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JP2020204112A - 化学修飾セルロース繊維 - Google Patents

化学修飾セルロース繊維 Download PDF

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JP2020204112A
JP2020204112A JP2019112793A JP2019112793A JP2020204112A JP 2020204112 A JP2020204112 A JP 2020204112A JP 2019112793 A JP2019112793 A JP 2019112793A JP 2019112793 A JP2019112793 A JP 2019112793A JP 2020204112 A JP2020204112 A JP 2020204112A
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Nagatake Yamazaki
長武 山崎
隆博 中江
Takahiro Nakae
隆博 中江
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Abstract

【課題】セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体における物性(例えば機械強度、耐熱性及び寸法安定性)の向上効果に優れるとともに、当該樹脂複合体の欠陥及び外観不良を生じさせ難い、セルロース繊維の提供を目的とする。【解決手段】セルロースの水酸基の少なくとも一部が置換されている、化学修飾セルロース繊維であって、前記化学修飾セルロース繊維をN,N−ジメチルアセトアミドに1.5質量%の濃度で分散させて得た分散液から成膜された坪量80g/m2の化学修飾セルロース繊維フィルムが、全光透過率73%以上を有する、化学修飾セルロース繊維。【選択図】なし

Description

本発明は、高度に解繊された、化学修飾セルロース繊維に関する。
樹脂は、軽く、加工特性に優れるため、自動車部材、電気・電子部材、事務機器ハウジング、精密部品等の多方面に広く使用されている。しかしながら、樹脂単体では、機械特性、寸法安定性等が不十分である場合が多く、樹脂と各種無機材料とのコンポジットが一般的に用いられている。樹脂をガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイ等の無機充填剤である強化材料で強化した樹脂組成物は、比重が高いため、当該樹脂組成物から得られる樹脂成形体は、重量が大きいという課題がある。
近年、樹脂の新たな強化材料として、セルロース繊維、特にセルロースナノファイバー(CNF)が用いられるようになってきている。
セルロース繊維は、その単体特性として、アラミド繊維に匹敵する高い弾性率と、ガラス繊維よりも低い線膨張係数を有することが知られている。また、真密度が1.56g/cm3と、低く、一般的な熱可塑性樹脂の補強材として使用されるガラス(密度2.4〜2.6g/cm3)やタルク(密度2.7g/cm3)と比較し圧倒的に軽い材料である。
セルロース繊維としては、樹木を原料とするもののほか、麻、綿花、ケナフ、キャッサバ等を原料とするもの等が存在する。さらに、ナタデココに代表されるようなバクテリアセルロース等も知られている。これら原料は天然資源であって地球上に大量に存在するため、これら原料の有効利用のために、樹脂に対してセルロース繊維をフィラーとして添加する技術が注目を浴びている。
特許文献1は、熱可塑性樹脂と、酸化セルロース繊維及びセルロースナノファイバーの少なくとも一方と、液媒体と、を混合して第1の混合物を得る混合工程と、前記第1の混合物を乾燥して第2の混合物を得る乾燥工程と、前記第2の混合物を前記熱可塑性樹脂の融点(Tm)より5℃低い温度から融点(Tm)より25℃未満高い温度までの範囲の混練温度で混練する低温混練工程と、を含む、熱可塑性樹脂組成物の製造方法を記載する。特許文献1はまた、酸化セルロース繊維がN-オキシル化合物を酸化触媒として用いた天然セルロースの酸化処理によって得られたものであってよいこと、酸化セルロース繊維を各種撹拌処理によって解繊してセルロースナノファイバーを製造できることを記載する。
特許文献2は、含水状態のセルロースナノファイバー(CNF)に有機酸ビニルを反応させ、終了後に生成物を回収する工程を含むことを特徴とする誘導体化CNFの製造方法を記載し、多糖を水中カウンターコリジョン(ACC)法等の高圧水流処理により解繊してCNFを製造できることを記載する。
特許文献3は、ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維とを混合し、重合反応を行うことにより得られたポリアミド樹脂組成物を記載し、該セルロース繊維が、各種粉砕装置を使用したミクロフィブリル化によって得られたもの、繊維製品の製造工程で屑糸として出されたセルロース繊維の集合体、バクテリアセルロース、又はN−オキシル化合物の存在下にセルロース繊維を酸化させた後に水洗、物理的解繊処理を経ることにより得られる微細化されたセルロース繊維であってよいことを記載する。
特許文献4は、平均重合度が600以上30000以下であり、アスペクト比が20〜10000であり、平均直径が1〜800nmであり、X線回折パターンにおいて、Iβ型の結晶ピークを有することを特徴とするセルロースナノファイバーを記載し、セルロース原料をイオン液体を含む溶液中で解繊処理及び化学修飾してセルロースナノファイバーを製造できることを記載する。
特許文献5は、セルロース繊維の集合体に、マトリクス材料を含浸させてなる繊維強化複合材料であって、該セルロース繊維の水酸基は、酸、アルコール、ハロゲン化試薬、酸無水物、及びイソシアナートよりなる群から選ばれる1種又は2種以上よりなる化学修飾剤との反応で化学修飾されており、該化学修飾による官能基の導入割合が、化学修飾前の該セルロース繊維の水酸基に対して5〜40モル%であることを特徴とする繊維強化複合材料を記載し、セルロース繊維として、バクテリアセルロースを使用でき、又は、海草、ホヤ、植物等に由来する原料から叩解、粉砕、高温高圧水蒸気処理、リン酸塩処理等によって得た繊維を使用できることを記載する。
特開2016−29169号公報 国際公開第2016/010016号 国際公開第2011/126038号 特開2011−184816号公報 特開2007−51266号公報
特許文献1〜5に記載されるようなCNFの化学修飾は、CNFと樹脂とを良好に複合化する上で有利であると考えられる。例えば、イオン液体処理等の化学的手法によれば、セルロース原料が可視光の散乱領域よりも細い繊維径まで解繊されることで、ネットワーク形成能に優れるCNFを得ることができる。しかし、このようなCNFは機械特性及び耐熱性が低いため、樹脂と混練されるフィラーとしての物性向上効果が十分であるとはいえず、特に、高い溶融粘度を必要とする樹脂との複合化には不適であった。一方、機械的手法でセルロース原料を解繊して得られるCNFは、機械特性及び耐熱性を比較的良好に保持できると考えられる。しかし、機械的手法による解繊で得られるCNFは、解繊不足による大繊維径成分を含有する場合が多い。このようなCNFは、樹脂との複合体において、破断等の欠陥の起点となったり、光の散乱若しくは吸収による濁り、又は着色によって外観不良を招来するという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決し、セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体における物性(例えば機械強度、耐熱性及び寸法安定性)の向上効果に優れるとともに、当該樹脂複合体の欠陥及び外観不良を生じさせ難い、セルロース繊維の提供を目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] セルロースの水酸基の少なくとも一部が修飾されている、化学修飾セルロース繊維であって、
前記化学修飾セルロース繊維をN,N−ジメチルアセトアミドに1.5質量%の濃度で分散させて得た分散液から成膜された坪量80g/m2の化学修飾セルロース繊維フィルムが、全光透過率73%以上を有する、化学修飾セルロース繊維。
[2] アルカリ可溶多糖類の含有率が10質量%以下である、上記態様1に記載の化学修飾セルロース繊維。
[3] 酸不溶成分の含有率が10質量%以下である、上記態様1又は2に記載の化学修飾セルロース繊維。
[4] α−セルロース含有率が90質量%以上である、上記態様1〜3のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[5] セルロースIβ型の結晶構造を有し、結晶化度が60%以上である、上記態様1〜4のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[6] 平均繊維径が10nm以上1000nm以下である、上記態様1〜5のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[7] 繊維径が1000nm以下である微細成分と繊維径が1000nm超である粗大成分とを含む、上記態様1〜6のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[8] 前記粗大成分がラメラ構造を有する、上記態様1〜7のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[9] 前記化学修飾セルロース繊維フィルムの小角X線散乱測定により求められるフィブリル間隔が10〜30nmである、上記態様1〜8のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[10] コットンリンター由来である、上記態様1〜9のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[11] 前記化学修飾セルロース繊維の修飾基が、炭素数2以上のアシル基から選ばれる1種以上の基である、上記態様1〜10のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維。
[12] 上記態様1〜11のいずれかに記載の化学修飾セルロース繊維と樹脂とを含む、樹脂組成物。
本発明の一態様によれば、セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体における物性(例えば機械強度、耐熱性及び寸法安定性)の向上効果に優れるとともに、当該樹脂複合体の欠陥及び外観不良を生じさせ難い、セルロース繊維を提供できる。
熱分解開始温度(TD)及び1%重量減少温度(T1%)の測定法の説明図である。 IRインデックス1370及びIRインデックス1030の算出法の説明図である。 セルロースの水酸基の平均置換度の算出法の説明図である。 実施例1の化学修飾セルロース繊維から得た化学修飾セルロース繊維フィルムの外観を示す図である。 比較例3の化学修飾セルロース繊維から得た化学修飾セルロース繊維フィルムの外観を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本開示の各種特性値は、特記がない限り本開示の[実施例]の項に記載される方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値である。
<化学修飾セルロース繊維>
本発明の一態様は、セルロースの水酸基の少なくとも一部が置換されている、化学修飾セルロース繊維であって、該化学修飾セルロース繊維をN,N−ジメチルアセトアミドに1.5質量%の濃度で分散させて得た分散液から成膜された坪量80g/m2のフィルムが、全光透過率73%以上を有する、化学修飾セルロース繊維を提供する。
セルロースの水酸基の少なくとも一部が置換されている化学修飾セルロース繊維は、修飾基の寄与によって樹脂との親和性に優れるため、セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体中で良好に分散できる。本発明者らは、化学修飾セルロース繊維が樹脂複合体において優れた物性(例えば機械強度、耐熱性及び寸法安定性)の向上効果を示すとともに欠陥及び外観不良をもたらし難いようにするためには、セルロースが所望のサイズまで十分に微細化されており、かつ微細化状態が樹脂との複合化後にも保持される(すなわち化学修飾セルロース繊維が顕著に凝集しない)こと、更に、化学修飾セルロース繊維が規則的なセルロース分子配列を所望の程度保持していることが重要であることに着目した。そして本発明者らは、化学修飾セルロース繊維が、親水性溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミドへの分散を介してフィルム化された後に特定の全光透過率を有することは、当該化学修飾セルロース繊維が、加工(例えば樹脂複合体の製造における化学修飾セルロース繊維と樹脂との複合化)後にも顕著に凝集せず微細化状態を保持できる能力を有していること、及び当該化学修飾セルロース繊維が規則的なセルロース分子配列を所望の程度保持していることの指標であり、そのような全光透過率を示す化学修飾セルロース繊維は、樹脂複合体の物性向上効果に優れるとともに欠陥及び外観不良をもたらし難いことを見出した。
一態様においては、化学修飾セルロース繊維をN,N−ジメチルアセトアミドに1.5質量%の濃度で分散させて得た分散液から成膜された坪量80g/m2のフィルム(以下、化学修飾セルロース繊維フィルムともいう。)が、全光透過率73%以上を有する。上記フィルムは、具体的には以下の手順で作製されたものである。
まず、化学修飾セルロース繊維を、常温(より具体的には20℃)のN,N−ジメチルアセトアミド中に、1.5質量%の濃度となる量で加え、常圧にて、弱い剪断力を有する装置(例えばマグネチックスターラー又はディスパーザー)で撹拌して分散液を得る。この分散液を、ポリプロピレン基材上に、スポイトを用いて所定量流延し、次いで、高温(より具体的には50℃以上)、常圧で4時間、空気中に静置して、N,N−ジメチルアセトアミドを全て蒸発させることで、基材上に、坪量80g/m2の化学修飾セルロース繊維フィルムを生成させる。基材から化学修飾セルロース繊維フィルムを剥離して、当該化学修飾セルロース繊維フィルムの全光透過率を測定する。全光透過率の測定条件は以下のとおりである。
装置:ヘーズメーターNPH2000(日本電色工業株式会社製)
測定条件:光源D65(JIS K7136準拠)
なお、坪量80g/m2±10g/m2の範囲では、全光線透過率の値と坪量との間に直線的な相関関係があるため、作製された化学修飾セルロース繊維フィルムの坪量は坪量80g/m2±10g/m2の範囲内であればよく、例えば、80g/m2±10g/m2の範囲内で互いに異なる坪量を有する2つのフィルムの測定結果から、上記直線的な相関関係に従って坪量80g/m2の全光線透過率を算出し、この算出された値を坪量80g/m2における全光線透過率の値と見做してもよい。
化学修飾セルロース繊維フィルムの全光透過率は、樹脂複合体の物性向上と欠陥及び外観不良の回避との両立の観点から、73%以上であり、好ましくは、75%以上、又は80%以上、又は85%以上、又は88%以上、又は90%以上、又は93%以上である。全光透過率は、化学修飾セルロース繊維の製造容易性の観点から、好ましくは、99%以下、又は98%以下、又は97%以下であってよい。
上記全光透過率を上記範囲に制御する手段としては、これらに限定されるものではないが、セルロース原料の解繊及び化学修飾に際して、当該セルロース原料を、セルロースの結晶構造が本質的に維持されるがセルロースミクロフィブリル間隔が拡がり易くなる条件で処理することが挙げられる。このような処理としては、解繊前アルカリ処理、解繊前酸処理、解繊前酵素処理、解繊前無機塩処理等を例示できる。
原料の処理として、解繊前アルカリ処理を選択した場合、アルカリとしてはアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、有機オニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等から選ばれる一つ以上の化合物の水溶液を用いることができる。コストの観点から使用量を少なく出来るアルカリ金属水酸化物が好ましい。
アルカリ水溶液の濃度としては1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上、又は3質量%以上、又は4質量%以上、又は5質量%以上、又は7質量%以上である。解繊前アルカリ処理後の洗浄や中和処理を簡便にする観点から、アルカリ水溶液の濃度としては20質量%以下であり、好ましくは17.5質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下、又は10質量%以下、又は9質量%以下である。
これらの処理を行うことによって、当該セルロース原料を溶媒に浸漬したときのミクロフィブリル間隔が大きくなることは小角X線散乱測定によって確認できる。セルロース原料のミクロフィブリル間隔としては、セルロース原料が解繊や化学修飾され易くなる観点から、後述の算出方法において10nm以上であり、好ましくは11nm以上、又は12nm以上、又は13nm以上、又は14nm以上、又は15nm以上、又は16nm以上である。
化学修飾セルロース繊維のミクロフィブリル間隔としては、樹脂と複合化した際の樹脂マトリクス中への分散性の観点から、後述の算出方法において10nm以上であり、好ましくは11nm以上、又は12nm以上、又は13nm以上、又は14nm以上、又は15nm以上、又は16nm以上である。樹脂と複合化した際の補強効果の観点から、後述の算出方法において30nm以下であり、好ましくは28nm以下、又は26nm以下、又は24nm以下、又は22nm以下、又は20nm以下である。
化学修飾セルロース繊維フィルムの波長400nmにおける光線透過率を特定範囲とすることは、樹脂複合体の外観を良好にする上で特に有利である。上記観点から、波長400nmにおける光線透過率は、好ましくは、40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上である。化学修飾セルロース繊維の製造容易性の観点から、波長400nmにおける光線透過率は、例えば99%以下、又は95%以下、又は90%以下であってよい。波長400nmにおける光線透過率は、化学修飾セルロース繊維フィルムの特定波長における吸光度を紫外可視分光光度計で測定して求められる値である。
化学修飾セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類含有量は少ない方が好ましい。本開示において、「アルカリ可溶多糖類」は、ヘミセルロースのほか、β−セルロース及びγ−セルロースも包含する。当該アルカリ可溶多糖類は、植物(例えば木材)を溶媒抽出及び塩素処理して得られるホロセルロースのうちのアルカリ可溶部として得られる成分(すなわちホロセルロースからα−セルロースを除いた成分)として当業者に理解される。アルカリ可溶多糖類は、水酸基を含む多糖であり耐熱性が悪く、熱により分解すること、熱エージング時に黄変を引き起こすこと、セルロース繊維の強度低下の原因になること等の不都合を招来し得る。したがって、化学修飾セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類含有量は少ない方が好ましい。化学修飾セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類含有率は、好ましくは、10質量%以下、又は6質量%以下、又は5質量%以下、又は4質量%以下、最も好ましくは0質量%であるが、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば1質量%以上、又は2質量%以上であってもよい。
アルカリ可溶多糖類含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載の手法より求めることができ、ホロセルロース含有率(Wise法)からαセルロース含有率を差し引くことで求められる。なお、化学修飾セルロース繊維のアルカリ可溶多糖類含有率は、通常、化学修飾セルロース繊維の製造に使用したセルロース原料のアルカリ可溶多糖類含有率とほぼ同様である。すなわち、化学修飾の通常の条件(典型的には弱酸性〜中性のpH)下ではアルカリ可溶多糖類の選択的な除去は実質的に生じないと考えてよい。一態様において、セルロース原料のアルカリ可溶多糖類含有率の値を化学修飾セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類含有率の値とみなしてよい。また、一態様において、化学修飾セルロース繊維中のアルカリ可溶多糖類含有率は、化学修飾セルロース繊維から修飾基を脱離反応により脱離した後の(すなわち未修飾の状態に変換されたセルロース繊維の)残渣成分と溶解成分とを分析することによっても求めることができる。化学修飾セルロース繊維が有する修飾基の種類及び量によっては、化学修飾セルロース繊維から脱離した修飾基に由来する成分がアルカリ可溶部に含まれる場合がある。このような場合には、一態様において、化学修飾セルロース繊維から修飾基を脱離反応により脱離した後の試料をアルカリ可溶多糖類含有率の測定に供する。例えば、修飾基がエステル基(例えばアセチル基)である場合、一態様において、2質量%アルカリ溶液による加水分解によって修飾基を脱離させた後の試料を用いる。
化学修飾セルロース繊維の酸不溶成分(例えばリグニン)の平均含有率が高いと、加工時の熱により化学修飾セルロース繊維が変色しやすいため、酸不溶成分平均含有率はできる限り低い方が好ましい。具体的には、化学修飾セルロース繊維の酸不溶成分平均含有率は、好ましくは、10質量%以下、又は10質量%未満、又は8質量%以下、又は7質量%以下、又は6質量%以下、又は5質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
酸不溶成分平均含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載のクラーソン法を用いて求められる。硫酸溶液中でサンプルを撹拌してセルロース及びアルカリ可溶分(これはアルカリ可溶多糖類を含む)を溶解させた後、ガラスファイバーろ紙で濾過し、得られた残渣が酸不溶成分に該当する。この酸不溶成分の重量から酸不溶成分含有率を算出し、そして、3サンプルについて算出した酸不溶成分含有率の数平均を酸不溶成分平均含有率とする。一態様において、化学修飾セルロース繊維の酸不溶成分平均含有率は、化学修飾セルロース繊維製造に使用したセルロース原料の酸不溶成分平均含有率から算出してもよい。また、一態様において、化学修飾セルロース繊維中の酸不溶成分平均含有率は、化学修飾セルロース繊維から修飾基を脱離反応により脱離した後の(すなわち未修飾の状態に変換されたセルロース繊維の)残渣成分と溶解成分とを分析することによっても求めることができる。化学修飾セルロース繊維が有する修飾基の種類及び量によっては、化学修飾セルロース繊維から脱離した修飾基に由来する成分が酸不溶成分中に含まれる場合がある。このような場合には、一態様において、化学修飾セルロース繊維から修飾基を脱離反応により脱離した後の試料を酸不溶成分含有率の測定に供する。例えば、修飾基がエステル基(例えばアセチル基)である場合、一態様において、2質量%アルカリ溶液による加水分解によって修飾基を脱離させた後の試料を用いる。
化学修飾セルロース繊維表面と樹脂との界面における酸不溶成分の存在量が少ない場合、化学修飾セルロース繊維によって強化された樹脂複合体の力学的特性が失われにくい。この観点から、化学修飾セルロース繊維の単位比表面積当たりの酸不溶成分平均含有率は、好ましくは、1.0質量%・g/m2以下、又は0.6質量%・g/m2以下、又は0.5質量%・g/m2以下、又は0.4質量%・g/m2以下、又は0.2質量%・g/m2以下である。酸不溶成分平均含有率は低いほど好ましく、好ましくは0質量%・g/m2である。化学修飾セルロース繊維の比表面積は、比表面積・細孔分布測定装置(例えばカンタクローム・インスツルメンツ社製)にて、化学修飾セルロース繊維の多孔質シート試料に対する液体窒素の沸点における窒素ガスの吸着量を、相対蒸気圧(P/P0)0.05以上0.2以下の範囲にて5点測定した後(多点法)、同装置のプログラムによりBET比表面積として算出することができる。
化学修飾セルロース繊維のα−セルロース含有率は、化学修飾セルロース繊維及びこれを含む樹脂複合体の耐熱性及び耐変色性の観点から、好ましくは、90質量%以上、又は91質量%以上、又は92質量%以上、又は93質量%以上、又は94質量%以上であり、最も好ましくは100質量%であるが、セルロース原料の入手容易性の観点から、α−セルロース含有率は、例えば98質量%以下、又は96質量%以下であってもよい。α−セルロース含有率は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載のα−セルロース含有率測定法により求めることができる。
セルロースの結晶形としては、I型、II型、III型、IV型等が知られており、その中でも特にI型及びII型は汎用されており、III型、IV型は実験室スケールでは得られているものの工業スケールでは汎用されていない。化学修飾セルロース繊維としては、構造上の可動性が比較的高く、化学修飾セルロース繊維を樹脂に分散させることにより、線熱膨張率がより低く、引っ張り又は曲げ変形時の強度及び伸びがより優れた樹脂コンポジットが得られることから、セルロースI型結晶を含有する化学修飾セルロース繊維が好ましい。
典型的な態様において、化学修飾セルロース繊維の全体は化学修飾されておらず、化学修飾前のセルロース繊維の結晶構造を保持している。例えば、化学修飾セルロース繊維をX線回折(XRD)測定したときに、セルロースI型とセルロースII型とのいずれか又は両者の結晶構造を確認できる。
セルロースI型としては1本鎖三斜晶のIα型と2本鎖単斜晶のIβ型とが知られており、天然セルロースは通常セルロースIα型とセルロースIβ型との複合結晶である。Iα型の結晶は例えば高温処理によってIβ型に不可逆的に変態させることができ、Iβ型はIα型と比べて熱力学的により安定であることが知られている。
化学修飾セルロース繊維は、化学修飾セルロース繊維及び樹脂複合体の耐熱性が良好である点で、好ましくはセルロースIβ型の結晶構造を有する。なお、化学修飾セルロース繊維がセルロースIβ型の結晶構造を有することは、固体13CNMR又は電子線回折分析において、Iβ型結晶由来のピークが観測されることによって確認される。
化学修飾セルロース繊維は、一態様において結晶化度が60%以上である。結晶化度がこの範囲にあると、化学修飾セルロース繊維自体の機械強度及び寸法安定性が高いため、化学修飾セルロース繊維を樹脂に分散してなる樹脂複合体の機械強度及び寸法安定性が高い傾向にある。また、結晶化度が高いことは非晶の量が少ないことを意味しており、非晶が熱による劣化の起点になりうることに鑑みれば、耐熱性の観点からも結晶化度が高い方が望ましい。化学修飾セルロース繊維の結晶化度は、より好ましくは、65%以上であり、又は70%であり、又は80%である。化学修飾セルロース繊維の結晶化度は高いほど好ましい傾向にあるので、上限は特に限定されないが、生産上の観点から99%が好ましい上限である。
結晶化度は、セルロースがセルロースI型結晶(天然セルロース由来)である場合には、サンプルを広角X線回折により測定した際の回折パターン(2θ/deg.が10〜30)からSegal法により、以下の式で求められる。
結晶化度(%)=[I(200)−I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
なお結晶化度は、セルロースがセルロースII型結晶(再生セルロース由来)である場合には、広角X線回折において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6°における絶対ピーク強度h0 とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1 とから、下記式によって求められる。
結晶化度(%) =h1 /h0 ×100
化学修飾セルロース繊維の数平均繊維径は、樹脂複合体の耐熱性の観点から、好ましくは、下限は10nm以上、又は20nm以上、又は30nm以上、又は40nm以上、又は50nm以上であり、上限は1000nm以下、又は800nm以下、又は500nm以下、又は300nm以下である。化学修飾セルロース繊維の長さ/径比率(L/D比)は、一態様において30以上であり、好ましくは、100以上、又は200以上、又は300以上、又は500以上である。
一態様において、化学修飾セルロース繊維は、繊維径が1000nm以下である微細成分と繊維径が1000nm超である粗大成分とを含む。化学修飾セルロース繊維は、本開示の全光透過率を満たす限度において、繊維径が1000nm超である粗大成分を含んでよい。一態様において、粗大成分はラメラ構造を有する。ラメラ構造はセルロース分子の規則的な配列によって構成されており、このようなラメラ構造を有する粗大成分は樹脂複合体の物性を大きく損なうことがない。ラメラ構造は、一態様において、用いるセルロース原料に由来する。例えば、コットンリンター、バクテリアセルロース等は、ラメラ構造を多く含むことから、これらに由来する化学修飾セルロース繊維はラメラ構造を含み得る。
化学修飾セルロース繊維中の上記微細成分の比率は、好ましくは、60質量%以上、又は70質量%以上、又は80質量%以上、又は90質量%以上、又は100質量%であり、上記粗大成分の比率は、好ましくは、40質量%以下、又は30質量%以下、又は20質量%以下、又は10質量%以下、又は0質量%である。上記粗大成分の比率は、希薄な分散液を任意の開口径又は幅を有するスクリーンで濾過して回収して求めることができる。
化学修飾セルロース繊維フィルム、及び原料セルロースの小角X線散乱測定により求められるフィブリル間隔は、樹脂複合体中での化学修飾セルロース繊維の良好な分散の観点から、好ましくは、10nm以上、又は12nm以上、又は14nm以上、又は16nm以上、又は18nm以上であり、樹脂複合体の物性向上効果を良好に得る観点から、好ましくは、50nm以下、又は40nm以下、又は30nm以下、又は20nm以下である。
小角X線散乱測定は、以下の方法で行うことができる。
装置:ナノスケールX線構造評価装置Nanopix(リガク製)
X線波長:0.154nm
光学系:ポイントコリメーション(1st0.55mmφ、2nd Open、Guard0.35mmφ)
検出器:HyPix−6000(2次元半導体検出器)
カメラ長:SAXS_1312m
露光時間:10min/1試料
試料周りの環境:SAXS_大気、DMSOに浸漬
化学修飾セルロース繊維の熱分解開始温度(TD)は、車載用途等で望まれる耐熱性及び機械強度を発揮できるという観点から、好ましくは、270℃以上、又は275℃以上、又は280℃以上、又は285℃以上である。熱分解開始温度は高いほど好ましいが、化学修飾セルロース繊維の製造容易性の観点から、例えば、320℃以下、又は300℃以下であってもよい。
本開示で、TDとは、図1の説明図に示すように、熱重量(TG)分析における、横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた値である(尚、図1(B)は図1(A)の拡大図である。)。化学修飾セルロース繊維の150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度(T1%)と2wt%重量減少時の温度(T2%)とを通る直線を得る。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度をTDと定義する。
1%重量減少温度(T1%)は、上記TDの手法で昇温を続けた際の、150℃の重量を起点とした1%重量減少時の温度である。
化学修飾セルロース繊維の250℃重量減少率(T250℃)は、TG分析において、化学修飾セルロース繊維を250℃、窒素フロー下で2時間保持した時の重量減少率である。
化学修飾セルロース繊維の原料となるセルロース繊維(すなわちセルロース原料)としては、天然セルロースを用いることができる。天然セルロースとしては、木材種(広葉樹又は針葉樹)から得られる木材パルプ、非木材種(綿、竹、麻、バガス、ケナフ、コットンリンター、サイザル、ワラ等)から得られる非木材パルプ、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌)、微生物産生物等を起源としたセルロース繊維集合体を使用できる。藻類及び微生物が産出するセルロースはIα型が主たる結晶構造であることが知られているが、Iβ型の結晶構造を含んでいればよい。これらの原料は、必要に応じて、グラインダー、リファイナー等の機械力による叩解、フィブリル化、微細化による繊維径、繊維長、フィブリル化度等の調整、薬品を用いた漂白又は精製、セルロース以外の成分(リグニン、ヘミセルロース等)の含有率の調整等がされたものであってよい。
セルロース原料が天然セルロースである場合、当該原料のα−セルロース含有率は、化学修飾セルロース繊維の生産効率及び精製効率(すなわち化学修飾セルロース繊維の純度)、並びに樹脂複合体の物理特性の観点から、好ましくは、85質量%以上、又は90質量%以上、又は95質量%以上である。
セルロース原料中のアルカリ可溶多糖類(特にヘミセルロース)の含有率は少ない方が好ましい。セルロース繊維の化学修飾のために用いる修飾化剤はアルカリ可溶多糖類との副反応で消費され、副反応物が化学修飾後のセルロース繊維中に残存することがある。これは製造プロセス上の収率低下、品質管理の難化をもたらす他、樹脂複合体製造時の加熱による黄変の原因となる。このような観点から、セルロース原料に含まれるアルカリ可溶多糖類(特にヘミセルロース)の含有率は、好ましくは、13質量%以下、又は12質量%以下、又は11質量%以下、又は10質量%以下、又は8質量%以下、又は5質量%以下である。セルロース原料中のアルカリ可溶多糖類(特にヘミセルロース)の含有率は、最も好ましくは0質量%であるが、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば3質量%以上、又は6質量%以上であってもよい。
アルカリ可溶多糖類比率が小さい点で、セルロース原料としては、コットンリンターが特に好ましい。
セルロース原料中の酸不溶成分(特にリグニン)の含有率は少ない方が好ましい。セルロース繊維の化学修飾のために用いる修飾化剤は酸不溶成分との副反応で消費され、副反応物が化学修飾後のセルロース繊維中に残存することがある。これは製造プロセス上の収率低下、品質管理の難化をもたらす他、樹脂複合体製造時の加熱による黄変の原因となる。このような観点から、セルロース原料に含まれる酸不溶成分の含有率は、好ましくは、10質量%未満、又は8質量%以下、又は7質量%以下、又は6質量%以下、又は5質量%以下である。セルロース原料中の酸不溶成分の含有率は、最も好ましくは0質量%であるが、セルロース原料の入手容易性の観点から、例えば1質量%以上、又は2質量%以上、又は3質量%以上、又は4質量%以上であってもよい。
セルロース原料を解繊及び化学修飾することによって、本実施形態の化学修飾セルロース繊維を製造できる。化学修飾セルロース繊維は、これに限定されないが、例えば、セルロース原料を、非プロトン性溶媒を含む分散液中で解繊してセルロース繊維を得ることと、修飾化剤を含む溶液を該分散液に加えて該セルロース繊維を修飾することと、を含む方法によって製造できる。これらの解繊と化学修飾の工程は順序を問わない。セルロース原料を解繊した後に化学修飾を行ってもよく、化学修飾したセルロース原料を解繊してもよく、化学修飾と解繊とを同時に行ってもよい。
解繊の方法は特に限定されないが、解繊の処理条件(剪断場を与える方法、剪断場の大きさ等)を高効率にすることが好ましい。例えば、セルロース純度(具体的にはα−セルロース含有率)が85質量%以上のセルロース原料に、非プロトン性溶媒を含む解繊用溶液を含浸させる場合、セルロースの膨潤が短時間で起こり、わずかな攪拌と剪断エネルギーとを与えるだけでセルロースを微細化でき好ましい。また、解繊前にセルロース原料をアルカリ、酸、膨潤性の無機塩水溶液等で前処理して、化学修飾セルロース繊維の結晶構造及び長さ/径比率(L/D比)を好適な範囲から逸脱させず、セルロース原料の特に表面の結晶性を若干低下させることも、本実施形態の化学修飾セルロース繊維を得る上で好ましい。
解繊には、例えば、遊星ボールミル及びビーズミルのような衝突剪断が加わる装置、ディスクリファイナー及びグラインダーのようなセルロースのフィブリル化を誘因する回転剪断場が加わる装置、各種ニーダー及びプラネタリーミキサーのような混練、撹拌及び分散の機能を高効率で実施可能な装置、回転式ホモジナイジングミキサー、等を用いることができる。
非プロトン性溶媒としては、例えば、アルキルスルホキシド類、アルキルアミド類、ピロリドン類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
アルキルスルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のジC1−4アルキルスルホキシド等が挙げられる。
アルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド等のN,N−ジC1−4アルキルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド等のN,N−ジC1−4アルキルアセトアミド等が挙げられる。
ピロリドン類としては、例えば、2−ピロリドン、3−ピロリドン等のピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のN−C1−4アルキルピロリドン等が挙げられる。
これらの非プロトン性溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの非プロトン性溶媒(括弧内の数字はドナー数)のうち、DMSO(29.8)、DMF(26.6)、DMAc(27.8)、NMP(27.3)等、特に、DMSOを用いれば、熱分解開始温度が高い(すなわち耐熱性に優れる)化学修飾セルロース繊維を効率的に製造することができ好ましい。この作用機序は必ずしも明らかではないが、非プロトン性溶媒中でのセルロース原料の均質なミクロ膨潤に起因するものと推察される。
セルロース原料が非プロトン性溶媒中で膨潤する際、非プロトン性溶媒が当該セルロース原料を構成するフィブリルに素早く浸透し膨潤することでミクロフィブリル間隔が拡がり、機械解繊され易い微解繊状態となる。この状態を作り出した後、化学修飾を行うことで、セルロース繊維の全体で均質に化学修飾を進行させることができると推察される。また、このミクロフィブリル化された化学修飾セルロース繊維は高い結晶化度を維持しており、樹脂と複合化されたときに高い機械特性と優れた寸法安定性(特に、線熱膨張率の著しい低下)とを与えることができる。
化学修飾は、セルロース原料の解繊前、解繊中又は解繊後にセルロースの水酸基を修飾化剤によって置換することによって実施できる。修飾化剤としては、セルロースの水酸基と反応する化合物を使用できる。化学修飾セルロース繊維における修飾基は、好ましくは疎水性基である。疎水性基としては、アルキル基、アリール基、エステル基、エーテル基、ヘミアセタール基、アセタール基、シリル基などが挙げられ、化学修飾セルロース繊維の吸湿性及び/又は吸水性を未修飾のセルロース繊維よりも低下させる修飾基が好ましい。修飾化剤としては、修飾基(好ましくは疎水性基)を導入するのに好適である点で、エステル化剤、エーテル化剤、ヘミアセタール化剤、カルバメート化剤、及びシリル化剤が好ましく挙げられる。エステル化剤としては、酸ハロゲン化物、酸無水物、及びカルボン酸ビニルエステルが好ましい。エーテル化剤としてはハロゲン化アルキル、環状エーテル、p−トルエンスルホン酸エステルなどが挙げられる。ヘミアセタール化剤としては、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。カルバメート化剤としてはイソシアネート類が挙げられる。シリル化剤としてはクロロシラン類、アルコキシシラン類、ジシラザン類が挙げられる。これらの修飾化剤は、一分子中に複数の結合形成部位を有していてもよい。
修飾化剤としてはエステル化剤が特に好ましい。
酸ハロゲン化物は、下記式(1)で表される化合物からなる群より選択された少なくとも1種であってよい。
R1−C(=O)−X (1)
(式中、R1は炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数3〜24のシクロアルキル基、又は炭素数6〜24のアリール基を表し、XはCl、Br又はIである。)
酸ハロゲン化物の具体例としては、塩化アセチル、臭化アセチル、ヨウ化アセチル、塩化プロピオニル、臭化プロピオニル、ヨウ化プロピオニル、塩化ブチリル、臭化ブチリル、ヨウ化ブチリル、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ヨウ化ベンゾイル等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、酸塩化物は反応性と取り扱い性の点から好適に採用できる。尚、酸ハロゲン化物の反応においては、触媒として働くと同時に副生物である酸性物質を中和する目的で、アルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。アルカリ性化合物としては、具体的には:トリエチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン化合物;及びピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物;が挙げられるが、これに限定されない。
酸無水物としては、任意の適切な酸無水物類を用いることができる。例えば、酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、吉草酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸無水物;シクロヘキサンカルボン酸、テトラヒドロ安息香酸等の脂環族モノカルボン酸無水物;安息香酸、4−メチル安息香酸等の芳香族モノカルボン酸無水物;二塩基カルボン酸無水物として、例えば、無水コハク酸、アジピン酸等の無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、無水1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸等の無水脂環族ジカルボン酸、及び、無水フタル酸、無水ナフタル酸等の無水芳香族ジカルボン酸無水物等;3塩基以上の多塩基カルボン酸無水物類として、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の(無水)ポリカルボン酸等が挙げられる。尚、酸無水物の反応においては、触媒として、硫酸、塩酸、燐酸等の酸性化合物、又は金属塩化物、金属トリフラート等のルイス酸、又はトリエチルアミン、ピリジン等のアルカリ性化合物を1種又は2種以上添加してもよい。
カルボン酸ビニルエステルとしては、下記式(2):
R−COO−CH=CH2 …式(2)
{式中、Rは、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数3〜24のシクロアルキル基、又は炭素数6〜24のアリール基である。}で表されるカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルアジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、安息香酸ビニル、及び桂皮酸ビニルからなる群より選択された少なくとも1種であることがより好ましい。また、ビニル基の水素原子の1つがメチル基で置換されたカルボン酸イソプロペニルエステルも同様に用いることができる。カルボン酸ビニルエステルによるエステル化反応のとき、触媒としてアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上を添加しても良い。
アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。
1〜3級アミン(すなわち、1級アミン、2級アミン、及び3級アミン)の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチルアミン、プロリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、トリス(3−ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
イミダゾール及びその誘導体としては、1−メチルイミダゾール、3−アミノプロピルイミダゾール、カルボニルジイミダゾール等が挙げられる。
ピリジン及びその誘導体としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ピコリン等が挙げられる。
アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
これらエステル化反応剤の中でも、特に、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及び酪酸ビニルからなる群から選択された少なくとも一種、中でも無水酢酸及び酢酸ビニルが、反応効率の観点から好ましい。
化学修飾セルロース繊維の修飾基は、好ましくは、炭素数2以上のアシル基から選ばれる1種以上の基であり、より好ましくはアセチル基である。
例えば上記したような解繊及び化学修飾の手順によって、本実施形態の化学修飾セルロース繊維を得ることができる。
化学修飾セルロース繊維の修飾基の種類は、反射型赤外吸収スペクトルで確認できる。反射型赤外吸収スペクトルにおいては、化学修飾基の種類により吸収バンドのピーク位置が変化する。このピーク位置の変化から、当該ピークが何の吸収バンドに基づくものかを確定でき、化学修飾基を同定できる。また、化学修飾基由来のピークとセルロース骨格由来のピークとのピーク強度比から修飾化率を算出することもできる。例えば、化学修飾基がアシル基であれば、アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピークは1730cm-1に出現し、セルロース骨格鎖に基づくC−Hの吸収バンドのピークが1370cm-1、セルロース骨格鎖に基づくC−Oの吸収バンドのピークが1030cm-1の付近に出現する(図2参照)。
化学修飾セルロース繊維の化学修飾基がアシル基である場合、減衰全反射型赤外吸収スペクトルにおけるセルロース骨格鎖に基づくC−Hの吸収バンドのピーク強度(高さ)に対する化学修飾基に基づく吸収バンドのピーク強度(アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク高さ)の比率(化学修飾基に基づく吸収バンドのピーク高さ/セルロース骨格鎖C−Hに基づく吸収バンドのピーク高さ)で定義される修飾度(修飾化率)(IRインデックス1370)は、好ましくは0.28以上、1.8以下である。IRインデックス1370が0.28以上である場合、熱分解開始温度が高く耐熱性が良好な化学修飾セルロース繊維を得ることができる。一方、1.8以下である場合、化学修飾セルロース繊維中に未修飾のセルロース骨格が残存するため、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性と化学修飾構造由来の高い熱分解開始温度とを兼ね備えた化学修飾セルロース繊維を得ることができる。IRインデックス1370は、より好ましくは、0.44以上、又は0.50以上、又は0.56以上、又は0.77以上、又は0.87以上であり、より好ましくは、1.68以下、又は1.50以下、又は1.31以下、又は1.17以下である。
化学修飾セルロース繊維の化学修飾基がアシル基である場合、セルロース骨格鎖に基づくC−Oの吸収バンドのピーク強度(高さ)に対する化学修飾基に基づく吸収バンドのピーク強度(アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク高さ)の比率(化学修飾基に基づく吸収バンドのピーク高さ/セルロース骨格鎖C−Oの吸収バンドのピーク高さ)で定義される修飾度(修飾化率)(IRインデックス1030)は、好ましくは0.024以上、0.48以下である。IRインデックス1030が0.024以上であれば、熱分解開始温度が高く耐熱性が良好な化学修飾セルロース繊維を得ることができる。一方、0.48以下であると、化学修飾セルロース繊維中に未修飾のセルロース骨格が残存するため、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性と化学修飾構造由来の高い熱分解開始温度とを兼ね備えた化学修飾セルロース繊維を得ることができる。IRインデックス1030は、より好ましくは、0.048以上、又は0.061以上、又は0.073以上、又は0.13以上、又は0.15以上であり、又は0.44以下、又は0.36以下、又は0.30以下、又は0.25以下である。
化学修飾セルロース繊維の水酸基の平均置換度(セルロースの基本構成単位であるグルコース当たりの置換された水酸基の平均数)は、繊維径と化学修飾剤の種類とにより変わり得る。平均置換度は、0.1以上2.0以下が好ましい。一態様において、水酸基の平均置換度は、0.5以上である。耐熱性の観点から、平均置換度は高い方が望ましいが、平均置換度が高すぎると、化学修飾セルロース繊維の結晶化度が低下して化学修飾セルロース繊維の力学的強度が低下し、又は収率が低下するおそれがある。平均置換度は、より好ましくは、0.2以上、又は0.25以上、又は0.3以上、又は0.5以上であり、より好ましくは、1.8以下、又は1.5以下、又は1.2以下、又は1.0以下である。
化学修飾セルロース繊維の化学修飾基がアシル基である場合、平均置換度(DS)は、減衰全反射型で測定したIRスペクトルにおけるセルロース骨格鎖C−Hの吸収バンドのピーク強度(高さ)に対する化学修飾基に基づく吸収バンドのピーク強度(アシル基に基づくC=Oの吸収バンドのピーク高さ)の比率(化学修飾基に基づく吸収バンドのピーク高さ/セルロース骨格鎖C−Oの吸収バンドのピーク高さ)で定義される修飾化率(IRインデックス)から、下記式で算出される。
DS=4.13×IRインデックス1030
具体的には、図3を参照し、1030cm-1のピーク強度については、820cm-1付近と1530cm-1付近との他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、1030cm-1におけるベースラインの高さを1030cm-1のピーク高さから差し引いた値を読み取るものとする。1730cm-1のピーク強度については、1550cm-1付近と1850cm-1付近との他のピークがない位置を直線で結んだベースラインを引き、1730cm-1におけるベースラインの高さを1030cm-1のピーク高さから差し引いた値を読み取るものとする。
化学修飾セルロース繊維の繊維全体の修飾度(DSt)に対する繊維表面の修飾度(DSs)の比率で定義されるDS不均一比(DSs/DSt)は、好ましくは1.05以上である。DS不均一比の値が大きいほど、鞘芯構造様の不均一構造(すなわち、繊維表層が高度に化学修飾される一方で繊維中心部が元の未修飾に近いセルロースの構造を保持している構造)が顕著であり、セルロース由来の高い引張強度及び寸法安定性を有しつつ、樹脂との複合化時の樹脂との親和性の向上、及び樹脂複合体の寸法安定性の向上が可能である。DS不均一比は、より好ましくは、1.1以上、又は1.2以上、又は1.5以上であり、化学修飾セルロース繊維の製造容易性の観点から、好ましくは、6以下、又は4以下、又は3以下である。
DSs及びDStのそれぞれの値は、化学修飾セルロース繊維の修飾度に応じて変わるが、一例として、DSsの好ましい範囲としては、0.5以上3.0以下、DStの好ましい範囲としては、0.1以上2.0以下である。
化学修飾セルロース繊維のDS不均一比の変動係数(CV)は、小さいほど、樹脂複合体の各種物性のバラつきが小さくなるため好ましい。上記変動係数は、好ましくは、50%以下、又は40%以下、又は30%以下、又は20%以下である。上記変動係数は、例えば、セルロース原料を解繊した後に化学修飾を行って化学修飾セルロース繊維を得る方法(すなわち逐次法)ではより低減され得る一方、セルロース原料の解繊と化学修飾とを同時に行う方法(すなわち同時法)では増大され得る。この作用機序は明確になっていないが、同時法では、解繊の初期に生成した細い繊維において化学修飾がより進行しやすく、そして、化学修飾によってセルロースミクロフィブリル間の水素結合が減少すると解繊がさらに進行する結果、DS不均一比の変動係数が増大すると考えられる。
DS不均一比の変動係数(CV)は、化学修飾セルロース繊維の水分散体(固形分率10質量%以上)を100g採取し、10gずつ凍結粉砕したものを測定サンプルとし、10サンプルのDSt及びDSsからDS不均一比を算出した後、得られた10個のサンプル間でのDS不均一比の標準偏差(σ)及び算術平均(μ)から、下記式で算出できる。
DS不均一比=DSs/DSt
変動係数(%)=標準偏差σ/算術平均μ×100
DStは、凍結粉砕した化学修飾セルロース繊維について13C固体NMR測定を行い、50ppmから110ppmの範囲に現れるセルロースのピラノース環由来の炭素C1−C6に帰属されるシグナルの合計面積強度(Inp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるシグナルの面積強度(Inf)より、下記式で求めることができる。
DSt=(Inf)×6/(Inp)
例えば、修飾基がアセチル基である場合、−CH3に帰属される23ppmのシグナルを用いれば良い。
用いる13C固体NMR測定の条件は例えば以下の通りである。
装置 :Bruker Biospin Avance500WB
周波数 :125.77MHz
測定方法 :DD/MAS法
待ち時間 :75sec
NMR試料管 :4mmφ
積算回数 :640回(約14Hr)
MAS :14,500Hz
化学シフト基準:グリシン(外部基準:176.03ppm)
DSsは、13C固体NMR測定で使用した化学修飾セルロース繊維の粉末サンプルを2.5mmφの皿状試料台に載せ、表面を抑えて平らにし、X線光電子分光法(XPS)により測定する。XPSスペクトルは、サンプルの表層のみ(典型的には数nm程度)の構成元素及び化学結合状態を反映する。得られたC1sスペクトルについてピーク分離を行い、セルロースのピラノース環由来の炭素C2−C6に帰属されるピーク(289eV、C−C結合)の面積強度(Ixp)に対する修飾基由来の1つの炭素原子に帰属されるピークの面積強度(Ixf)より、下記式で求めることができる。
DSs=(Ixf)×5/(Ixp)
例えば、修飾基がアセチル基である場合、C1sスペクトルを285eV、286eV、288eV、289eVでピーク分離した後、Ixpには289evのピークを、Ixfにはアセチル基のO−C=O結合由来のピーク(286eV)を用いれば良い。
用いるXPS測定の条件は例えば以下の通りである。
使用機器 :アルバックファイVersaProbeII
励起源 :mono.AlKα 15kV×3.33mA
分析サイズ :約200μmφ
光電子取出角 :45°
取込領域
Narrow scan:C 1s、O 1s
Pass Energy:23.5eV
<樹脂複合体>
本実施形態の化学修飾セルロース繊維は、樹脂複合体に好適に適用できる。本発明の一態様は、本開示の化学修飾セルロース繊維と樹脂とを含む樹脂複合体を提供する。樹脂複合体は、その他の成分(例えば無機充填材)をさらに含んでよい。本実施形態の樹脂複合体中の、化学修飾セルロース繊維の含有量は、耐熱性に優れる樹脂複合体を得るという観点から、好ましくは0.5〜40質量%、より好ましくは2〜30質量%であり、さらに好ましくは3〜20質量%である。
樹脂複合体から、化学修飾セルロース繊維を取り出す方法としては、樹脂溶解剤を用いて樹脂成分を抽出した後、精製、洗浄を経ることで、化学修飾セルロース繊維を乾燥体又は水分散体として、その特性を損なうことなく取り出す方法が挙げられる。樹脂溶解剤としては、例えば、ポリオレフィンに対しては1,2,4−トリクロロベンゼン又は1,2−ジクロロベンゼン、ポリアミドに対してはヘキサフルオロ−2−イソプロパノール、等が挙げられるが、樹脂溶解剤はこれらに限定されるものではない。
樹脂複合体中の化学修飾セルロース繊維では、水素結合による凝集が無修飾のセルロース繊維に比べて抑制されている。よって、化学修飾セルロース繊維と樹脂との混合工程において、化学修飾セルロース繊維同士の凝集が抑制され、化学修飾セルロース繊維が樹脂中で均一に分散され、機械強度、耐熱性、寸法安定性及び外観に優れた、化学修飾セルロース繊維を含む繊維強化樹脂複合体を得ることができる。特に、本実施形態の化学修飾セルロース繊維を含有する樹脂複合体は、曲げ試験等の静的特性と、衝撃試験等の動的特性とがバランス良く向上されたものであることができる。
[樹脂]
本実施形態の樹脂複合体中の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を用いることができる。樹脂はエラストマーであってもよい。樹脂は1種又は2種以上のブレンドで使用でき、ブレンドの場合のブレンド比は用途に応じて適宜選択してよい。
樹脂複合体中の樹脂(マトリクス樹脂)の含有率は、60〜99.5質量%であることができ、80〜90質量%がより好ましい。樹脂含有率が60質量%以上であれば、熱安定性(例えば線熱膨張率の低減、及び高温時の弾性保持)を発揮するのに有効であり、99.5質量%以下であれば、樹脂複合体に対して、高弾性率化、熱膨張率の低減等の機能を付与することが可能である。
(熱可塑性樹脂)
樹脂が熱可塑性樹脂である場合の当該熱可塑性樹脂の融点は、樹脂複合体の用途等に応じて適宜選択してよい。熱可塑性樹脂の融点としては、例えば比較的低融点の樹脂(例えばポリオレフィン系樹脂)について、150℃〜190℃、又は160℃〜180℃、また例えば比較的高融点の樹脂(例えばポリアミド系樹脂)について、220℃〜350℃、又は230℃〜320℃、を例示できる。
熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリアセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることができる。
熱可塑性樹脂として好ましいポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えばα−オレフィン類)及び/又はアルケン類をモノマー単位として重合して得られる高分子である。ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(例えば線状低密度ポリエチレン)、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等に例示されるエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体等に例示されるポリプロピレン系(共)重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等に代表されるエチレンとα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
ここで最も好ましいポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンが挙げられる。特に、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されたメルトマスフローレイト(MFR)が、3g/10分以上30g/10分以下であるポリプロピレンが好ましい。MFRの下限値は、より好ましくは5g/10分であり、さらにより好ましくは6g/10分であり、最も好ましくは8g/10分である。また、上限値は、より好ましくは25g/10分であり、さらにより好ましくは20g/10分であり、最も好ましくは18g/10分である。MFRは、樹脂複合体の靱性向上の観点から上記上限値を超えないことが望ましく、樹脂複合体の流動性の観点から上記下限値を超えないことが望ましい。
また、セルロースとの親和性を高めるため、酸変性されたポリオレフィン系樹脂も好適に使用可能である。酸変性に用いる酸としては、モノ又はポリカルボン酸を使用でき、例えば、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸及びこれらの無水物、並びにクエン酸等を例示できる。変性率の高めやすさから、マレイン酸又はその無水物が特に好ましい。変性方法については特に制限はないが、過酸化物の存在下又は非存在下でポリオレフィン系樹脂を融点以上に加熱して溶融混練する方法が一般的である。酸変性するポリオレフィン樹脂としては前出のポリオレフィン系樹脂をすべて使用可能であるが、ポリプロピレンが特に好適である。酸変性されたポリプロピレン系樹脂は、単独で用いても構わないが、樹脂全体としての変性率を調整するため、変性されていないポリプロピレン系樹脂と混合して使用することがより好ましい。この際のすべてのポリプロピレン系樹脂に対する酸変性されたポリプロピレン系樹脂の割合は、好ましくは0.5質量%〜50質量%である。より好ましい下限は、1質量%、又は2質量%、又は3質量%、又は4質量%、又は5質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%、又は40質量%、又は35質量%、又は30質量%、又は20質量%である。樹脂とセルロースとの界面強度を維持するためには、下限以上が好ましく、樹脂としての延性を維持するためには、上限以下が好ましい。
酸変性されたポリプロピレン系樹脂の、ISO1133に準拠して230℃、荷重21.2Nで測定されるメルトマスフローレイト(MFR)は、樹脂とセルロースとの界面における親和性を高める観点から、好ましくは、50g/10分以上、又は100g/10分以上、又は150g/10分以上、又は200g/10分以上である。上限は特に限定されないが、機械的強度の維持から、好ましくは500g/10分である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアミド系樹脂としては:ラクタム類の重縮合反応により得られるポリアミド(例えばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12等);ジアミン類(例えば1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1−6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,7−ヘプタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミン等)とジカルボン酸類(例えばブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸等)との共重合体として得られるポリアミド(例えばポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12、ポリアミド6,T、ポリアミド6,I、ポリアミド9,T、ポリアミド10,T、ポリアミド2M5,T、ポリアミドMXD,6、ポリアミド6、C、ポリアミド2M5,C等);及びこれらがそれぞれ共重合された共重合体(例えばポリアミド6,T/6,I等)、が挙げられる。
これらポリアミド系樹脂の中でも、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,11、ポリアミド6,12等の脂肪族ポリアミド、及び、ポリアミド6,C、ポリアミド2M5,C等の脂環式ポリアミドがより好ましい。
樹脂複合体の耐熱性を良好にする観点から、ポリアミド系樹脂の融点は、好ましくは220℃以上、又は230℃以上、又は240℃以上、又は245℃以上、又は250℃以上であり、樹脂複合体の製造容易性の観点から、上記融点は、好ましくは、350℃以下、又は320℃以下、又は300℃以下である。
ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度に特に制限はないが、好ましくは、20μモル/g以上、又は30μモル/g以上であり、好ましくは、150μモル/g以下、又は100μモル/g以下、又は80μモル/g以下である。
ポリアミド系樹脂において、全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、化学修飾セルロース繊維の樹脂複合体中での分散性の観点から、好ましくは、0.30以上、又は0.35以上、又は0.40以上、又は0.45以上であり、樹脂複合体の色調の観点から、好ましくは、0.95以下、又は0.90以下、又は0.85以下、又は0.80以下である。
ポリアミド系樹脂の末端基濃度は、公知の方法で調整できる。調整方法としては、ポリアミドの重合時に、所定の末端基濃度となるように末端基と反応する末端調整剤(例えば、ジアミン化合物、モノアミン化合物、ジカルボン酸化合物、モノカルボン酸化合物、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル、モノアルコール等)を重合液に添加する方法が挙げられる。
末端アミノ基と反応する末端調整剤としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;及びこれらから任意に選ばれる複数の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格等の点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及び安息香酸からなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましく、酢酸が最も好ましい。
末端カルボキシル基と反応する末端調整剤としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン及びこれらの任意の混合物が挙げられる。これらの中でも、反応性、沸点、封止末端の安定性、価格等の点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンからなる群より選ばれる1種以上の末端調整剤が好ましい。
ポリアミド系樹脂のアミノ末端基及びカルボキシル末端基の濃度は、1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から求めることができる。この方法は、精度及び簡便さの点で好ましい。より具体的には、特開平7−228775号公報に記載された方法を用い、測定溶媒として重トリフルオロ酢酸を用い、積算回数を300スキャン以上とすることが推奨される。
ポリアミド系樹脂の、濃硫酸中30℃の条件下で測定した固有粘度[η]は、樹脂複合体を例えば射出成形する際に、金型内流動性が良好で成形片の外観が良好であるという観点から、好ましくは、0.6〜2.0dL/g、又は0.7〜1.4dL/g、又は0.7〜1.2dL/g、又は0.7〜1.0dL/gである。本開示において、「固有粘度」とは、一般的に極限粘度と呼ばれている粘度と同義である。固有粘度は、96%濃硫酸中、30℃の温度条件下で、濃度の異なるいくつかの測定溶媒のηsp/cを測定し、そのそれぞれのηsp/cと濃度(c)との関係式を導き出し、濃度をゼロに外挿する方法で求められる。このゼロに外挿された値が固有粘度である。上記方法の詳細は、例えば、Polymer Process Engineering(Prentice−Hall,Inc 1994)の291ページ〜294ページ等に記載されている。上記の濃度の異なるいくつかの測定溶媒における濃度は、少なくとも4点(例えば、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dL)とすることが精度の観点から望ましい。
熱可塑性樹脂として好ましいポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアリレート(PAR)等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。中でも、PET、PBS、PBSA、PBT及びPENがより好ましく、PBS、PBSA、及びPBTが特に好ましい。
ポリエステル系樹脂の末端基は、重合時のモノマー比率、末端安定化剤の添加の有無及び量、等によって任意に変えることができる。ポリエステル系樹脂の全末端基に対するカルボキシル末端基比率([COOH]/[全末端基])は、樹脂複合体中の化学修飾セルロース繊維の分散性の観点から、好ましくは、0.30以上、又は0.35以上、又は0.40であり、又は0.45であり、樹脂複合体の色調の観点から、好ましくは、0.95以下、又は0.90以下、又は0.85以下、又は0.80以下である。
熱可塑性樹脂として好ましいポリアセタール系樹脂としては、ホルムアルデヒドを原料とするホモポリアセタールと、トリオキサンを主モノマーとし、1,3−ジオキソランをコモノマー成分として含むコポリアセタールとが一般的であり、両者とも使用可能であるが、加工時の熱安定性の観点から、コポリアセタールが好ましい。コモノマー成分(例えば1,3−ジオキソラン)由来構造の量は、押出加工及び成形加工時の熱安定性の観点から、好ましくは、0.01モル%以上、又は0.05モル%以上、又は0.1モル%以上、又は0.2モル%以上であり、機械的強度の観点から、好ましくは、4モル%以下、又は3.5モル%以下、又は3.0モル%以下、又は2.5モル%以下、又は2.3モル%以下である。
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル−1,3−ジグリシジルエーテル、ビフェニル−4,4’−ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノキシ樹脂、尿素(ユリア)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環含有樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、ノルボルネン系樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
(光硬化性樹脂)
光硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、反応機構により、概ね光により発生したラジカルによりモノマーが反応するラジカル反応型と、モノマーがカチオン重合するカチオン反応型とに分類される。ラジカル反応型のモノマーには、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物(例えばある種のビニルエーテル)等が該当する。カチオン反応型としては、エポキシ化合物、ある種のビニルエーテル等が該当する。なお、例えば、カチオン反応型として用いることができるエポキシ化合物は、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の両者のモノマーとなり得る。
(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリレート基を分子内に一つ以上有する化合物である。(メタ)アクリレート化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
ビニル化合物としては、ビニルエーテル、スチレン及びスチレン誘導体等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。スチレン誘導体としては、メチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。その他のビニル化合物としては、トリアリルイソイシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
光硬化性樹脂の原料として、いわゆる反応性オリゴマーを用いてもよい。反応性オリゴマーとしては、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ウレタン結合、及びエステル結合から選ばれる任意の組合せを同一分子内に併せ持つオリゴマー、例えば、(メタ)アクリレート基とウレタン結合とを同一分子内に併せ持つウレタンアクリレート、(メタ)アクリレート基とエステル結合とを同一分子内に併せ持つポリエステルアクリレート、エポキシ樹脂から誘導され、エポキシ基と(メタ)アクリレート基とを同一分子内に併せ持つエポキシアクリレート、等が挙げられる。
(エラストマー)
エラストマー(すなわちゴム)としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、改質天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム、脱タンパク天然ゴム等)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
[追加成分]
(セルロースウィスカー)
樹脂複合体は、化学修飾セルロース繊維に加え、セルロースウィスカーをさらに含んでもよい。セルロースウィスカーは、化学修飾セルロース繊維と混合されることで化学修飾セルロース繊維の分散性を向上させ、その結果として樹脂複合体の力学的特性を向上させる。セルロースウィスカーのL/Dは、一態様において1以上30未満であり、好ましくは、1〜20、又は1〜10である。セルロースウィスカーの結晶化度は、一態様において70%以上であり、好ましくは80%以上である。セルロースウィスカーの重合度は、一態様において600以下であり、好ましくは300以下である。セルロースウィスカーは、市販品、又は、例えば木材パルプを裁断し、塩酸水溶液中で加水分解処理して得られるもの等であってよい。
(分散安定剤)
樹脂複合体は分散安定剤をさらに含んでよい。化学修飾セルロース繊維と共に、該化学修飾セルロース繊維を安定に分散させる機能を有する分散安定剤を用い、樹脂中での化学修飾セルロース繊維の分散状態を向上又は制御することによって、樹脂複合体の力学物性を向上させることができる。好ましい態様においては、化学修飾セルロース繊維が、分散安定剤と、該分散安定剤中に分散された化学修飾セルロース繊維とを含む分散体の形態で樹脂複合体中に分散されている。すなわち樹脂複合体は、好ましくは、分散安定剤中に化学修飾セルロース繊維が分散されてなるセルロース分散体が、樹脂中に分散されているものである。上記セルロース分散体中の化学修飾セルロース繊維の含有率は、好ましくは10〜90質量%である。分散安定剤は、界面活性剤、沸点160℃以上の有機化合物、及び化学修飾セルロース繊維を高度に分散可能な化学構造を有する樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることができ、好ましくは、界面活性剤、及び沸点160℃以上の有機化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
界面活性剤は、一態様において、親水性の置換基を有する部位と疎水性の置換基を有する部位とが共有結合した化学構造を有する。界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、及び陽イオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、セルロースとの親和性の点で、陰イオン系界面活性剤、及び非イオン系界面活性剤が好ましく、非イオン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤の親水基としては、セルロースとの親和性の点で、ポリオキシエチレン鎖、カルボキシル基、及び水酸基が好ましく、ポリオキシエチレン鎖が特に好ましい。非イオン系のポリオキシエチレン誘導体は特に好ましい。ポリオキシエチレン誘導体のポリオキシエチレン鎖長は、3以上、又は5以上、又は10以上、又は15以上であってよい。鎖長が長いほどセルロースとの親和性が高まるが、樹脂複合体の所望の特性(例えばコーティング性)とのバランスの観点から、ポリオキシエチレン鎖長は、60以下、又は50以下、又は40以下、又は30以下、又は20以下であってよい。
界面活性剤の疎水基の構造としては、樹脂との親和性が高い点で、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型、ロジンエステル型、ビスフェノールA型、βナフチル型、スチレン化フェニル型、及び硬化ひまし油型が好ましい。疎水基のアルキル鎖の炭素数(アルキルフェニルの場合はフェニル基を除いた炭素数)は、好ましくは、5以上、又は10以上、又は12以上、又は16以上である。例えば樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合、界面活性剤の炭素数が多いほど、樹脂との親和性が高まる。上記炭素数は、例えば30以下、又は25以下であってよい。
疎水基としては、環状構造を有するもの、又は嵩高く多官能構造を有するものがより好ましい。環状構造を有する疎水基としては、アルキルフェニルエーテル型、ロジンエステル型、ビスフェノールA型、βナフチル型、及びスチレン化フェニル型の基が好ましく、多官能構造を有するものとしては、硬化ひまし油型の基が好ましい。ロジンエステル型、及び硬化ひまし油型は特に好ましい。
また、樹脂の種類に依存するが、一態様においては、非界面活性剤系の分散安定剤として、沸点160℃以上の有機化合物が有効である。当該有機化合物としては、樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合、流動パラフィン、デカリン等の高沸点有機溶媒が有効である。また、樹脂がナイロン系樹脂及びポリアセテート系樹脂のような極性樹脂の場合には、化学修飾セルロース繊維を製造する際に使用できる非プロトン性溶媒と同様の溶媒、例えば、シメチルスルホキシドを使用することが有効な場合がある。
分散安定剤の樹脂複合体中の量は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択され、例えば0.01〜50質量%、又は0.1〜30質量%であってよい。
(その他の成分)
樹脂複合体には、その他の追加成分として、例えば、化学修飾セルロース繊維以外の高耐熱性の有機ポリマーからなる繊維フィラー成分(例えば、アラミド繊維のフィブリル化繊維又は繊維);相溶化剤;可塑剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;ゼオライト、セラミックス、タルク、シリカ、金属酸化物、金属粉末等の無機化合物;着色剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤等の添加剤を配合してもよい。任意の添加剤の樹脂複合体中の含有割合は、本発明の所望の効果が損なわれない範囲で適宜選択されるが、例えば0.01〜50質量%、又は0.1〜30質量%であってよい。
樹脂複合体は、化学修飾セルロース繊維とベース樹脂とを混合し、熱溶融混練、熱硬化、光硬化、加硫等を行うことにより製造できる。更に、その樹脂複合体を成形することにより各種形状の成形体を製造できる。なお、化学修飾セルロース繊維を樹脂複合体製造において添加する際の形態は、特に限定されず、乾燥粉体だけでなく水を含むスラリー状であっても良い。水を含むスラリーは、上述した化学修飾セルロース繊維の製造方法の乾燥過程の途中で乾燥を中止する方法、一度乾燥させた後、水を添加する方法等によって調製できる。
一態様において、樹脂が熱可塑性樹脂である場合の樹脂複合体の製造方法は、化学修飾セルロース繊維を、乾燥粉末又は水分散体の形態で、熱可塑性樹脂と溶融混練成形機の内部で混練し、次いで成形する工程を含む。
別の一態様において、樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合の樹脂複合体の製造方法は、化学修飾セルロース繊維を熱硬化性樹脂と混合し、次いで成形し、次いで熱硬化処理を行う工程、又は化学修飾セルロース繊維を光硬化性樹脂と混合し、次いで成形し、次いで光硬化処理を行う工程、を含む。
別の一態様において、樹脂がエラストマーである場合の樹脂複合体の製造方法は、化学修飾セルロース繊維を原料ゴムと混合し、次いで成形し、次いで加硫を行う工程を含む。化学修飾セルロース繊維と原料ゴムとの混合方法としては、ベンチロール、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー等の混練機により混練する方法、攪拌羽により混合する方法、公転・自転方式の攪拌機により混合する方法等が挙げられる。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合の樹脂複合体のより具体的な製造方法としては、特に制限はないが、例えば、
1.単軸又は二軸押出機を用いて、化学修飾セルロース繊維(乾燥粉末又は水分散体)と熱可塑性樹脂との混合物を溶融混練した後、
(1)ストランド状に押出し、水浴中で冷却固化させ、樹脂複合体のペレット状成形体を得る方法、
(2)棒状又は筒状に押出し冷却して、樹脂複合体の押出成形体を得る方法、若しくは
(3)Tダイより押出し、樹脂複合体のシート状又はフィルム状成形体を得る方法、又は
2.化学修飾セルロース繊維(乾燥粉末又は水分散体)と熱可塑性樹脂モノマーとを混合し、重合反応(具体的には固相重合、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等)を行い、得られた生成物を、上記(1)〜(3)のいずれかの方法で押出して、樹脂複合体の成形体を得る方法、
等が挙げられる。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱可塑性樹脂供給業者が推奨する最低加工温度は、ナイロン66では255〜270℃、ナイロン6では225〜240℃、ポリアセタール樹脂では170℃〜190℃、ポリプロピレンでは160〜180℃である。加熱設定温度は、これらの推奨最低加工温度より20℃高い温度の範囲が好ましい。混合温度をこの温度範囲とすることにより、化学修飾セルロース繊維と樹脂とを均一に混合することができる。
樹脂複合体の水分率は特に制限はないが、例えば樹脂がポリアミドである場合、溶融時のポリアミドの分子量上昇を抑える観点から、例えば10ppm以上であってよく、溶融時のポリアミドの加水分解を抑える観点から、例えば1200ppm以下、又は900ppm以下、又は700ppm以下であってよい。上記水分率は、ISO 15512に準拠した方法でカールフィッシャー水分計を用いて測定される値である。
樹脂複合体は、ペレット状、シート状、繊維状、板状、棒状等、種々の形態の成形体であってよい。ペレット形状は、後加工及び運搬が容易である点で好ましい。好ましいペレット形状としては、丸型、楕円型、円柱型等が挙げられる。ペレット形状は押出加工時のカット方式により異ならせることができる。アンダーウォーターカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは、丸型になることが多く、ホットカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは丸型又は楕円型になることが多く、ストランドカットと呼ばれるカット方法で切断されたペレットは円柱状になることが多い。丸型ペレットの場合の好ましい大きさは、ペレット直径として1mm以上3mm以下である。また、円柱状ペレットの場合、好ましい直径は1mm以上3mm以下であり、好ましい長さは2mm以上10mm以下である。上記の直径及び長さは、押出時の運転安定性の観点から、下限以上とすることが望ましく、後加工での成形機への噛み込み性の観点から、上限以下とすることが望ましい。
樹脂が熱可塑性樹脂である場合、例えば、射出成形(射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形等)、押出成形(コールドランナー方式、又はホットランナー方式)、異形押出成形(二色成形、サンドイッチ成形、及び超高速射出成形等の射出成形)、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、等によって、樹脂複合体をシート、フィルム、繊維等の形状に成形できる。また、シート又はフィルムの成形にはインフレーション法、カレンダー法、キャスティング法等も用いることができる。特定の延伸操作によって熱収縮チューブとして成形してもよい。回転成形又はブロー成形等により中空成形品とすることも可能である。射出成形法は、デザイン性とコストの観点から最も好ましい。
樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合、例えば、樹脂溶液又は樹脂粉末分散体中に化学修飾セルロース繊維を十分に分散させて乾燥する方法、樹脂モノマー液中に化学修飾セルロース繊維を十分に分散させて熱、UV照射、重合開始剤等によって重合する方法、化学修飾セルロース繊維からなる成形体(例えば、シート、粉末粒子成形体等)に樹脂溶液又は樹脂粉末分散体を十分に含浸させて乾燥する方法、化学修飾セルロース繊維からなる成形体に樹脂モノマー液を十分に含浸させて熱、UV照射、重合開始剤等によって重合する方法等によって、樹脂複合体を製造できる。硬化に際し、種々の重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤等を配合することができる。
樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合、例えば樹脂成形体として板状製品を得る方法としては、押出成形、平面プレス、異形押出成形、ブロー成形、圧縮成形、真空成形、射出成形等を例示でき、フィルム状製品を得る方法としては、溶融成形(例えばインフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等)、溶液キャスト等を例示できる。
樹脂が熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂である場合、未硬化又は半硬化のプリプレグと呼ばれるシートを作製した後、プリプレグを単層又は積層にして、加圧及び加熱によって樹脂を硬化及び成形する方法を用いてよい。加圧及び加熱の方法としては、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法、内圧成形法等が挙げられる。
さらに、炭素繊維等の強化繊維のフィラメント又はプリフォームに樹脂硬化前の樹脂複合体を含浸させた後、当該樹脂を硬化させて成形物を得る方法(例えば、RTM、VaRTM、フィラメントワインディング、RFI等の成形方法)を用いてもよい。
樹脂が光硬化性樹脂である場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて成形体を製造できる。
樹脂がエラストマーである場合、化学修飾セルロース繊維と原料ゴムとを乾式で混練する方法、化学修飾セルロース繊維と原料ゴムとを分散媒中に分散又は溶解させた後、乾燥させて混合する方法等によって、樹脂複合体を製造できる。混合方法としては、高い剪断力と圧力とをかけ、分散を促進できる点で、ホモジナイザーによる混合方法が好ましいが、その他、プロペラ式攪拌装置、ロータリー攪拌装置、電磁攪拌装置、手動による攪拌、等の方法を用いることもできる。エラストマーを含む樹脂複合体を、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等の所望の成形方法を用いて成形し、シート、ペレット、粉末等の所望の形状の未加硫の成形体を得ることができる。未加硫の成形体を、必要に応じて熱処理等で加硫して、樹脂成形体を得ることができる。
熱可塑性樹脂又はエラストマーを含む樹脂成形体は、その一部(例えば数箇所)を加熱処理して溶融させ、例えば樹脂又は金属の基板に接着して用いても構わない。また、樹脂成形体は、樹脂又は金属の基板に塗布された塗膜であってもよく、基板との積層体を形成してもよい。また、シート状、フィルム状又は繊維状の樹脂成形体には、アニール処理、エッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理、シボ転写、切削、表面研磨等の二次加工を行っても構わない。
本実施形態の樹脂複合体及びその成形体においては、化学修飾セルロース繊維と樹脂との混合工程において、化学修飾セルロース繊維同士の凝集が起こらず、化学修飾セルロース繊維は樹脂中で均一に分散されるので、優れた力学的特性、耐熱性、寸法安定性、外観等を実現できる。本実施形態の樹脂複合体及びその成形体においては、曲げ試験等の静的特性と、衝撃試験等の動的特性とがバランス良く向上されていることができる。一態様において、本実施形態の樹脂複合体は、本実施形態の化学修飾セルロース繊維を用いていない樹脂複合体と比べて、荷重たわみ温度の数十℃の向上を達成できる。一態様において、本実施形態の樹脂複合体から得られる最終成形品である成形体では、化学修飾セルロース繊維の凝集塊が発生しておらず、表面平滑性及び外観に優れることができる。
本実施形態の樹脂複合体は優れた寸法安定性を有することができる。樹脂複合体の線熱膨張率(CTE)は、好ましくは、80ppm/k以下、又は70ppm/k以下、又は60ppm/k以下、又は55ppm/k以下、又は50ppm/k以下である。
本実施形態の樹脂複合体は優れた曲げ弾性率及び曲げ強度を有することができる。フィラー成分(すなわち化学修飾セルロース繊維及び他のフィラー)を含まない樹脂に対しての値の上昇率として評価したときの、樹脂複合体の曲げ弾性率の上昇率は、好ましくは、1.3以上、又は1.4以上、又は1.5以上、又は1.6以上、又は1.7以上であり、樹脂複合体の曲げ強度の上昇率は、好ましくは、1.3以上、又は1.4以上、又は1.5以上、又は1.6以上である。
本実施形態の樹脂複合体は優れた貯蔵弾性率を有することができる。フィラー成分(すなわち化学修飾セルロース繊維及び他のフィラー)を含まない樹脂に対しての値の上昇率として評価したときの、樹脂複合体の貯蔵弾性率の上昇率は、好ましくは、1.3以上、又は1.4以上、又は1.5以上、又は1.6以上、又は1.7以上である。
本実施形態の樹脂複合体は、高耐熱かつ軽量であることから、鋼板の代替、又は、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチック、無機フィラーを含む樹脂コンポジット等の代替ができる。例えば、産業用機械部品(例えば、電磁機器筐体、ロール材、搬送用アーム、医療機器部材等)、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品(例えば外板、シャシー、空力部材、座席、トランスミッション内部の摩擦材等)、船舶部材(例えば船体、座席等)、航空関連部品(例えば、胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材等)、宇宙機、人工衛星部材(モーターケース、主翼、構体、アンテナ等)、電子・電気部品(例えばパーソナルコンピュータ筐体、携帯電話筐体、OA機器、AV機器、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品、プリント配線板等)、建築・土木材料(例えば、鉄筋代替材料、トラス構造体、つり橋用ケーブル等)、生活用品、スポーツ・レジャー用品(例えば、ゴルフクラブシャフト、釣り竿、テニスやバトミントンのラケット等)、風力発電用筐体部材等、また容器・包装部材、例えば、燃料電池に使用されるような水素ガス等を充填する高圧力容器用の材料となり得る。
これらの中でも、既存の樹脂複合体と比べて高耐熱化されることで優位性を発揮できる部材(すなわち樹脂成形が必要な部材)が好ましい。この観点で、本実施形態の樹脂複合体を含む自動車用部材、及び本実施形態の樹脂複合体を含む電子製品用部材が好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されるものではない。
<化学修飾セルロース繊維の製造>
[実施例1](化学修飾セルロース繊維1の作製)
コットンリンター(酸不溶成分平均含有率6質量%以下,アルカリ可溶多糖類含有率4質量%)(セルロース原料として)70gを、水酸化ナトリウム(NaOH)の5質量%水溶液1.4kg中に投入し、5℃にて1時間撹拌した。このスラリーを圧搾して水酸化ナトリウム水溶液を除去した後、中性になるまで水洗した。100℃のオーブン中にて大気下で乾燥して乾燥セルロースを得た。(前処理工程)
20mLガラスサンプル管にDMSO9.0g、炭酸カリウム0.012g、酢酸ビニル1.0gを量り取り、乾燥セルロース0.3gを加えて室温で2時間激しく撹拌させて、アセチル基で化学修飾された解繊スラリーを得た。(解繊・修飾工程)
水/エタノール(1/1)(質量比)混合溶媒でスラリーを洗浄し、アセチル基で修飾されたセルロース繊維を精製した。(洗浄工程)
[実施例2〜8、比較例1〜6]
前処理工程の処理条件を表1に示すとおりとした他は実施例1と同様の手順で、化学修飾セルロース繊維2〜8、A〜Fを得た。
[比較例7]
出発原料をアバカパルプ(マニラ麻)とした他は比較例1と同様の手順で、化学修飾セルロース繊維Gを得た。
[比較例8]
出発原料を針葉樹パルプ(NBKP)とした他は実施例1と同様の手順で、化学修飾セルロース繊維Hを得た。
[比較例9]
出発原料をセリッシュKY−100G(ダイセルファインケム社製)として、市販製品中に含まれる水分をDMSOで3回溶媒置換して用いた他は比較例1と同様の手順で、化学修飾セルロース繊維Iを得た。
[比較例10]
出発原料を米松粉末(カナダ産ダグラスファー)とした他は比較例1と同様の手順で、化学修飾セルロース繊維Iを得た。
<多孔質シートの作製>
上記の各化学修飾セルロース繊維0.3gを含む当該濃縮物を、濃度が0.2質量%となるようにtert−ブタノール中に分散させ、さらに超音波分散等で凝集物が無い状態まで分散処理を行った。得られたtert−ブタノール分散液100gをろ紙(5C,アドバンテック,直径90mm)上で濾過し、ろ紙上に形成された湿紙を剥がして単独で150℃にて乾燥させ、多孔質シートを得た。
<化学修飾セルロース繊維フィルムの作製>
上記の各化学修飾セルロース繊維を、洗浄工程の後で遠心分離して濃縮物を得た(固形分率5質量%以上)。続いて、各濃縮物(固形分量0.3gに相当する量)に、室温にて、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を分散液の重量が20gとなるように添加し、マグネチックスターラーで撹拌して、化学修飾セルロース繊維の濃度が1.5質量%である分散液を得た。この分散液を10g取って、基材となるポリプロピレン容器上に静かに流延し、次いで60℃、常圧にてDMAcを蒸発させて除去し、さらに温度を80℃に昇温して乾燥させ、坪量80g/m2の化学修飾セルロース繊維フィルムを得た。当該化学修飾セルロース繊維フィルムを上記基材から剥がして取り出し、各種評価に供した。
図4は、実施例1の化学修飾セルロース繊維1から得た化学修飾セルロース繊維フィルムの外観写真を示す図である。図5は比較例3の化学修飾セルロース繊維Cから得た化学修飾セルロース繊維フィルムの外観写真を示す図である。
<化学修飾セルロース繊維の評価>
(1)数平均繊維径
多孔質シートの表面の無作為に選んだ3箇所を、走査型電子顕微鏡(SEM)により、繊維の繊維径に応じて10000〜100000倍相当の倍率で観察した。得られた3つのSEM画像の各々において、画面に対しヨコ方向とタテ方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の本数と、各繊維の繊維径とを拡大画像から実測して、1つの画像につきタテヨコ2系列の数平均繊維径を算出した。上記数平均繊維径の3画像での数平均を、対象とする試料の平均繊維径とした。
(2)アルカリ可溶多糖類含有率及びα−セルロース含有率
前処理工程後の乾燥セルロースおよび化学修飾セルロース繊維を用い、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載の手法でホロセルロース含有率(Wise法)及びα−セルロース含有率を求め、またホロセルロース含有率からαセルロース含有率を差し引くことでアルカリ可溶多糖類含有率を求めた。
アシル基で修飾された化学修飾セルロース繊維については、0.5N水酸化ナトリウム水溶液で修飾基を脱離して未修飾セルロース繊維に変換した後、上記手法でアルカリ可溶多糖類の含有率を求めることができる。
(3)酸不溶成分平均含有率・単位比表面積当たりの酸不溶成分平均含有率
酸不溶成分の定量は、非特許文献(木質科学実験マニュアル、日本木材学会編、92〜97頁、2000年)に記載のクラーソン法で行った。絶乾させた化学修飾セルロース繊維の試料を精秤し、所定の容器に入れて72質量%濃硫酸を加え、内容物が均一になるようにガラス棒で適宜押した後、オートクレーブを用いて酸可溶性成分(セルロース及びヘミセルロース等)を酸溶液中に溶解させた。放冷後に内容物をガラスファイバーろ紙で濾過し、酸不溶成分を分取し、これを定量することで前記試料の酸不溶成分含有率を算出した。平均含有率は3サンプルの数平均値として算出し、この値を化学修飾セルロース繊維の酸不溶成分平均含有率とした。そして、前述で算出した値から化学修飾セルロース繊維の比表面積当たりの酸不溶成分平均含有率(質量%・g/m2)を算出した。
アシル基で修飾された化学修飾セルロース繊維については、0.5N水酸化ナトリウム水溶液で修飾基を脱離して未修飾セルロース繊維に変換した後、上記手法で酸不溶成分の含有率を求めることができる。
(4)結晶形
多孔質シートをX線回折装置による測定に供し、2θ=14.8°、16.5°、22.6°付近に回折ピークが観測される場合に、Iβ型の結晶構造を有すると判定した。前処理工程や解繊・修飾工程で、セルロースの結晶構造がアモルファス化したり、II型に変化した場合はこれらのピークが観測されない。
(5)フィブリル間隔
前処理工程後の乾燥セルロースおよび化学修飾セルロース繊維を用いて、小角X線散乱測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:ナノスケールX線構造評価装置Nanopix(リガク製)
X線波長:0.154nm
光学系:ポイントコリメーション(1st0.55mmφ、2nd Open、Guard0.35mmφ)
検出器:HyPix−6000(2次元半導体検出器)
カメラ長:SAXS_1312m
露光時間:10min/1試料
乾燥セルロース又は化学修飾セルロース繊維をDMSOに浸漬し、1日放置した。その後、乾燥セルロース又は化学修飾セルロース繊維をピンセットで引き揚げ、DMSOを乾燥させることなく、そのまま石英セルに入れ、上記装置と条件で測定に供した。測定は大気下で行い、大気散乱の寄与を、別途、空のセルの状態で測定したデータを差し引くことで除去した。
X線小角散乱の二次元データから、円環平均をとり一次元のSAXSプロフィールを得た。得られたSAXSプロフィールの散乱ベクトルと散乱強度のLog−Logプロットにおいて、0.04nm−1から2nm−1の範囲に現れるピークについて、直線のベースラインとガウス関数でフィッティングを行い、ピークトップのθの値を読み取った。ブラッグの式d=2π/θから、ミクロフィブリル間隔に相当するSAXS長周期の大きさを算出した。
(6)IRインデックス
多孔質シートのATR−IR法による赤外分光スペクトルを、フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製 FT/IR−6200)で測定した。赤外分光スペクトル測定は以下の条件で行った。
積算回数:64回、
波数分解能:4cm-1
測定波数範囲:4000〜600cm-1
ATR結晶:ダイヤモンド、
入射角度:45°
(6−1)IRインデックス1370
得られたIRスペクトルよりIRインデックス1370を、下記式(1):
IRインデックス1370= H1730/H1370 (1)
に従って算出した。式中、H1730、H1370は1730cm-1(アシル基に基づくC=O伸縮振動の吸収バンド)、1370cm-1(セルロース骨格鎖C−H伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ、1900cm-1と1500cm-1とを結ぶ線(H1730について)及び800cm-1と1500cm-1とを結ぶ線(H1370について)をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
(6−2)IRインデックス1030
得られたIRスペクトルよりIRインデックス1030を、下記式(2):
IRインデックス1030= H1730/H1030 (2)
に従って算出した。式中、H1730及びH1030は1730cm-1、1030cm-1(セルロース骨格鎖C−O伸縮振動の吸収バンド)における吸光度である。ただし、それぞれ1900cm-1と1500cm-1とを結ぶ線、及び800cm-1と1500cm-1とを結ぶ線をベースラインとして、このベースラインを吸光度0とした時の吸光度を意味する。
(7)置換度(DS)
13C固体NMRで置換度を定量した置換度既知サンプルのIRインデックス1030から、検量線を作成し、下記式に従ってIRインデックス1030から置換度を算出した。
DS=4.13×IRインデックス1030
(8)結晶化度
多孔質シートのX線回折測定を行い、下記式より結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[I(200)−I(amorphous)]/I(200)×100
(200):セルロースI型結晶における200面(2θ=22.5°)による回折ピーク強度
(amorphous):セルロースI型結晶におけるアモルファスによるハローピーク強度であって、200面の回折角度より4.5°低角度側(2θ=18.0°)のピーク強度
X線回折測定条件
装置 MiniFlex(株式会社リガク製)
操作軸 2θ/θ
線源 CuKα
測定方法 連続式
電圧 40kV
電流 15mA
開始角度 2θ=5°
終了角度 2θ=30°
サンプリング幅 0.020°
スキャン速度 2.0°/min
サンプル:試料ホルダー上に多孔質シートを貼り付け
(9)熱分解開始温度(TD)及び1wt%重量減少温度(T1%
多孔質シートの熱分析を以下の測定法にて評価した。
装置:SII社製 EXSTAR6000
サンプル:多孔質シートを円形に切り抜いたものをアルミ試料パン中に10mg分重ねて入れた。
サンプル量:10mg
測定条件:窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、30℃になるまで冷却した。つづいて、そのまま30℃から450℃まで昇温速度:10℃/minで昇温した。
D算出方法:横軸が温度、縦軸が重量残存率%のグラフから求めた。化学修飾セルロース繊維の150℃(水分がほぼ除去された状態)での重量(重量減少量0wt%)を起点としてさらに昇温を続け、1wt%重量減少時の温度と2wt%重量減少時の温度とを通る直線を得た。この直線と、重量減少量0wt%の起点を通る水平線(ベースライン)とが交わる点の温度を熱分解開始温度(TD)とした。
1%算出方法:前記TD算出時に用いた1wt%重量減少時の温度を1wt%重量減少温度とした。
(10)250℃重量変化率(T250℃
装置:SII社製 EXSTAR6000
サンプル:多孔質シートを円形に切り抜いたものをアルミ試料パン中に10mg分重ねて入れた。
サンプル量:10mg
測定条件:窒素フロー100ml/min中で、室温から150℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、150℃で1時間保持した後、150℃から250℃まで昇温速度:10℃/minで昇温し、そのまま250℃で2時間保持した。
250℃算出方法:250℃に到達した時点での重量W0を起点として、2時間250℃で保持した後の重量をW1とし、下記式より求めた。
250℃(%):(W1−W0)/W0×100
<化学修飾セルロース繊維フィルムの評価>
(1)外観
化学修飾セルロース繊維フィルムの外観を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:半透明である。
△:半透明であるが、局所的に白い塊が認められる。
×:全体に不透明である。
(2)全光線透過率及び拡散透過率を下記条件で測定した。
装置:ヘーズメーターNPH2000(日本電色工業株式会社製)
光源:D65(JIS K7136準拠)
なお、坪量80g/m2±10g/m2の範囲では、全光線透過率の値と坪量との間に直線的な相関関係があることが確認されているため、作製された化学修飾セルロース繊維フィルムの坪量が厳密に80g/m2とならなかった場合には、坪量80g/m2±10g/m2の範囲内で互いに異なる坪量を有する2つのフィルムを測定に供し、その測定結果から上記直線的な相関関係に従って坪量80g/m2の全光線透過率を算出して、全光線透過率の測定値と見做した。
<樹脂複合体の製造>
使用した樹脂
PA6:宇部興産株式会社製 UBEナイロン 1013B
PA12:ダイセル・エボニック株式会社製 ダイアミドL1640
[実施例9〜18、比較例11〜20]
表2に示す化学修飾セルロース繊維及び樹脂を用い、小型混練機(Xplore instruments社製、製品名「Xplore」)を用いて、260℃、100rpm(シアレート1570(1/s))で5分間循環混練後に、ダイスを経てφ1mmの複合樹脂組成物のストランドを得た。当該ストランドから得られた樹脂複合体ペレット(前記ストランドを1cm長さにカットしたもの)を、付属の射出成形機にて260℃で溶融し、JIS K7127規格のダンベル状試験片を作製し、評価に用いた。得られたダンベル状試験片の各形体とした樹脂複合体1を用いて適宜各評価を行った。
[比較例21、22]
化学修飾セルロース繊維を用いない他は実施例6,8と同様の手順で、樹脂複合体の試験片を得た。
<樹脂複合体の評価>
(1)外観
試験片の外観を光学顕微鏡で観察し、下記基準で評価した。
〇:凝集物が認められない。
△:内部に凝集物の存在が認められる。
×:表面及び内部に凝集物の存在が認められる。
(2)引張強度
射出成形機を用いて、ISO294−1に準拠し多目的試験片に成形した。得られた多目的試験片について、ISO527−1に準拠し、引張降伏強度を測定した。降伏に至る前に破断した成形片については、その最大強度を代用した。
(3)破断伸度
上記引張強度試験において、試験片が破断したときの伸度を測定した。
(4)線膨張係数
射出成形で得た成形体を、3mm幅(成形体のTD方向)×25mm長(成形体のMD方向)に切断して測定サンプルを得た。この測定サンプルについて、熱機械分析(TMA)装置(SII社製TMA6100型装置)を用いて、引っ張りモードでチャック間距離10mm、荷重5g、窒素雰囲気下で、室温から120℃まで5℃/min.で昇温した後、25℃まで5℃/min.で降温し、再び25℃から120℃まで5℃/min.で昇温した際の、2度目の昇温時における30〜100℃の領域での平均の熱膨張率を線熱膨張係数の値とした。
表1及び2に示す結果から、全光線透過率が特定範囲に制御された化学修飾セルロース繊維は良好なフィルム外観を呈すること、及びこのような化学修飾セルロース繊維を用いて形成された樹脂複合体においては、化学修飾セルロース繊維の凝集が抑制されており、当該化学修飾セルロース繊維によって破断強度、破断伸度及び線膨張係数が顕著に改善されたことが分かる。
本発明に係る化学修飾セルロース繊維は、良好な機械強度、耐熱性及び寸法安定性が特に求められる樹脂複合体に好適に適用され得る。

Claims (12)

  1. セルロースの水酸基の少なくとも一部が修飾されている、化学修飾セルロース繊維であって、
    前記化学修飾セルロース繊維をN,N−ジメチルアセトアミドに1.5質量%の濃度で分散させて得た分散液から成膜された坪量80g/m2の化学修飾セルロース繊維フィルムが、全光透過率73%以上を有する、化学修飾セルロース繊維。
  2. アルカリ可溶多糖類の含有率が10質量%以下である、請求項1に記載の化学修飾セルロース繊維。
  3. 酸不溶成分の含有率が10質量%以下である、請求項1又は2に記載の化学修飾セルロース繊維。
  4. α−セルロース含有率が90質量%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  5. セルロースIβ型の結晶構造を有し、結晶化度が60%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  6. 平均繊維径が10nm以上1000nm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  7. 繊維径が1000nm以下である微細成分と繊維径が1000nm超である粗大成分とを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  8. 前記粗大成分がラメラ構造を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  9. 前記化学修飾セルロース繊維フィルムの小角X線散乱測定により求められるフィブリル間隔が10〜30nmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  10. コットンリンター由来である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  11. 前記化学修飾セルロース繊維の修飾基が、炭素数2以上のアシル基から選ばれる1種以上の基である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の化学修飾セルロース繊維と樹脂とを含む、樹脂組成物。
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