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JP2020111504A - 圧縮深さが深い強化ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】深い圧縮層を有するガラス物品を提供する。【解決手段】圧縮応力プロファイルが、表面から比較的浅い深さda’まで延在し、急勾配を有する第1の部分a’、およびその浅い深さda’から圧縮深さDOCまで延在する第2の部分bの2つの線形部分を含み、反転球落下試験において100cmの高さから落下したときの60%の生存率、および研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有するガラス物品。【選択図】図3

Description

優先権
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2014年7月25日に出願された米国仮特許出願第62/029075号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
本開示は、化学強化ガラス物品に関する。より詳しくは、本開示は、深い圧縮表面層を有する化学強化ガラスに関する。
強化ガラスが、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ビデオプレーヤー、情報端末(IT)機器、ラップトップコンピュータなどの携帯用または移動式電子通信機器およびエンターテイメント機器用のカバープレートまたは窓として電子機器に、並びに他の用途に広く使用されている。
強化ガラスが益々利用されるにつれて、特に、硬い/鋭い表面との接触により生じる比較的深い傷および/または引張応力に曝されたときに、生存率が改善された強化ガラス材料を開発することがより重要になってきた。
化学強化ガラス物品であって、その物品の表面から、物品内の少なくとも約45μmの深さまで延在する少なくとも1つの深い圧縮層を有するガラス物品が提供される。1つの実施の形態において、圧縮応力プロファイルは、表面から圧縮深さDOCまで延在する1つの線形区分を含む。あるいは、圧縮応力プロファイルは、表面から比較的浅い深さまで延在し、急勾配を有する第1の部分、およびその浅い深さから圧縮深さまで延在する第2の部分の2つのほぼ線形部分を含む。その強化ガラスは、反転球落下試験において100cmの高さから落下したときの60%の生存率、および研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する。そのような応力プロファイルを達成する方法も記載されている。
したがって、本開示の1つの態様は、ガラス物品であって、そのガラス物品の表面で少なくとも約150MPaの圧縮応力CSsを有する圧縮領域を有するガラス物品を提供することにある。その圧縮領域は、表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在しており、前記表面から少なくとも45μmの深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aと、前記表面から少なくとも約3μmの深さda’まで延在する第2の部分a’とを有する圧縮応力プロファイルを有し、ここで、−2MPa/μm≧ma≧−8MPa/μm、および−40MPa/μm≧ma’≧−200MPa/μmである。
本開示の第2の態様は、ガラス物品であって、そのガラス物品の表面で少なくとも約150MPaの圧縮応力CSsを有する圧縮層を有するガラス物品を提供することにある。その圧縮層は、表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在し、圧縮応力プロファイルを有する。その圧縮応力プロファイルは、前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aと、daから圧縮深さDOCまで延在し、勾配mbを有する第2の部分bとを有し、ここで、3μm≦da≦8μm、−40MPa/μm≧ma≧−200MPa/μm、および−2MPa/μm≧mb≧−8MPa/μmである。
第3の態様において、ガラス物品であって、そのガラス物品の表面で少なくとも約150MPaの圧縮応力CSsを有する圧縮領域を有するガラス物品が提供される。その圧縮領域は、表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在し、圧縮応力プロファイルを有する。その圧縮応力プロファイルは、前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aを有し、深さdaは前記圧縮深さと等しく、−2MPa/μm≧ma≧−8MPa/μmである。
本開示の第4の態様は、ガラス物品であって、そのガラス物品の表面で少なくとも約120MPaの圧縮応力CSs下にある圧縮領域を有するガラス物品を提供することにある。その圧縮領域は、その表面から少なくとも約70μmの圧縮深さDOCまで延在し、圧縮応力プロファイルを有する。その圧縮応力プロファイルは、表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の線形部分aを有し、ここで、深さdaは圧縮深さと等しく、−0.7MPa/μm≧ma≧−2.0MPa/μmである。
本開示の第5の態様は、強化ガラス物品であって、その強化ガラス物品の表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在する圧縮応力層を少なくとも1つ有する強化ガラス物品を製造する方法を提供することにある。この方法は、第1のイオン交換工程を、前記圧縮応力層がこの第1のイオン交換工程後に少なくとも45μmの深さを有するような十分な時間に亘り400℃超の温度でアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を第1のイオン交換浴中に浸漬することにより行う工程、および第2のイオン交換工程を、少なくとも約45μmの圧縮深さDOCを有する圧縮応力層を生じるのに十分な時間に亘り少なくとも約350℃の温度でそのアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を前記第1のイオン交換浴とは異なる第2のイオン交換浴中に浸漬することにより行う工程、を有してなる。
本開示の第6の態様は、中央張力CT下にある内側領域、および圧縮応力CS下にある少なくとも1つの圧縮応力層を有する強化ガラスを提供することにある。その圧縮応力層は、そのガラスの表面から少なくとも45μmの圧縮深さまで延在し、前記内側領域に隣接している。この強化ガラスは、研磨時リング・オン・リング試験により決定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する。
本開示の第7の態様は、中央張力CT下にある内側領域、および圧縮応力CS下にある少なくとも1つの圧縮応力層を有する強化ガラスを提供することにある。その圧縮応力層は、そのガラスの表面から少なくとも45μmの圧縮深さまで延在し、前記内側領域に隣接している。この強化ガラスは、反転球落下試験において少なくとも100cmの深さから落下表面に落とされたときに少なくとも60%の生存率を有する。
これらと他の態様、利点、および顕著な特色が、以下の詳細な説明、添付図面、および付随の特許請求の範囲から明白になるであろう。
化学強化ガラス物品の概略断面図 一段階イオン交換過程により得られる圧縮応力プロファイルを示す略図 二段階イオン交換過程により得られる圧縮応力プロファイルを示す略図 厚さが0.4mmのイオン交換済みガラスサンプルaについて測定された結合光学モードのそれぞれのTMおよびTEスペクトルから再構成されたTMおよびTE偏光に関する屈折率プロファイルのスペクトルをプロットしたグラフ 図4aに示された屈折率プロファイルから決定された圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが0.4mmのイオン交換済みガラスサンプルbについて測定されたTMおよびTE偏光に関する結合光学モードのスペクトルから再構成されたTMおよびTE屈折率プロファイルをプロットしたグラフ 図5aに示されたスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 第2のイオン交換工程後の図5aおよび5bにおけるサンプルの圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが0.4mmのイオン交換済みガラスサンプルcについて測定されたTMおよびTE偏光に関する結合光学モードのスペクトルから再構成されたTMおよびTE屈折率プロファイルをプロットしたグラフ 図6aに示されたスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが0.5mmのイオン交換済みガラスサンプルdについて測定されたTMおよびTE偏光に関する結合光学モードのスペクトルから再構成されたTMおよびTE屈折率プロファイルをプロットしたグラフ 図7aに示されたスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが0.5mmのイオン交換済みガラスサンプルeについて測定されたTMおよびTE偏光に関する結合光学モードのスペクトルから再構成されたTMおよびTE屈折率プロファイルをプロットしたグラフ 図8aに示されたスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが0.7mmのイオン交換済みガラスサンプルfに関する圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 第2のイオン交換工程後の図9aにおけるサンプルの圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが0.8mmのイオン交換済みガラスサンプルgに関する圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 第2のイオン交換工程後の図10aにおけるサンプルの圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 第2のイオン交換工程後の、厚さが0.9mmのイオン交換済みガラスサンプルiに関する圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが1.0mmのイオン交換済みガラスサンプルjに関する圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 第2のイオン交換工程後の図12aのサンプルについて決定された圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 厚さが0.55mmのイオン交換済みガラスサンプルkに関する圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 第2のイオン交換工程後の図13aのサンプルについて決定された圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ 1)割れの際に壊れやすい挙動を示す強化ガラス物品、および2)割れの際に壊れにくい挙動を示す強化ガラス物品を示す写真のグラフィック描写 割れの際に壊れにくい挙動を示す強化ガラスシートを示す写真のグラフィック描写 本開示に記載された研磨紙上反転球(inverted ball on sandpaper)(IBoS)試験を行うために使用される装置の実施の形態の概略断面図 携帯用または手持ち式電子機器に使用される強化ガラス物品に典型的に起こる、曲げに加えた損傷の導入による破損の支配的メカニズムを示す概略断面図 ここに記載された装置においてIBoS試験を実施する方法300の流れ図 本開示に記載されたIBoS試験を行ったときの、様々なDOLおよびCS値での強化ガラスの破損率のグラフ比較 厚さが0.8mmのイオン交換済みガラスサンプルmに関する圧縮応力プロファイルをプロットしたグラフ イオン交換済みガラスサンプルの、FSMで測定した、層の深さDOLの関数としての破損時の落下高さをプロットしたグラフ リング・オン・リング装置の概略断面図 2つの強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスに関するサンプル厚の関数としての研磨時リング・オン・リングデータをプロットしたグラフ
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字が、同様のまたは対応する部品を指す。特に明記のない限り、「上部」、「下部」、「外方」、「内方」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と考えるべきではないことも理解される。その上、群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含んでも、から実質的になっても、またはからなってもよいことが理解される。同様に、群が、複数の要素またはその組合せの群の内の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなってもよいことが理解される。特に明記のない限り、値の範囲は、列挙されている場合、その範囲の上限と下限の両方、並びにそれらの間の任意の範囲も含む。ここに用いたように、特に明記のない限り、名詞は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指すことが意図されている。本明細書および図面に開示された様々な特徴は、いずれの組合せにも、また全ての組合せにも使用して差し支えないことも理解される。
ここに用いたように、「ガラス物品("glass article"および"glass articles")」という用語は、全てがまたは部分的にガラスから作られた任意の物体を含むために最も広い意味で使用されている。特に明記のない限り、全てのガラス組成は、モルパーセント(モル%)で表されており、全てのイオン交換浴組成は、質量パーセント(質量%)で表されている。
「実質的に」および「約」という用語は、任意の定量比較、値、測定、または他の表現に寄与するであろう固有の不確実性の度合いを表すためにここに使用されることがあることを留意のこと。これらの用語は、問題となっている主題の基本機能を変えずに、定量的表現が、述べられた基準から変動するかもしれない度合いを表すためにもここに使用される。したがって、「MgOを実質的に含まない」ガラスは、MgOが積極的に添加されていないか、またはガラス中にバッチ配合されていないが、汚染物質としてごく少量で存在することもあるものである。
概して図面を、特に図1を参照すると、図解は、特定の実施の形態を記載する目的のためであり、本開示または付随する特許請求の範囲をそれに制限することは意図されていないことが理解されよう。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、図面の特定の特徴および特定の視野は、明確さおよび簡潔さのために、縮尺または図式で誇張されて示されることがある。
ここに用いたように、「層の深さ」および「DOL」という用語は、FSM−6000などの市販の計器を使用して表面応力計(FSM)測定により決定された圧縮層の深さを称する。
ここに用いたように、「圧縮深さ」および「DOC」という用語は、ガラス内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを称する。DOCでは、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力に交差し、それゆえ、ゼロの値を有する。
ここに記載されるように、特に明記のない限り、圧縮応力(CS)および中央張力(CT)は、メガパスカル(MPa)で表され、層の深さ(DOL)および圧縮深さ(DOC)は、マイクロメートル(μm)で表され、ここで、1μm=0.001mm、厚さtは、ここではミリメートルで表され、1mm=1000μmである。
ここに用いたように、「割れ(fracture)」という用語は、特に明記のない限り、基体に物体が落とされたまたはそれにより衝撃が与えられときに、亀裂が基体の全厚および/または全表面に亘り伝搬することを意味する。
当該技術分野で通常用いられる科学的慣例によれば、圧縮は負の(<0)応力と表され、張力は正(>0)の応力と表される。しかしながら、この説明を通じて、ここに記載された圧縮応力プロファイルをより良く視覚化するために、圧縮応力CSは正または絶対値として表される−すなわち、ここに挙げられるように、CS=|CS|、そして、中央張力または引張応力は、負の値として表される。
ここに用いたように、「勾配(m)」は、直線をきっちりと近似する応力プロファイルの区分または部分の勾配を称する。主勾配は、直線区分とうまく近似された領域に関する平均勾配と定義される。これらは、応力プロファイルの二次導関数の絶対値が、一次導関数の比率、およびその領域の深さの約半分より小さい領域である。例えば、強化ガラス物品の表面近くの応力プロファイルの急勾配の浅い区分について、実質的に直線の区分は、その各点の応力プロファイルの二次導関数の絶対値が、応力の絶対値が2倍変化する深さで割られた応力プロファイルの局所勾配の絶対値よりも小さくなる部分である。同様に、ガラス内のより深いプロファイルの区分について、その区分の直線部分は、その応力プロファイルの局所二次導関数が、DOCの半分で割られた、応力プロファイルの局所勾配の絶対値より小さい絶対値を有する領域である。
典型的な応力プロファイルについて、二次導関数に対するこの制限は、勾配は深さにより比較的緩慢に変化することを保証し、したがって、適度にはっきりと規定され、落下性能に有利であると考えられる応力プロファイルにとって重要な勾配の領域を規定するために使用できる。
深さxの関数としての応力プロファイルを関数
により与え、深さに関する応力プロファイルの一次導関数を
とすると、二次導関数は、
となる。
浅い区分が深さdsくらいまで延在する場合、主勾配を規定するために、そのプロファイルの直線部分は、
である領域である。
深い区分が、より深い深さDOCくらいまで、またはより深い深さddくらいまで、または従来の用語の深さDOLくらいまで延在する場合、そのプロファイルの直線部分は、
である領域である。
後者の式は、化学強化のためにガラス中で置き換えられるイオン以外に1種類のアルカリイオンしか含有しない塩中の一回のイオン交換により得られる1区分応力プロファイルについても有効である。
その直線区分は、
である領域として選択されることが好ましく、式中、dは、浅いかまたは深い、領域の関連深さを表す。
ここに記載された圧縮応力プロファイルの直線区分の勾配mは、特に明記のない限り、勾配dσ/dxの値として与えられる。より詳しくは、勾配mは、圧縮応力が、増加する深さの関数として概して減少するプロファイルの勾配の値を表す。
規定の圧縮応力プロファイルを得、それゆえ、規定の高さから硬質摩耗面に落とされたときに生存性を達成するためにイオン交換により化学強化されたガラス物品が、ここに記載されている。
イオン交換が、ガラスを化学強化するために一般に使用される。特定の一例において、アルカリ陽イオンの供給源(例えば、溶融塩、または「イオン交換」浴)内のアルカリ陽イオンが、ガラス内のより小さいアルカリ陽イオンと交換されて、ガラスの表面近くに圧縮応力(CS)下にある層が作り出される。例えば、陽イオン源からのカリウムイオンは、大抵、ガラス内のナトリウムイオンと交換される。その圧縮層は、表面からガラス内のある深さまで延在する。
平面のイオン交換ガラス物品の説明断面図が、図1に示されている。ガラス物品100は、厚さt、第1の表面110、および第2の表面112を有する。図1に示された実施の形態は、平らな平面シートまたはプレートとしてガラス物品100を示しているが、ガラス物品は、三次元形状または非平面形状などの他の形状を有してもよい。ガラス物品100は、第1の表面110からガラス物品100の中身へと圧縮深さ(DOC)d1まで延在する第1の圧縮領域120を有する。図1に示された実施の形態において、ガラス物品100は、第2の表面112から第2の圧縮深さ(DOC)d2まで延在する第2の圧縮領域122も有する。ガラス物品は、d1からd2まで延在する中央領域130も有する。中央領域130は、中央張力(central tension)または中心張力(center tension)(CT)と呼ばれる張応力下にあり、これは、中央領域130の中心である値を有する。領域130の引張応力は、領域120および122の圧縮応力と釣り合いをとるまたはそれと反対に作用する。第1と第2の圧縮領域120、122の深さd1、d2は、ガラス物品100の第1と第2の表面110、112に対する鋭い衝撃により導入される傷の伝搬からガラス物品100を保護するのに対し、前記圧縮応力は、傷が成長し、第1と第2の圧縮領域120、122の深さd1、d2を通って伝搬する傾向を最小にする。
ここに記載された強化ガラス物品は、少なくとも約150メガパスカル(MPa)の最大圧縮応力CSsを有する。いくつかの実施の形態において、最大圧縮応力CSsは、少なくとも210MPa、他の実施の形態において、少なくとも300MPaである。いくつかの実施の形態において、最大圧縮応力CSsは、表面(図1の110、112)に位置している。しかしながら、他の実施の形態において、最大圧縮応力CSsは、ガラス物品の表面より下のある深さの圧縮領域(120、122)中に位置してもよい。前記圧縮領域は、ガラス物品の表面から、少なくとも約45マイクロメートル(μm)の圧縮深さDOCまで延在する。いくつかの実施の形態において、DOCは少なくとも約60μmである。他の実施の形態において、DOCは、少なくとも約70μm、いくつかの実施の形態において、少なくとも約80μm、さらに他の実施の形態において、DOCは少なくとも約90μmである。特定の実施の形態において、圧縮深さDOCは、少なくとも約100μm、いくつかの実施の形態において、少なくとも約140μmである。特定の実施の形態において、圧縮深さの最大値は約100μmである。
圧縮応力は、強化ガラス物品の表面の下の深さの関数として変動し、圧縮領域に圧縮応力プロファイルを生じる。いくつかの実施の形態において、圧縮応力プロファイルは、図2に概略示されるように、圧縮領域内で実質的に線形である。図2において、圧縮応力は、実質的に線形に挙動し、CSsで垂直y(CS)軸の切片となる、MPa/μmで表された勾配maを有する直線aが生じる。CSプロファイルaは、圧縮深さDOCでx軸の切片となる。この地点で、全応力はゼロである。DOCの下では、ガラス物品は張力CT下にあり、中央値CTに到達する。1つの非限定例において、張力が、0からCTと等しい最大(絶対値で)張力まで変動する小領域、および張力が実質的に一定でCTと等しい領域があることがある。
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラス物品の圧縮応力プロファイルaは、規定範囲内にある勾配maを有する。図2において、例えば、線aの勾配maは、上側境界δ1および下側境界δ2の間にある;すなわち、δ2≦ma≦δ1。いくつかの実施の形態において、−2MPa/μm≧ma≧−200MPa/μm。いくつかの実施の形態において、−2MPa/μm≧ma≧−8MPa/μm、いくつかの実施の形態において、−3MPa/μm≧ma≧−6MPa/μm、さらに他の実施の形態において、−2MPa/μm≧ma≧−4.5MPa/μm。
特定の実施の形態において、勾配maは、約−1.5MPa/μm超、いくつかの実施の形態において、約−0.7MPa/μmから約−2MPa/μmである。勾配maがそのような値を有し、圧縮深さDOCが少なくとも約100μmである場合、特定の機器設計の現場破損においてよく見られるであろう破損態様の少なくとも1つのタイプ(例えば、非常に深い穿刺)に対する強化ガラスの抵抗が、特に都合よい。
他の実施の形態において、圧縮応力プロファイルは、図3に概略示されるように、複数の実質的に線形の関数の組合せである。図3に示されるように、圧縮応力プロファイルは、第1の区分または部分a’および第2の区分または部分bを有する。第1の部分a’は、ガラス物品の強化表面から深さda’まで実質的に線形の挙動を示す。第1の部分a’は、勾配ma’およびy切片CSsを有する。圧縮応力プロファイルの第2の部分bは、ほぼ深さda’から圧縮深さDOCまで延在し、勾配mbを有する。深さda’での圧縮応力CS(da’)は、式
により与えられる。いくつかの実施の形態において、深さda’は、約3μmから約8μmの範囲にある;すなわち、3μm≦da’≦8μm。他の実施の形態において、3μm≦da’≦10μm。さらに他の実施の形態において、3μm≦da’≦12μm。
本開示は、2つの個別部分のみからなる圧縮応力プロファイルに限定されないことが、当業者により認識されよう。そうではなく、圧縮応力プロファイルは追加の区分を含んでもよい。いくつかの実施の形態において、圧縮応力プロファイルの異なる線形部分または区分は、プロファイルの勾配が第1の勾配から第2の勾配(例えば、ma’からmb)に移行する移行領域(図示せず)により接続されてもよい。
図3に示されるように、圧縮応力プロファイルの部分a’の勾配は、部分bの勾配よりもずっと急である;すなわち、ma’≦mb。これは、ガラス物品の表面に「スパイク(spike)」を有する圧縮応力プロファイルが、衝撃により生じるいくつかの傷の導入または成長に耐えるのに十分な圧縮応力をその表面に与えるために、連続して行われる多数のイオン交換過程により形成される条件に相当する。
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラス物品の圧縮応力プロファイルa’およびbは、それぞれ、規定範囲内にある勾配ma’およびmを有する。図3において、例えば、線a’の勾配ma’は、上側境界δ3と下側境界δ4との間にあり、線bの勾配mbは、上側境界δ5と下側境界δ6との間にある;すなわち、δ3≧ma’≧δ4およびδ5≧mb≧δ6。いくつかの実施の形態において、−40MPa/μm≧ma’ ≧−200MPa/μm、および−2MPa/μm≧mb≧−8MPa/μm。いくつかの実施の形態において、−40MPa/μm≧ma’ ≧−120MPa/μm、およびいくつかの実施の形態において、−50MPa/μm≧ma’ ≧−120MPa/μm。
圧縮応力CSおよび圧縮層の深さDOLは、当該技術分野で公知の手段を使用して測定される。そのような手段としては、以下に限られないが、株式会社ルケオ(日本国、東京都)により製造されているFSM−6000などの市販の計器を使用した表面応力の測定(FSM)が挙げられ、圧縮応力および層の深さを測定する方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」と題するASTM 1422C−99、および「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed, Heat-Strengthened, and Fully-Tempered Flat Glass」と題するASTM1279.19779に記載されており、これらの内容をここに全て引用する。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(SOC)の正確な測定に依存する。次に、SOCは、その内容がここに全て引用される、両方とも「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM標準C770−98(2008)に記載されているファイバおよび4点曲げ法、並びにバルクシリンダ法などの当該技術分野で公知の方法により測定される。
CSおよび中央張力CTの間の関係は、いくつかの実施の形態において、式:
により近似でき、式中、tはガラス物品のマイクロメートル(μm)で表された厚さである。本開示の様々な部分において、中央張力CTおよび圧縮応力CSは、ここで、メガパスカル(MPa)で表され、厚さtは、マイクロメートル(μm)またはミリメートル(mm)のいずれかで表され、層の深さDOLは、tの表記にしたがって、マイクロメートル(μm)またはミリメートル(mm)で表されている。
圧縮応力層がガラス内のより深い深さまで延在している強化ガラス物品について、FSM技法は、観測されたDOL値に影響するコントラスト問題を被ることがある。より深いDOL値では、TEスペクトルとTMスペクトルの間のコントラストが不適切となり、それゆえ、TEスペクトルとTMスペクトルの間の差の計算−DOLの決定−が、より難しくなるであろう。さらに、FSMソフトウェア解析は、圧縮応力プロファイル(すなわち、ガラス内の深さの関数としての圧縮応力の変動)を決定することができない。その上、FSM技法は、例えば、ナトリウムのリチウムによるイオン交換などの、特定の元素のイオン交換から生じる層の深さを決定することができない。
強化ガラス物品に関する圧縮深さ(DOC)および圧縮応力プロファイルをより正確に決定するために、下記に記載される技法が開発された。
「Systems And Methods for Measuring the Stress Profile of Ion-Exchanged Glass」と題する、2011年5月25日に出願された、米国仮特許出願第61/489800号に優先権を主張する、Rostislav V. Roussev等により2012年5月3日に出願された、同じ名称の米国特許第9140543号明細書(以後、「Roussev I」と称する)において、焼き入れまたは化学強化ガラスの詳細かつ正確な応力プロファイル(深さの関数としての応力)を入手する2つの方法が開示されている。TMおよびTE偏波に関する結合光学モードのスペクトルが、プリズム結合技法により収集され、全部が使われて、詳細かつ正確なTMおよびTE屈折率プロファイルnTM(z)およびnTE(z)を得る。
1つの実施の形態において、逆ウェンツェル・クラマース・ブリルアン(IWKB)法を使用することにより、モードスペクトルから詳細な屈折率プロファイルが得られる。
別の実施の形態において、屈折率プロファイルの形状を描写する所定の関数形式の数値計算スペクトルに測定モードスペクトルを当てはめ、最良の適合から関数形式のパラメータを得ることにより、詳細な屈折率プロファイルが得られる。応力光学係数(SOC)の公知の値を使用することにより得られたTM屈折率プロファイルおよびTE屈折率プロファイルの差から、詳細な応力プロファイルS(z)が計算される:
SOCの値が小さいために、任意の深さzでの複屈折nTM(z)−nTE(z)は、屈折率nTM(z)およびnTE(z)のいずれかのわずかな割合(典型的に1%程度)である。測定したモードスペクトルにおけるノイズによる歪みが著しくはない応力プロファイルを得るには、0.00001RIU程度の精度でモード実効屈折率を決定する必要がある。Roussev Iに開示された方法は、収集されたTEおよびTMモードスペクトルまたはモードスペクトルの画像におけるノイズおよび/または不十分なコントラストにかかわらず、測定されたモード屈折率に関するそのような高精度を確保するために、生データに適用される技法をさらに含む。そのような技法としては、サブピクセル解像度のモードに対応する極値の位置を見つけるための、ノイズ平均化、フィルタリング、および曲線の当てはめが挙げられる。
同様に、「Systems and Methods for Measuring Birefringence in Glass and Glass-Ceramics」と題する、2012年9月28日に出願された、米国仮特許出願第61/706891号に優先権を主張する、Rostislav V. Roussev等により2013年9月23日に出願された、同じ名称の米国特許第8957374号明細書(以後、「Roussev II」と称する)には、不透明なガラスおよびガラスセラミックを含む、ガラスおよびガラスセラミックの表面上の複屈折を光学的に測定するための装置および方法が開示されている。別個のモードスペクトルが特定されるRoussev Iとは異なり、Roussev IIに開示された方法は、プリズム結合測定形式においてプリズム・サンプル界面で反射したTMおよびTE光に関する角度強度分布の綿密な解析による。
開示された別の方法において、上述した信号処理技法のいくつかの組合せの適用後に、TMおよびTE信号の導関数が決定される。TMおよびTE信号の最大導関数の位置は、サブピクセル解像度で得られ、表面複屈折は、装置パラメータにより前述したように決定された係数で、先の2つの最大値の間隔に比例する。
正確な強度抽出のための要件に関連して、前記装置は、照明の角度均一性を改善するためのプリズム入射表面に近接したまたはその上の光散乱表面(静的ディフューザ)、光源がコヒーレントまたは部分コヒーレントである場合のスペックル低減のための移動ディフューザ、および強度信号を歪ませる傾向にある寄生背景を低減させるための、プリズムの入力面と出力面の部分上並びにプリズムの側面上の光吸収コーティングなどのいくつかの機能強化を備えている。その上、その装置は、不透明材料の測定を可能にする赤外光源を備えることがある。
さらに、Roussev IIには、記載の方法および装置の機能強化により測定が可能になる、研究サンプルの減衰係数および波長範囲が開示されている。その範囲は、αsλ<250πσsにより定義され、式中、αsは、測定波長λでの光減衰係数であり、σsは、実際の適用に典型的に要求される制度で測定されるべき応力の期待値である。この広い範囲により、大きい光減衰が従来の測定法を適用できなくしてしまう波長で、実際的に重要な測定値を得ることができる。例えば、Roussev IIには、減衰が約30dB/mmより大きい、1550nmの波長での不透明白色ガラスセラミックの応力誘起複屈折のうまくいく測定が開示されている。
先に、より深いDOL値でFSM技法に関して問題がいくつかあることに触れられているが、FSMはそれでも、より深いDOL値で±20%までの誤差範囲の可能性があるという了解の下で、利用できる有益な在来型技術である。ここに用いたように、「層の深さ」および「DOL」という用語は、FSM技法を使用して計算したDOL値を称するのに対し、「圧縮深さ」および「DOC」という用語は、Roussev IおよびIIに記載された方法により決定された圧縮層の深さを称する。
先に述べたように、前記ガラス物品は、イオン交換により化学強化してもよい。この過程において、ガラスの表面で、またはその近くのイオンが、通常同じ価数または酸化状態を有するより大きいイオンにより置き換えられる−または交換される。ガラス物品が、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む、から実質的になる、またはからなる、それらの実施の形態において、ガラスの表面層内のイオンおよび前記より大きいイオンは、Na+(Li+がガラス中に存在する場合)、K+、Rb+、およびCS+などの、一価アルカリ金属陽イオンである。あるいは、その表面層内の一価陽イオンは、Ag+などの、アルカリ金属陽イオン以外の一価陽イオンと置き換えられてもよい。
イオン交換過程は、一般に、ガラス中のより小さいイオンと交換されるべきより大きいイオンを含有する溶融塩浴中に、ガラス物品を浸漬することによって行われる。以下に限られないが、浴の組成と温度、浸漬時間、塩浴(または複数の塩浴)中のガラスの浸漬の回数、多数の塩浴の使用、徐冷、洗浄などの追加の工程を含むイオン交換過程のパラメータは、一般に、ガラスの組成、並びに強化操作から生じるガラスの所望の層の深さおよび圧縮応力により決まることが当業者に認識されよう。一例として、アルカリ金属含有ガラスのイオン交換は、以下に限られないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融浴中への浸漬により行われるであろう。溶融塩浴の温度は、典型的に、約380℃から約450℃までの範囲にあり、一方で、浸漬時間は約15分から約40時間に及ぶ。しかしながら、上述したものとは異なる温度および浸漬時間も使用してよい。
その上、浸漬の間に洗浄および/または徐冷工程を伴う、多数のイオン交換浴中にガラスが浸漬される、イオン交換過程の非限定例が、異なる濃度の塩浴中における多数の連続したイオン交換処理の浸漬によりガラスが強化される、2008年7月11日に出願された米国仮特許出願第61/079995号からの優先権を主張する、「Glass with Compressive Surface for Consumer Applications」と題する、2013年10月22日に発行された、Douglas C. Allan等による、米国特許第8561429号明細書;並びに第1の浴が流出イオンにより希釈され、その後、第1の浴より流出イオンの濃度が小さい第2の浴中の浸漬が行われる、イオン交換によりガラスが強化される、2008年7月29日に出願された米国仮特許出願第61/084398号からの優先権を主張する、「Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glass」と題する、2012年11月20日に発行された、Christopher M. Lee等による米国特許第8312739号明細書に記載されている。
例えば、ガラス物品の外側領域中の複数の第1の金属イオンが、複数の第2の金属イオンにより、外側領域がその複数の第2の金属イオンを含むように交換される、この中に先に記載されたイオン交換過程により、ガラス物品を化学強化することにより、圧縮応力が生じる。第1の金属イオンの各々は第1のイオン半径を有し、第2の金属イオンの各々は第2のイオン半径を有する。第2のイオン半径は第1のイオン半径より大きく、外側領域中のより大きい第2のアルカリ金属イオンの存在により、その外側領域に圧縮応力が生じる。
第1の金属イオンおよび第2の金属イオンの少なくとも一方は、アルカリ金属のイオンである。第1のイオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびルビジウムのイオンであってよい。第2の金属イオンは、第2のアルカリ金属イオンのイオン半径が第1のアルカリ金属イオンのイオン半径より大きいという条件で、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの内の1つのイオンであってよい。
いくつかの実施の形態において、ガラスは、図2に示された圧縮応力プロファイルを生じるように、一段階イオン交換工程で強化される。典型的に、ガラスは、より大きいアルカリ金属陽イオンの塩を含有する溶融塩浴中に浸漬される。いくつかの実施の形態において、その溶融塩浴は、より大きいアルカリ金属陽イオンの塩を含有する、またはその塩から実質的になる。しかしながら、より小さいアルカリ金属陽イオンの塩が少量−いくつかの実施の形態において、約10質量%未満、いくつかの実施の形態において、約5質量%未満、他の実施の形態において、約2質量%未満−、その浴中に存在してもよい。他の実施の形態において、より小さいアルカリ金属陽イオンの塩は、イオン交換浴の少なくとも約30質量%、または少なくとも約40質量%、もしくは約40質量%から約75質量%を占めてもよい。この一段階イオン交換過程は、所望の圧縮深さDOCを達成するのに十分な時間に亘り、少なくとも約400℃、いくつかの実施の形態において、少なくとも約440℃の温度で行われてよい。いくつかの実施の形態において、一段階イオン交換過程は、浴の組成に応じて、少なくとも約8時間に亘り行われることがある。
別の実施の形態において、ガラスは、図3に示された圧縮応力プロファイルを生じるように、二段階または二重イオン交換法で強化される。この過程の第1工程において、ガラスは、先に記載された第1の溶融塩浴中でイオン交換される。第1のイオン交換が完了した後、ガラスは第2のイオン交換浴中に浸漬される。第2のイオン交換浴は、第1の浴とは異なる−すなわち、それとは別である、いくつかの実施の形態において、異なる組成を有する。いくつかの実施の形態において、第2のイオン交換浴は、より大きいアルカリ金属陽イオンの塩のみを含有するが、いくつかの実施の形態において、その浴中に、より小さいアルカリ金属陽イオンが少量(例えば、≦2質量%;≦3質量%)存在してもよい。その上、第2のイオン交換工程の浸漬時間および温度は、第1のイオン交換工程のものとは異なってもよい。いくつかの実施の形態において、第2のイオン交換工程は、少なくとも約350℃、他の実施の形態において、少なくとも約380℃の温度で行われる。第2のイオン交換工程の期間は、浅い区分の所望の深さdaを達成するのに十分であり、いくつかの実施の形態において、30分以下であってよい。他の実施の形態において、その期間は、15分以下であり、いくつかの実施の形態において、約10分から約60分の範囲にある。
第2のイオン交換浴は、第1のイオン交換浴とは異なる。何故ならば、第2のイオン交換工程は、第1のイオン交換工程とは、異なる濃度のより大きい陽イオンを、またはいくつかの実施の形態において、全く異なる陽イオンを、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスに送達することに向けられている、1つ以上の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、カリウムイオンをアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に送達する、少なくとも約95質量%のカリウム組成物を含むことがある。特定の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、約98質量%から約99.5質量%のカリウム組成物を含むことがある。第2のイオン交換浴が少なくとも1種類のカリウム塩のみを含むことが可能であるが、第2のイオン交換浴は、さらに別の実施の形態において、0〜5質量%、または約0.5〜2.5質量%の少なくとも1種類のナトリウム塩、例えば、NaNO3を含んでもよい。例示の実施の形態において、そのカリウム塩はKNO3である。さらに別の実施の形態において、第2のイオン交換工程の温度は、380℃以上であることがある。
第2のイオン交換工程の目的は、図3に示された応力プロファイルの部分a’により表されるような、ガラス物品の表面に直接隣接した領域内の圧縮応力の「スパイク」増加を形成することにある。
ここに記載されたガラス物品は、イオン交換により化学強化されるどのガラスを含んでも、またはどのガラスからなってもよい。いくつかの実施の形態において、ガラスはアルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。
1つの実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、アルミナおよび酸化ホウ素の少なくとも一方、並びにアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物の少なくとも一方を含む、またはから実質的になり、ここで、−15モル%≦(R2O+R’O−Al23−ZrO2)−B23≦4モル%、式中、Rは、Li、Na、K、Rb、およびCsの内の1つであり、R’は、Mg、Ca、Sr、およびBaの少なくとも1つである。いくつかの実施の形態において、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約62モル%から約70モル%のSiO2、0モル%から約18モル%のAl23、0モル%から約10モル%のB23、0モル%から約15モル%のLi2O、0モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約18モル%のK2O、0モル%から約17モル%のMgO、0モル%から約18モル%のCaO、および0モル%から約5モル%のZrO2を含む、またはから実質的になる。いくつかの実施の形態において、前記ガラスは、アルミナおよび酸化ホウ素、並びに少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含み、ここで、−15モル%≦(R2O+R’O−Al23−ZrO2)−B23≦4モル%、式中、Rは、Li、Na、K、Rb、およびCsの内の1つであり、R’は、Mg、Ca、Sr、およびBaの少なくとも1つであり、10≦Al23+B23+ZrO2≦30かつ14≦R2O+R’O≦25、前記ケイ酸塩ガラスは、62〜70モル%のSiO2、0〜18モル%のAl23、0〜10モル%のB23、0〜15モル%のLi2O、6〜14モル%のNa2O、0〜18モル%のK2O、0〜17モル%のMgO、0〜18モル%のCaO、および0〜5モル%のZrO2を含む、またはから実質的になる。このガラスは、共に2007年11月29日に出願された米国仮特許出願第61/004677号に優先権を主張する、「Glasses Having Improved Toughness And Scratch Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等により2008年11月25日に出願された米国特許第8969226号明細書、および「Glasses Having Improved Toughness And Scratch Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等により2012年8月17日に出願された米国特許第8652978号明細書に記載されている。
別の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約60モル%から約70モル%のSiO2、約6モル%から約14モル%のAl23、0モル%から約15モル%のB23、0モル%から約15モル%のLi2O、0モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約10モル%のK2O、0モル%から約8モル%のMgO、0モル%から約10モル%のCaO、0モル%から約5モル%のZrO2、0モル%から約1モル%のSnO2、0モル%から約1モル%のCeO2、約50ppm未満のAs23、および約50ppm未満のSb23を含み、またはから実質的になり、ここで、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、かつ0モル%≦MgO+CaO≦10モル%。いくつかの実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、60〜70モル%のSiO2、6〜14モル%のAl23、0〜3モル%のB23、0〜1モル%のLi2O、8〜18モル%のNa2O、0〜5モル%のK2O、0〜2.5モル%のCaO、0超から3モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、および0〜1モル%のCeO2を含み、またはから実質的になり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、かつ前記ケイ酸塩ガラスは、50ppm未満しかAs23を含まない。いくつかの実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、60〜72モル%のSiO2、6〜14モル%のAl23、0〜3モル%のB23、0〜1モル%のLi2O、0〜20モル%のNa2O、0〜10モル%のK2O、0〜2.5モル%のCaO、0〜5モル%のZrO2、0〜1モル%のSnO2、および0〜1モル%のCeO2を含み、またはから実質的になり、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%、かつ前記ケイ酸塩ガラスは、50ppm未満しかAs23を、また50ppm未満しかSb23を含まない。このガラスは、その全てが、2008年2月26日に出願された米国仮特許出願第61/067130号に優先権を主張する、2009年2月25日に出願された、「Fining Agents for Silicate Glasses」と題する、Sinue Gomez等による米国特許第8158543号明細書、2012年6月13日に出願された、「Silicate Glasses Having Low Seed Concentration」と題する、Sinue Gomez等による米国特許第8431502号明細書、および2013年6月19日に出願された、「Silicate Glasses Having Low Seed Concentration」と題する、Sinue Gomez等による米国特許第8623776号明細書に記載されている。
別の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、SiO2およびNa2Oを含み、このガラスは、ガラスの粘度が35キロポアズ(kP)である温度T35kpを有し、ジルコンが分解して、ZrO2およびSiO2を形成する温度T分解が、T35kpより高い。いくつかの実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約61モル%から約75モル%のSiO2、約7モル%から約15モル%のAl23、0モル%から約12モル%のB23、約9モル%から約21モル%のNa2O、0モル%から約4モル%のK2O、0モル%から約7モル%のMgO、および0モル%から約3モル%のCaOを含む、またはから実質的になる。このガラスは、2009年8月29日に出願された米国仮特許出願第61/235762号に優先権を主張する、2010年8月10日に出願された、「Zircon Compatible Glasses for Down Draw」と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許第8802581号明細書に記載されている。
別の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも50モル%のSiO2、並びにアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種類の改質剤を含み、ここで、[(Al23(モル%)+B23(モル%))/(Σアルカリ金属改質剤(モル%))]>1。いくつかの実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約50モル%から約72モル%のSiO2、約9モル%から約17モル%のAl23、約2モル%から約12モル%のB23、約8モル%から約16モル%のNa2O、および0モル%から約4モル%のK2Oを含む、またはから実質的になる。いくつかの実施の形態において、このガラスは、少なくとも58モル%のSiO2、少なくとも8モル%のNa2O、5.5モル%から12モル%のB23、およびAl23を含み、またはから実質的になり、ここで、[(Al23(モル%)+B23(モル%))/(Σアルカリ金属改質剤(モル%))]>1、Al23(モル%)>B23(モル%)、0.9<R2O/Al23<1.3。このガラスは、両方とも、2009年8月21日に出願された米国仮特許出願第61/235767号に優先権を主張する、Kristen L. Barefoot等により2010年8月18日に出願された、「Crack And Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom」と題する、米国特許第8586492号明細書、およびKristen L. Barefoot等により2013年11月18日に出願された、「Crack And Scratch Resistant Glass and Enclosures Made Therefrom」と題する、米国特許第9290407号明細書に記載されている。
別の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、SiO2、Al23、P25、および少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物(R2O)を含み、ここで、0.75≦[(P25(モル%)+R2O(モル%))/M23(モル%)]≦1.2、式中、M23=Al23+B23。いくつかの実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約40モル%から約70モル%のSiO2、0モル%から約28モル%のB23、0モル%から約28モル%のAl23、約1モル%から約14モル%のP25、および約12モル%から約16モル%のR2Oを含む、またはから実質的になる、そして、特定の実施の形態において、約40モル%から約64モル%のSiO2、0モル%から約8モル%のB23、約16モル%から約28モル%のAl23、約2モル%から約12モル%のP25、および約12モル%から約16モル%のR2Oを含む、またはから実質的になる。このガラスは、2010年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/417941号に優先権を主張する、2011年11月28日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with Deep Compressive Layer and High Damage Threshold」と題する、Dana C. Bookbinder等による米国特許出願公開第2012/0135226A1号明細書に記載されている。
さらに別の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも50モル%のSiO2および少なくとも約11モル%のNa2Oを含み、圧縮応力が少なくとも約900MPaである。いくつかの実施の形態において、このガラスは、Al23と、B23、K2O、MgOおよびZnOの内の少なくとも1種類とをさらに含み、ここで、−340+27.1・Al23−28.7・B23+15.6・Na2O−61.4・K2O+8.1・(MgO+ZnO)≧0モル%。特定の実施の形態において、このガラスは、約7モル%から約26モル%のAl23、0モル%から約9モル%のB23、約11モル%から約25モル%のNa2O、0モル%から約2.5モル%のK2O、0モル%から約8.5モル%のMgO、および0モル%から約1.5モル%のCaOを含む、またはから実質的になる。このガラスは、2011年7月1日に出願された米国仮特許出願第61/503734号に優先権を主張する、2012年6月26日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Compressive Stress」と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許第9290413号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、イオン交換可能であり、少なくとも約50モル%のSiO2、少なくとも約10モル%のR2O(R2OはNa2Oを含む)、Al23、およびB23を含み、ここで、B23−(R2O−Al23)≧3モル%。いくつかの実施の形態において、このガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2、少なくとも約10モル%のR2O(R2OはNa2Oを含む)、Al23、および3〜4.5モル%のB23を含み、ここで、Al23(モル%)<R2O(モル%)、B23(モル%)−(R2O(モル%)−Al23(モル%))≧3モル%。特定の実施の形態において、このガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2、約9モル%から約22モル%のAl23、約3モル%から約10モル%のB23、約9モル%から約20モル%のNa2O、0モル%から約5モル%のK2O、少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、またはそれらの組合せ、および必要に応じて、CaO、BaO、およびSrOの内の少なくとも1種類を含み、またはから実質的になり、0≦MgO≦6モル%、0≦ZnO≦6モル%、0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%。このガラスは、イオン交換されたときに、いくつかの実施の形態において、少なくとも約10kgf(約98N)のビッカース亀裂発生閾値を有する。そのようなガラスは、両方とも、2012年5月31日に出願された米国仮特許出願第61/653489号に優先権を主張する、「Zircon Compatible, Ion Exchangeable Glass with High Damage Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等により、2013年5月28日に出願された米国特許第8951927号の継続出願である、「Zircon Compatible, Ion Exchangeable Glass with High Damage Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等により、2013年5月28日に出願された米国特許第8946103号明細書に記載されている。
いくつかの実施の形態において、前記ガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2、少なくとも約10モル%のR2O(R2OはNa2Oを含む)、Al23、およびB23を含み、ここで、−0.5モル%≦Al23(モル%)−R2O(モル%)≦2モル%、かつB23(モル%)−(R2O(モル%)−Al23(モル%))≧4.5モル%。他の実施の形態において、前記ガラスは、ガラスの粘度が約40キロポアズを超える温度と等しいジルコン分解温度を有し、少なくとも約50モル%のSiO2、少なくとも約10モル%のR2O(R2OはNa2Oを含む)、Al23、およびB23を含み、ここで、B23(モル%)−(R2O(モル%)−Al23(モル%))≧4.5モル%。さらに他の実施の形態において、前記ガラスは、イオン交換されており、少なくとも約30gkf(約294N)のビッカース亀裂発生閾値を有し、少なくとも約50モル%のSiO2、少なくとも約10モル%のR2O(R2OはNa2Oを含む)、Al23、およびB23を含み、ここで、−0.5モル%≦Al23(モル%)−R2O(モル%)≦2モル%、かつB23(モル%)−(R2O(モル%)−Al23(モル%))≧4.5モル%。そのようなガラスは、2012年5月31日に出願された米国仮特許出願第61/653485号からの優先権を主張する、2013年5月28日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Damage Resistance」と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願公開第2014/0106172A1号明細書に記載されている。
特定の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、少なくとも約4モル%のP25を含み、ここで、(M23(モル%)/RxO(モル%))<1、式中、M23=Al23+B23、RxOは、このアルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価および二価の陽イオン酸化物の合計である。いくつかの実施の形態において、一価および二価の陽イオン酸化物は、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、およびZnOからなる群より選択される。いくつかの実施の形態において、そのガラス中のB23は、0モル%である。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、少なくとも約10μmの層の深さまでイオン交換されており、少なくとも約4モル%のP25を含み、ここで、0.6<[(M23(モル%)/RxO(モル%)]<1.4または1.3<[(P25+R2O)/M23]≦2.3、式中、M23=Al23+B23、RxOは、このアルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する一価および二価の陽イオン酸化物の合計であり、R2Oは、このアルカリアルミノケイ酸塩ガラス中に存在する二価の陽イオン酸化物の合計である。このガラスは、両方とも、2011年11月16日に出願された米国仮特許出願第61/560434号に優先権を主張する、2012年11月15日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」と題する、Timothy M. Grossによる米国特許第9156724号明細書、および2012年11月15日に出願された、「Ion Exchangeable Glass with High Crack Initiation Threshold」と題する、Timothy M. Grossによる米国特許第8765262号明細書に記載されている。
他の実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは、約50モル%から約72モル%のSiO2、約12モル%から約22モル%のAl23、約15モル%までのB23、約1モル%までのP25、約11モル%から約21モル%のNa2O、約5モル%までのK2O、約4モル%までのMgO、約5モル%までのZnO、および約2モル%までのCaOを含む。いくつかの実施の形態において、前記ガラスは、約55モル%から約62モル%のSiO2、約16モル%から約20モル%のAl23、約4モル%から約10モル%のB23、約14モル%から約18モル%のNa2O、約0.2モル%から約4モル%のK2O、約0.5モル%までのMgO、約0.5モル%までのZnO、および約0.5モル%までのCaOを含み、このガラスは、P25を実質的に含まない。いくつかの実施の形態において、Na2O+K2O−Al23≦2.0モル%、特定の実施の形態において、Na2O+K2O−Al23≦0.5モル%。いくつかの実施の形態において、B23−(Na2O+K2O−Al23)>4モル%、特定の実施の形態において、B23−(Na2O+K2O−Al23)>1モル%。いくつかの実施の形態において、24モル%≦RAlO4≦45モル%、他の実施の形態において、28モル%≦RAlO4≦45モル%、式中、Rは、Na、K、およびAgの内の少なくとも1種類である。このガラスは、2013年11月26日に出願された、「Fast Ion Exchangeable Glasses with High Indentation Threshold」と題する、Matthew J. Dejneka等による米国特許出願公開第2015/0147575A1号明細書に記載されている。
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、ヒ素、アンチモン、バリウム、ストロンチウム、ビスマス、およびそれらの化合物の少なくとも1種類を実質的に含まない。他の実施の形態において、そのガラスは、約0.5モル%までのLi2O、または約5モル%までのLi2O、もしくはいくつかの実施の形態において、約10モル%までのLi2Oを含んでもよい。
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、イオン交換されたときに、鋭いまたは急な衝撃による傷の導入に対して耐性がある。したがって、これらのイオン交換されたガラスは、少なくとも約10キログラム重(kgf)のビッカース亀裂発生閾値を示す。特定の実施の形態において、これらのガラスは、少なくとも20kgf(約196N)、いくつかの実施の形態において、少なくとも約30kgf(約294N)のビッカース亀裂発生閾値を示す。
ここに記載されたガラスは、いくつかの実施の形態において、スロットドロー法、フュージョンドロー法、リドロー法などの当該技術分野で公知の過程によりダウンドロー可能であり、少なくとも130キロポアズの液相粘度を有する。先に挙げた組成物に加え、様々な他のイオン交換可能なアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を使用してもよい。
ここに記載された強化ガラスは、様々な二次元および三次元形状に適していると考えられ、様々な用途に利用でき、ここで、様々な厚さが考えられる。いくつかの実施の形態において、前記ガラス物品の厚さは、約0.1mmから約1.5mmまでの範囲にある。いくつかの実施の形態において、そのガラス物品の厚さは、約0.1mmから約1.0mmまでの範囲、特定の実施の形態において、約0.1mmから約0.5mmまでの範囲にある。
強化ガラス物品は、それらの中央張力により定義してもよい。1つ以上の実施の形態において、その強化ガラス物品は、CT≦150MPa、またはCT≦125MPa、またはCT≦100MPaを有する。その強化ガラスの中央張力は、強化ガラス物品の壊れやすい挙動に関連する。
別の態様において、強化ガラス物品であって、強化ガラス物品の表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在する少なくとも1つの圧縮応力層を有する強化ガラス物品を製造する方法が提供される。この方法は、第1のイオン交換過程であって、圧縮応力層が、第1のイオン交換工程後に少なくとも約45μmの圧縮深さを有するような十分な時間に亘り、400℃超の温度で、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品が第1のイオン交換浴中に浸漬される、第1のイオン交換過程を含む。いくつかの実施の形態において、第1の工程後に達成される圧縮深さが少なくとも50μmであることが好ましい。特にガラスの厚さが0.5mmを超える場合、55μm超、またさらには60μm超の圧縮深さDOCがさらにより好ましい。
第1のイオン交換浴中の実際の浸漬時間は、イオン交換浴の温度および/または組成、ガラス内の陽イオンの拡散性などの要因によるであろう。したがって、イオン交換の様々な期間が、適していると考えられる。イオン交換浴からのカリウム陽イオンが、ガラス中のナトリウム陽イオンと交換される場合、その浴は、典型的に、硝酸カリウム(KNO3)を含む。ここで、第1のイオン交換工程は、いくつかの実施の形態において、少なくとも5時間の時間に亘り行われることがある。第1のイオン交換工程に関するより長いイオン交換期間は、第1のイオン交換浴中のより多いナトリウムイオン含有量と相関するであろう。第1のイオン交換浴中の所望のナトリウムイオン含有量は、例えば、第1のイオン交換浴中に硝酸ナトリウム(NaNO3)などのナトリウム化合物を少なくとも約30質量%、またはいくつかの実施の形態において、少なくとも約40質量%含ませることにより、達成されるであろう。いくつかの実施の形態において、そのナトリウム化合物は、第1のイオン交換浴の約40質量%から約60質量%を占める。例示の実施の形態において、第1のイオン交換工程は、約440℃以上の温度で行われる。
第1のイオン交換工程が行われた後、強化ガラス物品は、少なくとも150MPaの最大圧縮応力(CS)を有するであろう。さらに別の実施の形態において、その強化ガラス物品は、第1のイオン交換工程後に少なくとも200MPaのCS、または第1のイオン交換工程後に約200から約300MPaのCS範囲を有することがある。この第1のイオン交換工程は、最小で、少なくとも45μmの圧縮層深さ/圧縮深さDOCを達成するが、圧縮応力層は、第1のイオン交換工程後に、50μmから100μm、いくつかの実施の形態において、60μmから100μmの深さを有することがあると考えられる。
第1のイオン交換工程後に、少なくとも約3μmの深さdaを有する浅い急勾配区分を生成するのに十分な時間に亘り、少なくとも350℃の温度で、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品を、第1のイオン交換浴とは異なる第2のイオン交換浴中に浸漬することにより、第2のイオン交換工程を行ってもよい。
第2のイオン交換工程は、図3に示されたような、ガラスの表面近くで圧縮応力の「スパイク」を生じる比較的急激なイオン交換工程である。1つ以上の実施の形態において、第2のイオン交換工程は、約30分まで、他の実施の形態において、約15分まで、いくつかの実施の形態において、約10分から約60分の範囲の期間に亘り行われることがある。
第2のイオン交換工程は、第1のイオン交換工程と異なるイオンをアルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品に送達することに関する。したがって、第2のイオン交換浴の組成は、第1のイオン交換浴のものとは異なる。いくつかの実施の形態において、第2のイオン交換浴は、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス物品にカリウムイオンを送達するカリウム組成物(例えば、KNO3)を少なくとも約95質量%含む。特定の実施の形態において、第2のイオン交換浴は、約98質量%から約99.5質量%のカリウム組成物を含むことがある。第2のイオン交換浴がカリウム組成物のみを含むことが可能であるが、第2のイオン交換浴は、さらなる実施の形態において、例えば、NaNO3などのナトリウム組成物を約2質量%まで、または約0.5質量%から約1.5質量%まで含んでもよい。さらなる実施の形態において、第2のイオン交換工程の温度は390℃以上であることがある。
いくつかの実施の形態において、第2のイオン交換工程が化学強化手法を完了させることがある。前記強化ガラス物品は、第2のイオン交換工程後に、少なくとも約700MPaの圧縮応力(CS)を有することがある。さらに別の実施の形態において、その強化ガラス物品は、第2のイオン交換工程後に、約700から約1200MPa、または約700から1000MPaの最大圧縮応力を有する。この第2のイオン交換工程は、最小で、少なくとも約70μmの圧縮層DOLを達成するが、圧縮応力層は、第2のイオン交換工程後に、約90μmから約130μmの範囲にあるDOLを有することがあると考えられる。
壊れやすい挙動は、強化ガラス物品(例えば、プレートまたはシート)の多数の小片(例えば、1mm以下)への破壊;ガラス物品の単位面積当たりに形成された破片の数;ガラス物品中の初期亀裂から分岐する多数の亀裂;元の位置からの所定の距離(例えば、約5cm、または約2インチ)までの少なくとも1つの破片の激しい放出;並びに先の破壊(サイズおよび密度)、亀裂形成、および放出挙動のいずれかの組合せ:の少なくとも1つにより特徴付けられる。ここに用いたように、「壊れやすい挙動」および「壊れやすさ」という用語は、コーティング、接着層などのいずれの外部的制約もない強化ガラス物品の激しいまたは強力な割れのそれらの態様を称する。ここに記載された強化ガラス物品と共に、コーティング、接着層などを使用してよいが、そのような外部的制約は、ガラス物品の壊れやすさまたは壊れやすい挙動の決定の際に使用されない。
尖った炭化タングステン(WC)先端を有する罫書き針との点衝撃の際の、強化ガラス物品の壊れやすい挙動および壊れやすくない挙動の例が、図13aおよび13bに示されている。壊れやすい挙動を決定するために使用される点衝撃試験は、強化ガラス物品内に存在する内部貯蔵エネルギーを放出するのに丁度十分である力をガラス物品の表面に送達する装置を含む。すなわち、点衝撃力は、強化ガラスシートの表面に少なくとも1つの新たな亀裂を生じ、その亀裂を圧縮応力CS領域(すなわち、層の深さ)を通じて、中央張力CT下にある領域中まで延在させるのに十分である。強化ガラスシートに亀裂を生じさせるまたは与えるのに必要な衝撃エネルギーは、物品の圧縮応力CSおよび層の深さDOLに依存し、それゆえ、シートを強化した条件(すなわち、イオン交換によりガラスを強化するのに使用した条件)に依存する。別の方法では、図13aおよび13bに示された各イオン交換済みガラスプレートに、内側領域が引張応力下にあるプレートの内側領域に亀裂を伝搬させるのに十分な尖ったダーツ型圧子(例えば、尖ったWC点を有する罫書き針)を施した。ガラスプレートに印加された力は、内部領域の始まりに到達するのに丁度十分であり、それゆえ、亀裂を生じさせるエネルギーを、外面でのダーツ衝撃力からではなく、内部領域内の引張応力から始めさせることができる。放出程度は、例えば、ガラスサンプルをグリッド上で中心に置き、サンプルに衝撃を与え、グリッドを使用して、個々の小片の放出距離を測定することによって、決定してよい。
図14aを参照すると、ガラスプレートaは、壊れやすいと分類できる。詳しくは、ガラスプレートaは、放出された多数の小片に砕け、小片を生じる初期亀裂からの大きい程度の亀裂分岐を示した。破片の約50%はサイズが1mm未満であり、初期亀裂から約8から10の亀裂が分岐したと予測される。図14aに見られるように、元のガラスプレートaから、ガラス片が約5cm放出された。先に記載された3つの基準(すなわち、多数の亀裂分岐、放出、および極端な割れ)のいずれかを示すガラス物品は、壊れやすいと分類される。例えば、ガラスが、過剰な分岐のみを示すが、先に記載したような、放出または極端な割れを示さない場合、そのガラスは、それでも、壊れやすいと特徴付けられる。
ガラスプレートb、c(図14b)およびd(図14a)は、壊れやすいと分類されない。これらのサンプルの各々の場合、ガラスシートは、小数の大きい破片に割れた。例えば、ガラスプレートb(図14b)は、亀裂の分岐なく、2つの大きい破片に割れた;ガラスプレートc(図14b)は、初期亀裂から2つの亀裂に分岐し、4つの破片に割れた;ガラスプレートd(図14a)は、初期亀裂から2つの亀裂に分岐し、4つの破片に割れた。放出された破片がないこと(すなわち、元の位置から2インチ(約5cm)を超えてガラス片が強制的に放出されていない)、サイズが1mm以下の目に見える破片がないこと、および観察された亀裂分岐が最小量であることに基づいて、サンプルb、c、およびdは、壊れやすくないまたは実質的に壊れやすくないと分類される。
先に基づいて、別の物体による衝撃の際の、ガラス、ガラスセラミック、および/またはセラミック物品の壊れやすいまたは壊れやすくない挙動の程度を定量化するために、壊れやすさ指数(表1)を構成することができる。壊れやすくない挙動の1から、極めて壊れやすい挙動の5までに及ぶ指数を、異なるレベルの壊れやすさまたは壊れにくさを記述するために割り当てた。その指数を使用して、壊れやすさは、多数のパラメータに関して特徴付けることができる:1)直径(すなわち、最大寸法)が1mm未満(表1の「破片サイズ」)の破片の個体数の百分率;2)サンプルの単位面積(この場合、cm2)当たりに形成された破片の数(表1の「破片密度」);3)衝撃の際に形成された初期亀裂から分岐した亀裂の数(表1の「亀裂分岐」);および4)元の位置からの約5cm(または約2インチ)を超える、衝撃の際に放出された破片の個体数の百分率(表1の「放出」)。
壊れやすさ指数は、ガラス物品が特定の指数値に関連する基準の少なくとも1つを満たした場合に、その物品に割り当てられる。あるいは、ガラス物品が、壊れやすさの2つの特定のレベルの間の基準を満たした場合、その物品に、壊れやすさ指数範囲(例えば、2〜3の壊れやすさ指数)が割り当てられることがある。ガラス物品に、表1に列挙された個々の基準から決定されるように、壊れやすさ指数の最高値を割り当ててもよい。多くの場合、表1に列挙された、元の位置からの5cmを超えて放出された破片の百分率または破片密度などの、基準の各々の値を確認することは不可能である。それゆえ、異なる基準が、1つの基準レベル内に入るガラス物品に、壊れやすさおよび壊れやすさ指数の対応する程度が割り当てられるように、壊れやすい挙動および壊れやすさ指数の個々の代わりの尺度と考えられる。表1に列挙された4つの基準のいずれかに基づく壊れやすさ指数が3以上である場合、そのガラス物品は壊れやすいと分類される。
図13aおよび13bに示されたサンプルに先の壊れやすさ指数を適用すると、ガラスプレートaは、多数の放出された小片に砕け、小片を生じる初期亀裂からの大きな程度の亀裂分岐を示した。破片の約50%はサイズが1mm未満であり、初期亀裂から約8から10の亀裂が分岐したと予測される。表1に列挙された基準に基づいて、ガラスプレートaは、約4〜5の間の壊れやすさ指数を有し、中から高度の壊れやすさを有すると分類される。
3未満の壊れやすさ指数(低い壊れやすさ)を有するガラス物品は、壊れやすくないまたは実質的に壊れやすくないと考えてもよい。ガラスプレートb、c、およびdの各々は、直径が1mm未満の破片、衝撃の際に形成された初期亀裂からの多数の分岐、および元の位置から5cmを超えて放出された破片がない。ガラスプレートb、c、およびdは、壊れやすくなく、それゆえ、1の壊れやすさ指数(壊れにくい)を有する。
先に論じたように、図13aおよび13bにおいて、壊れやすい挙動を示したガラスプレートaと、壊れやすくない挙動を示したガラスプレートb、c、およびdとの間の観察された挙動の違いは、試験したサンプルの中での中央張力CTの差が原因であり得る。そのような壊れやすい挙動の可能性は、携帯電話、エンターテイメント機器などの携帯用または移動式電子機器、並びにラップトップコンピュータなどの情報端末(IT)機器用のディスプレイ向けの、カバープレートまたは窓などの、様々なガラス製品の設計における1つの検討事項である。さらに、ガラス物品に設計できるまたは与えられる圧縮層の深さDOLおよび圧縮応力CSsの最大値は、そのような壊れやすい挙動により制限される。
したがって、ここに記載された強化ガラス物品は、いくつかの実施の形態において、強化ガラス物品を破壊するのに十分な点衝撃が施されたときに、3未満の壊れやすさ指数を示す。他の実施の形態において、壊れやすくない強化ガラス物品は、2未満または1未満の壊れやすさ指数を達成することがある。
ここに記載された強化ガラス物品は、繰り返し落下試験が行われたときに、改善された破壊抵抗を示す。研磨紙上反転球(IBoS)試験は、損傷の導入に加え、図15bに概略示されるような、携帯用または手持ち式電子機器に使用される強化ガラス物品に典型的に生じる曲げによる、破壊の支配的メカニズムを模倣した動的成分レベル試験である。現場では、ガラスの上面に損傷の導入(図15bにおけるa)が起こる。割れがガラスの上面で始まり、損傷が圧縮層に貫通する(図15bにおけるb)か、または割れが、上面の曲げからまたは中央張力から伝搬する(図15bにおけるc)。このIBoS試験は、ガラスの表面への損傷の導入と、動荷重下での曲げの印加を同時に行うように設計されている。
IBoS試験装置が、図15aに概略示されている。装置200は、試験スタンド210および球230を含む。球230は、例えば、ステンレス鋼球などの、剛体または固体球である。1つの実施の形態において、球230は、直径が10mmで4.2グラムのステンレス鋼球である。球230は、所定の高さhからガラスサンプル218に直接落とされる。試験スタンド210は、花崗岩などの硬質剛性材料から作られた固体土台212を含む。シートの表面に研磨材を有するシート214が、研磨材を有する表面が上向きになるように、固体土台212の上面に配置されている。シート214は、いくつかの実施の形態において、30グリットの表面、他の実施の形態において、180グリットの表面を有する研磨紙である。ガラスサンプル218は、ガラスサンプル218とシート214との間に空隙216が存在するように、サンプル保持器215によりシート214の上の適所に保持される。ガラスシート214とガラスサンプル218との間に空隙216により、球230によるシート214の研磨面への衝撃の際に、ガラスサンプル218が曲げられる。1つの実施の形態において、ガラスサンプル218は、曲げが球の衝撃点のみに制約され、再現性を確保するために、全ての角で固定されている。いくつかの実施の形態において、サンプル保持器215および試験スタンド210は、約2mmまでのサンプル厚を収容するように適合されている。空隙216は、約50μmから約100μmの範囲にある。球230の衝撃の際にガラスサンプルの割れ事象における破片を収集するために、粘着テープ220を使用して、ガラスサンプルの上面を覆ってもよい。
研磨面として様々な材料を使用してよい。1つの特定の実施の形態において、研磨面は、炭化ケイ素またはアルミナ研磨紙、工業用研磨紙、または同程度の硬度および/または鋭さを有すると当業者に知られている任意の研磨材などの研磨紙である。いくつかの実施の形態において、公知の範囲にある粒子の鋭さ、コンクリートやアスファルトよりも一貫した表面トポグラフィー、並びに試料に所望のレベルの表面損傷を生じる粒径および鋭さを有するので、180グリットおよび約70μmから約90μmに及ぶ平均グリット粒径を有する研磨紙を使用してよい。ここに記載された落下試験に使用してよい市販の180グリット研磨紙の1つの非限定例に、Indasaにより製造されているRhynowet(登録商標)180グリット研磨紙がある。
1つの態様において、先に記載された装置200においてIBoS試験を行う方法300が、図15cに示されている。工程310において、先に記載され、ガラスサンプル218と、研磨面を有するシート214との間に空隙216が形成されるように、サンプル保持器215に固定されたガラスサンプル(図15aにおける218)を、試験スタンド210に配置する。方法300は、研磨面を有するシート214が既に試験スタンド210に配置されていることを前提とする。しかしながら、いくつかの実施の形態において、この方法は、研磨材を有する表面が上向きになるように、試験スタンド210にシート214を配置する工程を含んでもよい。いくつかの実施の形態(工程310a)において、ガラスサンプル218をサンプル保持器215に固定する前に、ガラスサンプル218の上面に粘着テープ220を貼る。
工程320において、所定の質量とサイズの固体球230を、所定の高さhからガラスサンプル218の上面に落とし、よって、球230が上面に、その上面のほぼ中心(すなわち、中心から1mm以内、または3mm以内、または5mm以内、または10mm以内)に衝突する。工程320における衝突後、ガラスサンプル218に対する損傷の程度を決定する(工程330)。先に述べたように、ここでは、「割れ」という用語は、その基体が落下したとき、または物体によりその基体に衝撃が与えられたときに、亀裂が基体の全厚および/または全表面に亘り伝搬することを意味する。
試験300において、研磨面を有するシート214は、他の種類(例えば、コンクリートまたはアスファルト)の落下試験表面の反復使用に観察されてきた「時効」硬化を避けるために、各落下後に交換してもよい。
試験300に、様々な所定の落下高さhおよび増分が一般に使用される。この試験は、例えば、始めに最小落下高さ(例えば、約10〜20cm)を使用することがある。次いで、この高さは、規定の増分または可変の増分のいずれかだけ、連続した落下のために増加させてよい。試験300は、ガラスサンプル218が一旦壊れたら停止する(図15cにおける工程331)。あるいは、落下高さhが、ガラスが割れずに最大落下高さ(例えば、約220cm)に到達したら、落下試験300を停止しても、または割れが生じるまで、ガラスサンプル218をその最大高さから繰り返し落下させてもよい。
いくつかの実施の形態において、IBoS試験300は、各所定の高さhで各ガラスサンプル218に一度だけ行われる。しかしながら、他の実施の形態において、各サンプルに、各高さで多数の試験を行ってもよい。
ガラスサンプル218の割れが生じた場合(図15cにおける工程331)、IBoS試験300が終わる(工程340)。所定の落下高さでの球の落下により割れが観察されない場合(図15cにおける工程332)、例えば、5、10、または20cmなどの、所定の増分だけ落下高さを増加させ(工程334)、サンプルの割れが観察されるか(工程331)、またはサンプルが割れずに、最大試験高さに到達する(工程336)まで、工程320および330を繰り返す。工程331または336のいずれかに到達したら、試験300が終わる。
上述した研磨紙上反転球(IBoS)試験を行う場合、球を100cmの高さからガラスの表面に落下させたときに、先に記載された強化ガラスは、少なくとも約60%の「生存率」を有する。例えば、強化ガラス物品は、5つの同一のサンプル(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、強化されたときに、ほぼ同じCSおよびDOCまたはDOLを有する)の内の3つが、割れずにIBoS試験に生存した場合、所定の高さから落下したときに60%の生存率を有すると記載される。他の実施の形態において、IBoS試験において100cmから落とされた強化ガラスの生存率は、少なくとも約70%、他の実施の形態において、少なくとも約80%、さらに他の実施の形態において、少なくとも約90%である。他の実施の形態において、IBoS試験において180cmから落とされた強化ガラスの生存率は、少なくとも約60%、他の実施の形態において、少なくとも約70%、さらに他の実施の形態において、少なくとも約80%、他の実施の形態において、少なくとも約90%である。
先に記載されたIBoS試験方法および装置を使用して、所定の高さから落下したときの強化ガラス物品の生存率を決定するために、強化ガラスの少なくとも5つの同一のサンプル(すなわち、組成、およびほぼ同じCSおよびDOCまたはDOL)が試験されるが、それより多い数(例えば、10、20、30など)のサンプルに試験を行ってもよい。各サンプルは、所定の高さ(例えば、100cm)から一回落とされ、割れの証拠(サンプルの全厚および/または全表面に亘る亀裂の形成および伝搬)について目視で(すなわち、裸眼で)調べた。落下後に割れが観察されない場合、サンプルは、落下試験に「生存した」と考えられる。生存率は、落下試験に生存したサンプル個体数の百分率であると決定される。例えば、落下したときに、10のサンプル群の内の7つのサンプルが割れなかった場合、生存率は70%となるであろう。
ここに記載された強化ガラス物品は、研磨時リング・オン・リング(AROR)を行った場合、改善された表面強度を示す。材料の強度は、割れが生じた応力と定義される。研磨時リング・オン・リングは、平らなガラス試料を試験するための表面強度測定であり、「Standard Test Method for Monotonic Equibiaxial Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature」と題するASTM C1499−09(2013)が、ここに記載されたリング・オン・リング研磨時ROR試験方法論の土台として働く。ASTM C1499−09の内容が、ここに全て引用される。少なくとも1つの研磨面を有するガラス試料を、図19に概略示されたように、異なるサイズの2つの同心のリングの間に配置して、等二軸曲げ強度(すなわち、2つの同心のリングの間の湾曲に施されたときに材料が維持できる最大応力)を決定する。1つの実施の形態において、ガラス試料は、ガラスサンプルに送達される90グリットの炭化ケイ素(SiC)粒子で研磨される。研磨時リング・オン・リング構成400において、研磨されたガラス試料410は、直径D2を有する支持リング420により支持されている。直径D1を有する荷重リング430によりガラス試料の表面に、ロードセル(図示せず)により、力Fを印加する。
荷重リングと支持リングの直径比D1/D2は、0.2と0.5の間にあるであろう。いくつかの実施の形態において、D1/D2は約0.5である。荷重および支持リング430、420は、支持リングの直径D2の0.5%以内に同心状に揃えるべきである。試験に使用されるロードセルは、選択された範囲内の任意の荷重で±1%以内まで正確であるべきである。いくつかの実施の形態において、試験は、23±2℃の温度および40±10%の相対湿度で行われる。
器具の設計について、荷重リング430の突出面の半径rは、h/2≦r≦3h/2であり、式中、hは試料410の厚さである。荷重および支持リング430、420は、一般に、硬度HRc>40の硬化鋼から作られている。ROR器具は市販されている。
ROR試験の目的の破壊メカニズムは、荷重リング430内の表面430aから発生する試料410の割れを観察することである。この領域の外−すなわち、荷重リング430と支持リング420との間−で生じる割れは、データ解析から除外する。しかしながら、ガラス試料410の薄さと高強度のために、試料の厚さhの1/2を超える大きい撓みが観察されることがある。したがって、荷重リング430の下から生じる割れの百分率が高いと観察することは、珍しいことではない。リングの内側と下側の両方での応力の発生(歪みゲージ分析により収集)および各試料における破損の始点を知らずには、応力は正確に計算できない。したがって、AROR試験は、測定反応としての破損時の最大荷重に焦点を当てる。
ガラスの強度は、表面傷の存在に依存する。しかしながら、ガラスの強度は実際には統計に基づくので、存在する所定のサイズの傷の傾向は正確に予測できない。したがって、ワイブル確率分布が、データの統計的表示に一般に使用される。
いくつかの実施の形態において、ここに記載された強化ガラスは、研磨時リング・オン・リング試験により決定して少なくとも10kgf(約98N)の表面強度または等二軸曲げ強度を有する。他の実施の形態において、表面強度は、少なくとも20kgf(約196N)、さらに他の実施の形態において、少なくとも30kgf(約294N)である。2つの強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラスに関するサンプル厚の関数としてのARORデータのプロットが、図20に示されている。米国特許出願第13/305271号明細書に記載された強化ガラスAは、ここに記載された二段階イオン交換過程から生じた、図3に示された圧縮応力プロファイルを示すのに対し、米国特許出願第13/903433号明細書に記載された強化ガラスBは、図3に示された圧縮応力プロファイルを示さない。図20から分かるように、この二段階イオン交換過程により、AROR測定により決定して、より高い表面強度が生じる。
以下の実施例は、ここに記載された特徴および利点を説明するものであり、決して、本開示および付随の特許請求の範囲をそれらに限定することは意図されていない。
圧縮応力プロファイル
先に言及されたRoussev IおよびRoussev IIにより記載された方法を使用して、様々な厚さのガラスサンプルをイオン交換し、それらのそれぞれの圧縮応力プロファイルを決定した。TMおよびTE偏光に関する結合光学モードのスペクトルを、プリズム結合技法により収集し、全体として使用して、詳細かつ正確なTMおよびTE屈折率プロファイルnTM(z)およびnTE(z)を得て、屈折率プロファイルの形状を描写する所定の関数形式の数値計算スペクトルに測定モードスペクトルを当てはめ、最良の適合から関数形式のパラメータを得ることにより、詳細な屈折率プロファイルを得る。それらのガラスサンプルは、Timothy M. Grossによる米国特許出願第13/678013号明細書に記載された組成を有した。厚さが0.4mm、0.5mm、0.7mm、0.8mm、および1.0mmのサンプルを研究した。これらのイオン交換研究の結果が、表2に纏められている。
i)厚さ0.4mm
サンプルaを、52質量%のNaNO3および48質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中において9時間に亘り440℃でイオン交換した。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図4aは、モードスペクトルから決定されたTE(1)およびTM(2)屈折率プロファイルを示しており、図4bは、圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。サンプルaの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、232MPaおよび63μmと決定された。
サンプルbを、52質量%のNaNO3および48質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中において10時間に亘り440℃でイオン交換した。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図5aは、モードスペクトルから決定されたTE(1)およびTM(2)屈折率プロファイルを示しており、図5bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。サンプルbの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、232MPaおよび65μmと決定された。
次いで、サンプルbに、1質量%のNaNO3および99質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における12分間に亘る390℃での第2のイオン交換を行った。図5cは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、ガラスの表面(深さ0μm)から、約8μmでの移行領域Cの始まりまで延在する第1の線形区分A、および約16μmでの移行領域Cの終わりから延在する第2の線形区分Bを有する。図5cに示された圧縮応力プロファイルは、図3に概略示された応力プロファイルに似ている。このサンプルの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、846MPaおよび61μmと決定された。応力プロファイルの区分Bの勾配は約−3.75MPa/μmであるのに対し、区分Aの勾配は−89MPa/μmであった。勾配Aから勾配Bへの移行領域Cは、約8μmから約16μmの深さに及んだ。
サンプルcを、52質量%のNaNO3および48質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中において11.25時間に亘り440℃でイオン交換した。イオン交換後、モードスペクトルから決定されたTEおよびTM屈折率プロファイルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図6aは、TE(1)およびTM(2)モードスペクトルを示しており、図6bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。サンプルcの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、227MPaおよび67μmと決定された。
ii)厚さ0.5mm
サンプルdを、37質量%のNaNO3および63質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中において5.8時間に亘り440℃でイオン交換した。イオン交換後、モードスペクトルから決定されたTEおよびTM屈折率プロファイルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図7aは、TE(1)およびTM(2)モードスペクトルを示しており、図7bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。サンプルdの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、255MPaおよび57μmと決定された。
サンプルeを、52質量%のNaNO3および48質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中において8.3時間に亘り440℃でイオン交換した。イオン交換後、モードスペクトルから決定されたTEおよびTM屈折率プロファイルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図8aは、TE(1)およびTM(2)モードスペクトルを示しており、図8bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。サンプルeの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、243MPaおよび66μmと決定された。
iii)厚さ0.55mm
サンプルkに、約40質量%のNaNO3および60質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における7.75時間に亘る450℃での第1のイオン交換を行った。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図13aは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。第1のイオン交換後のサンプルkの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、268MPaおよび73μmと決定された。線形圧縮応力プロファイルの勾配は、−3.7MPa/μmであった。
次いで、サンプルkに、約0.5質量%のNaNO3および約99.5質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における12分間に亘る390℃での第2のイオン交換を行った。図13bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。第2のイオン交換後、この圧縮応力プロファイルは、ガラスの表面から、約8μmでの移行領域Cまで延在する第1の線形区分A、および約16μmでの移行領域Cから圧縮深さDOCまで延在する第2の線形区分Bを有した。図13bの圧縮応力プロファイルは、図3に概略示された応力プロファイルに似ている。第2のイオン交換工程後のサンプルkの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、896MPaおよび70μmと決定された。部分Bの勾配は約−3.7MPa/μmであったのに対し、部分Aの勾配は−86MPa/μmであった。移行領域Cは、約8μmから約16μmの深さに及んだ。
iv)厚さ0.7mm
サンプルfに、45質量%のNaNO3および55質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における8.5時間に亘る450℃での第1のイオン交換を行った。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図9aは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。第1のイオン交換後のサンプルfの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、281MPaおよび75μmと決定された。線形圧縮応力プロファイルの勾配は、−3.75MPa/μmであった。
次いで、サンプルfに、1質量%のNaNO3および99質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における12分間に亘る390℃での第2のイオン交換を行った。図9bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。第2のイオン交換後、この圧縮応力プロファイルは、ガラスの表面から、約7μmでの移行領域Cまで延在する第1の線形区分A、および約15μmでの移行領域Cから圧縮深さDOCまで延在する第2の線形区分Bを有し、図3に概略示された応力プロファイルに似ている。第2のイオン交換後のサンプルfの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、842MPaおよび72μmと決定された。部分Bの勾配は約−3.75MPa/μmであったのに対し、部分Aの勾配は−85MPa/μmであった。移行領域Cは、約7μmから約15μmの深さに及んだ。
v)厚さ0.8mm
サンプルgおよびhに、37質量%のNaNO3および63質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における8.8時間に亘る440℃での第1のイオン交換を行った。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図10aは、第1のイオン交換後の、モードスペクトルから決定されたサンプルgの圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。第1のイオン交換後のサンプルgの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、358MPaおよび72μmと決定された。線形圧縮応力プロファイルの勾配は、−5.1MPa/μmであった。
次いで、サンプルgに、1質量%のNaNO3および99質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における12分間に亘る390℃での第2のイオン交換を行った。図10bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。第2のイオン交換後、この圧縮応力プロファイルは、ガラスの表面から移行領域まで延在する第1の線形区分または部分A、および移行領域Cから圧縮深さDOCまで延在する第2の線形区分Bを有した。これは、図3に概略示された応力プロファイルに似ている。第2のイオン交換後のサンプルgの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、861MPaおよび70μmと決定された。部分Bの勾配は−4.65MPa/μmであったのに対し、部分Aの勾配は−78MPa/μmであった。勾配Aから勾配Bまでの移行領域Cは、約7μmから約12μmの深さの範囲に亘り生じた。
第1のイオン交換後、サンプルhに、1質量%のNaNO3および99質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における24分間に亘る390℃での第2のイオン交換を行った。第2のイオン交換後、圧縮応力プロファイルは、ガラスの表面から約5μmの深さまで延在する第1の線形区分A、および約15μmの深さでの移行領域Cの上側境界から70μmの深さまで延在する第2の線形区分Bを有した。この二区分プロファイルは、図3に概略示された応力プロファイルに似ている。第2のイオン交換後のサンプルhの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、877MPaおよび70μmと決定された。部分Bの勾配は約−5MPa/μmであったのに対し、部分Aの勾配は−52MPa/μmであった。勾配Aから勾配Bまでの移行領域Cは、約8μmから約15μmの深さの範囲に亘り生じた。
サンプルlに、69質量%のNaNO3および31質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における48時間に亘る450℃での第1のイオン交換を行った。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図16は、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。第1のイオン交換後のサンプルlの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、146MPaおよび142μmと決定された。線形圧縮応力プロファイルの勾配は、−1.03MPa/μmであった。
サンプルmに、69質量%のNaNO3および31質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における65時間に亘る450℃での第1のイオン交換を行った。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図17は、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示されたものと似ている単一線形部分を有している。第1のイオン交換後のサンプルmの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、140MPaおよび153μmと決定された。線形圧縮応力プロファイルの勾配は、−0.92MPa/μmであった。
vi)厚さ0.9mm
サンプルiに、38質量%のNaNO3および62質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における約7.5時間に亘る450℃での第1のイオン交換を行った。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。
次いで、サンプルiに、2質量%のNaNO3および98質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における18分間に亘る390℃での第2のイオン交換を行った。図11は、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。第2のイオン交換後、この圧縮応力プロファイルは、図3に概略示された応力プロファイルに似ている、第1の線形部分Aおよび第2の線形部分Bを有した。第2のイオン交換後のサンプルiの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、746MPaおよび73μmと決定された。部分Aの勾配は約−52MPa/μmであったのに対し、部分Bの勾配は約−4MPa/μmであった。
vii)厚さ1.0mm
サンプルjに、37質量%のNaNO3および63質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における11時間に亘る440℃での第1のイオン交換を行った。イオン交換後、TEおよびTMモードスペクトルを測定し、それから圧縮応力プロファイルを決定した。図12aは、第1のイオン交換後の、モードスペクトルから決定されたサンプルjの圧縮応力プロファイルを示している。この圧縮応力プロファイルは、図2に示された応力プロファイルと似ている単一線形部分を有している。第1のイオン交換後のサンプルjの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、359MPaおよび82μmと決定された。線形圧縮応力プロファイルの勾配は、−5.3MPa/μmであった。
次いで、サンプルjに、1質量%のNaNO3および99質量%のKNO3を含有する溶融塩浴中における12分間に亘る390℃での第2のイオン交換を行った。図12bは、モードスペクトルから決定された圧縮応力プロファイルを示している。第2のイオン交換後、この圧縮応力プロファイルは、ガラスの表面から8μmでの移行領域Cの始まりまで延在する第1の線形区分A、および約16μmでの移行領域Cの終わりから圧縮深さDOCまで延在する第2の線形区分Bを有した。この挙動は、図3に概略示された応力プロファイルに似ている。第2のイオン交換後のサンプルjの表面での圧縮応力CSおよび圧縮深さは、それぞれ、860MPaおよび80μmと決定された。部分Bの勾配は約−5.3MPa/μmであったのに対し、部分Aの勾配は−73MPa/μmであった。勾配Aから勾配Bまでの移行領域Cは、約8μmから約16μmの深さの範囲に亘り生じた。
研磨紙上反転球(IBoS)試験
異なる4種類のガラスに、ここに記載された手順にしたがって研磨紙上反転球落下(IBoS)試験を行った。この試験は、30グリットの研磨紙および直径10mmの、4.2gのステンレス鋼球を使用して行った。
サンプルAおよびEは、先に挙げられた米国特許出願第13/305271号明細書に記載された同じ組成のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。サンプルBおよびFは、同じ組成の市販されているアルカリアルミノケイ酸塩ガラス(Asahi Glass Companyにより製造されているDragontrail(登録商標)Glass)である。サンプルBは、イオン交換されており、26.1μmの層の深さおよび795MPaの表面圧縮応力を有したのに対し、サンプルFはイオン交換されていなかった。サンプルCは、イオン交換されたソーダ石灰ガラス(SLG)である。サンプルDおよびGは、先に挙げられた米国特許出願第13/903433号明細書に記載された同じ組成のアルカリアルミノケイ酸塩ガラスである。サンプルDは、イオン交換されており、42.1μmの層の深さおよび871MPaの表面圧縮応力を有したのに対し、サンプルGはイオン交換されていなかった。
サンプル厚、層の深さ(DOL)および表面圧縮応力(CS)、並びに割れが生じた推定平均落下高さが表3に列挙されており、割れが生じた個々の高さが図18にプロットされている。
説明目的のために、典型的な実施の形態を述べてきたが、先の記載は、本開示の範囲または付随の特許請求の範囲に対する限定と考えるべきではない。したがって、本開示の範囲または付随の特許請求の範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用、および代替手段が当業者に想起されるであろう。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
ガラス物品において、該ガラス物品の表面で少なくとも約150MPaの圧縮応力CSsを有する圧縮領域を備え、
a.前記圧縮領域が、前記表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在し、圧縮応力プロファイルを有し、
b.前記圧縮領域が、前記表面から少なくとも45μmの深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aと、必要に応じて、前記表面から少なくとも約3μmの深さda’まで延在する第2の部分a’とを有する圧縮応力プロファイルを有し、ここで、−2MPa/μm≧ma≧−8MPa/μm、および−40MPa/μm≧ma’ ≧−200MPa/μmである、
ガラス物品。
実施形態2
前記深さdaが前記圧縮深さと等しく、前記第1の部分aが前記表面から該深さdaまで延在する、実施形態1に記載のガラス物品。
実施形態3
−3MPa/μm≧ma≧−6MPa/μmである、実施形態2に記載のガラス物品。
実施形態4
前記圧縮応力プロファイルが、前記表面から深さda’まで延在する前記第2の部分a’と、前記深さda’から前記深さdaまで延在する前記第1の部分aとを有する、実施形態1から3いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態5
−40MPa/μm≧ma’ ≧−120MPa/μmである、実施形態4に記載のガラス物品。
実施形態6
前記ガラス物品の厚さが約0.1mmから約1.5mmまでの範囲にある、実施形態1から5いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態7
前記ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態1から6いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態8
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLi2Oをさらに含む、実施形態7に記載のガラス物品。
実施形態9
前記表面での圧縮応力が少なくとも約300MPaである、実施形態1から8いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態10
前記ガラス物品が、少なくとも100cmの高さから、直径10mmの4.2gのステンレス鋼球を、ガラス表面上に配置された30グリットの研磨紙上に落下させる反転球落下試験を行ったときに少なくとも60%の生存率を有し、該生存率が少なくとも10個のサンプルの試験に基づくものである、実施形態1から9いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態11
前記ガラス物品が、研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する、実施形態1から10いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態12
ガラス物品であって、厚さtおよび該ガラス物品の表面で約700MPaから約1200MPaの範囲の圧縮応力CSsを有する圧縮層を有し、
a.前記圧縮層は、前記表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在しており、圧縮応力プロファイルを有し、
b.前記圧縮応力プロファイルは、
i.前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aと、
ii.深さdbから前記圧縮深さDOCまで延在し、勾配mbを有する第2の部分bと、
iii.前記深さdaから前記深さdbまで延在し、前記勾配maから前記勾配mbまで移行する勾配を有する移行領域と、
を有し、ここで、3μm≦da≦12μm、−40MPa/μm≧ma≧−200MPa/μm、および−2MPa/μm≧mb≧−8MPa/μmである、ガラス物品。
実施形態13
−40MPa/μm≧ma≧−120MPa/μmである、実施形態12に記載のガラス物品。
実施形態14
前記ガラス物品の厚さが約0.1mmから約1.5mmまでの範囲にある、実施形態12または13に記載のガラス物品。
実施形態15
前記ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態12から14いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態16
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLi2Oをさらに含む、実施形態15に記載のガラス物品。
実施形態17
前記表面での圧縮応力が少なくとも約300MPaである、実施形態12から16いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態18
前記ガラス物品が、少なくとも100cmの高さから、直径10mmの4.2gのステンレス鋼球を、ガラス表面上に配置された30グリットの研磨紙上に落下させる反転球落下試験を行ったときに少なくとも60%の生存率を有し、該生存率が少なくとも10個のサンプルの試験に基づく、実施形態12から17いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態19
前記ガラス物品が、研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する、実施形態12から18いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態20
ガラス物品であって、該ガラス物品の表面で少なくとも約150MPaの圧縮応力CSsを有する圧縮領域を有し、
a.前記圧縮領域は、前記表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在しており、圧縮応力プロファイルを有し、
b.前記圧縮応力プロファイルは、前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の線形部分aを有し、ここで、前記深さdaは前記圧縮深さと等しく、−2MPa/μm≧ma≧−8MPa/μmである、ガラス物品。
実施形態21
−3MPa/μm≧ma≧−6MPa/μmである、実施形態20に記載のガラス物品。
実施形態22
前記ガラス物品の厚さが約0.1mmから約1.5mmまでの範囲にある、実施形態20または21に記載のガラス物品。
実施形態23
前記ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態20から22いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態24
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLi2Oをさらに含む、実施形態23に記載のガラス物品。
実施形態25
前記表面での圧縮応力が少なくとも約300MPaである、実施形態20から24いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態26
前記ガラス物品が、少なくとも100cmの高さから、直径10mmの4.2gのステンレス鋼球を、ガラス表面上に配置された30グリットの研磨紙上に落下させる反転球落下試験を行ったときに少なくとも60%の生存率を有し、該生存率が少なくとも10個のサンプルの試験に基づく、実施形態20から25いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態27
前記ガラス物品が、研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する、実施形態20から26いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態28
ガラス物品であって、該ガラス物品の表面で少なくとも約130MPaの圧縮応力CSsを有する圧縮領域を有し、
a.前記圧縮領域は、前記表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在しており、圧縮応力プロファイルを有し、
b.前記圧縮応力プロファイルは、前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の線形部分aを有し、ここで、前記深さdaは前記圧縮深さと等しく、−0.7MPa/μm≧ma≧−2.0MPa/μmである、ガラス物品。
実施形態29
前記圧縮深さDOCが少なくとも約140μmである、実施形態28に記載のガラス物品。
実施形態30
前記ガラス物品の厚さtが約0.1mmから約1.5mmまでの範囲にある、実施形態28または29に記載のガラス物品。
実施形態31
前記ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態28から30いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態32
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLi2Oをさらに含む、実施形態31に記載のガラス物品。
実施形態33
前記圧縮深さが少なくとも約70μmである、実施形態28から32いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態34
前記ガラス物品が、少なくとも100cmの高さから、直径10mmの4.2gのステンレス鋼球を、ガラス表面上に配置された30グリットの研磨紙上に落下させる反転球落下試験を行ったときに少なくとも60%の生存率を有し、該生存率が少なくとも10個のサンプルの試験に基づく、実施形態28から33いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態35
前記ガラス物品が、研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する、実施形態28から34いずれか1つに記載のガラス物品。
実施形態36
厚さt、中央張力CT下にある内側領域、および圧縮応力CS下にある少なくとも1つの圧縮応力層を有する強化ガラス物品であって、前記圧縮応力層は、該ガラス物品の表面から少なくとも45μmの圧縮深さDOCまで延在し、前記内側領域に隣接しており、前記強化ガラス物品が、反転球落下試験において約100cmの高さから該ガラス物品の表面上に配置された30グリットの研磨紙上に直径10mmの、4.2gのステンレス鋼球が落とされたときに少なくとも60%の生存率を有し、該生存率が少なくとも10個のサンプルの試験に基づく、強化ガラス物品。
実施形態37
前記圧縮応力層が、前記ガラス物品の表面で約700MPaから約1200MPaの範囲の圧縮応力CSsを有し、該圧縮応力層が、
a.前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aと、
b.深さdbから前記圧縮深さDOCまで延在し、勾配mbを有する第2の部分bと、
c.前記深さdaから前記深さdbまで延在し、前記勾配maから前記勾配mbまで移行する勾配を有する移行領域と、
を含む圧縮応力プロファイルを有し、ここで、3μm≦da≦12μm、−40MPa/μm≧ma≧−200MPa/μm、および−2MPa/μm≧mb≧−8MPa/μmである、実施形態36に記載の強化ガラス物品。
実施形態38
−40MPa/μm≧ma≧−120MPa/μmである、実施形態37に記載の強化ガラス物品。
実施形態39
前記強化ガラス物品の厚さが約0.1mmから約1.5mmまでの範囲にある、実施形態36から38いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
実施形態40
前記強化ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態36から39いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
実施形態41
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLi2Oをさらに含む、実施形態40に記載の強化ガラス物品。
実施形態42
前記表面での圧縮応力が少なくとも約300MPaである、実施形態36から41いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
実施形態43
前記強化ガラス物品が、研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する、実施形態36から42いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
実施形態44
厚さt、中央張力CT下にある内側領域、および圧縮応力CS下にある少なくとも1つの圧縮応力層を有する強化ガラス物品であって、前記圧縮応力層は、該ガラス物品の表面から少なくとも45μmの圧縮深さDOCまで延在し、前記内側領域に隣接しており、研磨時リング・オン・リング試験により測定して、少なくとも10kgf(約98N)の等二軸曲げ強度を有する強化ガラス物品。
実施形態45
前記圧縮応力層が、前記ガラスの表面で約700MPaから約1200MPaの範囲の圧縮応力CSsを有し、該圧縮応力層が、
a.前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aと、
b.深さdbから前記圧縮深さDOCまで延在し、勾配mbを有する第2の部分bと、
c.前記深さdaから前記深さdbまで延在し、前記勾配maから前記勾配mbまで移行する勾配を有する移行領域と、
を含む圧縮応力プロファイルを有し、ここで、3μm≦da≦12μm、−40MPa/μm≧ma≧−200MPa/μm、および−2MPa/μm≧mb≧−8MPa/μmである、実施形態44に記載の強化ガラス物品。
実施形態46
−40MPa/μm≧ma≧−120MPa/μmである、実施形態45に記載の強化ガラス物品。
実施形態47
前記強化ガラス物品の厚さが約0.1mmから約1.5mmまでの範囲にある、実施形態44から46いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
実施形態48
前記強化ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られている、実施形態44から47いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
実施形態49
前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラスが約10モル%までのLi2Oをさらに含む、実施形態48に記載の強化ガラス物品。
実施形態50
前記表面での圧縮応力が少なくとも約300MPaである、実施形態44から47いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
実施形態51
前記強化ガラス物品が、反転球落下試験において約100cmの高さから該ガラス物品の表面上に配置された30グリットの研磨紙上に直径10mmの、4.2gのステンレス鋼球が落とされたときに少なくとも60%の生存率を有し、該生存率が少なくとも10個のサンプルの試験に基づく、実施形態44から47いずれか1つに記載の強化ガラス物品。
100 ガラス物品
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の圧縮領域
130 中央領域
200 装置
212 固体土台
214 研磨材を有するシート
215 サンプル保持器
216 空隙
218、220 ガラスサンプル
230 球
400 研磨時リング・オン・リング構成
410 ガラス試料
420 支持リング
430 荷重リング

Claims (1)

  1. ガラス物品であって、厚さtおよび該ガラス物品の表面で約700MPaから約1200MPaの範囲の圧縮応力CSsを有する圧縮層を有し、
    a.前記圧縮層は、前記表面から少なくとも約45μmの圧縮深さDOCまで延在しており、圧縮応力プロファイルを有し、
    b.前記圧縮応力プロファイルは、
    i.前記表面から深さdaまで延在し、勾配maを有する第1の部分aと、
    ii.深さdbから前記圧縮深さDOCまで延在し、勾配mbを有する第2の部分bと、
    iii.前記深さdaから前記深さdbまで延在し、前記勾配maから前記勾配mbまで移行する勾配を有する移行領域と、
    を有し、ここで、3μm≦da≦12μm、−40MPa/μm≧ma≧−200MPa/μm、および−2MPa/μm≧mb≧−8MPa/μmである、ガラス物品。
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