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JP2021152993A - 蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置 - Google Patents

蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置 Download PDF

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JP2021152993A JP2020052376A JP2020052376A JP2021152993A JP 2021152993 A JP2021152993 A JP 2021152993A JP 2020052376 A JP2020052376 A JP 2020052376A JP 2020052376 A JP2020052376 A JP 2020052376A JP 2021152993 A JP2021152993 A JP 2021152993A
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惇哉 今元
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Abstract

【課題】高温環境下において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度を確保できる蓄電装置用外装材を提供すること。【解決手段】少なくとも基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、シーラント層が、第1の樹脂としてのポリオレフィンと、第2の樹脂としてのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂とを含む、蓄電装置用外装材。【選択図】図1

Description

本開示は、蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置に関する。
蓄電装置として、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置の更なる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材として、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池は、ラミネート型リチウムイオン電池と称される。外装材が電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆っており、内部への水分の浸入を防止する。ラミネート型のリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
特開2013−101765号公報
ところで、リチウムイオン電池の次世代電池として、全固体電池と称される蓄電装置の研究開発がなされている。全固体電池は、電解物質として有機電解液を使用せず、固体電解質を使用するという特徴を有する。リチウムイオン電池は、電解液の沸点温度(80℃程度)よりも高い温度条件で使用することができないのに対し、全固体電池は100℃を越える温度条件で使用することが可能であるとともに、高い温度条件下(例えば100〜150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。
しかし、外装材として上記のような多層フィルムを使用してラミネート型の全固体電池を製造する場合、外装材の耐熱性が不十分であると、ヒートシール後、高温環境下での層間密着性(ヒートシールにより融着させた層間の密着性)が確保できず、ヒートシール強度が低下して全固体電池のパッケージの密封性が低下するおそれがある。
そのため、高温環境下でのヒートシール強度を確保する観点から、本発明者らは、ヒートシールにより融着させるシーラント層に耐熱性の高い樹脂を用いる方法を検討している。しかしながら、耐熱性の高い樹脂をシーラント層に用いた外装材を使用して全固体電池を作製し、それを高温環境下で作動させた後、室温に戻すと、室温環境下でのヒートシール強度が低下するという問題が生じることを本発明者らは見出した。
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、高温環境下において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度を確保できる蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示は、少なくとも基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、上記シーラント層が、第1の樹脂としてのポリオレフィンと、第2の樹脂としてのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂とを含む、蓄電装置用外装材を提供する。
上記第2の樹脂を用いることにより、高温環境下における外装材のヒートシール強度を向上させることができる。しかしながら、第2の樹脂を単独で用いた場合、外装材が高温環境に曝された後、室温に戻すと、室温環境下でのヒートシール強度が、高温環境に曝される前と比較して低下し、優れたヒートシール強度を確保することが困難となることを本発明者らは見出した。上記第2の樹脂は耐熱性の高い樹脂であり、高温環境下で使用される場合の性能については検討されているものの、室温環境下でのヒートシール強度が、高温環境に曝される前後で変化することについては、これまで十分な検討がなされていなかった。全固体電池は、使用時には高温環境下に置かれ、不使用時には室温環境下に置かれることが繰り返されるため、そのような使用環境でも外装材のヒートシール強度が劣化しないことが必要となる。そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記第1の樹脂を上記第2の樹脂と組み合わせて用いることで、高温環境に曝された後の室温環境下でのヒートシール強度の低下を抑制することができることを見出した。すなわち、上記蓄電装置用外装材によれば、シーラント層の材料として特定の第1の樹脂及び特定の第2の樹脂を組み合わせて用いることにより、高温環境下において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度を確保することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記第1の樹脂は、上記第2の樹脂と反応できる極性基を有する変性ポリオレフィンを含んでいてよい。また、上記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンであってよい。上記第1の樹脂と上記第2の樹脂とは、相溶性が必ずしも良好ではなく、分散性が不十分となって上述した併用効果が十分に得られない場合がある。これに対し、第1の樹脂が、第2の樹脂と反応できる極性基を有する変性ポリオレフィンを含むことにより、第1の樹脂と第2の樹脂との相溶性を高め、分散性を向上させることができる。その結果、第1の樹脂と第2の樹脂との併用による相乗効果をより十分に得ることができ、高温環境下においてより優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下でのより優れたヒートシール強度を確保できることとなる。また、上記変性ポリオレフィンが無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンである場合、上記効果をより十分に得ることができる。
ここで、第1の樹脂は、上述した変性ポリオレフィンと、第2の樹脂と反応できる極性基を有さないポリオレフィン(未変性ポリオレフィン)とを含んでいてよい。変性ポリオレフィンは変性することにより、融点及び分子量が低下する傾向にあるため、通常のポリオレフィン(未変性ポリオレフィン)を組み合わせて用いることにより、高温環境下でのヒートシール強度の低下を抑制することができる。なお、変性ポリオレフィンと未変性ポリオレフィンとを併用する場合、変性ポリオレフィンは相溶化剤としての役割を果たし、未変性ポリオレフィンと第2の樹脂との分散性を向上させることができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記シーラント層が上記ポリエステル及び/又は上記ポリアミドを含み、上記シーラント層を260℃、0.5MPa、3秒間の条件でヒートシールし、25℃に冷却した後の、上記ポリエステル及び/又は上記ポリアミドの結晶化度が10%以上、70%未満であってよい。上記方法で測定されるポリエステル及び/又はポリアミドの結晶化度が上記範囲内であることで、高温環境下におけるヒートシール強度をより向上できると共に、外装材の柔軟性をより向上させることができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられていてよい。腐食防止処理層を設けることで、バリア層の腐食を防止できるとともに、腐食防止処理層が介在することでバリア層とそれに隣接する層との密着力を高めることができる。また、全固体電池において、電解質に硫化物系の材料が用いられることがあるが、外装材内部に水分が侵入した場合、硫化物系化合物と水とが反応して硫化水素(HS)が発生する。このHSによってバリア層とそれに隣接する層との密着力が低下する場合がある。しかしながら、上記蓄電装置用外装材を全固体電池の外装材として用いた場合、バリア層表面に腐食防止処理層を備えることで、バリア層に耐HS性を付与することができ、バリア層とそれに隣接する層との密着力の低下を防ぐことができる。そのため、上記蓄電装置用外装材によれば、硫化水素に曝された場合であっても、高温環境下において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度を確保できることとなる。
上記蓄電装置用外装材において、上記蓄電装置用外装材の上記基材層側を外側、上記シーラント層側を内側とした場合に、上記バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が、硫化水素吸着物質を含有してもよい。上述したように、全固体電池では硫化水素(HS)が発生するおそれがあるが、バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が硫化水素吸着物質を含有することにより、硫化水素吸着物質を含有する層が外装材内部で発生したHSを吸着して無害化することができ、HSからバリア層や集電体(特に銅箔)、Niを含むような正極をより高いレベルで保護することができる。そのため、上記蓄電装置用外装材によれば、硫化水素に曝された場合であっても、高温環境下において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度を確保できることとなる。
上記蓄電装置用外装材は、全固体電池用であってもよい。
本開示はまた、蓄電装置本体と、上記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、上記電流取出し端子を挟持し且つ上記蓄電装置本体を収容する、上記本開示の蓄電装置用外装材と、を備える蓄電装置を提供する。上記蓄電装置は、全固体電池であってもよい。
本開示によれば、高温環境下において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度を確保できる蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置を提供することができる。
本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 本開示の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 本開示の一実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。 実施例におけるヒートシール強度測定用サンプルの作製方法を説明する模式図である。
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
[蓄電装置用外装材]
図1は、本開示の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面側に設けられた第1の接着剤層12aと、該第1の接着剤層12aの基材層11とは反対側に設けられた、両面に第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bを有するバリア層13と、該バリア層13の第1の接着剤層12aとは反対側に設けられた第2の接着剤層12bと、該第2の接着剤層12bのバリア層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、第1の腐食防止処理層14aはバリア層13の基材層11側の面に、第2の腐食防止処理層14bはバリア層13のシーラント層16側の面に、それぞれ設けられている。外装材10において、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。
本実施形態の外装材10において、シーラント層16は、第1の樹脂としてのポリオレフィンと、第2の樹脂としてのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂とを含む。以下、外装材10を構成する各層について具体的に説明する。
<基材層11>
基材層11は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。特に大型用途の蓄電装置の外装材の場合等は、耐擦傷性、耐薬品性、絶縁性等も付与できる。
基材層11は、絶縁性を有する樹脂により形成された層であることが好ましい。樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アセチルセルロース樹脂等を使用することができる。
これらの樹脂は、基材層11に適用する場合、延伸又は未延伸のフィルム形態でも、コーティング被膜としての形態のどちらでも構わない。また。基材層11は単層でも多層でもよく、多層の場合は異なる樹脂を組み合わせて使用できる。フィルムであれば共押し出ししたのもの、もしくは接着剤を介して積層したものが使用できる。コーティング被膜の場合は積層回数分コーティングしたものが使用でき、フィルムとコーティング被膜を組み合わせて多層とすることもできる。
これらの樹脂の中でも、基材層11としては、成型性に優れることから、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリアミドフィルムを構成するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,ナイロン9T、ナイロン10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
これらの樹脂をフィルム形態で使用する場合は二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸フィルムにおける延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、チューブラー二軸延伸法、同時二軸延伸法等が挙げられる。二軸延伸フィルムは、より優れた深絞り成型性が得られる観点から、チューブラー二軸延伸法により延伸されたものであることが好ましい。
基材層11の厚さは、6〜40μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。基材層11の厚さが40μmを超えると、外装材10の総厚が大きくなる傾向がある。
基材層11の融点ピーク温度は、シール時の基材層11の変形を抑制するため、シーラント層16の融点ピーク温度より高く、さらにはシーラント層16の融点ピーク温度よりも30℃以上高いことが好ましい。
<第1の接着剤層12a>
第1の接着剤層12aは、基材層11とバリア層13とを接着する層である。第1の接着剤層12aを構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物(多官能イソシアネート化合物)を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、外装材10に求められる機能や性能に応じて、単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記以外にもエポキシ樹脂を主剤として、硬化剤を配合したものなども使用可能であるが、これに限らない。また、接着剤に求められる性能に応じて、上述した接着剤に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
第1の接着剤層12aの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。
<バリア層13>
バリア層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、バリア層13は、深絞り成型をするために延展性を有していてもよい。バリア層13としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔、あるいは、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどを用いることができる。蒸着膜を設けたフィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルム、無機酸化物蒸着フィルムを使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。バリア層13としては、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、金属箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐腐食性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いることが好ましい。アルミニウム箔に脱脂処理を施す場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
バリア層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9〜200μmとすることが好ましく、15〜100μmとすることがより好ましい。
<第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b>
第1及び第2の腐食防止処理層14a,14bは、バリア層13を構成する金属箔(金属箔層)等の腐食を防止するために設けられる層である。また、第1の腐食防止処理層14aは、バリア層13と第1の接着剤層12aとの密着力を高める役割を果たす。また、第2の腐食防止処理層14bは、バリア層13と第2の接着剤層12bとの密着力を高める役割を果たす。第1の腐食防止処理層14a及び第2の腐食防止処理層14bは、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。第1及び第2の腐食防止処理層14a,14b(以下、単に「腐食防止処理層14a,14b」とも言う)としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
脱脂処理としては、酸脱脂及びアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特にバリア層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐腐食性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
化成処理としては、浸漬型、塗布型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗布型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤をバリア層13上に塗布する方法が挙げられる。
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、バリア層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14a,14bの形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
塗布型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いたバリア層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14a,14bを形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。中でも、水系のゾルが好ましい。
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用したバリア層13との密着性の向上、(3)酸や腐食性ガスの影響で溶出したアルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる腐食耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層(酸化物層)14a,14bの凝集力の向上、などが期待される。
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14a,14bは、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14a,14bは、凝集力を補うために、アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
腐食防止処理層14a,14bは、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
腐食防止処理層14a,14bの単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、バリア層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14a,14bの厚さについては、その比重から換算できる。
腐食防止処理層14a,14bは、シーラント層とバリア層との密着性を保持しやすくなる観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、バリア層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
<第2の接着剤層12b>
第2の接着剤層12bは、バリア層13とシーラント層16とを接着する層である。第2の接着剤層12bには、バリア層13とシーラント層16とを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
バリア層13上に腐食防止処理層14bが設けられており、且つ、第2の腐食防止処理層14bが上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第2の接着剤層12bは、第2の腐食防止処理層14bに含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
例えば、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。第2の腐食防止処理層14bがアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。また、第2の腐食防止処理層14bがカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、第2の接着剤層12bはカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含む。ただし、第2の接着剤層12bは必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第2の接着剤層12bは、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含んでいてもよい。
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
第2の接着剤層12bが酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、第2の腐食防止処理層14bとの接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材10の耐溶剤性がより向上する。
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋反応としては十分飽和に達しているため、未反応物が存在し、各種性能の低下が懸念される。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5〜20質量部(固形分比)であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、酸無水物基などが挙げられ、無水マレイン酸基や(メタ)アクリル酸基などが特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、シーラント層16に用いる変性ポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができる。
第2の接着剤層12bには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
第2の接着剤層12bは、硫化水素等の腐食性ガスや電解液が関与する場合のラミネート強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下をさらに抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含むものであってもよい。なお、カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,2−ジ−t−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
また、第2の接着剤層12bを形成する接着剤として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。接着剤として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂やエポキシ基を有する主剤にアミン化合物などを作用させたエポキシ樹脂等が挙げられ、耐熱性の観点から好ましい。
第2の接着剤層12bの厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電装置の組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。
シーラント層16は、第1の樹脂としてのポリオレフィンと、第2の樹脂としてのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂とを含む。
ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;プロピレンを共重合成分として含むブロック又はランダム共重合体;プロピレン−αオレフィン共重合体;及び、ポリブテン等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や柔軟性の観点からポリプロピレンを用いることが好ましく、特にブロックポリプロピレン(ブロックPP)を用いることがより好ましい。上述したポリオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリオレフィンは、第2の樹脂と反応できる極性基を有する変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。ここで、第2の樹脂が有する官能基としては、以下の官能基が挙げられる。第2の樹脂がポリエステルである場合、その官能基としては、例えば、末端ヒドロキシル基、末端カルボキシル基、及び、エステル結合が挙げられる。第2の樹脂がポリアミドである場合、その官能基としては、例えば、末端アミノ基、及び、アミド結合が挙げられる。第2の樹脂がポリカーボネートである場合、その官能基としては、例えば、末端ヒドロキシル基。及び、エステル結合が挙げられる。第2の樹脂がポリフェニレンエーテルである場合、その官能基としては、例えば、末端ヒドロキシル基が挙げられる。
上記第2の樹脂が有する官能基と反応できる極性基としては、第2の樹脂がポリエステル又はポリカーボネートである場合、例えば、ヒドロキシル基、酸変性(エステル)基、アルデヒド基、オキサゾリン基、グリシジル基、アミド基、及び、イミノ基が挙げられる。第2の樹脂がポリアミドである場合、極性基としては、例えば、ヒドロキシル基、酸変性(エステル)基、アルデヒド基、及び、グリシジル基が挙げられる。第2の樹脂がポリフェニレンエーテルである場合、極性基としては、例えば、酸変性(エステル)基、オキサゾリン基、グリシジル基、アミド基、及び、イミノ基が挙げられる。
極性基としてヒドロキシル基を有する変性ポリオレフィンとしては、クラレ社製の「ポバール」、東ソー社製の「メルセンH」等が商業的に入手可能である。極性基としてグリシジル基を有する変性ポリオレフィンとしては、日油社製の「モディパー」、アルケマ社製の「LOTADER」及び「BONDINE」等が商業的に入手可能である。極性基としてアミド基を有する変性ポリオレフィンとしては、アルケマ社製の「APOLHYA」等が商業的に入手可能である。極性基としてイミノ基を有する変性ポリオレフィンとしては、三井化学社製の「アドマーIP」等が商業的に入手可能である。極性基としてオキザゾリン基を有する変性ポリオレフィンとしては、日本触媒社製の「エポクロス」等が商業的に入手可能である。
また、酸変性された変性ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、及び、不飽和カルボン酸のエステルのうちのいずれかで変性された酸変性ポレオレフィンが挙げられる。
具体的には、不飽和カルボン酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などが挙げられる。
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンの具体的な製品としては、例えば以下のものが挙げられる。無水マレイン酸で変性されたものとしては、例えば、三井化学社製の「アドマー」、三菱ケミカル社製の「モディック」、東洋紡社製の「トーヨータック」、三洋化成社製の「サンスタック」等が挙げられる。また、極性基としてカルボキシル基を有する酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、三井・デュポンポリケミカル社製の「ニュクレル」及び「ハイミラン」等が挙げられる(アイオノマー系も使用可能である)。極性基としてエステル基を有する酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、三井・デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス」、アルケマ社製の「LOTADER」、「BONDINE」及び「EVATANE」等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンが好ましい。上述した変性ポリオレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
第2の樹脂であるポリエステルとしては、酸成分とグリコール成分とを反応させたものが挙げられる。酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。グリコール成分としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、プロパンジオール等が挙げられる。ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)等が挙げられる。
第2の樹脂であるポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6等のナイロン系のポリアミド、及び、芳香族を有するアラミド系のポリアミドなどが挙げられる。
第2の樹脂としてポリエステル及び/又はポリアミドを用いる場合、ポリエステル及び/又はポリアミドを含むシーラント層16を260℃、0.5MPa、3秒間の条件でヒートシールし、25℃に冷却した後の、ポリエステル及び/又はポリアミドの結晶化度が10%以上、70%未満であることが好ましい。上記方法で測定されるポリエステル及び/又はポリアミドの結晶化度が低すぎると、高温環境下におけるヒートシール強度が低下する傾向があり、高すぎると、柔軟性が低下する傾向がある。高温環境下におけるヒートシール強度と柔軟性とを両立させる観点から、上記結晶化度は、15%以上、50%未満であることがより好ましい。なお、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルは、非結晶性であるため、結晶化度の好ましい範囲は存在しない。
第2の樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
シーラント層16における第1の樹脂の含有量は、シーラント層16における第1の樹脂及び第2の樹脂の総量を基準として、10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることが更に好ましい。第1の樹脂の含有量が10質量%以上であることで、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度をより十分に確保し易く、80質量%以下であることで、高温環境下においてより優れたヒートシール強度を確保し易い。なお、第1の樹脂と第2の樹脂とは、予め混練機等を用いて溶融混練したものを用いてもよい。
第1の樹脂中の変性ポリオレフィンの含有量は、第1の樹脂全量を基準として、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜40質量であることがより好ましい。変性ポリオレフィンの含有量が0.1質量%以上であることで、変性ポリオレフィンの極性基と第2の樹脂の官能基とが反応し易く、第1の樹脂と第2の樹脂との相溶性が向上し易い。なお、第1の樹脂中の変性ポリオレフィンの含有量は100質量%であってもよいが、変性ポリオレフィンの融点が低い場合、高温環境下におけるヒートシール強度が低下する恐れがあるため、40質量%以下であることがより好ましい。
シーラント層16は、第1の樹脂及び第2の樹脂以外の成分を含んでいてもよい。例えば、シーラント層16は、耐衝撃性付与の観点からエラストマーなどの成分を含んでもよい。また、シーラント層16は、シール性や耐熱性およびその他機能性を付与させるために、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、脱水剤、粘着付与剤、結晶核剤などの添加剤を含んでいてもよい。
シーラント層16は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。シーラント層16が多層構成である場合は、各層同士を共押出により積層してもよく、ドライラミネートにより積層してもよい。シーラント層16が多層構成である場合、少なくとも一層が第1の樹脂及び第2の樹脂を含んでいればよいが、本開示の効果をより十分に得る観点から、全ての層が第1の樹脂及び第2の樹脂を含んでいてもよい。
シーラント層16の厚さ(多層の場合は総厚)は、10〜150μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。シーラント層16の厚さが10μm以上であることにより、十分なヒートシール強度を得ることができ、150μm以下であることにより、外装材端部からの水蒸気の浸入量を低減することができる。
シーラント層の融解ピーク温度は、用途によって異なるが、全固体電池向けの外装材の場合、耐熱性が向上することから、160〜280℃であることが好ましい。
以上、本実施形態の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、図1では、バリア層13の両面に腐食防止処理層14a,14bが設けられている場合を示したが、腐食防止処理層14a,14bのいずれか一方のみが設けられていてもよく、腐食防止処理層が設けられていなくてもよい。
図1では、第2の接着剤層12bを用いてバリア層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図2に示す蓄電装置用外装材20のように、第2の接着剤層12bを介さずにシーラント層16とバリア層13とが直接積層されていてもよい。この場合でも、シーラント層16が第1の樹脂及び第2の樹脂を含むことで、シーラント層16とバリア層13との良好な密着性を得ることができる。これは、第2の樹脂であるポリエステル及びポリアミド等が、バリア層との接着性を有するためである。また、第1の樹脂が極性基を有する場合、シーラント層16とバリア層13との密着性をより向上させることができる。
<硫化水素吸着物質>
本実施形態の外装材10,20を全固体電池用途に適用する場合、全固体電解質の種類によっては水分との反応により硫化水素が発生する場合がある。そのため、外装材10,20に硫化水素を分解もしくは吸着する材料(硫化水素吸着物質)を添加してもよい。硫化水素吸着物質は、例えば、第1の接着剤層12a、第2の接着剤層12b、及び、シーラント層16のうちの少なくとも一層に添加することができる。硫化水素吸着物質は、外装材10,20の基材層11側を外側、シーラント層16側を内側とした場合に、バリア層13よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層に添加することが、外装材10,20の内部で発生した硫化水素を吸着し易いことから好ましく、特にシーラント層16に添加することが、効果がより大きいため好ましい。
硫化水素吸着物質としては、酸化亜鉛、非晶質金属ケイ酸塩(主に金属が銅、亜鉛であるもの)、ジルコニウム・タンタノイド元素の水和物、4価金属リン酸塩(特に金属が銅であるもの)、ゼオライト及び亜鉛イオンの混合物、ゼオライトと酸化亜鉛と酸化銅(II)との混合物、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、硫酸銀、酢酸銀、酸化アルミニウム、水酸化鉄、イソシアネート化合物、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、ゼオライト、活性炭、アミン系化合物、アイオノマー等が挙げられる。これらの中でも、硫化水素をより無害化しやすく、コストや取り扱い性の観点から、酸化亜鉛が好ましい。硫化水素吸着物質は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
硫化水素吸着物質を添加する層は単層でも複数層でも構わない。硫化水素吸着物質をシーラント層16に添加する場合は、マスターバッチとして事前に高濃度配合品を作製しておき、その後適切な濃度になる様にシーラント層16の樹脂にマスターバッチを配合してもよい。第1の接着剤層12a又は第2の接着剤層12bに配合する場合、それらを接着剤の塗工により形成する場合は塗液に直接配合してもよいし、押し出し等で形成する場合は上記シーラント層16と同様にマスターバッチを作製して配合してもよい。なお、マスターバッチを作製する場合の樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルなどの熱可塑性樹脂を用いることができる。
硫化水素吸着物質を添加するにあたって分散性やシール性、耐熱性及びその他機能を付与させるために、例えば分散剤、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、脱水剤、粘着付与剤、結晶核剤、可塑剤等を添加してもよい。
硫化水素吸着物質の含有量は、添加する層の固形分全量を基準として、0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましい。硫化水素吸着物質の含有量が0.01質量%未満では硫化水素無害化の効果が小さく、30質量%を超えると添加する層の物性が低下する傾向があるためである。
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材10の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。
(バリア層13への腐食防止処理層14a,14bの積層工程)
本工程は、バリア層13に対して、腐食防止処理層14a,14bを形成する工程である。その方法としては、上述したように、バリア層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗布したりする方法などが挙げられる。
また、腐食防止処理層14a,14bが多層の場合は、例えば、下層側(バリア層13側)の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)をバリア層13に塗布し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗布液(コーティング剤)を第一層に塗布し、焼き付けて第二層を形成すればよい。
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて行えばよい。熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて行えばよい。化成処理については化成処理のタイプに応じ、浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面はシーラント層16を積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14a,14bの乾燥条件に応じて、母材温度として60〜300℃の範囲で行うことができる。
(基材層11とバリア層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14a,14bを設けたバリア層13と、基材層11とを、第1の接着剤層12aを介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第1の接着剤層12aを構成する材料にて両者を貼り合わせる。第1の接着剤層12aは、ドライ塗布量として1〜10g/mの範囲、より好ましくは2〜7g/mの範囲で設ける。
(第2の接着剤層12b及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、バリア層13の第2の腐食防止処理層14b側に、第2の接着剤層12bを介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーション等が挙げられる。
ウェットプロセスの場合は、第2の接着剤層12bを構成する接着剤の溶液又は分散液を、第2の腐食防止処理層14b上に塗工し、所定の温度で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材10を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。第2の接着剤層12bの好ましいドライ塗布量は、第1の接着剤層12aと同様である。
この場合、シーラント層16は、例えば、上述したシーラント層16の構成成分を含有するシーラント層形成用樹脂組成物を用いて、溶融押出成形機により製造することができる。溶融押出成形機では、生産性の観点から、加工速度を80m/分以上とすることができる。
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/第2の接着剤層12b/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温〜100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1〜10日である。
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材20の製造方法は、バリア層13に腐食防止処理層14a,14bを設ける工程と、第1の接着剤層12aを用いて基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程と、シーラント層16をさらに積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11とバリア層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
(シーラント層16の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された第2の腐食防止処理層14b上に、シーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いてシーラント層16をラミネートする方法が挙げられる。シーラント層16の形成では、例えば、上述したシーラント層16の構成を満たすように、各成分が配合される。シーラント層16の形成には、上述したシーラント層形成用樹脂組成物が用いられる。
本工程により、図2に示すような、基材層11/第1の接着剤層12a/第1の腐食防止処理層14a/バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
シーラント層16は、シーラント層形成用樹脂組成物の構成成分として上述した材料配合組成になるようにドライブレンドした材料を直接、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。あるいは、シーラント層16は、事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機により押し出すことで積層させてもよい。シーラント層16の形成速度(加工速度)は、生産性の観点から、例えば、80m/分以上であることができる。
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、バリア層13/第2の腐食防止処理層14b/シーラント層16間での密着性を向上させることができる。熱処理の方法としては、少なくともシーラント層16の融点以上の温度で処理することが好ましい。
このようにして、図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
以上、本開示の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本開示の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電装置用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本開示の蓄電装置用外装材は、ヒートシール後の高温環境下での使用に際しても優れたヒートシール性を維持することができるため、そのような環境での使用が想定される固体電解質を用いた全固体電池用の外装材として好適である。
[蓄電装置]
図3は、上述した外装材を用いて作製した蓄電装置の一実施形態を示す斜視図である。図3に示されるように、蓄電装置50は、電極を含む電池要素(蓄電装置本体)52と、上記電極から延在し、電池要素52から電流を外部に取り出すための2つの金属端子(リード、電流取出し端子)53と、電池要素52を気密状態で包含する外装材10とを含んで構成される。外装材10は、上述した本実施形態に係る外装材10であり、電池要素52を収容する容器として用いられる。外装材10では、基材層11が最外層であり、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置50の外部側、シーラント層16を蓄電装置50の内部側となるように、1つのラミネートフィルムを2つ折りにして周縁部を熱融着することにより、又は、2つのラミネートフィルムを重ねて周縁部を熱融着することにより、内部に電池要素52を包含した構成となる。金属端子53は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。金属端子53は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。なお、蓄電装置50では、外装材10に代えて外装材20を用いてもよい。
電池要素52は、正極と負極との間に電解質を介在させてなるものである。金属端子53は、集電体の一部が外装材10の外部に取り出されたものであり、銅箔やアルミ箔等の金属箔からなる。
本実施形態の蓄電装置50は、全固体電池であってもよい。この場合、電池要素52の電解質には硫化物系固体電解質等の固体電解質が用いられる。本実施形態の蓄電装置50は、本実施形態の外装材10を用いているため、高温環境下(例えば150℃)において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境に曝された後の室温環境下での優れたヒートシール強度を確保することができる。
以下、実施例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層(厚さ25μm)>
一方の面にコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。
<第1の接着剤層(厚さ4μm)>
ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合したポリウレタン系接着剤(東洋インキ社製)を用いた。
<第1の腐食防止処理層(基材層側)及び第2の腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL−1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL−2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
(CL−3):溶媒として1質量%濃度のリン酸水溶液を用い、固形分濃度1質量%に調整した水溶性フェノール樹脂(住友ベークライト社製)に対し、フッ化クロム(CrF3)を最終乾燥皮膜中に存在するCr量として10mg/mとなるように濃度を調整し化成処理剤を用いた。
<バリア層(厚さ:40μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
<第2の接着剤層(厚さ3μm)>
エポキシ樹脂(アデカ社製、商品名:EP4100)100質量部及びポリアミドアミン系硬化剤(アデカ社製、商品名:EH4602)25質量部の混合物を酢酸エチルで固形分30質量%に希釈したエポキシ系接着剤を用いた。
<シーラント層(厚さ:80μm)>
表1に示す第1の樹脂及び第2の樹脂を準備した。第1の樹脂と第2の樹脂とは、事前に2軸混練機によってそれらをメルトブレンドすることで、シーラント層形成用樹脂組成物としたものを用いた。シーラント層形成用樹脂組成物の組成(使用した樹脂及びその配合量)を表2〜6に示す。表中の配合量の単位「%」は、第1の樹脂及び第2の樹脂の総量を基準(100質量%)とした場合の質量基準の単位「質量%」を意味する。また、変性ポリオレフィンは、記載名称の欄に示した酸無水物で変性されたもの、又は、同欄に示した極性基を有するものである。
Figure 2021152993
<硫化水素吸着物質>
一部の実施例及び比較例において、硫化水素吸着物質としての酸化亜鉛(堺化学工業社製)を、シーラント層又は第2の接着剤層に添加した。添加の有無については、表2〜6に示した。シーラント層に添加する場合の添加量は、第1の樹脂及び第2の樹脂の総量100質量部に対して3質量部とした。シーラント層を多層とした場合には、両方の層に上記添加量で添加した。第2の接着剤層に添加する場合の添加量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の総量100質量部に対して3質量部とした。硫化水素吸着物質は、各層を構成する材料と混合して用いた。
[外装材の作製]
(実施例1〜3)
バリア層をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。バリア層と基材層との積層は、バリア層の一方の面上にポリウレタン系接着剤を、硬化後の厚さが4μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材層とラミネートし、60℃で5日間エージングすることで行った。
次いで、バリア層の基材層とは反対側をドライラミネート手法により、エポキシ系接着剤(第2の接着剤層)を用いて、シーラント層に貼り付けた。バリア層とシーラント層との積層は、バリア層の基材層とは反対側の面上にエポキシ系接着剤を、硬化後の厚さが3μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、120℃で3時間エージングすることで行った。シーラント層は、表2に示したシーラント層形成用樹脂組成物を、事前にキャストフィルムとして製膜したものを用いた。以上の方法で、外装材(基材層/第1の接着剤層/バリア層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例4〜14)
まず、バリア層に、第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、バリア層の両方の面に(CL−1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL−2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL−1)と(CL−2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL−1)と(CL−2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
次に、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第1の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。バリア層と基材層との積層は、バリア層の第1の腐食防止処理層側の面上にポリウレタン系接着剤を、硬化後の厚さが4μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、基材層とラミネートし、60℃で5日間エージングすることで行った。
次いで、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第2の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、エポキシ系接着剤(第2の接着剤層)を用いて、シーラント層に貼り付けた。バリア層とシーラント層との積層は、バリア層の基材層とは反対側の面上にエポキシ系接着剤を、硬化後の厚さが3μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、120℃で3時間エージングすることで行った。シーラント層は、表2に示したシーラント層形成用樹脂組成物を、事前にキャストフィルムとして製膜したものを用いた。以上の方法で、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。なお、硫化水素吸着物質を、実施例12においては第2の接着剤層に、それ以外の実施例についてはシーラント層に、それぞれ添加した。
(実施例15)
腐食防止処理層を設けなかったこと以外は実施例11と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/バリア層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例16)
シーラント層に硫化水素吸着物質を添加しなかったこと以外は実施例11と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例17〜23)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表3に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例24)
第1及び第2の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、バリア層の両方の面に(CL−3)を、ドライ塗布量として30mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL−2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗布することで、(CL−3)と(CL−2)からなる複合層を第1及び第2の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL−3)と(CL−2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。このようにして第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層を用いたこと以外は実施例11と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例25〜27)
実施例11と同様にして、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層と基材層とをポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いてラミネートした。次いで、これを押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に270℃、100m/minの加工条件でシーラント層(厚さ80μm)を押出ラミネートした。なお、シーラント層は、事前に二軸押出機を用いて各種材料のコンパウンドを作製しておき、水冷・ペレタイズの工程を経て、上記押出ラミネートに使用した。シーラント層の形成には、表4に示したシーラント層形成用樹脂組成物を用いた。
このようにして得られた積層体を、該積層体の最高到達温度が220℃になるように、熱処理を施して、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例28〜30及び33)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表4に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例31〜32及び34)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表4に示すように変更したこと以外は実施例26と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/シーラント層の積層体)を作製した。
(実施例35及び38〜39)
実施例11と同様にして、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層と基材層とをポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いてラミネートした。次いで、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層の第2の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、エポキシ系接着剤(第2の接着剤層)を用いて、シーラント層に貼り付けた。バリア層とシーラント層との積層は、バリア層の基材層とは反対側の面上にエポキシ系接着剤を、硬化後の厚さが3μmとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥した後、シーラント層とラミネートし、120℃で3時間エージングすることで行った。シーラント層は、表5に示したバリア層側用のシーラント層形成用樹脂組成物と、最内層側用のシーラント層形成用樹脂組成物とを用いて、事前に多層キャストフィルム(各層の厚さ:40μm)として製膜したものを用いた。以上の方法で、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層(バリア層側シーラント層及び最内層側シーラント層)の積層体)を作製した。なお、硫化水素吸着物質は、2層のシーラント層の両方に添加した。
(実施例36〜37及び40)
実施例11と同様にして、第1及び第2の腐食防止処理層を設けたバリア層と基材層とをポリウレタン系接着剤(第1の接着剤層)を用いてラミネートした。次いで、これを押出ラミネート機の巻出部にセットし、第2の腐食防止処理層上に270℃、100m/minの加工条件で共押出しすることで2層のシーラント層(2層とも厚さ40μm)を積層した。なお、シーラント層は、事前に二軸押出機を用いて各種材料のコンパウンドを作製しておき、水冷・ペレタイズの工程を経て、上記押出ラミネートに使用した。シーラント層の形成には、表5に示したバリア層側用のシーラント層形成用樹脂組成物と、最内層側用のシーラント層形成用樹脂組成物とを用いた。
このようにして得られた積層体を、該積層体の最高到達温度が220℃になるように、熱処理を施して、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/シーラント層(バリア層側シーラント層及び最内層側シーラント層)の積層体)を作製した。なお、硫化水素吸着物質は、2層のシーラント層の両方に添加した。
(実施例41〜42)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表5に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(比較例1〜2、4及び6)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表6に示すように変更したこと以外は実施例11と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/第2の接着剤層/シーラント層の積層体)を作製した。
(比較例3及び5)
シーラント層形成用樹脂組成物の組成を表6に示すように変更したこと以外は実施例26と同様にして、外装材(基材層/第1の接着剤層/第1の腐食防止処理層/バリア層/第2の腐食防止処理層/シーラント層の積層体)を作製した。
[ヒートシール後の結晶化度の測定]
第2の樹脂としてポリエステル又はポリアミドを用いた外装材を2枚用意し、それらをシーラント層同士が対向するように積層し、260℃、0.5MPa、3秒間の条件でヒートシールした。その後、25℃まで冷却した後、シーラント層中のポリエステル及びポリアミドの結晶化度を測定した。結晶化度は、IRを用いて、結晶部ピーク/(非晶部ピーク+結晶部ピーク)の面積比から算出した。
[室温ヒートシール強度の測定]
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルを2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで220℃、0.5MPa、3秒で熱封緘した。熱封緘後の外装材を150℃の環境下で60分間エージングさせた後、室温まで冷却した。熱封緘した箇所を15mm幅にカットし(図4を参照)、シール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/分で行った。測定されたシール強度(バースト強度)の値に基づき、以下の判定基準に基づいて評価した。評価結果がC以上であれば合格である。
A:シール強度が40N/15mm以上
B:シール強度が30N/15mm以上、40N/15mm未満
C:シール強度が25N/15mm以上、30N/15mm未満
D:シール強度が25N/15mm未満
また、150℃エージング(以下、場合により「150℃AG」と言う)前後のシール強度の比較から、シール強度の低下率を下記式に基づいて算出した。
低下率(%)={(150℃AG前のシール強度−150℃AG後のシール強度)/150℃AG前のシール強度}×100
[高温ヒートシール強度の測定]
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルを2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで220℃、0.5MPa、3秒で熱封緘した。その後、熱封緘した箇所を15mm幅にカットし(図4を参照)、150℃環境下において5分間静置した後、150℃環境下で、剥離速度50mm/分の条件でのシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。測定されたシール強度(バースト強度)の値に基づき、以下の判定基準に基づいて評価した。評価結果がC以上であれば合格である。
A:シール強度が35N/15mm以上
B:シール強度が30N/15mm以上、35N/15mm未満
C:シール強度が20N/15mm以上、30N/15mm未満
D:シール強度が20N/15mm未満
[HS暴露後の室温ヒートシール強度の測定]
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルを2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで220℃、0.5MPa、3秒で熱封緘した。その後、熱封緘した箇所を15mm幅にカットし(図4を参照)、硫化水素濃度20質量ppm環境下、室温にて72時間静置した。その後、室温環境下において5分間静置した後、熱封緘した箇所のシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/分で行った。測定されたシール強度(バースト強度)の値に基づき、以下の判定基準に基づいて評価した。
A:シール強度が50N/15mm以上
B:シール強度が40N/15mm以上、50N/15mm未満
C:シール強度が35N/15mm以上、50N/15mm未満
D:シール強度が35N/15mm未満
[HS暴露後の高温ヒートシール強度の測定]
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルを2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで220℃、0.5MPa、3秒で熱封緘した。その後、熱封緘した箇所を15mm幅にカットし(図4を参照)、硫化水素濃度20質量ppm環境下、室温にて72時間静置した。その後、150℃環境下において5分間静置した後、150℃環境下で、剥離速度50mm/分の条件でのシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。測定されたシール強度(バースト強度)の値に基づき、以下の判定基準に基づいて評価した。
A:バースト強度が35N/15mm以上
B:バースト強度が30N/15mm以上、35N/15mm未満
C:バースト強度が20N/15mm以上、30N/15mm未満
D:バースト強度が20N/15mm未満
Figure 2021152993
Figure 2021152993
Figure 2021152993
Figure 2021152993
Figure 2021152993
本開示によれば、高温環境下(例えば150℃)において優れたヒートシール強度を確保できると共に、高温環境下(例えば150℃)で使用した後の室温環境下でのヒートシール強度の低下を抑制できる蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置が提供される。
10,20…蓄電装置用外装材、11…基材層、12a…第1の接着剤層、12b…第2の接着剤層、13…バリア層、14a…第1の腐食防止処理層、14b…第2の腐食防止処理層、16…シーラント層、50…蓄電装置、52…電池要素、53…金属端子。

Claims (9)

  1. 少なくとも基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、
    前記シーラント層が、第1の樹脂としてのポリオレフィンと、第2の樹脂としてのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂とを含む、蓄電装置用外装材。
  2. 前記第1の樹脂が、前記第2の樹脂と反応できる極性基を有する変性ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
  3. 前記変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンである、請求項2に記載の蓄電装置用外装材。
  4. 前記シーラント層が前記ポリエステル及び/又は前記ポリアミドを含み、
    前記シーラント層を260℃、0.5MPa、3秒間の条件でヒートシールし、25℃に冷却した後の、前記ポリエステル及び/又は前記ポリアミドの結晶化度が10%以上、70%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  5. 前記バリア層の一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  6. 前記蓄電装置用外装材の前記基材層側を外側、前記シーラント層側を内側とした場合に、前記バリア層よりも内側に配置された層のうちの少なくとも一層が、硫化水素吸着物質を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  7. 全固体電池用である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  8. 蓄電装置本体と、
    前記蓄電装置本体から延在する電流取出し端子と、
    前記電流取出し端子を挟持し且つ前記蓄電装置本体を収容する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材と、
    を備える蓄電装置。
  9. 全固体電池である、請求項8に記載の蓄電装置。
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