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JP2021046378A - 脂質膜構造体形成用組成物およびその製造方法、脂質膜構造体含有組成物およびその製造方法、脂質膜構造体含有組成物を配合してなる化粧料、皮膚外用剤 - Google Patents

脂質膜構造体形成用組成物およびその製造方法、脂質膜構造体含有組成物およびその製造方法、脂質膜構造体含有組成物を配合してなる化粧料、皮膚外用剤 Download PDF

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JP2021046378A JP2019170649A JP2019170649A JP2021046378A JP 2021046378 A JP2021046378 A JP 2021046378A JP 2019170649 A JP2019170649 A JP 2019170649A JP 2019170649 A JP2019170649 A JP 2019170649A JP 2021046378 A JP2021046378 A JP 2021046378A
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Abstract

【課題】微細な脂質膜構造体を簡便に形成できる手段を提供する。【解決手段】(A)酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質と、(B)下記式1で表される化合物と、を含有し、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える、脂質膜構造体形成用組成物:上記式1中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数2〜6のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数3〜6のシクロアルキル基であり、Xは、−O−、−C(=O)O−または−O−C(=O)−であり、nは、0または1である。【選択図】なし

Description

本発明は、脂質膜構造体形成用組成物およびその製造方法、当該脂質膜構造体形成用組成物を用いてなる脂質膜構造体含有組成物およびその製造方法、ならびに当該脂質膜構造体含有組成物を配合してなる化粧品および皮膚外用剤に関する。
リポソームやバイセルなどの脂質膜構造体は、保湿、肌質改善などのスキンケア効果を有し、また有効成分を内包できることから、化粧品用途や皮膚外用剤用途において有用である。上記用途における脂質膜構造体の原料としては、天然由来であり、安全性が高いことから、リン脂質が主に用いられる。中でも、酸化によって劣化しにくいことから、リン脂質の不飽和炭素結合に水素原子が付加した水素添加リン脂質が好ましく用いられる。
これまでに、水素添加リン脂質を用いて脂質膜構造体を形成する技術が検討されている。例えば、特許文献1には、水素添加リン脂質に、セラミド類、分岐型アルコール等を混合した組成物を調製し、大過剰の水に分散させることで、脂質膜の柔軟性および保存安定性の高いリポソームが得られることが記載されている。特許文献2には、水素添加リン脂質、グリコール化合物、脂溶性化合物を含有する油溶性組成物と、水溶性組成物とを混合して多層リポソームを形成した後、変換プロセスで処理することで、微細な単層リポソームが得られることが記載されている。
特開2011−32230号公報 特表2012−504620号公報
化粧品用途や皮膚外用剤用途では、皮膚への浸透性や内包した有効成分の効果発現、保存安定性などの観点から、微細な(例えば、平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体が求められる。しかし、水素添加リン脂質は、水素添加されていないリン脂質に比べて相転移温度が高いため、微細な脂質膜構造体の形成が困難であった。実際に、特許文献1〜2に記載されるような水素添加リン脂質を用いて脂質膜構造体を形成する技術においては、微細な(例えば、平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体を形成させるために、マイクロフルイダイザー等の微細化手段を用いる必要があった。
したがって、本発明は、微細な脂質膜構造体を簡便に形成できる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質と、特定の構造を有するポリオール化合物と、を特定の割合で含有する脂質膜構造体形成用組成物によって、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、微細な脂質膜構造体を簡便に形成することができる。
実施例の脂質膜構造体形成用組成物を用いて形成された脂質膜構造体を低温電子顕微鏡法(Cryo−TEM)で観察した写真である。
本発明に係る脂質膜構造体形成用組成物は、(A)酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質と、(B)下記式1で表される化合物と、を含有し、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える:
Figure 2021046378
上記式1中、
Rは、置換もしくは非置換の炭素数2〜6のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数3〜6のシクロアルキル基であり、
Xは、−O−、−C(=O)O−または−O−C(=O)−であり、
nは、0または1である。
本発明に係る脂質膜構造体形成用組成物によれば、マイクロフルイダイザー等の微細化手段を要することなく、微細な(例えば、平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体を形成することができる。
上述したように、リポソームやバイセルなどの脂質膜構造体は、化粧品用途や皮膚外用剤用途において有用である。上記用途では、皮膚への浸透性や内包した有効成分の効果発現、保存安定性などの観点から、微細な(例えば、平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体が求められる。上記用途における脂質膜構造体の原料としては、天然由来であり、安全性が高いことから、リン脂質が主に用いられる。中でも、酸化によって劣化しにくいことから、水素添加リン脂質が好ましく用いられる。しかし、水素添加を行っていないリン脂質に比べ、水素添加リン脂質は相転移温度が高く、物性が両者で大きく異なる。このため、特許文献1および2に記載された技術では、相転移温度の高い水素添加リン脂質を用いて微細な(例えば、平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体を簡便に形成することが困難であった。
そこで、本発明者らは、水素添加リン脂質を用いて微細な脂質膜構造体を簡便に形成する手段について、鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、(A)酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質と、(B)上記式1で表されるポリオール化合物とを、当該(A)成分100質量部に対して当該(B)成分が100質量部を超えるように配合して脂質膜構造体形成用組成物を調製し、これを水相中に分散させることで、微細化手段を要することなく、微細な(例えば、平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体を形成できることを見出した。
本発明の好ましい実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
なお、本明細書において、「脂質膜構造体」は、脂質分子同士が親水基を外側に向け、疎水基を向き合わせて配列したラメラ(脂質二重膜)構造を有する粒子を意味する。その具体的な形態としては、後述の<脂質膜構造体含有組成物>の項に記載したものが挙げられる。また、本明細書では、脂質膜構造体形成用組成物を用いて調製された脂質膜構造体含有組成物について、動的光散乱測定装置、より具体的には、ゼータサイザーナノZSP(Malvern Instruments社製)を用いて平均粒子径を測定できれば、脂質膜構造体が形成されているものとする。
本明細書において、範囲を示す「x〜y」は、xおよびyを含み、「x以上y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行うものとする。
<脂質膜構造体形成用組成物>
以下、本発明に係る脂質膜構造体形成用組成物(以下、「脂質膜構造体形成剤」または「形成剤」とも称する)の成分および製造方法について説明する。
[(A)成分]
本発明の脂質膜構造体形成剤は、(A)成分として、酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質を含む。(A)成分は、酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質1種または2種以上であってもよいし、1種以上の酸価5mgKOH/g未満の水素添加リン脂質および1種以上の酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質を組み合わせて酸価5mgKOH/g以上としたものであってもよい。
水素添加リン脂質は、従来公知の方法により、リン脂質の不飽和炭素結合に水素原子を付加することで、得ることができる。リン脂質の由来については、特に制限されないが、天然由来であり、化粧品や皮膚外用剤に好適に使用できることから、レシチンが特に好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、(A)成分は、水素添加レシチンである。なお、レシチンは、大豆由来、卵黄由来、菜種由来、ヒマワリ由来、トウモロコシ由来等であってもよく、大豆由来、菜種由来、ヒマワリ由来、トウモコシ由来等の植物由来であることが好ましく、入手の容易性や品質安定性から大豆由来であることがより好ましい。
(A)成分の酸価は、5mgKOH/g以上である。酸価が5mgKOH/g未満の水素添加リン脂質を用いた場合は、(B)成分と組み合わせても、微細な脂質膜構造体を形成することができない(後述の比較例2−1(a)〜2−1(c))。より微細な脂質膜構造体を得る観点から、(A)成分の酸価は、好ましくは12mgKOH/g以上であり、より好ましくは15mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは17mgKOH/g以上であり、さらにより好ましくは20mgKOH/g以上であり、特に好ましくは22mgKOH/g以上である。また、特に制限されないが、(A)成分の酸価は、例えば、70mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、50mgKOH/g以下または40mgKOH/g以下である。リン脂質の種類を適宜選択することで、所望の酸価を有する水素添加リン脂質を得ることができる。なお、(A)成分の酸価は、「医薬部外品原料規格2006 一般試験法の部 27.酸価測定法」に準拠して測定される値を採用するものとする。
(A)成分としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよい。市販品の例としては、日光ケミカルズ株式会社製のNIKKOL(登録商標)レシノールS−10、同S−10 PLUS等、日本エマルジョン株式会社製のEMALEX(登録商標)SLP、辻製油株式会社製のSLP−ホワイトH等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても2種以上併用してもよい。
本発明の脂質膜構造体形成剤における(A)成分の含有量は、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
[(B)成分]
本発明の脂質膜構造体形成剤は、(B)成分として、下記式1で表される化合物を含む。(B)成分は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
Figure 2021046378
上記式1中、Rは、置換もしくは非置換の炭素数2〜6のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数3〜6のシクロアルキル基である。
炭素数2〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。炭素数2〜6のアルキル基の例としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−アミル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、4−メチルペンチル基、4−メチルペンタン−2−イル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブタン−2−イル基等が挙げられる。炭素数2〜6のアルキル基は、好ましくは直鎖状である。すなわち、炭素数2〜6のアルキル基は、好ましくは、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基およびn−へキシル基からなる群より選択される基である。
炭素数3〜6のシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基であり、好ましくはシクロヘキシル基である。
炭素数2〜6のアルキル基および炭素数3〜6のシクロアルキル基に存在しうる置換基は、本発明の効果を奏する限り、特に制限されない。置換基の例としては、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。ただし、炭素数2〜6のアルキル基は、アルキル基で置換されることはない。
上記式1中、Xは、−O−、−C(=O)O−または−O−C(=O)−であり、好ましくは−O−である。また、上記式1中、nは、0または1である。上記式1中、Xが−O−であり、かつnが1である場合において、Rとしてのアルキル基の炭素数は、4以上であることが好ましい。
(B)成分は、例えば、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、シクロヘキシルグリセリンおよびヘキシルグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
特に、(B)成分として、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、ヘキシルグリセリンを用いた場合には、きわめて微細な脂質膜構造体を形成することができる。この際、脂質膜構造体はバイセルを形成していると考えられる。バイセルは、円盤状(ディスク)の単層ラメラ構造体となっていることから、同程度の粒径のリポソームに比べて角層への浸透性に優れる。ゆえに、脂溶性成分の浸透性が高い脂質膜構造体を得る観点からは、(B)成分として、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオールおよびヘキシルグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
(B)成分は、合成品、市販品のいずれであってもよい。
本発明の脂質膜構造体形成剤における(B)成分の含有量は、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは40〜80質量%であり、さらにより好ましくは50〜70質量%である。
本発明の脂質膜構造体形成剤において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える。(A)成分100質量部に対して(B)成分の含有量が100質量部以下である場合は、微細な脂質膜構造体を形成することができない(後述の比較例1−1、1−2)。さらに、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは150質量部以上である。150質量部以上の場合には、(A)成分が脂質膜構造体形成剤中により溶解または分散しやすくなる。当該脂質膜構造体形成剤を用いることで、水相への分散性に優れた脂質膜構造体を形成することができる。さらに、より微細な脂質膜構造体を得る観点から、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは200質量部以上であり、より好ましくは250質量部以上であり、さらに好ましくは300質量部以上であり、さらにより好ましくは350質量部以上であり、特に好ましくは400質量部以上である。一方、(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量の上限は、特に制限されないが、2000質量部を超えても、(A)成分の脂質膜構造体形成剤への溶解性または分散性に影響が無く、単に不経済である。このため、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、2000質量部以下であることが好ましい。したがって本発明の好ましい実施形態によれば、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは150〜2000質量部である。
[(C)成分]
本発明の脂質膜構造体形成剤は、(C)成分として水をさらに含有していてもよい。酸価が高い(A)成分を使用する場合、(B)成分および(C)成分を併用することで、(A)成分の溶解性または分散性により優れる脂質膜構造体形成剤を得ることができる。当該脂質膜構造体形成剤を用いることで、水相への分散性に優れた脂質膜構造体を形成することができる。また、(C)成分は、下記(D)成分(塩基性化合物)および(E)成分(酸性化合物)の脂質膜構造体形成剤への配合を助ける役割を有する。具体的には、(D)成分および/または(E)成分を(C)成分に予め溶解させてから、(A)成分および(B)成分に混合することにより、(D)成分および/または(E)成分を脂質膜構造体形成剤に容易に配合することができる。
(C)成分としては、不純物の少ない水が好ましく、例えば、精製水のような、イオン交換、蒸留、逆浸透又は限外ろ過などを単独あるいは組み合わせたシステムにより、常水より精製したものが好ましい。
本発明の脂質膜構造体形成剤における(C)成分の含有量は、好ましくは0.5〜70質量%であり、より好ましくは5〜60質量%であり、さらにより好ましくは15〜50質量%であり、特に好ましくは20〜40質量%である。
また、本発明の脂質膜構造体形成剤において、(B)成分および(C)成分の質量比は、好ましくは100:1〜1:3であり、より好ましくは9:1〜1:2であり、さらにより好ましくは6:1〜1:1である。
[(D)成分]
本発明の脂質膜構造体形成剤は、上記(A)成分および(B)成分以外に、(D)成分として塩基性化合物をさらに含有していてもよい。酸価が高い(A)成分を使用する場合において、(D)成分を含有させることで、(A)成分の溶解性または分散性により優れる脂質膜構造体形成剤を得ることができる。当該脂質膜構造体形成剤を用いることで、脂質膜構造体の水相への分散性を高めることができる。(D)成分は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
(D)成分の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基;アルギニン、リシン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール(AMPD)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トロメタミン)等のアミン化合物等が挙げられる。中でも、アルギニンが好ましい。
(D)成分は、合成品、市販品のいずれを使用してもよい。
本発明の脂質膜構造体形成剤における(D)成分の含有量は、好ましくは0.01〜2質量%であり、より好ましくは0.02〜1質量%である。
本発明の脂質膜構造体形成剤において、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部であり、より好ましくは0.1〜5質量部である。
[(E)成分]
本発明の脂質膜構造体形成剤は、上記(A)および(B)成分以外に、(E)成分として酸性化合物を含有していてもよい。(E)成分を含有することで、(A)成分の溶解性または分散性により優れる脂質膜構造体形成剤を得ることができる。当該脂質膜構造体形成剤を用いることで、脂質膜構造体の水相への分散性を高めることができる。(E)成分は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
(E)成分の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の無機酸;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、グルコン酸、安息香酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチドロン酸、フィチン酸等の有機酸等が挙げられる。中でも、(A)成分の溶解性または分散性により優れる脂質膜構造体形成剤を得ることができる観点から、有機酸が好ましい。
中でも、(A)成分の溶解性または分散性により優れる脂質膜構造体形成剤を得ることができる観点、当該脂質膜構造体形成剤を用いて水相への分散性に優れた脂質膜構造体を形成する観点、および、当該脂質膜構造体形成剤および当該脂質膜構造体形成剤を用いた脂質膜構造体含有組成物の保存安定性を高める観点から、(E)成分は、キレート作用を有する有機酸であることが好ましい。(A)成分は、金属イオンと結合しやすい性質を有する場合がある。この場合、(E)成分としてキレート作用を有する有機酸を添加することで、脂質膜構造体形成剤中の金属イオンが捕捉され、当該脂質膜構造体形成剤の保存安定性が高まるとともに、(A)成分がより溶解または分散しやすくなり、(A)成分の溶解性または分散性により優れる脂質膜構造体形成剤を得ることができる。当該形成剤を用いることで、水相への分散性と保存安定性に優れた脂質膜構造体を形成できると推測される。キレート作用を有する有機酸としては、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチドロン酸が好ましく、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)がより好ましい。
(E)成分は、合成品、市販品のいずれを使用してもよい。
本発明の脂質膜構造体形成剤において、(E)成分の含有量(遊離酸換算)は、好ましくは0.02〜4質量%であり、より好ましくは0.04〜2質量%である。
本発明の脂質膜構造体形成剤において、(E)成分の含有量(遊離酸換算)は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.2〜10質量部である。
(D)成分および(E)成分双方の脂質膜構造体形成剤への溶解性を高め、該形成剤の水相分散時のpHを所定の範囲に収める観点から、本発明の脂質膜構造体形成剤は、上記(D)成分および(E)成分の両方を含むことが好ましい。かような脂質膜構造体形成剤は、(D)成分および(E)成分を別々に添加することによって得てもよいし、(D)成分および(E)成分の塩を添加することによって得てもよい。
(D)成分および(E)成分の塩としては、特に制限されないが、例えば、リシン塩酸塩;クエン酸三ナトリウム等のクエン酸ナトリウム塩;リン酸水素二ナトリウム等のリン酸ナトリウム塩;安息香酸ナトリウム;エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム(EDTA−3Na)等のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩等が挙げられる。
脂質膜構造体形成剤が(D)成分および(E)成分を含有する場合、(D)成分および(E)成分の質量比は、好ましくは1:0.1〜1:4であり、より好ましくは1:0.2〜1:2である。
本発明の脂質膜構造体形成剤において、(D)成分および(E)成分の合計含有量は、好ましくは0.05〜4質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
[(F)成分]
本発明の脂質膜構造体形成剤は、上記(A)成分および(B)成分以外に、(F)成分として脂溶性化合物をさらに含有していてもよい。酸価が高い(A)成分を使用する場合、(B)成分および(F)成分を併用することで、(A)成分の溶解性または分散性により優れる脂質膜構造体形成剤を得ることができる。当該脂質膜構造体形成剤を用いることで、水相への分散性に優れ、保存安定性の高い脂質膜構造体を形成することができる。さらに、当該(F)成分を上記(D)成分および/または(E)成分と併用することで、より微細な脂質膜構造体を形成することができる(後述の表5)。(F)成分は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
(F)成分の例としては、フィトステロールズ、コレステロール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、オレイン酸フィトステリル、フィトステリルグルコシド等のステロール類;γ−オリザノール、グリチルリチン酸、ウルソル酸、ツボクサエキス(アシアチン酸、マデカシン酸およびアシアチコシドの混合物)等のトリテルペン類;レチノール、水添レチノール、コレカルシフェロール、トコフェロール、アスコルビン酸エステル等の脂溶性ビタミン類;アスタキサンチン、β−カロチン等のカロテノイド類;ユビキノン等の補酵素;リモネン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素類;セラミドEOS、セラミドNG(セラミド2)、セラミドNP(セラミド3)、セラミドAP(セラミド6II)、セラミドEOP(セラミド1)、ジヒドロキシリグノセロイルフィトスフィンゴシン、セレブロシド、スフィンゴ糖脂質、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド等のセラミド類;テトラヒドロジフェルロイルメタン、プテロスチルベン等のポリフェノール類等が挙げられる。中でも、(F)成分と(A)成分および(B)成分とを組み合わせることで、(A)成分および(F)成分の溶解性が相互に高まり、(A)成分の溶解性により優れ、(F)成分を容易に配合でき、保存安定性の良い脂質膜構造体形成剤を得ることができる観点や、当該脂質膜構造体形成剤を用いた脂質膜構造体含有組成物の保存安定性を高める観点から、(F)成分は、フィトステロールズ、コレステロール、γ−オリザノール、グリチルリチン酸、ウルソル酸、ツボクサエキス(アシアチン酸、マデカシン酸およびアシアチコシドの混合物)、水添レチノール、トコフェロール、アスタキサンチン、ユビキノン、セラミドNG、セラミドNP、セラミドAP、セラミドEOP、テトラヒドロジフェルロイルメタンおよびプテロスチルベンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(F)成分は、合成品、市販品のいずれを使用してもよい。市販品としては、例えば、タマ生化学株式会社製のフィトステロール−SKP、バイエル社製のTECA、DSM株式会社製のdl−α−トコフェロール、日光ケミカルズ株式会社製のNIKKOL(登録商標)レチノール H10、NIKKOL(登録商標)VC−IP、スクワラン、オリザ油化株式会社製のアスタキサンチン−20C、γ−オリザノール、株式会社カネカ製のカネカ・コエンザイムQ10、クローダジャパン株式会社製のCERAMIDE2、株式会社サビンサジャパンコーポレーション製のウルソル酸90%、サビホワイト、プテロホワイト等が挙げられる。
本発明の脂質膜構造体形成剤における(F)成分の含有量は、好ましくは0.001〜12質量%であり、より好ましくは0.01〜10質量%であり、さらにより好ましくは0.1〜8質量%であり、特に好ましくは1〜6質量%である。
また、本発明の脂質膜構造体形成剤において、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.005〜60質量部であり、より好ましくは0.05〜50質量部であり、さらにより好ましくは、0.5〜40質量部であり、特に好ましくは5〜30質量部である。
[他の成分]
本発明の脂質膜構造体形成剤は、上記(A)〜(F)成分以外の成分(他の成分)をさらに含有していてもよい。他の成分としては、特に制限されず、油剤、界面活性剤、保湿剤、美白剤、色材、アルコール類、アミノ酸、糖、ビタミン、粘度調整剤、高分子、着色剤、粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、美容成分、電解質、繊維、植物抽出エキス等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、脂質膜構造体形成剤に保湿剤、美白剤などの美容成分を配合し、当該形成剤を水相に分散させることで、美容成分を内包した脂質膜構造体を形成することができる。なお、美容成分を内包した脂質膜構造体を形成するにあたり、美容成分を配合するタイミングは、特に制限されない。例えば、美容成分以外の成分を含む脂質膜構造体形成剤を調製後に保管しておき、脂質膜構造体含有組成物を調製する際に、美容成分を上記形成剤に添加して均一溶解してから水相に分散させることで、美容成分を内包した脂質膜構造体を形成してもよい。このことから、該形成剤によって、単品ごとの化粧品や皮膚外用剤の製造が簡便になるのみならず、事前に形成剤をストックしておくことで、内包する美容成分を任意に変更して異なる製品群を簡便に作り分けることができる。
より微細な脂質膜構造体を得る観点からは、脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させた際のpHは、好ましくは4.0以上であり、より好ましくは5.0以上であり、さらに好ましくは7.0以上であり、さらにより好ましくは8.0以上である。一方、均一な粒径の脂質膜構造体(すなわち、均一性の高い脂質膜構造体含有組成物)を得る観点からは、脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させた際のpHは、好ましくは10.0以下であり、より好ましくは9.5以下であり、さらにより好ましくは9.0以下である。したがって、本発明の好ましい実施形態に係る脂質膜構造体形成用組成物は、水相中に分散させた際のpHが4.0〜10.0である。ここで、「脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させた際のpH」とは、脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させて得られた生成物のpHを意味し、後述の実施例に記載の方法によって測定される。すなわち、200mLビーカーに精製水100mLを添加し、水相を調製する。水相を80℃に加温し、100rpmで撹拌下、上記調製した80℃の脂質膜構造体形成剤を添加する。添加終了後、80℃で2分撹拌し、脂質膜構造体含有組成物を調製する。上記調製した脂質膜構造体含有組成物について、室温(25℃)まで自然冷却し、ガラス電極法によるpHメータ(HM−25R 東亜ディケーケー株式会社製)を用いて25℃でのpHを測定する。
<脂質膜構造体形成用組成物の製造方法>
本発明は、上記の(A)成分、(B)成分、ならびに必要に応じて上記の(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分からなる群より選択される1種以上を混合すること(混合工程)を有する、脂質膜構造体形成用組成物(脂質膜構造体形成剤)の製造方法についても提供し、この際、上記(B)成分の含有量が、上記(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える。当該製法においては、上記(A)〜(F)成分以外に、上記の[他の成分]の項に記載した成分をさらに混合してもよい。各成分の好ましい態様は、それぞれ上述したとおりである。
当該製法において、各成分は、一括で混合してもよいし、順次に混合してもよい。各成分を順次に混合する場合、その順序は特に制限されない。例えば、(A)成分、(B)成分および(C)成分を用いて脂質膜構造体形成剤を製造する場合、(A)成分および(B)成分を混合した後、(C)成分を添加して混合してもよいし、(A)成分および(C)成分を混合した後、(B)成分を添加して混合してもよいし、(A)成分に(B)成分および(C)成分を同時に添加して(例えば、(B)成分および(C)成分の混合溶媒を添加して)混合してもよい。また、例えば、上記(A)成分および(B)成分に加えて、(C)成分、(D)成分および/または(E)成分を用いて脂質膜構造体形成剤を製造する場合、(C)成分、(D)成分および/または(E)成分は、別々に添加してもよいし、予め混合した後にその混合物を添加してもよい。また、例えば、上記(A)成分、(B)成分、および(F)成分に加えて、(C)成分、(D)成分および/または(E)成分を用いて脂質膜構造体形成剤を製造する場合、(F)成分の添加順序は特に制限されない。例えば、(A)成分、(B)成分および(F)成分を混合した後、(C)成分、(D)成分および/または(E)成分を、同時に、もしくは順次に添加してもよい。あるいは、(A)成分および(B)成分に加えて、(C)成分、(D)成分および/または(E)成分を、同時に、もしくは順次に混合した後、最後に(F)成分を添加してもよい。また、さらに上記[他の成分]に記載の成分を用いて脂質膜構造体形成剤を製造する場合、上記[他の成分]に記載の成分の添加順序は特に制限されず、例えば溶解性に応じて適宜選択しうる。例えば、脂溶性であれば(F)成分を添加する際に併せて添加してもよいし、最後に添加してもよい。あるいは、水溶性であれば(C)成分、(D)成分および/または(E)成分を添加する際に併せて添加しても、最後に添加してもよい。
当該製法において、混合温度は、特に制限されないが、好ましくは25〜120℃であり、より好ましくは40〜100℃であり、さらにより好ましくは60〜90℃である。また、混合時間も、特に制限されないが、好ましくは10〜60分である。混合方法は特に制限されないが、高度な機械的剪断力を必要としないことから、マグネチックスターラー(例えばホットスターラーなど)、パドルミキサー、プロペラミキサー、プラネタリーミキサーなどの公知の混合手段を用いて行うことができる。
当該製法においては、上記混合工程に加えて、精製(例えば、濾過等)、冷却、保管等の他の工程を適宜行ってもよい。例えば、(A)成分および(B)成分を混合した混合物を調製し、当該混合物を冷却および保管した後、脂質膜構造体含有組成物を調製する際に、該混合物に、必要に応じて(C)成分、(D)成分、(E)成分および/または(F)成分を配合して、脂質膜構造体形成用組成物を得てもよい。
<脂質膜構造体形成用組成物の用途>
本発明に係る脂質膜構造体形成用組成物によれば、実質的な機械的剪断力が無くとも自発的に微細な脂質膜構造体を形成することができ、その際に水溶性成分や脂溶性成分を内包することができる。このことから、単に製造工場での製造コストを低減できるだけでなく、化粧品専門店などの店頭において、カウンセリングに基づいて任意の水溶性もしくは脂溶性の美容成分を内包した脂質膜構造体含有組成物を配合した化粧品や皮膚外用剤を要時調製するシステムも可能となり、脂質膜構造体の幅広い活用が期待できる。
<脂質膜構造体含有組成物>
本発明は、上記脂質膜構造体形成用組成物(脂質膜構造体形成剤)を用いてなる脂質膜構造体含有組成物についても提供する。
脂質膜構造体の形態は、脂質分子同士が親水基を外側に向け、疎水基を内側に向き合わせて配列したラメラ(脂質二重膜)構造を有していれば特に制限されず、リポソーム、バイセル、αゲルなどが挙げられる。脂質膜構造体は、ユニラメラまたはシングルラメラと呼ばれる単層ラメラ構造体であってもよく、オリゴラメラと呼ばれる数層(2層〜10層)のラメラ構造体であってもよく、より層数の多いマルチラメラ構造体であってもよく、これらが混在していてもよい。脂質膜構造体は、好ましくは単層ラメラ構造体である。単層ラメラ構造体は、微細な粒径を有しつつ、化合物の内包効率および浸透性に優れる。なお、脂質膜構造体が単層ラメラ構造体であることは、例えば低温電子顕微鏡法(Cryo−TEM)を用いて確認することができる。本発明の一実施形態において、脂質膜構造体は単層ラメラリポソームであることが好ましい。単層ラメラリポソームは、微細な粒径を有しつつ、内水相容積が高いため、水溶性化合物の内包効率および浸透性に優れる。ゆえに、水溶性の美容成分を配合する化粧品や皮膚外用剤において有用である。また、本発明の一実施形態において、脂質膜構造体はバイセルであることが好ましい。バイセルは、厚さ3〜10nm、直径が15〜100nmの微細な円盤状の単層ラメラ構造体であり、脂溶性成分の内包効率および浸透性に優れる。ゆえに、脂溶性の美容成分を配合する化粧品や皮膚外用剤において有用である。本発明に係る脂質膜構造体含有組成物において、単層ラメラリポソームおよびバイセルのいずれか1種のみが存在していてもよく、これら2種が混在していてもよい。
脂質膜構造体の平均粒子径の上限は、分散性、保存安定性、および皮膚への浸透性の観点から、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは140nm以下であり、さらにより好ましくは90nm以下である。脂質膜構造体の平均粒子径の下限は、特に制限されないが、単層ラメラ構造体の形成効率の観点から、例えば20nm以上である。
脂質膜構造体の多分散指数(PDI)の上限は、分散性や、保存安定性、皮膚への浸透性の観点から、好ましくは0.80以下であり、より好ましくは0.50以下であり、さらに好ましくは0.40以下であり、さらにより好ましくは0.30以下であり、特に好ましくは0.25以下であり、最も好ましくは0.20以下である。脂質膜構造体の多分散指数(PDI)の下限は、特に制限されないが、例えば0.01以上である。
なお、脂質膜構造体の平均粒子径および多分散指数(PDI)は、動的光散乱測定装置(Malvern Instruments社製、ゼータサイザーナノZSP)を用い、キュムラント解析による粒子径の平均値(Z−Average)および多分散指数(PDI)を採用するものとする。なお、ここで用いる平均粒子径と多分散指数の定義は、「JIS Z8826:2005 粒子径解析−光子相関法」における記載に準ずるものとする。
本発明の脂質膜構造体含有組成物における脂質膜構造体の濃度は、脂質膜構造体によるスキンケア効果を得る観点から、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上である。一方、当該濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば5質量%未満である。
脂質膜構造体含有組成物のpHは、好ましくは4.0〜10.0である。当該pHは、具体的には、ガラス電極法によるpHメータ(HM−25R 東亜ディケーケー株式会社製)で測定されるpHを採用するものとする。
<脂質膜構造体含有組成物の製造方法>
本発明の脂質膜構造体含有組成物の製造方法は、特に制限されず、上記の脂質膜構造体形成剤に対して大過剰の水を添加する方法であってもよいし、大過剰の水に対して上記の脂質膜構造体形成剤を添加する方法であってもよい。脂質膜構造体の分散性向上の観点からは、後者の方法が好ましい。したがって、本発明の一実施形態に係る脂質膜構造体含有組成物の製造方法は、上記脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させることを有する。
より具体的には、本発明の一実施形態に係る脂質膜構造体含有組成物の製造方法は、上記の(A)成分、(B)成分、ならびに必要に応じて(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分からなる群より選択される1種以上を混合して、脂質膜構造体形成用組成物を得ること(形成剤調製工程)と、前記脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させること(分散工程)と、を有し、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える。当該形成剤調製工程の好ましい態様は、上記の<脂質膜構造体形成用組成物の製造方法>に記載した態様と同様であるため、ここでは説明を省略する。
脂質膜構造体形成剤の水相中への分散は、当該脂質膜構造体形成剤が実質的な機械的剪断力が無くとも自発的に微細な脂質膜構造体を形成することから、水相を撹拌しない状態で行って(脂質膜構造体形成剤を水相に)添加してもよいし、水相を撹拌させながら行ってもよい。この際、撹拌条件は特に制限されないが、例えば、公知の撹拌手段を用いて回転数10〜300rpmで行う。また、脂質膜構造体形成剤は、一括で添加してもよいし、分割して添加してもよいし、公知の滴下手段を用いて、任意の添加速度にて順次添加してもよい。
水相には、不純物の少ない水を用いることが好ましく、例えば、精製水のような、イオン交換、蒸留、逆浸透又は限外ろ過などを単独あるいは組み合わせたシステムにより、常水より精製したもの等を用いることが好ましい。また、脂質膜構造体の形成が可能である限り、水相は水以外の成分をさらに含有していてもよい。かような成分としては、例えば、油剤、界面活性剤、保湿剤、美白剤、色材、アルコール類、アミノ酸、糖、ビタミン、粘度調整剤、高分子、着色剤、粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、美容成分、電解質、繊維、植物抽出エキス等が挙げられる。
分散工程において、水相の温度は、好ましくは25〜100℃であり、より好ましくは40〜95℃であり、さらにより好ましくは60〜90℃である。
分散工程において、分散させる脂質膜構造体形成剤の温度は、好ましくは25〜120℃であり、より好ましくは40〜100℃であり、さらにより好ましくは60〜90℃である。
本発明に係る脂質膜構造体含有組成物の製造方法においては、上記形成剤調製工程および分散工程に加えて、精製(例えば、濾過等)、冷却、保管等の他の工程をさらに行ってもよい。
<脂質膜構造体含有組成物の用途>
本発明の脂質膜構造体含有組成物は、このものを化粧料や皮膚外用剤として用いることの他、当該脂質膜構造体含有組成物を化粧料や皮膚外用剤に配合することで、保湿、肌質改善等のスキンケア効果を付与することができる。したがって、本発明の一実施形態は、上記の脂質膜構造体含有組成物を配合してなる化粧料である。また、本発明の一実施形態は、脂質膜構造体含有組成物を配合してなる皮膚外用剤である。
本発明の化粧料または皮膚外用剤の形態は、脂質膜構造体が安定に配合されるのであれば、特に制限されないが、ローション状、ジェル状、乳液状、クリーム状、シャンプー状、洗顔料状などが挙げられる。本発明の微細な(例えば、平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体を含有することによる、外観の透明感、塗布時の浸透感、安定性の高さを活かす観点から、脂質膜構造体の配合が難しい低粘度ローションへの配合が好ましく挙げられる。
本発明の化粧料または皮膚外用剤は、上記の脂質膜構造体含有組成物に加え、本発明の効果を損なわない範囲において、化粧料または皮膚外用剤に通常使用される成分がさらに配合されていてもよい。かような成分としては、油剤、界面活性剤、保湿剤、美白剤、色材、アルコール類、アミノ酸、ビタミン、粘度調整剤、高分子、着色剤、粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、美容成分、電解質、pH調整剤、繊維、水、植物抽出エキス等が挙げられるが、これらには限定されない。
本発明の脂質膜構造体含有組成物を配合してなる化粧料および皮膚外用剤における脂質膜構造体の濃度は、脂質膜構造体によるスキンケア効果を得る観点から、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上である。一方、当該濃度の上限としては、特に制限されないが、例えば5質量%未満である。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20〜25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
<脂質膜構造体含有組成物の調製>
以下の方法により脂質膜構造体含有組成物を調製した。なお、水素添加レシチンは、複数の酸価が異なる市販の大豆由来水素添加レシチン(酸価0.3〜30.8mgKOH/g)を入手し、所望の酸価となるような割合で混合することにより、調製した。
[実施例1−1]
100mLビーカーに、水素添加レシチン(酸価23.5mgKOH/g)20質量部および1,2−ペンタンジオール40質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。次に、200mLビーカーに精製水100mLを添加し、水相を調製した。水相を80℃に加温し、100rpmで撹拌下、上記調製した80℃の脂質膜構造体形成剤を添加した。添加終了後、80℃で2分撹拌し、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例1−2〜1−4、比較例1−1〜1−2]
実施例1−1において、水素添加レシチン(酸価23.5mgKOH/g)および1,2−ペンタンジオールの添加量を下記表1に記載の添加量(質量部)に変更したこと以外は実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例2−1(a)〜2−6(a)、比較例2−1(a)]
100mLビーカーに、表2Aに記載の酸価(単位:mgKOH/g)を有する水素添加レシチン15質量部および1,2−ペンタンジオール60質量部を添加し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例2−1(b)〜2−6(b)、比較例2−1(b)]
100mLビーカーに、表2Bに記載の酸価(単位:mgKOH/g)を有する水素添加レシチン15質量部および1,2−ペンタンジオール60質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、80℃に加温した精製水25質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で5分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例2−4(b)改変1]
100mLビーカーに、水素添加レシチン(酸価23.1mgKOH/g)15質量部、1,2−ペンタンジオール60質量部および精製水25質量部を同時に(1,2−ペンタンジオール60質量部および精製水25質量部の混合溶媒として)添加し、ホットスターラーを用いて80℃で30分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例2−4(b)改変2]
100mLビーカーに、水素添加レシチン(酸価23.1mgKOH/g)15質量部および精製水25質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、1,2−ペンタンジオール60質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例2−1(c)〜2−6(c)、比較例2−1(c)]
100mLビーカーに、表2Cに記載の酸価(単位:mgKOH/g)を有する水素添加レシチン15質量部および1,2−ペンタンジオール60質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、精製水24.4質量部、アルギニン0.45質量部およびクエン酸0.15質量部を混合した水溶液を80℃に加温して添加し、ホットスターラーを用いて、80℃で5分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例3−1〜3−5、比較例3−1〜3−7]
100mLビーカーに、水素添加レシチン(酸価23.1mgKOH/g)15質量部および表3に記載のB成分またはB’成分60質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、精製水25質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で5分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。なお、比較例3−1〜3−2については、脂質膜構造体形成剤を調製した80℃の温度において、ペースト状にゲル化し、これら脂質膜構造体形成剤を用いた脂質膜構造体含有組成物は分散性に劣るものだった。また比較例3−3〜3−7については、脂質膜構造体形成剤を調製した時点で多量の析出物が発生したため、脂質膜構造体含有組成物の調製が困難であった。
[実施例4−1〜4−12]
100mLビーカーに、水素添加レシチン(酸価23.1mgKOH/g)15質量部および1,2−ペンタンジオール60質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、表4−1および4−2に記載の量で精製水、D成分およびE成分(またはD成分とE成分との塩)を混合した水溶液を添加し、ホットスターラーを用いて、80℃で5分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例5−1(a)〜5−6(a)]
100mLビーカーに、表5に記載の添加量で、水素添加レシチン(酸価23.1mgKOH/g)、1,2−ペンタンジオール、および表5に記載のF成分を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、表5に記載の添加量で精製水を添加し、ホットスターラーを用いて、80℃で5分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例5−1(b)〜5−6(b)]
100mLビーカーに、表5に記載の添加量で、水素添加レシチン(酸価23.1mgKOH/g)、1,2−ペンタンジオール、および表5に記載のF成分を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、表5の記載の量で精製水、アルギニンおよびクエン酸を混合した水溶液を添加し、ホットスターラーを用いて、80℃で5分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。当該脂質膜構造体形成剤を用い、実施例1−1と同様にして、脂質膜構造体含有組成物を調製した。
[実施例6−1〜6−7]
100mLビーカーに、水素添加レシチン(酸価23.1mgKOH/g)15質量部および1,2−ペンタンジオール60質量部を添加し、ホットスターラーを用いて80℃で20分撹拌した後、表6に記載の量で精製水、D成分およびE成分を混合した水溶液を添加し、ホットスターラーを用いて、80℃で5分撹拌し、脂質膜構造体形成剤を調製した。次に、200mLビーカーに精製水100mLを添加し、水相を調製した。水相を80℃に加温し、100rpmで撹拌下、上記調製した80℃の脂質膜構造体形成剤を添加した。添加終了後、80℃で2分撹拌し、脂質膜構造体含有組成物を調製した。上記調製した脂質膜構造体含有組成物について、室温(25℃)まで自然冷却し、ガラス電極法によるpHメータ(HM−25R 東亜ディケーケー株式会社製)を用いて、25℃でのpHを測定した。測定したpHを下記表6に記載した。
<組成物の評価>
[外観(脂質膜構造体形成剤)]
上記調製した脂質膜構造体形成剤について、直径3.7cmのガラス瓶容器にて、80℃での外観を目視で観察し、下記基準に基づき判定した(◎または○であれば実使用上問題が無い):
◎:均一透明液状である
○:透明でないが、均一な液状である
△:ペースト状にゲル化している
×:析出物が見られる。
[外観(脂質膜構造体含有組成物)]
上記調製した脂質膜構造体含有組成物について、直径3.7cmのガラス瓶容器にて、25℃での外観を目視で観察し、下記基準に基づき判定した(◎または○であれば、脂質膜構造体の分散性が良好である):
◎:容器の反対側の文字が視認できる透明乃至半透明液状である
○:容器の反対側の文字は視認できないが、均一液状である
×:分離や沈殿が見られる。
さらに、脂質膜構造体含有組成物を25℃で1ヶ月間保管し、上記と同様に外観の観察および判定を行った。
[平均粒子径・多分散指数]
上記調製した脂質膜構造体含有組成物について、動的光散乱測定装置(Malvern Instruments社製、ゼータサイザーナノZSP)を用い、キュムラント解析により、脂質膜構造体の平均粒子径および多分散指数(PDI)を測定した。
[Cryo−TEM観察]
実施例4−1で調製した脂質膜構造体含有組成物について、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製 H−7650)を用いてCryo−TEM観察を行った。その結果、リング状の像は単層ラメラリポソーム構造体を示し、棒状の像はバイセル構造体を示しており、単層ラメラ構造の脂質膜構造体の形成が確認された(図1)。
結果を下記表に示す。
Figure 2021046378
上記表1に示すように、(A)成分である酸価5mgKOH/g以上の水素添加レシチンと、(B)成分である1,2−ペンタンジオールとを、当該(A)成分100質量部に対して当該(B)成分が100質量部を超えるように混合して、均一液状な脂質膜構造体形成剤を調製することができた。当該脂質膜構造体形成剤を、水相に分散させたところ、マイクロフルイダイザー等の微細化手段を要することなく、平均粒子径200nm以下の微細な脂質膜構造体含有組成物を調製することができた。また、調製した脂質膜構造体含有組成物は25℃で1ヶ月間保管後も安定(優れた外観)を維持していた(実施例1−1〜1−4)。当該(A)成分100質量部に対して当該(B)成分200質量部を配合して調製した脂質膜構造体形成剤においては、水相分散時の平均粒子径が110nm以下の好ましい半透明の外観を有する脂質膜構造体含有組成物を調製することができた(実施例1−1)。さらに、当該(A)成分100質量部に対して当該(B)成分を400質量部以上配合して調製した脂質膜構造体形成剤においては、水相分散時の平均粒子径が50nm以下の極めて透明性の高い外観を有する脂質膜構造体含有組成物を調製することができた(実施例1−2〜1−4)。
一方、当該(A)成分100質量部に対して当該(B)成分が100質量部以下となるように配合した脂質膜構造体形成剤を用いた場合、形成される脂質膜構造体の平均粒子径が200nmを超え、微細な脂質膜構造体は得られなかった(比較例1−1〜1−2)。
Figure 2021046378
Figure 2021046378
Figure 2021046378
Figure 2021046378
上記表2Aに示すように、(A)成分である酸価5mgKOH/g以上の水素添加レシチンおよび(B)成分である1,2−ペンタンジオールを混合して脂質膜構造体形成剤を調製し、水相に分散させたところ、マイクロフルイダイザー等の微細化手段を要することなく、平均粒子径90nm以下の脂質膜構造体を形成することができた(実施例2−1(a)〜2−6(a))。さらに、表2A〜Cに示すように、酸価15.0mgKOH/g、20.0mgKOH/gまたは23.1mgKOH/gの水素添加レシチンを用いた場合には、(C)成分である水、さらには(D)成分であるアルギニンおよび(E)成分であるクエン酸をさらに配合して脂質膜構造体形成剤を調製することで、より加熱溶解時の外観に優れた脂質膜構造体形成剤を得ることができた。また、該形成剤を用いることで、水相への脂質膜構造体の分散性が向上し、より優れた外観を有する脂質膜構造体含有組成物を得ることができた。
一方、表2A〜Cに示すように、(A)成分に該当しない水素添加レシチンを用いた場合は、形成される脂質膜構造体の平均粒子径が200nmを超え、微細な脂質膜構造体は得られなかった(比較例2−1(a)〜(c))。
Figure 2021046378
上記表3では、(B)成分について検討した。(B)成分に該当するポリオール化合物を用いた場合は、いずれも平均粒子径200nm以下の脂質膜構造体を形成することができた(実施例2−4(b)、3−1〜3−5)。特に、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、ヘキシルグリセリンを用いた場合は、きわめて微細な(平均粒子径30nm以下の)脂質膜構造体を形成することができた(実施例3−1、3−2、3−5)。
一方、(B)成分に該当しないポリオール化合物またはエタノールを用いた場合は、脂質膜構造体形成剤を調製した時点で析出物またはゲル化が生じ、脂質膜構造体の形成が困難であるか、形成できても平均粒子径が200nmを超える結果であった(比較例3−1〜3−7)。
Figure 2021046378
Figure 2021046378
上記表4−1および4−2では、(D)成分および(E)成分の種類を検討した。(E)成分としてクエン酸を用いた場合において、(D)成分としてイオン当量が等しくなる配合量にて、いずれの塩基性化合物を用いた場合も、平均粒子径90nm以下の脂質膜構造体を形成することができた(実施例4−1〜4−8、4−10)。さらに、(E)成分としてエチドロン酸を用いた場合(実施例4−9)は、(E)成分としてイオン当量が等しくなる配合量にて、クエン酸を用いた場合(実施例4−8)に比べて、脂質膜構造体が微細化する傾向が得られた。
(D)成分として水酸化ナトリウムと、(E)成分としてクエン酸とを組み合わせた場合において、両成分を別々に配合した場合(実施例4−8)と、両成分の塩として配合した場合(実施例4−10)とでは、脂質膜構造体の平均粒子径、粒度分布および分散性の差は見られなかった。
上記結果より、本発明に係る脂質膜構造体形成剤を用いることで、微細化手段を要することなく、微細な(平均粒子径200nm以下の)脂質膜構造体を形成することができた。
Figure 2021046378
上記表5では、(F)成分の種類を検討した。(F)成分としていずれの脂溶性化合物を用いた場合も、(F)成分を用いない場合と同様に、(A)成分に該当する一定の酸価の水素添加レシチン用いた場合において、平均粒子径200nm以下の脂質膜構造体を形成することができた。特に、コエンザイムQ−10(ユビキノン)を用いた場合は、脂質膜構造体の平均粒子径が41nm〜55nmとなり、きわめて微細な脂質膜構造体を形成することができた(実施例5−5(a)、(b))。また、(F)成分に加え、(D)成分であるアルギニンと(E)成分であるクエン酸をさらに配合して脂質膜構造体形成剤を調製することで、水相分散時の脂質膜構造体の平均粒子径がより小さくなり、かつ脂質膜構造体の多分散指数が小さいより均一な粒径を有する脂質膜構造体が得られ、脂質膜構造体含有組成物の保存安定性が向上した。
Figure 2021046378
上記表6では、脂質膜構造体形成用組成物の水相中に分散させる際のpH(調製直後の脂質膜構造体含有組成物のpH)について検討した。いずれの場合も、平均粒子径200nm以下の脂質膜構造体を形成することができ、調製した脂質膜構造体含有組成物は25℃で1ヶ月間保管後も安定(優れた外観)を維持していた。具体的には、pH4.0〜10.0の範囲において、平均粒子径91nm以下の微細な脂質膜構造体含有組成物を調製できた(実施例6−1〜6−7)。中でも、pH5.0〜7.0の範囲において、平均粒子径58nm〜61nmのより微細な脂質膜構造体含有組成物を調製できた(実施例6−2〜6−4)。さらに、pH8.0〜10.0の範囲において、平均粒子径43nm以下のさらに微細な脂質膜構造体含有組成物を調製できた(実施例6−5〜6−7)。また、pH4.0〜10.0の範囲において、均一性の高い(脂質膜構造体の多分散指数が0.40以下の)脂質膜構造体含有組成物を調製できた(実施例6−1〜6−7)。さらに、pH4.0〜9.5の範囲において、より均一性の高い(脂質膜構造体の多分散指数が0.25以下の)脂質膜構造体含有組成物を調製できた(実施例6−1〜6−6)。さらに、pH4.0〜9.0の範囲において、さらに均一性の高い(脂質膜構造体の多分散指数が0.20以下の)脂質膜構造体含有組成物を調製できた(実施例6−1〜6−5)。

Claims (15)

  1. (A)酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質と、(B)下記式1で表される化合物と、を含有し、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える、脂質膜構造体形成用組成物:
    Figure 2021046378

    上記式1中、
    Rは、置換もしくは非置換の炭素数2〜6のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数3〜6のシクロアルキル基であり、
    Xは、−O−、−C(=O)O−または−O−C(=O)−であり、
    nは、0または1である。
  2. 前記(B)成分が、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、シクロヘキシルグリセリンおよびヘキシルグリセリンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の脂質膜構造体形成用組成物。
  3. 前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、150〜2000質量部である、請求項1または2に記載の脂質膜構造体形成用組成物。
  4. (C)水をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂質膜構造体形成用組成物。
  5. (D)塩基性化合物および(E)酸性化合物のうち少なくとも1種をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂質膜構造体形成用組成物。
  6. (F)脂溶性化合物をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の脂質膜構造体形成用組成物。
  7. 前記(E)成分を含有し、前記(E)成分が有機酸である、請求項5または6に記載の脂質膜構造体形成用組成物。
  8. 水相中に分散させた際のpHが4.0〜10.0である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の脂質膜構造体形成用組成物。
  9. (A)酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質、(B)下記式1で表される化合物、ならびに必要に応じて(C)水、(D)塩基性化合物、(E)酸性化合物および(F)脂溶性化合物からなる群より選択される1種以上を混合することを有し、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える、脂質膜構造体形成用組成物の製造方法:
    Figure 2021046378

    上記式1中、
    Rは、置換もしくは非置換の炭素数2〜6のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数3〜6のシクロアルキル基であり、
    Xは、−O−、−C(=O)O−または−O−C(=O)−であり、
    nは、0または1である。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の脂質膜構造体形成用組成物を用いてなる脂質膜構造体含有組成物。
  11. 前記脂質膜構造体が単層ラメラ構造体である、請求項10に記載の脂質膜構造体含有組成物。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させることを有する、脂質膜構造体含有組成物の製造方法。
  13. (A)酸価5mgKOH/g以上の水素添加リン脂質、(B)下記式1で表される化合物、ならびに必要に応じて(C)水、(D)塩基性化合物、(E)酸性化合物および(F)脂溶性化合物からなる群より選択される1種以上を混合して、脂質膜構造体形成用組成物を得ることと、
    前記脂質膜構造体形成用組成物を水相中に分散させることと、
    を有し、前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して、100質量部を超える、脂質膜構造体含有組成物の製造方法:
    Figure 2021046378

    上記式1中、
    Rは、置換もしくは非置換の炭素数2〜6のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数3〜6のシクロアルキル基であり、
    Xは、−O−、−C(=O)O−または−O−C(=O)−であり、
    nは、0または1である。
  14. 請求項10または11に記載の脂質膜構造体含有組成物を配合してなる化粧料。
  15. 請求項10または11に記載の脂質膜構造体含有組成物を配合してなる皮膚外用剤。
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WO2024053289A1 (ja) * 2022-09-05 2024-03-14 長谷川香料株式会社 脂質膜構造体含有組成物の製造方法

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