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JP2022165790A - 含フッ素共重合体組成物、架橋ゴム物品、及び架橋ゴム物品の製造方法 - Google Patents

含フッ素共重合体組成物、架橋ゴム物品、及び架橋ゴム物品の製造方法 Download PDF

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JP2022165790A
JP2022165790A JP2021071294A JP2021071294A JP2022165790A JP 2022165790 A JP2022165790 A JP 2022165790A JP 2021071294 A JP2021071294 A JP 2021071294A JP 2021071294 A JP2021071294 A JP 2021071294A JP 2022165790 A JP2022165790 A JP 2022165790A
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剛 河合
Takeshi Kawai
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

【課題】高温下での圧縮永久歪の小さい架橋ゴム物品を形成できる含フッ素共重合体組成物、架橋ゴム物品、及び架橋ゴム物品の製造方法の提供。【解決手段】含フッ素共重合体と、有機過酸化物と、重合性不飽和結合を2個以上有する化合物と、融点が60℃以下のリン化合物とを含む含フッ素共重合体組成物、前記含フッ素共重合体組成物中の含フッ素共重合体が架橋されてなる架橋ゴム物品、及び100~400℃に加熱して、前記含フッ素共重合体組成物中の含フッ素共重合体を架橋する、架橋ゴム物品の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、含フッ素共重合体組成物、架橋ゴム物品、及び架橋ゴム物品の製造方法に関する。
含フッ素共重合体を架橋させた架橋ゴム物品は、耐熱性、耐薬品性、耐油性および耐候性等に優れる点から、シール材(例えば、Oリング、パッキン、オイルシール、ガスケット)およびクッション材として、車両、船舶、航空機、一般機械、建築等の分野で広く使用されている。
このような架橋ゴム物品を得るために使用する含フッ素共重合体組成物として、特許文献1には、フッ化ビニリデンおよびこれと共重合可能な少なくとも1種の他のエチレン性不飽和単量体とを共重合して得られるフッ素ゴムと、有機過酸化物と、2価の金属水酸化物および2価の金属酸化物から選ばれる少なくとも1種と、有機リン化合物とを含むフッ素ゴム組成物が開示されている。
特開平06-306236号公報
近年、各分野において架橋ゴム物品に対する性能向上が求められており、具体的には高温下での圧縮永久歪が小さい架橋ゴム物品が求められている。このような要求に対して、本発明者らが特許文献1に記載されている架橋ゴム物品を評価したところ、高温下で圧縮永久歪試験を実施した際の圧縮永久歪率(以下、「高温下での圧縮永久歪」ともいう。)について、改善の余地があることを見出した。
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、高温下での圧縮永久歪の小さい架橋ゴム物品を形成できる含フッ素共重合体組成物、架橋ゴム物品、及び架橋ゴム物品の製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、含フッ素共重合体と、有機過酸化物と、重合性不飽和結合を2個以上有する化合物と、融点が60℃以下のリン化合物と、を含む含フッ素共重合体組成物を用いれば、高温下での圧縮永久歪の小さい架橋ゴム物品が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1] 含フッ素共重合体と、有機過酸化物と、重合性不飽和結合を2個以上有する化合物と、融点が60℃以下のリン化合物と、を含む、含フッ素共重合体組成物。
[2] 上記リン化合物の融点が35℃以下である、[1]の含フッ素共重合体組成物。
[3] 上記リン化合物がアルキル基を有するホスフィンである、[1]または[2]の含フッ素共重合体組成物。
[4] 上記含フッ素共重合体が、パーフルオロポリマーである、[1]~[3]のいずれかの含フッ素共重合体組成物。
[5] 上記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位と、を有する、[1]~[4]のいずれかの含フッ素共重合体組成物。
[6] 上記含フッ素共重合体が、さらに、重合性不飽和結合を2個以上有する単量体に基づく単位を有する、[5]の含フッ素共重合体組成物。
[7] 上記重合性不飽和結合を2個以上有する化合物が、ビニル基またはアリル基を2個以上有する化合物である、[1]~[6]のいずれかの含フッ素共重合体組成物。
[8] 上記重合性不飽和結合を2個以上有する化合物が、下式(6)で表される化合物である、[1]~[7]のいずれかの含フッ素共重合体組成物。
(CR6162=CR6364 式(6)
式(6)中、R61、R62およびR63はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のフルオロアルキル基を示し、R64は、2価の炭素数1~18のフルオロ炭化水素基または該フルオロ炭化水素基の末端もしくは炭素-炭素結合間にエーテル性酸素原子を有する基を示す。複数のR61、複数のR62および複数のR63はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[9] 上記リン化合物がトリアルキルホスフィンである、[1]~[8]のいずれかの含フッ素共重合体組成物。
[10] 上記リン化合物が下式(7)で表される化合物である、[1]~[9]のいずれかの含フッ素共重合体組成物。
P(R71 式(7)
式(7)中、R71は、炭素数2~9の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す。3つのR71は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[11] 上記式(7)において、3つのR71がそれぞれ独立に、炭素数2~9の直鎖状のアルキル基を示す、[10]の含フッ素共重合体組成物。
[12] 上記式(7)において、3つのR71が同一である、[10]または[11]の含フッ素共重合体組成物。
[13] [1]~[12]のいずれかの含フッ素共重合体組成物から得られる、前記含フッ素共重合体組成物中の前記含フッ素共重合体が架橋されてなる、架橋ゴム物品。
[14] [1]~[12]のいずれかの含フッ素共重合体組成物を100~400℃に加熱して、前記含フッ素共重合体組成物中の前記含フッ素共重合体を架橋する、架橋ゴム物品の製造方法。
本発明によれば、高温下での圧縮永久歪の小さい架橋ゴム物品を形成できる含フッ素共重合体組成物、架橋ゴム物品、及び架橋ゴム物品の製造方法を提供できる。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「単位」とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に由来する原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。「単量体に基づく単位」は、以下、単に「単位」ともいう。
「ゴム」とは、JIS K 6200(2008)により定義される性質を示すゴムを意味し、「樹脂」とは区別される。
「融点」とは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの最大値に対応する温度を意味する。
沸点とは、特記のない場合は、大気圧(1013hPa)での沸点を意味する。
〔含フッ素共重合体組成物〕
本発明の含フッ素共重合体組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、含フッ素共重合体と、有機過酸化物と、重合性不飽和結合を2個以上有する化合物(以下、「特定重合性化合物」ともいう。)と、融点が60℃以下のリン化合物(以下、「特定リン化合物」ともいう。)と、を含む。特定リン化合物は、架橋促進剤である。
本組成物を用いて得られた架橋ゴム物品は、高温下での圧縮永久歪(例えば、架橋ゴム物品を250℃で168時間保存した後に圧縮永久歪試験を実施した際の圧縮永久歪率)が小さい。この理由の詳細は明らかになっていないが、以下の理由によると推測される。
高温下での圧縮永久歪が大きくなる理由の一つとして、架橋ゴム物品の加熱圧縮時において架橋部分の結合が切れることにあると考えられる。ここで、本組成物に含まれる特定リン化合物は融点が低いため、本組成物に含まれる含フッ素共重合体を加熱しながら架橋する際に、特定リン化合物は本組成物中で液状になっている。これにより、特定リン化合物が本組成物中で良好に分散し、含フッ素共重合体の架橋が良好に進行するので、架橋密度が向上すると考えられる。その結果、高温下での圧縮永久歪が小さくなると考えられる。
また、本組成物が特定重合性化合物を用いることで、架橋の開裂を抑えられるため、高温下でも架橋ゴム物品が歪みにくくなると考えられる。
このように、特定リン化合物の機能と特定重合性化合物の機能が相乗的に作用して、高温下での圧縮永久歪の小さい架橋ゴム物品が得られたと推測される。
<含フッ素共重合体>
含フッ素共重合体は、フッ素原子を含み、架橋によってゴムの性質を示すポリマーであれば特に限定されないが、フッ素原子を含む単量体(以下、「含フッ素単量体」)単位を有するものが好ましく、架橋ゴム物品を高温下に長期間置いた場合の圧縮永久歪(例えば、架橋ゴム物品を250℃で336時間保存した後に圧縮永久歪試験を実施した際の圧縮永久歪率。以下、「長期加熱後の圧縮永久歪」ともいう。)をより小さくできる点から、パーフルオロポリマーであるのが特に好ましい。
ここで「パーフルオロポリマー」とは、炭素原子に結合した水素原子を実質的に含有せず、その水素原子の代わりにフッ素原子を有し、主鎖が炭素原子の連鎖からなるポリマーをいう。パーフルオロポリマーの側鎖には炭素原子以外の多価原子を有していてもよく、その多価原子としては酸素原子が好ましい。
ここで「水素原子を実質的に含有しない」とは、パーフルオロポリマー中の水素原子の含有量が0.5質量%以下であることを示し、0.1質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。水素原子の含有量が上記の範囲であると良好な耐熱性または耐薬品性が得られやすい。
含フッ素単量体の具体例としては、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」ともいう。)、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」ともいう。)、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。)が挙げられる。
PAVE単位は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位である。
PAVEとしては、重合反応性およびゴム物性に優れる点から、式(1)で表される単量体が好ましい。
CF=CF-O-Rf1 (1)
式(1)中、Rf1は、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を示す。Rf1の炭素数としては、重合反応性がより優れる点から、1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~5がさらに好ましく、1~3が特に好ましい。
パーフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
PAVEの具体例としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、「PMVE」ともいう。)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(以下、「PEVE」ともいう。)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、「PPVE」ともいう。)が挙げられ、これらの中でも、PMVE、PPVEが好ましい。
含フッ素共重合体は、上記以外の単量体(以下、「他の単量体」ともいう。)に基づく単位を有していてもよい。他の単量体の具体例としては、重合性不飽和結合を2個以上有する単量体(以下、「DV」ともいう。)、下式(5)で表される単量体、エチレン、プロピレンが挙げられる。また、上述の含フッ素単量体、DVおよび式(5)で表される単量体以外のハロゲン原子を有する単量体(以下、他のハロゲン原子を有する単量体ともいう。)(例えば、ブロモトリフルオロエチレン、ヨードトリフルオロエチレン)も挙げられる。
DV単位は、重合性不飽和結合を2個以上有する単量体に基づく単位である。
重合性不飽和結合の具体例としては、炭素原子-炭素原子の二重結合(C=C)、炭素原子-炭素原子の三重結合(C≡C)が挙げられる。
DVにおける重合性不飽和結合の数としては、重合反応性がより優れる点から、2~6個が好ましく、2または3個がより好ましく、2個が特に好ましい。
DVは、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、さらにフッ素原子を有するのが好ましい。
DVは、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、式(2)で表される単量体であることが好ましい。
(CR2122=CR23a224 (2)
式(2)中、R21、R22およびR23はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示し、a2は2~6の整数を示し、R24は、a2価の炭素数1~10のパーフルオロ炭化水素基または該パーフルオロ炭化水素基の末端もしくは炭素-炭素結合間にエーテル性酸素原子を有する基を示す。複数のR21、複数のR22および複数のR23はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに同一であるのが特に好ましい。
a2は2または3であるのが好ましく、2であるのが特に好ましい。
DVの重合反応性がより優れる点から、R21、R22、R23がフッ素原子または水素原子であるのが好ましく、R21、R22、R23の全てがフッ素原子であるか水素原子であるのがより好ましく、架橋ゴム物品の耐熱性および耐薬品性の点から、R21、R22、R23の全てがフッ素原子であるのが特に好ましい。
24は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状であるのが好ましく、直鎖状であるのが特に好ましい。R24の炭素数としては、2~8が好ましく、3~7がより好ましく、3~6がさらに好ましく、3~5が特に好ましい。
24は、エーテル性酸素原子を有していても、有していなくてもよいが、架橋反応性やゴム物性がより優れる点から、エーテル性酸素原子を有しているものが好ましい。
24におけるエーテル性酸素原子の数は1~6であるのが好ましく、1~3であるのがより好ましく、1または2であるのが特に好ましい。R24におけるエーテル性酸素原子は、R24の末端に存在していることが好ましい。
式(2)で表される単量体のうち、好適な単量体の具体例としては、式(3)で表される単量体、式(4)で表される単量体が挙げられる。
(CF=CF)31 (3)
式(3)中、R31は、2価の炭素数1~10のパーフルオロ炭化水素基または該パーフルオロ炭化水素基の末端もしくは炭素-炭素結合間にエーテル性酸素原子を有する基を示す。
式(3)で表される単量体の具体例としては、CF=CFO(CFOCF=CF、CF=CFO(CFOCF=CF、CF=CFO(CFOCF=CF、CF=CFO(CFOCF=CF2、CF=CFO(CFOCF=CF、CF=CFO(CFOCF(CF)CFOCF=CF、CF=CFO(CFO(CF(CF)CFO)CF=CF、CF=CFOCFO(CFCFO)CF=CF、CF=CFO(CFO)O(CF(CF)CFO)CF=CF、CF=CFOCFCF(CF)O(CFOCF(CF)CFOCF=CF、CF=CFOCFCFO(CFO)CFCFOCF=CFが挙げられる。
式(3)で表される単量体のうち、より好適な単量体の具体例としては、CF=CFO(CFOCF=CF(以下、「C3DVE」ともいう。)、CF=CFO(CFOCF=CF(以下、「C4DVE」または「PBDVE」ともいう。)が挙げられる。
(CH=CH)41 (4)
式(4)中、R41は、2価の炭素数1~10のパーフルオロ炭化水素基または該パーフルオロ炭化水素基の末端もしくは炭素-炭素結合間にエーテル性酸素原子を有する基を示す。
式(4)で表される単量体の具体例としては、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CHが挙げられる。
式(4)で表される単量体のうち、より好適な単量体の具体例としては、CH=CH(CFCH=CH(以下、「C6DV」ともいう。)が挙げられる。
DVを共重合させると、重合中にDVの末端にある重合性二重結合が反応して、分岐鎖を有する含フッ素共重合体が得られる。
式(5)は下記の通りである。
CF=CF-O-Rf2 (5)
式(5)中、Rf2は、炭素数1~8のエーテル性酸素原子を1~5個含むパーフルオロアルキル基を示す。Rf2の炭素数としては、1~6が好ましく、1~5が特に好ましい。
式(5)で表される単量体の具体例としては、パーフルオロ(3,6-ジオキサ-1-ヘプテン)、パーフルオロ(3,6-ジオキサ-1-オクテン)、パーフルオロ(5-メチル-3,6-ジオキサ-1-ノネン)が挙げられる。
含フッ素共重合体に含まれる各単位の好適な組み合わせを以下に示す。
組み合わせ1:TFE単位と、PAVE単位との組み合わせ
組み合わせ2:TFE単位と、PAVE単位と、DV単位との組み合わせ
組み合わせ3:VdF単位と、HFP単位との組み合わせ
組み合わせ4:VdF単位と、HFP単位と、TFE単位との組み合わせ
これらの中でも、架橋ゴム物品の耐熱性および耐薬品性の点から、組み合わせ1、組み合わせ2が好ましく、組み合わせ2が特に好ましい。
組み合わせ1~4における共重合組成は、下記のモル比であるのが好ましい。下記のモル比であると、架橋ゴム物品の耐熱性および耐薬品性に優れる。
組み合わせ1:TFE単位/PAVE単位=60~80/20~40(モル比)
組み合わせ2:TFE単位/PAVE単位/DV単位=60~80/20~40/0.01~1(モル比)
組み合わせ3:VdF単位/HFP単位=60~95/5~40(モル比)
組み合わせ4:VdF単位/HFP単位/TFE単位=30~50/5~45/5~65(モル比)
含フッ素共重合体は、ヨウ素原子を有していてもよい。この場合、含フッ素共重合体(高分子鎖)の末端にヨウ素原子を有するのが好ましい。含フッ素共重合体に存在するヨウ素原子は、架橋時に含フッ素共重合体から脱離し、特定リン化合物に捕捉されると考えられる。
ヨウ素原子としては、後述の連鎖移動剤として機能するヨード化合物に由来するヨウ素原子、上述のヨードトリフルオロエチレン等の他のハロゲン原子を有する単量体のうちヨウ素原子を有する単量体に基づく単位中のヨウ素原子が挙げられ、連鎖移動剤として機能するヨード化合物に由来するヨウ素原子であるのが好ましい。
含フッ素共重合体がヨウ素原子を有する場合、その含有量としては、含フッ素共重合体の全質量に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.05~2.0質量%がより好ましく、0.05~1.0質量%が特に好ましい。ヨウ素原子の含有量が上記範囲にあると、含フッ素共重合体の架橋反応性が向上して、架橋ゴム物品の機械特性が優れる。
本発明の含フッ素共重合体組成物に含まれる含フッ素共重合体としては、ヨウ素原子を有するパーフルオロポリマーが最も好ましい。含フッ素共重合体がヨウ素原子を有するパーフルオロポリマーである場合、架橋反応が比較的早く進行し、より多くのヨウ素原子が含フッ素共重合体から脱離すると考えられる。上記含フッ素共重合体を特定リン化合物存在下で架橋すると、特定リン化合物は多くのヨウ素原子を補足し、架橋反応を加速することができると考えられる。
含フッ素共重合体の含有量は、本組成物の全質量に対して、60~99質量%であるのが好ましく、70~99質量%であるのがより好ましく、80~99質量%であるのが特に好ましい。
(含フッ素共重合体の製造方法)
含フッ素共重合体の製造方法の一例としては、ラジカル重合開始剤の存在下、上記単量体を共重合する方法が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、水溶性重合開始剤、レドックス重合開始剤が好ましい。
水溶性重合開始剤の具体例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸類、ジコハク酸過酸化物、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩等の有機系重合開始剤類が挙げられ、これらの中でも、過硫酸類が好ましく、過硫酸アンモニウムがより好ましい。
レドックス重合開始剤としては、過硫酸類と還元剤を組み合せた重合開始剤が挙げられる。このうち、重合温度が0~60℃の範囲で各単量体を重合可能な重合開始剤が好ましい。レドックス重合開始剤を構成する過硫酸類の具体例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸のアルカリ金属塩が挙げられ、過硫酸アンモニウムが好ましい。過硫酸類と組み合わせる還元剤の具体例としては、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩が挙げられ、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩が好ましく、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム塩が特に好ましい。
含フッ素共重合体の製造方法において、ラジカル重合開始剤とともに、連鎖移動剤の存在下で上記単量体を共重合してもよい。
連鎖移動剤としては、ヨード化合物が好ましく、式RIで表されるヨード化合物が特に好ましい。上記式中、Rは炭素数3以上(好ましくは、炭素数3~8)のアルキレン基またはパーフルオロアルキレン基を示す。
式RIで表されるヨード化合物の具体例としては、1,3-ジヨードプロパン、1,4-ジヨードブタン、1,6-ジヨードヘキサン、1,8-ジヨードオクタン、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタンが挙げられる。
ヨード化合物としては、パーフルオロアルキレン基を有するヨード化合物が好ましく、1,4-ジヨードパーフルオロブタンが特に好ましい。
これらのヨード化合物の存在下に上記単量体を共重合させると、含フッ素共重合体にヨウ素原子を導入できる。
含フッ素共重合体の製造時に使用する上記以外の成分、製造方法の詳細については、国際公開第2010/082633号の段落0019~0034に記載の方法を参照できる。
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、架橋剤として用いられる。
有機過酸化物の具体例としては、ジアルキルパーオキシド類、α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-m-ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーオキシベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシドが挙げられる。
ジアルキルパーオキシド類の具体例としては、1,1-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロキシパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン、tert-ブチルパーオキシマレイン酸、tert-ブチルパーオキシソプロピルカーボネートが挙げられる。
有機過酸化物の含有量としては、含フッ素共重合体の100質量部に対して、0.3~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.5~3質量部が特に好ましい。有機過酸化物の含有量が上記範囲内にあれば、架橋ゴム物品の強度と伸びのバランスに優れる。
<特定重合性化合物>
特定重合性化合物は、重合性不飽和結合を2個以上有する化合物であり、含フッ素共重合体の架橋反応性を向上させるための架橋助剤として用いられる。
重合性不飽和結合の具体例としては、炭素原子-炭素原子の二重結合(C=C)、炭素原子-炭素原子の三重結合(C≡C)が挙げられ、架橋反応性により優れる点から、炭素原子-炭素原子の二重結合(C=C)であるのが好ましい。
特定重合性化合物における重合性不飽和結合の数は、2個以上であり、2~6個であるのが好ましく、2または3個であるのがより好ましく、2個であるのが特に好ましい。
特定重合性化合物は、架橋反応性により優れ、高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、ビニル基またはアリル基を2個以上有する化合物であるのが好ましい。
特定重合性化合物は、架橋ゴム物品の耐候性および耐薬品性に優れる点から、フッ素原子を有するのが好ましい。
特定重合性化合物の具体例としては、下式(6)で表される化合物、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートが挙げられ、架橋反応性により優れる点から、下式(6)で表される化合物、トリアリルイソシアヌレートが好ましく、架橋ゴム物品の長期加熱後の圧縮永久歪がより小さくなる点から、下式(6)で表される化合物が特に好ましい。
式(6)は下記の通りである。
(CR6162=CR6364 式(6)
式(6)中、R61、R62およびR63はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のフルオロアルキル基を示し、R64は、2価の炭素数1~18のフルオロ炭化水素基または該フルオロ炭化水素基の末端もしくは炭素-炭素結合間にエーテル性酸素原子を有する基を示す。複数のR61、複数のR62および複数のR63はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
61、R62およびR63におけるアルキル基またはフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
61、R62およびR63におけるアルキル基またはフルオロアルキル基の炭素数は、1~5であり、1~3であるのがより好ましく、1または2であるのが特に好ましい。
架橋反応性により優れる点から、R61、R62およびR63の全てが水素原子であるのが好ましい。
64におけるフルオロ炭化水素基は、架橋ゴム物品の耐熱性により優れる点から、パーフルオロ炭化水素基であるのが好ましい。
64は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状または分岐鎖状であるのが好ましく、直鎖状であるのが特に好ましい。R64の炭素数は、1~18であり、2~8であるのが好ましく、3~7であるのが特に好ましい。
64がエーテル性酸素原子を有する場合、R64におけるエーテル性酸素原子の数としては1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1または2が特に好ましい。R64がエーテル性酸素原子を有する場合、エーテル性酸素原子は、R64の末端に存在していることが好ましい。
式(6)で表される化合物としては、前述の式(2)で表される化合物が好ましく、式(3)および式(4)で表される化合物がより好ましい。式(3)および式(4)で表される化合物の中でも、C3DVE、C4DVE、CH=CH(CFCH=CH、CH=CH(CFCH=CH、C6DVが好ましく、架橋ゴム物品の長期加熱後の圧縮永久歪がより小さくなる点から、C6DVが特に好ましい。
特定重合性化合物の含有量は、含フッ素共重合体の100質量部に対して、0.03~5質量部であることが好ましく、0.1~4質量部であることがより好ましく、0.3~3質量部であることが特に好ましい。上記範囲の下限値以上であれば、架橋ゴム物品の圧縮永久歪がより小さくなり、上記範囲の上限値以下であれば、架橋反応性がより優れる。
<特定リン化合物>
特定リン化合物は、融点が60℃以下のリン化合物であり、架橋促進剤として用いられる。
特定リン化合物の融点は、60℃以下であり、特定リン化合物の分散性がより向上して、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、35℃以下であることが好ましく、20℃以下であることが特に好ましい。
なお、融点が特定の温度以下である上記の化合物の中には、20℃で液体である化合物も含まれる。
特定リン化合物は、特定リン化合物の分散性がより向上して、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、アルキル基を有するホスフィンであるのが好ましく、トリアルキルホスフィンであるのがより好ましく、下式(7)または下記式(8)で表される化合物であるのがさらに好ましく、下記式(7)で表される化合物であるのが特に好ましい。
P(R71 式(7)
式(7)中、R71は、炭素数2~9の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す。3つのR71は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、互いに同一であるのが好ましい。
PO(R81 式(8)
式(8)中、R81は、炭素数2~9の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す。3つのR81は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、互いに同一であるのが好ましい。
71の炭素数は、2~9であり、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、4~9であるのが好ましく、6~8であるのが特に好ましい。
架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、3つのR71はそれぞれ独立に、炭素数2~9の直鎖状のアルキル基であるのが好ましい。
81の炭素数は、2~9であり、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、4~9であるのが好ましく、6~8であるのが特に好ましい。
架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、3つのR81はそれぞれ独立に、炭素数2~9の直鎖状のアルキル基であるのが好ましい。
式(7)で表される化合物の具体例としては、トリエチルホスフィン(融点-86℃、20℃で液体)、トリ-n-プロピルホスフィン(融点は不明、20℃で液体)、トリ-n-ブチルホスフィン(融点-65℃、20℃で液体)、トリ-n-ペンチルホスフィン(融点は不明、20℃で液体)、トリ-n-ヘキシルホスフィン(融点は不明、20℃で液体)、トリ-n-オクチルホスフィン(融点は不明、20℃で液体)が挙げられる。
式(8)で表される化合物の具体例としては、トリエチルホスフィンオキシド(融点52℃、20℃で固体)、トリ-n-プロピルホスフィンオキシド(融点39℃、20℃で固体)、トリ-n-ヘキシルホスフィンオキシド(融点34℃、20℃で固体)、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(融点52℃、20℃で固体)が挙げられる。
特定リン化合物の中でも、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる点から、トリ-n-オクチルホスフィンが好ましい。
特定リン化合物の含有量は、含フッ素共重合体の100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~2質量部であることがより好ましく、0.1~1質量部であることが特に好ましい。上記範囲の下限値以上であれば、架橋ゴム物品の圧縮永久歪がより小さくなり、上記範囲の上限値以下であれば、架橋ゴム物品の高温下での圧縮永久歪がより小さくなる。
<他の成分>
本組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、上記以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、受酸剤(例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、2価金属の酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉛等))、充填剤および補強材(例えば、カーボンブラック、硫酸バリウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、クレー、タルク)、スコーチ遅延剤(例えば、ビスフェノールA等のフェノール性水酸基含有化合物類、ハイドロキノン等のキノン類、2,4-ジ(3-イソプロピルフェニル)-4-メチル-1-ペンテン等のα-メチルスチレンダイマー類)、クラウンエーテル(例えば、18-クラウン-6)、離型剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム)が挙げられる。
本組成物が上記他の成分のうち二酸化ケイ素の粉末を含む場合、これを用いて得られる架橋ゴム物品の酸素プラズマの照射耐性が向上する。このような架橋ゴム物品は、例えば、酸素プラズマを実施する半導体製造装置の部品に好適である。
本組成物が上記他の成分のうち、PTFE粉末およびPFA粉末の少なくとも一方を含む場合、これを用いて得られる架橋ゴム物品のフッ素系ガスを用いたプラズマの照射耐性が向上する。このような架橋ゴム物品は、例えば、フッ素系ガスを用いたプラズマを実施する半導体製造装置の部品に好適である。
本組成物が他の成分を含有する場合、他の成分の含有量の合計としては、含フッ素共重合体の100質量部に対して、0.1質量部超30質量部以下が好ましく、1~25質量部がより好ましく、5~15質量部が特に好ましい。
本組成物の調製方法としては、上記各成分を混合する方法が挙げられる。各成分の混合は、ロール、ニーダー、バンバリーミキサーまたは押し出し機等のゴム用混合装置を用いて実施できる。
また、上記各成分を混合した混合物を得た後、混合物を成形してもよい。混合物の成形方法の具体例としては、圧縮成形、射出成形、押し出し成形、カレンダー成形、または、溶剤に溶かして基板等にディッピングもしくはコーティングして成形する方法が挙げられる。
〔架橋ゴム物品〕
本発明の架橋ゴム物品は、上述の含フッ素共重合体組成物から得られる、含フッ素共重合体組成物中の含フッ素共重合体が架橋されてなるゴム物品である。
含フッ素共重合体組成物中の含フッ素共重合体の架橋方法(すなわち、架橋ゴム物品の製造方法)としては、含フッ素共重合体組成物を加熱することによって架橋する方法が好ましい。
加熱による架橋方法の具体例としては、加熱プレス架橋、スチーム架橋、熱風架橋が挙げられる。これらの方法から、含フッ素共重合体組成物の形状や用途を考慮して適宜選択すればよい。
加熱条件は、100~400℃で1秒~24時間が好ましい。
含フッ素共重合体組成物を加熱して(1次架橋して)なる架橋ゴムを、さらに加熱して2次架橋してもよい。2次架橋を行うことにより、架橋ゴムの機械特性、圧縮永久歪、その他の特性を安定化または向上できる。
1次架橋と2次架橋を行う場合、1次架橋の加熱温度としては、100~400℃が好ましく、120~200℃がより好ましく、140~180℃がより好ましい。
1次架橋と2次架橋を行う場合、2次架橋の加熱温度としては、80~350℃が好ましく、140~300℃がより好ましく、220~260℃がより好ましい。
1次架橋と2次架橋を行う場合、1次架橋の加熱時間としては、1秒~60分が好ましく、1分~40分がより好ましく、5分~30分がさらに好ましい。
1次架橋と2次架橋を行う場合、2次架橋の加熱時間としては、30分~48時間が好ましく、2時間~32時間がより好ましく、3時間~25時間がさらに好ましい。
2次架橋を行う際の加熱条件は、80~350℃で30分間~48時間が好ましい。
含フッ素共重合体を加熱によって架橋する以外の架橋方法としては、含フッ素共重合体組成物に放射線を照射して含フッ素共重合体を架橋する方法が挙げられる。照射する放射線の具体例としては、電子線、紫外線が挙げられる。
<物性>
架橋ゴム物品の250℃168時間における圧縮永久歪率としては、95%以下が好ましく、含フッ素共重合体が良好に架橋しており、架橋ゴム物品の加圧後の形状回復がより優れる点から、70%以下がより好ましく、50%以下が特に好ましい。
架橋ゴム物品の250℃168時間における圧縮永久歪率は、後述する実施例欄に記載の方法によって測定される。
<用途>
架橋ゴム物品は、O-リング、シート、ガスケット、オイルシール、ダイヤフラム、V-リング等の材料に好適である。また、耐熱性耐薬品性シール材、耐熱性耐油性シール材、電線被覆材、半導体製造装置用シール材、液晶ディスプレイパネル製造装置用シール材、発光ダイオード製造装置用シール材、耐蝕性ゴム塗料、耐ウレア系グリース用シール材等、ゴム塗料、接着ゴム、ホース、チューブ、カレンダーシート(ロール)、スポンジ、ゴムロール、石油掘削用部材、放熱シート、溶液架橋体、ゴムスポンジ、ベアリングシール(耐ウレアグリース等)、ライニング(耐薬品)、自動車用絶縁シート、電子機器向け絶縁シート、時計向けゴムバンド、内視鏡用パッキン(耐アミン)、蛇腹ホース(カレンダーシートからの加工)、給湯器パッキン/弁、防舷材(海洋土木、船舶)、繊維・不織布(防護服等)、基盤シール材、ゴム手袋、一軸偏心ねじポンプのステータ、尿素SCRシステム用部品、防振剤、制振剤、シーリング剤、他材料への添加剤、玩具の用途にも適用できる。
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。例1~例2、例5は実施例であり、例3~例4は比較例である。ただし本発明はこれらの例に限定されない。なお、後述する表中における各成分の配合量は、質量基準を示す。
〔含フッ素共重合体の組成の測定〕
19F-核磁気共鳴(NMR)分析により、含フッ素共重合体中の各単位の含有量(モル%)を算出した。ただし、プロピレン単位の含有量については、13C-核磁気共鳴(NMR)分析から算出した。
また、自動試料燃焼装置イオンクロマトフラフ用前処理装置(三菱ケミカルアナリテック社製、AQF-100型)とイオンクロマトグラフを組み合わせた装置により、含フッ素共重合体中のヨウ素原子の含有量を算出した。
〔高温下での圧縮永久歪〕
JIS K 6262:2013に準じ、架橋ゴム物品の試験片を250℃で168時間保持した際の圧縮永久歪率(%)を測定した。なお、試験片としては、JIS B 2401-1:2012に準拠したP26のOリング試験片を使用した。試験は3枚の試験片を用いて実施して、3枚の試験片の測定値を算術平均した値を用いた。
圧縮永久歪率は次の計算式で算出し、以下の評価基準により高温下での圧縮永久歪を評価した。なお、圧縮永久歪率が0%に近いほど優れている。
圧縮永久歪率(%)=(試験片の元の厚さ-試験片を圧縮装置から取り外し30分後の厚さ)÷(試験片の元の厚さ-スペーサーの厚さ)×100
<評価基準>
A:圧縮永久歪率が0%以上、50%以下である。
B:圧縮永久歪率が50%超、70%以下である。
C:圧縮永久歪率が70%超、95%以下である。
D:圧縮永久歪率が95%超である。
〔長期加熱後の圧縮永久歪〕
架橋ゴム物品の試験片を250℃で保持する時間を、168時間から336時間に変更した以外は、上記「高温下での圧縮永久歪」と同様の手順および評価基準にて、長期加熱後の圧縮永久歪を評価した。
〔含フッ素共重合体1の製造〕
アンカー翼を備えた内容積20Lのステンレス製耐圧反応器を脱気した後、超純水の8.2L、COCFCFOCFCOONHの30質量%溶液の733g、C3DVEの10.0g、リン酸水素二ナトリウム・12水和物の5質量%水溶液の15.9gを仕込み、気相を窒素置換した。アンカー翼を用いて375rpmの速度で撹拌しながら、内温が80℃になってからTFEの198g、PMVEの454gを容器内に圧入した。反応器内圧は0.90MPa[gauge]であった。過硫酸アンモニウムの1質量%水溶液の40mLを添加し、重合を開始した。重合開始前に圧入する単量体(以下、初期単量体と記す。)の添加比をモル比で表すと、TFE:PMVE:C3DVE=41.74:57.64:0.61であった。
重合の進行に伴い反応器内圧が0.89MPa[gauge]に低下した時点でTFEを圧入し、反応器内圧を0.90MPa[gauge]に昇圧させた。これを繰り返し、TFEの80gを圧入するたびにPMVEの62gも圧入した。また、1,4-ジヨードパーフルオロブタンの7.0gを、TFEを60g圧入した時点で、超純水50mLとともにアンプル管より反応器に圧入した。
TFEの総添加質量が1200gとなった時点で、重合開始後に圧入する単量体(以下、「後添加単量体」と記す。)の添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却させ、重合反応を停止させ、含フッ素共重合体を含むラテックスを得た。重合時間は360分間であった。また、後添加単量体の総添加質量は、TFEが1200g、PMVEが868gであり、これをモル比に換算すると、TFE:PMVE=68:32であった。
硝酸(関東化学株式会社製、特級グレード)を超純水に溶解して硝酸の3質量%水溶液を調製した。ラテックスを、TFE-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)製容器内の硝酸水溶液に添加して、含フッ素共重合体を凝集させた。ラテックス中の含フッ素共重合体100質量部に対して硝酸水溶液の量は150質量部であった。
凝集した含フッ素共重合体をろ過によって回収し、PFA製容器内の超純水に投入し、200rpmで30分間撹拌して洗浄した。含フッ素共重合体100質量部に対して超純水の量は100質量部であった。上記洗浄を10回繰り返した。
洗浄した含フッ素共重合体をろ過によって回収し、50℃、10kPaで減圧乾燥させ、含フッ素共重合体1を得た。含フッ素共重合体1における各単位のモル比は、TFE単位:PMVE単位:C3DVE単位=71.40:28.43:0.17であり、ヨウ素原子の含有量は、0.10質量%であった。
〔含フッ素共重合体2〕
特開平06-306236の実施例欄におけるフッ素ゴム-1を、含フッ素共重合体2として用いた。含フッ素共重合体2における各単位のモル比は、VdF単位:TFE単位:プロピレン単位=35:40:25であった。ヨウ素原子は含有していない。
〔例1~5〕
表1に示す成分および配合量に調合し、2本ロールにより、室温下にて10分間混練し、混合された含フッ素共重合体組成物を得た。
得られた含フッ素共重合体組成物を、表1に示す1次架橋条件にて熱プレスして、厚み1mmの架橋ゴムシートを得た(1次架橋)。そして、窒素雰囲気下において、架橋ゴムシートを表1に示す2次架橋条件でオーブンを用いて加熱した(2次架橋)。その後、架橋ゴムシートを室温まで冷却して、例1~例5の架橋ゴムシートを得た。
得られた架橋ゴムシートを用いて、上述の物性を測定した。測定結果を表1に示す。
含フッ素共重合体を除く表1に記載の各成分の概要を以下に示す。
パーヘキサ25B:商品名、日本油脂社製、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、有機過酸化物
パーカドックス14:商品名、化薬アクゾ社製、α,α’-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、有機過酸化物
TAIC:商品名、三菱ケミカル社製、トリアリルイソシアヌレート、特定重合性化合物
C6DV:東ソー・ファインケム社製、CH=CH(CFCH=CH、特定重合性化合物
TOCP:北興化学工業社製、トリ-n-オクチルホスフィン(20℃で液体)、特定リン化合物
TOCPO:北興化学工業社製、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド、特定リン化合物
Figure 2022165790000001
表1に示す通り、含フッ素共重合体と、有機過酸化物と、特定重合性化合物と、特定リン化合物と、を含む含フッ素共重合体組成物を用いれば(例1、例2および例5)、高温下での圧縮永久歪を小さくできるのが確認された。
なお、2019年10月23日に出願された日本特許出願2019-192839号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (14)

  1. 含フッ素共重合体と、有機過酸化物と、重合性不飽和結合を2個以上有する化合物と、融点が60℃以下のリン化合物と、を含む、含フッ素共重合体組成物。
  2. 前記リン化合物の融点が、35℃以下である、請求項1に記載の含フッ素共重合体組成物。
  3. 前記リン化合物が、アルキル基を有するホスフィンである、請求項1または2に記載の含フッ素共重合体組成物。
  4. 前記含フッ素共重合体が、パーフルオロポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  5. 前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位と、を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  6. 前記含フッ素共重合体が、さらに、重合性不飽和結合を2個以上有する単量体に基づく単位を有する、請求項5に記載の含フッ素共重合体組成物。
  7. 前記重合性不飽和結合を2個以上有する化合物が、ビニル基またはアリル基を2個以上有する化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  8. 前記重合性不飽和結合を2個以上有する化合物が、下式(6)で表される化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
    (CR6162=CR6364 式(6)
    式(6)中、R61、R62およびR63はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のフルオロアルキル基を示し、R64は、2価の炭素数1~18のフルオロ炭化水素基または該フルオロ炭化水素基の末端もしくは炭素-炭素結合間にエーテル性酸素原子を有する基を示す。複数のR61、複数のR62および複数のR63はそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
  9. 前記リン化合物が、トリアルキルホスフィンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
  10. 前記リン化合物が、下式(7)で表される化合物である、請求項1~9のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
    P(R71 式(7)
    式(7)中、R71は、炭素数2~9の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を示す。3つのR71は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
  11. 前記式(7)において、3つのR71がそれぞれ独立に、炭素数2~9の直鎖状のアルキル基を示す、請求項10に記載の含フッ素共重合体組成物。
  12. 前記式(7)において、3つのR71が同一である、請求項10または請求項11に記載の含フッ素共重合体組成物。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物から得られる、前記含フッ素共重合体組成物中の前記含フッ素共重合体が架橋されてなる、架橋ゴム物品。
  14. 請求項1~12のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物を100~400℃に加熱して、前記含フッ素共重合体組成物中の前記含フッ素共重合体を架橋する、架橋ゴム物品の製造方法。
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