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JP2021032789A - ヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法および評価具 - Google Patents

ヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法および評価具 Download PDF

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JP2021032789A JP2019155267A JP2019155267A JP2021032789A JP 2021032789 A JP2021032789 A JP 2021032789A JP 2019155267 A JP2019155267 A JP 2019155267A JP 2019155267 A JP2019155267 A JP 2019155267A JP 2021032789 A JP2021032789 A JP 2021032789A
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大橋 俊夫
Toshio Ohashi
大橋  俊夫
佳子 河合
Yoshiko Kawai
佳子 河合
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Shinshu University NUC
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Abstract

【課題】血液を分析しなくてもリンパ液の流れの変化を容易に評価することのできるヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法および評価具を提供すること。【解決手段】第1時刻に採取した尿、およびその後の第2時刻に採取した尿の溶質濃度を比較し、第2時刻の尿の方が第1時刻の尿より溶質濃度が低いとき、第1時刻と第2時刻との間で胸管リンパ液の流れが高まったと判定する。すなわち、胸管リンパ液の流れが高まった場合、胸管リンパ液が静脈に流れ込む量が増大するので、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下し、尿中の溶質濃度が低下する。【選択図】なし

Description

本発明は、時間経過に伴うヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法および評価具に関するものである。
ヒトの細胞から出た老廃物や余分な水分は、毛細血管を通して血液に戻っていく。さらに余分なものは毛細リンパ管に流れ、やがてリンパ液としてリンパ節を介して胸管を通って、静脈に回収される。このように、リンパ管は体内の排水管のような役目を担っているので、リンパ液の流れがスムーズであれば、免疫力が向上する等の利点がある。それ故、適正なマッサージ等の行為によって、リンパ液の流れをスムーズにすることが好ましいが、リンパ管は、全身に網目状にはりめぐらされているので、最終ゴールの胸管リンパ液の流れを直接測定するのは困難である。
先に本発明者らは、ヒトの胸管リンパ液の流れを評価する技術として、第1時刻の血液と、その後の第2時刻の血液とに対して、血漿たんぱく、アルブミン、赤血球、ヘマトクリット、および抗利尿ホルモン(ADH:パゾブレッシン)等のうちの少なくとも1つの特定成分の濃度を比較し、特定成分の濃度が変化すれば、胸管リンパ液の流れが変化したと判定することを提案している(特許文献1)。
特開2017−150958号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、血液を分析する方法では、採血を行う必要があるため、胸管リンパ液の流れの変化を評価するには、医療機関を利用する必要がある等の制約があり、医療機関以外、例えば運動施設やマッサージ施設内あるいは在宅等において胸管リンパ液の流れの変化を評価することができないという問題点がある。
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、血液を分析しなくても、容易に胸管リンパ液の流れの変化を評価することのできるヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法および評価具を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、ヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、尿の溶質濃度または浸透圧の変化率により胸管リンパ液の流れの変化を評価することを特徴とする。例えば、第1時刻に採取した尿の溶質濃度、およびその後の第2時刻に採取した尿の溶質濃度を比較し、前記第2時刻に採取した尿の方が前記第1時刻に採取した尿より前記溶質濃度が低いとき、前記第1時刻と前記第2時刻との間で行った行為によって胸管リンパ液の流れが高まったと判定することを特徴とする。
リンパ液は、リンパ節を介して胸管を通って静脈に流れ込むことから、胸管リンパ液の流れが変化した場合、胸管リンパ液が静脈に流れ込む量が変化するので、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が変化し、それに対応して尿の溶質濃度が変化することに着目したものである。より具体的には、胸管リンパ液の流れが高まった場合、胸管リンパ液が静脈に流れ込む量が増大するので、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下し、それに伴い尿の溶質濃
度が低下する。従って、第1時刻と第2時刻との間における尿の溶質濃度の変化を観察すれば、血液の成分分析を行わなくても、第1時刻と第2時刻との間における血液中の抗利尿ホルモンの濃度の変化を判定することができる。それ故、第1時刻と第2時刻との間における尿の溶質濃度の変化によりヒトの胸管リンパ液の流れの変化を容易に評価することができる。
本発明において、前記溶質濃度の比較は、尿中の塩化ナトリウム濃度、ナトリウムイオン濃度、および塩素イオン濃度のうちのいずれかの比較により行われる態様を採用することができる。
また、本発明において、前記溶質濃度の比較は、尿の浸透圧の比較により行う態様を採用することができる。尿の浸透圧は溶質の濃度と正の相関性を有することから、尿の浸透圧の大小を比較すれば、尿の溶質濃度の高低を比較することができる。
本発明において、前記第1時刻の前に、ヒトに排尿させた後、前記第1時刻と前記第2時刻との間で何らかの行為を行った場合に、前記行為を行わない場合より、前記第1時刻に採取した尿に対する前記第2時刻に採取した尿の前記溶質濃度の低下量が大きいとき、前記行為によって胸管リンパ液の流れが高まったと判定することができる。
本発明において、前記行為として例えばマッサージを行った場合、前記マッサージにより胸管リンパ液の流れが高まったか否かを判定することができる。
本発明の別態様は、前記第1時刻および第2時刻に採取した尿の溶質濃度または浸透圧を測定する装置と、尿の溶質濃度または浸透圧の変化率により胸管リンパ液の流れの変化を評価するための胸管リンパ液の流れの評価表とを組み合わせてなる胸管リンパ液の流れの評価具を提供する事である。
本発明において、尿の溶質濃度の測定は、尿中のナトリウムイオン濃度および塩素イオン濃度またはその何れかで測定する事ができる。また、溶質濃度測定を浸透圧測定に替えることも出来る。
この場合、尿の溶質濃度測定装置または浸透圧測装置としては、尿中の溶質、例えばナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、または浸透圧を測定出来る装置であればどのような態様のものでも採用する事ができる。また、胸管リンパ液の流れの変化を評価するための胸管リンパ液の流れの評価表としては、尿の溶質濃度または浸透圧の変化率により胸管リンパ液の流れの変化を評価するものであればどのような態様のものでも採用する事ができる。
たとえば、後述する下記、血液中の抗利尿ホルモンの濃度(p)の変化率の計算式
変化率(%)=
(((血液量+通常のリンパ液量)×p)/(血液量+増加時のリンパ液量))×100
における血液中の抗利尿ホルモンの濃度変化率を尿の浸透圧の変化率に置き換えて、当該尿の浸透圧の変化率から推定されるリンパ液の増加率(変化率)を示した換算表を挙げることができる。
胸管リンパ液の流れが高まった場合、胸管リンパ液が静脈に流れ込む量が増大するので、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下し、尿の溶質濃度が低下する。また、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下すると、尿の溶質濃度が低下する。従って、第1時刻と第2時刻との間における尿の溶質濃度の変化を観察すれば、血液の成分分析を行わなくても、第
1時刻と第2時刻との間における血液中の抗利尿ホルモンの濃度の変化を判定することができ、第1時刻と第2時刻との間におけるヒトの胸管リンパ液の流れの変化を容易に評価することができる。
本発明に係る検討1の結果を示すグラフ。 本発明に係る検討2の結果を示すグラフ。 本発明に係る検討3の結果を示すグラフ。 検討4の手順を示す説明図。 検討4で得られた血液中の全タンパク質(TP)、血漿アルブミン(Alb)、赤血球(RBC)、およびヘモグロビン(Hb)の濃度変化を示すグラフ。 検討4で得られた尿中のナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、浸透圧、および尿量の変化比を示すグラフ。 検討4で得られた血液中の抗利尿ホルモン(ADH)の濃度の変化比を示すグラフ。 検討4で得られた浸透圧の変化比と、抗利尿ホルモン(ADH)の濃度の変化比との関係を示すグラフ。
[検討1]
(胸管リンパの流れと血液中の特定成分の濃度変化との関係)
胸管リンパ液の流れが速くなると、胸管リンパ液が静脈に流れ込む量が増える結果、血液がリンパ液で薄まる度合が大きいので、血液中の特定成分の濃度が低下する。これに対して、胸管リンパ液の流れが遅くなると、胸管リンパ液が静脈に流れ込む量が減る結果、血液がリンパ液で薄まる度合が小さいので、血液中の特定成分の濃度が上昇する。上記の特定成分としては、血漿たんぱく、アルブミン、赤血球、ヘマトクリット、および抗利尿ホルモンを例示することができる。
血漿たんぱくは、血液に含まれるたんぱく質で、その代表がアルブミンである。ヘマトクリットは、血液に含まれる血球成分であり、そのほとんどが赤血球である。ヘマトクリット値は、血液中の血球成分全体の比率である。赤血球は、血液には含まれるが、リンパ液には含まれない。白血球は、血液およびリンパ液に含まれるが、血液には、リンパ液より多く含まれる。
抗利尿ホルモンは、脳下垂体の後葉で生成され、腎臓での水の再吸収を増加させることによって、利尿を妨げる働きをする。抗利尿ホルモンは、血液中の水分が少なくて浸透圧濃度(塩分の濃度)が高まると、分泌される。従って、血液がリンパ液で薄まって浸透圧濃度が低下すると、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下する。
(検証1、2、3)
図1は、本発明に係る検討1の結果を示すグラフである。図2は、本発明に係る検討2の結果を示すグラフである。図3は、本発明に係る検討3の結果を示すグラフである。なお、図1、図2および図3では、行為前の特定成分の測定値を1とし、行為後の特定成分の測定値を行為前の測定値に対する比で示してある。また、図1、図2および図3において、マーク「」は統計学的に有意差があることを示し、「」は有意差の水準がより高いことを示し、「NS」は統計学的に有意差がないことを示す。
以下の検討を行うにあたって、計48名の被験者(平均年齢=45歳)を、以下のグループ(a群からh群)に分け、各々のグループ毎に以下の行為を行ってもらい、各行為の前後に採取した血液に対して、血漿たんぱく、アルブミン、赤血球、ヘマトクリット、白
血球、抗利尿ホルモン等の特定成分を検出した。また、各行為の前後において、足首の太さ、ひざの太さを測定した。ここで、各行為の前が本発明の「第1時刻」に相当し、各行為の後が本発明の「第2時刻」に相当する。なお、マッサージは、リンパ浮腫療法士等に実施してもらった。また、以下の検討はいずれも、午後2時から午後3時に行い、夕方に発生する足のむくみの影響を排除した。また、検討の時間内では、水分の摂取や排尿も行わなかった。また、第1時刻から第2時刻までの時間を、概ね30分とし、皮膚や息からの水分の飛散の影響を抑制した。
(検討1)
a群
あおむけ姿勢になって顔に5分間のマッサージを行い、その後、30分間、横になってもらった。
b群
あおむけ姿勢になって、両上肢に合わせて5分間(左右の手と腕に2分半ずつ)のマッサージを行い、その後、30分間、横になってもらった。
c群
あおむけ姿勢になって、両上肢に合わせて5分間(左右の太腿と足に2分半ずつ)のマッサージを行い、その後、30分間、横になってもらった。
d群
マッサージをせずに、あおむけ姿勢で30分間、横になってもらった。
(検討2)
e群
マッサージをせずに、椅子に30分間、座ってもらった。
f群
椅子に座った状態で、両上肢に合わせて5分間(左右の太腿と足に2分半ずつ)のマッサージを行った。
(検討3)
g群
あおむけ姿勢で30分間、横になってもらい、その間、1分間に2〜3回、ゆっくりと腹式呼吸をしてもらった。
h群
あおむけ姿勢で30分間、横になってもらい、その間、普通の呼吸をしてもらった。
検討1における行為前後における血漿たんぱく、アルブミン、赤血球数、ヘマトクリット値、白血球数、足首の太さ、ひざの太さの変化を図1に示す。
図1からわかるように、あおむけ姿勢になったa群、b群、c群およびd群の全てで、血漿たんぱく、アルブミン、赤血球数、ヘマトクリット値、白血球数が低下した。それ故、あおむけ姿勢になるという行為によれば、マッサージの有無にかかわらず、リンパ液の流れが速くなるといえる。特に、血漿たんぱくおよびアルブミンは、a群、b群、c群およびd群の全てで統計学的な有意差があると確認された。
赤血球数は、b群、c群およびd群で統計学的な有意差があると確認されたが、a群では、統計学的な有意差が確認されなかった。ヘマトクリット値は、b群およびc群で統計
学的な有意差があると確認されたが、a群およびd群では、統計学的な有意差が確認されなかった。白血球数は、c群で統計学的な有意差があると確認されたが、a群、b群およびd群では、統計学的な有意差が確認されなかった。
足首の太さの減少は、c群で統計学的な有意差があると確認された。ひざの太さは、a群、b群、c群およびd群のいずれの群でも統計学的な有意差が確認されなかった。
検討2における行為前後における血漿たんぱく、アルブミン、赤血球数、ヘマトクリット値、白血球数、足首の太さ、ひざの太さの変化を図2に示す。図2からわかるように、椅子に座った姿勢では、e群およびf群のいずれにおいても、アルブミン、赤血球数、ヘマトクリット値、白血球数の明らかな低下が確認できなった。それ故、椅子に座った姿勢では、マッサージの有無にかかわらず、リンパ液の流れに影響が出ないといえる。
すなわち、大量のリンパ液は、いったん腹部にある乳糜槽(リンパ液のプール)に貯められ、乳糜槽から胸に向かって延びた胸管を介して静脈に流れ込むため、あおむけ姿勢では、胸管リンパ液はスムーズに静脈に流れ込むのに対して、椅子に座った姿勢や起立した姿勢では、重力の影響で、胸管リンパ液のスムーズな流れが阻害されるといえる。
検討3における行為前後における血漿たんぱく、アルブミン、赤血球数、ヘマトクリット値、白血球数、抗利尿ホルモン、足首の太さ、ひざの太さの変化を図3に示す。
図3からわかるように、血漿たんぱく、アルブミンおよびヘマトクリット値は、g群およびh群の全てで統計学的な有意差があると確認された。赤血球数および抗利尿ホルモンは、g群で統計学的な有意差があると確認されたが、h群で統計学的な有意差が確認できなかった。白血球数は、g群およびh群のいずれの群でも統計学的な有意差が確認されなかった。足首の太さの減少は、g群およびh群のいずれの群でも統計学的な有意差が確認されなかった。ひざの太さは、g群で統計学的な有意差があると確認されたが、h群で統計学的な有意差が確認できなかった。
このように、行為前後の特定成分(血漿たんぱく、アルブミン、赤血球、ヘマトクリット、白血球、抗利尿ホルモン)を検出すれば、血液がリンパ液で薄まって特定成分の濃度が低下した場合には、リンパ液の流れが増大したと評価することができる。特に、上記の特定成分のうち、血漿たんぱく、アルブミン、赤血球、ヘマトクリット、および抗利尿ホルモンを検出すれば、統計学的な有意差が高い確率で確認されていることから、行為前後の胸管リンパ液の流れの変化を確実に評価することができる。
(本形態のヒトの胸管リンパ液の流れの変化の評価方法)
本形態では、胸管リンパ液の流れが変化すると、血液中の抗利尿ホルモンが変化することに着目し、第1時刻に採取した尿の溶質濃度、および第1時刻から一定時間経過した後の第2時刻に採取した尿の溶質濃度を比較し、第1時刻の尿と第2時刻の尿とにおいて溶質濃度が変化したとき、第1時刻と第2時刻との間で胸管リンパ液の流れが変化したと判定する。
リンパ液はリンパ節を通って静脈に流れ込むことから、リンパ液の流れが変化した場合、リンパ液が静脈に流れ込む量が変化するので、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が変化する。より具体的には、リンパ液の流れが高まった場合、リンパ液が静脈に流れ込む量が増大するので、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下する。ここで、抗利尿ホルモンは、腎臓での水の再吸収を増加させる働きを有するため、後述する検討2で確認できたように、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下すると、腎臓での水の再吸収が低下し、尿中の水の割合が増大する。その結果、尿の溶質濃度が低下するので、第2時刻の尿の方が第1時刻
の尿より溶質濃度が低いとき、第1時刻と第2時刻との間で胸管リンパ液の流れが高まったと判定することができる。
本形態において、溶質濃度の比較は、例えば、尿中の塩化ナトリウム濃度、ナトリウムイオン濃度、および塩素イオン濃度のうちのいずれかの比較により行うことができる。また、溶質濃度の比較は、尿の浸透圧の比較により行ってもよい。尿の浸透圧は溶質の濃度と正の相関関係を有することから、尿の浸透圧の大小を比較すれば、尿の溶質濃度の高低を比較することができる。すなわち、尿の浸透圧が高ければ、尿は溶質濃度が高いとわかる。
それ故、本形態によれば、血液の成分分析を行わなくても、尿の溶質濃度の変化を観察すれば、第1時刻と第2時刻との間で胸管リンパ液の流れが変化したと判定することができる。より具体的には、ヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、第1時刻に採取した尿の溶質濃度、およびその後の第2時刻に採取した尿の溶質濃度を比較し、第2時刻に採取した尿の方が第1時刻に採取した尿より溶質濃度が低いとき、第1時刻と第2時刻との間で行った行為によって胸管リンパ液の流れが高まったと判定することができる。よって、血液を分析しなくて、ヒトの胸管リンパ液の流れの変化を容易に評価することができる。
また、第1時刻の尿と第2時刻の尿とにおいて溶質濃度が変化したとき、第1時刻と第2時刻との間に行った行為が、胸管リンパ液の流れを変化させる効果があると判定することができる。従って、第1時刻と第2時刻との間に行った行為がマッサージである場合、第2時刻の尿の方が第1時刻の尿より溶質濃度が低いとき、マッサージにより第1時刻と第2時刻との間で胸管リンパ液の流れが高まったと判定することができる。
よって、マッサージによって胸管リンパ液の流れが高まったか否かを客観的に判定できるので、施術者の技能を客観的に判定することができる。
(本形態のヒトの血液中の抗利尿ホルモン濃度の評価方法)
血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下すると、腎臓での水の再吸収が低下し、尿中の水の割合が増大する。その結果、尿の溶質濃度が低下するので、第2時刻の尿の方が第1時刻の尿より溶質濃度が低いとき、第1時刻と第2時刻との間で行った行為によって血液中の抗利尿ホルモン濃度が低下したと判定することができる。尿の溶質濃度の比較は、例えば、尿中の塩化ナトリウム濃度、ナトリウムイオン濃度、および塩素イオン濃度のうちのいずれかの比較により行うことができる。また、溶質濃度の比較は、尿の浸透圧の比較により行ってもよい。
[検討4]
図4は、検討4の手順を示す説明図である。図5は、検討4で得られた血液中の全タンパク質(TP)、血漿アルブミン(Alb)、赤血球(RBC)、およびヘモグロビン(Hb)の濃度変化を示すグラフである。図6は、検討4で得られた尿中のナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、浸透圧、および尿量の変化を示すグラフである。図7は、検討4で得られた血液中の抗利尿ホルモン(ADH)の濃度の変化を示すグラフである。図8は、検討4で得られた浸透圧の変化比と、抗利尿ホルモン(ADH)の濃度の変化比との関係を示すグラフである。
本検討では、水の摂取による血液希釈の観点から、血液中の抗利尿ホルモンの濃度変化と、尿の溶質濃度との関係等を検討した。尿中の溶質濃度としては、ナトリウムイオン濃度、塩素イオン濃度、および浸透圧を測定した。
まず、図4に示すように、計20名の健康な被験者(年齢=40.8±3.1歳)を、以下の3つのグループA、B、Cに分けた。グループA、Bは、排尿の後、30分間、椅子に座ってもらった。その際、グループA、Bにおいては、排尿の後、10分後に250mLの蒸留水を摂取してもらった。グループC(対照群)は、排尿の後、30分間、椅子に座ってもらったが、250mLの蒸留水の摂取は行わない。
次に、グループA、B、Cについては、排尿から30分後に血液および尿の第1回目の採取を行い、その後、仰向け姿勢で休憩してもらった。その間、深い腹式呼吸をしないようにしてもらった。従って、本検討の結果には、胸管リンパ液の流れの影響が及びにくい。
そして、グループBについては、仰向け姿勢での10分間の休憩の後、血液および尿の第2回目の採取を行い、グルーA、Cについては、仰向け姿勢での30分間の休憩の後、血液および尿の第2回目の採取を行った。
図5に示すように、グループAは、グループCに対して、全タンパク質(TP)、アルブミン(Alb)、赤血球数(RBC)およびヘモグロビン(Hb)が減少していることが統計学的に確認された。また、グループBは、グループCに対して、全タンパク質(TP)、およびアルブミン(Alb)が減少していることが統計学的に確認された。かかる結果は、グループA、Bでは、水の摂取による血液の血液希釈の影響によると理解できる。
同様に、図6に示すように、グループAおよびグループBは何れも、グループCに対して、尿中のナトリウムイオン濃度、尿中の塩素イオン濃度、および尿の浸透圧が低下していることが統計学的に確認された。なお、尿量については、グループAはグループCに対して顕著に増加していたが、グループBは有意差がなかった。一方、図7に示すように、グループBは、グループCより、抗利尿ホルモンの濃度が有意に低下していることが統計学的に確認された。この事から、図6に示す結果は、グループBでは、水の摂取による血液の血液希釈の影響が大きく、血液中の抗利尿ホルモンの濃度が低下したと理解できる。また、図8に示すように、グループBにおける各被検者の浸透圧の変化比と、抗利尿ホルモン(ADH)の濃度の変化比との関係は直線的な相関関係にあることが確認された。この事から、尿の浸透圧の変化比から、血液中の抗利尿ホルモンの変化比、すなわち、胸管リンパ液の流れの変化を推測する事ができる。
そして、抗利尿ホルモンはリンパ液中には存在していないことから、血液中の抗利尿ホルモンの濃度(p)の変化率は、下式
変化率(%)=
(((血液量+通常のリンパ液量)×p)/(血液量+増加時のリンパ液量))×100
から計算できる。
人の血液量は体重の約13分の1(約8%)であることから、血液量は体重×0.08で計算され(体重50kgの場合、約4L、4000ml)、また血流量は通常、約1分間で全量が循環する(1分間で約4000ml)。一方リンパ液の循環は極めて遅く、流量は1分間で1〜2mlと言われている。従って、通常のリンパ液の流量を1分間で1mlとした場合、
変化率(%)=(4001p/(4001+リンパ液増加量(α)))×100
となる。
そして、上記のとおり、血液中の抗利尿ホルモンの濃度変化率と尿の浸透圧の変化率には直線的な相関関係が認められている。従って、尿の浸透圧の変化率を血液中の抗利尿ホ
ルモンの変化率と見做して、その変化率から、リンパ液の増加率(変化率)を推定する事ができる。例えば、リンパ液流量が約2倍(1分間で2ml)に増加した場合、尿の浸透圧の変化率は約99.98%と計算され、すなわち、尿の浸透圧が約0.02%変化した場合、リンパ液流量が約2倍に増加したと推測できる。
なお、グループAは、図6に示すように、グループCに対して、尿中のナトリウムイオン濃度、尿中の塩素イオン濃度、および尿の浸透圧が低下していたと統計学的に確認された。また、グループAは、図6に示すように、グループB、Cより尿量が大幅に増大し、図7に示すように、グループCより、抗利尿ホルモンの濃度が上昇していた。かかる結果は、グループAでは、第1回目の血液および尿の採取から、第2回目の血液および尿の採取までの30分の間に、血液中の水分が少なくなって血液中の抗利尿ホルモンの濃度が高くなったための補償メカニズムの影響と理解できる。
このように、グループBの結果等から判断すると、水の摂取によって血液希釈を発生させて血液中の抗利尿ホルモンの濃度を低下させると、尿の溶質濃度(尿中のナトリウムイオン濃度、尿中の塩素イオン濃度、および尿の浸透圧)が低下することが確認できた。従って、検討1で説明したように、第1時刻と第2時刻との間における尿の溶質濃度の変化を観察すれば、血液の成分分析を行わなくても、第1時刻と第2時刻との間における血液中の抗利尿ホルモンの濃度の変化を判定することができる。それ故、第1時刻と第2時刻との間におけるヒトの胸管リンパ液の流れの変化を容易に評価することができる。
また、水を摂取した場合、血液希釈によって、尿の溶質濃度(尿中のナトリウムイオン濃度、尿中の塩素イオン濃度、および尿の浸透圧)が低下する。従って、ヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、第1時刻の前に、ヒトに排尿させた後、水を摂取させた場合、第1時刻と第2時刻との間に所定の行為を行った場合には、第1時刻と第2時刻との間に所定の行為を行わない場合より、第1時刻に採取した尿に対する第2時刻に採取した尿の溶質濃度の低下量が大きいとき、所定の行為によって胸管リンパ液の流れが高まったと判定する。その際、例えば、グループBのように、水を摂取した後、30分経過するまでの間に第1時刻および第2時刻を設定することが好ましい。
同様に、ヒトの血液中の抗利尿ホルモン濃度の評価方法において、第1時刻の前に、ヒトに排尿させた後、水を摂取させた場合、第1時刻と第2時刻との間に所定の行為を行った場合には、第1時刻と第2時刻との間に所定の行為を行わない場合より、第1時刻に採取した尿に対する第2時刻に採取した尿の溶質濃度の低下量が大きいとき、所定の行為によって血液中の抗利尿ホルモン濃度が低下したと判定する。その際、例えば、グループBのように、水を摂取した後、30分経過するまでの間に第1時刻および第2時刻を設定することが好ましい。
(評価具)
本発明を効率よく実施するという観点からすると、以下の胸管リンパ液の流れの評価具を構成することが好ましい。かかつ評価具は、第1時刻およびその後の第2時刻に採取した尿の溶質濃度または浸透圧を測定する装置と、尿の溶質濃度または浸透圧の変化率により胸管リンパ液の流れの変化を評価するための胸管リンパ液の流れの評価表とを組み合わせてなる。より具体的には、前記評価具は、尿中のナトリウムイオン濃度、および塩素イオン濃度の何れかを測定できる装置、および尿の浸透圧を測定できる装置の中から選ばれた少なくとも一種の装置と、前記評価表とを組み合わせてなる。
ここで、評価表は、血液中の抗利尿ホルモンの濃度(p)の変化率の以下の計算式
変化率(%)=
(((血液量+通常のリンパ液量)×p)/(血液量+増加時のリンパ液量))×100
における血液中の抗利尿ホルモンの濃度変化率を尿の浸透圧の変化率に置き換えて、当該尿の浸透圧の変化率から推定されるリンパ液の増加率(変化率)を示した換算表である。

Claims (8)

  1. ヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、
    尿の溶質濃度または浸透圧の変化率により胸管リンパ液の流れの変化を評価することを特徴とするヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法。
  2. 請求項1に記載のヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、
    第1時刻に採取した尿の溶質濃度、および一定時間経過後の第2時刻に採取した尿の溶質濃度を比較し、
    前記第2時刻に採取した尿の方が前記第1時刻に採取した尿より前記溶質濃度が低いとき、前記第1時刻と前記第2時刻との間で行った行為によって胸管リンパ液の流れが高まったと判定することを特徴とするヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法。
  3. 請求項2に記載のヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、
    前記溶質濃度の比較は、尿中の塩化ナトリウム濃度、ナトリウムイオン濃度、および塩素イオン濃度のうちから選ばれる少なくとも1の比較により行うことを特徴とするヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法。
  4. 請求項2に記載のヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、
    前記溶質濃度の比較は、尿の浸透圧の比較により行うことを特徴とするヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法。
  5. 請求項2から4までの何れか一項に記載のヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法において、
    前記行為はマッサージであり、
    前記マッサージにより胸管リンパ液の流れが高まったか否かを判定することを特徴とするヒトの胸管リンパ液の流れの評価方法。
  6. 第1時刻およびその後の第2時刻に採取した尿の溶質濃度または浸透圧を測定する装置と、尿の溶質濃度または浸透圧の変化率により胸管リンパ液の流れの変化を評価するための胸管リンパ液の流れの評価表とを組み合わせてなるヒトの胸管リンパ液の流れの評価具。
  7. 請求項6に記載のヒトの胸管リンパ液の流れの評価具において、
    尿中のナトリウムイオン濃度、および塩素イオン濃度の何れかを測定できる装置、および尿の浸透圧を測定できる装置の中から選ばれた少なくとも一種の装置と、前記評価表とを組み合わせてなるヒトの胸管リンパ液の流れの評価具。
  8. 請求項6に記載のヒトの胸管リンパ液の流れの評価具において、
    前記評価表は、血液中の抗利尿ホルモンの濃度(p)の変化率の以下の計算式
    変化率(%)=
    (((血液量+通常のリンパ液量)×p)/(血液量+増加時のリンパ液量))×100
    における血液中の抗利尿ホルモンの濃度変化率を尿の浸透圧の変化率に置き換えて、当該尿の浸透圧の変化率から推定されるリンパ液の増加率(変化率)を示した換算表であることを特徴とするヒトの胸管リンパ液の流れの評価具。
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