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JP2022157778A - 生分解性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

生分解性樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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JP2022157778A JP2021062207A JP2021062207A JP2022157778A JP 2022157778 A JP2022157778 A JP 2022157778A JP 2021062207 A JP2021062207 A JP 2021062207A JP 2021062207 A JP2021062207 A JP 2021062207A JP 2022157778 A JP2022157778 A JP 2022157778A
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Remi Miyamachi
浩 野口
Hiroshi Noguchi
聡 加藤
Satoshi Kato
悠太 池田
Yuta Ikeda
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Abstract

【課題】生分解速度が速く、かつ、生分解度の高い生分解性樹脂組成物を提供することを課題とする。【解決手段】ポリエステル樹脂と、窒素含有無機塩と、を含有し、前記窒素含有無機塩の含有量が0.01重量%以上30重量%以下である、生分解性樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性樹脂組成物及び該生分解性樹脂組成物を含む成形体に関する。
現代社会において、プラスチックは、その軽さ、電気絶縁性、成型加工性、耐久性に優れることから、包装用資材、家電製品資材、建築資材などの身の回りの幅広い用途で使用されている。これらの用途に使用されているプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、これらのプラスチックの成形品は、自然環境下で分解され難いため、使用後に埋設しても地中に残存し易い。また、焼却しても有害ガスを発生して焼却炉を傷めることがあり、近年、世界中で、環境汚染防止の観点から、一般家庭で堆肥にすることが可能な製品(ホームコンポスト可能な製品)などが求められている。
上述の問題を解決する手段として、コンポスト中で微生物によって二酸化炭素及び水に分解される生分解性を有する材料についての研究がなされてきた。生分解性材料の代表例としては、ポリ乳酸(以下、「PLA」と略記することがある。)などが挙げられる(非特許文献1)。
Polymer Degradation and Stability 98 (2013) 1089-1096
本発明の課題は、生分解速度が速く、かつ、生分解度の高い生分解性樹脂組成物を提供することである。また、特に、海洋中において、生分解速度が速く、かつ、生分解度の高い生分解性樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した。具体的には、環境中に溶け出たときに窒素含有イオンになりうる無機塩に注目し、樹脂に窒素含有無機塩を配合することにより生成する窒素含有イオンが、微生物の増殖や分解促進に寄与すると考えた。そして、検討の結果、ポリエステル樹脂に、窒素含有無機塩を配合することにより、著しい生分解促進効果が得られ、これにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]ポリエステル樹脂と、窒素含有無機塩と、を含有し、前記窒素含有無機塩の含有量が0.01重量%以上30重量%以下である、生分解性樹脂組成物。
[2]前記窒素含有無機塩がアンモニウム塩、硝酸塩、及び亜硝酸塩の少なくとも何れかを含む上記[1]に記載の生分解性樹脂組成物。
[3]前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が40℃以下である、上記[1]又は[2]に記載の生分解性樹脂組成物。
[4]前記ポリエステル樹脂が、炭素数が4~22のジカルボン酸単位を有する、上記[1]~[3]の何れかに記載の生分解性樹脂組成物。
[5]前記ポリエステル樹脂が2種類以上のジカルボン単位を有する、上記[1]~[4]の何れかに記載の生分解性樹脂組成物。
[6]前記ポリエステル樹脂が、炭素数が4~10の直鎖脂肪族のジオール単位を有する、上記[1]~[5]の何れかに記載の生分解性樹脂組成物。
[7]前記ポリエステル樹脂が脂肪族ポリエステル樹脂である、上記[1]~[6]の何れかに記載の生分解性樹脂組成物。
[8]上記[1]~[7]の何れかに記載の生分解性樹脂組成物を含む、成形体。
[9]ポリエステル樹脂を生分解させる方法であって、海水中で、ガラス転移温度が40℃以下のポリエステル樹脂を、窒素含有無機塩の存在下で生分解させる、ポリエステル樹脂の生分解方法。
本発明によれば、生分解速度が速く、かつ、生分解度の高い生分解性樹脂組成物を提供することができ、海洋汚染問題等の環境問題解決に対する寄与は大きい。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の一実施形態は、ポリエステル樹脂と窒素含有無機塩を含む生分解性樹脂組成物(以下、「本実施形態に係る生分解性樹脂組成物」又は「本発明の樹脂組成物」と言う場合がある。)である。
本明細書において、「生分解性」とは、微生物の働きにより、樹脂が加水分解等によりオリゴマーやモノマー等の低分子に分解され、これが更に、水と二酸化炭素等に分解される性質を意味する。本発明の樹脂組成物は、樹脂が生分解されれば、どのような環境で生分解されてもよい。特に、海水中では微生物量や種類が少なく、樹脂が生分解し難い。しかしながら、本発明の樹脂組成物は、こうした生分解し難い環境で効果を発現できる。そこで、本発明の樹脂組成物は、海水中で生分解性が高いこと(海洋生分解性樹脂組成物)が好ましい。
以下、本実施形態に係る生分解性樹脂組成物の構成成分、特性、製造方法及び用途について説明する。
[窒素含有無機塩]
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、窒素含有無機塩を含有することを特徴とする。窒素含有無機塩としては、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されないが、樹脂に対して高い生分解を与える効果を有する点から、アンモニウム塩及び硝酸塩、または亜硝酸塩が好ましい。
アンモニウム塩は、アンモニアがプロトン化してアンモニウムイオンになったものである。具体的には、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、酢酸アンモニウム、バナジン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、アジピン酸二アンモニウム等が挙げられる。これらのうち、アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムが好ましい。
硝酸塩は、硝酸がプロトン化した硝酸イオン(NO3-)になったものである。具体的には、硝酸マグネシウム六水和物、硝酸カリウム、硝酸カルシウム四水和物、硝酸コバルト六水和物、硝酸ナトリウム、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸アンモニウム、硝酸マンガン六水和物、硝酸鉄九水和物、硝酸銅三水和物、硝酸セシウム、グアニジン硝酸塩等が挙げられる。これらのうち、硝酸塩としては、硝酸マグネシウム六水和物、硝酸カリウム、硝酸カルシウム四水和物、硝酸コバルト六水和物、硝酸ナトリウム、硝酸アルミニウム九水和物、硝酸バリウム、硝酸ストロンチウム、硝酸アンモニウム、硝酸銅三水和物が好ましい。また、硝酸マグネシウム六水和物、硝酸カリウム、硝酸カルシウム四水和物、硝酸ナトリウム等は、海水中に含まれる元素からなる無機塩であるため、海水中の微生物が繁殖しやすく好ましいと考えられる。
亜硝酸塩は、亜硝酸イオン(NO2-)の化合物である。具体的には、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸銀が挙げられる。
窒素含有無機塩は、微生物の繁殖を阻害し難いことが好ましい。また、安全性の観点から危険物、殺虫剤、除草剤などの農薬などではないことが好ましい。
生分解性樹脂組成物中には、窒素含有無機塩が0.01重量%以上30重量%以下の量で含有される。生分解性樹脂組成物中に含有される窒素含有無機塩の量は、樹脂の種類、窒素含有無機塩の種類、生分解性樹脂組成物の用途等に応じて適宜調整すればよい。窒素含有無機塩の含有量は、0.05重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、5重量%以上が特に好ましい。また、一方で、同含有量は、25重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。
生分解性樹脂組成物中の窒素含有無機塩の含有量を上記範囲内とすることで、生分解性と、成形体に加工した際の機械特性を兼ね備えた組成物となりやすい。
[ポリエステル樹脂]
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂を含有する。本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂は、上述の窒素含有無機塩との樹脂組成物とすることにより、生分解性が向上すれば、特に限定されないが、本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂は、生分解性ポリエステル樹脂が好ましい。樹脂および樹脂組成物の生分解度については、後述する。本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂は、1種類を単独で用いても、2種類以上のポリエステル樹脂を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
ポリエステル樹脂としては、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)などの生分解性のポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、1種類のみでも、構成単位の種類や数、構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種類以上の樹脂を併用してもよい。また、ポリエステル以外の樹脂を併用してもよい。ポリエステル以外の樹脂を併用する場合、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエチレングリコールなどの生分解性樹脂が好ましい。
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂について、以下に詳述する。なお、ポリエステル樹脂における各繰返し単位は、それぞれの繰返し単位の由来となる化合物に対する化合物単位とも呼ぶ。例えば、脂肪族ジオールに由来する繰返し単位を「脂肪族ジオール単位」、脂肪族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「脂肪族ジカルボン酸単位」、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位を「芳香族ジカルボン酸単位」とも呼ぶ。また、ポリエステル樹脂中の「主構成単位」とは、通常、その構成単位が当該ポリエステル樹脂中に80重量%以上含まれる構成単位のことであり、主構成単位以外の構成単位が含まれない場合も含まれる。
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂としては、窒素含有無機塩との樹脂組成物とすることにより生分解性が向上しやすいことから、ジオール単位とジカルボン酸単位を有するポリエステル樹脂及び脂肪族オキシカルボン酸樹脂が好ましく、ジオール単位とジカルボン酸単位を有するポリエステル樹脂がより好ましい。
ポリエステル樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂であっても、芳香族ポリエステル樹脂であっても、脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂であってもよい。柔軟性が高い点では、脂肪族ポリエステル樹脂又は脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、生分解性の観点から脂肪族ポリエステル樹脂がより好ましい。なお、本明細書において、芳香族には、複素芳香族も含まれる。
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の結晶化度が低下し、非晶部が多くなることにより、生分解が促進されやすくなると考えられることから、2種類以上の構造単位を有することが好ましく、2種類以上のジカルボン酸単位を有することがより好ましい。
<ジオール単位>
ポリエステル樹脂が有するジオール単位は、脂肪族でも芳香族でもよい。また、ポリエステル樹脂が有するジオール単位は、1種類でも、2種類以上の単位を任意の組み合わせと比率で有していてもよく、脂肪族ジオール単位と芳香族ジオール単位を有していてもよい。生分解しやすい点では、脂肪族ジオール単位を有することが好ましく、直鎖脂肪族のジオール単位を有することがより好ましい。
また、ジオール単位は、下記一般式(1)で表されるジオール単位が特に好ましい。
-O-R-O- (1)
式(1)中、Rは炭素数2以上20以下の脂肪族炭化水素基を表す。
で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、成形性、機械強度等の観点から、通常2以上、好ましくは4以上、また、通常20以下、好ましくは16以下、より好ましくは13以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。脂肪族炭化水素基として特に好ましい基は、炭素数4の脂肪族炭化水素基である。
式(1)で表される脂肪族ジオール単位を与える脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が好ましく、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール及びエチレングリコールがより好ましく、1,4-ブタンジオールが特に好ましい。
ポリエステル樹脂に含まれるジオール単位は、芳香族ジオール単位を有していてもよい。芳香族ジオール単位を与える芳香族ジオール成分の具体例としては、例えば、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸等が挙げられる。芳香族ジオール単位となる原料の芳香族ジオール成分は、芳香族ジオール化合物の誘導体でもよい。また、複数の脂肪族ジオール化合物及び/又は芳香族ジオール化合物が互いに脱水縮合した構造を有する化合物であってもよい。
ポリエステル樹脂が有するジオール単位は、上述の好ましいジオール単位を全ジオール単位に対し、30モル%以上含まれることが好ましく、50モル%以上含まれることがより好ましい。また、上限は、100モル%である。
<ジカルボン酸単位>
ポリエステル樹脂が有するジカルボン酸単位は、脂肪族でも芳香族でもよい。また、ポリエステル樹脂が有するジカルボン酸単位は、1種類でも、2種類以上の単位を任意の組み合わせと比率で有していてもよく、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位を有していてもよい。生分解しやすい点では、脂肪族ジカルボン酸単位を有することが好ましい。
ジカルボン酸単位が有する炭素数は、生分解性、成形性、機械強度の観点から、2以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、また、一方で、22以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、13以下であることがさらに好ましい。
ジカルボン酸単位は、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸単位であることが好ましい。
-OC-R-CO- (2)
式(2)中、Rは単結合、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基又は炭素数4以上8以下の芳香族炭化水素基若しくは複素芳香族基を表す。
で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上であり、より好ましくは4以上であり、また、一方で、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下、特に好ましくは8以下である。ポリエステル樹脂が、脂肪族ジカルボン酸単位を2種類以上含む場合、脂肪族炭化水素基の組み合わせとしては、炭素数2の脂肪族炭化水素基と炭素数4以上10以下の脂肪族炭化水素基との組み合わせが好ましい。
式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、カルボキシル基を含むカルボン酸単位の炭素数が上述の好ましい範囲となる脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル等の誘導体が好ましく、炭素数4以上10以下の脂肪族カルボン酸又はそのアルキルエステル等の誘導体がより好ましい。
好ましい脂肪族ジカルボン単位としては、例えば、シュウ酸単位、マロン酸単位、コハク酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ドデカン二酸単位が挙げられる。これらのうち、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、コハク酸単位及びセバシン酸単位が好ましく、コハク酸単位及びセバシン酸単位がより好ましく、コハク酸単位が特に好ましい。
ポリエステル樹脂は、全ジカルボン酸単位中における上述の好ましいジカルボン酸単位の割合が、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましく、64モル%以上であることが特に好ましく、68モル%以上であることが最も好ましい。なお、上限は100モル%である。ポリエステル樹脂における好ましいジカルボン酸の割合を上記範囲内とすることにより、成形性が向上すると共に、耐熱性、生分解性にも優れた生分解性樹脂組成物を得ることが可能となる。
また、ポリエステル樹脂に脂肪族ジカルボン酸単位が含まれる場合、脂肪族ジカルボン酸単位は、脂肪族ジカルボン酸単位が全ジカルボン酸単位に対し、30モル%以上含まれることが好ましく、40モル%以上含まれることがより好ましい。また、上限は、100モル%である。
また、ポリエステル樹脂に芳香族ジカルボン酸単位が含まれる場合は、芳香族ジカルボン酸単位は、全ジカルボン酸単位に対し、70モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがさらに好ましい。
ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸成分を2種類以上含むことが好ましく、上述の好ましい脂肪族ジカルボン酸成分を2種類以上含むことがより好ましい。この場合、脂肪族ジカルボン酸単位の組み合わせとしては、炭素数4の脂肪族ジカルボン酸単位と炭素数6以上13以下の脂肪族ジカルボン酸単位との組み合わせが好ましく、炭素数4の脂肪族ジカルボン酸単位と炭素数6以上10以下の脂肪族ジカルボン酸単位との組み合わせがより好ましい。具体的には、脂肪族ジカルボン酸単位の組み合わせとしては、コハク酸単位、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ブラシル酸単位の少なくとも何れか1つの単位を含むことが好ましく、これらの中から2種以上のジカルボン酸単位を組み合わせることがより好ましい。
コハク酸単位と組み合わせるジカルボン酸単位としては、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、アジピン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ブラシル酸単位若しくはドデカン二酸単位が好ましく、アジピン酸単位若しくはセバシン酸単位との組み合わせがより好ましく、セバシン酸単位との組み合わせがさらに好ましい。
すなわち、具体的には、以下のポリエステル樹脂が好ましい。コハク酸単位を有するポリエステル樹脂としては、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネートセバケート(PBSSe)およびポリブチレンサクシネートアゼレート(PBSAz)などが好ましく、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネートセバケート(PBSSe)およびポリブチレンサクシネートアゼレート(PBSAz)、ポリブチレンサクシネートブラシレート(PBSBr)などの2種以上のジカルボン酸単位を有するポリエステル樹脂がより好ましい。セバシン酸単位を有するポリエステル樹脂としては、ポリブチレンサクシネートセバケート(PBSSe)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)およびポリブチレンセバケートフラノエート(PBSeF)が好ましい。アゼライン酸単位を有するポリエステル樹脂としては、ポリブチレンサクシネートアゼレート(PBSAz)、ポリブチレンアゼレートテレフタレート(PBAzT)などが好ましい。アジピン酸単位を有するポリエステル樹脂としては、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)およびポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が好ましい。ブラシル酸単位を有するポリエステル樹脂としては、ポリブチレンサクシネートブラシレート(PBSBr)およびポリブチレンブラシレートテレフタレート(PBBrT)が好ましい。
コハク酸単位と組み合わせるジカルボン酸単位は、全ジカルボン酸単位に対して、5モル%以上含まれていることが好ましく、10モル%以上含まれていることがより好ましく、15モル%以上含まれていることが更に好ましく、また、一方で、50モル%以下含まれていることがより好ましく、45モル%以下含まれていることがより好ましく、40モル%以下含まれていることが更に好ましい。コハク酸単位以外の脂肪族ジカルボン酸単位を上記範囲内で共重合することで、ポリエステル樹脂の結晶化度を下げることができ、生分解速度を速くすることが可能である。
式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位の炭素数は、通常4以上、8以下であり、好ましくは6以上である。具体的には、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、2,5-フランジイル基等が挙げられる。
式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、特に限定されないが、通常、上述の好ましい炭素数の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体である。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5-フランジカルボン酸等又はその誘導体が挙げられ、中でも、テレフタル酸及び2,5-フランジカルボン酸又はその誘導体が好ましく、2,5-フランジカルボン酸又はその誘導体が更に好ましい。
なお、芳香族ジカルボン酸の誘導体とは、芳香族ジカルボン酸の炭素数1以上4以下の低級アルキルエステル、酸無水物等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体の具体例としては、上述の芳香族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等の低級アルキルエステル;芳香族ジカルボン酸の環状酸無水物;等が挙げられる。中でも、ジメチルテレフタレートが好ましい。
ジカルボン酸単位を有するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸単位の量が異なるポリエステル樹脂を用いてもよく、例えば、ジカルボン酸単位として上述の好ましいジカルボン酸単位のみを含むポリエステル樹脂と、これら以外のジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂とをブレンドして、ポリエステル樹脂における好ましいジカルボン酸単位の割合を上記範囲内に調整することも可能である。
<オキシカルボン酸単位>
ポリエステル樹脂は、オキシカルボン酸単位を含む樹脂であってもよい。
ポリエステル樹脂に含まれるオキシカルボン酸単位は、下記一般式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸単位が好ましい。
-O-R-CO- (3)
式(3)中、Rは炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基を表す。
で表される脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは8以下である。
式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸単位は、特に限定されず、例えば、乳酸単位、グリコール酸単位、3-ヒドロキシ酪酸単位、2-ヒドロキシ-n-酪酸単位、2-ヒドロキシカプロン酸単位、6-ヒドロキシカプロン酸単位、2-ヒドロキシ-3,3-ジメチル酪酸単位、2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸単位、2-ヒドロキシイソカプロン酸単位、3-ヒドロキシプロピオン酸単位、4-ヒドロキシ酪酸、5-ヒドロキシ吉草酸単位、6-ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシ酸単位などが挙げられる。これらの脂肪族オキシカルボン酸単位は、その低級アルキルエステル若しくは分子内エステル等の誘導体等を原料として用いてもよい。また、これらの単位に光学異性体が存在する場合には、D体、L体のいずれでもよい。これらの中で好ましいものは、グリコール酸単位、3-ヒドロキシ酪酸単位である。
ポリエステル樹脂がこれらの脂肪族オキシカルボン酸単位を含む場合、その含有量は、成形性の観点から、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対して、20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。なお、ポリエステル樹脂は、脂肪族オキシカルボン酸単位を含まなくても構わない。
ポリエステル樹脂に含まれるオキシカルボン酸単位は、芳香族オキシカルボン酸単位を含んでいてもよい。
芳香族オキシカルボン酸単位の具体例としては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸単位、p-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸単位等が挙げられる。芳香族オキシカルボン酸単位を与える原料は、芳香族オキシカルボン酸化合物の誘導体を用いてもよい。また、複数の芳香族オキシカルボン酸化合物及び/又は芳香族オキシカルボン酸化合物が互いに脱水縮合した構造を有する化合物(オリゴマー)であってもよい。すなわち、原料物質としてオリゴマーを用いてもよい。
これらの芳香族化合物単位を与える芳香族化合物成分に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、及びラセミ体のいずれを用いてもよい。また、芳香族化合物成分としては、芳香族化合物単位を与えることができれば、上記の例に限定されるものではない。
<3官能以上の単位>
ポリエステル樹脂は、3官能以上の脂肪族多価アルコールと3官能以上の脂肪族多価カルボン酸若しくはその酸無水物又は3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分とを共重合することによって、溶融粘度が高められた樹脂であってもよい。これらの共重合成分を用いる場合は、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物が挙げられる。4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに大別される。何れのタイプも使用可能であるが、成形性、機械強度、成形体外観等の観点からリンゴ酸等の(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプが好ましく、リンゴ酸がより好ましい。
また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸成分は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプに大別される。何れのタイプも使用可能であるが、カルボキシル基を複数有するものが好ましく、クエン酸及び酒石酸がより好ましい。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。
ポリエステル樹脂が上述の3官能以上の成分由来の構成単位を含む場合、その含有量は、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位中に含まれる量として、0.01モル%以上が好ましく、また、一方で、5モル%以下が好ましく、2.5モル%以下が更に好ましい。なお、ポリエステル樹脂は、上述の3官能以上の成分由来の構成単位を含まなくても構わない。
<ポリエステル樹脂の種類>
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂としては、脂肪族ジオール単位及び脂肪族ジカルボン酸単位を主構成単位として含む脂肪族ポリエステル樹脂(以下、「脂肪族ポリエステル樹脂(A)」と言う場合がある。)、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の繰り返し単位の少なくとも一部が、芳香族化合物単位に置き換えられた樹脂である脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)、脂肪族ポリエステル樹脂(A)の繰り返し単位が芳香族化合物単位に置き換えられた樹脂である芳香族ポリエステル樹脂(ポリアリレート)(C)が好ましく、生分解性が高い点で、脂肪族ポリエステル樹脂(A)がより好ましい。
<脂肪族ポリエステル樹脂(A)>
脂肪族ポリエステル樹脂(A)としては、上記の式(1)で表される脂肪族ジオール単位とRが脂肪族炭化水素基である上記の式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位を含む脂肪族ポリエステル樹脂;上記の式(1)で表される脂肪族ジオール単位とRが脂肪族炭化水素基である上記の式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位と上記の式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を含む脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
なお、式(1)で表される脂肪族ジオール単位、Rが脂肪族炭化水素基である式(2)で表される脂肪族ジカルボン酸単位及び式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸単位については、前述したとおりである。また、脂肪族ポリエステル(A)として好ましい脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族ポリエステル樹脂(A)が3官能以上の脂肪族多価アルコールと3官能以上の脂肪族多価カルボン酸若しくはその酸無水物又は3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分とを共重合されている場合についても前述したとおりである。
脂肪族ポリエステル樹脂(A)としては、生分解性が高いことから、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネートセバケート(PBSSe)、ポリブチレンサクシネートアゼレート(PBSAz)、ポリブチレンブラシレートテレフタレート(PBSBr)等のポリブチレンサクシネート系樹脂が特に好ましい。
<脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)>
脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)は、上述の脂肪族ポリエステル樹脂(A)の繰り返し単位の少なくとも一部が、芳香族化合物単位に置き換えられた樹脂である。脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)としては、上述の式(1)で表される脂肪族ジオール単位及びRが芳香族基である上述の式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を含む、脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂;式(1)で表される脂肪族ジオール単位、Rが芳香族炭化水素基である上述の式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位及び式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を含む、脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。
なお、式(1)で表される脂肪族ジオール単位、Rが芳香族炭化水素基である式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位及び式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸単位については、前述したとおりである。また、脂肪族-芳香族ポリエステル(B)として好ましい脂肪族ポリエステルについても、脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)が、3官能以上の脂肪族多価アルコールと3官能以上の脂肪族多価カルボン酸若しくはその酸無水物又は3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸成分とを共重合されている場合も含め、前述したとおりである。
脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)は、芳香族ジオール単位を含んでいてもよい。すなわち、脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)は、芳香族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位;芳香族ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位;脂肪族ジオール単位と芳香族のジオール単位と芳香族ジカルボン酸単位;脂肪族ジオール単位と芳香族のジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位を有するポリエステル樹脂であってもよい。なお、ここで、芳香族ジオール成分の具体例については、上述したとおりである。
脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)は、芳香族オキシカルボン酸単位を含んでいてもよい。芳香族オキシカルボン酸単位を与える芳香族オキシカルボン酸成分の具体例としては、上述したとおりである。
脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)としては、芳香族単位として、芳香族ジカルボン酸単位を有することが好ましく、この場合の芳香族ジカルボン酸単位の含有量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、10モル%以上、80モル%以下であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸単位としては、テレフタル酸単位又は2,5-フランジカルボン酸単位を用いることが好ましい。具体的には、脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)としては、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)やポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、ポリブチレンセバケートテレフタレート(PBSeT)、ポリブチレンアゼレートテレフタレート(PBAzT)、ポリブチレンブラシレートテレフタレート(PBBrT)等のポリブチレンテレフタレート系樹脂、及びポリブチレンアジペートフラノエート(PBAF)やポリブチレンサクシネートフラノエート(PBSF)、ポリブチレンセバケートフラノエート(PBSeF)、ポリブチレンサクシネートセバケートフラノエート(PBSSeF)等のポリフランジカルボキシレート系樹脂が好ましい。
脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)としては、ジカルボン酸単位として、コハク酸単位、アジピン酸単位及びセバシン酸単位を有する樹脂が好ましい。そこで、脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)としては、PBST、PBSF、PBSSeFなどのポリブチレンサクシネート系樹脂;PBAT、PBAF、PBASeFなどのポリブチレンアジベート系樹脂;及びPBSeT、PBSeFなどのポリブチレンセバケート系樹脂;PBAzT(ポリブチレンアゼレートテレフタレート)、PBAzF(ポリブチレンアゼレートフラノエート)が好ましく、PBST、PBSF、PBSSeFなどのポリブチレンサクシネート-芳香族ジカルボン酸系樹脂が更に好ましい。
<芳香族ポリエステル樹脂(C)>
芳香族ポリエステル樹脂(ポリアリレート)(C)は、上述の脂肪族ポリエステル樹脂(A)の繰り返し単位が、芳香族化合物単位に置き換えられた樹脂である。
芳香族ポリエステル樹脂(C)としては、上述の脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)が含んでいてもよい芳香族ジオール単位とRが芳香族炭化水素基である上述の式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位を含む芳香族ポリエステル樹脂;脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)が含んでいてもよい芳香族ジオール単位、Rが芳香族炭化水素基である上述の式(2)で表される芳香族ジカルボン酸単位及び脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂(B)が含んでいてもよい芳香族オキシカルボン酸単位を含む芳香族ポリエステル樹脂等が好ましい。
芳香族ポリエステル樹脂(C)に含まれる各単位等については、上述したとおりである。
<ポリエステル樹脂の製造方法>
ポリエステル樹脂の製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。以下に、ジオール単位およびジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂の製造方法を例に詳述する。
ジオール単位およびジカルボン酸単位を含むポリエステル樹脂は、通常、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行うことによって更に重合度を高める方法が採用される。
ポリエステル樹脂の製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造されるポリエステル樹脂が目的とする組成を有するように、ジオール成分及びジカルボン酸成分の使用量を調整する。通常、ジオール成分とジカルボン酸成分とは、実質的に等モル量で反応するが、ジオール成分は、エステル化反応中に留出することから、通常はジカルボン酸成分よりも1モル%~20モル%過剰に用いる。
ポリエステル樹脂に、オキシカルボン酸単位、多官能成分単位等の成分を共重合させる場合、そのオキシカルボン酸単位及び多官能成分単位についても、それぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマー又はオリゴマー)を反応に供すればよい。このとき、これらの成分を反応系に導入する時期及び方法に制限はなく、ポリエステル樹脂を製造できる限り任意である。
例えば、ポリエステル樹脂に、オキシカルボン酸を共重合させる場合には、オキシカルボン酸成分を導入する時期は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応前であれば特に限定されず、予め触媒をオキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、原料仕込み時に触媒を反応系に導入すると同時に混合する方法等が挙げられる。
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマー又はオリゴマーと同時に仕込むようにしても、或いは、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマー又はオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ましい。
ポリエステル樹脂は、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては、公知のポリエステル樹脂の製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物等が挙げられる。中でも、価格、入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム又はテトラブトキシゲルマニウム等が好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタン等の有機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格、入手の容易さなどから、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等が好ましい。
また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。なお、触媒は1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の組み合わせと比率で併用してもよい。
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、また、通常3重量%以下、好ましくは1.5重量%以下である。触媒量を上記範囲内とすることで、製造コストを抑えつつ十分な触媒効果が得られ、かつ、得られるポリマーの着色又は耐加水分解性の低下を抑制することができる。
触媒の導入時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を導入する場合は、原料仕込み時に乳酸、グリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマー又はオリゴマーと同時に導入するか、又は脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特に、重合速度が大きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましい。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応する際の温度、重合時間、圧力等の反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。但し、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、また、一方で、通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で反応させる。反応圧力は、通常、常圧~10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、通常1時間以上であり、また、一方で、通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下である。反応条件を上記範囲内とすることで、不飽和結合の過剰生成によるゲル化が抑制され、重合度をコントロールすることができる。
また、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応における圧力は、通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.03×10Pa以上であり、また、一方で、通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下で行うことが望ましい。また、この時の反応温度は、通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、また、一方で、通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応時間は、通常2時間以上であり、また、一方で、通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。反応条件を上記範囲内とすることで、不飽和結合の過剰生成によるゲル化が抑制され、重合度をコントロールすることができる。
ポリエステル樹脂の製造時には、カーボネート化合物、ジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。この場合、鎖延長剤の量は、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対する、カーボネート結合又はウレタン結合の割合として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。本実施形態に係る生分解性樹脂組成物の生分解性の観点から、ポリエステル樹脂を構成する全構成単位に対し、カーボネート結合は1モル%未満であることが好ましく、0.5モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましい。ウレタン結合は0.5モル%以下であることが好ましく、0.3モル%以下であることがより好ましく、0.12モル%以下であることが更に好ましく、0.05モル%以下であるのが特に好ましい。この量を、ポリエステル樹脂組成物に対する重量%に換算すると、0.9重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.2重量%以下がさらに好ましく、0.1重量%以下が特に好ましい。特に、ウレタン結合量を上記範囲内とすることで、成膜工程等において、ウレタン結合分解に起因する発煙及び臭気が抑制され、また、溶融膜中の発泡による膜切れが抑制されるため成形安定性を確保することができる。なお、ポリエステル樹脂中のカーボネート結合量又はウレタン結合量は、H-NMR及び13C-NMR等のNMR(核磁気共鳴スペクトル装置)による測定結果から算出することができる。
鎖延長剤としてのカーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導されるカーボネート化合物も使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合体、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネート等が例示される。
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステル等を使用してもよい。
珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステル樹脂についても、従来公知の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、通常、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒にて反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオール成分とジカルボン酸成分とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂に、鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20000以上のプレポリマーは、少量の鎖延長剤の使用により、溶融状態のような苛酷な条件下でも、残存触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステル樹脂を製造することができる。ここで、ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から単分散ポリスチレンによる換算値として求められる。
そこで、例えば、鎖延長剤として上述のジイソシアネート化合物を用いて、ポリエステル樹脂を更に高分子量化する場合におけるプレポリマーの重量平均分子量は、20000以上が好ましく、40000以上がより好ましい。重量平均分子量が高いと、高分子量化するためのジイソシアネート化合物の使用量が少量で済むため、耐熱性が低下し難い。このようにして、ジイソシアネート化合物に由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン結合を有するポリエステル樹脂が製造される。
鎖延長時の圧力は、0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましく、0.07MPa以上が更に好ましい。また、一方で、鎖延長時の圧力は、1MPa以下が好ましく、0.5MPa以下がより好ましく、0.3MPa以下が更に好ましい。そして、鎖延長時の圧力は、常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、190℃以上が更に好ましく、200℃以上が特に好ましい。また、一方で、鎖延長時の反応温度は、250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下が更に好ましい。反応温度を上記範囲内とすることで、反応液が適切な粘度に維持されるため、均一な反応が可能となり、高い攪拌動力を要することなく十分に反応液を攪拌することができ、また、ポリエステル樹脂のゲル化又は分解の併発を抑制することができる。
鎖延長反応を行う時間は、0.1分以上が好ましく、1分以上がより好ましく、5分以上が更に好ましい。また、一方で、鎖延長反応を行う時間は、5時間以下が好ましく、1時間以下がより好ましく、30分以下が更に好ましく、15分以下が特に好ましい。鎖延長時間を上記範囲内とすることで、所望の分子量に鎖延長させることができ、また、ポリエステル樹脂のゲル化又は分解の併発を抑制することができる。
<脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)>
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有される樹脂としては、脂肪族オキシカルボン酸樹脂も好ましく用いられる。脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)は、脂肪族オキシカルボン酸単位を主構成単位とするものである。脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)としては、例えば、上述の式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸単位を含む脂肪族オキシカルボン酸樹脂等が挙げられる。
脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)における、脂肪族オキシカルボン酸単位及び当該単位を与える成分は、上述の脂肪族ポリエステル樹脂(A)における脂肪族オキシカルボン酸単位及び脂肪族オキシカルボン酸成分と同様に定義され、好ましい態様も同様である。
脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)としては、具体的には、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)又はポリカプロラクトン(PCL)が好ましく、ポリカプロラクトンがより好ましい。
また、生分解性に影響を与えない範囲であれば、脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)には、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入してもよい。
脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)の製造方法は、特に限定されるものではなく、オキシカルボン酸の直接重合法、あるいは環状体の開環重合法等公知の方法で製造することができる。
脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)としては、以下に説明するポリヒドロキシアルカノエート(E)が好ましい。
<ポリヒドロキシアルカノエート(E)>
本実施形態において好適に用いられるポリヒドロキシアルカノエート(E)は、一般式:[-CHR-CH-CO-O-](式中、Rは炭素数1以上15以下のアルキル基である。)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリエステルであり、3-ヒドロキシブチレート単位と3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主たる構成単位として含む共重合体である。
ポリヒドロキシアルカノエート(E)は、成形性、熱安定性の観点から、構成成分として3-ヒドロキシブチレート単位を80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。また、ポリヒドロキシアルカノエート(E)は、微生物によって生産されたものが好ましい。ポリヒドロキシアルカノエート(E)の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂等が挙げられる。
特に、成形加工性及び得られる成形体の物性の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)共重合樹脂、すなわち、PHBHが好ましい。
ポリヒドロキシアルカノエート(E)において、3-ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)と、共重合している3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)等のコモノマーとの構成比、すなわち、共重合樹脂中のモノマーのモル比は、成形加工性及び成形体品質等の観点から、3-ヒドロキシブチレート/コモノマーは、97/3以上であることが好ましく、95/5以上であることがより好ましく、また、一方で、80/20以下であることが好ましく、85/15以下であることがより好ましい。モノマー比率を上記範囲内とすることにより、成形加工温度と熱分解温度との開きが大きくなるため、成形加工が容易となり、また、結晶化速度が適切な範囲となり、生産性を確保することができる。
ポリヒドロキシアルカノエート(E)中の各モノマー比率は、以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定できる。
乾燥させた20mgのポリヒドロキシアルカノエートを試料容器に入れ、これに2mlの硫酸/メタノール混液(15/85(質量比))と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、ポリヒドロキシアルカノエートを分解させることにより、メチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置する。4mlのジイソプロピルエーテルを添加して、十分に混合した後、上清中の試料分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析することによって、共重合樹脂中の各モノマーの比率を求めることができる。
ポリヒドロキシアルカノエート(E)は、例えば、Alcaligenes eutrophusにAeromonas caviae由来のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、寄託番号FERM BP-6038(原寄託FERM P-15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生されることができる。
ポリヒドロキシアルカノエート(E)としては、市販品を用いることもできる。3-ヒドロキシブチレート単位及び3-ヒドロキシヘキサノエート単位を主構成単位として含むポリヒドロキシアルカノエート(E)の市販品としては、カネカ社製「PHBH X331N」、「PHBH X131A」、「PHBH X151A」、「PHBH 151C」等を用いることができる。
本実施形態においては、上述のポリヒドロキシアルカノエート(E)を含め、脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)は1種類に限らず、構成単位の種類、構成単位比、製造方法、物性等の異なる2種類以上の脂肪族オキシカルボン酸樹脂(D)をブレンドして用いることができる。
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂は、各構成単位として、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の組み合わせと比率で用いてもよい。また、ジオール単位、ジカルボン酸単位及び脂肪族オキシカルボン酸単位は、石油から誘導された化合物由来であっても、植物原料から誘導された化合物由来であっても構わないが、植物原料から誘導された化合物由来であることが環境問題に配慮できることから望ましい。
なお、これらの芳香族化合物単位を与える芳香族化合物成分に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、及びラセミ体のいずれを用いてもよい。また、芳香族化合物成分としては、芳香族化合物単位を与えることができれば、上記の例に限定されるものではない。芳香族化合物成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(その他の樹脂)
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂以外のその他の樹脂が含まれていてもよい。
その他の樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を使用することができる。例えば、ポリウレタン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアクリル樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂;アクリロニトリル-スチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;LDPE、MDPE、HDPE、LLDPE、カルボキシル変性ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブチレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリスチレン樹脂;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6T等のポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種類のみでも、2種類以上であっても構わない。
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物がその他の樹脂を含む場合、生分解性樹脂組成物には、生分解性に優れることから、上述の好ましい樹脂が5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましい。本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含まれる樹脂は、上述の好ましい樹脂のみであることが好ましい。但し、上述のとおり、本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有される樹脂は、上述の窒素含有無機塩との樹脂組成物とすることにより、生分解性が向上すれば、特に限定されるものではなく、上述の好ましい樹脂以外の樹脂からなる樹脂でも構わない。
<樹脂の物性>
ポリエステル樹脂の30℃における還元粘度ηsp/cは、用途、加工方法等に応じて適宜選択すればよい。具体的には、樹脂の30℃における還元粘度は、0.5dL/g以上であることが好ましく、0.8dL/g以上であることがより好ましく、1.0dL/g以上であることが更に好ましく、1.2dL/g以上であることが特に好ましく、また、一方で、4.0dL/g以下であることが好ましく、3.0dL/g以下であることがより好ましく、2.5dL/g以下であることが更に好ましく、2.3dL/g以下であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂の還元粘度を上記範囲内とすることにより、成形体に加工した際の機械物性を確保することができ、また、成形加工時の生分解性樹脂組成物の溶融粘度が、押出機、射出機等の成形機に過度な負荷をかけない程度となり、生産性を確保することができる。
樹脂の還元粘度は、通常、以下の方法により測定することができる。先ず、樹脂を溶媒に溶解させ、濃度c(g/dL)の樹脂溶液を調製する。次いで、毛細管粘度計(ウベローデ粘度計)を用いて、温度30.0℃±0.1℃の条件で溶媒の通過時間tと樹脂溶液の通過時間tを測定し、次式(i)に基づいて相対粘度ηrelを算出する。そして、相対粘度ηrelから、次式(ii)に基づいて比粘度ηspを求める。
ηrel=t/t ・・・(i)
ηsp=ηrel-1 ・・・(ii)
得られた比粘度ηspを濃度c(g/dL)で割ることにより、還元粘度ηsp/cを求めることができる。なお、通常、この値が高いほど分子量が大きい。
ポリエステル樹脂の分子量は、通常、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する。本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有される樹脂は、成形性と機械強度の観点から、単分散ポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量(Mw)が以下の範囲であることが好ましい。すなわち、ポリエステル樹脂の分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、50,000以上であることが特に好ましい。また、一方で、2,500,000以下であることが好ましく、1,000,000以下であることがより好ましく、800,000以下であることが更に好ましく、600,000以下であることが特に好ましく、500,000以下であることが殊更好ましく、400,000以下であることが最も好ましい。
また、特に、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の重量平均分子量(Mw)については、200,000以上であることが好ましく、250,000以上であることがより好ましく、300,000以上であることが更に好ましい。また、一方で、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,500,000以下であることが好ましく、2,000,000以下であることがより好ましく、1,000,000以下であることが更に好ましい。
ポリエステル樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(1999年)に基づいて、190℃、荷重2.16kgで測定した値で評価できる。本実施形態に係る生分解性樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂のMFRは、成形性と機械強度の観点から、以下の範囲であることが好ましい。すなわち、0.1g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましい。また、一方で、樹脂のMFRは、100g/10分以下であることが好ましく、80g/10分以下であることがより好ましく、50g/10分以下であることが更に好ましく、40g/10分以下であることが特に好ましく、30g/10分以下であることが最も好ましい。なお、樹脂のMFRは、分子量等により調整することが可能である。
ポリエステル樹脂の融点は、以下の範囲内とすることにより、良好な成形性を確保することができる。すなわち、ポリエステル樹脂の融点は、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、75℃以上が更に好ましく、80℃以上が特に好ましく、また、一方で、270℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましく、150℃以下が特に好ましく、140℃以下が殊更に好ましく、130℃以下が最も好ましい。なお、ポリエステル樹脂に融点が複数存在する場合には、少なくとも1つの融点が上記範囲内にあることが好ましい。
また、特に、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂の融点については、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、また、一方で、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、160℃未満が特に好ましい。
ポリエステル樹脂の引張弾性率は、良好な成形加工性及び耐衝撃強度を確保することができることから、50MPa以上が好ましく、100MPa以上であることがより好ましく、また、一方で、2000MPa以下であることが好ましく、500MPa以下であることがより好ましい。引張弾性率は、以下の方法により測定することができる。
樹脂の熱プレスシートを作製し、8号ダンベル型に打ち抜いて試験片を作製する。具体的には、150mm×150mmのPTFEテープの上に、表面離型処理された金枠(SUS304、外径110mm、内径70mm、厚み0.2mm)を置き、この金枠の内側に樹脂を1.6g測り採り、その上に更に150mm×150mmのPTFEテープを載せる。鉄板(160mm×160mm、厚み3mm)2枚の間に、このPTFFテープで挟まれた樹脂を挟持させた状態で、熱プレス機を用いて熱プレスし、続けて冷却プレス機を用いて冷却プレスして、70mm×70mm×厚み0.2mmの熱プレスシートを得る。熱プレス温度は180℃、熱プレス時間は予熱2分間、プレス2分間とする。また、冷却プレス温度は20℃、冷却プレス時間は2分間とする。この熱プレスシートを、50mm/minの速度で一軸伸長し、得られた応力ひずみ曲線の初期勾配を引張弾性率として求める。
ポリエステル樹脂の融点や引張弾性率の調整法は、特に限定されない。共重合成分の種類やその共重合比などにより、調整することができる。
樹脂は、ガラス転移温度以上の温度になると分子鎖が運動しやすくなる。そこで、樹脂を生分解する場合、海洋中などの樹脂の置かれた環境の温度よりガラス転移温度が低いことにより、樹脂の結晶構造が緩み、分子主鎖が回転や振動ができるようになり、生分解が進みやすいと考えられる。このため、ガラス転移温度が低い樹脂は、生分解されやすいと推定される。特に、樹脂のガラス転移温度が40℃以下であると、海水中で窒素含有無機塩によって、より生分解されやすくなると考えらえる。従って、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは25℃以下、特に好ましくは20℃以下である。なお、ガラス転移温度の測定は、以下の方法により行うことができる。
アルミニウム製の試料容器に樹脂を10mg入れ、測定サンプルとする。次いで、DSCを用いて、窒素雰囲気下で、10℃/minの速度で昇温し、DSCチャートを得る。このチャートで融点を示すピークよりも低温側に存在するベースラインシフトからガラス転移温度を求める。具体的には、低温側のベースラインと変曲点の接点の交点をガラス転移温度とする。
ポリエステル樹脂の酸価は、加水分解が起こり難くなり、保存安定性に優れる点から低いことが好ましい。そこで、具体的には、250eq/t以下であることが好ましく、150eq/t以下であることがより好ましく、100eq/t以下であることがさらに好ましく、50eq/t以下が特に好ましい。なお、酸価は、以下の方法により測定することができる。
樹脂を0.4g精秤し、これにベンジルアルコール25mLを加え、195℃に加熱して撹拌することにより溶解させる。樹脂が溶解したら、樹脂溶液が入った容器を氷浴で冷却し、この容器内にエタノール2mLを加える。0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液を用いて滴定を行う(滴定量をA(ml)とする。)。
次にベンジルアルコールのみで同様の測定を行い、ブランク値(B(ml))とした。酸価を以下の式から算出する。
末端酸価(μeq/g)=(A-B)×F×10/W
A(ml):測定滴定量
B(ml):ブランク滴定量
F:0.01N NaOHベンジルアルコールyour期のファクター
W(g):サンプル重量
[その他成分]
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、本発明の効果を大幅に損なわない限りにおいて、フィラー(充填剤)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、加水分解防止剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、耐候剤、熱安定剤、難燃剤、離型剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、分散助剤、各種界面活性剤、スリップ剤、鮮度保持剤、抗菌剤等の各種添加剤等のその他成分を含んでいてもよい。これらの成分を含む場合、その成分は、1種類のみでも、2種類以上を含んでもよい。
生分解性樹脂組成物中にその他成分が含まれる場合の含有量は、生分解性樹脂組成物の特性を損なわない観点から、生分解性樹脂組成物の総量に対して、40重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることが更に好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。なお、その他成分の含有量の下限は特に限定されない。
[生分解性樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂、窒素含有無機塩及び必要に応じてその他樹脂やその他成分を配合することにより得られる。生分解性樹脂組成物の製造は、例えば、各成分を、所定の割合で同時に又は任意の順序で配合し、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合又は混練し、好ましくは溶融混練することにより行うことができる。或いは、ポリエステル樹脂と窒素含有無機塩とを溶媒中に溶解又は分散させ、溶媒を除去することにより、製造することもできる。
生分解性樹脂組成物の生分解度及び生分解速度、特に初期生分解速度を向上させる観点からは、生分解性樹脂組成物中、窒素含有無機塩が均一に分散していることが好ましい。そこで、生分解性樹脂組成物は、混練により製造することが好ましく、溶融混錬により製造することがより好ましい。
混練に使用する混練機は溶融混練機であってもよい。また、押出機は、二軸押出機、単軸押出機のいずれでもよいが、二軸押出機がより好ましい。
溶融混練を行う場合、溶融混練温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上がよく、また、一方で、好ましくは220℃以下、より好ましくは210℃以下がよい。この温度範囲であると、短時間で溶融混練することができ、樹脂の劣化や色調の悪化等が起こり難く、また、耐衝撃性、耐湿熱性等の実用面での物理特性がより優れた樹脂組成物となりやすい。
溶融混練時間は、窒素含有無機塩が生分解性樹脂中に均一に分散し得る限り特に限定されないが、同様に、樹脂の劣化等が起こり難いことから、短時間で行うことが望ましい。具体的には、溶融混練時間は、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上であり、また、一方で、好ましくは20分以下、より好ましくは15分以下である。
[生分解性樹脂組成物の生分解度]
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、生分解性を有する。本発明の樹脂組成物は、特に、樹脂が生分解し難いとされる海水中で生分解性を有すること(海洋生分解性樹脂組成物)が好ましい。本発明の樹脂組成物が海水中でも生分解性を発現する理由は、以下のように推定される。通常、海水中では、微生物量や種類が少ない。このため、海水中ではカビなどが繁殖し難く、海水中での生分解にはバイオフィルムの形成が重要と推測される。さらに海水中では、生命維持に必須な元素である窒素が乏しい環境にある。そのため、窒素含有無機塩の存在により、海水中における微生物の細胞増殖や活性化させ、バイオフィルムの形成が促され、生分解性が促進されると推測される。
本明細書において、生分解度は、理論的酸素要求量(ThOD)に対する生物学的酸素要求量(BOD)の比率として算出される。
例えば、海水中での生分解に関しては、ISO 14851:1999(プラスチック-水系培養液中の好気的究極生分解度の求め方-発生二酸化炭素量の測定による方法)に準拠して測定され;土壌中の生分解に関してはISO 17556:2003(プラスチック-呼吸計を用いた酸素消費量又は発生した二酸化炭素量の測定による土壌中での好気的究極生分解度の求め方)に準拠して測定される。
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、生分解性試験開始後任意の時点における生分解度が、本実施形態に係る生分解性樹脂組成物から上述の窒素含有無機塩を除いた組成物(以下、「基準組成物」と称することがある。)の生分解度の1.0倍を超えることが好ましい(以下、基準組成物の生分解度に対する生分解度の上昇倍率を「生分解向上度」と称することがある。)。具体的には、上記規格に準拠した生分解性試験開始後28日目において、本実施形態に係る生分解性樹脂組成物の生分解向上度は、1.1倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることが更に好ましく、2.0倍以上であることが特に好ましく、2.5倍以上であることが最も好ましい。
なお、本明細書において、生分解度が高いとは、生分解性試験開始後任意の時点における生分解性樹脂組成物の生分解向上度が上述の好ましい向上度であることを意味する。
[ポリエステル樹脂の生分解方法]
上述のとおり、窒素含有無機塩により、ポリエステル樹脂の生分解を促進することができることから、本実施形態に係る生分解樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の生分解方法に適用することができる。また、特にポリエステル樹脂の海水中における生分解を促進することができることから、本実施形態に係る生分解樹脂組成物は、ポリエステル樹脂の生分解方法に適用することができる。すなわち、海水中で、窒素含有無機塩の存在下でポリエステル樹脂を生分解させる方法に適用することができる。ここで、この方法に好適なポリエステル樹脂、窒素含有無機塩等については、先述のとおりである。
[成形体]
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形することができる。成形法としては、例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形、共押出成形(インフレ法又はTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、熱プレス成形、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形)、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。中でも、好適には、射出成形、押出成形、圧縮成形又は熱プレス成形が適用され、より好適には射出成形又は押出成形が適用される。具体的な形状としては、シート、フィルム、容器への適用が好ましい。
また、本実施形態に係る生分解性樹脂組成物を成形してなる成形体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/摩耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種の二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
[用途]
本実施形態に係る生分解性樹脂組成物は、各種食品、薬品、雑貨等の液状物、粉粒物、固形物等を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において好適に用いられる。具体的用途としては、射出成形体(例えば、生鮮食品のトレー、ファーストフードの容器、コーヒーカプセルの容器、カトラリー、野外レジャー製品等)、押出成形体(例えば、フィルム、シート、釣り糸、漁網、植生ネット、2次加工用シート、保水シート等)、中空成形体(ボトル等)等が挙げられる。更に、その他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、育苗ポット、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙、医療用として手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル等のDDS、創傷被覆材等が挙げられる。当該成形体は、食品包装用フィルム、生鮮食品のトレー、ファーストフードの容器、弁当箱等の食品用向けの容器として特に好適である。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明の内容を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件又は評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
<樹脂の合成>
(PBSSeの合成)
1,4-ブタンジオール(100.1g)、コハク酸(75.0g)、セバシン酸(32.1g)、トリメチロールプロパン(0.34g)及びチタンテトラブトキシド(0.50g)を窒素下で、200℃で2時間攪拌しながら加熱した。続けて、減圧しながら250℃まで昇温し、5時間15分反応させて得られたポリマーをストランド状に水中に抜き出し、カッティングすることにより、ペレット状のPBSSeを得た。
H-NMR(核磁気共鳴スペクトル装置)により求めたPBSSeのコハク酸由来の単位/セバシン酸由来の単位のモル比は、80/20であった。また、下記測定方法に従って測定したPBSSeの還元粘度は、1.8dL/gであり、ガラス転移温度は-50℃であり、引張弾性率は280MPaであり、酸価は28μeq/gであった。
<窒素含有無機塩>
窒素含有無機塩として、以下のものを使用した。
塩化アンモニウム(分子量53.49)
炭酸アンモニウム(分子量96.09)
硝酸マグネシウム・六水和物(分子量256.41)
亜硝酸ナトリウム(分子量69.00)
<その他の化合物>
その他の化合物として、以下のものを使用した。
ピロリン酸二水素ナトリウム(分子量221.94)
窒化ホウ素(分子量24.82)
<還元粘度の測定方法>
フェノールとテトラクロロエタンとの1:1(重量比)混合溶媒に、樹脂を0.5g/dLとなるように溶解させ、樹脂溶液を調製した。次いで、ウベローデ粘度管を用い、30℃における樹脂溶液の溶液粘度を測定し、その結果に基づいて還元粘度を算出した。
<ガラス転移温度の測定方法>
アルミニウム製の試料容器に各樹脂を10mg入れ、測定サンプルとした。次いで、日立ハイテクサイエンス(株)社製「DSC6220」を用いて、窒素雰囲気下で、-100℃から160℃まで、10℃/minの速度で昇温し、DSCチャートを得た。このチャートで融点を示すピークよりも低温側に存在するベースラインシフトからガラス転移温度を求めた。具体的には、低温側のベースラインと変曲点の接点の交点をガラス転移温度とした。
<引張弾性率の測定方法>
樹脂の熱プレスシートを作製し、8号ダンベル型に打ち抜いて試験片を作製した。具体的には、150mm×150mmのPTFEテープ(ニチアス株式会社製 ナフロンテープ(登録商標)BTOMBO No.9001、厚さ0.05mm)の上に、表面離型処理された金枠(SUS304、外径110mm、内径70mm、厚み0.2mm)を置き、この金枠の内側に各樹脂を1.6g測り採り、その上に更に150mm×150mmのPTFEテープを載せた。鉄板(160mm×160mm、厚み3mm)2枚の間に、このPTFFテープで挟まれた各樹脂を挟持させた状態で、熱プレス機(株式会社井元製作所製「IMC-180C型」)を用いて熱プレスし、続けて冷却プレス機(株式会社井元製作所製「IMC-181B型」)を用いて冷却プレスして、70mm×70mm×厚み0.2mmの熱プレスシートを得た。熱プレス温度は180℃、熱プレス時間は予熱2分間、プレス2分間とした。また、冷却プレス温度は20℃、冷却プレス時間は2分間とした。この熱プレスシートを、オリエンテック社製「STB-1225L」を用いて50mm/minの速度で一軸伸長し、得られた応力ひずみ曲線の初期勾配を引張弾性率として求めた。
<酸価の測定方法>
樹脂を0.4g精秤し、これにベンジルアルコール25mLを加え、195℃に加熱して撹拌することにより溶解させた。樹脂が溶解したら、樹脂溶液が入った容器を氷浴で冷却し、この容器内にエタノール2mLを加えた。三菱化学(株)製自動的低装置「GT100」で0.01Nの水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液を用いて滴定を行った(滴定量をA(ml)とする。)。
次にベンジルアルコールのみで同様の測定を行い、ブランク値(B(ml))とした。酸価を以下の式から算出した。
末端酸価(μeq/g)=(A-B)×F×10/W
A(ml):測定滴定量
B(ml):ブランク滴定量
F:0.01N NaOHベンジルアルコールyour期のファクター
W(g):サンプル重量
<実施例1~4、比較例1~3>
PBSSeを、粒子径(ふるい分け法)が250μm以下となるように粉砕することにより、粉砕樹脂を得た(比較例1)。粉砕樹脂と窒素含有無機塩またはその他の化合物を、表1に示す割合で合計30mgになるよう混合した(実施例1~4、比較例1~3)。
<生分解性試験>
実施例1~4及び比較例1~3の樹脂又は樹脂組成物の生分解度を、ISO 14851に準拠し、以下の通り測定した。
試料30mgを入れた510mLの褐色瓶に、ISO 14851に準拠した方法で調整した標準試験培養液と海水の混合液100mLを加えた。褐色瓶に圧力センサー(WTW社製、OxiTop(登録商標)-C型)を取り付け、25℃の恒温環境下、28日間試験液をスターラーで攪拌し、BOD測定に基づいて生分解度(%)を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2022157778000001
<実施例5>
PBSSeと塩化アンモニウムを95:5(質量部)になるように混合し、180℃で3分プレスし、フィルムを作製した。
実施例1~4と比較例1~3との比較より、窒素含有無機塩により、ポリエステル樹脂の生分解度が著しく向上することが裏付けられた。比較例2のピロリン酸二水素ナトリウムは、窒素原子が含まれていないため、効果は得られなかった。比較例3の窒化ホウ素は、無機塩でないため、海水中で窒素含有のイオンが生成せず、生分解を促進しなかったと推測される。

Claims (9)

  1. ポリエステル樹脂と、窒素含有無機塩と、を含有し、前記窒素含有無機塩の含有量が0.01重量%以上30重量%以下である、生分解性樹脂組成物。
  2. 前記窒素含有無機塩がアンモニウム塩、硝酸塩、及び亜硝酸塩の少なくとも何れかを含む請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
  3. 前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が40℃以下である、請求項1又は2に記載の生分解性樹脂組成物。
  4. 前記ポリエステル樹脂が、炭素数が4~22のジカルボン酸単位を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の生分解性樹脂組成物。
  5. 前記ポリエステル樹脂が2種類以上のジカルボン単位を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の生分解性樹脂組成物。
  6. 前記ポリエステル樹脂が、炭素数が4~10の直鎖脂肪族のジオール単位を有する、請求項1~5の何れか1項に記載の生分解性樹脂組成物。
  7. 前記ポリエステル樹脂が脂肪族ポリエステル樹脂である、請求項1~6の何れか1項に記載の生分解性樹脂組成物。
  8. 請求項1~7の何れか1項に記載の生分解性樹脂組成物を含む、成形体。
  9. ポリエステル樹脂を生分解させる方法であって、海水中で、ガラス転移温度が40℃以下のポリエステル樹脂を、窒素含有無機塩の存在下で生分解させる、ポリエステル樹脂の生分解方法。
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