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JP2021196303A - イメージング質量分析方法、及びイメージング質量分析装置 - Google Patents

イメージング質量分析方法、及びイメージング質量分析装置 Download PDF

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JP2021196303A JP2020104228A JP2020104228A JP2021196303A JP 2021196303 A JP2021196303 A JP 2021196303A JP 2020104228 A JP2020104228 A JP 2020104228A JP 2020104228 A JP2020104228 A JP 2020104228A JP 2021196303 A JP2021196303 A JP 2021196303A
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Abstract

【課題】複数の試料の間で、分布に差異がある化合物を効率的に且つ的確に見つける。【解決手段】同種の複数の試料に対しイメージング質量分析を行い複数の試料を解析するイメージング質量分析装置であって、試料上に設定された複数の微小領域について質量分析を実行して質量分析データを取得する測定部(1)と、解析対象の複数の試料上で関心領域を設定するとともに、複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が同じになるように、関心領域を複数の小領域に分割する関心領域設定部(32)と、小領域毎に対し測定部で得られた質量分析データを用い、試料の間での、m/z値毎の発現の程度の類似性又は相違性を反映した個別指標値を算出する個別指標値算出部(33)と、関心領域に含まれる小領域について得られたm/z値毎の個別指標値を用い、試料の関心領域の間での、m/z値毎の総合指標値を算出する総合指標値算出部(34)と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、イメージング質量分析方法、及び、イメージング質量分析装置に関する。
特許文献1等に開示されているイメージング質量分析装置は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法によるイオン源を搭載しており、生体組織切片などの試料の表面の形態を光学顕微鏡によって観察しながら、その試料上の所望の2次元領域内に設定された微小領域毎に、所定の質量電荷比(厳密には斜体字の「m/z」であるが、ここでは慣用的に「質量電荷比」という)範囲に亘るマススペクトルデータを収集することができる。また、イメージング質量分析の別の方法として、特許文献2等に開示されているように、レーザーマイクロダイセクションと呼ばれる試料採取方法を利用することで、試料上の所望の2次元領域内に設定された微小領域からそれぞれ試料片を切り出し、各試料片から調製した液体試料を質量分析装置に供することで、微小領域毎のマススペクトルデータを取得する方法も知られている。
いずれにしても、試料上の微小領域毎に得られたマススペクトルデータ(以下、このデータを「MSイメージングデータ」という場合がある)から、例えば特定の化合物に由来するイオンの質量電荷比における信号強度値を抽出し、試料上での各微小領域の位置に応じてその信号強度値を配置した画像を作成することで、その特定の化合物の分布状況を示す画像(MSイメージング画像)を得ることができる。
イメージング質量分析を利用した解析では、複数(典型的には二つ)の試料の間での化合物の分布の相違や類似を調べたいという要望がしばしばある。例えば、マウス等の生体試料に薬物を投与したときの臓器への影響を調べる場合、薬物を投与した検体と投与していない検体からそれぞれ採取された概ね同じ部位の試料切片についてそれぞれイメージング質量分析を行い、それによって得られたMSイメージングデータの間の差異を解析することが必要である。こうした解析のために、例えば非特許文献1に開示されているイメージング質量分析データ解析ソフトウェアに搭載されている「差異解析」機能を用いることができる。
特開2013−68565号公報 国際公開第2015/053039号
「MSイメージングデータ解析ソフトウェア IMAGEREVEAL MS Ver.1.1」、製品カタログ、株式会社島津製作所、2020年1月初版発行
或る二つの試料切片について得られたMSイメージングデータに基く差異解析を行う場合、解析担当者(ユーザー)が、例えば試料切片の中で解析に不要な部位や興味のない部位を除外した関心領域(Region of Interest:ROI)を定め、その関心領域について得られたMSイメージングデータ同士について検定などの差異解析を行うのが一般的である。しかしながら、例えば多くの化合物で殆ど差異がなく、ごく一部の化合物でのみ分布に差異があるような場合に、その差異が他の化合物の結果に隠れてしまい、的確な差異解析が行えないことがある。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数の試料についてそれぞれ得られたMSイメージングデータを比較する際に、差異がある化合物を効率的に且つ的確に見つけることができるイメージング質量分析方法、及びイメージング質量分析装置を提供することである。
上記課題を解決するためになされた本発明に係るイメージング質量分析方法の一態様は、同種の複数の試料に対しそれぞれイメージング質量分析を行った結果を用いて該複数の試料を解析するイメージング質量分析方法であって、
解析対象の複数の試料上でそれぞれ関心領域を設定するとともに、複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が概ね同じになるように、前記関心領域のそれぞれを同数の複数の小領域に分割する関心領域設定ステップと、
前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域において得られた質量分析データを用いて、前記複数の試料の間での、質量電荷比値毎の発現の程度の類似性又は相違性を反映した個別指標値を算出する個別指標値算出ステップと、
前記複数の試料の関心領域にそれぞれ含まれる複数の小領域について得られた質量電荷比値毎の個別指標値を用いて、該複数の試料の関心領域の間での、質量電荷比値毎の総合指標値を算出する総合指標値算出ステップと、
を有する。
また上記課題を解決するためになされた本発明に係るイメージング質量分析装置の一態様は、同種の複数の試料に対しそれぞれイメージング質量分析を行った結果を用いて該複数の試料を解析するイメージング質量分析装置であって、
試料上に設定された複数の微小領域それぞれについて質量分析を実行して質量分析データを取得する測定部と、
解析対象の複数の試料上でそれぞれ関心領域を設定するとともに、複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が概ね同じになるように、前記関心領域のそれぞれを同数の複数の小領域に分割する関心領域設定部と、
前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域に対し前記測定部で得られた質量分析データを用い、前記複数の試料の間での、質量電荷比値毎の発現の程度の類似性又は相違性を反映した個別指標値を算出する個別指標値算出部と、
前記複数の試料の関心領域にそれぞれ含まれる複数の小領域について得られた質量電荷比値毎の個別指標値を用いて、該複数の試料の関心領域の間での、質量電荷比値毎の総合指標値を算出する総合指標値算出部と、
を備える。
本発明に係るイメージング質量分析方法及びイメージング質量分析装置の上記態様において、「同種の複数の試料」とは例えば、試料が生体組織の切片である場合には、同じ生体組織を含む切片である。即ち、一般的に、差異解析や比較解析を行うような対象の試料である。
また、「複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が概ね同じになるように」とは、例えば、試料上に複数の生体組織(例えば臓器)が含まれる場合に、同じ生体組織が異なる試料上の対応する小領域に含まれるように、という意味である。
本発明に係るイメージング質量分析方法及びイメージング質量分析装置の上記態様によれば、関心領域全体ではなく、関心領域を複数に分割した相対的に狭い面積である小領域毎に個別指標値を算出するので、試料上の狭い範囲で分布に差異がある化合物の情報を的確に捉えることができる。それにより、複数の試料の間で分布や強度に差異がある化合物を効率良く且つ的確に見つけることができる。
本発明の一実施形態であるイメージング質量分析装置の概略ブロック構成図。 本実施形態のイメージング質量分析装置における解析処理の手順の一例を示すフローチャート。 本実施形態のイメージング質量分析装置における関心領域及び関心小領域の設定の一例を示す図。 本実施形態のイメージング質量分析装置における解析処理を説明するための模式図。 本実施形態のイメージング質量分析装置においてm/z値の並べ替えを行ったあとのm/z値の個数の積算値と、目視結果と合致した数との関係を示すグラフ。
以下、本発明の一実施形態であるイメージング質量分析装置について、添付図面を参照して説明する。
[本実施形態の装置構成]
図1は、本実施形態のイメージング質量分析装置の概略ブロック構成図である。
図1に示すように、本実施形態のイメージング質量分析装置は、イメージング質量分析部1と、光学顕微観察部2と、データ処理部3と、入力部4と、表示部5と、を含む。
ここでは、イメージング質量分析部1は、例えば特許文献1に開示されているような大気圧MALDIイオントラップ飛行時間型質量分析装置を利用した装置である。但し、特許文献2に開示されているような、レーザーマイクロダイセクション装置と、該装置によって試料から採取された微細な試料片から調製された試料を質量分析する質量分析装置とを組み合わせた装置でもよい。光学顕微観察部2は、生体組織切片などの試料の光学顕微画像を取得可能な顕微鏡である。特許文献1に開示されているような装置では、通常、光学顕微観察部2はイメージング質量分析部1と一体化されている。
データ処理部3は、機能ブロックとして、データ格納部31、ROI/小領域設定処理部32、個別検定実行部33、総合検定指標算出部34、m/z値並べ替え部35、及び、表示処理部36、を含む。
本実施形態の装置において、データ処理部3は、通常、パーソナルコンピューター又はより高性能なワークステーションを中心に構成され、該コンピューターにインストールされた専用のデータ処理ソフトウェアを該コンピューター上で実行することによって、上記各機能ブロックが具現化されるものとすることができる。この場合、入力部4はコンピューターに付設されたキーボードやポインティングデバイス(マウスなど)であり、表示部5はディスプレイモニターである。
[本実施形態の装置における解析処理]
本実施形態のイメージング質量分析装置を用い二つの試料の差異解析を行う場合についての解析処理の手順を、図2及び図4を参照しつつ説明する。図2は解析処理の手順の一例を示すフローチャート、図4は解析処理を説明するための模式図である。試料は実験動物の脳や内臓などの生体組織が薄くスライスされた切片試料である。ここでは特に、薬物が投与されたマウスの胸部の切片試料(以下「薬物投与試料」という)と薬物が投与されていないマウスの胸部の切片試料(以下「コントロール試料」という)との差異解析を行う場合について例示する。
二つの試料はそれぞれ試料プレート上に載せられ、光学顕微観察部2の所定位置にセットされる。光学顕微観察部2は各試料の光学顕微画像を取得し、その画像データはデータ格納部31に保存される(ステップS10)。
ユーザーが入力部4で所定の操作を行うと、ROI/小領域設定処理部32は各試料の光学顕微画像を表示部5に表示する。ユーザーは画面上で各試料の光学顕微画像を確認し、差異解析の対象とするROIを各試料についてそれぞれ設定する操作を行う。この操作を受けてROI/小領域設定処理部32は、各試料上にROIを設定する(ステップS11)。
図3(A)はコントロール試料の光学顕微画像、図3(B)は薬物投与試料の光学顕微画像である。ここでは、ユーザーが興味があるのは臓器部分であり、外周側にある皮膚や筋肉部分は興味の対象外である。そこで、ユーザーは、各試料の光学顕微画像上で臓器部分を概ね含む領域をROIとして指定する。ROIの指定は、入力部4に含まれるポインティングデバイスにより画像上で所望の領域を囲む線を描くことで行うことができる。図3(A)、(B)では外側の曲線がROIを指定する線である。図3を見れば分かるように、二つの試料は異なる個体の試料ではあるものの、同種のマウスでほぼ同じ部位の切片であるので、全体の形状や臓器の配置はおおよそ一致している。したがって、通常、二つの試料について比較すべきROIを概ね適切に設定することができる。
次いで、ユーザーは、各試料のROIの内側を、試料間で概ね同じ部位が含まれるように複数に分割する操作を行う。この操作を受けて、ROI/小領域設定処理部32は、各試料上のROIを分割して、複数の関心小領域を設定する(ステップS12)。そして、ROI/小領域設定処理部32は、試料間で概ね同じ部位が含まれる関心小領域を対応付けるために、各ROI内で関心小領域に番号を割り当てる。図3の例では、ROIが四つに分割され、各関心小領域に(1)〜(4)の番号が付されている。なお、ROIの分割は任意の位置で行うようにすることができる。また、その分割数や関心小領域の面積も任意に決めることができる。
次に、上記試料は光学顕微観察部2から一旦取り出され、その表面にMALDI用のマトリックスが塗布されてイメージング質量分析部1の所定位置にセットされる。イメージング質量分析部1は、セットされた試料上のROIの範囲内の領域を格子状に細かく区切った微小領域毎に、それぞれ質量分析を行い、所定の質量電荷比範囲に亘るマススペクトルデータを取得する(ステップS13)。なお、通常の質量分析ではなく、特定の質量電荷比を有する又は質量電荷比範囲に含まれるイオンをプリカーサーイオンとしたMS/MS分析やnが3以上のMSn分析を行ってプロダクトイオンスペクトルデータを取得してもよい。
具体的には、一つの微小領域にレーザー光を短時間照射し、その微小領域に存在する化合物由来のイオンを発生させる。そのイオンをイオントラップに一旦導入したあと、飛行時間型質量分離器に送り込むことでイオンを質量電荷比に応じて分離して検出する。この動作を、試料上でレーザー光の照射位置が変わるように試料を移動させながら繰り返し行うことで、ROI内に設定された全ての微小領域についてのマススペクトルデータを収集する。上述したように収集された各微小領域におけるマススペクトルデータ、即ちROI全体についてのMSイメージングデータは、データ処理部3のデータ格納部31に格納される。
また、一つの試料についてイメージング質量分析が終了すると、他の一つの試料についても同様にイメージング質量分析が実行され、その試料のROI全体についてのMSイメージングデータがデータ処理部3のデータ格納部31に格納される。
適宜の時点で、ユーザーにより解析実行が指示されると、個別検定実行部33は、データ格納部31から各試料の関心小領域毎に上記MSイメージングデータを読み出し、マススペクトルデータ毎に所定の基準でピークを検出し、各ピークの質量電荷比値及び信号強度値を求める。そして、関心小領域に含まれる全ての微小領域についてのマススペクトルデータにおいて検出されたピークの質量電荷比値及び信号強度値を集めデータ行列を作成する(ステップS14)。
図4では、二つの試料を試料A、Bとし、(1)〜(4)の番号が振られた関心小領域をROI-#1〜ROI-#4と示している。一つの関心小領域におけるデータ行列は、その関心小領域内の全ての微小領域の番号を縦方向に並べ、全てのピークの質量電荷比値(M1、M2、M3、…)を横方向に並べ、或る微小領域において或る質量電荷比値に対する信号強度値を要素とした行列である。試料が生体由来の試料である場合、通常、試料には非常に多くの化合物が含まれるため、一つのマススペクトルに多くのピークが現れる。したがって、データ行列における質量電荷比値の数(図4に示した行列の列数)は非常に多い。
次に個別検定実行部33は、二つの試料の間の同じ番号が振られた関心小領域同士に対してそこに含まれるマススペクトルピークを比較する。具体的には、ピークの信号強度を所定の幅毎に区切って複数の信号強度レベルを定め、一つの関心小領域内に存在する多数の微量領域について上述のように作成された一つのデータ行列から、m/z値毎に、信号強度値が各信号強度レベルに含まれる微小領域の数を計数する。そして、信号強度レベルを横軸、信号強度値がその信号強度レベルに含まれる微小領域の数を縦軸にとったヒストグラムを作成する。このヒストグラムはm/z値の数だけ、つまりはデータ行列の列数だけ作成される(ステップS15)。各試料の関心小領域毎に、m/z値の数と同数のヒストグラムを作成することができる。ヒストグラムを作成する際には、ノイズピークを計数してしまうことを避けるために、信号強度値が所定値以下であるものは信号強度値ゼロ(つまりピーク無し)としてもよい。
そのあと個別検定実行部33は、試料間で同じ番号の関心小領域において作成された多数(m/z値の数と同数)のヒストグラムに対し所定の検定を実行する。具体的には、例えば、両者の間に差がないという仮説についてマン・ホイットニーのu検定やスチューデントのt検定などを行うことができる。こうした仮説検定によって、m/z値毎に、仮説が正しいと判断できる確率を示すp値を求める(ステップS16)。このp値が小さければ、二つの試料の間でのそのm/z値の分布に差異があることを意味している。
個別検定実行部33で算出されるp値は、二つの試料の同じ番号が振られた関心小領域同士の検定の結果である。そこで、総合検定指標値算出部34は、ROIに含まれる全ての関心小領域の検定結果(p値)を統合して、m/z値毎に分布の差異の程度を示す指標値を算出する(ステップS17)。例えば、全ての関心小領域において得られたp値の積を計算して指標値を算出することができる。
ROIには様々な部位が含まれており、その中の或る一部の部位において含有量に差がある化合物があったとしても、他の多くの部位でその化合物の含有量に差がなかったとすると、ROI全体として検定を行った場合には、そうした部分的な化合物の含有量の差の影響が殆ど現れないことがある。これに対し、上記解析方法によれば、その化合物の含有量に差がある部位を含む比較的狭い領域を関心小領域として設定することができれば、その関心小領域についての検定結果には、化合物の含有量の差の影響が明確に現れる。その結果、その検定結果をROI全体の検定結果にも反映させることができ、二つの試料の間で含有量に差がある化合物に対応するm/z値を見出せる可能性が高くなる。
m/z値並べ替え部35は、総合検定指標値算出部34で算出されたm/z値毎の総合指標値に基いて、総合指標値が小さい順に、つまりは分布に差がある確率が高い順に、m/z値を並び替え、表示処理部36はその並び替えられた結果を表示部5に表示する(ステップS18)。ユーザーはこの結果から、二つの試料間で分布が変化している可能性が高いm/z値を優先的に選択し、MSイメージング画像を確認することができる。
また、表示処理部36は、収集したMSイメージングデータに基いて、並び替えられたm/z値の順にMSイメージング画像を作成し、これを表示部5に表示するようにすることもできる。これにより、ユーザーは二つの試料間で分布が変化している可能性が高いm/z値から優先的にMSイメージング画像を確認することができる。
図5は、実際に収集したMSイメージングデータに基いて3000個のm/z値における二つの試料のMSイメージング画像をそれぞれ作成し、その中から試料間で分布に差異があるものを人間が目視で確認して選択した550個のm/z値と、上述の解析方法で並び替えたm/z値との合致の程度を示すグラフである。横軸はm/z値の数の積算値であるが、この横軸上で左端には最も差異が生じている確率が高いm/z値が位置しており、右方に向かうほどその確率が低いm/z値を含むことを表している。一方、縦軸は上記の合致したm/z値の数である。
図5のグラフに示されているカーブでは、左端から右方へ向かう際に初めの立ち上がりが急である。これは、上記解析方法で分布に差があるとして選択されたm/z値に、目視でも確認されたm/z値が多数含まれていることを意味している。この例では、上記解析方法で分布に差があるとして選択された初めの300個のm/z値中に、目視でも差があると確認されたm/z値の約半数、250個が含まれている。上記解析方法を用いずに分布に差があるm/z値を探索する場合には、その効率は550/3000であるのに対し、上記解析方法を用いることで、その探索効率は250/300に向上したということができる。つまり、上記解析方法を用いることで、探索効率が5倍程度改善したということができる。
上記実施形態のイメージング質量分析装置では、二つの試料の対応する関心小領域の間で分布に差異があるm/z値を見つけ、その確率を定量化するために仮説検定を利用していたが、利用可能な手法は仮説検定に限らず、例えば、ベイズ推定における信頼区間や効果量などを利用した別の手段で評価することもできる。
また、上述した解析の手順では、イメージング質量分析に先立って試料の光学顕微画像上でROI及び関心小領域を設定していたが、先に試料全体についてのイメージング質量分析を実行し、そのあとにROI及び関心小領域を設定して、その設定された領域に含まれるデータのみを利用して解析を行うようにしてもよい。このように、図2におけるステップS10〜S13の処理はこの順序で行う必要はなく、適宜に入れ替えることが可能である。
また、上記実施形態はあくまでも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)本発明に係るイメージング質量分析方法の一態様は、同種の複数の試料に対しそれぞれイメージング質量分析を行った結果を用いて該複数の試料を解析するイメージング質量分析方法であって、
解析対象の複数の試料上でそれぞれ関心領域を設定するとともに、複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が概ね同じになるように、前記関心領域のそれぞれを同数の複数の小領域に分割する関心領域設定ステップと、
前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域において得られた質量分析データを用いて、前記複数の試料の間での、質量電荷比値毎の発現の程度の類似性又は相違性を反映した個別指標値を算出する個別指標値算出ステップと、
前記複数の試料の関心領域にそれぞれ含まれる複数の小領域について得られた質量電荷比値毎の個別指標値を用いて、該複数の試料の関心領域の間での、質量電荷比値毎の総合指標値を算出する総合指標値算出ステップと、
を有する。
(第5項)また本発明に係るイメージング質量分析装置の一態様は、同種の複数の試料に対しそれぞれイメージング質量分析を行った結果を用いて該複数の試料を解析するイメージング質量分析装置であって、
試料上に設定された複数の微小領域それぞれについて質量分析を実行して質量分析データを取得する測定部と、
解析対象の複数の試料上でそれぞれ関心領域を設定するとともに、複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が概ね同じになるように、前記関心領域のそれぞれを同数の複数の小領域に分割する関心領域設定部と、
前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域に対し前記測定部で得られた質量分析データを用い、前記複数の試料の間での、質量電荷比値毎の発現の程度の類似性又は相違性を反映した個別指標値を算出する個別指標値算出部と、
前記複数の試料の関心領域にそれぞれ含まれる複数の小領域について得られた質量電荷比値毎の個別指標値を用いて、該複数の試料の関心領域の間での、質量電荷比値毎の総合指標値を算出する総合指標値算出部と、
を備える。
第1項に記載のイメージング質量分析方法、及び、第5項に記載のイメージング質量分析装置によれば、関心領域全体ではなく、関心領域を複数に分割した相対的に狭い面積である小領域毎に個別指標値を算出するので、試料上の狭い範囲で分布に差異がある化合物の情報を的確に捉えることができる。それにより、複数の試料の間で分布や強度に差異がある化合物を効率良く且つ的確に見つけることができる。
(第2項)第1項に記載のイメージング質量分析方法では、前記総合指標値に基いて質量電荷比値に優先順位を付け、該優先順位に従って質量電荷比値情報又は質量電荷比値における質量分析イメージング画像を並び替えて表示する表示処理ステップ、をさらに有するものとすることができる。
(第6項)また第5項に記載のイメージング質量分析装置では、前記総合指標値に基いて質量電荷比値に優先順位を付け、該優先順位に従って質量電荷比値情報又は質量電荷比値における質量分析イメージング画像を並び替えて表示する表示処理部、をさらに備えるものとすることができる。
第2項に記載のイメージング質量分析方法、及び、第6項に記載のイメージング質量分析装置によれば、ユーザーは、複数の試料の間で分布に差異がある可能性が高いm/z値から順に質量分析イメージング画像を確認することができる。それにより、複数の試料の差異解析を効率的に行うことができる。
(第3項)第1項又は第2項に記載のイメージング質量分析方法において、前記関心領域設定ステップでは、解析対象の試料上の観察画像を表示した画面上で、ユーザーに関心領域を設定させるとともに、該関心領域を小領域に分割させるものとすることができる。
(第7項)第5項又は第6項に記載のイメージング質量分析装置において、前記関心領域設定部は、解析対象の試料上の観察画像を表示した画面上で、ユーザーに関心領域を設定させるとともに、該関心領域を小領域に分割させるものとすることができる。
第3項に記載のイメージング質量分析方法、及び、第7項に記載のイメージング質量分析装置によれば、ユーザーの知識や判断を利用して、差異解析に適した関心領域を設定することができるとともに、分布に差異があるm/z値を的確に探索できるように関心領域を適切に分割することができる。
(第4項)第1項〜第3項のいずれか1項に記載のイメージング質量分析方法において、 前記個別指標値算出ステップでは、前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域において得られた質量分析データを用い、質量電荷比値毎に信号強度レベルと微小領域の数との関係を示すヒストグラムを作成し、複数の試料についてそれぞれ質量電荷比値毎に得られたヒストグラムに対し検定を実施することで個別指標値を算出するものとすることができる。
(第8項)第5項〜第7項のいずれか1項に記載のイメージング質量分析装置において、前記個別指標値算出部は、前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域において得られた質量分析データを用い、質量電荷比値毎に信号強度レベルと微小領域の数との関係を示すヒストグラムを作成し、複数の試料についてそれぞれ質量電荷比値毎に得られたヒストグラムに対し検定を実施することで個別指標値を算出するものとすることができる。
ここでいう検定は例えば、分布に差異がある又はないという仮説の下での仮説検定である。第4項に記載のイメージング質量分析方法、及び、第8項に記載のイメージング質量分析装置によれば、比較的簡単な処理によって、複数の試料の間で分布に差異があるm/z値の情報を高い確度で抽出することができる。
1…イメージング質量分析部
2…光学顕微観察部
3…データ処理部
31…データ格納部
32…ROI/小領域設定処理部
33…個別検定実行部
34…総合検定指標算出部
35…m/z値並べ替え部
36…表示処理部
4…入力部
5…表示部

Claims (8)

  1. 同種の複数の試料に対しそれぞれイメージング質量分析を行った結果を用いて該複数の試料を解析するイメージング質量分析方法であって、
    解析対象の複数の試料上でそれぞれ関心領域を設定するとともに、複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が概ね同じになるように、前記関心領域のそれぞれを同数の複数の小領域に分割する関心領域設定ステップと、
    前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域において得られた質量分析データを用いて、前記複数の試料の間での、質量電荷比値毎の発現の程度の類似性又は相違性を反映した個別指標値を算出する個別指標値算出ステップと、
    前記複数の試料の関心領域にそれぞれ含まれる複数の小領域について得られた質量電荷比値毎の個別指標値を用いて、該複数の試料の関心領域の間での、質量電荷比値毎の総合指標値を算出する総合指標値算出ステップと、
    を有するイメージング質量分析方法。
  2. 前記総合指標値に基いて質量電荷比値に優先順位を付け、該優先順位に従って質量電荷比値情報又は質量電荷比値における質量分析イメージング画像を並び替えて表示する表示処理ステップ、をさらに有する、請求項1に記載のイメージング質量分析方法。
  3. 前記関心領域設定ステップでは、解析対象の試料上の観察画像を表示した画面上で、ユーザーに関心領域を設定させるとともに、関心領域を小領域に分割させる、請求項1又は2に記載のイメージング質量分析方法。
  4. 前記個別指標値算出ステップでは、前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域において得られた質量分析データを用い、質量電荷比値毎に信号強度レベルと微小領域の数との関係を示すヒストグラムを作成し、複数の試料についてそれぞれ質量電荷比値毎に得られたヒストグラムに対し検定を実施することで個別指標値を算出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイメージング質量分析方法。
  5. 同種の複数の試料に対しそれぞれイメージング質量分析を行った結果を用いて該複数の試料を解析するイメージング質量分析装置であって、
    試料上に設定された複数の微小領域それぞれについて質量分析を実行して質量分析データを取得する測定部と、
    解析対象の複数の試料上でそれぞれ関心領域を設定するとともに、複数の試料の間でその小領域に含まれる試料上の部位が概ね同じになるように、前記関心領域のそれぞれを同数の複数の小領域に分割する関心領域設定部と、
    前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域に対し前記測定部で得られた質量分析データを用い、前記複数の試料の間での、質量電荷比値毎の発現の程度の類似性又は相違性を反映した個別指標値を算出する個別指標値算出部と、
    前記複数の試料の関心領域にそれぞれ含まれる複数の小領域について得られた質量電荷比値毎の個別指標値を用いて、該複数の試料の関心領域の間での、質量電荷比値毎の総合指標値を算出する総合指標値算出部と、
    を備えるイメージング質量分析装置。
  6. 前記総合指標値に基いて質量電荷比値に優先順位を付け、該優先順位に従って質量電荷比値情報又は質量電荷比値における質量分析イメージング画像を並び替えて表示する表示処理部、をさらに備える、請求項5に記載のイメージング質量分析装置。
  7. 前記関心領域設定部は、解析対象の試料上の観察画像を表示した画面上で、ユーザーに関心領域を設定させるとともに、該関心領域を小領域に分割させる、請求項5又は6に記載のイメージング質量分析装置。
  8. 前記個別指標値算出部は、前記小領域毎に、その小領域に含まれる微小領域において得られた質量分析データを用い、質量電荷比値毎に信号強度レベルと微小領域の数との関係を示すヒストグラムを作成し、複数の試料についてそれぞれ質量電荷比毎に得られたヒストグラムに対し検定を実施することで個別指標値を算出する、請求項5〜7のいずれか1項に記載のイメージング質量分析装置。
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