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JP2023001142A - インクジェット印刷用水系インク - Google Patents

インクジェット印刷用水系インク Download PDF

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Abstract

【課題】耐擦過性に優れた印刷物を得ることができるインクジェット印刷用水系インク、及びそれを用いるインクジェット印刷方法を提供する。【解決手段】[1]低吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷用水系インクであって、顔料、ポリマー分散剤、水溶性有機溶媒、及び水を含有し、該水溶性有機溶媒が、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)と、炭素数4~6のアルカンジオール、1,3-プロパンジオール、及び環状アミド化合物から選ばれる1種以上の溶媒(S2)と、を含み、該水溶性有機溶媒中のジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)の含有量が40~95質量%である、インクジェット印刷用水系インク、及び[2]前記インクを用いて低吸液性印刷媒体に印刷するインクジェット印刷方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット印刷用水系インク、及びそれを用いるインクジェット印刷方法に関する。
インクジェット印刷方式は、微細なノズルからインク液滴を直接吐出し、印刷媒体に付着させて、文字や画像が印刷された印刷物等を得る印刷方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、印刷媒体に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。近年特に、印刷物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料を用いるものが主流となってきている。
ところで、食品等を包装するための軟包装が広く行われている。軟包装では、合成樹脂等からなる薄い柔軟性のある低吸液性印刷媒体に、包装される商品の名称等を表示するための印刷を行う。このような軟包装印刷には、主にグラビア印刷が用いられているが、油性グラビアインクは、顔料、樹脂等の成分を有機溶媒中で分散又は溶解させているため、作業環境負荷等の問題がある。
そこで、油性グラビア印刷に代えて、エネルギー線硬化型インクを用いたインクジェット印刷方法が検討されている。しかしながら、エネルギー線硬化型インクには、臭気の懸念がある。特に、軟包装は、食品の包装に用いられることが多いため、この課題の影響が大きくなっている。
このため、作業環境への負担が少ないインクジェット印刷用水系インクの開発が進められている。
例えば、特許文献1には、連続吐出性が優れ、非吸水性記録媒体に記録しても、ローラー転写汚れや、色間混色のない良好な記録物を得ることができる水性インクとして、顔料、水不溶性ポリマー、有機溶媒、界面活性剤を含有する水性インクであって、有機溶媒が、特定のグリコールエーテルを含み、界面活性剤が、特定量のシリコーン系界面活性剤を含み、有機溶媒の含有量が25~50質量%であり、該水性インク中の沸点250℃以上の高沸点有機溶媒の含有量が5質量%以下である、水性インクが開示されている。
特許文献2には、保存安定性等に優れ、低吸水性の記録媒体に画像を形成した際の画像均一性等に優れるインクジェット記録用水系インクとして、顔料、水不溶性ポリマー、有機溶媒を含有する水系インクであって、有機溶媒が、ジエチレングリコールイソプロピルエーテル(c1)と、1-オクタノール/水分配係数が該溶媒(c1)よりも小さな値の有機溶媒(c2)とを含有し、顔料と、水不溶性ポリマーと、該溶媒(c1)との合計含有量が5.0質量%以上であり、顔料と水不溶性ポリマーとの合計含有率と、該溶媒(c1)の含有率を乗じた値が10~300である、水系インクが開示されている。
特許文献3には、吐出性に優れ、低吸水性の記録媒体に印刷した場合でも、均一性に優れた画像が得られる水系インクとして、顔料と、水不溶性ポリマーと、HLBが0~5のアセチレングリコール系の非イオン界面活性剤と、HLBが6~20の非イオン界面活性剤と、特定の動粘度を有するポリエーテル変性シリコーンと、特定の沸点を有する有機溶媒とを含有する、水系インクが開示されている。
特開2017-8319号公報 特開2015-124223号公報 特開2016-125057号公報
軟包装等においては、商品名称、能書等の製品情報を印刷する必要があるが、特許文献1~3のような従来の水系インクは、軟包装等に用いる低吸液性印刷媒体に対する耐擦過性が十分に満足できるものではなく、より高品質の印刷物を得ることができる水系インクが望まれていた。
本発明は、耐擦過性に優れた印刷物を得ることができるインクジェット印刷用水系インク、及びそれを用いるインクジェット印刷方法を提供することを課題とする。
本発明者は、顔料、ポリマー分散剤、水溶性有機溶媒を含有する水系インクにおいて、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)の特定量と、炭素数4以上6以下のアルカンジオール、1,3-プロパンジオール、及び環状アミド化合物から選ばれる1種以上の溶媒(S2)とを含有させることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]低吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷用水系インクであって、
顔料、ポリマー分散剤、水溶性有機溶媒、及び水を含有し、
該水溶性有機溶媒が、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)と、炭素数4以上6以下のアルカンジオール、1,3-プロパンジオール、及び環状アミド化合物から選ばれる1種以上の溶媒(S2)と、を含み、
該水溶性有機溶媒中のジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)の含有量が40質量%以上95質量%以下である、インクジェット印刷用水系インク。
[2]前記[1]に記載のインクを用いて、低吸液性印刷媒体に印刷する、インクジェット印刷方法。
本発明によれば、耐擦過性に優れた印刷物を得ることができるインクジェット印刷用水系インク、及びそれを用いるインクジェット印刷方法を提供することができる。
[インクジェット印刷用水系インク]
本発明のインクジェット印刷用水系インクは、低吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷用水系インク(以下、「本発明インク」ともいう)であって、
顔料、ポリマー分散剤、水溶性有機溶媒、及び水を含有し、
該水溶性有機溶媒が、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)と、炭素数4以上6以下のアルカンジオール、1,3-プロパンジオール、及び環状アミド化合物から選ばれる1種以上の溶媒(S2)と、を含み、
該水溶性有機溶媒中のジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)の含有量が40質量%以上95質量%以下である。
なお、「水系」とは、媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
「低吸液性」とは、インクの低吸液性、非吸液性を含む概念である。低吸液性は、純水の吸水性で評価することができる。より具体的には、印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の表面積あたりの吸水量が0g/m以上10g/m以下であることを意味する。
「印刷」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念である。
本発明インクは、耐擦過性に優れた印刷物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明においては、インク中の水溶性有機溶媒が、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)と、炭素数4以上6以下のアルカンジオール、1,3-プロパンジオール、及び環状アミド化合物から選ばれる1種以上の溶媒(S2)とを含み、該溶媒(S1)を水溶性有機溶媒中40質量%以上95質量%以下含有する。溶媒(S1)が、印刷媒体に対するインクの濡れ広がり性と成膜性を付与し、溶媒(S2)がインクの濡れ広がりの度合いを制御することにより、インクが低吸液性印刷媒体上で適切に濡れ広がることで、インク中のポリマー分散剤と低吸液性印刷媒体との接触面積を十分に確保できるため、耐擦過性に優れた印刷物を得ることができると考えられる。
<顔料>
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、ホワイト、ブラック、グレー等の無彩色顔料;イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
前記顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明で用いられる顔料の好適形態としては、自己分散型顔料粒子、及び顔料をポリマー分散剤に含有させた顔料粒子の形態が挙げられるが、耐擦過性を向上させる観点から、顔料をポリマー分散剤に含有させた顔料粒子、即ち顔料を含有するポリマー粒子Aが好ましい。本明細書において「顔料を含有するポリマー粒子A」は、ポリマー分散剤が顔料を包含する形態、ポリマー分散剤と顔料からなる粒子の表面に顔料の一部が露出している形態、ポリマー分散剤が顔料の一部に吸着している形態等の粒子を含む。
本発明において顔料を含有するポリマー粒子Aは、本発明インクにおいて200nm以下の粒子径で分散状態を保つ。
<ポリマー分散剤>
ポリマー分散剤は、水を主成分とする媒体への顔料の分散能を有するもので、顔料を含有するポリマー粒子Aを構成する一成分として用いられることが好ましい。ポリマー分散剤を構成するポリマー(以下、「ポリマーa」ともいう)は、水溶性ポリマー及び水不溶性ポリマーのいずれでもよいが、水不溶性ポリマーがより好ましい。すなわち、顔料は、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の形態であることが好ましい。
「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることポリマーをいい、その溶解量は、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。アニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
顔料を含有するポリマー粒子Aは、後述するように架橋剤で架橋されてなることが好ましい。この場合、用いられるポリマーが水溶性ポリマーであっても、架橋剤で架橋することにより、水不溶性ポリマーとなる。
ポリマーaの分子中に含まれるイオン性基は、顔料を含有するポリマー粒子Aの分散安定性、保存安定性を向上させる観点から、イオン性モノマー(a-1)によりポリマー骨格に導入されてなるものが好ましい。すなわち、ポリマーaは、イオン性モノマー(a-1)由来の構成単位を含むものが好ましい。ポリマーaとしては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
これらの中では、ビニル系樹脂が好ましく、イオン性モノマー(a-1)と、疎水性モノマー(a-2)とを含む原料モノマー(a)を共重合させてなるビニル系樹脂がより好ましい。
該ビニル系樹脂は、(a-1)由来の構成単位と(a-2)由来の構成単位とを含むことが好ましい。該ビニル系樹脂は、顔料を含有するポリマー粒子Aの分散安定性、定着性等を向上させる観点から、更にノニオン性モノマー(a-3)由来の構成単位を含むことができる。
〔イオン性モノマー(a-1)〕
イオン性モノマー(a-1)としては、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましく、酸基を有するモノマーがより好ましく、カルボキシ基を有するモノマーが更に好ましい。
イオン性モノマー(a-1)の具体例としては、特開2018-80255号公報の段落〔0017〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましい。
〔疎水性モノマー(a-2)〕
本発明において疎水性モノマー(a-2)の「疎水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。疎水性モノマー(a-2)の前記溶解量は、顔料への定着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
疎水性モノマー(a-2)としては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、マクロモノマーが挙げられ、アルキル(メタ)アクリレート及び芳香環含有モノマーから選ばれる1種以上が好ましく、芳香環含有モノマーがより好ましい。
疎水性モノマー(a-2)の具体例としては、特開2018-80255号公報の段落〔0018〕~〔0021〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、スチレン、α-メチルスチレン及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
〔ノニオン性モノマー(a-3)〕
ノニオン性モノマー(a-3)としては、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ノニオン性モノマー(a-3)の具体例としては、特開2018-80255号公報の段落〔0022〕~〔0023〕に記載のものが挙げられる。
(原料モノマー(a)中又はビニル系樹脂中における各成分又は構成単位の含有量)
ビニル系樹脂製造時における、(a-1)、(a-2)及び(a-3)を含む原料モノマー(a)中の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はビニル系樹脂中における(a-1)由来の構成単位、(a-2)由来の構成単位、及び(a-3)由来の構成単位の含有量は、顔料を含有するポリマー粒子Aの分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a-1)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
(a-2)の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(a-3)を含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
(a-2)に対する(a-1)の質量比[(a-1)/(a-2)]は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.3以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.8以下である。
なお、本発明においてビニル系樹脂中における(a-1)、(a-2)及び(a-3)由来の構成単位の含有量は、測定において求めることができるし、ビニル系樹脂製造時における(a-1)、(a-2)及び(a-3)を含む原料モノマー(a)の仕込み比率で代用することもできる。このうち(a-1)は電位差滴定で求めるのが好適であり、(a-2)と(a-3)は原料モノマーの仕込み比率を用いるのが好適である。
(ビニル系樹脂の製造)
ビニル系樹脂は、原料モノマー(a)を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることにより製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒としては、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、炭素数3以上5以下のケトン類、エーテル類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、tert-ブチルペルオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知の重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、原料モノマー(a)1モルあたり、好ましくは0.001モル以上5モル以下、より好ましくは0.01モル以上2モル以下である。
重合連鎖移動剤としては、2-メルカプトプロピオン酸等のカルボキシ基含有メルカプタン類;オクタンチオール等のアルキルメルカプタン;2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール等のヒドロキシ基含有メルカプタン類等の公知の重合連鎖移動剤を用いることができる。
また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
好ましい重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
ビニル系樹脂の数平均分子量は、顔料への吸着性及び分散安定性を向上させる観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下である。
数平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
〔顔料を含有するポリマー粒子Aの製造〕
顔料を含有するポリマー粒子Aは、顔料水分散体として下記の工程1及び2を有する方法により、効率的に製造することができる。
また、得られるインクの耐擦過性を向上させる観点から、更に工程3(架橋工程)を行うことが好ましい。
工程1:顔料、ポリマー分散剤を構成するポリマーであるポリマーa、有機溶媒、及び水を含む顔料混合物を分散処理して分散処理物を得る工程
工程2:工程1で得られた分散処理物から有機溶媒を除去して顔料を含有するポリマー粒子a1の水分散体(以下、「顔料水分散体(i)」ともいう)を得る工程
工程3:工程2で得られた顔料水分散体(i)に架橋剤を添加し、顔料を含有するポリマー粒子a1の一部又は全部を架橋させて、顔料を含有するポリマー粒子a2の水分散体(I)(以下、「顔料水分散体(I)」ともいう)を得る工程
本発明に係る顔料を含有するポリマー粒子Aは、前記顔料を含有するポリマー粒子a1及び顔料を含有するポリマー粒子a2を包含する。
(工程1)
工程1における顔料混合物は、ポリマーaを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散液を得る方法により得ることが好ましい。ポリマーaの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、顔料の順に加えることが好ましい。
工程1で用いる有機溶媒に制限はないが、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール等が好ましく、顔料への濡れ性、ポリマーaの溶解性及び顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。ポリマーaとしてビニル系樹脂を溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
顔料混合物中のポリマーaに対する有機溶媒の質量比[有機溶媒/ポリマーa]は、顔料への濡れ性、吸着性及びポリマーaの溶解性の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは1以上であり、そして、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
ポリマーaが酸基を有する場合、該酸基の少なくとも一部は、中和剤を用いて中和されていることが好ましい。これにより、中和後に発現する電荷反発力が大きくなり、本発明における顔料を含有するポリマー粒子Aの凝集を抑制し、増粘を抑制することができ、顔料を含有するポリマー粒子Aの分散安定性、保存安定性を向上できると考えられる。
中和する場合は、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム及びアンモニアである。
中和剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、ポリマーaを予め中和しておいてもよい。
中和剤の使用当量は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、また、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。ここで中和剤の使用当量は、中和前のポリマーaを「ポリマーa’」とする場合、次式によって求めることができる。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリマーa’の酸価(mgKOH/g)×ポリマーa’の質量(g)}/(56×1,000)]〕×100
工程1における分散処理は、剪断応力による本分散だけで顔料を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、均一な顔料水分散体を得る観点から、顔料混合物を予備分散した後、さらに本分散することが好ましい。
予備分散に用いる分散機としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
本分散に用いる剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中でも、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
(工程2)
工程2は、工程1で得られた分散処理物から有機溶媒を除去して顔料水分散体(i)を得る工程である。有機溶媒の除去は、公知の方法で行うことができる。得られた顔料水分散体(i)中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残留していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
(工程3)
工程3は、工程2で得られた顔料水分散体(i)に架橋剤を添加し、顔料を含有するポリマー粒子a1を架橋させて、顔料を含有するポリマー粒子a2を含む顔料水分散体(I)を得る工程である。
工程3で、顔料を含有するポリマー粒子a1を構成するポリマーaのカルボキシ基の一部又は全部を架橋し、顔料を含有するポリマー粒子a1の一部又は全部に架橋構造を形成させる。これにより、ポリマーが顔料表面に強固に吸着又は固定化され、顔料の凝集が抑制され、結果として、得られるインクの耐擦過性がより向上すると考えられる。
(架橋剤)
架橋剤としては、効率よく架橋反応させ、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは1分子中にエポキシ基を2以上6以下、好ましくは4以下を有する化合物、より好ましくはグリシジルエーテル基を2以上有する化合物、更に好ましくは炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物である。
架橋剤の分子量は、反応容易性、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは120以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、そして、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下、更に好ましくは1,000以下である。
架橋剤のエポキシ当量は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。
架橋剤の水溶率は、水を主体とする媒体中で効率よくポリマーaのカルボキシ基と架橋させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。ここで、水溶率とは、室温25℃にて水90質量部に架橋剤10質量部を溶解したときの溶解率(質量%)をいう。
架橋剤の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(水溶率31質量%)、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(水溶率27質量%)、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(水溶率0質量%)、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルから選ばれる1種以上であり、より好ましくはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルである。
工程3における架橋率は、保存安定性を向上させる観点から、ポリマーaのカルボキシ基のモル当量数に対する架橋剤の架橋性官能基のモル当量数の比で、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、より更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
架橋処理の温度は、前記と同様の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
架橋処理の時間は、架橋反応の完結と経済性の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは8時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料水分散体(I)の固形分濃度は、顔料水分散体(I)の分散安定性を向上させる観点及びインクの製造を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散体(I)中の顔料の含有量は、分散安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
顔料水分散体(I)中のポリマーaに対する顔料の質量比[顔料/ポリマーa]は、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である。
顔料水分散体(I)の顔料粒子の平均粒径は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上、より更に好ましくは70nm以上、より更に好ましくは80nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下、より更に好ましくは110nm以下、より更に好ましくは100nm以下である。
平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
<顔料を含有しないポリマー粒子B>
本発明インクは、耐擦過性を向上させる観点から、定着助剤ポリマーとして、顔料を含有しないポリマー粒子Bを更に含有することが好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子Bは水を主成分とする媒体において分散体の形態をとることができるものが好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子Bを構成するポリマー(以下、「ポリマーb」ともいう)は、水溶性ポリマーでも水不溶性ポリマーでもよいが、水不溶性ポリマーがより好ましい。
「水不溶性ポリマー」の定義は、前記のとおりである。
ポリマーbとポリマーaは、異なる組成であってもよく、また、組成も含めて同一のポリマーであって、顔料の有無だけが異なるものであってもよい。
インク中に顔料を含有するポリマー粒子Aと顔料を含有しないポリマー粒子Bを含む場合には、インク中のポリマーの含有量は、ポリマーa及びポリマーbの合計量となる。
顔料を含有しないポリマー粒子Bは、架橋剤で架橋されたものであってもよい。
ポリマーbは、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。それらの中でもポリマーbは、(メタ)アクリル酸(b-1)由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸エステル(b-2)由来の構成単位とを含むアクリル樹脂であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸(b-1)は、耐擦過性を向上させる観点から、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(b-2)は、耐擦過性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルがより好ましい。
ポリマーbは、(メタ)アクリル酸(b-1)及びアクリル酸エステル(b-2)以外の他のモノマー由来の構成単位を含んでもよい。他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸以外のイオン性モノマー、芳香族基を有する疎水性モノマー、又はノニオン性モノマーが挙げられ、中でも芳香族基を有する疎水性モノマー(b-3)が好ましい。かかる疎水性モノマー(b-3)としては、前述のスチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー等が挙げられる。
ポリマーb中の各成分由来の構成単位の含有量は、耐擦過性を向上させる観点から、以下のとおりである。
ポリマーb中の(メタ)アクリル酸(b-1)由来の構成単位の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
ポリマーb中の(メタ)アクリル酸エステル(b-2)由来の構成単位の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、更に好ましくは98質量%以下である。
(メタ)アクリル酸(b-1)と(メタ)アクリル酸エステル(b-2)との質量比〔(メタ)アクリル酸(b-1)/(メタ)アクリル酸エステル(b-2)〕は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下である。
ポリマーbの重量平均分子量は、耐擦過性、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは20万以上であり、そして、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料を含有しないポリマー粒子Bの平均粒径は、耐擦過性、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは40nm以上、更に好ましくは60nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは130nm以下、更に好ましくは110nm以下である。平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
〔顔料を含有しないポリマー粒子Bの製造〕
顔料を含有しないポリマー粒子Bは、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよいが、水分散液の形態をとることができるものが好ましい。顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散液を得る際、顔料を含有しないポリマー粒子Bを構成するポリマーbは、中和剤で中和されてなることが好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散液は、中和前のポリマーb’を公知の重合法により得た後、該ポリマーb’、水、及び必要に応じて中和剤を含有する混合物を加温しながら撹拌し、その後降温する方法等により製造することができる。
中和前のポリマーb’の好ましい構成単位、その含有量、物性等は前記のポリマーbと同様であり、前記のビニル系樹脂と同様の重合方法で得ることが好ましい。
ポリマーb’の酸価は、好ましくは0mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下、更に好ましくは50mgKOH/g以下、より更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
前記混合物を撹拌する際の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。撹拌時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。
顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散液の製造に用いる中和剤は、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等であり、より好ましくは水酸化ナトリウム、トリエタノールアミンである。
中和剤の使用当量は、顔料を含有しないポリマー粒子Bの分散安定性の観点から、0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは160モル%以下、より好ましくは130モル%以下、更に好ましくは110モル%以下である。中和剤の使用当量は、前記の方法により求めることができる。
[本発明インクの製造]
本発明インクは、顔料水分散体(I)と、後述する水溶性有機溶媒と、必要に応じて顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散液と、界面活性剤と、更にその他の有機溶媒とを混合することにより、効率的に製造することができる。それらの混合方法に特に制限はない。
<水溶性有機溶媒>
本発明で用いられる水溶性有機溶媒は、25℃で液体であっても固体であってもよいが、該有機溶媒を25℃の水100mlに溶解させたときに、その溶解量は10ml以上である。
本発明で用いられる水溶性有機溶媒は、耐擦過性を向上させる観点から、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)と、炭素数4以上6以下のアルカンジオール、1,3-プロパンジオール、及び環状アミド化合物から選ばれる1種以上の溶媒(S2)とを含む。
本発明において、前記溶媒(S1)は、主として印刷媒体に対するインクの濡れ広がり性と成膜性を付与する役割を果たし、前記溶媒(S2)は、主として濡れ広がりの度合いを制御する役割を果たす。
溶媒(S2)である炭素数4以上6以下の化合物としては、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中では、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びジプロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましく、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールから選ばれる1種以上がより好ましく、1,2-ブタンジオールが更に好ましい。
溶媒(S2)である環状アミド化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、5-メチル-2-ピロリドン等が挙げられるが、これらの中では、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンから選ばれる1種以上が好ましい。
上記の溶媒(S2)の中では、耐擦過性を向上させる観点から、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、及び2-ピロリドンから選ばれる1種以上が好ましく、1,2-ブタンジオールがより好ましい。
本発明インクは、必要に応じて、前記水溶性有機溶媒以外の多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル等を含有することができる。
多価アルコールとしてはエチレングリコール(沸点197℃、この段落において、以下の( )内の数値は沸点を示す。)、1,2-プロパンジオール(188℃)、1,2-オクタンジオール(267℃)、1,8-オクタンジオール(299℃)1,2-デカンジオール(255℃)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(244℃)、ジエチレングリコール(244℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(346℃)、1,2,4-ブタントリオール(345℃)、1,2,3-ブタントリオール(293℃)、ペトリオール(216℃、0.5mmHg)、グリセリン、トリエチレングリコール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点158℃、5mmHg)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点241℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
本発明インクは、印刷媒体への濡れ性を向上させる観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。また、インクに通常用いられる粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましく、インクの表面張力を適正に保ち、印刷媒体への濡れ性を向上させる観点から、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤とを併用することが更に好ましい。
(アセチレングリコール系界面活性剤)
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール等のアセチレン系ジオール、及びそれらのエチレンオキシド付加物が挙げられる。
前記エチレンオキシド付加物のエチレンオキシ基(EO)の平均付加モル数の和(n)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社製の「サーフィノール」シリーズ、「オルフィン」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ等が挙げられる。これらの中でも、サーフィノール420(n:1.3)、サーフィノール440(n:3.5)、サーフィノール465(n:10.0)、サーフィノール485(n:30.0)、オルフィンE1010、アセチレノールE100、アセチレノールE200、アセチレノールE40(n:4)、アセチレノールE60(n:6)、アセチレノールE81(n:8)、アセチレノールE100(n:10)等が好ましい。
(シリコーン系界面活性剤)
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン等が挙げられるが、上記と同様の観点から、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基を、ポリエーテル基で置換された構造を有するものである。該ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤のHLB(親水性親油性バランス)値は、インクへの溶解性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。ここで、HLB値は、グリフィン法により求めることができる。
また、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の25℃における動粘度は、好ましくは50mm/s以上、より好ましくは80mm/s以上であり、そして、好ましくは500mm/s以下、より好ましくは300mm/s以下である。なお、動粘度はウベローデ型粘度計で求めることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ;KF-353、KF-355A、KF-642等、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG005、株式会社NUC製のFZ-2191、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-348等が挙げられる。
本発明インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
(顔料の含有量)
本発明インク中の顔料の含有量は、印字濃度の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく7質量%以下である。
(顔料を含有するポリマー粒子の含有量)
本発明インク中の顔料を含有するポリマー粒子Aの含有量は、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
(顔料を含有しないポリマー粒子Bの含有量)
本発明インク中の顔料を含有しないポリマー粒子Bの含有量は、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは8質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
本発明インク中のポリマーa及びポリマーbの合計量は、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
(水溶性有機溶媒の含有量)
本発明インク中の水溶性有機溶媒の含有量は、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは28質量%以上であり、そして、45質量%以下であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
また、水溶性有機溶媒中のジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)の含有量は、耐擦過性を向上させる観点から、40質量%以上であり、好ましくは43質量%以上、より好ましくは45質量%以上であり、更に好ましくは55質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上であり、そして、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(S1)に対する、溶媒(S2)の質量比〔(S2)/(S1)〕は、耐擦過性を向上させる観点から、0.1以上であり、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上であり、そして、1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1以下である。
(界面活性剤の含有量)
本発明インク中の界面活性剤の含有量は、印刷媒体への濡れ性を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
本発明インキ中のアセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.6質量%以上であり、そして、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
本発明インク中のシリコーン系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
(水の含有量)
本発明インク中の水の含有量は、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
((顔料を含有するポリマー粒子A/全水溶性有機溶媒)の質量比)
全水溶性有機溶媒に対する顔料を含有するポリマー粒子Aの質量比(顔料を含有するポリマー粒子A/全水溶性有機溶媒)は、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.12以上であり、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下である。
(本発明インクの物性)
本発明インクの32℃の粘度は、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上、更に好ましくは5mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9mPa・s以下、更に好ましくは7mPa・s以下である。
本発明インクのpHは、保存安定性、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.2以上、更に好ましくは7.5以上であり、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下である。
本発明インクは、軟包装印刷用として特に好適である。なお、軟包装印刷とは、樹脂フィルム等のような薄い柔軟性のある材料を単体で又は貼り合せたものに印刷することを意味する。本発明インクを用いて軟包装印刷された印刷物は、食品、生活用品等を包装する用途に好適である。
本発明インクは組み合わせてセットで用いることが好ましく、フルカラー印刷に好適である。
[インクジェット印刷方法]
本発明のインクジェット印刷方法は、本発明インクを用いて、低吸液性印刷媒体に印刷する方法であり、本発明インクを公知のインクジェット印刷装置に装填し、低吸液性印刷媒体にインク液滴として吐出させて画像等を印刷する。
(低吸液性印刷媒体)
低吸液性印刷媒体としては、金属、合成樹脂の他、低吸液性のコート紙、アート紙等からなる印刷媒体が挙げられる。
金属としては、鉄及び鉄合金、アルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられるが、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。また、各種の表面処理をした金属箔や金属板、金属にポリエステルやポリオレフィン等の樹脂フィルムを被覆した積層体も好ましい。
合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ポリカーボネート、PCとABS(50/50)ポリマーアロイ、トリアセチルセルロース等が挙げられる。また、コロナ放電処理されたもの、二軸延伸処理されたものも好ましい。これらの中では、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
インクジェット印刷に際しては、耐擦過性を向上させる観点から、印刷媒体の表面温度を、その材質に合わせて、30℃以上100℃以下に加熱することが好ましい。
印刷媒体の表面温度は、樹脂フィルムの場合は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下であり、金属箔の場合は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
印刷媒体を加熱する方法としては、赤外線を照射する方法、オーブン等で加熱した雰囲気に曝す方法、加熱した金属等の物体と接触させる方法等の公知の方法が挙げられる。
以下の製造例、調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各物性等の測定方法は以下のとおりである。
(1)ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量の測定
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolum Super AW-H)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中にポリマー0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(DISMIC-13HP PTFE 0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
(2)顔料を含有するポリマー粒子A、顔料を含有しないポリマー粒子Bの平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELS-8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い、平均粒径を測定した。測定する粒子の濃度が5×10-3重量%(固形分濃度換算)になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力し、得られたキュムラント平均粒径を顔料を含有するポリマー粒子A、顔料を含有しないポリマー粒子Bの平均粒径とした。
(3)固形分濃度の測定
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させた後、測定試料の水分(%)を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=100-測定試料の水分(%)
(4)エポキシ化合物の水溶率の測定
室温25℃にてイオン交換水90質量部及びエポキシ化合物10質量部(W1)をガラス管(25mmφ×250mmh)に添加し、該ガラス管を水温25℃に調整した恒温槽中で1時間静置した。次いで、該ガラス管を1分間激しく振とうした後、再び恒温槽中で12時間静置した。次いで、水から分離して沈殿又は浮遊する未溶解物を回収し、40℃、ゲージ圧-0.08MPaの環境下で6時間乾燥後、秤量(W2)した。以下の式により、水溶率(質量%)を算出した。
水溶率(質量%)={(W1-W2)/W1}×100
(5)有機溶媒の沸点の測定
JIS K2254に準じて測定を行い、その初留点を沸点(bp)とした。
製造例1(水不溶性ポリマーa溶液の製造)
アクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)61.6部、スチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製)128.8部、α-メチルスチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製)9.6部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK、富士フイルム和光純薬株式会社製)20部、重合連鎖移動剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、2-メルカプトエタノール)0.3部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(2,2’‐アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、富士フイルム和光純薬株式会社製、V-65)2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマーa溶液(ポリマーaの数平均分子量:10500)を得た。
調製例1(顔料を含有するポリマー粒子Aの水分散体の調製)
(1)製造例1で得られた水不溶性ポリマーa溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー58.1部をMEK71.5部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、富士フイルム和光純薬株式会社製、容量滴定用)23.6部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が40モル%になるように中和した(中和度40モル%)。更にイオン交換水695.1部を加え、その中に顔料(C.I.ピグメント・ブラック7、キャボット社製「MONARCH 717」)200gを加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で150MPaの圧力で9パス分散処理した。
(2)前記(1)で得られた分散処理物1000gを2Lナスフラスコに入れ、イオン交換水666.7gを加え(固形分濃度15.0%)、回転式蒸留装置「ロータリーエバポレーター N-1000S」(東京理化器械株式会社製)を用いて、回転数50rpmで、32℃に調整した温浴中、0.09MPaの圧力で3時間保持して、有機溶媒を除去した。更に、温浴を62℃に調整し、圧力を0.07MPaに下げて固形分濃度25.0%になるまで濃縮した。
(3)得られた濃縮物を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機「himac CR22G」(日立工機株式会社製、設定温度20℃)を用いて7000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を5μmのメンブランフィルター「Minisart」(Sartorius社製)で濾過した。
ろ液400g(C.I.ピグメント・ブラック7 76.0g、前記水不溶性ポリマーa 22.1g)にイオン交換水61.61gを添加し、更にプロキセルLVS(アーチケミカルズジャパン株式会社製:防黴剤、有効分20%)1.08gを添加し、更に架橋剤(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX-321L、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エポキシ当量129、水溶率:27%)5.2gを添加し、70℃で3時間攪拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度が18%になるようにイオン交換水を加えて、顔料を含有するポリマー粒子Aの水分散体を得た。得られた水分散体中の顔料を含有するポリマー粒子Aの平均粒径は90nmであった。
製造例2(顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散体の製造)
滴下ロートを備えた反応容器内に、表1の「初期仕込みモノマー溶液」に示すモノマー、ラテムルE-118B(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王株式会社製、界面活性剤)、重合開始剤である過硫酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)、イオン交換水を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。また、表1の「滴下モノマー溶液」に示すモノマー、界面活性剤、重合開始剤、イオン交換水を混合して、滴下モノマー溶液を得、滴下ロート内に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら室温から80℃まで30分かけて昇温し、80℃に維持したまま、滴下ロート中のモノマーを3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の温度を維持したまま、1時間攪拌した。次いで200メッシュでろ過し、顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散体(固形分濃度:44.1%、平均粒径:94nm)を得た。
顔料を含有しないポリマー粒子Bを構成するポリマーbの重量平均分子量は750,000、酸価は16mgKOH/gであった。
Figure 2023001142000001
実施例1(水系インクの製造)
調製例1で得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(固形分濃度:18%、顔料:13%、ポリマー:5%)33.0g、製造例2で得られた顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散体(固形分濃度:44.1%)11.3g、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製)25.0g、1,2-ブタンジオール(富士フイルム和光純薬株式会社製)5.0g、アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノール440;サーフィノール104のエチレンオキシド(40%)付加物、エチレンオキシド平均付加モル数:3.5)1.0g、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、シルフェイスSAG005、濡れ剤、HLB:7、動粘度:170mm/s(25℃))0.2g、合計量が100gとなるようイオン交換水を添加した。
実施例2~16、比較例1~7、参考例1(水系インクの製造)
実施例1において、表2及び表3に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、水系インクを得た。なお、表2及び表3中の水分散体、水溶性有機溶媒、及び界面活性剤の量はインク中の配合量(%)を示し、顔料を含有するポリマー粒子Aの水分散体及び顔料を含有しないポリマー粒子Bの水分散体の量は固形分量である。
得られたインクを用いて、以下の印刷方法により得られた印刷物について、以下の方法で耐擦過性の評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
<インクジェット印刷方法>
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェットヘッド(京セラ株式会社製、「KJ4B-HD06MHG-STDV」、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)にインクを充填した。
ヘッド印加電圧26V、駆動周波数20kHz、吐出液適量12pL、印刷ヘッド温度32℃、解像度600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧-4.0kPaを設定し、搬送台の上にA4サイズのフィルムヒーター(株式会社河合電器製作所製)を固定して下記印刷媒体を加温できるようにし、印刷媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、印刷媒体をフィルムヒーター上にのりで固定した。
前記フィルムヒーターの加温温度は、各印刷媒体に対して次のように設定した。
・PP:フタムラ化学株式会社製、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、FOR-AQ、片面コロナ放電処理:フィルムヒーター温度:60℃
・PET:フタムラ化学株式会社製、コロナ放電処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム:フィルムヒーター温度:40℃
・紙:王子製紙株式会社製、OKトップコート紙:フィルムヒーター温度:60℃
前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、インクを吐出させて印刷を行った。その後、60℃の温風乾燥機にて5秒間乾燥させて印刷物を得た。
<耐擦過性の評価>
上記印刷条件の下、インク100%dutyでベタ画像を印刷し、印字物を室温25℃にて1日放置した後、ベタ印字部を荷重500gまたは250gのウレタンパッドで20回擦った後の耐擦過性を確認した。
(評価基準)
5:ベタ印字部を荷重500gのウレタンパッドで20回擦っても目視ではがれを確認できない。
4.5:ベタ印字部を荷重500gのウレタンパッドで20回擦ると、目視で印字面の20%以内ではがれが確認できる。
4:ベタ印字部を荷重500gのウレタンパッドで20回擦ると、目視で印字面の21%以上50%以内ではがれが確認できる。
3.5:ベタ印字部を荷重250gのウレタンパッドで20回擦ると、目視で印字面の20%以内ではがれが確認できる。
3:ベタ印字部を荷重250gのウレタンパッドで20回擦ると、目視で印字面の21%以上50%以内ではがれが確認できる。
2:ベタ印字部を荷重250gのウレタンパッドで20回擦ると、目視で印字面の50%以上80%未満ではがれが確認できる。
1:ベタ印字部を荷重250gのウレタンパッドで20回擦ると、目視で印字面の80%以上ではがれが確認できる。
評価基準で3.5以上であれば実用性に優れている。
Figure 2023001142000002
Figure 2023001142000003
表2及び表3から、実施例のインクは、比較例のインクに比べて、耐擦過性に優れていることが分かる。

Claims (11)

  1. 低吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷用水系インクであって、
    顔料、ポリマー分散剤、水溶性有機溶媒、及び水を含有し、
    該水溶性有機溶媒が、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)と、炭素数4以上6以下のアルカンジオール、1,3-プロパンジオール、及び環状アミド化合物から選ばれる1種以上の溶媒(S2)と、を含み、
    該水溶性有機溶媒中のジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(S1)の含有量が40質量%以上95質量%以下である、インクジェット印刷用水系インク。
  2. 炭素数4以上6以下のアルカンジオールが1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びジプロピレングリコールから選ばれる1種以上である、請求項1に記載のインクジェット印刷用水系インク。
  3. 環状アミド化合物が、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンから選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用水系インク。
  4. 水溶性有機溶媒の含有量が20質量%以上45質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載のインクジェット印刷用水系インク。
  5. 低吸液性印刷媒体が、合成樹脂又は金属である、請求項1~4のいずれかに記載のインクジェット印刷用水系インク。
  6. 合成樹脂が、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はポリエチレンテレフタレート樹脂である、請求項5に記載のインクジェット印刷用水系インク。
  7. 金属が、アルミニウム又はアルミニウム合金である、請求項5に記載のインクジェット印刷用水系インク。
  8. 顔料が、顔料を含有するポリマー粒子の形態である、請求項1~7のいずれかに記載のインクジェット印刷用水系インク。
  9. 顔料を含有するポリマー粒子が、架橋剤で架橋されてなる、請求項8に記載のインクジェット印刷用水系インク。
  10. 軟包装印刷用である、請求項1~9のいずれかに記載のインクジェット印刷用水系インク。
  11. 請求項1~10のいずれかに記載のインクを用いて、低吸液性印刷媒体に印刷する、インクジェット印刷方法。
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