以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る障害物検知システムを、作業車両の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、本発明に係る障害物検知システムは、トラクタ以外の例えば、乗用管理機、乗用草刈機、乗用田植機、コンバイン、除雪車、ホイールローダ、及び、運搬車、などの自動走行可能な乗用作業車両、並びに、無人耕耘機や無人草刈機などの無人作業車両に適用することができる。
図1〜4に示すように、本実施形態に例示されたトラクタ1は、その後部に備えられたリンク機構2を介して、作業装置の一例であるロータリ耕耘装置3が昇降可能かつローリング可能に連結されている。これにより、このトラクタ1は、ロータリ耕耘装置3による耕耘作業が可能なロータリ耕耘仕様に構成されている。
尚、トラクタ1の後部に連結される作業装置は、ロータリ耕耘装置3以外の例えば、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、散布装置、草刈装置、収穫装置、などであってもよい。
トラクタ1は、作業車両用の自動走行システムを使用することにより、図5に示す作業地の一例である圃場Aなどにおいて自動走行させることができる。図1、図6に示すように、作業車両用の自動走行システムには、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット4、及び、自動走行ユニット4と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末5、などが含まれている。携帯通信端末5には、自動走行に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示デバイス(表示部の一例)50などが備えられている。
尚、携帯通信端末5には、タブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。又、無線通信には、Wi−Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信などを採用することができる。
図1〜3、図6に示すように、トラクタ1には、駆動可能で操舵可能な左右の前輪10、駆動可能な左右の後輪11、搭乗式の運転部12を形成するキャビン13、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)14、エンジン14などを覆うボンネット15、及び、エンジン14からの動力を変速する変速ユニット16、などが備えられている。尚、エンジン14には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。
図6に示すように、トラクタ1には、左右の前輪10を操舵する全油圧式のパワーステアリングユニット17、左右の後輪11を制動するブレーキユニット18、ロータリ耕耘装置3への伝動を断続する電子油圧制御式の作業クラッチユニット19、ロータリ耕耘装置3を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動ユニット20、ロータリ耕耘装置3のロール方向への駆動を可能にする電子油圧制御式のローリングユニット21、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを検出する各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器22、及び、各種の制御部を有する車載制御ユニット23、などが備えられている。尚、パワーステアリングユニット17には、操舵用の電動モータを有する電動式を採用してもよい。
図1、図3に示すように、運転部12には、手動操舵用のステアリングホイール25、搭乗者用の座席26、及び、各種の情報表示や入力操作などを可能にする操作端末27が備えられている。図示は省略するが、運転部12には、アクセルレバーや変速レバーなどの操作レバー類、及び、アクセルペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル類、などが備えられている。操作端末27には、マルチタッチ式の液晶モニタやISOBUS(イソバス)対応のバーチャルターミナルなどを採用することができる。
図示は省略するが、変速ユニット16には、エンジン14からの動力を変速する電子制御式の無段変速装置、及び、無段変速装置による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置、などが含まれている。無段変速装置には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI−HMT(Integrated Hydro−static Mechanical Transmission)が採用されている。前後進切換装置には、前進動力断続用の油圧クラッチと、後進動力断続用の油圧クラッチと、それらに対するオイルの流れを制御する電磁バルブとが含まれている。
尚、無段変速装置には、I−HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置、又は、ベルト式無段変速装置、などを採用してもよい。又、変速ユニット16には、無段変速装置の代わりに、複数の変速用の油圧クラッチとそれらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁バルブとを有する電子油圧制御式の有段変速装置が含まれていてもよい。
図示は省略するが、ブレーキユニット18には、左右の後輪11を個別に制動する左右のブレーキ、運転部12に備えられた左右のブレーキペダルの踏み込み操作に連動して左右のブレーキを作動させるフットブレーキ系、運転部12に備えられたパーキングレバーの操作に連動して左右のブレーキを作動させるパーキングブレーキ系、及び、左右の前輪10の設定角度以上の操舵に連動して旋回内側のブレーキを作動させる旋回ブレーキ系、などが含まれている。
車両状態検出機器22は、トラクタ1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。図7に示すように、車両状態検出機器22には、トラクタ1の車速を検出する車速センサ22A、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出するリバーサセンサ22B、及び、前輪10の操舵角を検出する舵角センサ22C、が含まれている。又、図示は省略するが、車両状態検出機器22には、エンジン14の出力回転数を検出する回転センサ、アクセルレバーの操作位置を検出するアクセルセンサ、及び、変速レバーの操作位置を検出する変速センサ、などが含まれている。
図6〜7に示すように、車載制御ユニット23には、エンジン14に関する制御を行うエンジン制御部23A、トラクタ1の車速や前後進の切り換えなどの変速ユニット16に関する制御を行う変速ユニット制御部23B、ステアリングに関する制御を行うステアリング制御部23C、ロータリ耕耘装置3などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部23D、操作端末27などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部23E、自動走行に関する制御を行う自動走行制御部23F、及び、圃場Aに応じて生成された自動走行用の目標経路P(図5参照)などを記憶する不揮発性の車載記憶部23G、などが含まれている。各制御部23A〜23Fは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部23A〜23Fは、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。
尚、各制御部23A〜23Fの相互通信には、CAN以外の通信規格や次世代通信規格である、例えば、車載EthernetやCAN−FD(CAN with FLexible Data rate)などを採用してもよい。
エンジン制御部23Aは、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルレバーの操作位置に応じた回転数に維持するエンジン回転数維持制御、などを実行する。
変速ユニット制御部23Bは、変速センサからの検出情報と車速センサ22Aからの検出情報などに基づいて、トラクタ1の車速が変速レバーの操作位置に応じた速度に変更されるように無段変速装置の作動を制御する車速制御、及び、リバーサセンサ22Bからの検出情報に基づいて前後進切換装置の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御、などを実行する。車速制御には、変速レバーが零速位置に操作された場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。
作業装置制御部23Dには、運転部12に備えられたPTOスイッチの操作などに基づいて作業クラッチユニット19の作動を制御する作業クラッチ制御、運転部12に備えられた昇降スイッチの操作や高さ設定ダイヤルの設定値などに基づいて昇降駆動ユニット20の作動を制御する昇降制御、及び、運転部12に備えられたロール角設定ダイヤルの設定値などに基づいてローリングユニット21の作動を制御するローリング制御、などを実行する。PTOスイッチ、昇降スイッチ、高さ設定ダイヤル、及び、ロール角設定ダイヤルは、車両状態検出機器22に含まれている。
図6に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の位置や方位などを測定する測位ユニット30が備えられている。測位ユニット30には、衛星測位システムの一例であるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用してトラクタ1の位置と方位とを測定する衛星航法装置31、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタ1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)32、などが含まれている。GNSSを利用した測位方法には、DGNSS(Differential GNSS:相対測位方式)やRTK−GNSS(Real Time Kinematic GNSS:干渉測位方式)などがある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK−GNSSが採用されている。そのため、図1に示すように、圃場周辺の既知位置には、RTK−GNSSによる測位を可能にする基地局6が設置されている。
図1、図6に示すように、トラクタ1と基地局6とのそれぞれには、測位衛星7(図1参照)から送信された電波を受信するGNSSアンテナ33,60、及び、トラクタ1と基地局6との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール34,61、などが備えられている。これにより、測位ユニット30の衛星航法装置31は、トラクタ1のGNSSアンテナ33が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報と、基地局6のGNSSアンテナ60が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の位置及び方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット30は、衛星航法装置31と慣性計測装置32とを有することにより、トラクタ1の位置、方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
このトラクタ1において、測位ユニット30の慣性計測装置32、GNSSアンテナ33、及び、通信モジュール34は、図1に示すアンテナユニット35に含まれている。アンテナユニット35は、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。
図示は省略するが、トラクタ1の位置を特定するときの車体位置は後輪車軸中心位置に設定されている。車体位置は、測位ユニット42からの測位情報、及び、トラクタ1におけるGNSSアンテナ45の取り付け位置と後輪車軸中心位置との位置関係を含む車体情報から求めることができる。
図6に示すように、携帯通信端末5には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット51などが備えられている。端末制御ユニット51には、表示デバイス50などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部51A、自動走行用の目標経路Pを生成する目標経路生成部51B、及び、目標経路生成部51Bが生成した目標経路Pなどを記憶する不揮発性の端末記憶部51C、などが含まれている。端末記憶部51Cには、目標経路Pの生成に使用する各種の情報として、トラクタ1の旋回半径やロータリ耕耘装置3などの作業装置の作業幅又は作業畝数などの車体情報、及び、前述した測位情報から得られる圃場情報、などが記憶されている。圃場情報には、圃場Aの形状や大きさなどを特定する上において、トラクタ1を圃場Aの外周縁に沿って走行させたときにGNSSを利用して取得した圃場Aにおける複数の形状特定地点(形状特定座標)となる4つの角部地点Cp1〜Cp4(図5参照)、及び、それらの角部地点Cp1〜Cp4を繋いで圃場Aの形状や大きさなどを特定する矩形状の形状特定線SL(図5参照)、などが含まれている。
図6に示すように、トラクタ1及び携帯通信端末5には、車載制御ユニット23と端末制御ユニット51との間における測位情報などを含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール28,52が備えられている。トラクタ1の通信モジュール28は、携帯通信端末5との無線通信にWi−Fiが採用される場合には、通信情報をCANとWi−Fiとの双方向に変換する変換器として機能する。端末制御ユニット51は、車載制御ユニット23との無線通信にてトラクタ1の位置や方位などを含むトラクタ1に関する各種の情報を取得することができる。これにより、携帯通信端末5の表示デバイス50にて、目標経路Pに対するトラクタ1の位置や方位などを含む各種の情報を表示させることができる。
目標経路生成部51Bは、車体情報に含まれたトラクタ1の旋回半径や作業装置の作業幅又は作業畝数、及び、圃場情報に含まれた圃場Aの形状や大きさ、などに基づいて目標経路Pを生成する。
例えば、図5に示すように、矩形状の圃場Aにおいて、自動走行の開始位置p1と終了位置p2とが設定され、トラクタ1の作業走行方向が圃場Aの短辺に沿う方向に設定されている場合は、目標経路生成部51Bは、先ず、圃場Aを、前述した4つの角部地点Cp1〜Cp4と矩形状の形状特定線SLとに基づいて、圃場Aの外周縁に隣接するマージン領域A1と、マージン領域A1の内側に位置する作業可能領域A2とに区分けする。
次に、目標経路生成部51Bは、トラクタ1の旋回半径や作業装置の作業幅又は作業畝数などに基づいて、作業可能領域A2を、作業可能領域A2における各長辺側の端部に設定される一対の端部領域A2aと、一対の端部領域A2aの間に設定される中央側領域A2bとに区分けする。その後、目標経路生成部51Bは、中央側領域A2bに、圃場Aの長辺に沿う方向に作業幅又は作業畝数に応じた所定間隔を置いて並列に配置される複数の並列経路P1を生成する。又、目標経路生成部51Bは、各端部領域A2aに、複数の並列経路P1をトラクタ1の走行順に接続する複数の接続経路P2を生成する。
これにより、目標経路生成部51Bは、図5に示す圃場Aに設定された自動走行の開始位置p1から終了位置p2にわたってトラクタ1を自動走行させることが可能な目標経路Pを生成することができる。
図5に示す圃場Aにおいて、マージン領域A1は、トラクタ1が作業可能領域A2の端部を自動走行するときに、作業装置などが圃場Aに隣接する畦や柵などの他物に接触するのを防止するために、圃場Aの外周縁と作業可能領域A2との間に確保された領域である。各端部領域A2aは、トラクタ1が現在走行中の並列経路P1から次の並列経路P1に向けて接続経路P2に従って方向転換移動するときの方向転換領域である。中央側領域A2bは、トラクタ1が各並列経路P1に従って作業状態で自動走行する作業領域である。
図5に示す目標経路Pにおいて、各並列経路P1は、トラクタ1がロータリ耕耘装置3などの作業装置による作業を行いながら自動走行する作業経路である。各接続経路P2は、トラクタ1が作業装置による作業を行わずに自動走行する非作業経路である。各並列経路P1の始端位置p3は、トラクタ1が作業装置による作業を開始する作業開始位置である。各並列経路P1の終端位置p4は、トラクタ1が作業装置による作業を停止する作業停止位置である。各並列経路P1の始端位置p3のうち、トラクタ1の走行順位が一番目に設定された並列経路P1の始端位置p3が自動走行の開始位置p1である。そして、残りの並列経路P1の始端位置p3が、接続経路P2の終端位置との接続位置である。又、トラクタ1の走行順位が最後に設定された並列経路P1の終端位置p4が自動走行の終了位置p2である。そして、残りの並列経路P1の終端位置p4が、接続経路P2の始端位置との接続位置である。
各接続経路P2には、トラクタ1を現在走行中の並列経路P1から次の並列経路P1に向けて方向転換させる方向転換経路が含まれている。方向転換経路には、トラクタ1の旋回半径とロータリ耕耘装置3などの作業装置の作業幅又は作業畝数との関係などに応じて、トラクタ1をU字状に方向転換走行させるU字旋回経路、及び、スイッチバックを利用しトラクタ1をフィッシュテール状に方向転換走行させるスイッチバック旋回経路、などを採用することができる。
尚、図5に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Bは、トラクタ1の機種や作業装置の種類などに応じて異なる車体情報、及び、圃場Aに応じて異なる圃場Aの形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
目標経路Pは、車体情報や圃場情報などに関連付けされた状態で端末記憶部51Cに記憶されており、携帯通信端末5の表示デバイス50にて表示することができる。目標経路Pには、各並列経路P1や各接続経路P2などにおいて設定されたトラクタ1の進行方向(前進方向又は後進方向)、目標車速、及び、前輪操舵角、などの自動走行に関する各種の情報が含まれている。
端末制御ユニット51は、車載制御ユニット23からの送信要求指令に応じて、端末記憶部51Cに記憶されている圃場情報や目標経路Pなどを車載制御ユニット23に送信する。車載制御ユニット23は、受信した圃場情報や目標経路Pなどを車載記憶部23Gに記憶する。目標経路Pの送信に関しては、例えば、端末制御ユニット51が、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、目標経路Pの全てを端末記憶部51Cから車載制御ユニット23に一挙に送信するようにしてもよい。又、端末制御ユニット51が、目標経路Pを所定距離ごとの複数の分割経路情報に分割して、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階からトラクタ1の走行距離が所定距離に達するごとに、トラクタ1の走行順位に応じた所定数の分割経路情報を端末記憶部51Cから車載制御ユニット23に逐次送信するようにしてもよい。
自動走行制御部23Fには、車両状態検出機器22に含まれた各種のセンサやスイッチなどからの検出情報が、変速ユニット制御部23Bやステアリング制御部23Cなどを介して入力されている。これにより、自動走行制御部23Fは、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを監視することができる。
自動走行制御部23Fは、搭乗者や管理者などのユーザにより、トラクタ1の自動走行を可能にするための各種の手動設定操作が行われて、トラクタ1の走行モードが手動走行モードから自動走行モードに切り換えられた状態において、携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の開始が指示された場合に、測位ユニット30にてトラクタ1の位置や方位などを取得しながら目標経路Pに従ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
自動走行制御部23Fは、自動走行制御の実行中に、例えば、ユーザにより携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の終了が指示された場合や、運転部12に搭乗しているユーザにてステアリングホイール25やアクセルペダルなどの手動操作具が操作された場合は、自動走行制御を終了するとともに走行モードを自動走行モードから手動走行モードに切り換える。
自動走行制御部23Fによる自動走行制御には、エンジン14に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部23Aに送信するエンジン用自動制御処理、トラクタ1の車速や前後進の切り換えに関する自動走行用の制御指令を変速ユニット制御部23Bに送信する車速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部23Cに送信するステアリング用自動制御処理、及び、ロータリ耕耘装置3などの作業装置に関する自動走行用の制御指令を作業装置制御部23Dに送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
自動走行制御部23Fは、エンジン用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた設定回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部23Aに送信する。エンジン制御部23Aは、自動走行制御部23Fから送信されたエンジン14に関する各種の制御指令に応じてエンジン回転数を自動で変更するエンジン回転数変更制御、などを実行する。
自動走行制御部23Fは、車速用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた目標車速に基づいて無段変速装置の変速操作を指示する変速操作指令、及び、目標経路Pに含まれたトラクタ1の進行方向などに基づいて前後進切換装置の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、などを変速ユニット制御部23Bに送信する。変速ユニット制御部23Bは、自動走行制御部23Fから送信された無段変速装置や前後進切換装置などに関する各種の制御指令に応じて、無段変速装置の作動を自動で制御する自動車速制御、及び、前後進切換装置の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、などを実行する。自動車速制御には、例えば、目標経路Pに含まれた目標車速が零速である場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる自動減速停止処理などが含まれている。
自動走行制御部23Fは、ステアリング用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪10の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部23Cに送信する。ステアリング制御部23Cは、自動走行制御部23Fから送信された操舵指令に応じて、パワーステアリングユニット17の作動を制御して左右の前輪10を操舵する自動ステアリング制御、及び、左右の前輪10が設定角度以上に操舵された場合に、ブレーキユニット18を作動させて旋回内側のブレーキを作動させる自動ブレーキ旋回制御、などを実行する。
自動走行制御部23Fは、作業用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた各作業開始位置(各並列経路P1の始端位置p3)へのトラクタ1の到達に基づいてロータリ耕耘装置3などの作業装置の作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標経路Pに含まれた各作業停止位置(各並列経路P1の終端位置p4)へのトラクタ1の到達に基づいて作業装置の非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業装置制御部23Dに送信する。作業装置制御部23Dは、自動走行制御部23Fから送信された作業装置に関する各種の制御指令に応じて、昇降駆動ユニット20などの作動を制御して、作業装置を作業高さまで下降させて作用させる自動作業開始制御、及び、作業装置を非作業高さまで上昇させて待機させる自動作業停止制御、などを実行する。
つまり、前述した自動走行ユニット4には、パワーステアリングユニット17、ブレーキユニット18、作業クラッチユニット19、昇降駆動ユニット20、ローリングユニット21、車両状態検出機器22、車載制御ユニット23、測位ユニット30、及び、通信モジュール28,34、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタ1を目標経路Pに従って精度良く自動走行させることができるとともに、ロータリ耕耘装置3などの作業装置による作業を適正に行うことができる。
図6〜7に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の周辺状況を取得する周辺状況取得システム8が備えられている。図7に示すように、周辺状況取得システム8には、トラクタ1の周囲を撮像して画像情報を取得する撮像ユニット80と、トラクタ1の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出ユニット85とが含まれている。障害物検出ユニット85が検出する障害物には、圃場Aにて作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、圃場Aに既存の電柱や樹木などが含まれている。
図1〜3、図7に示すように、撮像ユニット80には、キャビン13から前方の第1撮像範囲Ri1が撮像範囲に設定された前カメラ81、キャビン13から後方の第2撮像範囲Ri2が撮像範囲に設定された後カメラ82、及び、前後の各カメラ81,82からの画像情報を処理する画像処理装置83(図7参照)、が含まれている。
図2に示すように、前カメラ81及び後カメラ82は、トラクタ1の左右中心線上に配置されている。前カメラ81は、キャビン13の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前カメラ81は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が第1撮像範囲Ri1に設定されている。後カメラ82は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後カメラ82は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が第2撮像範囲Ri2に設定されている。
図7に示すように、画像処理装置83は、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。画像処理装置83は、車載制御ユニット23などにCANを介して相互通信可能に接続されている。
画像処理装置83は、前後の各カメラ81,82から順次送信される画像情報に対して、各カメラ81,82の撮像範囲に対応したトラクタ1の前側画像と後側画像とを生成する画像生成処理などを行う。そして、生成した各画像を、車載制御ユニット23の表示制御部23Eに送信する画像送信処理を行う。表示制御部23Eは、画像処理装置83からの各画像を、CANを介して操作端末27に送信するとともに、通信モジュール28,52を介して携帯通信端末5の表示制御部5Aに送信する。
これにより、画像処理装置83が生成したトラクタ1の前側画像と後側画像とを、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50などにおいて表示することができる。そして、この表示により、ユーザは、トラクタ1の前方側と後方側の状況を容易に把握することができる。
尚、撮像ユニット80には、前述した前カメラ81と後カメラ82と画像処理装置83とに加えて、キャビン13から右方の第3撮像範囲が撮像範囲に設定された右カメラと、キャビン13から左方の第4撮像範囲が撮像範囲に設定された左カメラとが含まれていてもよい。この場合、画像処理装置83が、前後左右の各カメラから順次送信される画像情報に対して、各カメラの撮像範囲に対応した前後左右の各画像を生成する画像生成処理、及び、全カメラからの画像情報を合成してトラクタ1の全周囲画像(例えばサラウンドビュー)を生成する全周囲画像生成処理、などを行うようにしてもよい。そして、画像処理装置83にて生成された各画像及び全周囲画像が、トラクタ1の操作端末27や携帯通信端末5の表示制御部5Aに送信されて、操作端末27や携帯通信端末5の表示デバイス50にて表示されるようにしてもよい。
図1、図3〜4、図7に示すように、障害物検出ユニット85には、トラクタ1の前方側が障害物の検出範囲に設定された前障害物センサ86と、トラクタ1の後方側が障害物の検出範囲に設定された後障害物センサ87と、トラクタ1の左右両横側が障害物の検出範囲に設定された横障害物センサ88とが含まれている。前障害物センサ86及び後障害物センサ87には、障害物の検出にパルス状の近赤外レーザ光を使用するライダーセンサが採用されている。横障害物センサ88には、障害物の検出に超音波を使用するソナーが採用されている。
図1〜4、図7に示すように、前障害物センサ86及び後障害物センサ87は、近赤外レーザ光を使用して測定範囲に存在する各測距点(測定対象物)までの距離を測定する測定部86A,87Aと、測定部86A,87Aからの測定情報に基づいて距離画像の生成などを行う制御部86B,87Bとを有している。横障害物センサ88は、超音波の送受信を行う右超音波センサ88Aと左超音波センサ88B、及び、各超音波センサ88A,88Bでの超音波の送受信に基づいて測定範囲に存在する測定対象物までの距離を測定する単一の制御部88Cを有している。
各障害物センサ86〜88の制御部86B,87B,88Cは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部86B,87B,88Cは、車載制御ユニット23などにCANを介して相互通信可能に接続されている。
図3〜4に示すように、前障害物センサ86は、キャビン13から前方の第1測定範囲Rm1が測定範囲に設定されている。後障害物センサ87は、キャビン13から後方の第2測定範囲Rm2が測定範囲に設定されている。横障害物センサ88は、キャビン13から右側方の第3測定範囲Rm3とキャビン13から左側方の第4測定範囲Rm4とが測定範囲に設定されている。
図1、図3〜4に示すように、前障害物センサ86及び後障害物センサ87は、前カメラ81及び後カメラ82と同様にトラクタ1の左右中心線上に配置されている。前障害物センサ86は、キャビン13の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前障害物センサ86は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が測定部86Aによる第1測定範囲Rm1に設定されている。後障害物センサ87は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後障害物センサ87は、トラクタ1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が測定部87Aによる第2測定範囲Rm2に設定されている。
図2に示すように、右超音波センサ88Aは、右側の前輪10と右側の後輪11との間に配置された右側の乗降ステップ24に車体右外向き姿勢で取り付けられている。これにより、右側の超音波センサ88Aは、車体右外側の所定範囲が第3測定範囲Rm3に設定されている。図1〜3に示すように、左超音波センサ88Bは、左側の前輪10と左側の後輪11との間に配置された左側の乗降ステップ24に車体左外向き姿勢で取り付けられている。これにより、左側の超音波センサ88Bは、車体左外側の所定範囲が第4測定範囲Rm4に設定されている。
図3〜4、図7に示すように、前障害物センサ86及び後障害物センサ87の各測定部86A,87Aは、照射した近赤外レーザ光が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各測定部86A,87Aから第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の各測距点までの距離を測定する。各測定部86A,87Aは、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の全体にわたって、近赤外レーザ光を高速で縦横に走査して、走査角(座標)ごとの測距点までの距離を順次測定することにより、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2において3次元の測定を行う。各測定部86A,87Aは、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の全体にわたって近赤外レーザ光を高速で縦横に走査したときに得られる各測距点からの反射光の強度(以下、反射強度と称する)を順次測定する。各測定部86A,87Aは、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2の各測距点までの距離や各反射強度などをリアルタイムで繰り返し測定する。
前障害物センサ86及び後障害物センサ87の各制御部86B,87Bは、各測定部86A,87Aが測定した各測距点までの距離や各測距点に対する走査角(座標)などの測定情報から、距離画像を生成するとともに障害物と推定される測距点群を抽出し、抽出した測距点群に関する測定情報を障害物に関する測定情報として車載制御ユニット23に送信する。
前障害物センサ86及び後障害物センサ87の各制御部86B,87Bは、各測定部86A,87Aが測定した各測距点の距離値が無効条件に適合するか否かを判定し、無効条件に適合する距離値を無効値として車載制御ユニット23に送信する。
具体的には、各制御部86B,87Bは、前障害物センサ86又は後障害物センサ87からの至近距離に存在するというセンサ表面での汚れの特徴を利用して、その特徴を有する測距点の距離値を無効値とする。これにより、センサ表面の汚れに関する測距点の距離値が、車載制御ユニット23において障害物に関する測定情報として使用されることを防止している。
又、各制御部86B,87Bは、前障害物センサ86又は後障害物センサ87の近距離に存在しながら反射強度が非常に弱いという埃や霧などの浮遊物の特徴を利用して、その特徴を有する測距点の距離値を無効値とする。これにより、浮遊物に関する測距点の距離値が、車載制御ユニット23において障害物に関する測定情報として使用されることを防止している。
図3〜4、図7に示すように、横障害物センサ88の制御部88Cは、左右の超音波センサ88A,88Bによる超音波の送受信に基づいて、第3測定範囲Rm3又は第4測定範囲Rm4における測定対象物の存否を判定する。制御部88Cは、発信した超音波が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各超音波センサ88A,88Bから測定対象物までの距離を測定し、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを、障害物に関する測定情報として車載制御ユニット23に送信する。
図4、図8〜10に示すように、前障害物センサ86及び後障害物センサ87の各制御部86B,87Bは、各測定部86A,87Aの測定範囲Rm1,Rm2に対して車体情報などに基づくカット処理とマスキング処理とを施すことにより、前障害物センサ86及び後障害物センサ87による障害物の検出範囲を、トラクタ1の前進側に設定された第1検出範囲Rd1とトラクタ1の後進側に設定された第2検出範囲Rd2とに制限している。図4に示すように、横障害物センサ88においては、第3測定範囲Rm3及び第4測定範囲Rm4が第3検出範囲Rd3及び第4検出範囲Rd4に設定されている。
前障害物センサ86及び後障害物センサ87の各制御部86B,87Bは、カット処理においては、車載制御ユニット23との通信によって作業装置を含む車体の最大左右幅(本実施形態ではロータリ耕耘装置3の左右幅)を取得し、この車体の最大左右幅に所定の安全帯域を加えることで障害物の検出対象幅Wdを設定している。そして、第1測定範囲Rm1及び第2測定範囲Rm2において、検出対象幅Wdから外れる左右の範囲をカット処理による第1非検出範囲Rnd1に設定して各検出範囲Rd1,Rd2から除外する。
各制御部86B,87Bは、マスキング処理においては、第1測定範囲Rm1に対してトラクタ1の前端側が入り込む範囲、及び、第2測定範囲Rm2に対して作業装置の後端側が入り込む範囲に所定の安全帯域を加えた範囲をマスキング処理による第2非検出範囲Rnd2に設定して各検出範囲Rd1,Rd2から除外する。
そして、このように障害物の検出範囲を第1検出範囲Rd1と第2検出範囲Rd2とに制限することにより、前障害物センサ86及び後障害物センサ87が、検出対象幅Wdから外れていてトラクタ1と衝突する虞のない障害物を検出することによる検出負荷の増大や、第1測定範囲Rm1又は第2測定範囲Rm2に入り込んでいるトラクタ1の前端側や作業装置の後端側を障害物として誤検出する虞を回避している。
尚、図8に示す第2非検出範囲Rnd2は、左右の前輪10やボンネット15が存在する車体の前部側に適した非検出範囲の一例である。図9に示す第2非検出範囲Rnd2は、車体の後部側においてロータリ耕耘装置3を作業高さまで下降させた作業状態に適した非検出範囲の一例である。図10に示す第2非検出範囲Rnd2は、車体の後部側においてロータリ耕耘装置3を退避高さまで上昇させた非作業状態に適した非検出範囲の一例である。車体後部側の第2非検出範囲Rnd2は、ロータリ耕耘装置3の昇降に連動して適正に切り換わる。
第1検出範囲Rd1、第2検出範囲Rd2、第1非検出範囲Rnd1、及び、第2非検出範囲Rnd2に関する情報は、前述した距離画像に含まれており、前述した距離画像とともに車載制御ユニット23に送信されている。
図4に示すように、前障害物センサ86及び後障害物センサ87の各検出範囲Rd1,Rd2は、衝突予測時間が設定時間(例えば3秒)になる衝突判定処理に基づいて、停止制御範囲Rscと減速制御範囲Rdcと報知制御範囲Rncとに区画されている。停止制御範囲Rscは、前障害物センサ86又は後障害物センサ87から衝突判定処理の判定基準位置までの範囲に設定されている。減速制御範囲Rdcは、判定基準位置から減速開始位置までの範囲に設定されている。報知制御範囲Rncは、減速開始位置から前障害物センサ86又は後障害物センサ87の測定限界位置までの範囲に設定されている。各判定基準位置は、ロータリ耕耘装置3を含む車体の前端又は後端から車体前後方向に一定の離隔距離L(例えば2000mm)を置いた位置に設定されている。横障害物センサ88は、第3検出範囲Rd3及び第4検出範囲Rd4が停止制御範囲に設定されている。
尚、各障害物センサ86〜88の検出範囲Rd1〜Rd4、並びに、前障害物センサ86の第1検出範囲Rd1及び後障害物センサ87の第2検出範囲Rd2における各制御範囲Rsc,Rdc,Rncの設定は、作業車両の種類や機種あるいは作業内容などに応じて種々の変更が可能である。又、前障害物センサ86及び後障害物センサ87の測定範囲Rm1,Rm2に対してカット処理を施さないようにしてもよい。
携帯通信端末5の表示デバイス50に表示される表示画面には、目標経路生成用の経路生成画面や図11〜17に示す自動走行用の作業画面70などが含まれている。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、表示デバイス50に対して作業画面表示用の操作が行われた場合に、表示デバイス50の表示画面を作業画面70に切り換える。
図11〜17に示すように、作業画面70には、トラクタ1の自動走行の開始又は一時停止を指示する走行用指示ボタン71、自動走行中のトラクタ1の非常停止を指示する非常停止ボタン72、撮像ユニット80からのトラクタ1の前側画像と後側画像とを表示する画像表示部73、各種の情報を表示する情報表示部74、及び、情報表示部74での障害物検出ユニット85からの検出情報の表示を指示する障害物情報表示ボタン75、などが表示されている。
携帯通信端末5の表示制御部51Aは、車載制御ユニット23との通信などによってトラクタ1の停止状態を検知している場合は、走行用指示ボタン71を、トラクタ1の走行開始を指示するスタートボタンに切り換える。又、トラクタ1の自動走行状態を検知している場合は、走行用指示ボタン71を、トラクタ1の一時停止を指示する一時停止ボタンに切り換える。
表示制御部51Aは、障害物情報表示ボタン75の操作に応じて、情報表示部74の表示状態を、作業の進捗状況などを表示する作業情報表示状態から、障害物検出ユニット85の各障害物センサ86〜88にて検出された障害物の位置などを表示する障害物情報表示状態に切り換える。これにより、情報表示部74は、各障害物センサ86〜88にて検出された障害物の位置などを表示する障害物情報表示部として機能する。図11〜17には、情報表示部74が障害物情報表示部として機能する情報表示部74の障害物情報表示状態(以下、障害物情報表示部74と称する)が例示されている。
図11〜17に示すように、障害物情報表示部74には、前障害物センサ86による障害物の検出状態を表示する第1表示領域D1、後障害物センサ87による障害物の検出状態を表示する第2表示領域D2、及び、横障害物センサ88による障害物の検出状態を表示する第3表示領域D3と第4表示領域D4が表示されている。
このトラクタ1においては、自動走行制御部23Fなどを有する車載制御ユニット23と、携帯通信端末5の表示デバイス50と、各障害物センサ86〜88とが、トラクタ1の周囲に存在する障害物を検出し、かつ、検出した障害物の位置を表示するとともに、障害物の検出位置に応じてトラクタ1の走行を制御する障害物検知システムとして機能する。
自動走行制御部23Fは、測位ユニット30が取得したトラクタ1の位置や目標経路Pに含まれたトラクタ1の進行方向に基づいて現在のトラクタ1の進行方向を判定する進行方向判定処理を行う。自動走行制御部23Fは、進行方向判定処理での判定結果、及び、車載制御ユニット23に送信された各障害物センサ86〜88の検出情報、などに基づいて、携帯通信端末5の表示デバイス50での表示を制御して障害物の有無や位置などを知らせる障害物用表示制御、及び、トラクタ1の走行を制御して障害物との衝突を回避する衝突回避制御、などを実行する。
自動走行制御部23Fは、障害物用表示制御においては、各障害物センサ86〜88の検出情報に応じた各障害物情報表示処理の実行を携帯通信端末5の表示制御部51Aに指示することで、携帯通信端末5の表示デバイス50での表示を制御する。
以下、図4に示す各障害物センサ86〜88の検出範囲Rd1〜Rd4及び図18〜19に示すフローチャートに基づいて、障害物用表示制御における自動走行制御部23Fの制御作動について説明する。又、図11〜17に示す表示デバイス50の作業画面70に基づいて、障害物用表示制御での自動走行制御部23Fの制御作動に応じて携帯通信端末5の表示制御部51Aが実行する各種の障害物情報表示処理について説明する。
自動走行制御部23Fは、前障害物センサ86の検出情報に基づいて、第1検出範囲Rd1の減速制御範囲Rdcと停止制御範囲Rscとを含む前進速度制御範囲にて障害物が検出されているか否かを判定する第1判定処理を行う(ステップ#1)。そして、第1判定処理において障害物が検出されている場合は、障害物の検出位置が前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcか否かを判定する第2判定処理を行う(ステップ#2)。
自動走行制御部23Fは、第1判定処理において障害物が検出されていない場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第1障害物情報表示処理の実行を指示する第1表示指示処理を行う(ステップ#3)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第1障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第1表示領域D1を、前進速度制御範囲において障害物が検出されていないことを知らせる第1報知色(例えば緑色)で表示する(図11、図14〜17参照)。
自動走行制御部23Fは、第2判定処理において障害物の検出位置が前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcである場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第2障害物情報表示処理の実行を指示する第2表示指示処理を行う(ステップ#4)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第2障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第1表示領域D1を、前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcにおいて障害物が検出されていることを知らせる第2報知色(例えば黄色)で表示するとともに、第1表示領域D1における障害物の検出位置を×印で表示する(図12参照)。
自動走行制御部23Fは、第2判定処理において障害物の検出位置が前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcでない場合は、障害物の検出位置が前進速度制御範囲の停止制御範囲Rscであることから、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第3障害物情報表示処理の実行を指示する第3表示指示処理を行う(ステップ#5)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第3障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第1表示領域D1を、前進速度制御範囲の停止制御範囲Rscにおいて障害物が検出されていることを知らせる第3報知色(例えば赤色)で表示するとともに、第1表示領域D1における障害物の検出位置を×印で表示する(図13参照)。
自動走行制御部23Fは、後障害物センサ87の検出情報に基づいて、第2検出範囲Rd2の減速制御範囲Rdcと停止制御範囲Rscとを含む後進速度制御範囲にて障害物が検出されているか否かを判定する第3判定処理を行う(ステップ#6)。そして、第3判定処理において障害物が検出されている場合は、障害物の検出位置が後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcか否かを判定する第4判定処理を行う(ステップ#7)。
自動走行制御部23Fは、第3判定処理において障害物が検出されていない場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第4障害物情報表示処理の実行を指示する第4表示指示処理を行う(ステップ#8)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第4障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第2表示領域D2を、後進速度制御範囲において障害物が検出されていないことを知らせる第1報知色で表示する(図11〜17参照)。
自動走行制御部23Fは、第4判定処理において障害物の検出位置が後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcである場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第5障害物情報表示処理の実行を指示する第5表示指示処理を行う(ステップ#9)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第5障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第2表示領域D2を、後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcにおいて障害物が検出されていることを知らせる第2報知色で表示するとともに、第2表示領域D2における障害物の検出位置を×印で表示する。
自動走行制御部23Fは、第4判定処理において障害物の検出位置が後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcでない場合は、障害物の検出位置が後進速度制御範囲の停止制御範囲Rscであることから、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第6障害物情報表示処理の実行を指示する第6表示指示処理を行う(ステップ#10)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第6障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第2表示領域D2を、後進速度制御範囲の停止制御範囲Rscにおいて障害物が検出されていることを知らせる第3報知色で表示するとともに、第2表示領域D2における障害物の検出位置を×印で表示する。
自動走行制御部23Fは、横障害物センサ88の検出情報に基づいて、第3検出範囲Rd3にて障害物が検出されているか否かを判定する第5判定処理を行う(ステップ#11)。
自動走行制御部23Fは、第5判定処理において障害物が検出されていない場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第7障害物情報表示処理の実行を指示する第7表示指示処理を行う(ステップ#12)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第7障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第3表示領域D3を、第3検出範囲Rd3において障害物が検出されていないことを知らせる第1報知色で表示する(図11〜13、図15〜17参照)。
自動走行制御部23Fは、第5判定処理において障害物が検出されている場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第8障害物情報表示処理の実行を指示する第8表示指示処理を行う(ステップ#13)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第8障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第3表示領域D3を、第3検出範囲Rd3において障害物が検出されていることを知らせる第3報知色で表示する(図14参照)。
自動走行制御部23Fは、横障害物センサ88の検出情報に基づいて、第4検出範囲Rd4にて障害物が検出されているか否かを判定する第6判定処理を行う(ステップ#14)。
自動走行制御部23Fは、第6判定処理において障害物が検出されていない場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第9障害物情報表示処理の実行を指示する第9表示指示処理を行う(ステップ#15)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第9障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第4表示領域D4を、第4検出範囲Rd4において障害物が検出されていないことを知らせる第1報知色で表示する(図11〜17参照)。
自動走行制御部23Fは、第6判定処理において障害物が検出されている場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第10障害物情報表示処理の実行を指示する第10表示指示処理を行う(ステップ#16)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第10障害物情報表示処理においては、障害物情報表示部74の第4表示領域D4を、第4検出範囲Rd4において障害物が検出されていることを知らせる第3報知色で表示する。
つまり、第1検出範囲Rd1の前進速度制御範囲、第2検出範囲Rd2の後進速度制御範囲、第3検出範囲Rd3、及び、第4検出範囲Rd4のいずれにおいても障害物が検出されていない場合は、携帯通信端末5の表示デバイス50における障害物情報表示部74の表示状態が未検出表示状態に制御される。又、第1検出範囲Rd1の前進速度制御範囲、第2検出範囲Rd2の後進速度制御範囲、第3検出範囲Rd3、及び、第4検出範囲Rd4のいずれかにおいて障害物が検出された場合は、障害物情報表示部74の表示状態が、検出された障害物の位置に応じた検出表示状態に制御される。これにより、ユーザは、障害物情報表示部74を目視することにより、検出された障害物の位置を容易に把握することができるとともに、各障害物センサ86〜88が正常に機能していることを確認することができる。
自動走行制御部23Fは、衝突回避制御においては、各障害物センサ86〜88の検出情報などに応じた各衝突回避用の走行制御の実行を変速ユニット制御部23Bに指示することで、トラクタ1の走行を制御する。
以下、図4に示す各障害物センサ86〜88の検出範囲Rd1〜Rd4と図20〜22に示すフローチャートに基づいて、衝突回避制御における自動走行制御部23Fの制御作動について説明する。又、衝突回避制御での自動走行制御部23Fの制御作動に応じて変速ユニット制御部23Bが実行する各衝突回避用の走行制御について説明する。
自動走行制御部23Fは、前障害物センサ86の検出情報に基づいて前述した第1判定処理を行う(ステップ#21)。そして、ステップ#21の第1判定処理において、前進速度制御範囲にて障害物が検出されている場合は、前述した進行方向判定処理での判定結果に基づいて、障害物を検出している前障害物センサ86の第1検出範囲Rd1がトラクタ1の進行方向に対応しているか否かを判定する第7判定処理を行う(ステップ#22)。
尚、自動走行制御部23Fは、第7判定処理においては、トラクタ1の進行方向が前進方向である場合に、前障害物センサ86の第1検出範囲Rd1がトラクタ1の進行方向に対応していると判定する。又、トラクタ1の進行方向が後進方向である場合に、前障害物センサ86の第1検出範囲Rd1がトラクタ1の進行方向に対応していないと判定する。
自動走行制御部23Fは、第7判定処理において、前障害物センサ86の第1検出範囲Rd1がトラクタ1の進行方向に対応している場合は第1衝突回避処理を行う(ステップ#23)。又、第1検出範囲Rd1がトラクタ1の進行方向に対応していない場合は、前障害物センサ86の検出情報を無視することで、変速ユニット制御部23Bにて前障害物センサ86の検出情報に応じた衝突回避用の制御処理が行われることを回避する。
自動走行制御部23Fは、ステップ#21の第1判定処理において障害物が検出されていない場合は、後障害物センサ87の検出情報に基づいて前述した第3判定処理を行う(ステップ#24)。そして、ステップ#24の第3判定処理において、後進速度制御範囲にて障害物が検出されている場合は、前述した進行方向判定処理での判定結果に基づいて、障害物を検出している後障害物センサ87の第2検出範囲Rd2がトラクタ1の進行方向に対応しているか否かを判定する第8判定処理を行う(ステップ#25)。
尚、自動走行制御部23Fは、第8判定処理においては、トラクタ1の進行方向が後進方向である場合に、後障害物センサ87の第2検出範囲Rd2がトラクタ1の進行方向に対応していると判定する。又、トラクタ1の進行方向が前進方向である場合に、後障害物センサ87の第2検出範囲Rd2がトラクタ1の進行方向に対応していないと判定する。
自動走行制御部23Fは、第8判定処理において、後障害物センサ87の第2検出範囲Rd2がトラクタ1の進行方向に対応している場合は第2衝突回避処理を行う(ステップ#26)。又、第2検出範囲Rd2がトラクタ1の進行方向に対応していない場合は、後障害物センサ87の検出情報を無視することで、変速ユニット制御部23Bにて後障害物センサ87の検出情報に応じた衝突回避用の制御処理が行われることを回避する。
自動走行制御部23Fは、第3判定処理において障害物が検出されていない場合は、横障害物センサ88の検出情報に基づいて、第3検出範囲Rd3又は第4検出範囲Rd4にて障害物が検出されているか否かを判定する第9判定処理を行う(ステップ#27)。
自動走行制御部23Fは、第9判定処理において障害物が検出されている場合は、変速ユニット制御部23Bに衝突回避用の走行停止制御の実行を指示する走行停止指示処理を行う(ステップ#28)。変速ユニット制御部23Bは、衝突回避用の走行停止制御においては、無段変速装置の減速操作などを行うことで、第3検出範囲Rd3又は第4検出範囲Rd4に位置する障害物にトラクタ1が接触しないようにトラクタ1の走行を停止させる。
自動走行制御部23Fは、第9判定処理において障害物が検出されていない場合はステップ#21の第1判定処理に戻る。
自動走行制御部23Fは、第1衝突回避処理(図21参照)においては前述した第2判定処理を行う(ステップ#31)。そして、ステップ#31の第2判定処理において障害物の検出位置が前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcである場合は、変速ユニット制御部23Bに衝突回避用の前進減速制御の実行を指示する前進減速指示処理を行う(ステップ#32)。変速ユニット制御部23Bは、衝突回避用の前進減速制御においては、無段変速装置の減速操作を行うことで、前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcに位置する障害物との距離が近くなるほどトラクタ1の前進速度を低下させる。
自動走行制御部23Fは、前進減速指示処理を行った後に前述した第1判定処理を行う(ステップ#33)。そして、ステップ#33の第1判定処理において、前進速度制御範囲にて障害物が検出されている場合はステップ#31の第2判定処理に戻る。
自動走行制御部23Fは、ステップ#33の第1判定処理において、前進速度制御範囲にて障害物が検出されていない場合は、変速ユニット制御部23Bに前進速度復帰制御の実行を指示する前進速度復帰指示処理を行う(ステップ#34)。変速ユニット制御部23Bは、前進速度復帰制御においては、無段変速装置の増速操作を行うことで、トラクタ1の前進速度を、目標経路Pに含まれたトラクタ1の現在位置に対応する目標車速まで上昇させる。
自動走行制御部23Fは、ステップ#31の第2判定処理において障害物の検出位置が前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcでない場合は、障害物の検出位置が前進速度制御範囲の停止制御範囲Rscであることから、変速ユニット制御部23Bに衝突回避用の前進停止制御の実行を指示する前進停止指示処理を行う(ステップ#35)。変速ユニット制御部23Bは、衝突回避用の前進停止制御においては、無段変速装置の減速操作などを行うことで、前進速度制御範囲の停止制御範囲Rscに位置する障害物にトラクタ1が接触するまでの間においてトラクタ1の前進走行を停止させる。
自動走行制御部23Fは、第2衝突回避処理(図22参照)においては前述した第4判定処理を行う(ステップ#41)。そして、ステップ#41の第4判定処理において障害物の検出位置が後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcである場合は、変速ユニット制御部23Bに衝突回避用の後進減速制御の実行を指示する後進減速指示処理を行う(ステップ#42)。変速ユニット制御部23Bは、衝突回避用の後進減速制御においては、無段変速装置の減速操作を行うことで、後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcに位置する障害物との距離が近くなるほどトラクタ1の後進速度を低下させる。
自動走行制御部23Fは、後進減速指示処理を行った後に前述した第3判定処理を行う(ステップ#43)。そして、ステップ#43の第3判定処理において、後進速度制御範囲にて障害物が検出されている場合はステップ#41の第4判定処理に戻る。
自動走行制御部23Fは、ステップ#43の第3判定処理において、後進速度制御範囲にて障害物が検出されていない場合は、変速ユニット制御部23Bに後進速度復帰制御の実行を指示する後進速度復帰指示処理を行う(ステップ#44)。変速ユニット制御部23Bは、後進速度復帰制御においては、無段変速装置の増速操作を行うことで、トラクタ1の後進速度を、目標経路Pに含まれたトラクタ1の現在位置に対応する目標速度まで上昇させる。
自動走行制御部23Fは、ステップ#41の第4判定処理において障害物の検出位置が後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcでない場合は、障害物の検出位置が後進速度制御範囲の停止制御範囲Rscであることから、変速ユニット制御部23Bに衝突回避用の後進停止制御の実行を指示する後進停止指示処理を行う(ステップ#45)。変速ユニット制御部23Bは、衝突回避用の後進停止制御においては、無段変速装置の減速操作などを行うことで、後進速度制御範囲の停止制御範囲Rscに位置する障害物にトラクタ1が接触するまでの間においてトラクタ1の後進走行を停止させる。
つまり、自動走行制御部23Fは、検出範囲Rd1,Rd2がトラクタ1の進行方向に対応する前障害物センサ86又は後障害物センサ87により、それらの前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲において障害物が検出された場合、あるいは、横障害物センサ88により、第3検出範囲Rd3又は第4検出範囲Rd4において障害物が検出された場合は、検出された障害物の位置を携帯通信端末5の表示デバイス50にて表示させる障害物用表示制御を行う。又、検出された障害物の位置に応じてトラクタ1の走行を制御する衝突回避制御を行う。
一方、自動走行制御部23Fは、検出範囲Rd1,Rd2がトラクタ1の進行方向に対応しない前障害物センサ86又は後障害物センサ87にて障害物が検出された場合は、前障害物センサ86又は後障害物センサ87の検出情報に基づく衝突回避制御を行わずに障害物用表示制御を行う。
このように、トラクタ1の進行方向又は左右方向が検出範囲Rd1〜Rd4に設定されたいずれかの障害物センサ86〜88にて障害物が検出された場合は、自動走行制御部23Fが、障害物を検出した障害物センサ86〜88の検出情報に基づいて、検出情報に応じた衝突回避用の走行制御の実行を変速ユニット制御部23Bに指示してトラクタ1の走行を制御することから、トラクタ1の進行方向又は左右方向に存在する障害物にトラクタ1が衝突する虞を回避することができる。
又、トラクタ1の進行方向に対応しない反対方向が検出範囲Rd1,Rd2に設定された前障害物センサ86又は後障害物センサ87にて障害物が検出された場合は、自動走行制御部23Fが、衝突回避用の走行制御の実行を変速ユニット制御部23Bに指示しないことから、衝突する虞のない障害物に対して衝突回避用の走行制御が行われることに起因した作業効率の低下を回避することができる。
そして、いずれかの障害物センサ86〜88にて障害物が検出された場合には、自動走行制御部23Fが、障害物を検出した障害物センサ86〜88の検出情報に基づいて、検出情報に応じた障害物情報表示処理の実行を携帯通信端末5の表示制御部51Aに指示して、携帯通信端末5の表示デバイス50にて障害物の検出位置を表示させることから、検出された障害物の位置をユーザに把握させることができるとともに、各障害物センサ86〜88が正常に機能していることをユーザに確認させることができる。
尚、携帯通信端末5の表示制御部51Aは、上記の衝突回避制御に基づいてトラクタ1の走行が停止される場合には、携帯通信端末5の表示デバイス50において、衝突回避制御によるトラクタ1の走行停止が行われることを知らせるメッセージを表示させる。
図11〜17に示すように、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示される作業画面70には、上記の衝突回避制御に基づいてトラクタ1の走行が停止された場合に、衝突回避制御に基づくトラクタ1の走行停止を知らせる通知部76が表示されている。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、衝突回避制御に基づくトラクタ1の走行停止を検知した場合に、通知部76の表示状態を、通常の非通知表示状態(例えば通知部76を緑色で表示する状態:図11〜12、図15〜17参照)から衝突回避制御に基づくトラクタ1の走行停止を知らせる通知表示状態(例えば通知部76を赤色で表示する状態:図13〜14参照)に切り換える。
これにより、ユーザは、トラクタ1の走行が停止された場合には、通知部76を目視することでトラクタ1の走行停止が衝突回避制御に基づくものか否かを容易に把握することができる。
後障害物センサ87は、トラクタ1の前進走行時に当該トラクタ1に追走する追走作業車両(図示せず)が存在する場合には、当該追走作業車両が後進速度制御範囲に入り込んだときに、追走作業車両を障害物として検出するように設定されている。
これにより、追走作業車両が存在する随伴作業時には、例えば、追走作業車両を、後障害物センサ87の後進速度制御範囲内において、先行するトラクタ1から一定の車間距離を開けた状態で走行させるようにすれば、このときの後障害物センサ87の検出情報に基づいて、自動走行制御部23Fが、検出情報に応じた表示切り換え処理の実行を携帯通信端末5の表示制御部51Aに指示して、携帯通信端末5の表示デバイス50にて追走作業車両の検出位置を表示させる。
その結果、トラクタ1に対する追走作業車両の位置をユーザに把握させることができるとともに、後障害物センサ87が正常に機能していることをユーザに確認させることができる。
そして、このときの後障害物センサ87の第2検出範囲Rd2は、トラクタ1の進行方向に対応していないことから、このときの後障害物センサ87の検出情報に基づいて、自動走行制御部23Fが、衝突回避用の走行制御の実行を変速ユニット制御部23Bに指示することはない。その結果、追走作業車両に対して衝突回避用の走行制御が行われることに起因した作業効率の低下などを回避することができる。
尚、図示は省略するが、追走作業車両が例えばユーザが搭乗して運転する作業車両である場合は、追走作業車両の搭乗部には、運転中のユーザによる携帯通信端末5の視認を容易にする適正位置での携帯通信端末5の設置を可能にする設置部が備えられている。
自動走行制御部23Fは、トラクタ1が目標経路P上で走行停止している場合においても、前述した進行方向判定処理を行うことで、目標経路Pにおけるトラクタ1の走行停止位置に設定されているトラクタ1の進行方向を取得する。そして、自動走行制御部23Fは、取得したトラクタ1の進行方向と各障害物センサ86〜88の検出情報とに基づいて、トラクタ1の自動走行を許可するための障害物に関する条件が成立しているか否かを判定する条件成立判定処理を行う。
条件成立判定処理について説明すると、自動走行制御部23Fは、トラクタ1の進行方向に対応する第1検出範囲Rd1の前進速度制御範囲又は第2検出範囲Rd2の後進速度制御範囲、第3検出範囲Rd3、及び、第4検出範囲Rd4のいずれかにおいて障害物が検出されている場合は、トラクタ1の自動走行を許可する条件が成立していないと判定してトラクタ1の自動走行を禁止する。
自動走行制御部23Fは、前進速度制御範囲、後進速度制御範囲、第3検出範囲Rd3、及び、第4検出範囲Rd4のいずれにおいても障害物が検出されていない場合、あるいは、トラクタ1の進行方向に対応しない前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲においてのみ障害物が検出されている場合は、トラクタ1の自動走行を許可する条件が成立していると判定してトラクタ1の自動走行を許可する。
これにより、トラクタ1の自動走行開始時に、このときのトラクタ1の進行方向とは反対方向に位置することでトラクタ1が衝突する虞のない障害物に基づいて自動走行の開始が禁止されることに起因した作業効率の低下を回避しながら、トラクタ1の進行方向や左右に存在する障害物にトラクタ1が衝突する虞を回避することができる。
自動走行制御部23Fは、トラクタ1が目標経路P上で走行停止している場合においても、前述した障害物用表示制御を行うことで、携帯通信端末5の表示デバイス50において障害物の有無や位置などを表示させることを可能にしている。
これにより、トラクタ1が目標経路P上で走行停止している場合に、携帯通信端末5の表示デバイス50を操作して、表示デバイス50において障害物の有無や位置などを表示させるようにすれば、各障害物センサ86〜88が正常に機能しているか否を容易に確認することができる。
自動走行制御部23Fは、前障害物センサ86又は後障害物センサ87のセンサ表面に対する汚れなどの付着を判定するとともに、汚れなどの付着判定状況に応じてトラクタ1の走行を制御する汚れ対応走行制御を実行する。
自動走行制御部23Fは、汚れ対応走行制御においては、汚れなどの付着判定状況に応じた各走行制御の実行を変速ユニット制御部23Bに指示することでトラクタ1の走行を制御する。
以下、図23に示すフローチャートに基づいて、汚れ対応走行制御における自動走行制御部23Fの制御作動について説明するとともに、汚れ対応走行制御での自動走行制御部23Fの制御作動に応じて変速ユニット制御部23Bが実行する各走行制御について説明する。
尚、ここでは、前障害物センサ86のセンサ表面に対する汚れなどの付着を判定する場合を例示して説明する。
自動走行制御部23Fは、前障害物センサ86の第1測定範囲Rm1に対して、前障害物センサ86の測定情報に含まれている汚れや浮遊物などの測定阻害物に起因した無効値の占める割合が所定値(例えば50%)以上か否かを判定する第10判定処理を行う(ステップ#51)。
自動走行制御部23Fは、第10判定処理において無効値の占める割合が所定値以上である場合は、変速ユニット制御部23Bにクリープ減速制御の実行を指示するクリープ減速指示処理を行う(ステップ#52)。変速ユニット制御部23Bは、クリープ減速制御においてはトラクタ1の車速をクリープ走行用の超低速まで低下させる。
自動走行制御部23Fは、第10判定処理において無効値の占める割合が所定値以上でない場合は、変速ユニット制御部23Bに車速維持制御の実行を指示する車速維持指示処理を行う(ステップ#53)。変速ユニット制御部23Bは、車速維持制御においては、トラクタ1の車速を現在の設定速度(目標経路Pに含まれたトラクタ1の現在位置に対応する設定速度)に維持する。
自動走行制御部23Fは、クリープ減速指示処理を行った後は、クリープ走行用の超低速による走行状態が所定時間継続されたか否かを判定する第11判定処理を行うとともに、所定時間が経過するまでの間において前述した第10判定処理を行う(ステップ#54〜55)。
自動走行制御部23Fは、ステップ#55の第10判定処理において無効値の占める割合が所定値未満に低下している場合は、前障害物センサ86のセンサ表面に汚れなどが付着しているのではなく、前障害物センサ86の周辺にて埃や霧などの浮遊物が舞っていただけであると判定して、変速ユニット制御部23Bに車速復帰制御の実行を指示する車速復帰指示処理を行い(ステップ#56)、その後、ステップ#51の第10判定処理に戻る。変速ユニット制御部23Bは、車速復帰制御においては、トラクタ1の車速を、目標経路Pに含まれたトラクタ1の現在位置に対応する設定速度まで復帰させる。
自動走行制御部23Fは、第11判定処理においてクリープ走行用の超低速による走行状態が所定時間継続された場合は、前障害物センサ86のセンサ表面に汚れなどが付着していると判定して、変速ユニット制御部23Bに汚れ対策用の走行停止制御の実行を指示する緊急停止指示処理を行う(ステップ#57)。変速ユニット制御部23Bは、汚れ対策用の走行停止制御においては直ちにトラクタ1を走行停止させる。
このように、トラクタ1の自動走行中に前障害物センサ86の第1測定範囲Rm1に対して無効値の占める割合が所定値以上になった場合には、トラクタ1の車速がクリープ走行用の超低速まで低下されて、超低速による走行状態に維持されることから、トラクタ1を低速走行させる場合に比較して、無効値の原因が、前障害物センサ86又は後障害物センサ87のセンサ表面に対する汚れなどの付着物か、前障害物センサ86又は後障害物センサ87の周辺にて舞い上がった埃や塵埃などの浮遊物かを判定するための時間を長くすることができる。
そして、このように判定時間を長くすることにより、無効値の原因が付着物か浮遊物かを判定し易くなり、これにより、無効値の原因が浮遊物である場合に、この浮遊物に基づいてトラクタ1が走行停止することによる作業効率の低下を抑制することができる。又、無効値の原因が付着物か浮遊物かの判定中に、トラクタ1が障害物に衝突する不都合の発生を抑制することができる。
図11〜17に示すように、携帯通信端末5における表示デバイス50の障害物情報表示ボタン75には、各障害物センサ86〜88の検出状況を表示する検出状況表示部75Aが含まれている。自動走行制御部23Fは、各障害物センサ86〜88の検出情報などに基づいて検出状況表示部75Aでの表示を制御することで、各障害物センサ86〜88の検出状況を知らせる検出状況表示制御を実行する。
自動走行制御部23Fは、検出状況表示制御においては、各障害物センサ86〜88の検出状況に応じた各検出状況表示処理の実行を携帯通信端末5の表示制御部51Aに指示することで、携帯通信端末5の表示デバイス50における検出状況表示部75Aの表示を制御する。
以下、図4に示す各障害物センサ86〜88の検出範囲Rd1〜Rd4と図24に示すフローチャートに基づいて、検出状況表示制御における自動走行制御部23Fの制御作動について説明する。又、図11〜17に示す表示デバイス50の作業画面70に基づいて、検出状況表示制御での自動走行制御部23Fの制御作動に応じて携帯通信端末5の表示制御部51Aが実行する各種の検出状況表示処理について説明する。
自動走行制御部23Fは、前述した汚れ対応走行制御での汚れ判定結果に基づいて、前障害物センサ86又は後障害物センサ87のセンサ表面において汚れなどの付着による異常が生じているか否かを判定する第12判定処理を行う(ステップ#61)。そして、第12判定処理において異常が生じていない場合は、各障害物センサ86〜88の検出情報に基づいて、前進速度制御範囲、後進速度制御範囲、第3検出範囲Rd3、及び、第4検出範囲Rd4のいずれかにおいて障害物が検出されているか否かを判定する第13判定処理を行う(ステップ#62)。
自動走行制御部23Fは、第13判定処理において障害物が検出されていない場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第1検出状況表示処理の実行を指示する第11表示指示処理を行う(ステップ#63)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第1検出状況表示処理においては、検出状況表示部75Aを、前進速度制御範囲、後進速度制御範囲、第3検出範囲Rd3、及び、第4検出範囲Rd4のいずれにおいても障害物が検出されていない状況であることを知らせる第1報知色(例えば緑色)で表示する(図11参照)。
自動走行制御部23Fは、第13判定処理において障害物が検出されている場合は、障害物の検出位置が前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcか否かを判定する第14判定処理を行う(ステップ#64)。
自動走行制御部23Fは、第14判定処理において障害物の検出位置が前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcである場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第2検出状況表示処理の実行を指示する第12表示指示処理を行う(ステップ#65)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第2検出状況表示処理においては、検出状況表示部75Aを、前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcにおいて障害物が検出された状況であることを知らせる第2報知色(例えば黄色)で表示する(図12参照)。
自動走行制御部23Fは、第14判定処理において障害物の検出位置が前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcでない場合は、障害物の検出位置が前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲の停止制御範囲Rsc、あるいは、第3検出範囲Rd3又は第4検出範囲Rd4であることから、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第3検出状況表示処理の実行を指示する第13表示指示処理を行う(ステップ#66)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第3検出状況表示処理においては、検出状況表示部75Aを、前進速度制御範囲又は後進速度制御範囲の停止制御範囲Rsc、あるいは、第3検出範囲Rd3又は第4検出範囲Rd4において障害物が検出された状況であることを知らせる第3報知色(例えば赤色)で表示する(図13〜14参照)。
自動走行制御部23Fは、第12判定処理においてセンサ表面での汚れなどの付着による異常が生じている場合は、携帯通信端末5の表示制御部51Aに第4検出状況表示処理の実行を指示する第14表示指示処理を行う(ステップ#67)。携帯通信端末5の表示制御部51Aは、第4検出状況表示処理においては、検出状況表示部75Aを、前障害物センサ86又は後障害物センサ87のセンサ表面において汚れなどの付着による異常が生じている状況であることを知らせる異常報知状態(例えば赤色の表示色に感嘆符を加えた状態)で表示する(図15参照)。
携帯通信端末5の表示制御部51Aは、表示デバイス50の操作によって各障害物センサ86〜88による検出範囲Rd1〜Rd4のいずれかが障害物の検出禁止範囲に設定された場合は、図16に示すように、表示デバイス50の検出状況表示部75Aを、各検出範囲Rd1〜Rd4のいずれかが障害物の検出禁止範囲に設定された状況であることを示す検出禁止状態(例えば黄色の表示色に感嘆符を加えた状態)で表示するとともに、表示デバイス50の障害物情報表示部74において検出禁止範囲に設定された検出範囲Rd1〜Rd4に対応する表示領域D1〜D4(図16では第1表示領域D1)を、障害物の検出禁止範囲に設定されたことを知らせる検出禁止色(例えば灰色)で表示する。
携帯通信端末5の表示制御部51Aは、トラクタ1におけるCAN通信不良や車載制御ユニット23との通信不良などに起因して各障害物センサ86〜88の検出情報を受信することができない場合は、図17に示すように、表示デバイス50における障害物情報表示ボタン75の検出状況表示部75Aを、各障害物センサ86〜88の検出情報を適正に受信することができない状況であることを知らせる第4報知色(例えば灰色)で表示する。
上記のように、携帯通信端末5の表示デバイス50においては、各障害物センサ86〜88の検出状況に応じて障害物情報表示ボタン75の検出状況表示部75Aでの表示が制御されることから、ユーザは、検出状況表示部75Aを目視することにより、各障害物センサ86〜88の検出状況を容易に把握することができる。
図11〜17に示すように、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示された画像表示部73は、撮像ユニット80からのトラクタ1の前側画像を表示する前画像表示領域73Aと、後側画像を表示する後画像表示領域73Bとに上下に区画されている。画像表示部73は、上下左右の各縁部73a〜73cが障害物の検出方向を示す検出方向表示部として機能するように表示設定されている。
携帯通信端末5の表示制御部51Aは、車載制御ユニット23との通信(自動走行制御部23Fからの指示)により、前障害物センサ86による第1検出範囲Rd1の減速制御範囲Rdc又は停止制御範囲Rscでの障害物の検出を検知した場合は、画像表示部73の上縁部73aを、障害物の検出を知らせる検出報知色(例えば赤色)で表示する(図12参照)。
携帯通信端末5の表示制御部51Aは、後障害物センサ87による第2検出範囲Rd2の減速制御範囲Rdc又は停止制御範囲Rscでの障害物の検出を検知した場合は、画像表示部73の下縁部73bを、障害物の検出を知らせる検出報知色で表示する。
携帯通信端末5の表示制御部51Aは、横障害物センサ88による第3検出範囲Rd3での障害物の検出を検知した場合は、画像表示部73の右縁部73cを、障害物の検出を知らせる検出報知色で表示する(図14参照)。
携帯通信端末5の表示制御部51Aは、横障害物センサ88による第4検出範囲Rd4での障害物の検出を検知した場合は、画像表示部73の左縁部73dを、障害物の検出を知らせる検出報知色で表示する。
これにより、ユーザは、携帯通信端末5における表示デバイス50の画像表示部73に表示されたトラクタ1の前側画像又は後側画像を目視している状態であっても、各障害物センサ86〜88のいずれかにて障害物が検出された場合には、トラクタ1に対する障害物の検出方向を容易に把握することができる。
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)作業車両1の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両1は、左右の後輪11に代えて左右のクローラが備えられたセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、左右の前輪10及び左右の後輪11に代えて左右のクローラが備えられたフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14の代わりに電動モータが備えられた電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14と電動モータとが備えられたハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、手動走行のみが可能に構成された上で、前障害物センサ86又は後障害物センサ87による障害物の検出位置に応じた制御ユニット23による作業車両1の走行制御が可能に構成されていてもよい。
(2)障害物検知システムは、前障害物センサ86と後障害物センサ87とに加えて、横障害物センサ88として、作業車両1の右横側が障害物の検出範囲Rd1に設定された右ライダーセンサと、作業車両1の左横側が障害物の検出範囲Rd1に設定された左ライダーセンサとを有する構成であってもよい。又、障害物検知システムは、横障害物センサ88を備えずに前障害物センサ86と後障害物センサ87とが備えられた構成であってもよい。
(3)運転部12の操作端末27に備えられた表示デバイスが、携帯通信端末(無線通信機器)5の表示デバイス50と同様に、前障害物センサ86及び後障害物センサ87にて検出された障害物の位置を表示する表示部として機能するように構成されていてもよい。
(4)制御ユニット23(自動走行制御部23F)は、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出するリバーサセンサ22B、又は、前後進切換装置の伝動状態を検出するセンサからの検出情報に基づいて作業車両1の進行方向を判定するように構成されていてもよい。
(5)制御ユニット23(自動走行制御部23F)は、障害物の検出位置に応じた作業車両1の走行制御として、前輪10を操舵して障害物を迂回する走行制御を行うように構成されていてもよい。
(6)制御ユニット23(自動走行制御部23F)は、障害物用表示制御の第1判定処理及び第3判定処理においては、第1検出範囲Rd1又は第2検出範囲Rd2の減速制御範囲Rdcと停止制御範囲Rscとを含む前進速度制御範囲にて障害物が検出されているか否かを判定するのに代えて、第1検出範囲Rd1又は第2検出範囲Rd2にて障害物が検出されているか否かを判定し、又、障害物用表示制御の第2判定処理及び第4判定処理においては、障害物の検出位置が前進速度制御範囲の減速制御範囲Rdcか否かを判定するのに代えて、障害物の検出位置が第1検出範囲Rd1又は第2検出範囲Rd2のうちの報知制御範囲Rncと減速制御範囲Rdcと停止制御範囲Rscとのいずれであるかを判定するように構成されていてもよい。
そして、この構成においては、障害物の検出範囲Rd1,Rd2が作業車両1の進行方向に対応する前後いずれかの障害物センサ86,87により、当該障害物センサ86,87の報知制御範囲Rncにて障害物が検出された場合は、作業車両1又は無線通信機器5に備えられた報知ブザーを作動させて、作業車両1の進行方向に障害物が存在することを知らせるようにし、かつ、障害物の検出範囲Rd1,Rd2が作業車両1の進行方向に対応しない前後いずれかの障害物センサ86,87により、当該障害物センサ86,87の報知制御範囲Rncにて障害物が検出された場合は、前述した報知ブザーを作動させないことで、作業車両1の進行方向とは反対方向に存在することで作業車両1が衝突する虞のない障害物の検出に応じた不必要な報知ブザーの作動によってユーザに不快感を与える虞を回避することが考えられる。
(7)撮像ユニット80に、圃場Aにて作業する作業者などの人物や追従作業車両などの他の作業車両、及び、圃場Aに既存の電柱や樹木などを障害物として認識するための学習処理を施して、前カメラ81を前障害物センサ86に含めるとともに、後カメラ82を後障害物センサ87に含めるようにしてもよい。この場合、測距精度の高い前後のライダーセンサからの測定情報と、物体の判別精度が高い撮像ユニット80からの情報とに基づいて、障害物の検出をより高い精度で行うことが可能になる。