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JP2023079184A - 熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機、および成形品の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機、および成形品の製造方法 Download PDF

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JP2023079184A JP2022184974A JP2022184974A JP2023079184A JP 2023079184 A JP2023079184 A JP 2023079184A JP 2022184974 A JP2022184974 A JP 2022184974A JP 2022184974 A JP2022184974 A JP 2022184974A JP 2023079184 A JP2023079184 A JP 2023079184A
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滋 八尾
Shigeru Yao
哲也 木村
Tetsuya Kimura
暢久 高山
Nobuhisa Takayama
昌典 辰巳
Masanori Tatsumi
浩一 浦山
Koichi Urayama
崇 鬼防
Takashi Onibo
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RESEARCH LABORATORY OF PLASTICS TECHNOLOGY CO Ltd
Fukuoka University
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Fukuoka University
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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂組成物の成形品の物性を向上させる成形機を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂組成物を溶融して成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機10であって、熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口1と、供給口1から供給された熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部2と、溶融混練部2で溶融混練された熱可塑性樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部5と、樹脂溜り部5で滞留した熱可塑性樹脂組成物を吐出する吐出部3とを有し、樹脂溜り部5内の熱可塑性樹脂組成物の流れを変更する流路変更部(静止混合部51)を有する、熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機10。【選択図】図1

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月22日 Research Association for Feedstock Recycling of Plastics(FSRJ),Japan 主催「Online International Symposium on Feedstock Recycling of Polymeric Materials(e-ISFR)」で発表する要旨「Effect of new advanced Molten Resin Reservoir on mechanical properties of virgin high-density polyethylene」をウェブサイトにて公開(ウェブサイトのアドレス:https://eisfr2021.jpn.org/movie/detail/abstract/1/8/?pdf=1425_TetsuyaKimura) 令和3年11月29日 オンラインで開催されたResearch Association for Feedstock Recycling of Plastics(FSRJ),Japan 主催「Online International Symposium on Feedstock Recycling of Polymeric Materials(e-ISFR)」にて発表
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機に関する。また、熱可塑性樹脂組成物の成形品の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂は、単独では用途や目的に十分な特性を持たない場合がある。その用途や目的に応じ、無機物や他の高分子成分を系内に複数含む複合樹脂組成物を作製し、用途や目的に合わせた物性値にすることが多く実施されている。
前項のような取り組みにより、弾性率や破断強度などが目的に合致するようにできることは良く知られているが、一方で破断伸びなどの物性値は系内に無機異物や他成分高分子があることで破断の起点ができるために、低下するとされていた。
また、熱可塑性樹脂は、資源リサイクルが進められている。特に容器包装材料系に用いられるプラスチック量は近年も増加傾向にあり、その使用量の増加に伴い、そのリサイクルも重要な課題となっている。そして、熱可塑性樹脂の各種リサイクル方法が提案されている。
廃棄プラスチックの力学物性低下原因に関しては、従来から化学劣化という常識が蔓延している。この化学劣化は分子鎖切断という再生が不可能な現象であるために、廃棄プラスチックの力学物性を再生することは不可能とされていた。さらに、系内に無機異物や他成分高分子があることで破断の起点ができるために、破断伸びが低下するとされていた。
一方、本発明者等は、この力学物性が低下する原因は、高分子の内部構造変異によるものであることを基礎的に明らかにするとともに、物性再生を可能とする新たな成形法に関する知見を提案している(例えば、非特許文献1~6等)。この手法を採用することで、系内にリサイクル樹脂由来の無機異物や、他の高分子がある場合においても、破断伸びや靭性が大幅に増加できることを見出している(特許文献2)。
特許文献1は、熱可塑性樹脂組成物を溶融してペレット状に成形する樹脂組成物成形機や、樹脂組成物の成形方法に関するものである。特許文献1では、溶融混練部と吐出部との間に設けられる樹脂溜り部を有する樹脂組成物成形機等が開示されている。また、熱可塑性樹脂として、リサイクル樹脂由来のポリオレフィン系樹脂を含有する結晶性高分子などを開示している。
特許文献2は、リサイクルポリオレフィンを含有する熱可塑性樹脂組成物の再生方法に関するものである。特許文献2では、溶融成形工程により製品形状とされた溶融樹脂組成物を急冷する急冷工程を有する再生方法を開示している。
特許文献3は、熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口と、供給口から供給された熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部と、溶融混練部で溶融混練された熱組成樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部と、樹脂溜り部で滞留した熱可塑性樹脂組成物をストランド状に吐出する吐出部とを有し、樹脂溜り部が、溶融混練部から吐出部に向けて先細り形状を有する熱可塑性樹脂組成物の成形機を開示している。
特許第6608306号公報 特許第6333674号公報 特許第6914541号公報
"Advanced recycling process for waste plastics based on physical degradation theory and its stability", Aya Tominaga, Hiroshi Sekiguchi, Ryoko Nakano, Shigeru Yao, Eiichi Takatori, Journal of Material Cycles and Waste Management, accepted. "Relationship between the long period and the mechanical properties of recycled polypropylene", Aya Tominaga, Hiroshi Sekiguchi, Ryoko Nakano, Shigeru Yao, and Eiichi Takatori, Nihon Reoroji Gakkaishi, 45(5), 287-290 (2017) "Creation of Advanced Recycle Process to Waste Container and Packaging Plastic - Polypropylene Sorted Recycle Plastic Case-", Nozomi Takenaka, Aya Tominaga, Hiroshi Sekiguchi, Ryoko Nakano, Eiichi Takatori, Shigeru Yao, Nihon Reoroji Gakkaishi, 45(3), 139-143 (2017) "Thermal Process Dependence of Mechanical Properties and Inner Structure of Pre-consumer Recycled Polypropylene", Aya Tominaga, Hiroshi Sekiguchi, Ryoko Nakano, Shigeru Yao, Eiichi Takatori, Proceedings of PPS-30, AIP Conf. Proc. 1664, 150011-1 - 150011-4, 2015 「プレコンシューマリサイクルポリプロピレンの高度再生技術」, 冨永亜矢,関口博史,中野涼子,八尾滋, 高取永一, 高分子論文集, 70(12),712-721(2013). "Inner structure and mechanical properties of recycled polypropylene. ", Shigeru Yao, Aya Tominaga, Youhei Fujikawa, Hiroshi Sekiguchi, and Eiichi Takatori, Nihon Reoroji Gakkaishi(J. Soc. Rheol, Japan), 41(3), 173-178 (2013).
樹脂組成物について溶融混練の条件などを検討することで物性向上を達成しようという試みがなされている。特に、熱可塑性樹脂に、無機物や他の高分子とマトリックスとなる高分子間の界面接着性を改良する添加剤などが提案されてきた。しかし、無機物や他の高分子等を混合した上にさらに添加剤を加えると、高価となる。またそれにもかかわらず十分に物性が発揮されているとは言えず、さらなる改良の余地があった。
また、廃棄プラスチックの力学物性等の再生については、実際の溶融成形での物性再生に関する製法や条件を検討することが求められていた。特許文献1~3は、リサイクルポリオレフィンを含有する樹脂組成物等の物性を向上させる効果を奏する。しかし、本発明者は、バージン樹脂なども含めてさらなる改良の余地があると考えた。
係る状況下、本発明の目的は、熱可塑性樹脂組成物の成形品の物性を向上させる成形機および製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 熱可塑性樹脂組成物を溶融して成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機であって、前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口と、前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部と、前記溶融混練部で溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部と、前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出する吐出部とを有し、前記樹脂溜り部内の前記熱可塑性樹脂組成物の流れを変更する流路変更部を有する、成形機。
<2> 前記流路変更部が、押出方向に対して複数の異なる向きに変位させる部分を有するものである、前記<1>に記載の成形機。
<3> 前記流路変更部が、押出方向に対して前記溶融混練部側と前記吐出部側とを変位させる孔が複数設けられた多孔部材を設けたものである、前記<1>または<2>に記載の成形機。
<4> 前記流路変更部が、前記樹脂溜り部内の圧力を調整するギヤポンプを有するものである、前記<1>~<3>のいずれかに記載の成形機。
<5> 前記樹脂溜り部の前記吐出部側に、開口部を調整する調整弁による圧力調整部を有する、前記<1>~<4>のいずれかに記載の成形機。
<6> 前記樹脂溜り部が、前記溶融混練部の配管断面形状と同程度の大きさの断面形状の配管を有するものである、前記<1>~<5>のいずれかに記載の成形機。
<7> 前記吐出部から吐出された前記熱可塑性樹脂組成物を裁断してペレット化するペレタイザーを有する、前記<1>~<6>のいずれかに記載の成形機。
<8> 熱可塑性樹脂組成物を成形機の供給口に供給し、前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練部で溶融させながら押し出し、前記溶融混練部で溶融された前記熱可塑性樹脂組成物を樹脂溜り部で滞留させながら、前記樹脂溜り部内の流路変更部で前記熱可塑性樹脂組成物の流れを変更し、前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出部から吐出させる押出工程を有する熱可塑性樹脂組成物の成形品の製造方法。
<9> 前記吐出部から吐出された前記熱可塑性樹脂組成物を原料に用いて、成形品を製造する、前記<8>に記載の製造方法。
<10> 熱可塑性樹脂組成物を溶融して成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機であって、前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口と、前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部と、前記溶融混練部で溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部と、前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出する吐出部とを有し、前記樹脂溜り部の前記吐出部側に、開口部を調整する調整弁による圧力調整部を有する、成形機。
本発明によれば、熱可塑性樹脂組成物の成形品の物性を向上させることができる。
本発明の成形機の実施形態を示す図である。 ストランド状に押し出した樹脂組成物を示す像である。 実施例に用いた静止混合部の像である。 本発明の成形機の流路変更部に用いるブレーカプレートの概要図である。 本発明の成形機の流路変更部に用いるブレーカプレートの概要図である。 本発明の成形機の流路変更部に用いるブレーカプレートの概要図である。 実施例に用いた圧力調整部の像である。 本発明の成形機の流路変更部に用いるギヤポンプの概要図である。 実施例の引張試験の試験片や試験機の概要を示す図である。 実施例における各ストランドの引張試験の結果を示す図である。 実施例における各ストランドの引張試験の結果を示す図である。 シミュレーション解析の条件の概要である。 シミュレーション解析の条件の概要である。 圧力分布を解析した断面分布図である。 温度分布を解析した図である。 流速分布を解析した図である。 滞留時間分布を解析した図である。 ひずみ速度分布を解析した図である。 溶融粘度分布を解析した図である。 応力分布を解析した図である。 実施例で用いた成形機の概略図である。 実施例で用いた成形機の概略図である。 実施例で用いた成形機の概略図である。 実施例で用いた成形機の概略図である。 実施例で用いた成形機の概略図である。 実施例で用いた成形機の概略図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
[本発明の成形機]
本発明の成形機は、熱可塑性樹脂組成物を溶融して成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機であって、前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口と、前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部と、前記溶融混練部で溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部と、前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出する吐出部とを有し、前記樹脂溜り部内の前記熱可塑性樹脂組成物の流れを変更する流路変更部を有する、熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機である。
[本発明の製造方法]
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂組成物を成形機の供給口に供給し、前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練部で溶融させながら押し出し、前記溶融混練部で溶融された前記熱可塑性樹脂組成物を樹脂溜り部で滞留させながら、前記樹脂溜り部内の流路変更部で前記熱可塑性樹脂組成物の流れを変更し、前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出部から吐出させる押出工程を有する熱可塑性樹脂組成物の成形品の製造方法である。
このような成形機で成形される熱可塑性樹脂組成物のストランドは、例えば細断化したペレット等として用いることができる。このペレットは、従来の成形手段で成形されたペレットを用いる場合よりも破断伸度などの物性に優れた成形品の製造に適している。また、このような成形機で成形されるペレットを用いた成形品は、無機物や他の高分子の複合による破断伸度の低下を抑制し、優れた機械物性を有する。
[本発明の他の成形機]
本発明の他の成形機は、熱可塑性樹脂組成物を溶融して成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機であって、前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口と、前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部と、前記溶融混練部で溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部と、前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出する吐出部とを有し、前記樹脂溜り部の前記吐出部側に、開口部を調整する調整弁による圧力調整部を有する。
なお、本願において本発明の成形機により本発明の製造方法を行うこともでき、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。また、本発明の他の成形機は、本発明の成形機、本発明の製造方法に準じて行うことができ、本願においてそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
本発明者らは、内部が中空状の前述の特許文献1や特許文献3の樹脂溜り部を有する成形機で、熱可塑性樹脂組成物等のペレット化や、再ペレット化を検討した。その結果、ストランドを複数抜き出すような押出(図2参照)を行ったときに、各ストランドを別々に回収したペレットを用いてフィルム等を成形すると、物性に差があることを見出した。これは、樹脂溜り部内で、壁面付近と中央付近とで、流動性などに差が生じて熱履歴や剪断量、剪断応力履歴が変わることなどが影響していると考えた。
このような知見の下、中空であった樹脂溜り部に、流路変更部を設けた。この流路変更部を設けることで、樹脂溜り部内で、流路が制御されて壁面付近と中央付近とを移動させて混合される。これにより、ストランドを複数抜き出す押出を行っても、各ストランド間の物性の差が小さくなり、このようなストランドを用いた成形品の物性が向上する。これは、流路変更部により、樹脂溜り部内での樹脂の滞留時間を長くでき、樹脂の位置交換を行い、均一にエネルギーが供給され樹脂の物性を回復させることができるためと考えられる。
例えば、熱可塑性樹脂組成物を、樹脂溜り部を有する成形機に通じる際、樹脂溜り部の設定温度を溶融混練部の設定温度より低くすることによって、樹脂の破断伸びが向上することが明らかにされ、この効果が発現する要因として次の推測がなされている。
(1)樹脂の流動が樹脂溜り内の中央に偏るようになったため。但し金属面付近で樹脂の滞留を伴う。
(2)樹脂溜り内を通過する樹脂の圧力が高められたため。
これに対し、(1)の金属面付近での樹脂の滞留を抑制するために、樹脂溜りに先細り形状を設ける方法が検討されており、樹脂の破断伸びがさらに向上することが報告されている(特許文献3)。樹脂の種類によるものの、実例として、この方法によって樹脂溜り部の設定温度を低くすることによる効果をさらに向上させることが可能である。
本発明者らは、(1)の効果を高める別の方法として、樹脂の流動が樹脂溜り内の中央に偏らないように、樹脂溜り内に流路変更部を取り付ける方法を検討した。また(2)の効果を高めるために、圧力調整弁の設計を検討した。その結果、樹脂溜り付き押出の際、樹脂溜りに流路変更部を取り付けることによって樹脂の破断伸びがさらに向上すること、また流路変更部と圧力調整弁を取り付けることによって樹脂の破断伸びがさらに向上すること、また圧力調整弁を取り付けたときにも樹脂の破断伸びがさらに向上することを見出した。
[成形機10]
図1は押出工程を行うための成形機の一例を示すものである。この成形機10は、熱可塑性樹脂組成物を溶融してストランド状に成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機である。この成形機は、本発明の成形機の第一の実施形態に関し、本発明の製造方法に適している。
図1の成形機10は、供給口1と、溶融混練部2と、樹脂溜り部5と、吐出部3と、ペレタイザー4を有する。この成形機10により、熱可塑性樹脂組成物を溶融してペレット状に成形することができる。得られたペレットは、フレキシブルコンテナバッグ等のコンテナ6に収集される。以下さらに詳しく成形機10を説明する。
[供給口1]
供給口1は、熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口である。供給口1は、ホッパー状の供給口である。この供給口1の上部から塊状や粉状、ペレット状などの熱可塑性樹脂組成物が供給され、溶融混練部2へと移送される。
[溶融混練部2]
溶融混練部2は、供給口1から供給された熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する。この溶融混練部2は、熱可塑性樹脂組成物の溶融温度に加熱されており、モーターMにカップリング21により連結されたスクリュ22を回転させることで熱可塑性樹脂組成物が樹脂溜り部5側へと押し出される。また、この配管とスクリュとの間等を通るとき、熱可塑性樹脂組成物にせん断応力がかかり、熱可塑性樹脂組成物は混練される。
[樹脂溜り部5]
樹脂溜り部5は、溶融混練部2で溶融混練された熱可塑性樹脂組成物が滞留する部分である。樹脂溜り部5は、溶融混練部2と吐出部3との間に設けられている。樹脂溜り部5は接続部52で吐出部3と接続されている。この樹脂溜り部5は、溶融温度を維持するように加熱されており、溶融混練部2で溶融混練された熱可塑性樹脂組成物にかかったせん断応力を解消することができる。
樹脂溜り部5は、せん断応力を解消するために設けられる。樹脂溜り部は、溶融混練部の配管の断面積との断面積比の減少が少ないような配管が用いられる。樹脂溜り部の配管の内径の断面積(A2)と、溶融混練部の配管の断面積(A1)との比(A2/A1)は、0.3~10の範囲であることが好ましい。樹脂溜り部が、吐出部に向けて縮径する先細り形状(テーパー)としている場合や、断面積が増減する場合も、この数値範囲内であることを満足することが好ましい。A2/A1は、0.4以上や、0.5以上、0.7以上、0.9以上、0.98以上としてもよい。A2/A1は、5以下や、2.0以下、1.5以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、1.0未満としてもよい。樹脂溜り部の配管は、溶融混練部の配管形状を延長したものとしてもよい。
[流路変更部51]
樹脂溜り部5は、流路変更部51を有する。流路変更部51は、溶融混練された熱可塑性樹脂組成物の流路を変更し混合する部分である。流路変更部は、樹脂溜り部5の空間容積に対して滞留時間を長くし、樹脂の配管内での中央と管壁付近での位置交換を行い、樹脂に均一にエネルギーが供給される部分である。流路変更部は、静止混合部や、多孔板、ギヤポンプなどを用いることができる。
流路変更部の一例である静止混合部は、配管の壁面近辺の熱可塑性樹脂組成物を中央に向けて移動させ、中央付近の熱可塑性樹脂組成物を壁面側に向けて移動させるような形状である。これにより、溶融混練部から押し流されてきた熱可塑性樹脂組成物の内外を混合することができる。図3は、実施例に用いた静止混合部の像である。静止混合部は、板をねじり180度回転させたものを一つの要素としたものなどを用いることができる。樹脂溜り部における要素数は、2以上や3以上とすることができる。過剰に配置する必要性は低いことから、8以下や7以下としてもよい。
静止混合部は、押出方向に対して複数の異なる向きに回転させる部分を有するものであることが好ましい。すなわち、押出方向に真っ直ぐみたとき、右回転させるようにねじる静止混合部と、左回転させるようにねじる静止混合部とを有することが好ましい。このような回転をさせることで、より熱可塑性樹脂組成物を均質化して物性を向上させることができる。
この流路変更部51は、静止混合部を例に説明したが、流路変更部に他の手段を用いてもよい。流路変更部は、静止混合部、多孔板、およびギヤポンプからなる群から選ばれる少なくともいずれか1つ以上とすることができる。また、適宜これらを組み合わせたものとしてもよい。
多孔板は、多数の孔を設けた部材である。多孔板は、ブレーカプレートとも呼ばれるものである。本発明の成形機は、流路変更部に多孔板を用いてもよい。この多孔板は、樹脂溜り部内の樹脂の位置を変更するために、溶融混練部側となる入口側の孔の位置と、吐出部側となる出口側の孔の位置とが変位するように傾斜させて接続するものとすることができる。図4~6は、このような多孔板の概要図である。なお、多孔板は、位置の変位が無いような入口側から出口側に向けて平行な孔を有してもよい。
図4は、入口側と出口側とで、中央を軸としたときに45°移動させるように、孔を傾斜させたものである。また、図5は、30°傾斜させたものである。図6は、図4、図5の多孔板と逆回転の左ねじれで45°傾斜させたものである。このように、入口から出口に傾斜させた孔を通って移動する樹脂は、各樹脂の位置が変わる。これは、単に真直ぐ進むものとは異なり、位置交換による均一なエネルギー供給が生じる。多孔板は、1枚でもよいが、複数用いることで、より十分な位置交換ができる。また、複数用いる場合、傾斜が異なるものや、ねじれの向きが異なるものなどを組み合わせてもよい。
多孔板の孔の数は、多孔板の厚さや、孔の大きさ、孔の傾斜、立体的な干渉を解消する程度などによって、適宜設定することができる。例えば、全体として、孔の数の下限は20以上や、30以上、60以上などとしてもよい。全体として、孔の数の上限は、200以下や、150以下、120以下としてもよい。
[圧力調整部]
成形機10は、圧力調整部を有するものとすることができる。圧力調整部は、調整弁や、ギヤポンプなどを用いることができる。圧力調整部を用いて、樹脂溜り部での圧力を高くすることで、相容性を増すことができる。
図7は、調整弁の一例である。調整弁は、中央の開口部の開口量を調整する。圧力調整部は、樹脂溜り部の吐出部側に、配置することができる。調整弁は、開口部を閉じて、流路を狭くすることで、溶融混練部や樹脂溜り部での圧力を上昇させることができる。
図8は、ギヤポンプの一例である。ここでは、二軸押出機に取り付けた樹脂溜り部と、吐出部としてストランドダイを取り付けたもので、樹脂溜り部には多段ろ過装置も設けたものを例にしている。樹脂溜り部の溶融混練部側と、吐出部側に、それぞれギヤポンプ本体を取り付けて、各ギヤポンプを用いるためのギヤポンプユニットを設けている。溶融混練部側のギヤポンプ本体1およびギヤポンプユニット1と、吐出部側のギヤポンプ本体2及びギヤポンプユニット2とで、樹脂溜まり部内の樹脂の流量を調整する。手前側となるギヤポンプユニット1の流量を上げ吐出部側のギヤポンプユニット2の流量を下げたり、ギヤポンプユニット1の流量を下げ吐出部側のギヤポンプユニット2の流量を上げたりすることで、樹脂溜り部内の樹脂圧力を調整することができる。ギヤポンプのギヤの枚数は、2枚でも3枚でも4枚でも良い。ギヤポンプの形式は、サドル取付式、ブロック取付式、配管取付式、タンク取付式、台座取付式などが使用可能である。ギヤポンプの容量範囲は、0.01~1,000L/min、ポンプの押しのけ容積は、0.01~100,000cm3/rev、使用最高温度は、400℃、最大吐出圧力は、100MPa、最大差圧は、100MPa、使用可能な粘度範囲は、0.001~100,000Pa・s、ポンプ回転速度範囲は、1~500rpmのギヤポンプが使用可能である。
[吐出部3]
吐出部3は、樹脂溜り部5を通り、溶融混練された後の熱可塑性樹脂組成物をストランド状に吐出する。ペレタイザー4は、吐出部3より吐出されたストランド状の熱可塑性樹脂組成物を細断しペレット化する。なお、本発明の成形機は、吐出部から吐出後、直ちに細断するホットカットやアンダーウォーターカットなどによりペレット化してもよく、ストランド状には、短い状態のものも含む。本発明の成形機は、このような吐出部から吐出された熱可塑性樹脂組成物を細断しペレット化する細断部を有する成形機としてもよい。図2は、ストランド状に押し出した樹脂組成物を示す像である。ここでは、熱可塑性樹脂組成物を、5本のストランド状に押し出している。
なお、この吐出部3は、ストランド状に吐出するものを例に説明した。本発明の成形機は、ペレットなどを成形するストランド状の吐出に限らず、フィルム等の各種他の形状に成形することができる。このため、吐出部は、樹脂を吐出するものであればよく、ダイなども含む。
[熱可塑性樹脂]
本発明は、熱可塑性樹脂等を含む熱可塑性樹脂組成物に関する。熱可塑性樹脂は、汎用樹脂や、エンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂などを用いることができる。
熱可塑性樹脂は、複数用いてもよく主たる成分となるものを第一の熱可塑性樹脂と呼ぶ場合がある。第一の熱可塑性樹脂は、熱を加えると軟化し、成形可能な樹脂である。例えば、ポリオレフィン系樹脂や、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニルサルファイド(PPS)等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を第一の熱可塑性樹脂として用いることが好ましい。ポリオレフィンとは、ポリエチレンやポリプロピレン等のように、1位に二重結合をもつα-オレフィンの重合で得られる結晶性を有する高分子である。
[熱可塑性樹脂組成物]
熱可塑性樹脂組成物は、第一の熱可塑性樹脂を含む。この熱可塑性樹脂組成物は、実質的に第一の熱可塑性樹脂からなるものであってもよい。また、一般的に熱可塑性樹脂組成物に含まれる不純物などを含んでいてもよい。また、熱可塑性樹脂組成物と混合して用いられる、各種添加剤等を含むものであってもよい。添加剤としては、各種の物性改善剤を用いることができ、例えば、着色剤や、安定剤、UV吸収材、可塑剤などがあげられる。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる第一の熱可塑性樹脂は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂組成物に含まれる第一の熱可塑性樹脂の上限は特に定めなくてもよいが、添加剤や微量な不純物を含む場合があるため、99.9質量%以下や、99.5質量%以下、99質量%以下、98質量%以下、95質量%以下のような上限を設けてもよい。
[複合樹脂組成物]
熱可塑性樹脂組成物は、第一の熱可塑性樹脂と、無機物、有機物、及び/又は第一の熱可塑性樹脂とは異なる高分子成分を含む複合樹脂組成物とを用いてもよい。複合樹脂組成物は、従来の成形では、第一の熱可塑性樹脂組成物よりも、特に破断伸度が低下する場合がある。本発明によれば、このような破断伸度の低下を抑制することができる。
[無機物]
複合樹脂組成物は、無機物を含むことができる。この無機物は、第一の熱可塑性樹脂と組み合わせて用いられ、押出成形等により成形するときに併用したり、不純物として混入される成分である。例えば、いわゆるフィラーとして混合するものなどが挙げられ、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、タルク、硝酸バリウム、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、顔料等が挙げられる。また、フィラーは、ナノ粒子や、ナノ線条体なども用いることができる。無機物を含むことで、弾性率や破断強度、耐衝撃性などが向上したり、色や反射率等の光学的特性や耐熱性が変化し所望の物性に調整することができる。
[有機物]
複合樹脂組成物は、有機物を含むことができる。これは、第一の熱可塑性樹脂とは異なる高分子成分として例示するもの以外のものであってもよい。これらは、有機フィラーと呼ぶ場合もある。有機フィラーを含み、これらを分散させて物性を向上させることができる。例えば、有機フィラーは、天然材料や合成材料などを用いることができる。天然材料としては、セルロース繊維、でんぷん、木粉、アーモンド・ピーナツ・もみ殻、木綿等の農林水産業の副産物及び紙(古紙)などの天然材料の加工品を用いることができる。合成材料としては、レーヨン、セロハン、各種合成繊維(ポリアクリルニトリル、ナイロン、芳香族ポリアミド・アラミド繊維、ポリエステル、ポリビニルアルコール、熱硬化性樹脂等)などを用いることができる。
[第一の熱可塑性樹脂とは異なる高分子成分(他の高分子成分)]
複合樹脂組成物は、第一の熱可塑性樹脂とは異なる高分子成分(以下、「他の高分子成分」)を含むことができる。この他の高分子成分は、主たる成分として含まれる第一の熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂や高分子、熱硬化性樹脂等である。
この「他の高分子成分」とは、例えば、第一の熱可塑性樹脂が、ポリプロピレンの場合、ポリプロピレン以外のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン等)や、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニルサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂等である。すなわち、その複合樹脂組成物における第一の熱可塑性樹脂となる主たる成分以外の高分子は、他の高分子成分とする。この他の高分子は、1種の樹脂等でもよいし、2種以上の樹脂等でもよい。他の高分子成分を含むことで、弾性率や破断強度、耐衝撃性などの機械特性が向上したり、色や反射率等の光学的特性や耐熱性が変化し所望の物性に調整することができる。
複合樹脂組成物は、前述のように、第一の熱可塑性樹脂と、無機物及び/又は第一の熱可塑性樹脂とは異なる高分子成分を含む。複合樹脂組成物において、第一の熱可塑性樹脂は、その複合樹脂組成物において最も質量濃度が高い樹脂である。複合樹脂組成物において、第一の熱可塑性樹脂は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
複合樹脂組成物は、無機物又は第一の熱可塑性樹脂とは異なる高分子成分(「他の高分子成分」)の少なくとも一方を含む。双方を含むものであってもよい。無機物を含む場合、その濃度は、無機物が主たる成分とならず押出成形可能な範囲で特に制限はない。また、他の高分子成分を含む場合、その濃度は、他の高分子成分が主たる成分とならず押出成形可能な範囲で特に制限はない。
例えば、複合樹脂組成物の全量に対して、無機物及び他の高分子成分の合計量の質量比(「無機物及び他の高分子成分の合計量」/「複合樹脂組成物の全量」)が、60質量%以下や、50質量%以下、30質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、5質量%以下としてもよい。なお、このとき第一の熱可塑性樹脂に対する他の高分子の質量比(「他の高分子成分」/「第一の熱可塑性樹脂」)は、1未満であり、好ましくは0.9以下や0.8以下であり、他の高分子成分は、第一の熱可塑性樹脂よりも少なく、無機物含有量が多い場合がある。
また、複合樹脂組成物の全量に対して、無機物及び他の高分子成分の合計量の質量比(「無機物及び他の高分子成分の合計量」/「複合樹脂組成物の全量」)の下限は、0.1質量%以上や、0.5質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上としてもよい。
[リサイクル樹脂組成物]
本発明に用いる熱可塑性樹脂組成物として、リサイクル樹脂を用いることができる。リサイクル樹脂とは、バージン樹脂のペレットから成形品を成形する工程で生じる廃棄物や不良品のようなプレコンシューマ品や、成形品として市場流通し、消費された後の、容器包装リサイクルプラスチック(いわゆる「容リプラ」)のような廃棄プラスチックとして回収される樹脂の総称である。
本発明では、リサイクル樹脂に由来するポリオレフィン系樹脂を含有するリサイクル樹脂組成物を用いることが好ましい。すなわちポリオレフィン系樹脂を含有するリサイクル樹脂、また適宜リサイクル樹脂にポリオレフィン系樹脂を用いた成形品に用いられる任意の成分を含有するものをリサイクル樹脂組成物として用いることができる。
ポリエチレンやポリプロピレン等の複数のポリオレフィンを用いたもののリサイクル樹脂は、はじめから複数のリサイクルポリオレフィンを含有するものとして回収される。また、リサイクル過程で種々の物質が混合される可能性があり、無機粉末、無機フィラー、顔料、ポリスチレン由来物、1,4-付加ブタジエンユニット由来物およびポリエチレンテレフタレート由来物、あるいはその他のプラスチックといったいわゆる不純物も混合されたものとして収集されてもよい。
本発明に用いるリサイクル樹脂組成物は、このような複数のポリオレフィンや、各種不純物等も含むものを用いることができる。また、本発明に用いるリサイクル樹脂組成物は、バージン樹脂等を含んでいてもよい。リサイクル樹脂組成物における、リサイクル樹脂由来のポリオレフィン系樹脂の含有量は任意の量としてもよい。リサイクル樹脂の活用の観点から、リサイクル樹脂由来のポリオレフィン系樹脂が50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また、リサイクルによりポリオレフィン系樹脂以外も含むため、ポリオレフィン系樹脂の上限は99質量%以下や、98質量%以下、95質量%以下、92質量%以下のようなものとしてもよい。
リサイクル樹脂由来のポリオレフィン系樹脂を含有するリサイクル樹脂組成物には、ISO18263-1;2015に則った樹脂を用いることができる。リサイクル樹脂組成物は、リッチ品や準リッチ品、ミックス品に分類することができる。リサイクルポリエチレンの場合、ポリエチレンの純度が60質量%以上85質量%未満のものを準リッチ品、85質量%以上のものをリッチ品と呼び分類される。リサイクルポリプロピレンの場合、ポリプロピレンの純度が60質量%以上85質量%未満のものを準リッチ品、85質量%以上のものをリッチ品と呼び分類される。
例えば、ポリエチレンを主として含むものとしては、ISO18263-1-PE-M1(REC),NG1(PEリッチ品:PE≧85%の無着色ペレット)、ISO18263-1-PE-M1(REC),NG3(PEリッチ品:PE≧85%の無着色減容品)、ISO18263-1-PE-MPO(REC),NG1(PE準リッチ品:85%>PE≧60%の無着色ペレット)、ISO18263-1-PE-MPO(REC),NG3(PE準リッチ品:85%>PE≧60%の無着色減容品)を用いることができる。
また、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物を主として含むものとしては、ISO18263-1-MPO(REC),NG1(PE/PPミックス:無着色ペレット)、ISO18263-1-MPO(REC),NG3(PE/PPミックス:無着色減容品)を用いることができる。ここで「ミックス」とは60%>PEまたはPP≧40%である。
また、ポリプロピレンを主として含むものとしては、ISO18263-1-PP-M1(REC),NG1(PPリッチ品:PP≧85%の無着色ペレット)、ISO18263-1-PP-M1(REC),NG3(PPリッチ品:PP≧85%の無着色減容品)、ISO18263-1-PP-MPO(REC),NG1(PP準リッチ品:85%>PP≧60%の無着色ペレット)、ISO18263-1-PP-MPO(REC),NG3(PP準リッチ品:85%>PP≧60%の無着色減容品)を用いることができる。
本発明の製造方法には、適宜リサイクル樹脂を粉砕混合した塊状や粉状として用いたり、粉砕混合したものを一般的なペレッターを用いて溶融混練し予めペレットとしておいたものを用いることができる。
本発明の製造方法は、押出工程等において、バージン樹脂のペレットに対する標準的な成形条件等と比較してその製造工程の設定等行う。このバージン樹脂のペレットは、複合樹脂組成物の組成において第一の熱可塑性樹脂を用いる。例えば、複合樹脂組成物の一例としてリサイクル樹脂組成物を例にして説明する。リサイクル樹脂組成物の主たる成分である第一の熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合、ポリプロピレン樹脂ペレットをバージン樹脂のペレットとして用いる。
また、リサイクル樹脂組成物の主たる成分がポリエチレンの場合、ポリエチレン樹脂ペレットをバージン樹脂のペレットとして用いる。バージン樹脂のペレットは、実質的にその第一の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。ペレットは一部不純物等を含む場合もあるため、バージン樹脂のペレットにおいて、第一の熱可塑性樹脂組成物の濃度は、例えば98質量%以上や、99質量%以上、99.5質量%以上のような範囲からその樹脂として適した仕様のものを用いることができる。なお、リサイクル樹脂組成物の主たる成分は、リサイクル樹脂組成物において占める割合が最も多い成分である。リサイクル樹脂組成物において主たる成分が占める割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上を占める成分である。
[押出工程]
本発明の製造方法は、熱可塑性樹脂組成物を成形機の供給口に供給し、前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練部で溶融させながら押し出し、前記溶融混練部で溶融された前記熱可塑性樹脂組成物を樹脂溜り部で滞留させながら、前記樹脂溜り部内の流路変更部で前記熱可塑性樹脂組成物の流れを変更し、前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出部から吐出させる押出工程を有する。この製造方法は、吐出部からストランド状に吐出し、適宜ペレット化した熱可塑性樹脂組成物を原料に用いて、樹脂成形品を製造するものとすることができる。
[押出条件]
成形機では、複合樹脂組成物やリサイクル樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物の種類やその成形機の押出し圧力などに応じて、単位時間の押出し量が所定の範囲で制御されることが好ましい。この押出し量に基づいて、樹脂溜り部として接続する配管の容積を所定の範囲としてせん断応力を解消する大きさに調整する。このせん断応力を解消する大きさは、具体的には、滞留時間を、5~600秒とすることが好ましい。
また、成形機はその滞留時間を達成する容積となる樹脂溜り部を有するものとすることができる。この滞留時間は、樹脂溜り部の容積/単位時間あたり押出し量から求められる。なお、この滞留時間は、溶融混練部に相当するスクリュが設けられる長さから求めても良く、吐出部までの配管に対してスクリュが短くされている場合、スクリュが設けられている位置までは配管との間に大きなせん断がかかるため溶融混練部とみなす。一方、スクリュがない部分を、樹脂溜り部とみなしてその滞留時間等を管理することもできる。
この滞留時間はより好ましくは、20秒以上や、30秒以上、40秒以上、60秒以上とすることができる。滞留時間を長くするほど、せん断履歴による成形履歴を解消することができ、より初期物性が維持された樹脂組成物を得ることができる。一方、その上限は500秒以下や、400秒以下、300秒以下としてもよい。滞留時間を長くしてせん断履歴による成形履歴の解消による効果は、一定以上からその変化量が少なくなるため、装置の設計上、一定以上長くする必要性は低い。そして、この滞留時間を容積として設計するときは、そのペレット成形機の最大押出し量に基づいて最小滞留時間を達成できるように設計することができる。または、実質的には、樹脂溜り部として取り付ける配管の長さで滞留時間の制御をできるためその長さを運転条件に併せて適宜取り換えることができる設計として管理しても良い。なお、押出工程は、特開2017-148997号公報の熱可塑性樹脂組成物の成形方法等のペレット化工程などを適宜参照して実施することができる。
溶融混練の温度は、バージン樹脂の標準的な成形温度と同程度で成形してもよい。具体的には、標準的な成形温度±50℃以内や、±40℃以内のような範囲で適宜設定してもよい。この溶融混練の温度は、溶融混練部や、樹脂溜り部の設定温度である。温度が高すぎると、樹脂が劣化するおそれもある。また温度が低すぎると、流動性が低い場合や、圧力が高すぎて装置負荷が大きすぎる場合がある。
樹脂溜り部の温度設定値としては、例えば、熱可塑性樹脂組成物の主成分がポリオレフィンの場合、100~280℃から設定してもよい。温度の設定値は、130~250℃がより好ましく、熱可塑性樹脂組成物が熱劣化し易い場合、130~170℃がさらに好ましく、熱劣化し難い場合、210~250℃がさらに好ましい。
本発明の成形品の製造方法における、樹脂溜り部での圧力としては、特に限定されるものではないが、本発明の熱可塑性樹脂組成物としてポリエチレン系リサイクル樹脂を用いる場合、樹脂溜り出口付近での計測される樹脂溜り圧力が高い程、破断伸びに優れる成形品が得られ易い傾向がある。その場合、樹脂溜り圧力としては2~10MPaが好ましく、3~8MPaがより好ましく、4~6MPaは特に好ましい。
その場合はさらに、樹脂溜り部圧力を高めるために、樹脂溜り部温度を適切に設定することが好ましい。特に樹脂溜り出口に圧力調整弁を導入しない場合は、樹脂溜り部の設定温度をある程度低くしなければ、樹脂溜り部圧力が高くなり難い。具体的な樹脂溜り部の設定温度としては130~200℃が好ましく、140~180℃がより好ましく、150~170℃がさらに好ましい。
しかしながら、樹脂溜り出口に圧力調整弁を導入した場合は、樹脂溜り部の設定温度を特に限定しなくとも、樹脂溜り部圧力を高め易い傾向がある。また、樹脂溜り出口に先絞り形状を導入した場合は、樹脂溜り部圧力を高め易い傾向は比較的に低いため、やはり、樹脂溜り部の設定温度を低くしなければ、樹脂溜り部圧力が十分なレベルまで達し難いため、具体的な樹脂溜り部の設定温度として130~200℃が好ましく、140~180℃がよりに好ましく、150~170℃がさらに好ましい。
このように、成形機10を用いて、熱可塑性樹脂組成物等を成形機10の供給口1に供給し、溶融混練部2で溶融混練させ、樹脂溜り部5で滞留させ、吐出部3からストランド状に吐出させ、ペレタイザー4で細断することでペレット化させることで、本発明の製造方法の押出工程を行うことができる。
図1の成形機10は、ペレットの成形を例に説明した。本発明の成形機は、ペレットの成形に限らず、シート、フィルム、チューブ、パイプ、異形成形品などの、各種押出成形に用いる成形機とすることもできる。このような成形機は、成形機で押し出してそのまま製品の形状に合わせて加工する直接成形としても、成形機でペレットなどとして別に溶融して加工成形する間接成形としてもよい。各種押出成形は、樹脂溜り部の先の吐出部を、成形対象の形状と対応するダイなどにすることで各種の成形品を製造することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[評価項目]
[引張試験] (株)島津製作所製、型式EZ-LX 5KNを用いて、引張試験を行った。引張試験によって得られた結果を用いて、応力-ひずみ曲線(S-S曲線)から、破断伸度を求めた。試験片は、図9に示す形状のダンベル試験片を用いた。なお、引張速度は10mm/minとした。
[試料等]
・HDPE(V-HDPE):旭化成(株)製、サンテック(商品名)、品番B470
MFR0.3g/10min、(荷重2.16kg)、密度949kg/m3、結晶化度74.5%(SAXS)
[ペレット製造条件]
[基本条件]
福岡大学内に設置しているプラスチック工学研究所製のφ26mmの二軸混練押出機(型式SBTN-26、L/D=60)に、樹脂溜り(φ38.1mm、長さ360mmの円筒形))を取り付けてペレタイズを行った。基本とする実験条件は以下のものである。
・フィーダ量10kg/h、引取り速度10m/min、溶融混練温度200℃、回転数200rpm
・樹脂溜り部
溶融混練部の配管(バレル)と同じ断面積形状の配管を、樹脂溜り部として、溶融混練部と吐出部との間に配置した。溶融樹脂の流れ方向となる樹脂溜り部の長さは、約150mmである。フィーダ量10kg/hのとき、滞留時間は、約40秒であった。
・流路変更部
樹脂溜り部内に、図3に示す形状の静止混合部を、流路変更部として配置した。静止混合部は、流れ方向に3要素となるように配置した。
・圧力調整部
樹脂溜り部の接続部と吐出部との間に、圧力調整部を配置した。圧力調整部は、図7に示す形状の調整弁で、流路を閉じることで、樹脂溜り部内での圧力を上昇させることができる。
[プレス成形]
試験片は、ペレットをプレス成形した膜から作製した。プレス条件は、プレス温度200℃、プレス圧力20MPa、プレス時間2分、厚み約1mmとした。冷却条件は温度60℃に設定したプレス機に挟んで20MPa、2分で冷却した。
[参考例1]
参考例1は、原料の樹脂を、そのままプレスして試験したときの試験結果である。リペレタイズを行っていないため、リペレタイズなしとして説明する場合がある。なお、下表において、この参考例1を基準となるものとして破断伸びや、破壊エネルギー等の結果を比で示す。
[参考例2]
参考例2は、原料の樹脂を樹脂溜り部無しの、二軸混練押出機で、リペレタイズして得たペレットを用いて評価した。
<構成例A:バージンPEの流路変更部(静止混合部)・樹脂溜り付き押出>
[実施例1-1~実施例1-4]
樹脂溜り部に、静止混合部を配置した溶融混練機で、樹脂をリペレタイズして得たペレットを用いて評価した。また、樹脂溜り部の設定温度を、150℃(実施例1-1)、175℃(実施例1-2)、200℃(実施例1-3)、225℃(実施例1-4)と変更して、樹脂溜り部の温度の影響も評価した。
引張試験を行った結果を、表1および図10に示す。実施例1-1~実施例1-4に示すように、特に、破断伸び、伸長破壊エネルギーが向上した。また、樹脂溜り部の温度は、溶融混練部と同程度以上の温度のとき、より改善効果が大きかった。また破断応力も向上する傾向がみられ、降伏応力、ヤング率も悪化等することがなかった。なお、静止混合部なしの場合、引張特性がやや低下する傾向があり、静止混合部有とすることで複数のストランドを引き抜くときも、ストランド間のばらつきも小さい。
Figure 2023079184000002
[実施例2]
実施例1-3(樹脂溜り部200℃)に加えて、圧力調整部を設けて、流路を閉じて、圧力を上昇させた。圧力調整弁により、樹脂溜り部内の圧力は、約1割上昇した。
実施例2と、前述した参考例1,参考例2との比較結果を、図11に示す。圧力調整により、破断伸び、伸長破壊エネルギー、破断応力が上昇した。また、降伏応力、ヤング率は同程度で維持された。
[試験結果に関するシミュレーション解析]
図12~図20に、流路変更部を設けることによる影響をシミュレーション解析した条件や、その結果を示す。これらは、3Dダイ解析モデルに関するものであり、形状として、φ38.1の丸型形状で、スタティックミキサ(静止混合部)を配置したものである。また、流路体積は427cm3、流路方向全長は506mm、流路方向樹脂溜り長さは383mmとした。解析条件としては、さらに、上流側スクリュ条件について、φ26の2軸スクリュで、スクリュデザインは強練り、押出量は10kg/h、スクリュ回転数は200rpmとした。また、FS3D解析入力条件は、樹脂流量は3.6cm3/s、樹脂流入温度は265℃、材料データはPE系リサイクル樹脂((株)富山環境整備製、PE硬質(商品名))、ダイ壁面温度200°、配管熱伝達係数150W/m2℃とした。解析結果の概要として、圧力損失は3.5MPa、出口樹脂温度は201℃、滞留時間は336秒、ダイ先端応力は89kPa、樹脂溜り部平均応力は8.4kPaである。
図12、図13は、シミュレーション解析の条件の概要である。図14は、圧力分布を解析した断面分布図である。なお、図14のNo.1は、φ26の二軸スクリュ押出で、φ26のメガネ形状の配管を樹脂溜りとしている。No.2は、φ26の二軸スクリュ押出で、φ38.1の丸形状の配管を樹脂溜りとし、静止混合部の流路変更部を設けている。このNo.2は、図12、13、15~20とも共通する形状である。No.3は、φ26の二軸スクリュ押出で、φ38.1の丸形状の配管を樹脂溜りとして、静止混合部の流路変更部を設け、吐出部までをテーパー状としている。図15は、温度分布を解析した図である。図16は、流速分布を解析した図である。図17は、滞留時間分布を解析した図である。図18は、ひずみ速度分布を解析した図である。図19は、溶融粘度分布を解析した図である。図20は、応力分布を解析した図である。
シミュレーションの解析の各結果について、以下の知見が得られた。
1)圧力分布:樹脂溜まり部の圧力損失は、流路変更部を設けることで大きくなる傾向を示した。
2)温度分布:樹脂温度は樹脂溜り部の壁面温度に比べて高温で、樹脂溜り部を通過することで樹脂温度は低下し、滞留時間が長いほど樹脂温度の低下も大きくなった。壁面との接触面積が大きいほど温度低下の傾向は大きくなるため、ブレーカプレートや、流路変更部を通過するときに顕著な温度低下を示し、流路変更部通過時には、樹脂溜り部の壁面温度の200℃付近まで樹脂温度が低下した。
3)滞留時間:樹脂溜り部に流路変更部を設けた流路では滞留時間が有意に増加する傾向を示した。
4)応力分布:樹脂溜り部に流路変更部を設けた流路では、流路断面が狭くなるために、流速及び歪み速度が大きくなり、樹脂溜り部の応力は8.4kPaと、他形状よりも大きな応力値を示した。
流路変更部により、樹脂溜り部の配管内の中央付近と、端部付近とで生じている差を、位置変換していることがシミュレーション解析結果からも確認された。これにより、前述の実施例等にも示したように、ペレタイズして得られた樹脂の物性もストランドごとのムラも少なく全体としても向上していたものと考えられる。
[実施例B]ギヤポンプを用いた実験
<構成例B1:バージンPEの流路変更部(ギヤポンプ)・樹脂溜り付きTダイ押出成形>
[原料]プライムポリマー製LLDPE、SP4030(MFR4g/10分)を用いた。
[Tダイを備えたギヤポンプ付き樹脂溜り付き押出]
図21は、実施例に用いたギヤポンプとTダイを有する成形機の概要図である。図21に示すように、押出機((株)プラスチック工学研究所製、型式SBTN-26、φ26二軸、L/D=60、配管(バレル)断面積1010mm2)に、樹脂溜り(配管φ38.1mm、配管断面積1130mm2、長さ360mmの円筒形)を取り付け、樹脂溜りの前後にギヤポンプ(協和ファインテック(株)製、形式HDS-45-01-1L-30×1)を取り付け、吐出部にTダイ(リップ幅150mm、リップクリアランス0.5mm)を取り付けた。
これを用いて、混練部・樹脂溜り・Tダイの温度250℃、原料供給量5kg/h、スクリュ回転数200rpmの条件で、フィルム厚み0.1mmになるように巻き取った。但し、図21のGP1出側とGP2入側の圧力を樹脂溜りの圧力として表3に示す実験例B1-3~実験例B1-76の種々の値に設定した。GP1入側圧力は2MPaで一定とした。
[Tダイを備えた樹脂溜りなし押出]
図22は、実験に用いた樹脂溜りがない成形機の概要図である。図22に示すように、樹脂溜りがない他は、上述したTダイを備えた樹脂溜りなし押出と同様の装置構成と条件によって、厚み0.1mmになるようにフィルムを巻き取った。(実験例B1-2、表3)
[プレス成形]
プレス成形機((有)ユアーズ技研製HMM-10HP-A)を用いて、温度180℃、ゲージ圧力25MPa(実圧力1.8MPa)で2分保持後、室温下放冷の条件で、厚み0.1mmのフィルムを成形した。(実験例B1-1、表2)
LLDPE系バージン樹脂の樹脂溜りつき押出後にフィルム成形することによって、破断伸度に優れるフィルムが得られた。
さらに、樹脂溜りの圧力を1MPaより高く調整することによって、破断伸度とヤング率に優れるフィルムが得られた。
Figure 2023079184000003
Figure 2023079184000004
<構成例B2:リサイクルPEの流路変更部(ギヤポンプ)・樹脂溜り付き押出>
[原料]PE系リサイクル樹脂:(株)富山環境整備製、PE硬質(商品名)、ペレット状
[ギヤポンプ付き樹脂溜り付き押出]
図23は、実施例に用いた樹脂溜りの前後にギヤポンプを設けてペレット状に成形する成形機の概要図である。図23に示すように、押出機((株)プラスチック工学研究所製、型式SBTN-26、φ26二軸、L/D=60、配管(バレル)断面積1010mm2)に、樹脂溜り(配管φ38.1mm、配管断面積1130mm2、長さ360mmの円筒形)、ギヤポンプGP1,2(ともに協和ファインテック(株)製、形式HDS-45-01-1L-30×1)、ストランドダイを取り付けて、供給量30kg/h、スクリュ回転数200rpm、混練部・樹脂溜り、ダイの温度200℃の押出条件において、ペレット状の樹脂を製造した。その際、樹脂溜り圧力は、GP2上流側の計測値として表4に示す値に調整することができた。但し、GP1上流側の圧力変動は1~11MPaであった。
[樹脂溜りなし押出]
図24に示すように、ギヤポンプと樹脂溜りを取り付けないこと以外は、上記の押出と同じ操作を行った。
[プレス成形]
プレス成形機((有)ユアーズ技研製HMM-10HP-A)を用いて、ペレット状の樹脂を厚み1mmのフィルム状に成形した。但し、プレス盤温度180℃、ゲージ圧力25MPa(実圧力1.8MPa)、保持時間2分、室温下放冷の条件で行った。
[引張特性]
試料をダンベル形状(JIS-K7127-1999 タイプ5の1/3縮小サイズ)に打ち抜いて、小型試験機((株)島津製作所製、型式EZ-LX)を用いて、JIS K6922-2018に準拠して得られたSSカーブに基づいて破断伸度とヤング率を求めた。但し、25℃、50%RH、チャック間距離40mm、引張速度10mm/minの条件で、1試料当たり7回の試験を行い、最小値と最大値を除外し平均値を求めた。
実験例B2-1(比較例):未押出原料ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
実験例B2-2(比較例):樹脂溜りなし押出ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
実験例B2-3~実験例B2-6:ギヤポンプ付き樹脂溜り付き押出ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
結果を表4に示す。
PE系リサイクル樹脂の樹脂溜り付き押出において、樹脂溜り圧力を制御することによって、引張特性に優れる樹脂が得られた。
Figure 2023079184000005
<構成例B3:リサイクルPPの流路変更部(ギヤポンプ)・樹脂溜り付き押出および射出成形>
[原料]PP系リサイクル樹脂(株):富山環境整備製、PP硬質(商品名)、ペレット状
[ギヤポンプ付き樹脂溜り付き押出]
図23に示すように、押出機((株)プラスチック工学研究所製、型式SBTN-26、φ26二軸、L/D=60、配管(バレル)断面積1010mm2)に、樹脂溜り(配管φ38.1mm、配管断面積1130mm2、長さ360mmの円筒形)、ギヤポンプGP1,2(ともに協和ファインテック(株)製、形式HDS-45-01-1L-30×1)、ストランドダイを取り付けて、供給量8kg/h、スクリュ回転数100rpm、混練部・樹脂溜り・ダイの温度230℃の押出条件において、ペレット状の樹脂を製造した。その際、樹脂溜り圧力は、GP2上流側の計測値として25MPaに調整することができた。但し、GP1上流側の圧力変動は1~3MPaであった。
[樹脂溜りなし押出]
図24に示すように、ギヤポンプと樹脂溜りを取り付けないこと以外は、上記の押出と同じ操作を行った。
[射出成形]
電動式射出成形機((株)日本製鋼所製、型式J110AD-110H、型締め力1080kN)を用いて、ダンベル形状(JIS K7139-2009 タイプA1、厚み4mm)に成形して引張試験に供した。但し、シリンダ温度200℃、金型温度40℃の条件で行った。
[引張特性]
万能試験機((株)エー・アンド・デイ製、型式 RTF-1350)を用いて、JIS K6921-2018に準拠して得られたSSカーブに基づいて、破断伸度とヤング率を求めた。
但し、25℃、50%RH、引張速度50mm/minの条件で行った。
実験例B3-1(比較例):未押出原料ペレットを射出成形し引張特性を評価した。
実験例B3-2(比較例):樹脂溜りなし押出ペレットを射出成形し引張特性を評価した。
実験例B3-3:ギヤポンプ付き樹脂溜り付き押出ペレットを射出成形し引張特性を評価した。
結果を表5に示す。
PP系リサイクル樹脂の樹脂溜り付き押出によって、得られた樹脂を射出成形する際、樹脂溜りの圧力を制御した場合、射出成形物は引張特性に優れていた。
Figure 2023079184000006
[実施例C] 多孔板による流路変更
<構成例C1:バージンPEの流路変更部(多孔板)・樹脂溜り付き押出>
流路変更部として、多孔板を用いる実験を行った。なお、図5に示すように、内から外に向けた孔と、外から内に向けた孔が、その孔の中央を通る多孔板の断面で厚み方向の軸となす角度が傾斜30度となるように設けた孔を有するものを用いた。これは、樹脂全体の押出方向に相当する多孔板の厚み方向と平行ではない孔を有するため、「非平行型多孔板」と呼ぶ場合がある。この非平行型多孔板も厚み方向と平行の孔を一部有してもよい。また、このような非平行型の傾斜する孔がないものを「平行型多孔板」と呼ぶ場合がある。
[原料]HDPE(V-HDPE):旭化成(株)製、サンテック(商品名)、品番B470、MFR0.3g/10分、ペレット状
[多孔板・金網付き樹脂溜り付き押出]
図25は、実施例で用いた多孔板を用いる成形機の概略図である。図25に示すように、押出機((株)プラスチック工学研究所製、型式SBTN-26、φ26二軸、L/D=60)に、樹脂溜り(φ38.1mm、長さ360mmの円筒形)、多孔板1~3枚(「図5に示す30度傾斜タイプの非平行型」、または「平行型」)、ストランドダイを取り付けて、供給量10kg/h,スクリュ回転数200rpm,混練部・樹脂溜り、ダイの温度200℃の条件でペレット状の樹脂を製造した。
[プレス成形]
加熱用成形機(株)井元製作所製、型式 IMC-180C)と冷却用プレス成形機((有)ユアーズ技研製HMM-10HP-A)を用いて、押出機で成形したペレット状の樹脂を厚み1mmのフィルム状に成形した。但し、加熱用プレス盤温度200℃、ゲージ圧力5MPa(実圧力0.4MPa)、保持時間2分、冷却用プレス盤温度60℃の条件で行った。
[引張特性]
フィルム状の試料をダンベル形状(JIS-K7127-1999 タイプ5の1/3縮小サイズ)に打ち抜いて、小型卓上試験機((株)島津製作所製、型式EZ-LX)を用いて、JIS K6922-2018に準拠して得られたSSカーブに基づいて破断伸度とヤング率を求めた。但し、25℃、50%RH、チャック間距離40mm、引張速度10mm/minの条件で、1試料当たり7回の試験を行い、最小値と最大値を除外し平均値を求めた。
実験例C1~5:非平行型多孔板1~3枚を樹脂溜り内のいくつかの位置に取り付けて行った樹脂溜り付き押出ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
実験例C6:平行型多孔板付き樹脂溜り付き押出ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
結果を表6に示す。
HDPE系バージン樹脂の樹脂溜り付き押出を、非平行型多孔板付きで行ったところ、引張特性と、整流作用による品質対策の両立が可能であった。
Figure 2023079184000007
Figure 2023079184000008
[実施例D] 開口部を調製する調整弁による圧力調整
[原料] PE系リサイクル樹脂:(株)富山環境整備製、PE硬質(商品名)、ペレット状
[樹脂溜り付き押出]
図26に示すように、押出機((株)プラスチック工学研究所製、型式SBTN-26、φ26二軸、L/D=60、配管(バレル)断面積1010mm2)に、樹脂溜り(配管φ38.1mm、配管断面積1130mm2、配管長さ360mmの円筒形)、ストランドダイを取り付けて、供給量23kg/h、スクリュ回転数300rpm、混練部・樹脂溜り・ダイの温度200℃の押出条件において、ペレット状の樹脂を製造した。
[プレス成形]
プレス成形機((有)ユアーズ技研製、HMM-10HP-A)を用いて、ペレット状の樹脂を厚み1mmのフィルム状に成形した。但し、プレス盤温度180℃、ゲージ圧力25MPa(実圧力1.8MPa)、保持時間2分、室温下放冷の条件で行った。
[引張特性]
フィルム状の試料をダンベル形状(JIS-K7127-1999 タイプ5の1/3縮小サイズ)に打ち抜いて、小型試験機((株)島津製作所製、型式EZ-LX)を用いて、JIS K6922-2018に準拠して得られたSSカーブに基づいて破断伸度とヤング率を求めた。但し、25℃、50%RH、チャック間距離40mm、引張速度10mm/minの条件で、1試料当たり7回の試験を行い、最小値と最大値を除外し平均値を求めた。
実験例D1:未押出原料ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
実験例D2:圧力調整弁無しの樹脂溜り付き押出ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
実験例D3:圧力調整弁有りの樹脂溜り付き押出ペレットをプレス成形し引張特性を評価した。
結果を表8に示す。
Figure 2023079184000009
実験例D1~D3より次のことが明らかになった。PE系リサイクル樹脂の樹脂溜り付き押出を流路変更部無しで行ったところ、実験例D1に示すように、未押出品は、破断伸びに劣る。実験例D2に示すように、圧力調整弁無しの時は、樹脂圧力が低く、樹脂の破断伸びに劣る。実験例D3に示すように、圧力調整弁有りの時には、樹脂圧力が高く、樹脂の破断伸びに優れる。これらのように、圧力調整弁の導入によって樹脂圧力が上昇し、樹脂の破断伸びが向上する。
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の成形に利用することができ、産業上有用である。
1 供給口
10 成形機
2 溶融混練部
21 カップリング
22 スクリュ
3 吐出部
4 ペレタイザー
5 樹脂溜り部
51 静止混合部
52 接続部
6 コンテナ

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂組成物を溶融して成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機であって、
    前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口と、
    前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部と、
    前記溶融混練部で溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部と、
    前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出する吐出部とを有し、
    前記樹脂溜り部内の前記熱可塑性樹脂組成物の流れを変更する流路変更部を有する、成形機。
  2. 前記流路変更部が、押出方向に対して複数の異なる向きに変位させる部分を有するものである、請求項1に記載の成形機。
  3. 前記流路変更部が、押出方向に対して前記溶融混練部側と前記吐出部側とを変位させる孔が複数設けられた多孔部材を設けたものである、請求項1に記載の成形機。
  4. 前記流路変更部が、前記樹脂溜り部内の圧力を調整するギヤポンプを有するものである、請求項1に記載の成形機。
  5. 前記樹脂溜り部の前記吐出部側に、開口部を調整する調整弁による圧力調整部を有する、請求項1に記載の成形機。
  6. 前記樹脂溜り部が、前記溶融混練部の配管断面形状と同程度の大きさの断面形状の配管を有するものである、請求項1に記載の成形機。
  7. 前記吐出部から吐出された前記熱可塑性樹脂組成物を裁断してペレット化するペレタイザーを有する、請求項1に記載の成形機。
  8. 熱可塑性樹脂組成物を成形機の供給口に供給し、
    前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練部で溶融させながら押し出し、
    前記溶融混練部で溶融された前記熱可塑性樹脂組成物を樹脂溜り部で滞留させながら、前記樹脂溜り部内の流路変更部で前記熱可塑性樹脂組成物の流れを変更し、
    前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出部から吐出させる押出工程を有する熱可塑性樹脂組成物の成形品の製造方法。
  9. 前記吐出部から吐出された前記熱可塑性樹脂組成物を原料に用いて、成形品を製造する、請求項8に記載の製造方法。
  10. 熱可塑性樹脂組成物を溶融して成形する熱可塑性樹脂組成物の成形品の成形機であって、
    前記熱可塑性樹脂組成物を供給する供給口と、
    前記供給口から供給された前記熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する溶融混練部と、
    前記溶融混練部で溶融混練された前記熱可塑性樹脂組成物が滞留する樹脂溜り部と、
    前記樹脂溜り部で滞留した前記熱可塑性樹脂組成物を吐出する吐出部とを有し、
    前記樹脂溜り部の前記吐出部側に、開口部を調整する調整弁による圧力調整部を有する、成形機。
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