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JP2023076009A - タイヤ - Google Patents

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JP2023076009A
JP2023076009A JP2021189141A JP2021189141A JP2023076009A JP 2023076009 A JP2023076009 A JP 2023076009A JP 2021189141 A JP2021189141 A JP 2021189141A JP 2021189141 A JP2021189141 A JP 2021189141A JP 2023076009 A JP2023076009 A JP 2023076009A
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久貴 梶田
Hisataka Kajita
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Sumitomo Rubber Industries Ltd
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Sumitomo Rubber Industries Ltd
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Abstract

【課題】耐久性能が改善されたタイヤを提供すること。【解決手段】インナーライナーおよびベルト層を備えたタイヤであって、前記インナーライナーが、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量をS(質量%)、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離をD(mm)としたとき、Sが0.70質量%以上8.00質量%以下であり、SとDとの積(S×D)が2.0以上であるタイヤ。【選択図】なし

Description

本開示は、タイヤに関する。
タイヤの内腔面には、タイヤの空気圧を一定に保持するために空気透過抑制層としてインナーライナーが設けられている。インナーライナーは、さらに耐久性能を向上させることが求められている。特許文献1には、耐久性能を向上させることができるインナーライナー用ゴム組成物が記載されている。
特開2017-66324号公報
インナーライナー層は、タイヤの内圧を保持するだけでなく、タイヤ内腔部の酸素や水分等がタイヤ内部へと拡散することを防ぎ、タイヤの劣化を抑制していると考えられる。一方、タイヤのライフサイクルも近年伸びつつあることから、インナーライナー層の耐久性能を高め、タイヤの全体の耐久性能をさらに向上させることが望まれる。
本開示は、耐久性能が改善されたタイヤを提供することを目的とする。
鋭意検討した結果、インナーライナーを構成するゴム成分中の芳香族ビニル単位含量とタイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離を所定の関係とすることにより、前記課題を解決できることが見出された。
すなわち、本開示は、インナーライナーおよびベルト層を備えたタイヤであって、前記インナーライナーが、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量をS(質量%)、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離をD(mm)としたとき、Sが0.70質量%以上8.00質量%以下であり、SとDとの積(S×D)が2.0以上であるタイヤに関する。
本開示によれば、耐久性能が改善されたタイヤが提供される。
本開示の一実施形態に係るタイヤの一部が示された断面図である。
本開示の一実施形態であるタイヤは、インナーライナーおよびベルト層を備えたタイヤであって、前記インナーライナーが、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量をS(質量%)、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離をD(mm)としたとき、Sが0.70質量%以上8.00質量%以下であり、SとDとの積(S×D)が2.0以上であるタイヤである。
インナーライナーを構成するゴム成分中の芳香族ビニル単位含量と、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離とが上記の要件を満たすことで、得られたタイヤは、特に湿熱劣化後の耐久性能が顕著に改善される。その理由については、理論に拘束されることは意図しないが、以下のように考えられる。
インナーライナー層を通過した酸素および水蒸気は、ベルト層におけるコードとゴムの接着界面の劣化に影響を及ぼし、タイヤの耐久性能の低下を引き起こすと考えられる。本開示のタイヤは、インナーライナー層を構成するゴム成分中に嵩高い骨格である芳香族ビニルによるドメインを形成させることによりポリマー分子主鎖の運動性を低下させ、かつ嵩高い骨格により酸素や水分子がインナーライナー層を通過することを遮断することができる。また、芳香族ビニルは疎水性が高いため、水分を弾きやすくなると考えられる。
また、タイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離(タイヤ内腔面からベルト層までのゲージ)が薄くなるに伴い、タイヤとしての耐空気透過性は低下する傾向にある。そこで、該ゲージと芳香族ビニル単位含量との積を一定以上とし、該ゲージの減少に従いインナーライナーを構成するゴム成分中の芳香族ビニル単位含量を増加させることで、インナーライナー層が酸素や水分子の透過をより遮断させる状態となるため、ベルト層の接着界面の劣化が抑制されやすくなり、特に湿熱劣化後のタイヤの耐久性能が顕著に改善するという、特筆すべき効果が達成されると考えられる。
本開示のゴム成分は、耐空気透過性の観点から、ブチル系ゴムを75質量%以上含むことが好ましい。
本開示のゴム成分は、低温下でのクラック発生を抑制する観点から、ガラス転移温度(Tg)が-75℃以上-40℃以下のスチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。
本開示のゴム成分は、劣化によるクラック発生を抑制する観点から、水素添加されたスチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。
本開示のゴム組成物は、タイヤ内腔の酸素および水分がタイヤ内部へ拡散することを遮断する観点から、芳香族系石油樹脂を含有することが好ましい。
本開示のタイヤは、タイヤ赤道面上におけるインナーライナーの厚さをL(mm)としたとき、L/Dは0.10以上であることが好ましい。
L/Dを前記の範囲とすることで、タイヤ内腔からベルト層までの距離に対し、インナーライナー層の厚みが十分に確保されるため、酸素および水蒸気がベルト層へ拡散することを抑制しやすくすることができると考えられる。
本開示のゴム組成物は、湿熱劣化後の耐久性能の観点から、前記ゴム成分100質量部に対し、前記フィラーを10質量部以上50質量部以下含有することが好ましい。
<定義>
「芳香族ビニル単位」とは、共重合体における、芳香族ビニル化合物に由来する単位をいう。ここで、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指し、かつ、後記の共役ジエン化合物は含まないものをいう。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等が挙げられ、スチレンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
「ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量」とは、ゴム成分100質量%中に含まれるスチレン部等の芳香族ビニル単位の合計含有量(質量%)であって、各ゴム成分について、それぞれ、芳香族ビニル単位含量(質量%)にゴム成分中の質量分率を乗じて得られる値を算出し、それら値を総和した値である。具体的にはΣ(各芳香族ビニル単位含有ゴムの芳香族ビニル単位含量(質量%)×各芳香族ビニル単位含有ゴムのゴム成分中の含有量(質量%)/100)により算出される。なお、芳香族ビニル単位含有ゴムがスチレンブタジエンゴムである場合は「スチレン含量」である。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”である。
「タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離D」は、タイヤを、タイヤ回転軸を含む面で切断した断面において、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの直線距離を指す。
「タイヤ赤道面上におけるインナーライナーの厚さL」は、タイヤを、タイヤ回転軸を含む面で切断した断面において、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からカーカスのタイヤ半径方向最内部までの直線距離を指す。
「オイルの含有量」は、油展ゴムに含まれるオイル量も含む。
<測定方法>
「タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離D」および「タイヤ赤道面上におけるインナーライナーの厚さL」は、タイヤを、タイヤ回転軸を含む面で切断し、ビード部の幅を正規リムの幅に合わせた状態で測定される値である。
「芳香族ビニル単位含量」は、1H-NMR測定により算出される値であり、例えば、SBR、イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体、該共重合体のハロゲン化物等の芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を有するゴム成分(芳香族ビニル単位含有ゴム)に適用される。
SBRのガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、測定される。
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。
本開示の一実施形態であるタイヤの作製手順について、以下に詳細に説明する。但し、以下の記載は本開示を説明するための例示であり、本開示の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
[タイヤ]
図1は、本開示に係るタイヤのトレッドの一部が示された拡大断面図であるがこのような態様に限定されない。本開示のタイヤは、走行時に地面と接触するトレッド部1を有し、そのタイヤ半径方向内側にベルト層8を有している。ベルト層8の下部には、カーカス9およびインナーライナー7が積層されている。また、トレッド部1とベルト層8との間にバンドが存在してもよい。図1では、ベルト層8が2層に積層され、ベースゴム層4の内側にジョイントレス構造を有するバンド11が配置されている。
図1において、「インナーライナーの厚さL」は、タイヤ赤道面CLにおけるインナーライナー7のタイヤ半径方向最内部からカーカス9のタイヤ半径方向最内部までの直線距離を指す。
図1において、「タイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離D」は、タイヤ赤道面CLにおけるインナーライナー7のタイヤ半径方向最内部からベルト層8のタイヤ半径方向最内部までの直線距離を指し、具体的には、インナーライナー7およびカーカス9の厚さの合計である。
タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離D(mm)は、本開示の効果の観点から、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましく、2.5mm以上が特に好ましい。また、D(mm)は、本開示の効果の観点から、7.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がより好ましく、5.0mm以下がさらに好ましく、4.0mm以下が特に好ましい。
タイヤ赤道面上におけるインナーライナーの厚さL(mm)は、本開示の効果の観点から、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。また、L(mm)は、本開示の効果の観点から、1.0mm以下が好ましく、0.9mm以下がより好ましく、0.8mm以下がさらに好ましく、0.7mm以下が特に好ましい。
インナーライナーを構成するゴム成分中の芳香族ビニル単位含量Sは、本開示の効果の観点から、0.70質量%以上であり、0.85質量%以上が好ましく、1.00質量%以上がより好ましく、1.20質量%以上がさらに好ましい。また、ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量は、本開示の効果の観点から、8.00質量%以下であり、7.20質量%以下が好ましく、6.60質量%以下がより好ましく、6.00質量%以下がさらに好ましく、5.00質量%以下が特に好ましい。
インナーライナーを構成するゴム成分中の芳香族ビニル単位含量の値は、当該ゴム成分に含まれる各ゴム成分の芳香族ビニル単位含量の加重平均値に相当するため、例えば、芳香族ビニル単位含量の値の大きいゴム成分を多く用いることにより大きくすることができ、逆に、芳香族ビニル単位含量の値の小さいゴム成分を多く用いることにより小さくすることができる。
SとDとの積(S×D)は、2.0以上であり、2.4以上が好ましく、2.8以上がさらに好ましく、3.0以上がさらに好ましく、4.0以上が特に好ましい。SとDとの積(S×D)を前記の範囲とすることにより、インナーライナーの耐空気透過性を担保することができる。また、SとDとの積(S×D)は、本開示の効果の観点から、15.0以下が好ましく、13.0以下がより好ましく、11.0以下がさらに好ましく、10.0以下が特に好ましい。
タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離Dに対するタイヤ赤道面上におけるインナーライナーの厚さをLの比(L/D)は、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。L/Dを前記の範囲とすることで、タイヤ内腔からベルト層までの距離に対し、インナーライナー層の厚みが十分に確保されるため、酸素および水蒸気がベルト層へ拡散することを抑制しやすくすることができると考えられる。また、L/Dは、本開示の効果の観点から、0.90以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.50以下がさらに好ましく、0.40以下がさらに好ましく、0.30以下が特に好ましい。
[ゴム組成物]
本開示のタイヤは、前述したインナーライナーを構成するゴム成分中の芳香族ビニル単位含量とタイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部のまでの距離とが協働することにより、脆化性能および湿熱劣化後の耐久性能の総合性能をより効果的に改善することができる。
<ゴム成分>
本開示のインナーライナーを構成するゴム組成物(以下、特に断りのない限り、本開示のゴム組成物という)は、ゴム成分としてブチル系ゴムを含有することが好ましく、ブチル系ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを含有することがより好ましく、ブチル系ゴムおよびスチレンブタジエンゴムのみからなるゴム成分としてもよい。
ブチル系ゴムとしては、例えば、非ハロゲン化ブチルゴム(レギュラーブチルゴム、IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)や塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)等のハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)、イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体等が挙げられ、ハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)、およびイソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体がより好ましい。なお、これらのブチル系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体を構成するp-アルキルスチレンとしては、例えばp-メチルスチレン等が挙げられる。イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体は、ハロゲン化されていてもよい。ハロゲン化される部位は、イソブチレン単位でも、p-アルキルスチレン単位でもよいが、p-アルキルスチレン単位であることが好ましく、p-アルキルスチレン単位のアルキル基であることがより好ましい。
ゴム成分中のブチル系ゴムの含有量は、耐空気透過性および耐熱性の観点から、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%が特に好ましい。また、ゴム成分中のブチル系ゴムの含有量の上限値は、特に制限されないが、例えば、99質量%以下、97質量%以下、95質量%以下、93質量%以下、90質量%以下とすることができる。
イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体、および該共重合体のハロゲン化物の芳香族ビニル単位含量は、ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量が前述の範囲を満たすように適宜選択することができるが、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上がさらに好ましく、7.0質量%以上が特に好ましい。また、イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体、および該共重合体のハロゲン化物の芳香族ビニル単位含量は、20質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。なお、多元ポリマーの芳香族ビニル単位含量は、前記測定方法により測定される。
(SBR)
SBRとしては、特に限定されず、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等が挙げられ、これらSBRを変性剤によって変性されたもの(変性SBR)や、これらSBRの水素添加物(水素添加されたSBR)等も使用することができる。これらのSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリマーに含まれる比較的反応性の高い不飽和結合が、水素添加されていないSBRに比べて少なく、熱や経年による劣化程度がより小さいという理由から、水素添加されたSBRが好適に用いられる。
水素添加されたSBRの水素添加率は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上が特に好ましい。多元ポリマーの水素添加率の上限は特に限定されず、100モル%未満であればよい。水素添加率は、後述の製造例2に記載の如き水素添加反応において、水素ガス供給圧力、反応温度等の反応条件を調節することにより、調節することができる。なお、SBRの水素添加率とは、共役ジエン単位上の二重結合が水素添加された割合を指し、1H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
SBRとしては油展SBRを用いることもできるし、非油展SBRを用いることもできる。油展SBRを用いる場合、SBRの油展量、すなわち、SBRに含まれる油展オイルの含有量は、SBRのゴム固形分100質量部に対して、10~50質量部であることが好ましい。
SBRのガラス転移温度(Tg)は、-75℃以上が好ましく、-70℃以上がより好ましく、-65℃以上がさらに好ましい。また、該Tgは、-25℃以下が好ましく、-30℃以下がより好ましく、-35℃以下がさらに好ましく、-40℃以下がさらに好ましく、-45℃以下がさらに好ましく、-50℃以下が特に好ましい。SBRのTgを前記の範囲とすることで、ゴム組成物のTgも低下するため、低温での脆化性能が向上すると考えられる。
SBRのスチレン含量は、ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量が前述の範囲を満たすように適宜選択することができるが、40質量%以下が好ましく、36質量%以下がより好ましく、32質量%以下がさらに好ましく、28質量%以下が特に好ましい。また、SBRのスチレン含量は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。なお、SBRのスチレン含量は、前記の芳香族ビニル単位含量の測定方法により測定される。
ゴム成分中のSBRの含有量は、ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量が前述の範囲を満たすように適宜選択することができるが、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましい。一方、ゴム成分中のSBRの含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
(その他のゴム成分)
ゴム成分は、本開示の効果を損なわない範囲で、上記以外のゴム成分を含むこともでき、そのようなゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のSBR以外のジエン系ゴム;水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等の非ジエン系ゴムが挙げられる。また、上記のゴム成分の他に、公知の熱可塑性エラストマーを含有してもよく、含有しなくてもよい。
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
NRとしては、特に限定されず、タイヤ業界において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、本開示の効果の観点から、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。また、ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量の下限値は、特に制限されない。
<フィラー>
本開示に係るゴム組成物は、フィラーとしてカーボンブラックを含有し、カーボンブラック以外のフィラーを含有してもよい。また、フィラーは、カーボンブラックのみからなるフィラーとしてもよい。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、十分な補強効果が得られるという理由から、10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、耐空気透過性および耐久性能の観点から、80m2/g以下が好ましく、60m2/g以下がより好ましく、40m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、前記測定方法により測定される。
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、脆化性能および補強性の観点から、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、湿熱劣化後の耐久性能の観点から、70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、55質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下が特に好ましい。
(その他のフィラー)
カーボンブラック以外のフィラーとしては、シリカ水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルク等、従来からタイヤ工業において一般的に用いられているものを配合することができる。なかでも、炭酸カルシウム、クレー、およびタルクからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、炭酸カルシウムがより好ましい。
カーボンブラック以外のフィラーのゴム成分100質量部に対する含有量は、特に制限されないが、補強性の観点から、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、カーボンブラック以外のフィラーの含有量は、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
フィラーのゴム成分100質量部に対する合計含有量は、本開示の効果の観点から、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましい。また、フィラーのゴム成分100質量部に対する合計含有量は、本開示の効果の観点から、70質量部以下が好ましく、65質量部以下がより好ましく、60質量部以下がさらに好ましく、55質量部以下がさらに好ましく、50質量部以下が特に好ましい。
フィラー100質量%中のカーボンブラックの含有率は、本開示の効果の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。なお、フィラー100質量%中のカーボンブラックの含有率の上限値は特に制限されない。
<その他の配合剤>
本開示に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、軟化剤、ワックス、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
(軟化剤)
本開示に係るゴム組成物は、軟化剤を含有することが好ましい。軟化剤としては、例えば、樹脂成分、オイル、液状ゴム等が挙げられる。
樹脂成分としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等の炭化水素樹脂が挙げられ、芳香族系石油樹脂が好ましい。これらの樹脂成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書において「芳香族系石油樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
樹脂成分を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、樹脂成分の含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
液状ゴムは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。これらの液状ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
液状ゴムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、液状ゴムの含有量は、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
軟化剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(複数の軟化剤を併用する場合は全ての合計量)は、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、軟化剤の含有量は、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。加工助剤としては、例えば、Schill+Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
老化防止剤としては特に限定されず、ゴム分野で使用されているものが使用可能であり、例えば、キノリン系、キノン系、フェノール系、フェニレンジアミン系の各老化防止剤等が挙げられる。
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤の含有量は、充填剤等の分散性、破断時伸び、混練効率の観点から、2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.2質量部以下がさらに好ましい。
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫速度の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、加工性の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加硫速度の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。また、耐摩耗性の観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.5質量部以下が特に好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、所望の効果がより好適に得られる点から、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤が好ましく、チアゾール系加硫促進剤がより好ましい。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)およびN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8.0質量部以下が好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
<製造>
本開示に係るゴム組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
前記ゴム組成物から構成されるインナーライナーを備えた本開示のタイヤは、通常の方法により製造することができる。すなわち、ゴム成分に対して上記各成分を必要に応じて配合した未加硫のゴム組成物を、インナーライナーの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
<用途>
本開示のタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤに好適に用いることができ、中でも乗用車用タイヤに用いることが好ましい。なお、乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1000kg以下のものを指す。また、本開示のタイヤは、全シーズン用タイヤ、夏用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤに使用可能である。
以下、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示はこれら実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
SBR1:JSR(株)製のSL553(未変性SBR、スチレン含量:10質量%、Tg:-61℃、非油展)
SBR2:日本ゼオン(株)製のN9541(未変性SBR、スチレン含量:46質量%、Tg:-66℃、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR3:JSR(株)製のHPR355(変性S-SBR、スチレン含量:27質量%、Tg:-24℃、非油展)
SBR4:後述の製造例1で製造した水添SBR(水素添加率:60%、スチレン含量:30質量%、Tg:-31℃、ゴム固形分100質量部に対してオイル分25質量部含有)
ブチル系ゴム1:エクソンモービル社製のExxon2255(臭素化ブチルゴム)
ブチル系ゴム2:エクソンモービル社製のExxpro3563(イソブチレンとp-メチルスチレンとの共重合体のハロゲン化物、芳香族ビニル単位含量:9.0質量%)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシーストV(GPF、N660、N2SA:27m2/g)
炭酸カルシウム:(株)カルファイン製のFP-300
樹脂成分:クレイトン社製のSylvatraxx4401(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
硫黄:細井化学工業(株)製のHK-200-5(5質量%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)
製造例1:水添SBRの製造
充分に窒素置換した耐熱反応容器にn-ヘキサン2000mL、スチレン60g、ブタジエン140g、THF2.5g、n-ブチルリチウム0.45mmolを加えて、50℃で5時間撹拌し、重合反応を行った。次いで、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa-Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出した。この重合体溶液に、重合体100質量部に対し伸展油を25質量部加えて混合した後、溶媒を除去し、目的とする水添SBRを得た。
(実施例および比較例)
表1および表2に示す配合処方にしたがい、2.0Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150℃で4分間混練りし、混練物を得た。さらに、得られた混練物を前記バンバリーミキサーにより、排出温度130℃で3分間、再度混練りした(リミル)。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、3分間、95℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機でインナーライナーの形状に押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で12分間プレス加硫することにより、各試験用タイヤを製造した。
得られた試験用タイヤについて下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
<湿熱劣化後の耐久性能>
得られたタイヤをリム組みし、タイヤ内部に水400mLおよび250kPaの内圧を充填した状態で80℃のオーブンで1週間劣化させた。その後、正規荷重の80%の荷重を加えた状態でドラム上を時速80km/hで走行させ、損傷が見られるまでの走行距離を測定し、比較例2の値を100とした指数で表示した。指数の値が大きいほど、湿熱劣化後の耐久性能に優れることを示す。
Figure 2023076009000001
Figure 2023076009000002
表1および表2の結果より、インナーライナーを構成するゴム成分中の芳香族ビニル単位含量とタイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離を所定の関係とした本開示のタイヤは、湿熱劣化後の耐久性能が向上していることがわかる。
<実施形態>
本開示の実施形態の例を以下に示す。
〔1〕インナーライナーおよびベルト層を備えたタイヤであって、前記インナーライナーが、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、前記ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量をS(質量%)、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離をD(mm)としたとき、Sが0.70質量%以上8.00質量%以下であり、SとDとの積(S×D)が2.0以上であるタイヤ。
〔2〕前記ゴム成分がブチル系ゴムを75質量%以上含む、上記〔1〕記載のタイヤ。
〔3〕前記ゴム成分が、ガラス転移温度(Tg)が-75℃以上-40℃以下のスチレンブタジエンゴムを含む、上記〔1〕または〔2〕記載のタイヤ。
〔4〕前記ゴム成分が、水素添加されたスチレンブタジエンゴムを含む、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔5〕前記ゴム組成物が芳香族系石油樹脂を含有する、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔6〕タイヤ赤道面上におけるインナーライナーの厚さをL(mm)としたとき、L/Dが0.10以上である、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のタイヤ。
〔7〕前記ゴム成分100質量部に対し、フィラーを10質量部以上50質量部以下含有する、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のタイヤ。
1 トレッド部
2 キャップゴム層
4 ベースゴム層
7 インナーライナー
8 ベルト層
9 カーカス
11 バンド
CL タイヤ赤道面

Claims (7)

  1. インナーライナーおよびベルト層を備えたタイヤであって、
    前記インナーライナーが、ゴム成分を含有するゴム組成物により構成され、
    前記ゴム成分中の芳香族ビニル単位含量をS(質量%)、タイヤ赤道面上におけるタイヤ内腔面からベルト層のタイヤ半径方向最内部までの距離をD(mm)としたとき、Sが0.70質量%以上8.00質量%以下であり、SとDとの積(S×D)が2.0以上であるタイヤ。
  2. 前記ゴム成分がブチル系ゴムを75質量%以上含む、請求項1記載のタイヤ。
  3. 前記ゴム成分が、ガラス転移温度(Tg)が-75℃以上-40℃以下のスチレンブタジエンゴムを含む、請求項1または2記載のタイヤ。
  4. 前記ゴム成分が、水素添加されたスチレンブタジエンゴムを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
  5. 前記ゴム組成物が芳香族系石油樹脂を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
  6. タイヤ赤道面上におけるインナーライナーの厚さをL(mm)としたとき、L/Dが0.10以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
  7. 前記ゴム成分100質量部に対し、フィラーを10質量部以上50質量部以下含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイヤ。
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