JP2022139912A - 光学素子、光学系、および、光学機器 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境耐久性が高い光学素子を提供する。【解決手段】樹脂材料(200)からなる基材と反射防止膜(100)とを有する光学素子(300)であって、反射防止膜は、基材の上に形成された第1の膜(111)と、第1の膜の上に形成された第2の膜(101)とからなり、第2の膜は、第1の膜の上に形成された第1の層と、第1の層の上に形成された第2の層とからなり、第1の層は酸化ケイ素を含み、第2の層はフッ化マグネシウムを含む。【選択図】図1
Description
本発明は、光学素子に関する。
特許文献1には、最外層をSiO2又はSiOを主成分とする層(酸化ケイ素層)とし、その下の層をMgF2を主成分とする層(フッ化マグネシウム層)として形成された反射防止膜が開示されている。特許文献2には、酸化ケイ素層と酸化タンタル層とが交互に積層された多重層と、多重層の上に形成されたフッ化マグネシウム層と、最外層としてフッ化マグネシウム層の上に形成された酸化ケイ素層とからなる反射防止膜が開示されている。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された反射防止膜の構成では、フッ化マグネシウムの引張り応力が強いため、光学素子の環境耐久性を高めることが難しい。その結果、樹脂材料からなるレンズ上の反射防止膜に膜割れや膜剥がれが発生する可能性がある。
そこで本発明は、環境耐久性が高い光学素子、光学系、および光学機器を提供することを目的とする。
本発明の一側面としての光学素子は、樹脂材料からなる基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、前記反射防止膜は、前記基材の上に形成された第1の膜と、該第1の膜の上に形成された第2の膜とからなり、前記第2の膜は、前記第1の膜の上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とからなり、前記第1の層は酸化ケイ素を含み、前記第2の層はフッ化マグネシウムを含む。
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
本発明によれば、環境耐久性が高い光学素子、光学系、および光学機器を提供することができる。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態における光学素子300の概略構成について説明する。図1は、光学素子300を示す概略断面図である。光学素子300は、透明樹脂基板(樹脂材料からなる基材)200、および、透明樹脂基板200の上に形成された反射防止膜100を有する。反射防止膜100は、透明樹脂基板200から順に、多層膜(第1の膜)111と、多層膜(第2の膜)101とから構成される。すなわち反射防止膜100は、透明樹脂基板200の上に形成された多層膜111と、多層膜111の上に形成された(透明樹脂基板200から最も遠くに形成された)多層膜101とからなる。
多層膜111は、透明樹脂基板200から順に、層11、12、13、14、15、16からなる。なお本実施形態において、多層膜111は6層からなるが、これに限定されるものではない。多層膜111の層数は、1層以上であれば、何層であっても構わない。多層膜101は、多層膜111に近い側から順に、層(第1の層)01および層(第2の層)の2層からなる。多層膜101を構成する層01は酸化ケイ素(SiO2)を含み、層02はフッ化マグネシウム(MgF2)を含む。より具体的には、層01は酸化ケイ素から構成されるか、または酸化ケイ素を主成分(重量比90%以上の酸化ケイ素を含む層)として構成される。層02は、フッ化マグネシウムから構成されるか、またはフッ化マグネシウムを主成分として構成される。
透明樹脂基板200に反射防止膜100を蒸着する場合、透明樹脂基板200を無加熱(もしくは80度以下の低温加熱)の状態で成膜を行う必要がある。無加熱(もしくは80度以下の低温加熱)で蒸着したフッ化マグネシウムは、強い引張応力を有する。一方、酸化ケイ素は、無加熱(もしくは80度以下の低温加熱)で蒸着すると、圧縮応力を有する。本実施形態では、多層膜101の構成のように、フッ化マグネシウム層の下層に酸化ケイ素層を有する構成にすることで、応力の相殺による密着性の向上が可能となる。
本実施形態において、層01、02のd線における屈折率をそれぞれn1、n2、層01、02の物理膜厚をそれぞれd1、d2(nm)、d線の波長をλとするとき、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
λ/8≦n1d1+n2d2≦λ/2 …(1)
また本実施形態において、条件式(1)の数値範囲を以下の条件式(1a)のように設定することがより望ましい。
また本実施形態において、条件式(1)の数値範囲を以下の条件式(1a)のように設定することがより望ましい。
λ/6≦n1d1+n2d2≦λ/3 …(1a)
反射防止膜100は、最外層(最上層)をより屈折率が低い材料とし、その光学膜厚をλ/4程度にすると、反射防止性能が向上する。本実施形態において、多層膜101を最外層の低屈折率材料と実質的に等価な層とみなし、式(1)を満足することで、反射防止性能の向上を図ることができる。
反射防止膜100は、最外層(最上層)をより屈折率が低い材料とし、その光学膜厚をλ/4程度にすると、反射防止性能が向上する。本実施形態において、多層膜101を最外層の低屈折率材料と実質的に等価な層とみなし、式(1)を満足することで、反射防止性能の向上を図ることができる。
また本実施形態において、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
0.2≦n2d2/(n1d1+n2d2)≦0.9 …(2)
また本実施形態において、条件式(2)の数値範囲を以下の条件式(2a)のように設定することがより望ましい。
また本実施形態において、条件式(2)の数値範囲を以下の条件式(2a)のように設定することがより望ましい。
0.6≦n2d2/(n1d1+n2d2)≦0.9 …(2a)
多層膜101の層02の膜厚を厚くすると、多層膜101の平均屈折率は下がるが、引張応力の上昇により密着性の確保が難しくなる。一方、層01の膜厚を厚くすると、引張応力が低下し密着性の確保が容易になるが、多層膜101の平均屈折率が上昇してしまう。それぞれの膜厚を条件式(2)を満足するように成膜することで、反射防止性能と密着性とを両立することができる。
多層膜101の層02の膜厚を厚くすると、多層膜101の平均屈折率は下がるが、引張応力の上昇により密着性の確保が難しくなる。一方、層01の膜厚を厚くすると、引張応力が低下し密着性の確保が容易になるが、多層膜101の平均屈折率が上昇してしまう。それぞれの膜厚を条件式(2)を満足するように成膜することで、反射防止性能と密着性とを両立することができる。
透明樹脂基板200は、温度上昇により膨張する。また、フッ化マグネシウムは大きな引っ張り応力を有する。一般的に、酸化ケイ素の蒸着膜は圧縮応力を有するが、フッ化マグネシウムの応力を相殺するには、より強い圧縮応力が必要である。そこで本実施形態では、微量のアルミニウムを含有させた酸化ケイ素材料を用いることで、圧縮応力を増強する。このため、層01を構成する材料は、酸化ケイ素を主成分とし、微量なアルミニウムを含む材料であることが望ましい。このため、屈折率n1は、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
1.4≦n1≦1.5 …(3)
また、層01は、重量比10%以下のアルミニウムを含むことが望ましい。アルミニウムの添加は、ごく微量でも効果がある。重量比0.001%のアルミニウムを含有した酸化ケイ素膜でも、フッ化マグネシウム膜と組み合わせた際に、膜割れや膜剥がれの発生を防ぐことができる。
また、層01は、重量比10%以下のアルミニウムを含むことが望ましい。アルミニウムの添加は、ごく微量でも効果がある。重量比0.001%のアルミニウムを含有した酸化ケイ素膜でも、フッ化マグネシウム膜と組み合わせた際に、膜割れや膜剥がれの発生を防ぐことができる。
多層膜111は、高屈折率材料と中屈折率材料(d線に関する屈折率が1.6~1.8程度)との組み合わせでもよいが、高屈折率材料と低屈折率材料とを交互に積層した層(交互層)であることが望ましい。多層膜111に使用される高屈折率材料は、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ランタン、または酸化ジルコニアのいずれか一つ、または、これらの複数の混合物を主成分とする材料であることが望ましい。高屈折率材料は、引張応力を有する。多層膜111に使用される低屈折率材料は、作製の容易性や反射防止膜100の応力を相殺する等の観点から、層01と同一の材料であることが望ましい。高屈折率材料が引張応力を有し、低屈折率材料が圧縮応力を有するため、交互層とすることで応力が相殺される。なお交互層は、図1に示されるような6層に限定されるものではなく、少なくとも2種類の材料の層が一層ずつあればよい。
多層膜111の最下層である層11は、層01と同一材料であってもよい。透明樹脂基板200は、一般的にガラスよりも大きな熱膨張係数を有する。透明樹脂基板200上に、圧縮応力が強い材料を使用することで、高温化で透明樹脂基板200が膨張した際の形状変化に層11が追従することができ、膜割れを防止することができる。
多層膜111および多層膜101からなる反射防止膜100の成膜方法は、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法であれば、特に限定されるものではない。特に蒸着法は、フッ化物が分解しにくいため、より望ましい。蒸着法において、蒸着材料の加熱方法としては、抵抗加熱法、電子ビーム蒸着法、レーザー蒸着法などがある。電子ビーム蒸着法は、膜材料を直接加熱できるため、基板に対しては無加熱状態で成膜できること、汚染が少なく、膜の品質が比較的高くなることから、より望ましい。また、イオンビームアシスト法を用いることも望ましい。独立したイオン源が、蒸着のアシストの役割を果たすことで、吸収や散乱が少なく、強度が高い緻密な膜を形成することができる。
本実施形態において、透明樹脂基板200の屈折率(d線における平均屈折率)をndとするとき、以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
1.48≦nd≦1.80 …(4)
また本実施形態において、透明樹脂基板200の線膨張係数をα(10-5/℃)とするとき、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
また本実施形態において、透明樹脂基板200の線膨張係数をα(10-5/℃)とするとき、以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
1.5≦α≦30.0 …(5)
以下、各実施例について具体的に説明する。
以下、各実施例について具体的に説明する。
図1は、本発明の実施例1における光学素子300の概略断面図である。本実施例の光学素子300は、透明樹脂基板200の上に反射防止膜100が形成された光学素子である。透明樹脂基板200は、屈折率1.53(d線)のCOP樹脂(日本ゼオン(株)「ZEONEX」)である。層材料として、層11、13、15、01がSiO2、層12、14、16がZrO2とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表1は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。
本実施例の反射防止膜100の成膜法は、以下のとおりである。反射防止膜100は、蒸着法にて成膜される。蒸発材料の加熱には、電子ビームを使用した。また、より緻密な膜を形成するため、イオンビームアシスト蒸着法を行った。蒸着装置の真空チャンバ内は、2×10-3(Pa)近傍の高真空領域まで無加熱状態で排気した。真空チャンバ内が高真空状態になったのを確認してから、不活性ガスとしてArをイオン銃に導入し、イオン銃を放電させる。イオン銃が安定状態になってから、真空チャンバ内に酸素を導入し、真空圧が1×10-2(Pa)程度で酸素イオンによるイオンアシスト蒸着を行う。
図2は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図2において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲において、反射率は0.25%以下であり、非常に良い特性である。
フッ化マグネシウムからなる層02は、強い引張応力を有する。一方、酸化ケイ素は、圧縮応力を有する。フッ化マグネシウム膜の下層を酸化ケイ素膜とすることで、多層膜101全体としては、応力が相殺された構成となっており、クラックや剥離が発生しない、環境信頼性に優れた膜となっている。
反射防止膜100において、様々な条件下での耐久性を確認するため、下記のような耐久試験を実施した。
(高温高湿放置試験)
作製したサンプルを温度60度、湿度90%に設定された恒温槽に1000時間放置した後、反射防止膜100の外観を目視で観察した。
(低温放置試験)
作製したサンプルを温度-30度に設定された恒温槽に1000時間放置した後、反射防止膜100の外観を目視で観察した。
(高温放置試験)
作製したサンプルを70度に設定された恒温槽に12時間放置した後、反射防止膜100の外観を目視で観察した。
(密着性試験)
作製したサンプルの反射防止膜100の表面に粘着テープを張り付けた後、膜面に対して垂直方向にテープを引きはがす。5回繰り返し、膜が剥離していないかどうかを目視で観察した。
(高温高湿放置試験)
作製したサンプルを温度60度、湿度90%に設定された恒温槽に1000時間放置した後、反射防止膜100の外観を目視で観察した。
(低温放置試験)
作製したサンプルを温度-30度に設定された恒温槽に1000時間放置した後、反射防止膜100の外観を目視で観察した。
(高温放置試験)
作製したサンプルを70度に設定された恒温槽に12時間放置した後、反射防止膜100の外観を目視で観察した。
(密着性試験)
作製したサンプルの反射防止膜100の表面に粘着テープを張り付けた後、膜面に対して垂直方向にテープを引きはがす。5回繰り返し、膜が剥離していないかどうかを目視で観察した。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例2の光学素子は、実施例1と同一の透明樹脂基板、同一の蒸着材料、および同一の蒸着条件で作製されている。表2は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図3は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図3において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.25%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例3の透明樹脂基板200は、特殊PC樹脂(三井ガス化学(株)「EP-5000」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比0.001%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表3は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。本実施例の反射防止膜100の成膜方法は、実施例1と同様に、電子ビーム蒸着法およびイオンアシスト蒸着法を用いている。図4は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図4において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.25%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
本実施例において、層01は、Alを重量比0.001%含むSiO2層である。この層は、非常に圧縮応力が強い。MgF2は非常に引張応力が強く、また樹脂材料は膨張傾向が強い。本実施例によれば、これらの応力が相殺されるため、非常に環境耐久性の高い反射防止膜を提供することができる。
実施例4の透明樹脂基板200は、ポリエステルフィルム(PET樹脂(東レ(株)「ルミラーT60」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比1.0%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表4は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図5は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図5において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.2%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例5の透明樹脂基板200は、COP樹脂(日本ゼオン(株)「ZEONEX」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比2.0%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表5は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図6は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図6において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.25%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例6の透明樹脂基板200は、COP樹脂(日本ゼオン(株)「ZEONEX」)である。層材料としては、層12、14、01が重量比3.0%のAlを含むSiO2、層11、13、15がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表6は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図7は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図7において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.3%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例7の透明樹脂基板200は、特殊PC樹脂(三井ガス化学(株)「EP-5000」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比2.0%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表7は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図8は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図8において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.3%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例8の透明樹脂基板200は、特殊PC樹脂(三井ガス化学(株)「EP-5000」)である。層材料としては、層12、14、01が重量比3.0%のAlを含むSiO2、層11、13、15がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表8は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図9は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図9において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.3%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例9の透明樹脂基板200は、特殊PC樹脂(三井ガス化学(株)「EP-5000」)である。層材料としては、層12、14、01が重量比2.5%のAlを含むSiO2、層11、13、15がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表9は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図10は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図10において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.25%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例10の透明樹脂基板200は、COP樹脂(日本ゼオン(株)「ZEONEX」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比4.5%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表10は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図11は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図11において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.2%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例11の透明樹脂基板200は、COP樹脂(日本ゼオン(株)「ZEONEX」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比5.2%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表11は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図12は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図12において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.3%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例12の透明樹脂基板200は、COP樹脂(日本ゼオン(株)「ZEONEX」)である。層材料としては、層12、14、01が重量比4.5%のAlを含むSiO2、層11、13、15がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表12は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図13は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図13において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.25%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例13の透明樹脂基板200は、特殊PC樹脂(三井ガス化学(株)「EP-5000」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比10.0%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表13は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図14は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図14において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.2%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例14の透明樹脂基板200は、特殊PC樹脂(三井ガス化学(株)「EP-5000」)である。層材料としては、層12、14、16、01が重量比5.2%のAlを含むSiO2、層11、13、15がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表14は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図15は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図15において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.25%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
実施例15の透明樹脂基板200は、ポリエステルフィルム(PET樹脂)(東レ(株)「ルミラーT60」)である。層材料としては、層11、13、15、01が重量比5.2%のAlを含むSiO2、層12、14、16がTa2O5とTiO2との混合物、および、層02がMgF2を用いている。表15は、本実施例の光学素子の膜構成の詳細を示す。各材料の屈折率および膜厚は、式(1)、(2)を満足する。図16は、本実施例における光学素子の反射率特性である。図16において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.2%以下であり、非常に良い特性である。
耐久試験の結果を表18に示す。いずれの試験においても、膜割れや膜剥がれが生じておらず、良好な反射防止膜が形成されていることが確認できる。
次に、図19を参照して、実施例16における光学系について説明する。図19は、光学系400の断面図である。光学系400は、複数の光学素子G401~G411を有する。402は絞り、403は結像面である。光学素子G401~G411はそれぞれレンズである。これらのレンズのうち、入射面および射出面の少なくとも一方に、実施例1~15のいずれかの反射防止膜が付与されている。すなわち光学系400は、複数の光学素子G401~G411を有し、複数の光学素子G401~G411は、実施例1~15のいずれかの反射防止膜が形成された光学素子300を含む。
なお本実施例の光学系400は、後述する撮像装置に用いられる撮像光学系に限定されるものではなく、双眼鏡、プロジェクタ、望遠鏡等の様々な用途の光学系に適用可能である。
次に、図20を参照して、実施例17における撮像装置について説明する。図20は、撮像装置(デジタルカメラ500)の外観斜視図である。
デジタルカメラ500は、カメラ本体502と、カメラ本体502一体的に構成されたレンズ装置501とを有する。ただし本実施例は、これに限定されるものではなく、レンズ装置501は、一眼レフカメラ用やミラーレスカメラ用等の、カメラ本体502に対して着脱可能な交換レンズであってもよい。レンズ装置501は、実施例1~15のいずれかの光学系400を有する。カメラ本体502は、CMOSセンサやCCDセンサ等の撮像素子503を有する。撮像素子503は、光学系400の結像面403に配置される。
(比較例1)
比較例1は、実施例10と同一の蒸着材料および同一の透明樹脂基板を使用し、同一の蒸着条件で作製される。表16は、本比較例の光学素子の膜構成である。多層膜101は、フッ化マグネシウム層のみで形成されている。図17は、本比較例における光学素子の反射率特性である。図17において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲において反射率は0.2以下であり、実施例1~15よりも低反射率を実現している。
比較例1は、実施例10と同一の蒸着材料および同一の透明樹脂基板を使用し、同一の蒸着条件で作製される。表16は、本比較例の光学素子の膜構成である。多層膜101は、フッ化マグネシウム層のみで形成されている。図17は、本比較例における光学素子の反射率特性である。図17において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲において反射率は0.2以下であり、実施例1~15よりも低反射率を実現している。
耐久試験の結果を表18に示す。本比較例の最外層は、引張応力が強いフッ化マグネシウム膜で形成されている。このため本比較例の構成では、各耐久試験において膜割れや膜剥がれが生じており、反射防止膜として使用するには不適である。
(比較例2)
比較例2は、実施例10と同一の蒸着材料および同一の透明樹脂基板を使用し、同一の蒸着条件で作製される。表17は、本比較例の光学素子の膜構成である。多層膜101は、酸化ケイ素層のみで形成されている。
比較例2は、実施例10と同一の蒸着材料および同一の透明樹脂基板を使用し、同一の蒸着条件で作製される。表17は、本比較例の光学素子の膜構成である。多層膜101は、酸化ケイ素層のみで形成されている。
耐久試験の結果を表18に示す。本比較例の最外層は、強度が強い酸化ケイ素膜で形成されている。このため、各耐久試験においても、膜割れや膜剥がれが生じていない。
図18は、本比較例の反射率特性である。図18において、横軸は波長(nm)、縦軸は反射率(%)をそれぞれ示す。波長420~680nmの範囲で反射率は0.5%程度であり、実施例1~15よりも高い反射率を示している。このため本比較例の構成では、ゴーストやフレアの原因となる可能性がある。
各実施例によれば、環境耐久性が高い光学素子、光学系、および光学機器を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
100 反射防止膜
101 多層膜(第2の膜)
111 多層膜(第1の膜)
200 透明樹脂基板(樹脂材料からなる基材)
300 光学素子
101 多層膜(第2の膜)
111 多層膜(第1の膜)
200 透明樹脂基板(樹脂材料からなる基材)
300 光学素子
Claims (13)
- 樹脂材料からなる基材と反射防止膜とを有する光学素子であって、
前記反射防止膜は、前記基材の上に形成された第1の膜と、該第1の膜の上に形成された第2の膜とからなり、
前記第2の膜は、前記第1の膜の上に形成された第1の層と、該第1の層の上に形成された第2の層とからなり、
前記第1の層は酸化ケイ素を含み、
前記第2の層はフッ化マグネシウムを含むことを特徴とする光学素子。 - 前記第1の層のd線における屈折率をn1、前記第2の層のd線における屈折率をn2、前記第1の層の物理膜厚をd1(nm)、前記第2の層の物理膜厚をd2(nm)、d線の波長をλ(nm)とするとき、
λ/8≦n1d1+n2d2≦λ/2
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学素子。 - λ/6≦n1d1+n2d2≦λ/3
なる条件式を満足することを特徴とする請求項2に記載の光学素子。 - 前記第1の層のd線における屈折率をn1、前記第2の層のd線における屈折率をn2、前記第1の層の物理膜厚をd1(nm)、前記第2の層の物理膜厚をd2(nm)とするとき、
0.2≦n2d2/(n1d1+n2d2)≦0.9
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学素子。 - 0.6≦n2d2/(n1d1+n2d2)≦0.9
なる条件式を満足することを特徴とする請求項4に記載の光学素子。 - 前記第1の層のd線における屈折率をn1とするとき、
1.4≦n1≦1.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学素子。 - 前記第1の層は、重量比90%以上の酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学素子。
- 前記第1の層は、重量比10%以下のアルミニウムを含むことを特徴とする請求項7に記載の光学素子。
- 前記第1の膜は、
前記第2の膜の前記第1の層のそれぞれを構成する材料と、
酸化タンタル、酸化チタン、酸化ランタン、または酸化ジルコニアの少なくとも一つを含む材料と、を交互に積層して構成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学素子。 - 前記樹脂材料のd線における平均屈折率をndとするとき、
1.48≦nd≦1.80
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光学素子。 - 前記樹脂材料の線膨張係数をα(10-5/℃)とするとき、
1.5≦α≦30.0
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学素子。 - 複数の光学素子を有し、
前記複数の光学素子は、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の光学素子を含むことを特徴とする光学系。 - 撮像素子と、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光学素子と、を有することを特徴とする光学機器。
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