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JP2021155646A - フレキソインキ、物品およびレーザマーキングされた物品の製造方法 - Google Patents

フレキソインキ、物品およびレーザマーキングされた物品の製造方法 Download PDF

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JP2021155646A JP2020059577A JP2020059577A JP2021155646A JP 2021155646 A JP2021155646 A JP 2021155646A JP 2020059577 A JP2020059577 A JP 2020059577A JP 2020059577 A JP2020059577 A JP 2020059577A JP 2021155646 A JP2021155646 A JP 2021155646A
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剛 柴田
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与二 若宮
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Abstract

【課題】フレキソ印刷法によって段ボール等の基材にレーザマーキング層を設けるために好ましく用いられるインキを提供すること。【解決手段】樹脂、ロイコ色素および顕色剤を含むフレキソインキ。このフレキソインキの全不揮発成分中のロイコ色素の比率は10〜35質量%である。また、このフレキソインキの25℃における粘度は、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒である。【選択図】図1

Description

本発明は、フレキソインキ、物品およびレーザマーキングされた物品の製造方法に関する。より具体的には、フレキソインキ、そのフレキソインキにより設けられたレーザマーキング層を備える物品、その物品にレーザ光を照射する工程を含むレーザマーキングされた物品の製造方法に関する。
レーザ光の照射により不可逆的に発色する成分にレーザ光を照射して画像を形成する技術(レーザマーキング技術)が、近年、盛んに検討されている。特に、物品の包装(包装材)にレーザマーキングを行う検討が盛んである。
特許文献1には、包装材にバーコード等の機械読み取り用マーキングを行うことを課題として、結合剤と多価金属のオキシアニオンとを備えるレーザマーキング用組成物が記載されている。特許文献1の実施例には、レーザ発色性の組成物をカートンボードやポリプロピレンフィルム等の基材に印刷(グラビア印刷またはフレキソ印刷)したことや、その基材にレーザ光を照射して画像を形成したことが記載されている。
特許文献2には、レーザを照射して多色のバーコードや2次元コードを生成する方法、および、当該方法に用いられる組成物が開示されている。
特許文献3には、発色剤、一般式で規定された有機金属化合物のアミン塩、バインダーおよび溶媒を含むコーティング組成物が記載されている。特に、実施例には、当該コーティング組成物を紙またはプラスチックに塗布してコーティングを得たことが記載されている。
特許文献4には、フェニルホスホン酸銅や銅・モリブデン複合酸化物等のレーザ発色剤と、ウレタン樹脂やアクリル樹脂等のバインダー樹脂とを含む、レーザマーキング可能なインキ組成物が記載されている。また、当該組成物を、グラビア版を用いて、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムまたは紙に印刷するなどして記録材を得た旨が記載されている。
特許文献5には、ポリエチレン等の包装フィルムにレーザマーキングを行う方法として、表層フィルムとシート層フィルムでサンドイッチされた酸化チタンを着色剤に用いた白色インキ層を有する包装フィルム等が記載されている。
特表2004−522631号公報 特表2012−502383号公報 特表2008−538548号公報 特開2007−313875号公報 特開2016−137719号公報
レーザマーキング可能な包装材としては、樹脂フィルムのほか、段ボールも検討されている。つまり、段ボール基材の表面の少なくとも一部に、レーザを照射することで発色するレーザマーキング層を設けることで、レーザマーキング可能な物品(包装材)を得ることができる。
従来、段ボール表面への印刷は、フレキソ印刷法により行われることが多い。よって、段ボール表面にレーザマーキング層を設ける場合も、フレキソ印刷法を適用することが考えられる。すなわち、レーザ発色性成分を含むインキを、フレキソ印刷法により基材(具体的には段ボール)表面に印刷して、レーザマーキング可能な物品(包装材、段ボール)を得ることが考えられる。
しかし、本発明者らの知る限り、これまで、「レーザ発色性成分を含むフレキソインキ」については、あまり具体的な検討がなされてこなかった。
そこで、本発明者らは、今回、フレキソ印刷法によって段ボール等の基材にレーザマーキング層を設けるために好ましく用いられるインキを提供することを目的として、検討を行った。
検討の結果、本発明者らは、以下に提供される発明を完成させた。
本発明によれば、
樹脂、ロイコ色素および顕色剤を含むフレキソインキであって、
全不揮発成分中の前記ロイコ色素の比率が10〜35質量%であり、
25℃における粘度が、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒であるフレキソインキ
が提供される。
また、本発明によれば、
基材と、
上記のフレキソインキにより、前記基材の表面の少なくとも一部に設けられたレーザマーキング層と
を備える物品
が提供される。
また、本発明によれば、
上記の物品におけるレーザマーキング層にレーザ光を照射して画像を形成する画像形成工程を含む、レーザマーキングされた物品の製造方法
が提供される。
本発明のフレキソインキは、フレキソ印刷法によって段ボール等の基材にレーザマーキング層を設けるために好ましく用いられる。
フレキソ印刷法を説明するための図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合がある。
図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応しない。
本明細書中、数値範囲の説明における「X〜Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1〜5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本明細書において、「フレキソインキ」とは、フレキソ印刷機で使用されるインキのことを表す。フレキソ印刷機の種類としては、チャンバーブレード式や2ロール式などがあるが、これらのみに限定されない。
<フレキソインキ>
本実施形態のフレキソインキは、樹脂、ロイコ色素および顕色剤を含む。
本実施形態のフレキソインキの全不揮発成分中の、ロイコ色素の比率は、10〜35質量%である。
本実施形態のフレキソインキの、25℃における粘度は、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒である。
本発明者らは、フレキソ印刷法によって段ボール等の基材にレーザマーキング層を設ける際の、フレキソインキの好ましい態様について検討した。
フレキソ印刷法においては、弾性物質でできた版を、基材に「押し当てる」ことで、文字や画像を基材に印刷する。よって、原理的に、フレキソ印刷法においては、単位面積あたりに印刷されるインキの量を多くすることが難しい。しかし、単位面積あたりに印刷されるインキの量が少ないと、レーザ照射により発色する物質の量も少なくなる。そうすると、レーザを照射したときに十分に変色するレーザマーキング層を形成できない。
このため、本実施形態においては、フレキソインキの全不揮発成分中の、ロイコ色素の比率を、少なくとも10質量%とした。このことにより、レーザを照射したときに十分に変色するレーザマーキング層を形成することができる。
また、本実施形態においては、フレキソインキの全不揮発成分中のロイコ色素の比率は、35質量%以下である。このことにより、インキが十分な量の樹脂や顕色剤を含むことができるようにしている。ちなみに、フレキソインキの全不揮発成分中のロイコ色素の比率が35質量%を超えると、ロイコ色素が均一に分散したフレキソインキを調製しにくくなる(ロイコ色素の粗大粒子がフレキソインキ中に残ってしまう)場合がある。
また、本実施形態において、フレキソインキの25℃における粘度は、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒、好ましくは9〜18秒である。粘度がこの範囲にあることにより、フレキソ印刷法による印刷を適切に行うことができる。
念のため述べておくと、フレキソインキを使用直前に希釈して用いる場合には、希釈後の粘度が上記範囲内であることが好ましい。
ちなみに、フレキソインキ中のロイコ色素の比率が大きいと、粘度が大きくなりがちな場合がある。これについて、本実施形態においては、例えば後述のアルカリ可溶性樹脂を用いること(より具体的には、適当な重量平均分子量を有するアルカリ可溶性樹脂を用いること)により、「ロイコ色素の比率が大きくても、粘度が比較的小さい」フレキソインキを調製することができる。
換言すると、「(i)全不揮発成分中のロイコ色素の比率が10〜35質量%であり、かつ、(ii)5℃における粘度が、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒であるフレキソインキ」は、単に全不揮発成分中のロイコ色素の比率を10〜35質量%とすれば得られるものではなく、アルカリ可溶性樹脂などの成分を適切に選択することによってはじめて得ることができる。
以下、フレキソインキが含むことができる成分や、フレキソインキの物性、性状などについて説明を続ける。
(樹脂)
本実施形態のフレキソインキは、樹脂を含む。樹脂の存在により、ロイコ色素や顕色剤が「分散」することができる。
・アルカリ可溶性樹脂
樹脂は、好ましくはアルカリ可溶性樹脂を含む。
アルカリ可溶性樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂を含む。(メタ)アクリル系樹脂は、(i)(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位のみを有していてもよいし、(ii)(メタ)アクリル系モノマーに由来する構造単位と、そうではない構造単位(例えば、スチレン系モノマーに由来する構造単位)とを有していてもよい。詳細は不明であるが、スチレン共重合の樹脂を用いることで、レーザマーキング層の耐湿性が高まる傾向がある。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3000〜12000、より好ましくは3500〜10000である。適度な重量平均分子量のアルカリ可溶性樹脂を用いることで、粘度を上述の数値範囲に設計しやすい。
重量平均分子量は、例えば、標準物質としてポリスチレンを用いたときのGPC(Gel Permeation Chromatography)測定により求められる。
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、好ましくは100〜400mgKOH/g、より好ましくは150〜350mgKOH/gである。
本発明者らの知見として、適度な酸価を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることで、例えば、フレキソインキを用いて形成されたレーザマーキング層の、耐湿性が高まる(湿気により変色しにくくなる)傾向がある。これは、酸基とロイコ色素との親和性が高いことにより、ロイコ色素が水分と接触しにくくなるためと推定される。
酸価の定義/測定方法については、JIS K 0070を参照することができる。
アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは60〜160℃、より好ましくは80〜140℃である。
本発明者らの知見として、適度なガラス転移温度を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることで、例えば、フレキソインキを用いて形成されたレーザマーキング層の、耐湿性が高まる(湿気により変色しにくくなる)傾向がある。これは、ガラス転移温度が高いアルカリ可溶性樹脂は分子運動しにくいことが関係していると推定される。つまり、アルカリ可溶性樹脂が分子運動しにくいことにより、水分の移動や侵入が抑えられ、結果、ロイコ色素と水分との反応が抑えられると推定される。
アルカリ可溶性樹脂の量は特に限定されないが、適切な量のアルカリ可溶性樹脂を用いることで、例えば耐湿性を一層高められる場合がある。
具体的には、後述のロイコ色素100質量部に対するアルカリ可溶性樹脂の比率は、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは60〜180質量部である。ロイコ色素の量に対して、適度な量のアルカリ可溶性樹脂が存在することで、良好な諸性能を得つつ、耐湿性が一層向上すると考えられる。
・エマルション型の樹脂
樹脂は、エマルション型の樹脂を含んでもよい。エマルション型の樹脂として具体的には、(メタ)アクリル系樹脂のエマルション、より具体的には、スチレン−(メタ)アクリル系樹脂のエマルションなどを挙げることができる。
エマルション型の樹脂は、例えば、星光PMC株式会社などから入手可能である。
本実施形態のフレキソインキは、樹脂として、(i)1または2以上のアルカリ可溶性樹脂のみを含んでもよいし、(ii)1または2以上のエマルション型の樹脂のみを含んでもよいし、(iii)1または2以上のアルカリ可溶性樹脂と、1または2以上のエマルション型の樹脂との両方を含んでもよい。
フレキソインキの全不揮発成分中の樹脂の比率は、通常20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%、さらに好ましくは30〜45質量%である。樹脂の比率が20質量%以上であることで、ロイコ色素や顕色剤などを十二分に分散させることができ、印刷性がより良好となる。樹脂の比率が50質量%以下であることで、フレキソインキ中にロイコ色素や顕色剤などを十分に含めることができ、より良好な発色性につながる。
(ロイコ色素)
本実施形態のフレキソインキは、ロイコ色素を含む。
使用可能なロイコ色素に特に制限はない。顕色剤と併用したときに、レーザ照射により色変化するものを特に制限なく用いることができる。具体的には、公知のフタリド系、フルオラン系、トリアリールメタン系、ベンゾオキサジン系、キナゾリン系、スピロピラン系、キノン系、チアジン系、オキサジン系などのロイコ色素を用いることができる。
より具体的には、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−エチル−N−p−トリル)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3'−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2',4'−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6'−クロロ−8'−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、6'−ブロモ−3'−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−クロルフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−ニトロフェニル)フタリド、3−(2'−ヒドロキシ−4'−ジエチルアミノフェニル)−3−(2'−メトキシ−5'−メチルフェニル)フタリド、3−(2'−メトキシ−4'−ジメチルアミノフェニル)−3−(2'−ヒドロキシ−4'−クロル−5'−メチルフェニル)フタリド、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3')−6'−ジメチルアミノフタリド、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4'−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4',5'−ベンゾフルオラン、2'−アニリノ−6'−ジブチルアミノ−3'−メチルスピロ[フタリド−3,9'−[9H]キサンテン]、2−(フェニルアミノ)−3−メチル−6−[エチル(p−トリル)アミノ]スピロ[9H−キサンテン−9,1'(3'H)−イソベンゾフラン]−3'−オン等が挙げられる。
その他、特開2015−193232号公報の0021段落に記載の化合物や、特許5914235号公報の0047段落から0056段落に記載の化合物なども挙げることができる。
ロイコ色素は、例えば、長瀬産業株式会社から市販されている。
本実施形態のフレキソインキは、1のみのロイコ色素を含んでいてもよいし、2以上のロイコ色素(化学構造が異なる2以上のロイコ色素)を含んでいてもよい。
前述のように、フレキソインキの全不揮発成分中の、ロイコ色素の比率は、10〜35質量%である。この比率は、好ましくは15〜35質量%、より好ましくは20〜30質量%である。ロイコ色素の比率を最適化することで、フレキソ印刷時の印刷性と、レーザマーキングの際のより濃い発色とを両立させやすい。
(顕色剤)
本実施形態のフレキソインキは、顕色剤を含む。
使用可能な顕色剤に特に制限はない。レーザが照射されることにより何らかの変化を起こして、ロイコ色素を発色させることが可能なものである限り、任意の顕色剤を用いることができる。
顕色剤の一例としては、フェノール化合物が挙げられる。具体的には、ターシャリーブチルカテコール、n−ステアリルフェノール、o−フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、4−[(4−イソプロポキシフェニル)スルホニル]フェノールなどが挙げられる。
顕色剤として好ましく使用可能なフェノール化合物は、例えば、長瀬産業株式会社、富士フイルム和光純薬株式会社などから入手可能である。
顕色剤の別の例としては、以下一般式(I)で表される化合物が挙げられる。つまり、本実施形態のフレキソインキは、好ましくは、以下一般式(I)で表される化合物を含む。
Figure 2021155646
一般式(I)中、
Xは、ケイ素原子またはホウ素原子であり、
EおよびFは、それぞれ独立に2価の有機基であり、
およびRは、それぞれ独立に1価の有機基であり、
Xがケイ素原子の場合、(i)oは1であり、pは0であり、Rは1価の有機基であるか、または、(ii)oは1であり、pは1であり、RとRは互いに連結して環構造を形成し、
Xがホウ素原子の場合、oは0であり、pは0であり、
、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基であり、これらのうちの2つが互いに連結して環構造を形成してもよく、
nは1または2である。
一般式(I)で表される化合物の好ましい態様を説明する。
Xは、ホウ素原子であることが好ましい。
Eの2価の有機基は、Eが結合している2つのO原子およびXとともに、5員環または6員環を形成するものであることが好ましい。
Eの2価の有機基として具体的には、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜4)、カルボニル基、アリーレン基(フェニレン基など)、エステル基、およびこれら基が連結された基が挙げられる。
Fの2価の有機基の好ましい態様は、上記Eと同様である。
EおよびFの2価の有機基は、好ましくは以下に示されるa〜hのいずれかである。
Figure 2021155646
Figure 2021155646
上記a〜hにおいて、RおよびRは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)、ハロゲン原子、アミノ基またはカルボキシ基である。
およびRの1価の有機基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、アリール基(好ましくは炭素数6〜10)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜11)などが挙げられる。
、RおよびRの1価の有機基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12)、ヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜6)、アリール基(フェニル基など)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜11)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜10)などが挙げられる。これらの中でもアルキル基またはヒドロキシアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
これら有機基は、更にアルキル基やハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
また、R、RおよびRのうちの2つが互いに連結して環構造を形成してもよい。この場合の環構造としては、モルホリン環やピペリジン環などが挙げられる。
一般式(I)で表される化合物の具体例としては、特許第5914235号公報の0027段落および0039段落に列挙されている化合物が挙げられる。
化学構造とは異なる顕色剤の観点として、顕色剤は、融点が100〜300℃である顕色剤を含むことが好ましい。このような顕色剤を用いることで、レーザマーキング層の擦過性をより良くすることができる。
レーザマーキング層を備える物品(段ボール等)は、流通の過程で「こすれる」ことにより、摩擦熱が発生することがある。しかし、融点が十分に高い顕色剤を用いることにより、摩擦熱による発色を抑えることができる。
本実施形態のフレキソインキは、1のみの顕色剤を含んでいてもよいし、2以上の顕色剤(化学構造が異なる2以上の顕色剤)を含んでいてもよい。
フレキソインキの全不揮発成分中の、顕色剤の比率は、好ましくは25〜50質量%、より好ましくは30〜45質量%である。顕色剤の比率を最適化することで、フレキソ印刷時の印刷性と、レーザマーキングの際のより濃い発色とを両立させやすい。
ちなみに、ロイコ色素の量を基準としたときの顕色剤の量については、ロイコ色素1質量部に対して顕色剤が通常0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜7質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
(ヒンダードフェノール化合物)
本実施形態のフレキソインキは、好ましくは、ヒンダードフェノール化合物を含む。ヒンダードフェノール化合物とは、通常、フェノール性水酸基のオルト位にt−ブチル基が置換しているフェノール化合物のことをいう。
フレキソインキがヒンダードフェノール化合物を含むことで、レーザ照射により得られた画像の安定性が向上する傾向がある。ここで、「画像の安定性の向上」とは、例えば、耐湿性が良いこと(空気中の水分による画像の退色が抑えられること)を表す。
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2−t−ブチル−6−(3−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、:1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
ヒンダードフェノール化合物を用いる場合、1のみのヒンダードフェノール化合物を用いてもよいし、2以上のヒンダードフェノール化合物を用いてもよい。
ヒンダードフェノール化合物を用いる場合、その量(比率)は、フレキソインキの全不揮発成分中、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは5〜15質量%である。ヒンダードフェノール化合物を2質量%以上用いることで、画像の安定性の向上効果を十分に得やすい。また、ヒンダードフェノール化合物を30質量%以下の量で用いることで、諸性能の悪化を抑えつつ画像の安定性の向上効果を得ることができる。
(金属石鹸)
本実施形態のフレキソインキは、好ましくは、金属石鹸を含む。金属石鹸を用いることでも、ヒンダードフェノール化合物同様、画像の安定性向上効果を得ることができる。
金属石鹸とは、通常、カルボン酸金属塩のことを指す(通常、金属としてナトリウムとカリウムは除く)。カルボン酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、p−t−ブチル安息香酸、2−エチルヘキサン酸などが挙げられる。金属としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、バリウムなどが挙げられる。
金属石鹸を用いる場合、1のみの金属石鹸を用いてもよいし、2以上の金属石鹸を用いてもよい。
金属石鹸を用いる場合、その量(比率)は、フレキソインキの全不揮発成分中、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%である。金属石鹸を1質量%以上用いることで、画像の安定性の向上効果を十分に得やすい。また、金属石鹸を20質量%以下の量で用いることで、諸性能の悪化を抑えつつ画像の安定性の向上効果を得ることができる。
(白色顔料)
本実施形態のフレキソインキは、白色顔料を含んでもよい。これにより、レーザマーキング層の白色度が向上し、コントラスト向上を図ることができる。また、特にレーザとして紫外線レーザを用いる場合には、白色顔料自体が色変化してコントラスト向上に寄与する場合がある(具体的には酸化チタン)。
白色顔料としては、堅牢性の観点から無機白色顔料が好ましい。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウムなどを挙げることができる。これらの中でも、酸化チタンが好ましい。酸化チタンの中でも、ルチル型酸化チタンが好ましい。
白色顔料の平均粒径は、好ましくは0.1〜0.8μm、より好ましくは0.2〜0.7μmである。適切な平均粒径の白色顔料を用いることで、印刷性を維持しつつコントラスト向上を図ることができる。平均粒径は、カタログや仕様書などに平均粒径が記載されている場合には、その記載値を平均粒径とすることができる。そうでない場合には、レーザ回折式粒度測定器(例えば、株式会社島津製作所製のレーザ回折式粒度測定器SALD3000Jなど)での測定データに基づき平均粒径を求めることができる。
白色顔料を用いる場合、1のみの白色顔料を用いてもよいし、2以上の白色顔料を用いてもよい。
白色顔料を用いる場合、その量(比率)は、フレキソインキの全不揮発成分中、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは2〜15質量%である。白色顔料を1質量%以上用いることで、十分なコントラスト向上効果を得やすい。また、白色顔料を25質量%以下の量で用いることで、諸性能の悪化を抑えつつコントラスト向上効果を得ることができる。
(近赤外線(NIR)吸収剤)
本実施形態のフレキソインキは、近赤外線(NIR:Near InfraRed)吸収剤を含んでもよい。特に、近赤外線レーザを用いてレーザマーキングを行う場合、発色性/画像コントラスト向上の観点で、NIR吸収剤を用いることが好ましい。
NIR吸収剤としては、いくつかの無機化合物が知られている。具体的には、酸化ビスマス、酸化タングステン化合物(タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ルビジウム、タングステン酸セシウム等)、銅モリブデン酸化物、LaB(六ホウ化ランタン)、ITO(スズ酸化インジウム)、ATO(アンチモン酸化スズ)などが挙げられる。これらは、近赤外線レーザ光(例えば1090nmのレーザ光)を吸収して発熱するNIR吸収剤として知られている。
(その他成分)
本実施形態のフレキソインキは、上記成分のほか、インキや塗料の分野で用いられる種々の添加成分を1または2以上含んでもよい。添加成分として具体的には、消泡剤、滑剤、レベリング剤等を挙げることができる。
消泡剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤またはアセチレンアルコール系界面活性剤を挙げることができる。具体的には、オルフィンD−10A、オルフィンD−10PG、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンE1030W、オルフィンPD−001、オルフィンPD−002W、オルフィンPD−003、オルフィンPD−004、オルフィンPD−201、オルフィンPD−301、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300、サーフィノール82、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール2502、ダイノール604、ダイノール607(以上、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE13T、アセチレノールEH、アセチレノールEL、アセチレノールE40、アセチレノールE60、アセチレノールE81、アセチレノールE100、アセチレノール85(以上、川研ファインケミカル株式会社製)などを挙げることができる。
滑剤としては、例えば、合成ワックス系化合物、天然ワックス系化合物、界面活性剤系化合物、無機系化合物、有機樹脂系化合物などの有機系滑剤が挙げられる。
ポリオレフィン系化合物としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックスなどが挙げられる。
合成ワックス系化合物としては、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ラウリン酸、ベヘン酸、パルミチン酸、アジピン酸などのエステル、アミド、ビスアミド、ケトン、金属塩及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックスなどの(オレフィン系ワックス以外の)合成炭化水素系ワックス、リン酸エステル、硬化ヒマシ油、硬化ヒマシ油誘導体の水素化ワックスなどが挙げられる。
天然ワックス系化合物としては、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、木蝋などの植物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、モンタンワックスなどの鉱物系ワックス、蜜蝋、ラノリンなどの動物系ワックスなどが挙げられる。
界面活性剤系化合物としては、例えば、アルキルアミン塩などのカチオン系界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルベタインなどの両性系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
滑剤の市販品としては、例えば、三井化学株式会社製のケミパールシリーズ(例えば、ケミパールW700、同W900,同W950等のポリオレフィン系化合物)、中京油脂株式会社製のハイミクロンL−271,ハイドリンL−536(合成ワックス系の有機系滑剤)、中京油脂株式会社製のハイドリンL−703−35、セロゾール524、セロゾールR−586(天然ワックス系の有機系滑剤)、日光ケミカルズ株式会社製のNIKKOLシリーズ(例えば、NIKKOL SCS等の界面活性剤系の有機系滑剤)などが挙げられる。
添加成分を用いる場合、その量(比率)は、フレキソインキの全不揮発成分中、通常0.01〜15質量%程度とすることができる。
ちなみに、ロイコ色素と顕色剤を用いて画像形成を行う公知技術として「感熱紙」が知られており、感熱紙中の発色層はポリビニルアルコールを含むことが多い。しかし、本実施形態のフレキソインキは、ポリビニルアルコールを含まなくてもよく、また、含むとしても少量(例えば全不揮発成分中10質量%以下)であってよい。
(溶剤、水性/油性について)
本実施形態のフレキソインキは、好ましくは、水性である。つまり、本実施形態のフレキソインキの主溶剤(揮発性の全溶剤中の50質量%以上を占める溶剤)は、好ましくは水である。
もちろん、本実施形態のフレキソインキの主溶剤は、有機溶剤であってもよい。
また、主溶剤として水を用いつつ、種々の性能調整などのために、比較的少量の有機溶剤を用いてもよい。
一例として、本実施形態のフレキソインキは、水を含むが、有機溶剤を含まない。
別の例として、本実施形態のフレキソインキは、水と、アルコールとを含む。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノールが挙げられる。食品分野への適用や残留臭気の点から、エタノール、1−プロパノールまたは2−プロパノールが好ましい。アルコールを用いる場合、その量は、水100質量部に対して好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。
更に別の例として、本実施形態のフレキソインキは、水と、遅乾溶剤(乾燥調整を目的とした溶剤)を含んでもよい。遅乾溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびこれらのモノまたはジエーテル類(ジプロピレングリコールメチルエーテル等)を挙げることができる。遅乾溶剤を用いる場合、その量は、水100質量部に対して好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜10質量部である。
溶剤(複数種類の溶剤を用いる場合はその合計)の使用量は、フレキソインキの25℃における粘度が、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒である限り、特に限定されない。溶剤の使用量は、典型的には、全不揮発成分を100質量部としたときに、2〜10質量部程度である。
(フレキソインキの製造方法)
本実施形態のフレキソインキは、上記の成分をミキサー等で適切に混合することで製造することができる。混合においては、特に、ロイコ色素および顕色剤をフレキソインキ中に均一に分散させることが望ましい。
混合・分散の方法として、3本ロールミル法、ニーダー法、フラッシュ法、ビーズミル法、メディア型分散機法、チップ法などの方法を適用することができる。その他、調製方法については、書籍「上手に使いこなす印刷インキ」(片山賢二著、日本印刷新聞社、1999年7月刊行)の第4章などに記載されている。
本実施形態のフレキソインキの製造に際しては、ロイコ色素と顕色剤が反応しないように留意する。例えば、混合・分散の際、ロイコ色素と顕色剤とが反応して発色しないよう、温度条件などに留意する。あるいは、ロイコ色素と顕色剤を別々に分散してから混合することが好ましい場合もある。
<物品とその製造方法(フレキソ印刷法)>
上述のフレキソインキを、基材の表面の少なくとも一部に印刷(フレキソ印刷)することで、基材表面にレーザマーキング層を設けることができる。つまり、上述のフレキソインキを用いることで、基材と、その基材の表面の少なくとも一部に設けられたレーザマーキング層を備える物品を製造することができる。
(基材)
基材の材質などは特に限定されない。ただし、フレキソキソ印刷の適用性の観点から、基材は好ましくは段ボールである。
工業的な生産性の観点から、物品の製造に当たっては、段ボールシートを準備し、その段ボールシートに、フレキソ印刷法によりレーザマーキング層を設けることが好ましい。
段ボールシートとは、波状に加工された中芯の両側に、でんぷん糊やポリビニルアルコール(PVA)等の接着剤を用いてライナーが貼られたシート状のものを言う。段ボールシートの態様は、最終的に段ボール箱に組み立て可能なものであれば、特に限定されない。すなわち、ライナーや中芯の原材料のパルプの種類(木材パルプであるか、古紙から得られたパルプであるか等)、段ボールシートの厚み、秤量、大きさ等は、特に限定されず、市販品などを適宜用いることができる。
具体的には、段ボールシートには「フルート」と呼ばれる分類があるが、Aフルート、Bフルート、Cフルート、Dフルート、Eフルート、Fフルート、Gフルート、Wフルート、2層AA段、3層AAA段などのいずれの段ボールシートも使用可能である。
段ボールシートの表面の色目も、レーザ照射による画像が認識可能である限り、特に限定されない。表面の色目は、典型的には、茶色または白色である。ちなみに、表面の色目を白色とする方法としては、白色のライナーを用いる場合のほか、茶色の段ボールシートに、レーザマーキング層を設ける前に、白色インキを印刷する方法もある。
表面の色目を白色とすることで、レーザ発色の鮮明度向上が期待される。
基材(段ボールシート)の表面の一部または全部には、各種の処理がされていてもよい。例えば、レーザマーキング層を均一に形成しやすくするための層や、密着性を向上させるための層(アンカーコート層)が設けられていたり、レーザマーキング層を剥がれにくくするための前処理がされていたりしてもよい。
(フレキソ印刷法)
フレキソ印刷法は、例えば、図1に模式的に示される断面図の装置(フレキソ印刷機)により行われる。
この装置は、版胴13B、版胴13Bにフレキソインキ2を付着させるためのアニロックスロール22、アニロックスロール22上の余分なフレキソインキ2を除去するためのドクターブレード21、および、版胴13Bに対向して配置された圧胴15Bを備えている。
版胴13Bの表面には、一定の柔軟性・弾力性がある高分子材料などにより、フレキソインキ2が付着する凸部が設けられている(フレキソ印刷は、凸版印刷の一種である)。
アニロックスロール22、版胴13Bおよび圧胴15Bは、それぞれ、図中に矢印で示す方向に回転するようになっている。
段ボールシート1は、圧胴15Bと版胴13Bとによって挟持される。挟持された段ボールシート1は、圧胴15Bと版胴13Bの回転の力などにより、図1の左方向から右方向に搬送される。そして、版胴13Bの凸部に付着したフレキソインキ2が、段ボールシート1の表面に転写される。この一連の流れにより、段ボールシート1の表面にレーザマーキング層が形成される。
アニロックスロール22の回転の線速度は、40〜350m/分であることが好ましく、100〜300m/分であることがより好ましく、150〜300m/分であることが更に好ましい。この数値範囲とすることで、段ボールシート1に対するフレキソインキ2の転移性と、量産性とを両立することができる。
原理上、線速度は大きければ大きいほど生産性は向上するが、装置上の制約から、実用上、線速度の上限値は通常400m/分程度である。
フレキソ印刷法によりレーザマーキング層をより均質に形成するためには、例えば、アニロックスロール22を適切に選択することが考えられる。
例えば、アニロックスロール22の線数は、好ましくは100〜500線/インチ、より好ましくは100〜350線/インチ、更に好ましくは150〜300線/インチである。このような線数のアニロックスロール22を選択することで、レーザマーキング層の厚みを大きくすることができ、結果、比較的高いレーザ発色濃度を得られると期待される。
また、アニロックスロール22のセル容量の下限値は、好ましくは5cm/m、より好ましくは10cm/m、さらに好ましくは12cm/mである。この下限値以上のセル容量のアニロックスロール22を用いることで、レーザマーキング層を適度に厚くすることができ、結果、比較的高いレーザ発色濃度を得られると期待される。なお、セル容量の上限値は特にないが、フレキソインキ2の転移性や、アニロックスロール22への目詰まり防止などを考えると、40cm/m以下であることが好ましい。
さらに、アニロックスロール22のセルの形状は、ハニカム形状、ダイヤ形状、ヘリカル形状等がある。セルの形状は特に限定はされないが、ハニカム形状が好ましい。
ちなみに、250線/インチ以上の線数のアニロックスロール22を用いる場合、十分な量のフレキソインキ2がアニロックスロール22に付着しない場合がある。この場合、図1のフレキソ印刷装置が2つ以上連続的に設置された装置を用いて、段ボールシート1上の同一箇所にフレキソインキ2を2度以上印刷してもよい。
特に、図1のフレキソ印刷装置が連続的に3つ以上(例えば3〜8つ)設置されている場合、それらのうちの任意の1または2以上のフレキソ印刷装置を用いてフレキソインキ2を印刷し、レーザマーキング層を設けることができる。残りのフレキソ印刷装置は、レーザマーキング層以外の印刷層(白色層、オーバープリントニス層やアンカー層など)を印刷することができる。
参考情報として、上記(フレキソインキの製造方法)の項で説明したようにしてフレキソインキを製造してから、そのフレキソインキを用いてフレキソ印刷を行うまでの間には、ある程度の時間があることが好ましい。その時間としては、例えば24時間〜6か月である。
フレキソインキが印刷される段ボールの白色度は、通常、さほど大きくない。よって、フレキソインキを24時間以上経時させて、フレキソインキを敢えて「少し着色させ」、そしてそのフレキソインキによりレーザマーキング層を設けることで、レーザマーキング層が段ボール表面で目立たなくなるというメリットがある。
一方、フレキソインキを経時させすぎるとロイコ色素の変質が過度に進んでしまう可能性がある。よって、フレキソインキは、製造から6か月以内に、レーザマーキング層の形成に用いられることが好ましい。
念のため述べておくと、本実施形態のフレキソインキを用いて形成されたレーザマーキング層は、例えば擦過性や耐湿性などが良好である。よって、レーザマーキング層の上に、オーバープリントニス層、オーバーコート層、保護層などを設けることは必須ではない(もちろん、何らかの目的のために、これら層が設けられていてもよい)。
<レーザマーキングされた物品と、その製造方法>
上述の「基材と、その基材の表面の少なくとも一部に設けられたレーザマーキング層を備える物品」の、レーザマーキング層に、レーザ光を照射することにより、レーザマーキング層を発色させることができる。換言すると、上述の物品におけるレーザマーキング層にレーザ光を照射して画像を形成する画像形成工程により、レーザマーキングされた物品を製造することができる。
レーザの種類は特に限定されない。レーザマーキング層が発色する限りにおいて任意のレーザを用いることができる。例えば、COレーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザ、近赤外レーザ、紫外線レーザ、半導体レーザ等を用いることができる。また、レーザは、複数のレーザ発光素子が束ねられたレーザアレイ等であってもよい。
商業的に利用可能なレーザマーキング装置は、パナソニック社やキーエンス社から提供されている。
レーザ照射により描画される画像は、特に限定されない。具体的には、各種商標/ロゴマーク、宣伝広告、発送元/送付先、生産地、ロット番号、賞味期限や消費期限(特に、包装された物品が食品である場合)、バーコード、2次元コード(例えばQRコード(登録商標))などが挙げられる。もちろん、描画される画像は、これらの文字や図形に限られない。
レーザの光源の平均出力P(単位:Wは、特に限定されないが、例えば0.5W以上30W以下、好ましくは1W以上20W以下である。平均出力Pは、レーザ出力条件の出力%により設定することができる。例えば、最大出力30Wレーザにおいて、出力30%に設定すると、平均出力Pは、9Wとなる。この数値範囲内とすることで、印字の濃度と生産コストとの両立を図りやすくなる。
レーザの光源がパルスレーザである場合、その繰り返し周波数は、特に限定されないが、5kHz以上50kHz以下、より好ましくは10kHz以上30kHz以下である。この数値範囲内とすることで、印字濃度と生産コストとの両立を図りやすくなる。
レーザ光の波長は、例えばCOパルスレーザである場合は10.6μmである。その他、波長1090nmの近赤外レーザ、波長355nmの紫外線レーザなども挙げられる。
レーザを適切に動かす方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜適用すればよい。典型的には、公知のガルバノミラーやfθレンズなどの機構が挙げられる。また、いわゆる「フラットベッドタイプ」と呼ばれる、レーザ光源そのものをX方向およびY方向に動かす機構でもよい。
描画速度は、生産性や所望する発色濃度などにより適宜調整すればよい。例えば、レーザのスポットの移動速度が0.5〜10m/s、好ましくは1〜6m/sである。この数値範囲内とすることで、工業的な生産性(描画スピード)と発色濃度向上の両立をより図りやすくなる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
<フレキソインキの製造>
まず、表1に記載の不揮発性分組成比になるように素材を混合して混合物とした。その後、その混合物を、ビーズミルを用いて分散処理し、ハーマングラインドゲージで5ミクロン以上の粒子がないこと確認して分散処理を終了した。以上によりフレキソインキを作製した。
組成中の有機溶剤および水の全量または一部は、分散前、分散中、あるいは分散直後から印刷直前までの期間に分けて加えた。作製したフレキソインキは、ポリエチレン製容器に入れて20〜30℃で保管した。
表1において、各成分の記号は以下を表す。
(ロイコ色素)
以下L−1およびL−2は、ともに、常温常圧下において粉体状である。
L−1:2'−アニリノ−6'−ジブチルアミノ−3'−メチルスピロ[フタリド−3,9'−[9H]キサンテン](長瀬産業社製、ODB−2)
L−2:2−(フェニルアミノ)−3−メチル−6−[エチル(p−トリル)アミノ]スピロ[9H−キサンテン−9,1'(3'H)−イソベンゾフラン]−3'−オン(長瀬産業社製、ETAC)
(顕色剤)
以下D−1〜D−4は、すべて、常温常圧下において粉体状である。
D−1:(前述の一般式(I)で表される化合物、Xはホウ素原子)融点140℃
D−2:1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(富士フイルム和光純薬社製、THPE)融点248℃
D−3:4−[(4−イソプロポキシフェニル)スルホニル]フェノール(長瀬産業社製、ALD−2000)融点129℃
D−4:4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン(日本曹達社製、D8)融点130℃
(アルカリ可溶性樹脂)
以下J−1〜J−5は、すべて、常温常圧下において粉体状である。
J−1:スチレンアクリル樹脂(重量平均分子量:6500、酸価:280mgKOH/g、ガラス転移温度:128℃)
J−2:スチレンアクリル樹脂(重量平均分子量:5700、酸価:222mgKOH/g、ガラス転移温度:103℃)
J−3:スチレンアクリル樹脂(重量平均分子量:2800、酸価:80mgKOH/g、ガラス転移温度:80℃)
J−4:スチレンアクリル樹脂(重量平均分子量:16000、酸価:180mgKOH/g、ガラス転移温度:100℃)
J−5:スチレンアクリル樹脂(重量平均分子量:6000、酸価:200mgKOH/g、ガラス転移温度:53℃)
これらアルカリ可溶性樹脂については、他の材料と混合する前に、アンモニア水と混合攪拌して中和し、完全に溶解させたものを使用した。表1に記載のアルカリ可溶性樹脂の組成(質量比)は、アンモニア水と混合攪拌する前のアルカリ可溶性樹脂の量(固形分)を示している。
(エマルション樹脂)
E−1:スチレンアクリル樹脂 X−436(不揮発性分40質量%の分散液、分散している樹脂の平均粒径は40nm)、星光PMC社製(表1に記載の量は、固形分換算の値である。)
(消泡剤)
F−1:アセチレンアルコール オルフィンE1010(日信化学工業社製)、有効成分100%、常温常圧下で液体
(滑剤)
G−1:ポリオレフィン水性ディスパージョン ケミパールW308(有効成分(不揮発分)40質量%、粒径6.0μm、軟化132℃)、三井化学社製(表1に記載の量は、固形分換算の値である。)
(ヒンダードフェノール化合物)
以下H−1およびH−2は、ともに、常温常圧下において粉体状である。
H−1:1,1,3−トリス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、ADEKA社製
H−2:1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ADEKA社製
(金属石鹸)
M−1:p−t−ブチル安息香酸亜鉛 Z−46(堺化学工業社製)、常温常圧下で粉末
(酸化チタン)
T−1:ルチル型酸化チタン(Al、Zr、有機物による表面処理あり、平均粒径250nm)
(NIR(近赤外線)吸収剤)
I−1:Variprint、DataLase社製
I−2:セシウム酸化タングステン、住友金属鉱山社製
(有機系溶剤)
IPA:2−プロパノール
EtOH:エタノール
遅乾溶剤:ジプロピレングリコールメチルエーテル
Figure 2021155646
(補足:比較例2のフレキソインキについては、粘度が大きすぎたため、ザーンカップ#4を用いて粘度を適切に測定することができなかった。よって、比較例2のフレキソインキについては、その後の評価も行わなかった。)
<レーザマーキング層の形成(レーザマーキング層を備える物品の製造)>
上記で調製したフレキソインキを1か月間保管後、容器の底の沈降物を十分に攪拌して分散させた。その後、水性フレキソ印刷機を用い、フレキソインキを基材(段ボール等)に印刷した。フレキソ印刷における樹脂版としては、サイズ100×100mmの樹脂版を用いた。
印刷直前のフレキソインキ(フレキソ印刷機の所定の位置にインキを入れる直前)の粘度を、ザーンカップ#4を用いて測定した。ザーンカップ#4については、株式会社メイセイのものを用いた。
用いたフレキソインキ、基材、印刷機、アニロックスロールの線数とセル容量、印刷方式等の印刷条件、オーバーコートニス(OP)の有無について、表2にまとめた。
表2の各項目について説明しておく。
(フレキソインキ)
表1に記載の実施例、比較例のものを用いた。
(基材(段ボール))
シートA:ジュートライナ(Cライナ)を用いたCフルートの段ボールシート、200g/m
シートB:シートAに、水性フレキソ印刷用の白インキを印刷したシート(今回は、同一印刷機内でまずシートAに白インキを印刷し、その後、各実施例または比較例のフレキソインキを印刷した)。
ライナ:クラフトライナ(Kライナ)、180g/m
(印刷機)
プレプリント:ロールtoロール搬送型のセンタードラム式プレプリント機(8色機)
ポストプリント:段ボールシート搬送型のポストプリント機(4色機)
(アニロックスロール仕様)
アニロックスロールの線数とセル容量については、表2に記載の通りである。
(印刷条件)
・方式
C:チャンバードクターブレード方式
R:2ロール方式
・線速度
表2に記載の通りである。
・印刷回数
印刷回数が「2」の実施例は、フレキソインキを同じ場所に重ね刷りしたことを意味する。具体的には、印刷機に備えられた印刷ユニットの1色目と3色目を使用して連続的に2回印刷した。
(OP(オーバーコートニス))
実施例23では、フレキソインキ(ロイコ色素や顕色剤を含有)の印刷後、アルカリ可溶性アクリル樹脂を主成分とする水性フレキソインキ用ニスを、120line/inchのアニロックスロールを用いてオーバーコートした。
Figure 2021155646
<評価>
(フレキソ印刷性)
フレキソ印刷により得られたレーザマーキング層表面の不均一性を、以下のように評価した。
〇(良好):ほぼ均一な面状のレーザマーキング層が得られた。
×(不良):印刷の厚みムラによる不均一な面状のレーザマーキング層が得られた。
ちなみに、上記評価が「×(不良)」の場合、以下の、レーザ照射による評価を行わなかった。
(レーザ描画性:発色/コントラスト)
まず、フレキソインキを印刷して得られた、レーザマーキング層を備える物品(段ボール等)のレーザマーキング層に、以下波長のレーザのいずれかを用い、スキャン速度2000mm/secで、ITFバーコードのパターン(黒色)を描画した。「ITFバーコード」として具体的には、文字数14、ナロー幅0.6mm、細太比2.5倍に設定された、トータル幅72.3mm、高さ20mmのバーコードを採用した。レーザのパワーは、コントラストが最大になるように、20〜80%の範囲で調節した。
波長10.6μm COレーザ(キーエンス社製、ML−Z9620)
波長1090nm ファイバーレーザ(キーエンス社製、MD−F3220)
波長355nm UVレーザ(キーエンス社製、MD−U1020C)
描画されたバーコードのコントラストを評価した。コントラストは、発色した黒のバーの部分の反射率(%)と、レーザマーキング層においてレーザが照射されていない部分の反射率(%)との差である。反射率は、米国 Label Vision Systems, Inc.製の装置「LVS9580」を用いて測定した。
評価基準は以下の通りとした。
A:70%以上
B:55%以上70%未満
C:40%以上55%未満
D:20%以上40%未満
F:20%未満(バーコード読み取りの信頼性が低いために実用不可)
(各種耐性)
・耐熱性
まず、レーザマーキング層を設けた基材を用いて、段ボールを組み立てた。この段ボールを、シュリンクフィルム包装するための、熱風(220℃)が吹くヒートトンネルに、ベルトコンベヤーを用いて1分間通した。そして、レーザマーキング層の発色を以下基準で評価した。
◎(とても良い):全く変化ない
〇(良い):淡いグレーに発色
△(あまり良くない):部分的にグレーに発色している
・擦過性
レーザマーキング層を設けた基材の、レーザマーキング層同士を擦り合わせたときの発色を調べた。具体的には、レーザマーキング層同士を重ね合わせ、加重100g/cmで、往復50回(往復速度30回/min)擦り合わせた。その後、レーザマーキング層の発色を以下基準で評価した。
◎(とても良い):全く変化ない
〇(良い):淡いグレーに発色
△(あまり良くない):部分的にグレーに発色
・耐湿性
前述の「レーザ描画性」の項目に記載のようにして得られた、バーコードが描画された基材(段ボール)を、35℃、80%RHの雰囲気下で1週間保存した。そして、印字部の黒のバー部の反射率上昇を下記基準で評価した。
◎(とても良い):反射率上昇が+1%以内
〇(良い):反射率上昇が+1%〜+5%
×(悪い):反射率上昇が+5%以上
評価結果をまとめて表3に示す。レーザ描画性の評価結果については、用いたレーザの波長とともに示している。
Figure 2021155646
表3などに示されるとおり、すべての実施例において、フレキソ印刷性は良好であり、また、レーザ描画性はD以上であった(Fであるものはなかった)。このことより、全不揮発成分中のロイコ色素の比率が10〜35質量%であり、25℃における粘度が、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒であるフレキソインキは、フレキソ印刷法によって段ボール等の基材にレーザマーキング層を設けるために好ましく用いられることが示された。
表3などをより詳細に見ると、以下のことが理解される。
・波長10.6μm、1090nm、355nmのレーザのいずれを用いた場合も、レーザ描画性は良好である。
・同一素材を用いているが、全不揮発成分中のロイコ色素の比率が異なる実施例1と4の対比より、ロイコ色素の比率がより大きいほうが、レーザ描画性が良好である。
・酸化チタン(白色顔料)を用いることで、レーザ描画性は特に良好となる(実施例5)。
・ヒンダードフェノールおよび/または金属石鹸を用いることで、耐湿性がより良好となる(実施例6〜8)。
・顕色剤としてフェノール化合物を用いることで、耐湿性などの耐性がより良好となる(実施例10〜12)。
・アルカリ可溶性樹脂の種類(物性)により、各種耐性の評価結果に良し悪しがある。
1 段ボールシート
2 フレキソインキ
13B 版胴
15B 圧胴
21 ドクターブレード
22 アニロックスロール

Claims (17)

  1. 樹脂、ロイコ色素および顕色剤を含むフレキソインキであって、
    全不揮発成分中の前記ロイコ色素の比率が10〜35質量%であり、
    25℃における粘度が、ザーンカップ#4の流出秒数で7〜23秒であるフレキソインキ。
  2. 請求項1に記載のフレキソインキであって、
    水性インキであるフレキソインキ。
  3. 請求項1または2に記載のフレキソインキであって、
    前記樹脂が、アルカリ可溶性樹脂を含むフレキソインキ。
  4. 請求項3に記載のフレキソインキであって、
    前記アルカリ可溶性樹脂が、(メタ)アクリル系樹脂を含むフレキソインキ。
  5. 請求項3または4に記載のフレキソインキであって、
    前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が3000〜12000であるフレキソインキ。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    前記アルカリ可溶性樹脂の酸価が100〜400mgKOH/gであるフレキソインキ。
  7. 請求項3〜6のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    前記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移温度が60〜160℃であるフレキソインキ。
  8. 請求項3〜7のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    前記ロイコ色素100質量部に対する前記アルカリ可溶性樹脂の量が50〜200質量部であるフレキソインキ。
  9. 請求項2に記載のフレキソインキであって、
    前記樹脂はエマルション型の(メタ)アクリル系樹脂を含むフレキソインキ。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    前記顕色剤は、以下一般式(I)で表される化合物を含むフレキソインキ。
    Figure 2021155646
    一般式(I)中、
    Xは、ケイ素原子またはホウ素原子であり、
    EおよびFは、それぞれ独立に2価の有機基であり、
    およびRは、それぞれ独立に1価の有機基であり、
    Xがケイ素原子の場合、(i)oは1であり、pは0であり、Rは1価の有機基であるか、または、(ii)oは1であり、pは1であり、RとRは互いに連結して環構造を形成し、
    Xがホウ素原子の場合、oは0であり、pは0であり、
    、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基であり、これらのうちの2つが互いに連結して環構造を形成してもよく、
    nは1または2である。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    前記顕色剤は、フェノール化合物を含むフレキソインキ。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    前記顕色剤は、融点が100〜300℃である顕色剤を含むフレキソインキ。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    さらに、ヒンダードフェノール化合物を含むフレキソインキ。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載のフレキソインキであって、
    さらに、金属石鹸を含むフレキソインキ。
  15. 基材と、
    請求項1〜14のいずれか1項に記載のフレキソインキにより、前記基材の表面の少なくとも一部に設けられたレーザマーキング層と
    を備える物品。
  16. 請求項15に記載の物品であって、
    前記基材が段ボールである物品。
  17. 請求項15または16の物品におけるレーザマーキング層にレーザ光を照射して画像を形成する画像形成工程を含む、レーザマーキングされた物品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023167183A1 (ja) * 2022-03-01 2023-09-07 大和製罐株式会社 キャップ

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