BOPTA錯体である。
ステップa)において、Ca2+イオンとBOPTAとの理論化学量論比は、2~0.5、好ましくは0.95~1.05、さらに好ましくは1である。
別の実施形態では、ステップa)の終了時に、カルシウムイオンを含む化合物またはBOPTAの追加量を混和することができる。この追加量により、フリーのリガンドまたはフリーのCa2+を含まない、あるいは、フリーのCa2+またはフリーのBOPTAの過剰量が少ない、式Iの化合物の水溶液を得ることができる。
好ましい実施形態では、ステップa)の終了時で、式Iの化合物の水溶液は、過剰量のフリーのCa2+を含み、この過剰量は、Ca-BOPTAに対し0.09モル当量(すなわち9% mol/mol)より少なく、より好ましくは0.05モル当量(すなわち5% mol/mol)より少なく、最小で0.9×10-4モル当量(0.009% mol/mol)である。
出願人によって観察されたように、10% mol/molより多い過剰量のCa2+を使用してCa-BOPTA三ナトリウム塩を製造すると、医薬用途にあまり適さない最終産物が得られることになりかねない。予想外にも、約2% mol/mol過剰のカルシウムイオンを使用すると、提案された製造方法の終了時に、良好な特性と良好な収率(すなわち94.5%)を有するCa-BOPTA三ナトリウムの適切な固体形態が得られた。
ステップb)
本発明の製造方法の任意選択のステップb)は、ステップa)で得られた式Iの化合物の水溶液のpHを、好ましくは塩基の添加により調整することを含んでなる。
ステップb)は、ステップa)の溶液のpHが所望の範囲にない場合に必要である。
本発明の好ましい実施形態では、ステップb)で、pHを、6.5~9.5、より好ましくは7.0~8.5、さらに好ましくは7.5に近い値になるように調整する。
出願人によって観察されたように、低いpHの値(例えばpH6.1)の式Iの化合物(特に式Iaで示される)の水溶液では、最終生成物が粘着性の塊として形成した。同様に、9.5より高いpHの値では、最終生成物が固体の塊の形態で得られた。これら両方の場合では、提案した製造方法の終了時に得られる最終生成物は、医薬用途にはあまり適さないものであった。
本発明のある実施形態では、ステップb)でのpHを、塩基、好ましくは無機塩基の添加によって調整し、ここで該塩基のカチオンは、BOPTAのフリーのカルボン酸基と塩を形成することが可能である。
本発明によれば、ステップb)における適当な無機塩基の例としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物または炭酸塩、例えば、炭酸カリウム(KCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)や、アンモニウムの水酸化物または炭酸塩、例えば、炭酸アンモニウム((NHCO)、炭酸水素アンモニウム((NH)HCO)および水酸化アンモニウム(NHOH)などである。
本発明の好ましい実施形態では、ステップb)の塩基は、ステップa)の塩基と同じである。さらに好ましい実施形態では、ステップb)の塩基は、水酸化ナトリウムである。
本発明の別の実施形態では、ステップb)の塩基は、ステップa)の塩基のカチオンとは異なるカチオンを含んでなる。この別の実施形態では、ステップb)の終了時に、混合塩の形態の式IIで示されるCa-BOPTA錯体の溶液が得られる。
本明細書において、「混合塩」なる表現は、式IIで示されるCa-BOPTA錯体の薬学的に許容される塩を示し、ここで、イオン形態(すなわちCOO)で存在しカルシウムイオンの正電荷によって相殺されない、BOPTAのカルボキシル基は、生理的に適合する塩基の少なくとも2つの異なる対応するカチオンと相互作用し得る。このフリーのカルボン酸基の実際の数は、例えば、pHの値に依存して、それらがプロトン化された形態にある場合があるので、錯体を含む溶液のpHに依存し得る。
本発明のある実施形態では、提案する製造方法のステップa)およびステップb)は、0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、より好ましくは15℃~60℃の反応温度で実施する。
本発明の好ましい実施形態では、ステップb)の終了時に、式Iの化合物の溶液が得られ、ここで、該化合物の濃度(溶液の全重量に対するw/w)は、30%~80%、好ましくは40%~75%、より好ましくは45%~70%である。
好ましくは、ステップb)の終了時に、式Iの化合物の水溶液を蒸留して溶液を濃縮し、上記で定義した濃度の式Iの化合物の溶液を得る。
この蒸留プロセスは、好ましくは50℃~100℃、より好ましくは50℃~70℃、さらに好ましくは50℃~60℃の温度で実施する。
この蒸留プロセスは、好ましくは大気圧にて(すなわち101325 Pa)、またはより好ましくは減圧下で、例えば0~2.0×10 Pa、好ましくは2.5×10~1.5×10 Pa、より好ましくは5.0×10~1.0×10 Paにて実施する。
本発明のある実施形態では、前記蒸留プロセスは、50~60℃の温度にて、5.0×10~1.0×10 Paの減圧下で実施する。
ステップc)
本発明によれば、提案された製造方法のステップc)は、式Iの化合物、好ましくは式Iaで示される化合物を固体形態で沈殿させるために、Ca-BOPTA塩の得られた溶液にエタノールを加えることを含んでなる。
出願人は、Ca-BOPTA三ナトリウム塩の沈殿のための溶媒をいくつか(アセトンや数種類の短鎖アルコール、例えば1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール)テストした。しかし、Ca-BOPTA三ナトリウムの単離におけるこれらの予備的な試みは、油性の生成物または許容できない特性(例えば、ゴム状の、粘着性のまたはガラス状の固体)を有する固体など、不満足な結果をもたらし、いくつかの例(すなわちメタノール)では沈殿さえできなかった。
このように、出願人は、驚くべきことに、Ca-BOPTA三ナトリウム塩溶液にエタノールを添加することによって、Ca-BOPTA三ナトリウム塩の適切な固体形態を得ることが可能であることを見出した。
本明細書において、「適切な固体形態」なる表現は、高い溶解度、高い溶解速度、高い純度、および高い流動性などの適切な物理化学的特性を有する、医薬用途に適したCa-BOPTA三ナトリウムのろ過可能な固体形態を示す。
本発明の好ましい実施形態によれば、提案された製造方法のステップc)は、式Iaで示される化合物を固体形態で沈殿させるために、Ca-BOPTA三ナトリウム塩の水溶液にエタノールを添加することを含んでなる。
本発明の別の実施形態によれば、提案された製造方法のステップc)は、エタノールにこの水溶液を添加して実施することができる。
本発明のある実施形態では、BOPTAとエタノールとの重量比は、好ましくは1:4~1:30 w/w、より好ましくは1:5~1:15 w/w、さらにより好ましくは1:7~1:12 w/wである。
本発明の好ましい実施形態では、ステップc)におけるCa-BOPTA三ナトリウムの沈殿は、式Iaで示されるカルシウム錯体の溶液の濃度が30%~80%、好ましくは40%~75%、より好ましくは45%~70%の場合に得られる。
例えば、出願人は、式Iaで示される化合物の濃度が40%より低い場合は沈殿が生じず、水溶液の濃度が70%より高い場合は非常に粘性が高く濾過および乾燥が困難な非常に薄い(very thin)固体が形成することを観察した。
ステップc)は、好ましくは20~80℃、より好ましくは40~70℃、さらにより好ましくは50~60℃の温度で実施する。
本発明のさらなる実施形態によれば、提案された製造方法のステップc)の終了時に、沈殿したCa-BOPTA三ナトリウム塩の懸濁液を、30℃未満、より好ましくは20℃未満、さらに好ましくは10℃の温度まで冷却する。
ステップd)
本発明によれば、提案された製造方法のステップd)は、得られた式Iのカルシウム錯体の固体形態、好ましくは式Iaで示されるカルシウム錯体の固体形態を回収することを含んでなる。
本明細書および特許請求の範囲において、「単離手順」なる表現は、化学分野における慣用の意味を有し、混合物から物質を分離し、それにより不純物と考えられる物質を除去することを意図した任意のプロセスを示す。
適当な単離手順の例は、濾過および遠心分離である。
本発明の好ましい実施形態では、式Iaで示されるCa-BOPTA三ナトリウム塩の固体形態を濾過により単離する。
本発明の別の実施形態によれば、単離後、Ca-BOPTA三ナトリウム塩をエタノールで洗浄し、減圧下、好ましくは0~2.0×10 Pa、より好ましくは2.5×10~1.5×10 Pa、さらにより好ましくは5.0×10~1.0×10 Paで、少なくとも30℃以上、好ましくは30℃~100℃、より好ましくは50℃~70℃、さらにより好ましくは50℃~60℃の温度にて、乾燥させる。
このようにして調製したCa-BOPTA三ナトリウム塩は、非常に高い品質によって特徴付けられる。この塩の固体形態は無色で、水に溶解し、純度は97.0%以上で、いくつかのバッチでは99.5%以上である。
TG-IR、DSC、IRおよび元素分析は、式Iaで示される提案された化合物と一致した。
プロセス全体は、高い再現性と作業性によって特徴付けられる。実施例で詳細に説明するように、全体の収率は約94%に達する。
本発明の別の態様は、有効量の式Iの化合物、好ましくは式Iaで示される化合物、および1つ以上の薬学的に許容される担体、ガレノス希釈剤および添加剤を含み、生体の器官または組織における重金属の保持を制限または防止するための、捕捉剤としての使用に有用な、医薬組成物に関する。
この医薬組成物は、文献で公知の方法に従い製造することができ、本発明のカルシウム錯体の塩を、ガレノス製剤に一般的に用いられる添加剤とともに水性媒体に溶解した後、任意選択でその溶液を滅菌する。適当な添加剤は、例えば、生理学的な緩衝剤、電解質、および酸化防止剤である。
さらなる態様では、本発明は、治療的または診断的使用のための、医薬としての、式Iの化合物、好ましくは式Iaで示される化合物、またはそれを含む医薬組成物の、使用に関する。ある実施形態では、医薬用途は、重金属の捕捉剤としての、例えば、生体における既知のまたは可能性のある重金属の保持または蓄積を防止、除去または低減するための捕捉剤としての使用である。本発明のカルシウムキレートで処置(すなわち、除去または低減)され得る金属としては、錯体からカルシウムを置換する2価および3価の金属イオンが挙げられる。適当な例としては、鉛;遷移金属(クロム、鉄、カドミウム、マンガン、水銀など);ならびにランタノイドおよびアクチノイド(それぞれMRI診断や核医学で典型的に用いられる常磁性金属イオンおよび放射性核種を含む)が挙げられる。
注目すべきことに、本発明の製造方法は、金属の保持を低減または防止するための医薬組成物の製造における捕捉剤としての使用を意図した、CaBOPTA(三ナトリウム)塩の製造のために、大規模であっても便利に採用することができる。
以下の実施例は、本発明をさらに説明するのに役立つであろう。
実施例1:直接の沈殿によるCa-BOPTA三ナトリウム塩の製造
メカニカルスターラーを備えた1.5Lの反応器中で、水酸化カルシウム(68.20g,分析99.1% w/w,0.912mol)を水750mLに懸濁させる。20℃にてBOPTA(500.0g,分析91.39%,0.890mol)を何回かに分けて投入した後、28%NaOH溶液(317.8g)を約1時間で滴加する。
この懸濁液を4時間攪拌する。最後に透明な溶液が得られ、28%NaOHを加えてpHを7.47に調整する。
この溶液を50~60℃にて、減圧下(50~100mbar、すなわち5.0×10~1.0×10 Pa)で部分的に蒸留し、生成物の濃度を64.9%w/wにする。次いで、温度を40~50℃に保ちながら、エタノール(3.85kg)を2.5時間で添加する。
得られた懸濁液を同じ温度でさらに0.5時間撹拌した後、4時間で0℃に冷却し、この温度で11時間維持する。最後に固体をろ過により単離し、エタノール(750g、あらかじめ0℃に冷却)で洗浄し、減圧下(p<30mbar、すなわち<3.0×10 Pa)、50℃にて36時間乾燥させる。
575.8gのCa-BOPTA三ナトリウムが得られる(収率94.5%)。
Figure 2023507016000006
実施例2:逆沈殿によるCa-BOPTA三ナトリウムの製造
メカニカルスターラーを備えた2Lの反応器中で、ペレット状のNaOH(80.28g,2.01mol)およびBOPTA(450.0g,分析91.6% w/w,0.803mol)を25℃にて1575mLの水に溶解させる。次に、攪拌しながら、CaCO(80.36g,0.803mol)を何回かに分けて約1時間で投入する。
混合物を25℃で1時間維持した後、55℃に4時間加熱して無水炭酸を除去する。最後に、30%NaOHを加えてpHを7.05に調整する。
この溶液を50~60℃にて、減圧下(50~100mbar、すなわち5.0×10~1.0×10 Pa)で部分的に蒸留し、生成物の濃度を51.6%w/wにする。
5Lの反応器に4.92kgのエタノールを投入し、濃縮した溶液を20℃にて2.5時間で添加する。得られた懸濁液をさらに1時間撹拌した後、濾過する。湿った固体を減圧下(p<30mbar、すなわち<3.0×10 Pa)、40℃にて16時間乾燥させる。
400.3gのCa-BOPTA三ナトリウムが得られる(収率80.7%)。
実施例3 2-プロパノールを用いたCa-BOPTA三ナトリウムの製造
実施例2に記載したとおりに製造したCa-BOPTA三ナトリウム(200g、濃度51.8%)の水溶液を、45℃にて、減圧下(50~100mbar、すなわち5.0×10~1.0×10 Pa)で部分的に蒸留して濃度を63%にする。
同じ温度で2-プロパノール(655.0g)を1.5時間で滴加する。次いで、懸濁液を室温に冷却する。油性の粘着性のある生成物が得られる。
実施例4 アセトンを用いたCa-BOPTA三ナトリウムの製造
メカニカルスターラーを備えた1.5Lの反応器に、30%NaOH溶液(297.4g)および水(238.4g)を投入する。BOPTA(500.0g,分析91.63%,0.890mol)を20℃にて何回かに分けて投入する。
完全に溶解したら、水酸化カルシウム(66.1g,0.89mol)を添加する。
得られた懸濁液を1時間撹拌し、55℃に加熱し、撹拌しながらさらに4時間維持する。最後に混合物を25℃に冷却し、この温度で一晩維持する。次いで、30%NaOHを加えてpHを7.01に調整する。
このCa-BOPTA三ナトリウムの水溶液(200g、濃度46.0%)を、40℃にて、減圧下(50~100mbar、すなわち5.0×10~1.0×10 Pa)で部分的に蒸留して濃度を55.1%にする。
同じ温度でアセトン(911.6g)を加える。次いで、懸濁液を40℃で一晩維持する。油性の粘着性のある生成物が得られる。
実施例5 1-プロパノールを用いたCa-BOPTA三ナトリウムの製造
メカニカルスターラーを備えた1.5Lの反応器中で、炭酸カルシウム(90.93g,0.91mol)を水212mLに懸濁させる。BOPTA(500.0g,分析91.48%,0.89mol)と30%NaOH溶液(317.8g)を25℃にて交互に約8時間で添加する。
懸濁液を1時間で50℃に加熱し、3時間撹拌する。次いで、懸濁液を1時間で25℃に冷却し、この温度で一晩維持する。最後に透明な溶液が得られ、30%NaOHを加えてpHを7.0に調整する。
このCa-BOPTA三ナトリウムの水溶液の一部(110g、濃度46.7%)を40℃で加熱する。同じ温度で1-プロパノール(179.5g)を添加する。次いで、得られた濁った混合物を50℃に加熱し、完全な溶液を得、4時間で5℃に冷却する。油状の生成物が得られる。
実施例6 pH6.1の溶液によるCa-BOPTA三ナトリウムの製造
メカニカルスターラーを備えた1Lの反応器中で、水酸化カルシウム(20.26g,分析99.1% w/w,271mmol)を水150mLに懸濁させる。20℃にてBOPTA(150.0g,分析91.8%,268mmol)を何回かに分けて投入した後、30%NaOH溶液(89.37g)を約1時間で滴加する。
懸濁液を16時間撹拌する。最後にpH6.07の透明な溶液が得られる。
この溶液を50~60℃にて、減圧下(50~100mbar、すなわち5.0×10~1.0×10 Pa)で部分的に蒸留し、生成物の濃度を59.03% w/wにする。次いで、温度を40℃に保ちながら、エタノール(1.06kg)を2.5時間で添加する。
粘着性のある塊状の生成物が得られる。
実施例7 10% mol/mol過剰のCa 2+ によるCa-BOPTA三ナトリウムの製造
メカニカルスターラーを備えた1.5Lの反応器中で、水酸化カルシウム(17.64g,分析99.1% w/w,236mmol)を135mLの水に懸濁させる。20℃にてBOPTA(120.0g,分析91.8%,215mmol)を何回かに分けて投入した後、30%NaOH溶液(71.50g)を約1時間で滴加する。
この懸濁液を16時間攪拌する。最後に透明な溶液が得られ、30%NaOHを加えてpHを7.06に調整する。
この溶液を50℃にて、減圧下(50~100mbar、すなわち5.0×10~1.0×10 Pa)で部分的に蒸留し、生成物の濃度を65.6%w/wにする。次いで、温度を40~50℃に保ちながら、エタノール(993g)を約2時間で添加する。
得られた懸濁液を同温度でさらに0.5時間撹拌した後、4時間で0℃に冷却し、この温度で16時間維持する。
得られた固体は粘着性があり、反応器の壁面に大きな塊やクラスト(crusts)を形成し、定量的に回収することができない。
実施例8 Ca-BOPTAトリメグルミンの製造
メカニカルスターラーを備えた4Lの反応器中で、メグルミン(174.2g、892mmol)を500mLの水に溶解し、15~20℃にてBOPTA(250.0g、分析91.6%、446mmol)と水酸化カルシウム(34.22g、分析99.1% w/w、457mmol)を何回かに分けて投入する。混合物を20℃にて16時間攪拌する。最後に透明な溶液が得られ、メグルミンを加えてpHを7.50に調整する。
この溶液を50℃にて、減圧下(50~100mbar、すなわち5.0×10~1.0×10 Pa)で部分的に蒸留し、生成物の濃度を65.87%w/wにする。
次いで、温度を40~50℃に保ちながら、エタノール(2.50kg)を約2時間で添加する。
得られた懸濁液を同温度でさらに0.5時間撹拌した後、4時間で3℃に冷却し、この温度で14時間維持する。
得られた固体は粘着性があり、大きな塊を形成している。

Claims (20)

  1. 式I
    Figure 2023507016000007
    [式中、Xはアルカリ金属カチオン及びアンモニウム(NH )から選択される1価のカチオンを表す]
    で示される化合物。
  2. Xがナトリウムである、請求項1記載の化合物。
  3. 請求項1記載の化合物の固体形態を製造する方法であって、
    a)カルシウムイオンを含む化合物、式III’
    Figure 2023507016000008
    で示されるリガンドBOPTA、およびカチオンXを含む化合物を水性溶媒中で混和することにより、式Iの化合物の水溶液を得ること;
    b)任意選択で、ステップa)で得られた溶液のpHを調整すること;
    c)得られた溶液にエタノールを添加し、式Iの化合物の固体形態の沈殿を得ること;
    d)得られた固体形態の式Iのカルシウム錯体を回収すること
    を含んでなる製造方法。
  4. カルシウムイオンを含む化合物が、水酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムである、請求項3に記載の製造方法。
  5. ステップa)のカチオンXを含む化合物が、アルカリ金属のまたはアンモニウムの水酸化物または炭酸塩から選択される塩基である、請求項3または4に記載の製造方法。
  6. ステップa)のカチオンXを含む化合物が水酸化ナトリウムである、請求項5に記載の製造方法。
  7. ステップa)において、式III’の化合物とカチオンXを含む化合物とのモル比が、1:1.5~1:3 mol/molである、請求項3~6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記比が1:2.5~1:3 mol/molである、請求項7に記載の製造方法。
  9. ステップa)の終了時に、水溶液がCa-BOPTAに対して過剰のフリーのCa2+を含む、請求項3~8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記フリーのCa2+の過剰量が、Ca-BOPTAに対して0.09モル当量より低い、請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記フリーのCa2+の過剰量が、Ca-BOPTAに対して0.05モル当量より低い、請求項9に記載の製造方法。
  12. 任意選択のステップb)が、ステップa)で得られた式Iの化合物の水溶液のpHを塩基の添加により調整することを含む、請求項3~11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 塩基が、アルカリ金属のまたはアンモニウムの水酸化物または炭酸塩から選択される、請求項12に記載の製造方法。
  14. 塩基が水酸化ナトリウムである、請求項13に記載の製造方法。
  15. 任意選択のステップb)で、pHが6.5~9.5に調整される、請求項3~14のいずれかに記載の製造方法。
  16. pHが7.0~8.5に調整される、請求項15に記載の製造方法。
  17. 式III’の化合物とエタノールの比率が、1:4~1:30(w/w)である、請求項3~16のいずれかに記載の製造方法。
  18. 前記比が、1:5~1:15である、請求項17に記載の製造方法。
  19. 請求項1または請求項2に記載の化合物の有効量と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、ガレノス希釈剤および添加剤を含む、医薬組成物。
  20. 医薬としての請求項1または請求項2記載の化合物の使用。
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