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JP2023056155A - 不活化装置および不活化方法 - Google Patents

不活化装置および不活化方法 Download PDF

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JP2023056155A JP2021165313A JP2021165313A JP2023056155A JP 2023056155 A JP2023056155 A JP 2023056155A JP 2021165313 A JP2021165313 A JP 2021165313A JP 2021165313 A JP2021165313 A JP 2021165313A JP 2023056155 A JP2023056155 A JP 2023056155A
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Hiroyuki Ohashi
亮二 阿部
Ryoji Abe
樹志 大和田
Tatsushi Oowada
信二 鈴木
Shinji Suzuki
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Ushio Inc
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Ushio Denki KK
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Abstract

Figure 2023056155000001
【課題】魚介類に悪影響を与えることなく、当該魚介類が存在する環境に存在する有害な微生物やウイルスを簡便に不活化することができる不活化装置および不活化方法を提供する。
【解決手段】不活化装置は、紫外線を放射して微生物および/またはウイルスを不活化する。不活化装置は、波長200nm以上240nm以下の紫外線を放射する光源を有する光源部と、光源から放射される紫外線を、魚介類と水とを収容し、側面および底面を有する区画部の内面に向けて照射させるべく光源部を支持する支持体と、を備える。
【選択図】 図2

Description

本発明は、有害な微生物やウイルスを不活化する不活化装置および不活化方法に関する。
従来、魚介類は人工的に養殖されたり、飼育されたりしてきた。例えば、食用として消費される魚介類は、養殖場の水槽や網で包囲された海中の所定領域内にて人工的に繁殖され、市場に投入される。また、魚介類によっては、販売店、飲食店に供される際、一時的に生け簀内で飼育される。また、観賞魚等の魚介類は、家庭用水槽や水族館の水槽にて飼育される。
上記のような魚介類が人工的に養殖、飼育される環境内において病原菌(微生物やウイルス等)が発生すると、同一環境内に生息する多数の魚介類が当該病原菌に感染し、最悪の場合は全滅する。
また、魚介類を養殖する養殖網や魚介類を飼育する水槽の内面(側面、底面)には、藻類が付着しやすく、この藻類が病原菌の温床となり得る。そのため、病原菌の増殖を抑制するためには、病原菌の温床となり得る藻類を除去する必要がある。
例えば特許文献1には、藍藻類(アオコ)を含んだアオコ含有水に紫外線を照射することでアオコを除去する水質浄化装置が開示されている。この水質浄化装置は、ホースとポンプとでアオコ含有水を取水し、取水したアオコ含有水に凝集剤を混合してアオコを凝集して沈殿させ、波長200~280nmの紫外線を照射する構成を有する。この特許文献1には、アオコ含有水に照射する紫外線としては、特に藻類などの細胞のDNAの吸収波長と一致する270nm程度の波長の紫外線が好ましく、波長253.7nmの紫外線を放射するランプを用いる点が開示されている。
特開2020-99846号公報
魚介類が生息する環境(例えば水槽内)において、魚介類への病原菌の感染抑制を効果的に行うためには、魚介類が生息する水自体や、魚介類を生息する環境を形成する水槽等の内面といった環境全体に存在する病原菌の不活化と当該病原菌の温床となり得る藻類の殺藻とを行うことが好ましい。
上記特許文献1に記載されているように、強い殺菌作用があり、藻類などの細胞破壊を効果的にもたらす波長(例えば、波長253.7nm)の紫外線を上記環境全体に照射することで、上記環境に存在する病原菌を不活化したり、病原菌の温床となり得る藻類を殺藻したりすることが可能である。
しかしながら、上記のように魚介類が存在する環境全体に紫外線を照射する場合、当該環境に存在する魚介類に紫外線を照射することなく、水や水槽内面のみに対して紫外線照射を行うことはほぼ不可能である。上記紫外線が魚介類にも照射されると、魚介類の細胞にもダメージを与え、場合によっては魚介類が死滅してしまう。
上記環境から魚介類を退避させて別の領域に保管し、上記環境全体への紫外線照射を行えば、相応の効果は得られるものの、上記環境から魚介類を退避させるのは、大がかりな作業となるため実際的ではない。
そこで、本発明は、魚介類が存在する環境において、魚介類に悪影響を与えることなく、簡便に病原菌(微生物やウイルス等)を不活化することができる不活化装置および不活化方法を提供することを課題としている。
上記課題を解決するために、本発明に係る不活化装置の一態様は、紫外線を放射して微生物および/またはウイルスを不活化する不活化装置であって、波長200nm以上240nm以下の紫外線を放射する光源を有する光源部と、前記光源から放射される前記紫外線を、魚介類と水とを収容し、側面および底面を有する区画部の内面に照射させるべく前記光源部を支持する支持体と、を備える。
このように、波長200nm以上240nm以下の紫外線を魚介類と水とを収容する区画部の内面に照射することで、当該内面に付着した、病原菌(微生物やウイルス等)の温床となり得る藻類を殺藻することができる。また、このとき、区画部が収容する水の少なくとも一部に対しても紫外線を照射することができるので、当該水に存在する病原菌を不活化することもできる。
ここで、波長200nm以上240nm以下の紫外線は、オゾンを発生させず、かつ、魚介類の表面のたんぱく質成分に吸収され、魚介類内部には浸透しない紫外線である。そのため、魚介類にダメージを与えることなく、魚介類が存在する環境に存在する病原菌の不活化および当該病原菌の温床となり得る藻類の殺藻が可能である。
また、上記の不活化装置において、前記光源部は、前記区画部により区画された領域の水中に配置されていてもよい。
この場合、より効率的に所望の紫外線照射を実現することができる。例えば、区画部により区画された領域の上方から紫外線を照射した場合、紫外線の一部が水に吸収され、底面まで紫外線が到達しない場合がある。水中に光源部を配置することで、底面などに対しても確実に紫外線を照射することができる。また、区画部が紫外線を透過しない、もしくは、透過しにくい材料により構成されている場合にも、区画部の内部に適切に紫外線を照射することができる。
さらに、上記の不活化装置において、前記光源部は、前記光源を内部に収容し、前記紫外線を放射する光放射面を有する筐体を備え、前記筐体は、前記光源を収容する密閉空間を形成していてもよい。
この場合、光源を防水性の筐体内に収容することができるので、光源を水中に浸漬して水中で適切に紫外線を照射することができる。そのため、例えば外部に配置された光源から放射される紫外線を、導光部材等を用いて水中に導光するといった工夫が不要となる。
また、上記の不活化装置において、前記光源部は、前記筐体の内部における前記光源と前記光放射面との間に、波長200nm以上240nm以下の紫外線を透過し、波長240nmよりも長波長側のUV-C波の透過を阻止する光学フィルタを備えていてもよい。
この場合、魚介類や人体、動物への悪影響の少ない波長域の光のみを照射することができる。また、光学フィルタを密閉された筐体内に配置するので、光学フィルタが水と接触しないようにすることができる。
また、上記の不活化装置において、前記光源部は、前記区画部により区画された領域の上方に配置されており、水面に向けて前記紫外線を照射してもよい。
この場合、光源部に防水機構を設ける必要がなく、簡易な装置構成とすることができる。
また、上記の不活化装置において、前記光源部は、前記紫外線を透過する部材よりなる前記区画部により区画された領域の側方に配置されており、前記区画部の外側面に向けて前記紫外線を照射してもよい。
この場合、区画部の内側面に対して当該内側面の近傍から紫外線を照射することができる。また、区画部の外側面に向けて紫外線を照射した場合、紫外線の一部が外側面で乱反射して人に照射され得るが、波長200nm~240nmの紫外線は、人に対しても原理的には安全であるため問題はない。つまり、例えば水槽等の区画部の近傍に人が存在する環境においても、人に安全に、紫外線照射による病原菌の不活化および藻類の殺藻を行うことができる。
さらに、上記の不活化装置において、前記光源部は、前記区画部の側面の上下方向における全長に亘って前記紫外線を照射可能に配置されていてもよい。
この場合、区画部の側面に満遍なく紫外線を照射することができ、藻類の繁殖を効果的に抑制することができる。
また、上記の不活化装置は、前記紫外線が前記区画部の内面を走査するように前記光源部および前記区画部の少なくとも一方を移動させるスキャン機構を備えていてもよい。
この場合、少ない光源や小さい光源で、区画部の側面に万遍なく紫外線を照射することができ、藻類の繁殖を効果的に抑制することができる。
さらに、上記の不活化装置において、前記光源部は、前記区画部である水槽、生け簀、特定海域を包囲する網、および、人工池のいずれかの内面に前記紫外線を照射してもよい。
この場合、人工的に魚介類を飼育、繁殖したり観賞したりする環境において、魚介類が存在する環境全体から病原菌を不活化し、病原菌の温床となり得る藻類を殺藻することができる。
また、本発明に係る不活化方法の一態様は、光源から波長200nm以上240nm以下の紫外線を放射させるステップと、前記光源から放射された前記紫外線を魚介類と水とを収容し、側面および底面を有する区画部の内面に向けて照射し、前記水および前記内面の少なくとも一方に存在し得る微生物および/またはウイルスを不活化するステップと、を含む。
このように、波長200nm以上240nm以下の紫外線を魚介類と水とを収容する区画部の内面に照射することで、当該内面に付着した、病原菌(微生物やウイルス等)の温床となり得る藻類を殺藻することができる。また、このとき、区画部が収容する水の少なくとも一部に対しても紫外線を照射することができるので、当該水に存在する病原菌を不活化することもできる。
ここで、波長200nm以上240nm以下の紫外線は、オゾンを発生させず、かつ、魚介類の表面のたんぱく質成分に吸収され、魚介類内部には浸透しない紫外線である。そのため、魚介類にダメージを与えることなく、魚介類が存在する環境に存在する病原菌の不活化および当該病原菌の温床となり得る藻類の殺藻が可能である。
本発明では、魚介類が存在する環境において、魚介類に悪影響を与えることなく、簡便に病原菌(微生物やウイルス等)を不活化することができる。
たんぱく質の紫外線吸光スペクトルを示す図である。 本実施形態における不活化装置の適用場面の一例を示す図である。 本実施形態における不活化装置の適用場面の別の例を示す図である。 本実施形態における不活化装置の適用場面の別の例を示す図である。 本実施形態における不活化装置の適用場面の別の例を示す図である。 紫外線照射ユニットの構成例を示す模式図である。 紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。 紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。 紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。 紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。 紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。 紫外線照射ユニットの別の例を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態では、魚介類が存在する環境に対して紫外線照射を行い、当該環境に存在する病原菌(微生物やウイルス等)の不活化や、当該環境に存在する藻類(苔などの微細藻類)の殺藻を行う不活化装置について説明する。
なお、本実施形態における「不活化」とは、微生物やウイルスを死滅させる(又は感染力や毒性を失わせる)ことを指すものである。
ここで、上記の魚介類が存在する環境は、側面および底面を有する区画部により区画され、水が収容された環境である。上記区画部は、水槽、生け簀、特定海域を包囲する網、人工池などであってよい。上記水槽は、例えば、魚介類の養殖現場や流通車内、水族館、家庭鑑賞用において使用される水槽などとすることができる。また、生け簀は、例えば販売店、飲食店、食品加工場、市場などにおいて使用される生け簀とすることができる。
また、本実施形態において、紫外線が照射され得る対象の魚介類は、表面に鱗や一般に「ぬめり」と呼称される体表面粘質物を有する魚介類であり、かつ、水中で生息可能な魚介類とする。
本実施形態における不活化装置は、魚介類への悪影響が少ない波長200nm~240nmの紫外線を、魚介類が存在する環境に対して照射して、当該環境や魚介類の表面等に存在する有害な微生物やウイルスを不活化する。
実用上、除染(殺菌)用途に使用される紫外線の波長域は、200nm~320nmとされており、特に、病原菌(微生物やウイルス等)が保有する核酸(DNA、RNA)の吸収が大きい260nm付近の紫外線を用いることが一般的となっている。しかしながら、このような260nm付近の波長域の紫外線は、人や動物や魚介類における核酸での吸収が大きく、人や動物や魚介類に悪影響を及ぼし得る。
図1は、たんぱく質の紫外線吸光スペクトルを示す図である。
この図1に示すように、たんぱく質は、波長200nmに吸光ピークを有し、波長240nm以上では紫外線が吸収されにくいことがわかる。
魚介類(特に魚類)の表面は、ケラチンやコラーゲン、リン酸カルシウム等からなる鱗や、一般的にムチンと総称される糖たんぱく質を多く含む体表面粘質物(ぬめり)で覆われている。
つまり、波長240nm以上の紫外線は、魚介類表面のたんぱく質成分である体表面粘質物や鱗を透過しやすく、魚介類の体表面内部まで浸透する。そのため、魚介類の体表面内部の細胞がダメージを受けやすい。これに対して、波長200nm付近の紫外線は、魚介類表面の体表面粘質物の主成分である糖たんぱく質や鱗の一部を構成するたんぱく質により吸収され、魚介類の体表面内部まで浸透しない。そのため、魚介類の体表面に対して安全である。
また、波長240nm以上の紫外線は、人間や動物の皮膚を透過しやすく、皮膚内部まで浸透する。そのため、人の皮膚内部の細胞がダメージを受けやすい。これに対して、波長200nm付近の紫外線は、人の皮膚表面(例えば角質層)で吸収され、皮膚内部まで浸透しない。そのため、人間や動物の皮膚に対して安全である。
一方で、波長200nm未満の紫外線は、オゾン(O)を発生し得る。これは、波長200nm未満の紫外線が酸素を含む雰囲気中に照射されると、酸素分子が光分解されて酸素原子を生成し、酸素分子と酸素原子との結合反応によってオゾンが生成されるためである。
したがって、波長200nm~240nmの波長範囲は、魚介類や人、動物に安全な波長範囲であるといえる。なお、魚介類や人、動物に安全な波長範囲は、好ましくは波長200nm~237nm、より好ましくは波長200nm~235nm、さらに好ましくは200nm~230nmである。
例えば、KrClエキシマランプから放出される波長222nmの紫外線や、KrBrエキシマランプから放出される波長207nmの紫外線は、いずれも魚介類や人、動物に安全であって、病原菌(微生物やウイルス等)の不活化を行うことができる光である。
以下、本実施形態における不活化装置の適用場面について説明する。
〔実施例1〕
図2は、魚介類200が存在する環境が水槽311であって、水槽311中の水312や水槽311の内面に紫外線を照射して、水槽311中の水312や水槽311の内面に含まれる病原菌を不活化する不活化装置100Aの構成例を示す図である。
ここで、水槽311は、例えば、魚介類を流通する搬送車両内に備え付けられた水槽、輸送先の生け簀、養殖現場における水槽、鑑賞用の魚介類が飼育される水槽等とすることができる。
なお、図2では、不活化装置100Aについて、当該不活化装置100Aを構成する光源部が備える紫外線光源110と波長選択フィルタ(光学フィルタ)111のみを示し、その他の構成は図示を省略している。
不活化装置100Aの光源部は、紫外線光源110から放射される紫外線を、水槽311の内面に照射させるべく、不図示の支持体により支持されている。支持体は、例えば天井、壁、水槽、その他の構造物などに取り付けられて光源部を支持する。
紫外線光源110は、水槽311の上方に配置され、水槽311に収容されている水312の水面に向けて紫外線(UV)を照射する。この紫外線は、水槽311の内面(側面、底面)や水槽311中の水312、水槽311中の魚介類200に照射される。
紫外線光源110は、上記紫外線として、微生物および/またはウイルスを不活化する波長範囲の紫外線であって、魚介類に対して悪影響の少ない上記した波長200nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する。紫外線光源110は、例えば中心波長222nmの紫外線を放射するKrClエキシマランプや、中心波長207nmの紫外線を放射するKrBrエキシマランプとすることができる。
なお、紫外線光源110は、上記のエキシマランプに限定されるものではなく、LED光源やLD光源、レーザ光から放出されるレーザ光を波長変換して上記波長域の紫外線が放射されるコヒーレント光源であってもよい。
ただし、紫外線光源によっては、上記した波長200nm~240nmの紫外線に加えて、魚や人、動物にとって安全とは言えない波長を含む光も放出する。そこで、このような波長の光をカットするために、例えば図2に示すように、紫外線光源110と水槽311の水312との間に、波長域200nm~240nmの光を透過し、それ以外のUV-C領域(200nm~280nm)の光をカットする波長選択フィルタ111を設けてもよい。
これにより、紫外線光源110から放射される紫外線を含む光から、波長選択フィルタ111によって波長200nm~240nmの紫外線を選択し、選択した紫外線を生きている魚200の表面に照射することができる。
なお、本実施形態では、不活化装置100Aが波長選択フィルタ111を備える場合について説明するが、波長選択フィルタ111は、不活化装置100Aと別体であってもよい。
光源部から放射される波長200nm~240nmの紫外線は、水槽311の内面(側面、底面)に照射され、当該内面に付着した藻類(苔など)を殺藻することができる。
また、上記紫外線は、水槽311中の水312に照射され、水312に存在する病原菌を不活化することができる。
なお、上記紫外線は、水槽311中の魚介類200にも照射され得るが、魚介類200にはダメージを与えない。ここでいうダメージとは、魚介類の生存を脅かす、魚介類の風味を損なわせる、等を含む。
水中で生育されている魚介類200の表面は、鱗や、糖たんぱく質を多く含む体表面粘質物(ぬめり)で覆われているので、紫外線の波長を200nm~240nmに設定することにより、魚介類200に照射された紫外線が、魚介類表面の体表面粘質物の主成分である糖たんぱく質や鱗の一部を構成するたんぱく質により吸収され、魚介類内部にまで浸透しないようにすることができる。
そのため、魚介類200が存在する環境全体(水槽311全体)に紫外線を照射して、当該環境に存在する魚介類200に紫外線が照射されたとしても、魚介類内部にダメージを与えることなく、水312に含まれる病原菌を不活化したり、水槽311の内面に付着した藻類を殺藻したりすることができる。
〔変形例1〕
図2に示す実施例1においては、水槽311の上方に不活化装置100Aを配置し、水槽311の上方に配置された紫外線光源110から水槽311に貯留されている水312や水槽311の内面(ならびに水中の魚介類)に紫外線を照射する例を示したが、不活化装置100Aの配置はこれに限るものではない。
例えば、水槽311が石英ガラス等の紫外線透過性を有する材料から構成される場合、図3に示すように、水槽311の側方に不活化装置100Bを配置してもよい。この場合、不活化装置100Bは、不活化装置100Aと同一構成であってよい。
水槽311を構成する側壁の内側(水312と接する側)に藻類(苔状の藻類)313が付着し増殖すると、水槽311内において飼育される観賞魚等の視認性が劣化する。また、藻類313自体が上記した病原菌の温床ともなり得る。
図3に示すように、不活化装置100Bを水槽311の外側面に対向させて配置し、紫外線光源110から水槽311の外側面に向けて紫外線を照射することにより、水槽311が紫外線透過性を有する材料から構成されている場合には、当該紫外線は水槽311の側壁を透過し、水槽311の内面(内側面)に付着した藻類313に照射される。この場合、藻類313の近傍から紫外線を照射することができるため、効率良く藻類313を殺藻したり、藻類313近傍の病原菌を不活化したりすることが可能となる。
なお、水槽311の側方から水槽311の外側面に向けて紫外線を照射すると、水槽311表面により紫外線の一部が乱反射し得る。例えば水槽311が観賞用の水槽や水族館の水槽である場合、水槽311の近傍には人が存在する機会が多く、乱反射した紫外線が人に照射され得る。また、水槽311が養殖用の水槽や生け簀等である場合においても、その近傍の作業者に乱反射した紫外線が照射され得る。
しかしながら、上記したように、波長200nm~240nmの紫外線は、人に対しても原理的には安全であり、許容照射量を越えなければ、水槽の魚介類を観賞する人や作業者の皮膚や目に照射されても問題はない。
また、上記のように乱反射して人に照射される紫外線の照度は比較的小さく、さらに、鑑賞中または作業中の人への紫外線照射時間もあまり長くはない。そのため、通常の観賞や作業中において、人に対する紫外線の照射量は許容照射量に到達することは殆どない。したがって、人が存在する空間においても、人に安全に、紫外線照射による不活化、殺藻処理を行うことができる。
また、図3に示すように、水槽311が収容する水312の中に、不活化装置100Cを配置してもよい。なお、図3では、不活化装置100Cについて、紫外線光源110のみを示し、その他の構成は図示を省略している。この不活化装置100Cは、水中に浸漬可能な防水機構を備える。当該機構については後述する。なお、不活化装置100A~Cは同一構成であってもよい。
このように、水中に不活化装置100Cを配置し、水中の紫外線光源110から水槽311の内部(例えば中心部)に向けて紫外線を照射した場合にも、水槽311の内面や水槽311中の水312、水槽311中の魚介類200に当該紫外線が照射される。
例えば魚介類の養殖等に使用される水槽においては、水槽内に貯留される水として海水が用いられることも多い。水槽内の水が海水である場合、波長220nm近傍の紫外線の一部は、海水により吸収されてしまう。
水中に紫外線光源を配置し、水中から紫外線照射を行うことで、不活化装置100A、100Bのように水槽311の外部(水槽311の上方や側方)に配置された紫外線光源110から紫外線を照射する場合と比較して、より効率的に水312に含まれる病原菌(微生物やウイルス等)を不活化することができる。
なお、不活化装置100A、100B、100Cの数や位置は図3に示す数や位置に限定されるものではない。
例えば、不活化装置100Cの配置位置は、図3に示すような水槽311の側壁の近傍に限定されない。水槽311の大きさや用途(観賞用か養殖用か等)にもよるが、例えば水槽311の中心部に不活化装置100Cを配置してもよい。
〔変形例2〕
図3に示す変形例1においては、不活化装置100Bが、水槽311の外部から水槽311の内側面に付着する藻類313に対して、紫外線を照射する例を示したが、水槽311の内側面に付着する藻類313に対する紫外線照射はこれに限るものではない。
例えば図4に示すように、水中に不活化装置100Dを配置し、水中の紫外線光源110から水槽311の内側面に付着する藻類313に対して紫外線を照射してもよい。この場合、例えば水槽311がアクリル等の紫外線を透過しない材料から構成されている場合であっても、水槽311の内面に適切に紫外線を照射することができる。また、このとき、不活化装置100Dを水中における水槽311の内面近傍に配置することで、水槽311の内面の近傍から当該内面に付着する藻類313に対して紫外線を照射することができる。
また、不活化装置100Dは、図4に示すように、複数方向に向けて紫外線を照射可能な構成であってもよい。これにより、水槽311中の水312に対しても十分に紫外線を照射することができる。
ここで、不活化装置100Dは、不活化装置100Cと同様に、水中に浸漬可能な防水機構を備える。なお、図4では、不活化装置100Dについて、紫外線光源110のみを示し、その他の構成は図示を省略している。
さらに、図4に示すように、水中に複数の不活化装置100Cを配置してもよい。このとき、複数の不活化装置100Cの紫外線の照射方向は、それぞれ異なっていてもよい。
例えば、水中に配置した不活化装置100Cから水槽311の底面に向けて紫外線を照射してもよい。これにより、水槽311の底面に存在する藻類314に対して適切に紫外線を照射することができる。
藻類の生態は様々であり、水槽311の内面に付着する苔状の藻類313の他にも、水槽311の底面に糸状に成長する藻類314や、水中に浮遊する藻類(不図示)がある。魚介類が生息する環境で、このような藻類が発生すると、当該環境の水中の酸素が欠乏したり、藻類の腐敗により悪臭が発生したりしてしまう。
また、魚介類鑑賞用の家庭用水槽や水族館の水槽等においては、このような藻類の発生により、水中の魚介類の視認性が低下するといった不具合も発生し得る。さらに、このような藻類においても、上記したように、水中に存在する病原菌の温床となり得る。
図4に示すように、水槽311の上方から水槽311の水面に向けて紫外線を照射する構成に加えて、水槽311の水中から水槽311の内部や水槽311の内面(内側面および底面)に向けて紫外線を照射することで、魚200が存在する環境全体(水槽311中の水312および水槽311の内面(内側面および底面))に対して紫外線を照射することができる。これにより、当該環境全体に含まれる病原菌の不活化が可能であると共に、環境全体に含まれる藻類(苔状の藻類313や糸状の藻類314を含む)の殺藻が可能である。
なお、不活化装置100A、100C、100Dの数や位置は図4に示す数や位置に限定されるものではない。
また、図4に示す例では、水中に2種類の不活化装置100C、100Dを配置しているが、いずれか一方のみを水中に配置してもよい。
〔実施例2〕
図5は、魚介類200が存在する環境が、網321で区画された海中の特定領域(特定海域)であって、特定海域中の海水322や当該特定海域を規定する網321の内面に紫外線を照射して、海水322や網321に含まれる病原菌を不活化する不活化装置の構成例を示す図である。
具体的には、特定海域の上方に配置され、海面323に向けて紫外線を照射する不活化装置100Aと、海中に配置されて水中から紫外線を照射する複数の不活化装置100Dとを備える。ここで、不活化装置100A、100Dは、それぞれ上述した不活化装置100A、Dと同一構成であってよい。
不活化装置100Aから放射される紫外線(UV)は、網321の内面(側面)や網321で区画された特定海域の海水322、特定海域中の魚介類200に照射される。
ここで、網321の上下方向の長さは、例えば上記実施例1のような水槽311の高さよりも長い。よって、網321の下端付近については、海面323からの距離が長く、不活化装置100Aの紫外線光源110から海中に向かって紫外線を照射しても、紫外線が到達しない可能性がある。
また、網321により区画された特定海域中で養殖等される魚介類の密度は一般に高い。そのため、海面323の上方から紫外線を照射した場合、特定海域の上側に位置する魚200により当該紫外線が遮光され、特定海域の下側に位置する海水322には紫外線が到達しないことが頻繁に起こりうる。その場合、特定海域の下側の海水322に含まれる病原菌の不活化が不十分になる可能性が高い。
さらに、海面323の上方からの紫外線照射では、網321全体に対して紫外線を照射することは難しい。そのため、網321に付着している病原菌の不活化や、網321に付着している藻類の殺藻が不十分になる可能性が高い。
そこで、図5に示すように、複数の不活化装置100Dを水中において上下方向に並べて配置する。これにより、網321により区画された特定領域の上下方向における全長に亘って紫外線を照射することができる。つまり、網321で区画された特定領域の下側の海水322や、網321の全体に対しても紫外線を照射することができる。
その結果、上記したような特定海域の上側に位置する魚200による紫外線の遮光や、海面323の上方に設置した紫外線光源110から照射される紫外線が特定海域の下側の海水322に到達しないといった問題が回避され、特定海域の下側に位置する海水322に含まれる病原菌を適切に不活化することが可能となる。
また、病原菌の温床となり得る網321全体に紫外線を照射することができるため、網321に付着している、または、網321近傍に存在する病原菌の不活化を十分に行うことが可能となる。
なお、不活化装置100Dの数や位置は図4に示す数や位置に限定されるものではない。不活化装置100Dの数や位置は、網321により区画された特定海域の大きさ(深さ等)に応じて適宜設定することができる。
また、複数方向に紫外線を照射可能な不活化装置100Dに替えて、図3、図4に示すようない所定方向に向けて紫外線を照射可能な不活化装置100Cを用いてもよい。
以下、防水機構を有する不活化装置100C、100Dの構成について具体的に説明する。
図6は、不活化装置100Cの構成例を示す模式図である。
この図6では、光源部の紫外線照射に関する部分である紫外線照射ユニット10Aについて示している。
紫外線照射ユニット10Aは、例えば導電性の金属からなる筐体11と、筐体11内部に収容された紫外線光源12と、を備える。
紫外線光源12は、上述した紫外線光源110に対応しており、例えば、中心波長222nmの紫外線を放出するKrClエキシマランプとすることができる。なお、紫外線光源12は、KrClエキシマランプに限定されるものではなく、200nm~240nmの波長範囲にある紫外線を放射する光源であればよい。
光源部である紫外線照射ユニット10Aは、紫外線光源(エキシマランプ)12から放射される紫外線を、魚介類と水とを収容する区画部(水槽311や網321など)の内面に向けて照射させるべく支持体(不図示)により支持される。例えば支持体は、水槽311や網321、その他の構造物などに取り付けられて光源部を支持する。
また、紫外線照射ユニット10Aは、エキシマランプ12に給電するバッテリ等の給電部16と、エキシマランプ12の照射および非照射や、エキシマランプ12から放出される紫外線の光量等を制御する制御部17と、を備える。エキシマランプ12は、筐体11内において、ランプ固定部材18によって固定されている。
筐体11には、光出射窓となる開口部11aが形成されている。筐体11は、開口部11aが設けられている部分以外は、内部を密閉するように構成されている。
開口部11aには、上述した光放射面に対応する透過窓部11bが設けられ、図示を省略したシール部材により封止されている。ここで、透過窓部11bは、例えば石英ガラスなどの紫外線透過部材よりなる。
このように、筐体11はエキシマランプ12を収容した密閉空間を形成するため、紫外線照射ユニット10Aを水中に浸漬しても、その内部には水(海水など)は進入しない。
筐体11内部におけるエキシマランプ12と透過窓部11bとの間には、光学フィルタ13が配置される。この光学フィルタ13は、フィルタ保持部材14によって保持されている。光学フィルタ13は、上述した波長選択フィルタ111に対応しており、エキシマランプ12から放射される光のうち、不要な光を遮断する。
光学フィルタ13としては、例えば、波長域200nm~240nmの光を透過し、それ以外のUV-C波長域の光(241nm~280nmの光)をカットする波長選択フィルタを用いることができる。
ここで、波長選択フィルタとしては、例えば、HfO層およびSiO層による誘電体多層膜フィルタを用いることができる。
なお、波長選択フィルタとしては、SiO層およびAl層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることもできる。
このように、光学フィルタ13を設けることで、透過窓部11bを透過して筐体11外部に放出される光には、人や魚介類にダメージを与える波長241nm以上のUV-C波長域の光は含まれない。
この光学フィルタ13は、密閉された筐体11内に配置される。そのため、不活化装置100Cを水中に浸漬させた場合にも、光学フィルタ13が水と接触しないようにすることができ、フィルタ特性を適切に維持することができる。
なお、光学フィルタ13が誘電体多層膜フィルタの場合、光の入射角が0度よりも大きくなると、透過波長域が短波長側にシフトするので、光学フィルタ13とエキシマランプ12との距離は、なるべく近い方が好ましい。
図7は、不活化装置100Dの構成例を示す模式図である。
この図7では、光源部の紫外線照射に関する部分である紫外線照射ユニット10Bについて示している。
この紫外線照射ユニット10Bは、筐体11に設ける開口部11a、透過窓部11bおよび光学フィルタ13を2つ設けたことを除いては、図6に示す紫外線照射ユニット10Aと同様の構成を有する。
このように構成することにより、複数方向(図7では左右方向)に、夫々、紫外線を照射することが可能となる。
なお、図6および図7では、給電部16および制御部17を筐体11内部に設ける例を示したが、図8および図9に示すように、給電部16および制御部17は筐体11から分離させてもよい。このように構成することにより、1つの給電部16から複数の紫外線光源(エキシマランプ等)12に給電し、これらの複数の紫外線光源12を1つの制御部17により制御することが可能となる。
ここで、図8は、筐体11の透過窓部11bが1つである紫外線照射ユニット10Cの模式図、図9は、筐体11の透過窓部11bが2つである紫外線照射ユニット10Dの模式図である。
この図8、図9に示すように、給電部16と制御部17とは、給電・制御部用筐体21内に配置される。エキシマランプ12と給電部16とを接続する給電線は、防水性のチューブ22の内部に収容される。防水性のチューブ22の両端部にはコネクタ部が設けられ、一端は筐体11に設けられたレセプタクル部11cと接続され、他端は給電・制御部用筐体21に設けられたレセプタクル部21aと接続される。
ここで、チューブ22のコネクタ部とレセプタクル部11c、21aとの連結部分は、それぞれ外部から水(海水など)が進入しないように構成されている。
また、各給電線は、図示を省略した絶縁部材により包囲されている。そのため、各給電線同士がチューブ内等で接触しても電気的な短絡は生じない。
なお、図6~図9に示す紫外線照射ユニット10A~10Dは、筐体11の開口部11aに板状の石英ガラスからなる透過窓部11bを設け、筐体11内に紫外線光源(エキシマランプ)12を配置した構成であるが、紫外線照射ユニットの構成は上記に限るものではない。
例えば図10に示すように、透過窓部として、紫外線光源12を取り囲むように配置された紫外線透過性の石英ガラス管(円筒管や角型管)11b’を用いてもよい。この場合、光学フィルタ13も、紫外線光源12を取り囲むように複数枚を並べて配置する。
図10に示す紫外線照射ユニット10Eは、一端が閉塞された石英ガラス管11b’と、この石英ガラス管11b’を支持する支持筐体11’と、を備える。
石英ガラス管11b’の内部には、同軸状に配置されたエキシマランプ12と、それを包囲するように配置された複数枚(ここでは4枚)の光学フィルタ13とが配置される。
エキシマランプ12は、石英ガラス管11b’内部において、ランプ固定部材18によって固定されている。また、光学フィルタ13の石英ガラス管11b’への固定は、例えば、光学フィルタ13の端部を石英ガラス管11b’の内部に溶着することにより行われる。つまり、光学フィルタ13は、石英ガラス管11b’内部において、溶着部14aによって固定されている。
エキシマランプ12、光学フィルタ13を内部に固定した石英ガラス管11b’の開口部は、支持筐体11’と接続され、接続部は図示を省略したシール部材により封止される。
これにより、支持筐体11’と石英ガラス管11b’とからなる紫外線照射ユニット10Eの筐体は、内部を密閉した構成となるため、紫外線照射ユニット10Eを水中に浸漬しても、その内部には水(海水など)は進入しない。
また、支持筐体11’には、図8、図9に示す筐体11と同様に、レセプタクル部11cが設けられる。エキシマランプ12と給電部16とを接続する給電線等の構造は、図8、図9と同様であるため、ここでは説明を省略する。
なお、図10に示す紫外線照射ユニット10Eにおいて、石英ガラス管11b’は円筒管であるが、石英ガラス管11b’は円筒管に限るものではない。例えば図11に示す紫外線照射ユニット10Fのように、角型管の石英ガラス管11b’’を用いてもよい。
さらに、図10に示す紫外線照射ユニット10Eにおいて、石英ガラス管11b’の内部に平板状の光学フィルタ13を複数枚配置しているが、光学フィルタ13の形状は平板状に限るものではない。例えば図12に示す紫外線照射ユニット10Gのように、円筒形状の光学フィルタ13aを用いてもよい。
なお、光学フィルタが誘電体多層膜フィルタの場合、一般に誘電体多層膜は基板の光入射側に設けられる。よって、基板を円筒形状とした場合、円筒の内側に誘電体多層膜が施されることになる。しかしながら、円筒形状の基板の内側に誘電体多層膜を蒸着等で形成することは困難である。
そこで、例えば、円筒形状の基板を複数部材に分割して複数の樋状の基板とし、各樋状の基板の凹面側に誘電体多層膜を形成して、その後これらを組み合わせて円筒状の光学フィルタとしてもよい。図12は、円筒状の基板を4分割して形成された4枚の誘電体多層膜フィルタ(光学フィルタ)13aを組み合わせた例である。
以上説明したように、本実施形態における不活化装置は、波長200nm以上240nm以下の紫外線を放射する紫外線光源110を有する光源部と、紫外線光源110から放射される紫外線を、魚介類と水とを収容し、側面および底面を有する区画部の内面に照射させるべく光源部を支持する支持体と、を備える。ここで、魚介類と水とを収容する区画部は、水槽や生け簀、特定海域を包囲して区画する網、人工池などとすることができる。
このように、魚介類が人工的に養殖、飼育される環境において、魚介類と水とを収容する区画部の内面に紫外線を照射するので、当該内面に付着した、病原菌(微生物やウイルス等)の温床となり得る藻類を殺藻することができる。また、このとき、区画部が収容する水の少なくとも一部に対しても紫外線を照射することができるので、当該水に存在する病原菌を不活化することもできる。したがって、魚介類が病原菌に感染するリスクを低減することができる。
魚介類が人工的に養殖、飼育される環境が占める領域は、魚介類が育まれる自然環境(河川、海など)と比較すると、一般的に狭い。そのため、上記のような人工的な魚介類の居住環境においては、魚介類の密度が高く、魚介類同士が接する機会も多い。したがって、このような人工的環境において病原菌が発生し、当該病原菌に魚介類の1匹でも感染すると、たちまち多数の魚介類が上記病原菌に感染し、最悪の場合は全滅してしまう。
また、海中の特定領域を区画する網や、観賞魚等が飼育される水槽の内壁(水と接する壁面)には藻類が付着しやすく、この藻類が病原菌の温床となり得る。
本実施形態では、上記のような人工的環境において紫外線照射を行うことで、当該環境に存在する病原菌を不活化したり、病原菌の温床となり得る藻類を殺藻したりすることができる。このように、魚介類と魚介類との間の水中に浮遊する病原菌を不活化することができる。また、魚介類近傍の水を含む環境(水槽の内面側の壁、水槽の底面、網表面等)を温床とする病原菌の増殖を抑制することができる。したがって、高密度に魚介類が存在する環境において、効率良く魚介類の病原体への感染を抑制することが可能となる。
さらに、例えば鑑賞魚等が飼育される水槽の場合、当該水槽の壁に付着した藻類を殺藻することで、水槽内に飼育される観賞魚等の視認性を良好に維持することができる。
ところで、定期的に、水槽等の水と、病原菌を含まない、もしくは病原菌が不活化されている水とを交換したり、水槽の壁に付着している藻類(苔など)を除去する作業を行ったりすることで、魚介類の生息する環境における病原菌の感染リスクを低減することができると考えられる。
しかしながら、水交換等の作業により一時的に病原菌の量が激減したとしても、水槽内に残留する病原菌を完全に除去することは難しい。よって、魚介類の水を介した病原菌への感染は完全に抑制することは困難である。
また、水槽の壁や、海中養殖場の網等に付着する藻類の除去作業は、手間がかかり、徹底的な除去も難しい。特に水槽等においては、空気中の藻類の胞子が混入しやすく、また、交換用の水自体にも胞子が混入している場合がある。よって、比較的短期間で水槽内に藻類が発生し、頻繁に藻類の除去作業を行う必要がある。
本実施形態では、波長200nm以上240nm以下の紫外線を、魚介類と水とを収容する区画部の内面に照射するので、魚介類が存在する環境に存在する病原菌(微生物やウイルス等)を簡便に不活化することができることができるとともに、当該病原菌の温床となり得る藻類を適切に除去することができる。
ここで、波長200nm以上240nm以下の紫外線は、オゾンを発生させず、かつ、魚介類の表面のたんぱく質成分に吸収され、魚介類内部には浸透しない紫外線である。そのため、上記環境に紫外線を照射した結果、当該環境に存在する少なくとも一部の魚介類に紫外線が照射されたとしも、魚介類にはダメージを与えない。
したがって、上記環境から魚介類を退避させて別の領域に保管し、上記環境全体への紫外線照射を行うといった大がかりな作業を必要とすることなく、魚介類が存在する環境において、魚介類を含む領域に紫外線を照射することができる。またこのとき、魚介類の表面に存在する微生物やウイルスを不活化することができるという付随的な効果も得られる。
また、波長200nm以上240nm以下の紫外線は、人や動物に対しても影響の少ない光である。そのため、例えば水槽等の近傍にいる人に、水槽等により乱反射した紫外線が照射されても問題はない。
このように、本実施形態における不活化装置は、魚介類が存在する環境において、魚介類に悪影響を与えることなく、簡便に病原菌(微生物やウイルス等)を不活化することができる。
なお、上記実施形態においては、水中から紫外線を照射する場合、紫外線光源110を水中に配置する場合について説明したが、紫外線光源110を外部に配置し、紫外線光源110から放射される紫外線を、光ファイバ等の導光部材を用いて水中に導光するようにしてもよい。この場合、図6~図12に示すような防水機構は不要となり、簡易な装置構成とすることができる。
また、上記実施形態においては、紫外線光源110を所定位置に固定する場合について説明したが、例えば不活化装置は、紫外線が水槽311や網321の内面を走査するように、紫外線光源110を移動させるスキャン機構を備えていてもよい。この場合、少ない光源や小さい光源で、水槽311や網321の内面に万遍なく紫外線を照射することができ、藻類の繁殖を効果的に抑制することができる。
なお、魚介類と水とを収容する区画部が水槽311等の移動可能な収容容器である場合には、紫外線が水槽311等の区画部の内面を走査するように当該区画部を移動させることで、上記スキャン機構を実現してもよい。
また、上記実施形態においては、紫外線光源としてエキシマランプを用いる場合について説明したが、紫外線光源としてLEDを用いることもできる。
LEDとしては、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系LED、窒化アルミニウム(AlN)系LED、酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系LED等を採用することができる。
ここで、AlGaN系LEDとしては、中心波長が200nm~240nmの範囲内となるようにAlの組成を調整することが好ましい。AlN系LEDは、ピーク波長210nmの紫外線を放出する。また、MgZnO系LEDは、Mgの組成を調整することで、中心波長が222nmである紫外線を放出することができる。
なお、上記の中心波長222nmの紫外線を放出するAlGaN系LEDおよびMgZnO系LEDは、中心波長222nmからある程度広がりを有する波長範囲の紫外線を放出し、当該LEDから放出される光には、僅かながら人や動物に安全ではない波長の紫外線も含まれる。そのため、紫外線光源がエキシマランプである場合と同様、波長範囲200nm~240nm以外の波長を有するUV-C波長域の光をカットする誘電体多層膜フィルタ(光学フィルタ)を用いることが好ましい。
ただし、上記の中心波長210nmの紫外線を放出するAlN-LEDは、上記光学フィルタは不要である。
また、紫外線光源がエキシマランプであっても、LEDであっても、当該紫外線光源の光放射面での照度や紫外線光源から紫外線の被照射面までの距離等によっては、被照射面での人や動物に安全ではない波長の紫外線の照度が許容値以下となる場合がある。したがって、このような場合には、上記光学フィルタを設ける必要はない。
本発明に係る不活化装置および不活化方法によれば、紫外線照射による魚介類や人体への悪影響を及ぼすことなく、紫外線本来の殺菌、ウイルスの不活化能力を提供することができる。特に、従来の不活化装置および不活化方法とは異なり、人が存在する空間においても、紫外線による効果的な殺菌・不活化を行うことができる。このことは、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「あらゆる年齢の全ての人々が健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に対応し、また、ターゲット3.3「2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに、肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する」に大きく貢献するものである。
10…紫外線照射ユニット、11…筐体、12…エキシマランプ、13…光学フィルタ、14…フィルタ保持部材、16…給電部、17…制御部、18…ランプ固定部材、110…紫外線光源、111…波長選択フィルタ、200…魚、311…水槽、312…水、313…藻類、321…網、322…海水、323…海面

Claims (10)

  1. 紫外線を放射して微生物および/またはウイルスを不活化する不活化装置であって、
    波長200nm以上240nm以下の紫外線を放射する光源を有する光源部と、
    前記光源から放射される前記紫外線を、魚介類と水とを収容し、側面および底面を有する区画部の内面に照射させるべく前記光源部を支持する支持体と、を備えることを特徴とする不活化装置。
  2. 前記光源部は、前記区画部により区画された領域の水中に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
  3. 前記光源部は、
    前記光源を内部に収容し、前記紫外線を放射する光放射面を有する筐体を備え、
    前記筐体は、前記光源を収容する密閉空間を形成していることを特徴とする請求項2に記載の不活化装置。
  4. 前記光源部は、
    前記筐体の内部における前記光源と前記光放射面との間に、波長200nm以上240nm以下の紫外線を透過し、波長240nmよりも長波長側のUV-C波の透過を阻止する光学フィルタを備えることを特徴とする請求項3に記載の不活化装置。
  5. 前記光源部は、前記区画部により区画された領域の上方に配置されており、水面に向けて前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
  6. 前記光源部は、前記紫外線を透過する部材よりなる前記区画部により区画された領域の側方に配置されており、前記区画部の外側面に向けて前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
  7. 前記光源部は、前記区画部の側面の上下方向における全長に亘って前記紫外線を照射可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
  8. 前記紫外線が前記区画部の内面を走査するように前記光源部および前記区画部の少なくとも一方を移動させるスキャン機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の不活化装置。
  9. 前記光源部は、前記区画部である水槽、生け簀、特定海域を包囲する網、および、人工池のいずれかの内面に前記紫外線を照射することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の不活化装置。
  10. 光源から波長200nm以上240nm以下の紫外線を放射させるステップと、
    前記光源から放射された前記紫外線を魚介類と水とを収容し、側面および底面を有する区画部の内面に向けて照射し、前記水および前記内面の少なくとも一方に存在し得る微生物および/またはウイルスを不活化するステップと、を含むことを特徴とする不活化方法。
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