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JP2021116148A - ロープ式エレベータの摩耗検査システム、および、摩耗検査方法 - Google Patents

ロープ式エレベータの摩耗検査システム、および、摩耗検査方法 Download PDF

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悠太 山▲崎▼
Yuta Yamazaki
悠太 山▲崎▼
竜一 西迫
Ryuichi Nishisako
竜一 西迫
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Abstract

【課題】 磁気センサと振動センサを設置することで巻上機と乗りかごの動作を監視し、シーブ及びブレーキの摩耗状態を検出することのできるエレベータの摩耗検査システムを提供する。【解決手段】 ロープ式エレベータの摩耗検査システムであって、巻上機のモータの動作を検出する磁気検出装置と、プーリの振動と乗りかごの昇降の少なくとも一方を検出する加速度検出装置と、前記磁気検出装置と前記加速度検出装置の出力に基づいて、シーブとブレーキの摩耗状態を判定する摩耗検査装置と、を備えており、前記摩耗検査装置は、稼働中の前記モータへの給電を停止してから、前記乗りかごが停止するまでの制動時間が、所定の閾値よりも長い場合、前記シーブまたは前記ブレーキが摩耗していると判定することを特徴とする摩耗検査システム。【選択図】 図5

Description

本発明は、ロープ式エレベータのシーブやブレーキの摩耗を検査する、摩耗検査システム、および、摩耗検査方法に関する。
ロープ式エレベータでは、巻上機のシーブ(滑車)に巻き付けたロープの両端のそれぞれに、乗りかごと釣合錘を連結しており、巻上機やブレーキを適切に動作させることで、乗りかごを所望の方向に昇降させたり、所望の階床で停止させたりする。
しかし、摩擦などが原因で部品が摩耗すると、エレベータの動作に支障が出る可能性がある。例えば、巻上機を適切なタイミングで停止しても、摩耗によりシーブの摩擦抵抗が低下していれば、シーブとロープの間でスリップが発生し、乗りかごが所望の位置で停止しない等の問題が考えられる。従って、シーブ等の部品の過度な摩耗を早期に検出し、適切な時期に部品交換等のメンテナンスを実施できるようにする必要がある。
そのため、例えば、特許文献1の段落0029で「本発明によれば、制御装置は、乗りかごまたはカウンターウエイトの加速度を2回積分することにより算出した乗りかごまたはカウンターウエイトの位置と、モータの回転数に基づいて算出した乗りかごまたはカウンターウエイトの位置との差を算出する。したがって、通常のメンテナンスでは判断しにくいシーブの溝の磨耗やロープクリープ(巻上機のモータの回転数に基づいて算出した乗りかごの位置と実際の乗りかごの位置とがずれる現象)等が生じたか否かを容易に判断することができる。」と説明されるように、乗りかごの加速度に基づいて算出した乗りかごの位置と、モータの回転数に基づいて算出した乗りかごの位置を比較し、両者の偏差の大きさからシーブ摩耗を検出する方法が提案されている。
特開2009−220904号公報
しかしながら、特許文献1では、加速度の2回積分時にノイズ等が累積することで、時間とともに移動距離の誤差が大きくなるため、時間の経過とともに判断の精度が劣化する可能性がある。更に、部品摩耗による弊害はブレーキの摩耗によっても発生するが、特許文献1ではブレーキの摩耗とシーブの摩耗を判別することができない。
そこで、本発明では、ノイズの累積を招く積分演算を行うことなく摩耗を検査でき、かつ、シーブの摩耗とブレーキの摩耗を判別することができる、ロープ式エレベータの摩耗検査システム、および、摩耗検査方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の摩耗検査システムは、巻上機のモータの動作を検出する磁気検出装置と、プーリの振動と乗りかごの昇降の少なくとも一方を検出する加速度検出装置と、前記磁気検出装置と前記加速度検出装置の出力に基づいて、シーブとブレーキの摩耗状態を判定する摩耗検査装置と、を備えており、前記摩耗検査装置は、稼働中の前記モータへの給電を停止してから、前記乗りかごが停止するまでの制動時間が、所定の閾値よりも長い場合、前記シーブまたは前記ブレーキが摩耗していると判定するものとした。
また、本発明の摩耗検査方法は、巻上機のモータの動作を検出する磁気データと、乗りかごの動作を検出する加速度データに基づいて、シーブとブレーキの摩耗状態を判定するものであって、稼働中の前記モータへの給電を停止してから、前記乗りかごが停止するまでの制動時間が、所定の閾値よりも長い場合、前記シーブまたは前記ブレーキが摩耗していると判定するステップと、前記制動時間に前記モータの動作を検出しなかった場合は、前記シーブが摩耗していると判定するステップと、前記制動時間に前記モータの動作を検出した場合は、前記ブレーキが摩耗していると判定するステップと、を有するものとした。
本発明のロープ式エレベータの摩耗検査システム、または、摩耗検査方法によれば、シーブ、ブレーキの摩耗を精度良く判定することができる。
実施例1のロープ式エレベータの全体構成を示す概略図。 実施例1の巻上機の概略図。 実施例1のギアレス巻上機の概略図。 ギアレス巻上機を昇降路底面に配置した場合の、磁気検出装置と加速度検出装置の設置例。 実施例1の摩耗検出システムの機能ブロック図。 実施例1の全体処理を示すフローチャート。 実施例1のモータの断面図 実施例1の磁気データとモータの状態との関係を示すグラフ。 実施例1における、正常時の各出力の関係を示すグラフ。 実施例1における、シーブ摩耗時の各出力の関係を示すグラフ。 実施例1における、ブレーキ摩耗時の各出力の関係を示すグラフ。 実施例2のロープ式エレベータの全体構成を示す概略図。 実施例2における、正常時の各出力の関係を示すグラフ。 実施例2における、シーブ摩耗時の各出力の関係を示すグラフ。 実施例2における、ブレーキ摩耗時の各出力の関係を示すグラフ。
以下、図面を用いて、本発明の摩耗検査システムの実施例を説明する。
まず、図1〜図3を用いて、本発明の検査対象である、ロープ式エレベータの全体構成を説明する。
図1に示すように、ロープ式エレベータは、乗りかご41と釣合錘42を両端に連結したロープ43を、昇降路4の上部に設置した巻上機5に巻き付けたものであり、巻上機5の駆動によって乗りかご41と釣合錘42が昇降路4内をつるべ式に昇降するものである。なお、図1では、昇降路4の上部の機械室4aに巻上機5を設置した構成を例示しているが、機械室4aを省略し、昇降路4の上部に巻上機5を直接設置しても良い。
図2は、機械室4aの床上に設置した巻上機5の一例である。この巻上機5は、モータ51と、モータ51の回転軸に連結した減速機52と、減速機52の出力軸に固着したシーブ53と、シーブ53と同一平面上に回転可能に配置したプーリ54と、を備えた比較的大型のものであり、シーブ53とプーリ54の溝にロープ43が巻き付けられる。この巻上機5には、後述する磁気検出装置2と加速度検出装置3が取り付けられる。
図3Aは、機械室4aがない場合に利用される、巻上機5の要部の一例である。この巻上機5は、減速機52の機能をモータ51に組み込んだ、比較的小型のいわゆるギアレス巻上機であり、昇降路4の内部に設置することができる。この巻上機5を利用する場合は、昇降路4の天井付近に巻上機5、磁気検出装置2、加速度検出装置3を配置しても良いし、図3Bに示すように、昇降路4の底面付近に配置したモータ51に磁気検出装置2を取り付け、昇降路4の天井付近に配置したプーリ54に加速度検出装置3を取り付ける構成としても良い。
このようなロープ式エレベータを検査対象とする本実施例の摩耗検査システム100は、図4の機能ブロック図に示すように、摩耗検査装置1と、磁気検出装置2と、加速度検出装置3を備えている。以下、各装置を詳細に説明する。
<磁気検出装置2>
磁気検出装置2は、モータ51の外周面に設置されており(図2、図3参照)、モータ51の回転量を判定するために必要な磁気データを摩耗検査装置1に送信する。このため、磁気検出装置2は、磁気データを計測する磁気センサ21と、磁気データを摩耗検査装置1に送信する磁気送信部22と、を備えている。
<加速度検出装置3>
加速度検出装置3は、プーリ54の近傍に設置されており(図2参照)、乗りかご41の移動時の振動と、シーブ53の摩耗によるロープスリップの振動と、ブレーキの摩耗によるブレーキスリップの振動を含む、加速度データを摩耗検査装置1に送信する。このため、加速度検出装置3は、加速度データを計測する加速度センサ31と、加速度データを摩耗検査装置1に送信する加速度送信部32と、を備える
なお、図2では加速度検出装置3をプーリ54の近傍に設置しているが、上記した各振動の計測が可能であれば、加速度検出装置3をモータ51の外周面に設置しても良い。その場合、1つのモジュール内に磁気検出装置2と加速度検出装置3を組み込んでもよい。また、加速度センサ31は、一方向の振動だけ計測する一軸加速度センサでも良いが、様々な方向の振動を計測できるように多軸加速度センサを用いることがより望ましい。
<摩耗検査装置1>
摩耗検査装置1は、磁気検出装置2と加速度検出装置3の計測値(磁気データ、加速度データ)に基づいて、巻上機5のシーブ53やブレーキ(図示せず)に過度な摩耗がないか判定し、その判定結果を表示する検査装置であり、計測値記録ユニット11と、状態判定ユニット12を備える。なお、摩耗検査装置1は、具体的には、CPU(Cnetral Processing Unit)等の演算装置、半導体メモリ等の記憶装置、液晶ディスプレイ等の表示装置、および、通信装置を備えたコンピュータである。この摩耗検査装置1は、磁気検出装置2や加速度検出装置3と無線または有線で通信可能なものであれば、機械室4aや昇降路4に据え置かれたコンピュータ端末であってもよいし、作業者が携帯できる携帯端末であってもよい。
計測値記録ユニット11は、磁気記録部11aと、磁気送信部11bと、加速度記録部11cと、加速度送信部11dを備える。磁気記録部11aは、磁気検出装置2から送信された磁気データを受信し記録する。磁気記録部11aに記録された磁気データは、磁気送信部11bによって状態判定ユニット12へ送信される。加速度記録部11cは、加速度検出装置3から送信された加速度データを受信し記録する。加速度記録部11cに記録された加速度データは、加速度送信部11dによって状態判定ユニット12へ送信される。
状態判定ユニット12は、モータ状態判定部12aと、かご状態判定部12bと、シーブ摩耗判定部12cと、ブレーキ摩耗判定部12dと、判定結果表示部12eを備える。
モータ状態判定部12aは、計測値記録ユニット11から受信した磁気データに基づいて、巻上機5の動作状態を判定する。かご状態判定部12bは、計測値記録ユニット11から受信した加速度データに基づいて、乗りかご41の動作状態を判定する。
また、シーブ摩耗判定部12cは、モータ状態判定部12aとかご状態判定部12bの判定結果に基づいて、巻上機5のシーブ53の摩耗が発生しているかを判定する。ブレーキ摩耗判定部12dは、モータ状態判定部12aとかご状態判定部12bの判定結果に基づいて、巻上機5のブレーキの摩耗が発生しているかを判定する。
そして、判定結果表示部12eでは、シーブ摩耗判定部12cとブレーキ摩耗判定部12dの判定結果を基に、部品の摩耗の有無や点検箇所の表示を行い、必要に応じて、作業者に部品交換等を指示する。
<摩耗検査システム100の処理>
以上で概説した摩耗検査システム100による摩耗検査方法を、図5のフローチャートに従い説明をする。なお、図5では省略しているが、摩耗検査装置1には、シーブ53やブレーキの初期状態時(エレベータの据付直後や部品交換の直後)に計測したデータが、初期値として登録されているものとする。
まず、ステップS1では、作業者が計測開始指令を入力すると、磁気検出装置2と加速度検出装置3による計測が開始される。なお、計測開始指令は、摩耗検査装置1から入力されたものを磁気検出装置2や加速度検出装置3に送信したものであってもよいし、磁気検出装置2や加速度検出装置3に直接入力されたものであってもよい。
ここで、図6A、図6Bを用いて、モータ状態判定部12aによって実行される、モータ51の状態の判定方法を説明する。図6Aの断面図に例示するように、本実施例のモータ51は、回転軸と連結した回転子に永久磁石51aを配置し、外周の固定子に6つのコイル51b(51b1〜51b6)を配置した、一般的な三相モータである。このモータ51に三相電力を供給すると、各コイルは磁極が順次変化する電磁石となる。このとき、永久磁石51aは、同じ磁極のコイル51bから遠ざかろうとし、また、異なる磁極のコイル51bに引き寄せられるため、永久磁石51aと連結した回転軸は、コイル51bの磁極変化と同期して回転する。このため、モータ51が1回転する際には、磁気検出装置2は、図6Bの(A)〜(G)に例示するような磁気データを計測する。
最初の(A)では、磁気検出装置2に近い上側の3つのコイル51b1、51b2、51b6が全てS極となっているため、磁気データはS極の最大値を示す。続く(B)では、コイル51b6がN極に切り替わり、コイル51b3がS極に切り替わったため、それに合わせて永久磁石51aが時計方向に回転する。このとき、磁気検出装置2に近い上側の3つのコイル51bのうち1つのコイル51b6がN極に切り変わったため、磁気データは(A)よりN極側に移動する。同様に2箇所ずつコイル51bの磁極を切り替えていくことで、各コイルの磁極と磁気検出装置2が計測する磁気データは(C)〜(G)に示すようになるため、永久磁石51aが一回転する間に正弦波状の磁気データが観測される。このため、モータ状態判定部12aは、磁気データの位相に基づいて、モータ51の状態を判定することができる。
また、ステップS1では、かご状態判定部12bは、加速度検出装置3がプーリ54の近傍で計測した振動(加速度)に基づいて乗りかご41の動作状態を判定する。図1や図2に示したように、プーリ54にはロープ43が巻き付けられており、また、ロープ43の一端は乗りかご41と連結しているため、乗りかご41の昇降とプーリ54の回転は連動している。このため、かご状態判定部12bは、プーリ54の回転に伴う振動に基づいて、乗りかご41の動作状態を判定することができる。
ステップS2では、作業者が直接エレベータを操作し、乗りかご41の高速走行を実施する。
ステップS3では、作業者が高速走行中に非常停止を指令する。これにより、モータ51への給電が停止され、巻上機5のブレーキが作動するため、乗りかご41は急停止する。
ステップS4では、作業者が計測終了指令を送信したかを判断し、指令があった場合は、ステップS5に進み、磁気検出装置2と加速度検出装置3の計測を終了する。なお、計測終了指令は、摩耗検査装置1から入力されたものを磁気検出装置2や加速度検出装置3に送信したものであってもよいし、磁気検出装置2や加速度検出装置3に直接入力されたものであってもよい。
ステップS6では、磁気検出装置2と加速度検出装置3の計測値を計測値記録ユニット11に記録し、さらに、記録した計測値を状態判定ユニット12へ送信する。
ステップS7では、状態判定ユニット12は、計測値記録ユニット11から受信した、磁気検出装置2と加速度検出装置3の計測値に基づいて、異常の有無を判定する。この判定方法を具体的に説明するため、まず、図7Aを用い、シーブ53とブレーキがともに正常である場合の、磁気データと加速度データの推移を説明する。
T1は、高速運転の開始時刻である(ステップS2)。この時、エレベータは停止状態から稼働状態に切り替わるため、時刻T1以降では、磁気検出装置2が計測する磁気データはモータ51の回転と同期した正弦波となり、加速度検出装置3が計測する加速度データはプーリ54の回転や振動を示す不規則な波形となる。
T2は、非常停止の開始時刻である(ステップS3)。この時、給電停止とブレーキの影響により、巻上機5は回転を急停止するため、時刻T2以降では、磁気検出装置2が計測する磁気データが定常となる。しかし、巻上機5が急停止しても、シーブ53とロープ43のスリップ発生中は乗りかご41が移動を続けるため、スリップが解消し乗りかご41が完全に停止する時刻T3までの期間は、プーリ54の近傍でもロープ43のスリップに伴う振動が発生し、計測される加速度データは定常とならない。
図7Aのようにシーブ53とブレーキがともに正常であれば、時刻T2〜時刻T3の時間は短いが、何らかの異常があれば、時刻T2〜時刻T3の時間が長くなる傾向がある。そこで、本実施例の状態判定ユニット12は、時刻T2と時刻T3の差異を制動時間Δtとして算出し、この制動期間Δtの長さを閾値と比較することで異常の有無を判定する。
具体的には、状態判定ユニット12は、算出した制動時間Δtに基づいて(式1)が成立するかを確認する。
Δt<Δt+α ・・・(式1)
Δt :制動時間
Δt :初期制動時間(シーブとブレーキの初期状態時に計測した制動時間)
α :許容誤差
(式1)が成立する場合、正常であると判定してステップS8に進み、(式1)が成立しない場合、何らかの異常が起きているものと判定して、ステップS9またはステップS11で異常の態様を判定する。なお、異常と判定される態様には、加速度検出装置3が故障しており、加速度データが収束しないため時刻T3を確定できない場合等も含まれる。
ステップS8では、状態判定ユニット12は、シーブ53とブレーキが正常と判定されたため問題が無いことを判定結果表示部12eへ出力する。
ステップS9では、状態判定ユニット12は、シーブ53の摩耗が発生しているかを判定し、発生していた場合はステップS10へ移行し、発生していない場合はステップS11へ移行する。なお、このステップでの判定方法については、次の通りとなる。
シーブ53の摩耗が発生しており、ブレーキの摩耗が発生していない場合、シーブ53とロープ43の間の摩擦力が減少し制動時間Δtが長くなるため、(式1)が不成立となる。一方、正常なブレーキの作用により巻上機5は直ちに停止するため、磁気データは図7Bのように直ちに定常状態となる。従って、図7Bのように、制動時間Δtの長さが異常であり、かつ、制動時間中の磁気データが定常状態である場合、シーブ摩耗判定部12cはシーブ53の摩耗が発生していると判定する。
ステップS10では、状態判定ユニット12は、判定結果表示部12eを介して、作業者に摩耗状態と判定されたシーブ53の点検指示を通知する。
ステップS11では、状態判定ユニット12は、ブレーキの摩耗が発生しているかを判定し、発生していた場合はステップS12へ移行し、発生していない場合はステップS13へ移行する。なお、このステップでの判定方法については、次の通りとなる。
巻上機5のブレーキの摩耗が発生している場合、給電を停止しブレーキをかけても巻上機5が惰性で回転を続けるため制動時間Δtが伸び、(式1)が不成立となる。このとき、巻上機5が低速で回転を続け、磁気検出装置2は周期の長い正弦波の磁気データを計測することから、計測値は図7Cのようになる。図7Cのように、制動時間Δtの長さが異常であり、かつ、制動時間中に磁気データが変動状態となっていた場合、ブレーキ摩耗判定12dはブレーキの摩耗が発生していると判定する。
ステップS12では、状態判定ユニット12は、判定結果表示部12eを介して、作業者に摩耗状態と判定されたブレーキの点検指示を通知する。
ステップS13は、シーブ53やブレーキの異常に該当しない、何らかの異常があると判定された場合である。これは、(式1)が不成立であるため制動力が不足していると判定されるが、例えば、加速度データが定常状態にならない等の理由で、図7B、図7Cの何れにも当てはまらず、シーブ53やブレーキ以外に問題があると考えられる場合である。そのため、状態判定ユニット12は、判定結果表示部12eを介して、シーブ53やブレーキ以外の箇所(加速度検出装置3等)も点検をするよう指示を通知する。
以上で説明した本実施例によれば、制動時間Δtを閾値と比較することで、ノイズの累積を招く積分演算を行うことなく、シーブやブレーキの過度な摩耗を検査でき、かつ、摩耗がある場合は、シーブの摩耗とブレーキの摩耗を判別することができる。
次に、本発明の実施例2に係る、摩耗検査システム100について説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
実施例1の摩耗検査システム100では、加速度検出装置3をプーリ54の近傍に設置したが、本実施例では、加速度検出装置3を、図8のように乗りかご41に設置するか、あるいは、釣合錘42に設置する。この場合、加速度検出装置3は、上下方向の加速度さえ検出できれば良いので、加速度センサ31は多軸加速度センサを用いる必要は無く、上下方向の加速度を計測できる一軸加速度センサであれば十分である。
本実施例の摩耗検査システム100は、実施例1と同様に、図4に示す構成を備え、図5に示す処理を実行するものであるが、加速度検出装置3の設置位置が異なるため、計測される加速度データが、実施例1の図7A〜図7Cに示すものから、図9A〜図9Cに示すものに変化する。
例えば、シーブ53とブレーキがともに正常である場合は、図9Aに示すように、高速走行中(時刻T1〜T2)に計測される加速度データは、乗りかご41の稼働に対応し、正(加速)、定常(定速)、負(減速)の順に大きく変化し、また、制動時間Δt(時刻T2〜T3)に計測される加速度データは、乗りかご41が完全に停止するまで滑らかに収束する態様となる。
同様に、シーブ53やブレーキに過度な摩耗が発生している場合は、図9Bや図9Cに示すように、制動時間Δt(時刻T2〜T3)に計測される加速度データは、定常となるまでゆらぎながら収束する態様となる。
本実施例においても、加速度データが定常となる時刻を時刻T3と定めることで、実施例1と同等の意義を持つ制動時間Δtを算出できるため、実施例1と同様に、図5のフローチャートを利用して、シーブ53やブレーキの過度な摩耗を判定することができる。
なお、本実施例では、磁気検出装置2を巻上機5に設置する一方、加速度検出装置3を乗りかご41等に設置する必要があるため、両者を巻上機5に設置する実施例1に比べ、設置作業が煩雑となるが、エレベータの昇降状態を直接検出することができるため、図5のフローチャートに従った判断をより正確に実行できるという利点がある。
また、加速度検出装置3をプーリと乗りかごの両方に設置すれば、より信頼性の高い判定をすることが可能となり加速度検出装置自体の故障も検出可能となる。
100 摩耗検査システム
1 摩耗検査装置
11 計測値記録ユニット
11a 磁気記録部
11b 磁気送信部
11c 加速度記録部
11d 加速度送信部
12 状態判定ユニット
12a モータ状態判定部
12b かご状態判定部
12c シーブ摩耗判定部
12d ブレーキ摩耗判定部
12e 判定結果表示部
2 磁気検出装置
21 磁気センサ
22 磁気送信部
3 加速度検出装置
31 加速度センサ
32 加速度送信部
4 昇降路
4a 機械室
41 乗りかご
42 釣合錘
43 ロープ
5 巻上機
51 モータ
51a 永久磁石
51b コイル
52 減速機
53 シーブ
54 プーリ

Claims (7)

  1. ロープ式エレベータの摩耗検査システムであって、
    巻上機のモータの動作を検出する磁気検出装置と、
    プーリの振動と乗りかごの昇降の少なくとも一方を検出する加速度検出装置と、
    前記磁気検出装置と前記加速度検出装置の出力に基づいて、シーブとブレーキの摩耗状態を判定する摩耗検査装置と、
    を備えており、
    前記摩耗検査装置は、稼働中の前記モータへの給電を停止してから、前記乗りかごが停止するまでの制動時間が、所定の閾値よりも長い場合、前記シーブまたは前記ブレーキが摩耗していると判定することを特徴とする摩耗検査システム。
  2. 請求項1に記載の摩耗検査システムにおいて、
    前記加速度検出装置は、前記巻上機のプーリの近傍に設置されており、前記プーリの振動を検出して出力することを特徴とする摩耗検査システム。
  3. 請求項1に記載の摩耗検査システムにおいて、
    前記加速度検出装置は、前記乗りかごに設置されており、前記乗りかごの昇降を検出して出力することを特徴とする摩耗検査システム。
  4. 請求項1に記載の摩耗検査システムにおいて、
    前記閾値は、前記シーブと前記ブレーキの初期状態時に計測した制動時間に、所定の許容誤差を足した値であることを特徴とする摩耗検査システム。
  5. 請求項1に記載の摩耗検査システムにおいて、
    前記制動時間に、
    磁気検出装置が定常状態を示すデータを出力した場合は、前記シーブが摩耗していると判定し、
    磁気検出装置が変動状態を示すデータを出力した場合は、前記ブレーキが摩耗していると判定することを特徴とする摩耗検査システム。
  6. 請求項5に記載の摩耗検査システムにおいて、
    さらに、前記シーブの摩耗状態の判定結果、および、前記ブレーキの摩耗状態の判定結果を表示する表示装置を備えることを特徴とする摩耗検査システム。
  7. 巻上機のモータの動作を検出する磁気データと、乗りかごの動作を検出する加速度データに基づいて、シーブとブレーキの摩耗状態を判定するロープ式エレベータの摩耗検査方法であって、
    稼働中の前記モータへの給電を停止してから、前記乗りかごが停止するまでの制動時間が、所定の閾値よりも長い場合、前記シーブと前記ブレーキの少なくとも一方が摩耗していると判定するステップと、
    前記制動時間に前記モータの動作を検出しなかった場合は、前記シーブが摩耗していると判定するステップと、
    前記制動時間に前記モータの動作を検出した場合は、前記ブレーキが摩耗していると判定するステップと、
    を有することを特徴とする摩耗検査方法。
JP2020009760A 2020-01-24 2020-01-24 ロープ式エレベータの摩耗検査システム、および、摩耗検査方法 Pending JP2021116148A (ja)

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