JP2021120352A - フルオロオレフィンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)から液相において効率的にフルオロオレフィンを製造する方法の提供。【解決手段】温度および圧力が調整可能な反応器内で、炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するHFCまたはHCFCを液相でアルカリ水溶液と接触させ、HFCまたはHCFCを脱ハロゲン化水素させて、フルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法であって、反応器内の温度および圧力を、HFCまたはHCFCの蒸気圧曲線より上、かつフルオロオレフィンの蒸気圧曲線より下となる条件に調整する製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、フルオロオレフィン、具体的には、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィンを液相において効率的に製造する方法に関する。
近年、洗浄剤、冷媒、発泡剤、溶剤、およびエアゾール用途等にハイドロフルオロカーボンやハイドロクロロフルオロカーボンが用いられている。しかしながら、これらの化合物は、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。そこで、地球温暖化係数の小さい化合物としてハロゲン化オレフィンが注目されている。
ハロゲン化オレフィンの製造方法の一つとして、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させる反応が知られている。
例えば、特許文献1には、XCF2CF2CHClYを脱フッ化水素させて、XCF2CF=CClY(XおよびYはそれぞれフッ素原子または塩素原子である。)を得る反応、および、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−3−クロロプロパンを脱塩化水素させ、ヘキサフルオロプロペンを得る反応が記載されている。
特許文献2には1−クロロ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素反応させて1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法が記載されており、特許文献3には、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンを脱フッ化水素反応させて1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得る方法が記載されている。
これらの特許文献のいずれにおいても、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの脱塩化水素または脱フッ化水素反応は、液相反応でアルカリ水溶液を用いて行う例が記載されている。これらの反応においては、反応時間が長く、そのため、相間移動触媒を使用する等の改良がなされているものの、より効率的に生産できる方法が求められていた。
本発明は、上記観点からなされたものであって、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンから液相において効率的にフルオロオレフィン、具体的には、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィンを製造する方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の[1]〜[8]の構成を有するフルオロオレフィンの製造方法を提供する。
[1]温度および圧力が調整可能な反応器内で、炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを液相でアルカリ水溶液と接触させ、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびクロロフルオロオレフィンから選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法であって、
前記反応器内の温度および圧力を、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの蒸気圧曲線より上、かつ前記フルオロオレフィンの蒸気圧曲線より下となる条件に調整する製造方法。
[2]前記圧力の調整は前記反応器内の気相を前記反応器外に排出することで行う[1]に記載の製造方法。
[3]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがモノクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがテトラフルオロプロペンである、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記モノクロロテトラフルオロプロパンが2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記テトラフルオロプロペンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[3]に記載の製造方法。
[5]前記反応器内の圧力を2.0MPaG以下に調整する[4]に記載の製造方法。
[6]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがジクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがモノクロロテトラフルオロプロペンである、[1]または[2]に記載の製造方法。
[7]前記ジクロロテトラフルオロプロパンが2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記モノクロロテトラフルオロプロペンが1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[6]に記載の製造方法。
[8]前記反応器内の圧力を0.5MPaG以下に調整する[7]に記載の製造方法。
[1]温度および圧力が調整可能な反応器内で、炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを液相でアルカリ水溶液と接触させ、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびクロロフルオロオレフィンから選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法であって、
前記反応器内の温度および圧力を、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの蒸気圧曲線より上、かつ前記フルオロオレフィンの蒸気圧曲線より下となる条件に調整する製造方法。
[2]前記圧力の調整は前記反応器内の気相を前記反応器外に排出することで行う[1]に記載の製造方法。
[3]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがモノクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがテトラフルオロプロペンである、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記モノクロロテトラフルオロプロパンが2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記テトラフルオロプロペンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[3]に記載の製造方法。
[5]前記反応器内の圧力を2.0MPaG以下に調整する[4]に記載の製造方法。
[6]前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがジクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがモノクロロテトラフルオロプロペンである、[1]または[2]に記載の製造方法。
[7]前記ジクロロテトラフルオロプロパンが2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記モノクロロテトラフルオロプロペンが1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、[6]に記載の製造方法。
[8]前記反応器内の圧力を0.5MPaG以下に調整する[7]に記載の製造方法。
本発明によれば、ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンから液相において効率的にフルオロオレフィン、具体的には、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンまたはクロロフルオロオレフィンを製造できる。
また、本発明の製造方法は液相反応で実施することから、気相反応に比して小さな反応器を採用でき、工業上有利である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、略称として、ハイフン(−)より後ろの数字およびアルファベット小文字部分だけ(例えば、「HCFO−1224yd」においては「1224yd」)を用いることがある。さらに、幾何異性体を有する化合物の名称およびその略称に付けられた(E)は、E体(トランス体)を示し、(Z)はZ体(シス体)を示す。該化合物の名称、略称において、E体、Z体の明記がない場合、該名称、略称は、E体、Z体、およびE体とZ体の混合物を含む総称を意味する。
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、略称として、ハイフン(−)より後ろの数字およびアルファベット小文字部分だけ(例えば、「HCFO−1224yd」においては「1224yd」)を用いることがある。さらに、幾何異性体を有する化合物の名称およびその略称に付けられた(E)は、E体(トランス体)を示し、(Z)はZ体(シス体)を示す。該化合物の名称、略称において、E体、Z体の明記がない場合、該名称、略称は、E体、Z体、およびE体とZ体の混合物を含む総称を意味する。
本明細書において、反応式(1)で示される反応を、反応(1)という。他の式で表される反応も同様である。本明細書において、式(A)で示される化合物を化合物(A)という。他の式で表される化合物も同様である。本明細書において、数値範囲を表す「〜」では、上下限を含む。
化合物のハンセン溶解度パラメータ(以下、「HSP」ともいう。)は、分散項、極性項および水素結合項からなる。本明細書において、HSPは、文献値または、化合物の化学構造からコンピュータソフトウエア(Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)バージョン4)によって推算した値である。2種以上の化合物を含む混合物のHSPは、各化合物のHSPに、混合物全体に対する各化合物の体積比を乗じた値のベクトル和として算出される。
本発明の製造方法は、温度および圧力が調整可能な反応器内で、炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)を液相でアルカリ水溶液と接触させ、前記HFCまたはHCFCを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ペルフルオロオレフィン(PFO)、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)およびクロロフルオロオレフィン(CFO)から選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法であって、前記反応器内の温度および圧力を、前記HFCまたはHCFCの蒸気圧曲線より上、かつ前記フルオロオレフィンの蒸気圧曲線より下となる条件に調整することを特徴とする製造方法である。
本発明の製造方法が適用される反応は、具体的には、下記反応式(1)に示す反応である。式(1)中、出発物質(原料)である上記HFCまたはHCFCは式(A)で示され、HFO、PFO、HCFOまたはCFOである目的生成物は式(B)で示される。式(C)は塩化水素またはフッ化水素である。
ただし、式(1)中の記号は以下のとおりである。
X1、X2は、一方が水素原子であり、他方がフッ素原子または塩素原子である。
Y1、Y2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。
R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素原子数1〜5の脂肪族飽和炭化水素基(ただし、水素原子の一部または全部が塩素原子またはフッ素原子で置換されてもよい。)であり、R1とR2の合計の炭素原子数は1〜5である。
Y1、Y2、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子である。
X1、X2は、一方が水素原子であり、他方がフッ素原子または塩素原子である。
Y1、Y2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子である。
R1、R2は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子または炭素原子数1〜5の脂肪族飽和炭化水素基(ただし、水素原子の一部または全部が塩素原子またはフッ素原子で置換されてもよい。)であり、R1とR2の合計の炭素原子数は1〜5である。
Y1、Y2、R1およびR2の少なくとも1つはフッ素原子である。
従来から、化合物(A)を液相でアルカリ水溶液と接触させると、反応(1)に示すように化合物(A)から塩化水素またはフッ化水素が脱離して化合物(B)が得られることが知られている。
この反応は、通常、温度および圧力が調整可能な密閉された反応器内で行われる。反応器内には、少なくとも化合物(A)とアルカリ水溶液を含む液相と、気相が存在し、反応(1)は該液相において、化合物(A)を主体とする有機相とアルカリ水溶液を主体とする水相の2相状態で行われる。従来から、生産性を向上させるために、撹拌条件や装置を工夫して2相の接触を効率よく行う、相間移動触媒を用いて反応の促進を図る等が行われているが、反応速度を上げて、生産効率を高めることは容易でなかった。
本発明者は、上記製造方法において、反応器内で反応(1)が進行し、化合物(A)から化合物(B)が生成するのに伴い、液相内の化合物(A)の濃度が減少して、反応速度が減少することを確認した。そして、反応器内の温度および圧力を、化合物(A)の蒸気圧曲線より上、かつ化合物(B)の蒸気圧曲線より下となる条件に調整することで、反応(1)の反応速度の減少を抑制し、より効率的に化合物(B)が製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明が適用される反応(1)において、化合物(A)と化合物(B)の分子量の関係は、化合物(A)からHClまたはHFが除かれた分だけ、化合物(B)は化合物(A)より分子量が小さい。それにより、通常、化合物(B)は化合物(A)より蒸気圧が高く沸点が低い。したがって、反応器内の温度および圧力を、化合物(A)の蒸気圧曲線より上、かつ化合物(B)の蒸気圧曲線より下となる条件に調整することで、液相内の化合物(A)の濃度の減少を抑制して、反応速度の減少が抑えられる。以下、本発明の製造方法における「反応器内の温度および圧力を、化合物(A)の蒸気圧曲線より上、かつ化合物(B)の蒸気圧曲線より下となる条件に調整する」要件を、要件(II)という。
本発明の製造方法においては、要件(II)を満たすことで、反応器内の液相中の化合物(A)の質量[g]をL(A)、化合物(B)の質量[g]をL(B)、気相中の化合物(A)の質量[g]をV(A)、化合物(B)の質量[g]をV(B)とした場合に下記式(III)が成り立つ。
(V(B)/V(A))/(L(B)/L(A))>1 (III)
(V(B)/V(A))/(L(B)/L(A))>1 (III)
本発明において、式(III)が成立する条件で反応(1)が行われると、反応速度の低下が抑制される。式(III)の関係は、反応の開始から終了まで維持されるのが好ましい。式(III)の左辺に示されるV(B)/V(A)とL(B)/L(A)の比の値は、大きい方が好ましく、例えば、1.5以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。
本発明の製造方法においては、少なくとも上記要件(II)を満たす限り、反応器内温度および圧力は変化してもよいが、好ましくは要件(II)を満たす範囲内で、温度および圧力が一定に保持されることが好ましい。具体的には、反応器内の圧力の調整は、所定量の気相を反応器外に排出することで行うのが好ましい。反応器内の圧力を一定に保つためには、気相の反応器外への排出は連続的に行うことが好ましい。具体的な、温度、圧力は、以下に説明する本発明の製造方法が適用可能な反応(1)における、化合物(A)および化合物(B)の種類による。
本発明における反応は、バッチ式で行ってもよいし、半連続式、連続流通式で行ってもよい。本発明の製造方法において、反応中に反応器から気相を排出させない場合は、反応終了後、反応器内の気相および液相から、通常の方法で化合物(B)を分離回収する。反応中に反応器の気相を反応器から排出させる場合は、排出された気相から化合物(B)を分離回収するとともに、反応終了後、反応器内の気相および液相から、通常の方法で化合物(B)を分離回収する。
本発明の製造方法において、反応終了後に反応液(液相)から化合物(B)を回収する場合、反応液を放置して、有機相と水相に分離させる。有機相中には、目的生成物である化合物(B)以外に、未反応の化合物(A)や副生物等が含まれうる。これらを含む有機相中から化合物(B)を回収する際には、一般的な蒸留等による分離精製方法を採用するのが好ましい。
なお、反応液中に未反応の化合物(A)が残っている場合、蒸留によって化合物(A)を濃縮し、本発明の原料としてリサイクルすることも可能である。また、気相から化合物(A)が回収される場合があるが、その場合についても、本発明の原料としてリサイクルすることも可能である。
一方、上記有機相と分離した水相は、これだけ取り出して再度適当な濃度となるように塩基を加えれば、再利用が可能である。
本発明の製造方法により得られる化合物(B)を上記のように分離精製して回収することで、化合物(B)を高純度に含有する精製化合物(B)が得られる。このようにして得られる精製化合物(B)に、HFやHCl等の酸分や水、酸素等の不純物が含まれると、その使用に際して設備が腐食する、化合物(B)の安定性が低下する等のおそれがある。したがって、従来公知の方法で、これら不純物を腐食や安定性に関し問題がない程度まで除去することが好ましい。
(本発明の製造方法が適用可能な反応)
本発明の製造方法が適用可能な反応の具体例を以下に説明する。炭素原子数3の場合の例として、以下の式(1−1)〜式(12−2)、式(15−1)、式(15−2)の反応に示される、フルオロプロペンの製造例が挙げられる。炭素原子数4の場合の例として、以下の式(13−1)および式(13−2)の反応に示される、フルオロブテンの製造例が挙げられる。炭素原子数5の場合の例として、以下の式(14−1)および式(14−2)の反応に示される、フルオロペンテンの製造例が挙げられる。
本発明の製造方法が適用可能な反応の具体例を以下に説明する。炭素原子数3の場合の例として、以下の式(1−1)〜式(12−2)、式(15−1)、式(15−2)の反応に示される、フルオロプロペンの製造例が挙げられる。炭素原子数4の場合の例として、以下の式(13−1)および式(13−2)の反応に示される、フルオロブテンの製造例が挙げられる。炭素原子数5の場合の例として、以下の式(14−1)および式(14−2)の反応に示される、フルオロペンテンの製造例が挙げられる。
式(1−1)は3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ca)および/または1,1−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ea)から脱HFにより1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CFO−1214ya)を得る反応式である。式(1−2)は2,3,3−トリクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−224ba)および/または1,1,1−トリクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−224eb)から脱HClによりCFO−1214yaを得る反応式である。
式(2−1)は1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ca)および/または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)から脱HFによりヘキサフルオロプロペン(PFO−1216)を得る反応式である。式(2−2)は2−クロロ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ba)および/または1−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ea)から脱HClによりPFO−1216を得る反応式である。
式(3−1)は3−クロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235cb)および/または3−クロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235ea)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd(Z))および/または(E)−1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFO−1224yd(E))を得る反応式である。式(3−2)は2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−234bb)および/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−234ea)から脱HClによりHCFO−1224yd(Z)および/またはHCFO−1224yd(E)を得る反応式である。
式(4−1)は2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)および/または2−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244db)から脱HFにより2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)を得る反応式である。式(4−2)は2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243xb)および/または2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)から脱HClによりHCFO−1233xfを得る反応式である。
式(5−1)は3−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244ca)および/または1−クロロ−1,2,3,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244ea)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd(Z))および/または(E)−1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd(E))を得る反応式である。式(5−2)は2,3−ジクロロ−1,1,2−トリフルオロプロパン(HCFC−243ba)および/または1,1−ジクロロ−2,3,3−トリフルオロプロパン(HCFC−243eb)から脱HClによりHCFO−1233yd(Z)および/またはHCFO−1233yd(E)を得る反応式である。
式(6−1)は3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244eb)および/または3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(Z))および/または(E)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd(E))を得る反応式である。式(6−2)は2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243db)および/または3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243fa)から脱HClによりHCFO−1233zd(Z)および/またはHCFO−1233zd(E)を得る反応式である。
式(7−1)は1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)および/または1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)から脱HFにより2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を得る反応式である。式(7−2)は2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)および/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244eb)から脱HClによりHFO−1234yfを得る反応式である。
式(8−1)は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)および/または1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)から脱HFにより(Z)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(Z))および/または(E)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(E))を得る反応式である。式(8−2)は2−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244db)および/または3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−244fa)から脱HClによりHFO−1234ze(Z)および/またはHFO−1234ze(E)を得る反応式である。
式(9−1)は2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−234bb)および/または2,3−ジクロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HCFC−234da)から脱HFにより(Z)−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd(Z))および/または(E)−1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd(E))を得る反応式である。式(9−2)は2,2,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−233ab)および/または2,3,3−トリクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−233da)から脱HClによりHCFO−1223xd(Z)および/またはHCFO−1223xd(E)を得る反応式である。
式(10−1)は1,1,1,2,2,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236cb)および/または1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236eb)から脱HFにより(Z)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(Z))および/または(E)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(E))を得る反応式である。式(10−2)は2−クロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235bb)および/または3−クロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−235ea)から脱HClによりHFO−1225ye(Z)および/またはHFO−1225ye(E)を得る反応式である。
式(11−1)は1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)および/または1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)から脱HFにより3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)を得る反応式である。式(11−2)は2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−253db)および/または3−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−244eb)から脱HClによりHFO−1243zfを得る反応式である。
式(12−1)は1,1,2−トリフルオロプロパン(HFC−263eb)および/または1,1,3−トリフルオロプロパン(HFC−263fa)から脱HFにより3,3−ジフルオロプロペン(HFO−1252zf)を得る反応式である。式(12−2)は2−クロロ−1,1−ジフルオロプロパン(HCFC−262db)および/または3−クロロ−1,1−ジフルオロプロパン(HCFC−262fa)から脱HClによりHFO−1252zfを得る反応式である。
式(13−1)は、1,1,1,2,4,4,4−ヘプタフルオロブタン(HFC−347mef)から脱HFにより(Z)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(Z))および/または(E)−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(HFO−1336mzz(E))を得る反応式である。式(13−2)は2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブタン(HCFC−346mdf)から脱HClによりHFO−1336mzz(Z)またはHFO−1336mzz(E)を得る反応式である。
式(14−1)は5−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロペンタン(HCFC−448occc)および/または5−クロロ−1,1,2,2,3,3,4,5−オクタフルオロペンタン(HCFC−448pcce)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(HCFO−1437dycc(Z))および/または(E)−1−クロロ−2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(HCFO−1437dycc(E))を得る反応式である。式(14−2)は4,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロペンタン(HCFC−447obcc)および/または5,5−ジクロロ−1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロペンタン(HCFC−447necc)から脱HClによりHCFO−1437dycc(Z)および/またはHCFO−1437dycc(E)を得る反応式である。
式(15−1)は3−クロロ−1,1,1,2,2,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ca)および/または1−クロロ−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HCFC−226ea)から脱HFにより(Z)−1−クロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(CFO−1215yb(Z))および/または(E)−1−クロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(CFO−1215yb(E))を得る反応式である。式(15−2)は2,3−ジクロロ−1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225ba)および/または1,1−ジクロロ−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン(HCFC−225eb)から脱HClによりCFO−1215yb(Z)および/またはCFO−1215yb(E)を得る反応式である。
上記各反応において、特に本発明の製造方法が好適に用いられる反応として、反応速度を向上させて反応を効率的に実施できる点から、モノクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりテトラフルオロプロペンを得る反応、ジクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりモノクロロテトラフルオロプロペンを得る反応が挙げられる。
モノクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりテトラフルオロプロペンを得る反応としては、式(7−2)の244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応、式(8−2)の244dbおよび/または244faから脱HClにより1234ze(Z)および/または1234ze(E)を得る反応が挙げられ、式(7−2)の244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応がより好適に挙げられる。
ジクロロテトラフルオロプロパンから脱HClによりモノクロロテトラフルオロプロペンを得る反応としては、式(3−2)の234bbおよび/または234eaから脱HClにより1224yd(Z)および/または1224yd(E)を得る反応が挙げられる。
なお、上記反応においては、特に原料に244bb等のCH3基を有する化合物が含まれ、該化合物のCH3基からHの脱離が必要とされる場合に、本発明による効果が大きい。したがって、244bbから脱HClにより1234yfを得る反応る反応において高い効果が期待できる。
本発明の製造方法に係る反応(1)において、化合物(A)は有機相として液相で、アルカリ水溶液と物理的に接触する、より具体的には、アルカリ水溶液中の塩基と接触することで、脱HFまたは脱HCl反応が生起し化合物(B)が生成する。
化合物(A)の入手方法は特に制限されない。公知の方法で製造してもよく、市販品を用いてもよい。例えば、本発明が好ましく適用される(7−2)の反応における244bbおよび/または244ebは、例えば、254ebと塩素を反応させる塩素化反応により製造できる。また、(3−2)の反応における234bbおよび/または234eaは、例えば、上記254ebの塩素化反応において、得られる244bbおよび/または244ebをさらに塩素化することで製造できる。
なお、本発明の製造方法に際して、化合物(A)は、化合物(A)と不純物を含む混合物の形で反応器内に導入されてもよい。混合物における不純物量は、本発明の製造方法の効果に影響を及ぼさない程度とする。具体的には、化合物(A)は、化合物(A)の製造時において副生する副生物や未反応原料と共に用いられてもよい。例えば、純度が85質量%以上、好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上の化合物(A)の組成物として、本発明の製造方法に用いることができる。
本発明の製造方法に用いるアルカリ水溶液とは、塩基を水に溶解させた水溶液をいう。塩基は、上記反応(1)が実行可能な塩基であれば特に限定されない。塩基は、金属水酸化物、金属酸化物および金属炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
塩基が金属水酸化物である場合、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属水酸化物などが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。
塩基が金属酸化物である場合、該金属酸化物を構成する金属としては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素が挙げられる。中でも、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、第6族金属元素、第8族金属元素、第10族金属元素、第12族金属元素、第13族金属元素が好ましく、ナトリウム、カルシウム、クロム、鉄、亜鉛、アルミニウムがさらに好ましい。
金属酸化物は、金属の1種を含む酸化物であってもよく、2種以上の金属の複合酸化物であってもよい。金属酸化物としては、反応時間および反応収率の点から、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化クロム(クロミア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛等が好ましく、アルミナおよびクロミアがより好ましい。
塩基が金属炭酸塩である場合、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等の金属の炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等の金属の炭酸塩が挙げられる。
本発明の製造方法に用いる塩基としては、反応時間および反応収率の点から、金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。金属水酸化物は、1種を単独に用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ水溶液における塩基の含有量は、反応速度の点から、アルカリ水溶液全量(質量)に対する塩基の質量の割合(単位%)が、0.5〜48質量%となる量が好ましく、20〜45質量%がより好ましく、30〜40質量%がさらに好ましい。塩基量が上記範囲未満であると、十分な反応速度が得られないことがある。一方、塩基量が上記範囲を超えると、副生物の生成量が増え、目的物質(化合物(B))の選択率が減少する可能性がある。
本発明の製造方法に用いる塩基の使用量は、反応(1)の種類による。例えば、244bbおよび/または244ebから脱HClにより1234yfを得る反応においては、244bbおよび/または244ebの転化率および1234yfの選択率を向上させる観点から、244bbおよび/または244ebの1モルに対する塩基の量は、0.2〜3.0モルが好ましく、0.5〜2.5モルがより好ましい。
また、例えば、234bbおよび/または234eaから脱HClにより1224yd(Z)および/または1224yd(E)を得る反応においては、234bbおよび/または234eaの転化率および1224yd(Z)および/または1224yd(E)の選択率を向上させる観点から、234bbおよび/または234eaの1モルに対する塩基の量は、0.2〜3.0モルが好ましく、0.5〜2.5モルがより好ましい。
本発明の製造方法において、要件(II)を満たす条件内での、好ましい温度および圧力条件は、化合物(A)および化合物(B)の種類による。本発明の製造方法における、好ましい温度および圧力条件を、244bbから脱HClにより1234yfを得る反応、および234bbから脱HClにより1224ydを得る反応を例にして以下に説明する。
図1に244bbと1234yfの蒸気圧曲線を示す。図1では、実線が244bbの蒸気圧曲線を、破線が1234yfの蒸気圧曲線を示す。各化合物において、蒸気圧曲線より下側の温度、圧力条件下では該化合物は気相であり、蒸気圧曲線より上側の温度、圧力条件下では該化合物は液相である。したがって、図1において、244bbの蒸気圧曲線と1234yfの蒸気圧曲線で囲まれる、温度、圧力領域では、44bbは液相であり、1234yfは気相であることがわかる。
ここで、244bbから脱HClにより1234yfを得る反応においては、反応速度および反応率が向上し、副生成物を抑制しやすい観点から、反応温度は60〜120℃が好ましく、70〜115℃が好ましく、70〜110℃がより好ましい。上記のとおり反応器内の圧力は、反応温度における244bbの蒸気圧以上、1234yfの蒸気圧以下に設定される。さらに、反応装置の設計上、圧力は2.0MPaG以下が好ましい。よって、これらの条件を満たす範囲で、反応を行うのが好ましい。
図2に234bbと1224yd(Z)および1224yd(E)の蒸気圧曲線を示す。図2では、実線が234bbの蒸気圧曲線を、破線が1224yd(Z)の蒸気圧曲線を、点線が1224yd(E)の蒸気圧曲線をそれぞれ示す。各化合物において、蒸気圧曲線より下側の温度、圧力条件下では該化合物は気相であり、蒸気圧曲線より上側の温度、圧力条件下では該化合物は液相である。したがって、図2において、234bbの蒸気圧曲線と1224yd(E)の蒸気圧曲線で囲まれる、温度、圧力領域では、234bbは液相であり、1224yd(Z)および1224yd(E)は気相であることがわかる。
ここで、234bbから脱HClにより1224ydを得る反応においては、反応速度および反応率が向上し、副生成物を抑制しやすい観点から、反応温度は10〜90℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。上記のとおり反応器内の圧力は、反応温度における234bbの蒸気圧以上、1224ydの蒸気圧以下に設定される。さらに、反応装置の設計上、圧力は0.5MPaG以下が好ましい。よって、これらの条件を満たす範囲で、反応を行うのが好ましい。
図1および図2を用いて、244bbから脱HClにより1234yfを得る反応、および234bbから脱HClにより1224ydを得る反応の2例について説明したが、その他の反応についても、これらと同様に、化合物(A)と化合物(B)の蒸気圧曲線および好ましい反応温度、反応圧力から、本発明の製造方法における、好ましい温度、圧力の範囲が設定できる。
本発明の製造方法において、反応液は化合物(A)を主体とする有機相とアルカリ水溶液からなる水相で構成される。本発明の製造方法において、反応系中に反応をより促進する目的で、本発明の効果を損なわない他の物質を存在させてもよく、例えば、相間移動触媒を存在させるのが好ましい。なお、相間移動触媒は有機相中およびアルカリ水溶液中の両方に存在し、化合物(A)のアルカリ水溶液との接触による脱ハロゲン化反応を促進する。
相間移動触媒としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、スルホニウム塩、クラウンエーテルなどが挙げられ、工業的入手容易さや価格、扱いやすさの点から第4級アンモニウム塩が好ましい。
4級アンモニウム塩として、具体的には、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(TOMAC)等が好ましい。なかでも、反応をより促進できる点から、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)が好ましく、入手性の点からはテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)がより好ましく、反応性の点からはテトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)がより好ましい。
本発明の製造方法に相間移動触媒を用いる場合、その量は、化合物(A)の100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましく、0.01〜3質量部がさらに好ましい。相間移動触媒の量が少なすぎると、十分な反応速度が得られないことがあり、多く用いても、使用量に応じた反応促進効果は得られず、コスト面で不利である。
本発明の製造方法において、反応液は、相間移動触媒とともに、化合物(A)を溶解し得る水溶性有機溶媒(以下、「水溶性有機溶媒(S)」という。)を含有してもよい。水溶性有機溶媒(S)は、水溶性であるとともに化合物(A)を溶解し得る。
本明細書において、水溶性有機溶媒(S)における水溶性とは、25℃において、水溶性有機溶媒(S)と純水を任意の混合割合で混合した際に相分離や濁りを起こさずに均一に溶解する性質をいう。また、水溶性有機溶媒(S)が、化合物(A)を溶解し得るとは、25℃において、化合物(A)に対し、水溶性有機溶媒(S)が20質量%となる量で化合物(A)と水溶性有機溶媒(S)を混合した際に相分離や濁りを起こさずに均一に溶解する性質をいう。
水溶性有機溶媒(S)は、相間移動触媒と同様に有機相中およびアルカリ水溶液中の両方に存在し、相間移動触媒における化合物(A)の脱ハロゲン化反応を促進する作用をより高める機能を有する。
水溶性有機溶媒(S)としては、例えば、水溶性のアルコール、ケトン、エーテル、エステル等から化合物(A)の種類に応じて該化合物(A)を溶解し得る化合物が適宜選択されて用いられる。
水溶性のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、ブタン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−2−オール、2−メチルプロパン−2−オール、2−メチルブタン−2−オール等が、水溶性のケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。水溶性のエーテルとしては、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(以下、「テトラグライム」ともいう。)、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレンオキシド等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、フラン、クラウンエーテル類等の環状エーテル等が、水溶性のエステルとしては、酢酸メチル、ギ酸メチル等が挙げられる。
水溶性有機溶媒(S)は、水溶性に加えて、化合物(A)を溶解する性質を有する。水溶性有機溶媒(S)は、化合物(A)の脱ハロゲン化反応における相間移動触媒の作用をより高める観点から、ハンセン溶解度パラメータに基づき下記式(I)で示される、水溶性有機溶媒(S)と化合物(A)との、相互作用距離(Ra)が25.0以下であるのが好ましく、23.0以下がより好ましい。
Ra=[4×(δD1−δD2)2+(δP1−δP2)2+(δH1−δH2)2]0.5 (I)
Ra=[4×(δD1−δD2)2+(δP1−δP2)2+(δH1−δH2)2]0.5 (I)
式(I)中、δD1、δP1およびδH1は各々、水溶性有機溶媒(S)のハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項を、δD2、δP2およびδH2は各々、化合物(A)のハンセン溶解度パラメータにおける、分散項、極性項および水素結合項をそれぞれ示し、単位はいずれも(MPa)1/2である。
具体的に、例えば、化合物(A)として244bb、244eb、234bb、234eaを用いた場合に、これらの化合物(A)に対して水溶性有機溶媒(S)として好ましい各化合物の相互作用距離(Ra)を表1に示す。
表1に示すように、メタノール、アセトン、テトラグライムおよびテトラヒドロフランは、244bb、244eb、234bb、234eaのいずれとも、相互作用距離(Ra)が25.0以下であり、これらの脱ハロゲン化反応に、水溶性有機溶媒(S)として好ましく用いることができる。
なお、同様にして、相互作用距離(Ra)を指標として、表1に示す以外の化合物(A)と水溶性有機溶媒(S)の好ましい組み合わせが選択できる。
本発明の製造方法に用いる水溶性有機溶媒(S)の量は、化合物(A)の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、3〜80質量部がより好ましく、5〜60質量部がさらに好ましい。水溶性有機溶媒(S)の量が少なすぎると、十分な反応速度が得られないことがあり、多く用いても、使用量に応じた反応促進効果は得られず、コスト面および容積効率の面で不利である。
本発明の製造方法においては、工業的に目的のフルオロオレフィンを大量に生産する観点から、バッチ式、半連続式または連続式の反応器に撹拌翼を設置し、それを撹拌させることにより生成させることが好ましい。以下に本発明の製造方法が適用可能な反応装置の一例を図面を参照しながら説明する。図3に本発明のフルオロオレフィンの製造方法に使用される反応装置の一例の概略図を示す。
なお、図3に示す反応装置は例示であって、本発明の実施形態に使用される反応装置はこのような構造のものに限定されない。必要に応じて、各部材の変形および削除、変更が可能であり、他の部材の追加も可能である。
反応装置100は、反応器本体1、蓋部2、撹拌翼を有する撹拌機7および熱電対8を有する反応器20を、ヒーター6を備えた恒温槽5内に設置した構成である。反応装置100は、恒温槽5の外部に化合物(A)を収容する化合物(A)収容槽3およびアルカリ水溶液を収容するアルカリ水溶液収容槽4を有し、各槽から供給ライン21を経て、反応器20内に所定量の化合物(A)およびアルカリ水溶液が、気相を構成する空間を残して、液相として供給される。
反応器20の内部は液相Lと気相Vからなり、反応器20内の温度および圧力を調整して、式(II)が成立する条件で反応(1)を行う。該条件では、反応(1)の進行に伴い反応器20内の圧力が上昇するため、これを抑制して反応器20内の圧力を所定の範囲内に保つために、反応器20内の気相Vの一部が排出ライン22を経て回収槽10に回収される。
反応装置100では排出ライン22の途中に背圧弁9を設けた構成である。背圧弁9の使用により、反応器20内の圧力は一定に保たれ、さらに気相Vは連続的に反応器20から排出される。すなわち、反応装置100は、本発明の製造方法をより効果的に実施できる反応装置である。
なお、反応装置100において、化合物(B)の回収を容易とするために、反応器20と背圧弁9の間に、反応器20から排出された気相中の化合物(A)を回収するための耐圧コンデンサ等を設けてもよい。これにより、回収槽10において化合物(B)の含有量が高められた組成物が回収できる。
反応装置100を構成する構成部材の材質は、化合物(A)、アルカリ水溶液、ならびに化合物(B)を含む反応生成物、さらには、任意に用いられる相間移動触媒、水溶性有機溶媒(S)を含む反応液成分等に不活性で、耐蝕性の材質であれば特に制限されない。例えば、ガラス、鉄、ニッケル、および鉄等を主成分とするステンレス鋼等の合金などが挙げられる。
本発明の製造方法によれば、温度および圧力が調整可能な反応器内で化合物(A)を液相でアルカリ水溶液と接触させ、脱ハロゲン化水素により化合物(B)を得る製造方法において、反応器内の液相と気相における化合物(A)と化合物(B)の存在量の関係が式(II)を満たすように、反応器内の温度および圧力を調整することで、より効率的に化合物(B)を製造できる。また、本発明の製造方法は液相反応で実施することから、気相反応に比して小さな反応器を採用でき、工業上有利である。
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例1〜4では、化合物(A)として244bbを用いて脱HClにより1234yfを製造した。例5〜8では、化合物(A)として234bbを用いて脱HClにより1224ydを製造した。例1、2、例5、6が実施例であり、例3、4、例7、8が比較例である。
[ガスクロマトグラフィーの条件]
以下の各種化合物の製造において、得られた反応組成物の組成分析はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。カラムはDB−1301(商品名、アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ60m×内径250μm×厚み1μm)を用いた。
以下の各種化合物の製造において、得られた反応組成物の組成分析はガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。カラムはDB−1301(商品名、アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ60m×内径250μm×厚み1μm)を用いた。
[244bbの製造例]
254ebを、次のとおり、塩素化して244bbおよび244ebを製造した。まず、光源からの光を透過する石英管およびジャケットを取り付けたステンンレス製オートクレーブ(内容積6.9リットル)を、20℃に冷却した。このオートクレーブ(以下、反応器と示す。)内に、四塩化炭素(CCl4)を2336gと254ebを103g入れた後、LEDランプ(三菱電機社製LHT42N−G−E39、出力40W)からの可視光を照射しながら、塩素ガスを毎分3.2gの流量で反応器内に導入した。反応の進行に伴い、反応熱が生じるとともに、反応器内の温度は23.8℃に上昇した。上記流量塩素ガスを2分間導入し、すなわち、254ebの1モルに対して0.10モルの割合の塩素を導入し、反応器内の温度が20℃で一定になるまで光照射を継続した。反応器内の圧力は、塩素供給前の圧力が0.045MPa、塩素供給後の圧力、すなわち反応圧力が0.045MPaであった。
254ebを、次のとおり、塩素化して244bbおよび244ebを製造した。まず、光源からの光を透過する石英管およびジャケットを取り付けたステンンレス製オートクレーブ(内容積6.9リットル)を、20℃に冷却した。このオートクレーブ(以下、反応器と示す。)内に、四塩化炭素(CCl4)を2336gと254ebを103g入れた後、LEDランプ(三菱電機社製LHT42N−G−E39、出力40W)からの可視光を照射しながら、塩素ガスを毎分3.2gの流量で反応器内に導入した。反応の進行に伴い、反応熱が生じるとともに、反応器内の温度は23.8℃に上昇した。上記流量塩素ガスを2分間導入し、すなわち、254ebの1モルに対して0.10モルの割合の塩素を導入し、反応器内の温度が20℃で一定になるまで光照射を継続した。反応器内の圧力は、塩素供給前の圧力が0.045MPa、塩素供給後の圧力、すなわち反応圧力が0.045MPaであった。
反応終了後、得られた反応液を炭酸水素カリウムの20質量%水溶液と混合して中和し、次いで分液操作を行った。静置後、分離した下層から反応組成物を回収し、蒸留により244bbを得た。
[例1]
図3に示すのと同様の反応装置を用いた。熱電対および撹拌翼を取り付けた0.1Lの反応器を恒温槽内に設置し、80℃に保った。この反応器に、25質量%NaOH水溶液を588.8g、上記で得られた244bbを277.0g(NaOHと244bbのモル比は、NaOH:244bb=2:1である。)、相間移動触媒としてのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を8.3g加え、反応器を閉止した。
図3に示すのと同様の反応装置を用いた。熱電対および撹拌翼を取り付けた0.1Lの反応器を恒温槽内に設置し、80℃に保った。この反応器に、25質量%NaOH水溶液を588.8g、上記で得られた244bbを277.0g(NaOHと244bbのモル比は、NaOH:244bb=2:1である。)、相間移動触媒としてのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を8.3g加え、反応器を閉止した。
600rpmで撹拌翼を回転させ、反応器内の圧力が0.8MPaGとなるように背圧弁を設定して、反応器から気相を排出させながら4時間反応を行った。反応器から排出された気相は回収槽に回収された。反応終了後に、恒温槽から反応器を取り出して氷水により0℃に冷却して反応を停止させ、反応組成物を回収した。反応器から回収した反応組成物および回収槽に回収された気相(反応組成物)のGC分析を行い、244bbの転化率、1234yfの選択率を求めた。244bbの転化率は34.3%であり、1234yfの収率は34.3%であり、選択率は100%であった。
[例2]
例1において、反応時間を16時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、244bbの転化率は62.7%であり、1234yfの収率は62.7%であり、選択率は100%であった。
例1において、反応時間を16時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、244bbの転化率は62.7%であり、1234yfの収率は62.7%であり、選択率は100%であった。
[例3]
例1において、反応器から気相の排出を行わない以外は同様にして、4時間の244bbの脱HCl反応を行った。反応中の反応器内の圧力を特定したところ、2.1MPaGであり、図1の1234yfの蒸気圧曲線の上側の領域にあった。反応終了後、回収した反応組成物のGC分析を行い、244bbの転化率、1234yfの選択率を求めた。244bbの転化率は29.1%であり、1234yfの収率は29.1%であり、選択率は100%であった。
例1において、反応器から気相の排出を行わない以外は同様にして、4時間の244bbの脱HCl反応を行った。反応中の反応器内の圧力を特定したところ、2.1MPaGであり、図1の1234yfの蒸気圧曲線の上側の領域にあった。反応終了後、回収した反応組成物のGC分析を行い、244bbの転化率、1234yfの選択率を求めた。244bbの転化率は29.1%であり、1234yfの収率は29.1%であり、選択率は100%であった。
[例4]
例3において、反応時間を16時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、244bbの転化率は51.3%であり、1234yfの収率は51.3%であり、選択率は100%であった。
例3において、反応時間を16時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、244bbの転化率は51.3%であり、1234yfの収率は51.3%であり、選択率は100%であった。
[234bbの製造例]
1234yfを、次のとおり、塩素化して234bbを製造した。
1234yfを、次のとおり、塩素化して234bbを製造した。
まず、光源からの光を透過する石英管およびジャケットを取り付けたステンンレス製反応器(内容積2.3リットル)を、0℃に冷却した。この反応器内に、溶媒として1395gの四塩化炭素(CCl4)を入れた後、蛍光灯(東芝社製ネオコンパクトEFP12EL、出力12W)からの可視光を照射しながら、1234yfを毎時245gの流量で、塩素ガスを毎時152gの流量で、それぞれ反応器内に供給した。
反応の進行に伴って反応熱が生じるとともに、反応器内の温度は7.6℃に上昇し、反応器内の圧力は0.08MPaGに上昇した。上記流量で1234yfおよび塩素ガスをそれぞれ供給しながら1時間反応を続け、1234yfの245gおよび塩素の152gが供給されたことを確認した後、1234yfおよび塩素の供給を停止し、反応器内の圧力が常圧となるまで、光照射を継続した。反応終了後、得られた反応液を20質量%の炭酸水素カリウム水溶液で中和し、次いで分液操作を行った。静置後、分離した下層から1734gの生成物(1)を回収した。生成物(1)を通常の操作で蒸留して、純度99.8%の234bbを得た。
反応終了後、得られた反応液を炭酸水素カリウムの20質量%水溶液と混合して中和し、次いで分液操作を行った。静置後、分離した下層から反応組成物を回収し、蒸留により234bbを得た。
[例5]
図3に示すのと同様の反応装置を用いた。熱電対および撹拌翼を取り付けた0.1Lの反応器を恒温槽内に設置し、30℃に保った。この反応器に、20質量%NaOH水溶液を478.5g、上記で得られた234bbを276.6g(NaOHと234bbのモル比は、NaOH:234bb=2:1である。)、相間移動触媒としてのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を1.4g加え、反応器を閉止した。
図3に示すのと同様の反応装置を用いた。熱電対および撹拌翼を取り付けた0.1Lの反応器を恒温槽内に設置し、30℃に保った。この反応器に、20質量%NaOH水溶液を478.5g、上記で得られた234bbを276.6g(NaOHと234bbのモル比は、NaOH:234bb=2:1である。)、相間移動触媒としてのテトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を1.4g加え、反応器を閉止した。
600rpmで撹拌翼を回転させ、反応器内の圧力が0MPaGとなるように背圧弁を設定して、反応器から気相を排出させながら1時間反応を行った。反応器から排出された気相は回収槽に回収された。反応終了後に、恒温槽から反応器を取り出して氷水により0℃に冷却して反応を停止させ、反応組成物を回収した。反応器から回収した反応組成物および回収槽に回収された気相(反応組成物)のGC分析を行い、234bbの転化率、1224ydの選択率を求めた。234bbの転化率は54.1%であり、1224ydの収率は54.1%であり、選択率は100%であった。
なお、得られた1224ydは1224yd(Z)および1224yd(E)の混合物であった。図2に示すとおり、本例は、234bbの蒸気圧曲線より高く、1224yd(Z)および1224yd(E)のいずれの蒸気圧曲線より低い領域で反応を実施した。上に示した1224ydの転化率は、1224yd(Z)および1224yd(E)の転化率の合計である。
[例6]
例5において、反応時間を2時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、234bbの転化率は63.4%であり、1224ydの収率は63.4%であり、選択率は100%であった。
例5において、反応時間を2時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、234bbの転化率は63.4%であり、1224ydの収率は63.4%であり、選択率は100%であった。
[例7]
例5において、反応器から気相の排出を行わない以外は同様にして、1時間の234bbの脱HCl反応を行った。反応中の反応器内の圧力を特定したところ、0.15MPaGであり、図2の1224yd(Z)の蒸気圧曲線の上側の領域にあった。反応終了後、回収した反応組成物のGC分析を行い、234bbの転化率、1224ydの選択率を求めた。234bbの転化率は50.5%であり、1224ydの収率は50.5%であり、選択率は100%であった。
例5において、反応器から気相の排出を行わない以外は同様にして、1時間の234bbの脱HCl反応を行った。反応中の反応器内の圧力を特定したところ、0.15MPaGであり、図2の1224yd(Z)の蒸気圧曲線の上側の領域にあった。反応終了後、回収した反応組成物のGC分析を行い、234bbの転化率、1224ydの選択率を求めた。234bbの転化率は50.5%であり、1224ydの収率は50.5%であり、選択率は100%であった。
[例8]
例7において、反応時間を2時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、234bbの転化率は58.2%であり、1224ydの収率は58.2%であり、選択率は100%であった。
例7において、反応時間を2時間に変えた以外は全て同様にして反応を実施した。その結果、234bbの転化率は58.2%であり、1224ydの収率は58.2%であり、選択率は100%であった。
Claims (8)
- 温度および圧力が調整可能な反応器内で、炭素原子数が3〜7であり、隣り合う2つの炭素原子に、それぞれ水素原子と、フッ素原子または塩素原子と、が結合した構造を分子内に有するハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを液相でアルカリ水溶液と接触させ、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンを脱塩化水素または脱フッ化水素させて、ハイドロフルオロオレフィン、ペルフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンおよびクロロフルオロオレフィンから選ばれる少なくとも1種のフルオロオレフィンを得る、フルオロオレフィンの製造方法であって、
前記反応器内の温度および圧力を、前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンの蒸気圧曲線より上、かつ前記フルオロオレフィンの蒸気圧曲線より下となる条件に調整する製造方法。 - 前記圧力の調整は前記反応器内の気相を前記反応器外に排出することで行う請求項1に記載の製造方法。
- 前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがモノクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがテトラフルオロプロペンである、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記モノクロロテトラフルオロプロパンが2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記テトラフルオロプロペンが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、請求項3に記載の製造方法。
- 前記反応器内の圧力を2.0MPaG以下に調整する請求項4に記載の製造方法。
- 前記ハイドロフルオロカーボンまたはハイドロクロロフルオロカーボンがジクロロテトラフルオロプロパンであり、前記フルオロオレフィンがモノクロロテトラフルオロプロペンである、請求項1または2に記載の製造方法。
- 前記ジクロロテトラフルオロプロパンが2,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンおよび/または3,3−ジクロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンであり、前記モノクロロテトラフルオロプロペンが1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンである、請求項6に記載の製造方法。
- 前記反応器内の圧力を0.5MPaG以下に調整する請求項7に記載の製造方法。
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2018
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