JP2021150358A - パワー半導体モジュールの実装構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで放熱性が良いパワー半導体モジュールの実装構造を提供する。【解決手段】パワー半導体素子20、パワー半導体素子20から発生した熱を拡散させる熱拡散部材30、電気的絶縁性を確保しながら熱を伝達する絶縁放熱部材40、および冷却器50が順次接合されており、熱拡散部材30は、異方性熱伝導特性を有するグラファイト層31および銅層32を備えた複数の層で構成され、グラファイト層31は、熱伝導率の一番低い方向が層の厚みの方向と直交して配置され、銅層32はグラファイト層31よりも冷却器50に近い側に配置され、かつ、銅層32の厚みはグラファイト層31の厚みの4倍以上に設定されている。【選択図】図2
Description
本願は、パワー半導体モジュールの実装構造に関する。
電気自動車、ハイブリッドカー等の電動化車両には、一般的に駆動モータおよび駆動モータを制御するためのインバータ装置が搭載される。インバータ装置はパワー半導体素子を搭載したパワー半導体モジュールによって構成されるインバータ回路を備え、スイッチング動作によって直流電力と交流電力とを相互に変換し、モータの力行動作および回生動作を行う。
パワー半導体素子は、大電流の導通またはスイッチング動作によって発熱が生じる。放熱が不十分であるとパワー半導体素子およびその周辺の構造部材が高温となり、性能の低下または故障を招くため、パワー半導体モジュールはこれらの熱を速やかに冷却器に伝達し、放熱する必要がある。
また、近年ではシリコン(Si)半導体を用いたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に置き換わる素子として、特性に優れるワイドバンドギャップ半導体である炭化ケイ素(SiC)半導体を用いたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が採用され始めている。SiCはSiと比較して小さい面積のチップで大きな電力を扱うが、その反面単位面積当たりの発熱量は増大し、より高い放熱性能が求められる。
従来、パワー半導体モジュールの熱拡散部材としては銅あるいは銅合金が使用されていたが、さらに放熱性を高めるために熱伝導率が各方向によって異なる、いわゆる異方性熱伝導特性をもつグラファイトを熱拡散部材として使用する構造が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
しかし、熱拡散部材として異方性熱伝特性をもつグラファイトを単体で使用する場合、この種のグラファイトは従来の銅あるいは銅合金と比較して単位体積当たりの価格が高価であり、費用対効果の面で導入には課題があった。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、低コストかつ放熱性能に優れたパワー半導体モジュールの実装構造を提供することを目的とする。
本願に開示されるパワー半導体モジュールの実装構造は、
パワー半導体素子、前記パワー半導体素子から発生した熱を拡散させる熱拡散部材、電気的絶縁性を確保しながら熱を伝達する絶縁放熱部材、および冷却器が順次接合されたパワー半導体モジュールの実装構造であって、
前記熱拡散部材は、異方性熱伝導特性を有するグラファイト層および銅層を備えた複数の層で構成され、前記グラファイト層は、熱伝導率の一番低い方向が前記層の厚みの方向と直交して配置され、前記銅層は前記グラファイト層よりも前記冷却器に近い側に配置されており、かつ、前記銅層の厚みは前記グラファイト層の厚みの4倍以上である。
パワー半導体素子、前記パワー半導体素子から発生した熱を拡散させる熱拡散部材、電気的絶縁性を確保しながら熱を伝達する絶縁放熱部材、および冷却器が順次接合されたパワー半導体モジュールの実装構造であって、
前記熱拡散部材は、異方性熱伝導特性を有するグラファイト層および銅層を備えた複数の層で構成され、前記グラファイト層は、熱伝導率の一番低い方向が前記層の厚みの方向と直交して配置され、前記銅層は前記グラファイト層よりも前記冷却器に近い側に配置されており、かつ、前記銅層の厚みは前記グラファイト層の厚みの4倍以上である。
本願に開示されるパワー半導体モジュールの実装構造によれば、低コストかつ放熱性能に優れたパワー半導体モジュールの実装構造を得ることできる。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係るパワー半導体モジュールを示す平面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。
図1は実施の形態1に係るパワー半導体モジュールを示す平面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。
この実施の形態1のパワー半導体モジュール10は、1つのパワー半導体素子20(例えパワーイドバンドギャップ半導体としてのSiC半導体)が熱拡散部材30の上面に接合されている。その接合には、ここでは銀を主成分とした焼結材(図示しない)を用いているが、他の接合手法を用いてもよい。なお、熱拡散部材30の構成については、後に詳述する。さらに、熱拡散部材30の下面には、絶縁放熱部材40が接合され、さらに、この絶縁放熱部材40の下面には冷却器50が接合されている。
絶縁放熱部材40は、電気的絶縁性を保ちつつ、ある程度の熱伝導率をもつ必要があるため、例えばシリコンシート、あるいはセラミックシートが使用される。また、冷却器50は、例えばアルミ製のもので、放熱用のフィン50Aが設けられている。
なお、パワー半導体素子20、熱拡散部材30、絶縁放熱部材40は、絶縁性をもつモールド60で封止されているが、図1では説明のためモールド60を便宜上、透過して図示している。
なお、パワー半導体素子20、熱拡散部材30、絶縁放熱部材40は、絶縁性をもつモールド60で封止されているが、図1では説明のためモールド60を便宜上、透過して図示している。
上記の熱拡散部材30は、図2に示すように、熱分解グラファイトからなるグラファイト層31、および銅の板材からなる銅層32が積層されて構成されており、グラファイト層31は、さらに上層31Aと下層31Bの2層で構成されている。
グラファイト層31を構成する熱分解グラファイトは、炭素原子が六角形の網目を描くようにシート状に結合したグラフェンが複数積層された構造をしており、グラフェンの面と平行な方向については高い熱伝導率(例えば1700[W/mK]程度)を示し、グラフェンの面と垂直な方向については、それよりも低い熱伝導率(例えば7[W/mK]程度)を示すような、異方性熱伝導特性を有する。
ここで、図1および図2において、上層31Aと下層31Bの厚さ方向をZ方向、このZ方向と直交する平面2方向をX方向、Y方向とすると、上層31Aにおけるグラフェンの面は、X−Z平面と平行になるように配置されている。このため、上層31Aについては、X−Z平面での熱伝導率が、これに直交するY方向への熱伝導率よりも大きな値を示す。また、下層31Bにおけるグラフェンの面は、Y−Z平面での熱伝導率が、これに直交するX方向への熱伝導率よりも大きな値を示す。
したがって、X−Y平面に着目すると、上層31AについてはX方向に、下層31BについてはY方向に熱が拡散され易く、したがって、グラファイト層31全体で見ると、X−Y平面の全方向に向けて熱が拡散される。しかも、Z方向への熱伝導率も高いため、優れた放熱性能が発揮される。
熱拡散部材30で広げられた熱は、絶縁放熱部材40を介して絶縁を保ちながら冷却器50に放熱される。この場合、絶縁放熱部材40は、放熱経路における他の部材と比較して熱伝導率が低いため、熱がここを通過する前に熱拡散部材30によって可能な限りX−Y平面の全方向に拡散しておき、広い面積でもって絶縁放熱部材40を通過させることができる。そして、熱拡散部材30を通過して冷却器50に伝わった熱はフィン50Aを介して放熱される。
なお、ここでは、グラファイト層31を構成する上層31Aについては、X−Z平面での熱伝導率が、これに直交するY方向への熱伝導率よりも大きな値を示し、また、下層31Bについては、Y−Z平面での熱伝導率が、これに直交するX方向への熱伝導率よりも大きな値を示す構成としたが、これに限らず、上層31Aおよび下層31Bの異方性熱伝導特性は、上下逆の場合であってもよい。また、ここでは、グラファイト層31は、上層31Aおよび下層31Bの2層からなるものとしたが、これに限らず、3層以上で構成されたものであってもよい。その場合でも、X方向およびY方向に広い面積をもって熱が拡散するように、互いに隣接する上下の層は、熱伝導率の一番低い方向同士が互いに直交するように配置されているのが好ましい。
図3は、この実施の形態1におけるパワー半導体モジュール10の実装構造において、定常伝熱解析を行った結果を示すグラフである。図1、図2に示すように、グラファイト層31の厚みをt、銅層32の厚みをtc、パワー半導体素子20の一辺の長さをaとしたとき、横軸は銅層32の厚みtcをパワー半導体素子20の一辺の長さaで正規化した数値としている。また、縦軸はパワー半導体素子20から冷却器50のフィン50Aの根元の位置までの熱抵抗値Rjwを、t=0、tc=0.25aの条件の下での値を「1」として正規化した値を示している。
また、この熱解析においては、パワー半導体素子20の外周の一辺から熱拡散部材30の外周の一辺までの距離をbとしたとき(図1参照)、b=0.5aとし、また、グラファイト層31の上層31Aと下層31Bの厚みをどちらも0.5tとした。また、絶縁放熱部材40の等価熱伝達係数は50000[W/m2K]とした。冷却器50のフィン50Aは省略されているものとし、フィン50Aの根元の位置となる面に熱伝達係数30000[W/m2K]を与えた。
図3より、グラファイト層31の厚みtが十分に厚い場合(例えば、t=0.1a〜0.2a)には、銅層32の厚みtcを変化させても、熱抵抗値Rjwの変化は比較的小さい。このため、銅層32を追加することの効果は薄い、もしくは熱抵抗を悪化させる傾向となる。
一方、グラファイト層31が薄い場合(例えば、t=0.02a〜0.05a)には、銅層32の厚みtcを変化させると、これに伴う熱抵抗値Rjwの変化が比較的大きい。そのため、グラファイト層31の厚みtが薄くても、銅層32の厚みtcを調整することで熱抵抗値Rjwを下げて放熱性能を高めることができる。したがって、少量のみグラファイト層31を用い、銅層32で熱拡散効果を補うことでコストの増加を抑えつつ、放熱性能を高めることができる。
なお、グラファイト層31の厚みtが異なる各々のグラフにおいて、熱抵抗値Rjwが低下して飽和する下限となる位置は、パワー半導体素子20の一辺から熱拡散部材30の一辺までの距離bによっても変化するが、グラファイト層31のコストおよび熱抵抗値Rjwの低減による効果を鑑みると、銅層32の厚みtcはグラファイト層31の厚みtの4倍より大きいことが望ましい。例えば、グラファイト層31の厚みtがt=0.05aの場合には、銅層32の厚みtcは、tc≧0.2a(=0.05a×4)が好ましい。このようにすれば、グラファイト層31の厚みtを徒に厚くしなくても、銅層32の厚みtcを調整することで、熱抵抗値Rjwを下げて放熱効果を高めることができる。
図4は、銅層32の厚みtcとグラファイト層31の厚みtの比(tc/t)を製作上のコスト面から見た場合の関係を示すグラフである。ここに、横軸は銅層32の厚みtcとグラファイト層31の厚みtの比(tc/t)を、縦軸は熱抵抗の減少によるチップサイズの変動まで考慮したコストを示す。また、図4中の横水平の破線CBは、コストのメリットが成立するかどうかの境界線を示しており、この境界線によりも下側であれば、コストのメリットが生じる。
このグラフから、厚みの比(tc/t)がおおよそ3以上であればメリットが生じるが、確実にメリットが生じるのは4以上、すなわち、銅層32の厚みtcはグラファイト層31の厚みtの4倍より大きいことが望ましいことが理解される。
以上のように、この実施の形態1におけるパワー半導体モジュール10の実装構造によれば、熱拡散部材30を異方性熱伝導特性を有するグラファイト層31および銅層32を含む複数の層で構成しているので、グラファイト単体で使用する場合に比べ、グラファイトの使用量を削減でき、かつ、パワー半導体素子20から発生した熱を効率良く拡散して冷却器50で放熱することが可能となるため、低コストかつ放熱性能に優れたパワー半導体モジュール10の実装構造を得ることできる。
なお、以上の説明では、パワー半導体素子20として、ワイドバンドギャップ半導体であるSiC半導体を例として挙げたが、他のワイドバンドギャップ半導体、例えば窒化ガリウム(GaN)半導体を用いても構わない。
また、以上の説明ではパワー半導体素子20を熱拡散部材30上に1つのみ実装した構成を例として挙げたが、複数のパワー半導体素子を実装する構成であっても本願による効果は有効である。
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
10 パワー半導体モジュール、20 パワー半導体素子、30 熱拡散部材、
31 グラファイト層、31A 上層、31B 下層、32 銅層、
40 絶縁放熱部材、50 冷却器、60 モールド。
31 グラファイト層、31A 上層、31B 下層、32 銅層、
40 絶縁放熱部材、50 冷却器、60 モールド。
Claims (4)
- パワー半導体素子、前記パワー半導体素子から発生した熱を拡散させる熱拡散部材、電気的絶縁性を確保しながら熱を伝達する絶縁放熱部材、および冷却器が順次接合されたパワー半導体モジュールの実装構造であって、
前記熱拡散部材は、異方性熱伝導特性を有するグラファイト層および銅層を備えた複数の層で構成され、前記グラファイト層は、熱伝導率の一番低い方向が前記層の厚みの方向と直交して配置され、前記銅層は前記グラファイト層よりも前記冷却器に近い側に配置されており、かつ、前記銅層の厚みは前記グラファイト層の厚みの4倍以上である、パワー半導体モジュールの実装構造。 - 前記グラファイト層は、第1層と第2層の2層で構成され、前記第1層の熱伝導率の一番低い方向と前記第2層の熱伝導率の一番低い方向とは、互いに直交して配置されている、請求項1に記載のパワー半導体モジュールの実装構造。
- 前記パワー半導体素子および前記熱拡散部材は、絶縁性のモールドで一体に封止成型されている、請求項1または請求項2に記載のパワー半導体モジュールの実装構造。
- 前記パワー半導体素子は、SiC半導体である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールの実装構造。
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