JP2020110130A - 植物の生長調節用組成物及び植物の生長の調節方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、植物の生長を調節することにより、植物に対して抽だい抑制作用を有しつつも、(1R,2R)−ジャスモン酸メチルに比べて葉の老化作用が小さい物質又は鱗茎肥大促進作用を有しつつも、土壌に散布することができる程度の安全性を有する物質を有効成分として含有する組成物及び該物質を使用した方法などを提供することにある。【解決手段】上記目的は、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の抽だい抑制用組成物及び植物の鱗茎肥大促進用組成物などにより解決される。【選択図】図4
Description
本発明は、植物の生長を調節するための組成物及び植物の生長を調節する方法に関する。
植物の生長の段階は、葉や茎をつくる栄養成長と花や果実をつくる生殖成長とに大別される。そこで、植物の生長を調節することにより、葉を数多く繁ることや大きな果実をつけることなどが実現できる。それとは反対に、植物の生長を調節しないことにより、意図したように植物を栽培できないという問題が生じ得る。
植物の生長に起因する問題の1つに、抽だいがある。すなわち、植物の中には、温度条件の変化、日長条件の変化、栽培期間の長期化などにより、茎頂部でそれまで葉や茎に分化していた部分が、花に分化する花芽分化が生じ、これにより茎が急速に伸長する抽だい(とうだち)が生じることが知られている。
葉菜類や根菜類に抽だいが生じると、可食部として利用する葉や根の生長が停止して取れ高が低下すること、所望の形態とは異なる形態になり外観が損なわれること、食味が落ちることなどを通じて、その商品価値が低下又は逸失する。
例えば、ダイコンは、生育初期に低温におかれると抽だいが促進される。なお、低温による抽だいの促進は春化とよばれる。低温期に種子をまく春まきダイコンの栽培では、しばしば収穫前に抽だいを起こし、品質劣化のために収穫ができない場合がある。
このように、抽だいは植物の品質低下をもたらすところ、抽だいを抑制するための試みがなされている。例えば、非特許文献1には、抽だいを抑制する物質として、(1R,2R)−ジャスモン酸メチルを用いて抽だいを抑制する方法についての記載がある。
一方、植物の中には、節間の短縮した茎に、肉厚の鱗片葉が多数重なって、球形や卵形を呈する鱗茎を有するものがある。鱗茎が市場で取引される際には、一般的には鱗茎が大きいものほど価値があるとされている。
例えば、タマネギやニンニクなどの鱗茎菜類では、鱗茎が大きいものほど、可食部が増えることから消費者に好まれる傾向にある。また、チューリップやユリなどの花卉類では、鱗茎(球根)が大きいものほど、大きな花を咲かせ得ることから、やはり消費者に好まれる傾向にある。
大きな鱗茎は市場価値が高いことから、鱗茎を肥大化させる試みがなされている。例えば、特許文献1には鱗茎の肥大化を促進する物質として、ミコナゾールを用いて鱗茎を肥大化する方法についての記載がある。
Noboru Takada et al., Tetrahedron, Volume. 69, Issue 26, 1 July 2013, pp. 5426-5430
確かに、非特許文献1に記載の(1R,2R)−ジャスモン酸メチルには、植物の抽だい抑制作用がある。しかし、本発明者らが調べたところによれば、後述する実施例に記載があるとおり、(1R,2R)−ジャスモン酸メチルは葉のクロロフィル量を低下させ、葉を枯死させるという問題がある。
また、特許文献1に記載のミコナゾールは真菌症などに対する医薬品としても用いられるものであり、生理活性が強く、植物を生育させた土壌に散布するには不適なものである。
そこで、本発明は、植物の生長を調節することにより、抽だい抑制作用を有しつつも、(1R,2R)−ジャスモン酸メチルに比べて葉の老化作用が小さい物質を有効成分として含有する組成物及び該物質を使用した方法を提供することを、発明が解決しようとする第1の課題とする。
また、本発明は、植物の生長を調節することにより、鱗茎肥大促進作用を有しつつも、土壌に散布することができる程度の安全性を有する物質を有効成分として含有する組成物及び該物質を使用した方法を提供することを、発明が解決しようとする第2の課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究開発を進め、多種多様の物質の生理活性作用について検討したところ、驚くべきことに、非特許文献1に記載の(1R,2R)−ジャスモン酸メチルの鏡像異性体である(1S,2S)−ジャスモン酸メチルは、植物の生長を調節して、抽だい抑制作用を有しつつも、(1R,2R)−ジャスモン酸メチルに比べて葉の老化作用が小さいことを見出した。
例えば、KODAらの文献(Phytochemistry, Vol. 31, No. 4, pp. 1111-1114, 1992)には(1R,2R)−ジャスモン酸メチルに対して、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルの大豆の生長阻害作用は小さいことが記載されており、少なくともジャスモン酸メチルは鏡像異性体によっては生理活性が異なるということが本願出願時の技術常識であった。そして、このような技術常識があるにもかかわらず、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルは、(1R,2R)−ジャスモン酸メチルと比べて、より大きな植物の抽だい抑制作用を有し、さらには葉の老化作用が小さいという知見は、本発明者によって初めて見出された非常に驚くべきものである。
さらに、本発明者は、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルが、植物の抽だい抑制作用を有するのみならず、植物の鱗茎肥大促進作用を有することを見出した。また、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルは、植物において生合成される(1R,2R)−ジャスモン酸メチルの鏡像異性体であり、土壌に散布することが可能である。
そして、遂に、本発明者は、本発明の課題を解決し得るものとして、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分とする組成物及び(1S,2S)−ジャスモン酸メチルを使用する方法を完成するに至った。本発明はこれらの知見や成功例を基にして完成するに至った発明である。
したがって、本発明の一態様によれば、以下[1]〜[10]の組成物及び方法が提供される。
[1](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の生長調節用組成物。
[2](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の抽だい抑制用組成物。
[3]前記植物は、根菜類又は葉菜類である、[2]に記載の組成物。
[4]前記植物は、ダイコン、ホウレンソウ、チンゲンサイ、ハクサイ、キャベツ、コマツナ、レタス及びテンサイからなる群から選ばれる植物である、[2]に記載の組成物。
[5](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の鱗茎肥大促進用組成物。
[6]前記植物は、鱗茎菜類である、[5]に記載の組成物。
[7]前記鱗茎菜類は、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ及びネギからなる群から選ばれる鱗茎菜類である、[6]に記載の組成物。
[8](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の抽だいの抑制方法。
[9](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の鱗茎の肥大促進方法。
[10]前記植物は、幼植物体である、[8]又は[9]に記載の方法。
[1](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の生長調節用組成物。
[2](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の抽だい抑制用組成物。
[3]前記植物は、根菜類又は葉菜類である、[2]に記載の組成物。
[4]前記植物は、ダイコン、ホウレンソウ、チンゲンサイ、ハクサイ、キャベツ、コマツナ、レタス及びテンサイからなる群から選ばれる植物である、[2]に記載の組成物。
[5](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の鱗茎肥大促進用組成物。
[6]前記植物は、鱗茎菜類である、[5]に記載の組成物。
[7]前記鱗茎菜類は、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ及びネギからなる群から選ばれる鱗茎菜類である、[6]に記載の組成物。
[8](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の抽だいの抑制方法。
[9](1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の鱗茎の肥大促進方法。
[10]前記植物は、幼植物体である、[8]又は[9]に記載の方法。
本発明の一態様の組成物及び方法によれば、植物の生長を調節することにより、根菜類や葉菜類などの植物の抽だいを抑制すること及び鱗茎菜類などの植物の鱗茎を肥大化することができる。
したがって、本発明の一態様の組成物及び方法によれば、例えば、野菜類について、収穫時期の調節、収量の向上、商品価値の維持又は改善などが実現できる。また、本発明の一態様の組成物及び方法によれば、複雑かつ大掛かりな装置や作業を要することなく、簡便かつ経済的な植物の栽培が可能である。さらに、本発明の一態様の組成物及び方法で用いる有効成分は、植物によって生合成される物質の鏡像異性体であることから、本発明の一態様の組成物及び方法によれば、人体や環境に対して安全性を高くして植物を栽培することが可能である。
以下、本発明の一態様である組成物及び方法の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている憶測や推論は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような憶測や推論のみによって拘泥されるものではない。
「組成物」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の物質が組み合わさってなる物であり、具体的には、有効成分と別の物質とが組み合わさってなるもの、有効成分の2種以上が組み合わさってなるものなどが挙げられ、より具体的には、有効成分の1種以上と固形成分又は溶媒成分の1種以上とが組み合わさってなる固形組成物及び液性組成物などが挙げられる。
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、組成物の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100%を超えることはない。
数値範囲の「〜」は、本明細書において、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%〜100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
「植物の生長調節作用」は、植物の栄養器官の生長促進、植物の葉の緑色の維持、植物の収量向上及び植物の生育に要する期間の短縮の少なくとも1種の効果を導く作用を意味する。「植物の生長調節作用」の主だった作用は、植物の栄養成長の維持作用及び/又は植物の生殖成長の抑制作用であると想定される。本発明では、「植物の生長調節作用」を通じて、植物の抽だい抑制や鱗茎の肥大化を達成し得る。ただし、「植物の抽だい抑制作用」及び「鱗茎肥大促進作用」が「植物の生長調節作用」とは異なる作用機序に依拠して達成される可能性は否定されるものではない。
「植物の抽だい抑制作用」は、植物に抽だい(とうだち)が起きることを抑制する作用を意味する。「抑制」には、抑制、阻害及び遅延を包含する。また、植物の抽だいは、通常知られているとおりの意味のものであり、一般的には、栄養成長時に節間が詰まった状態で葉の展開を続ける短い茎において、生殖成長へ移行することに伴い、茎頂部で花に分化する花芽分化が生じて急速に伸長することをいう。したがって、「植物の抽だい抑制作用」には、植物の抽だいを抑制することを通じて、生殖成長の抑制、花芽分化の抑制、茎の節間の伸長の抑制及び栄養成長の維持といった作用を包含し得る。
「鱗茎肥大促進作用」は、鱗茎の直径を増大するように働く作用を意味する。鱗茎の直径が大きくなるメカニズムは、鱗片葉の数が多くなること、鱗片葉の大きさや肉厚が大きくなることなどのいずれであってもよい。鱗茎の肥大化は、栄養成長によってもたらされるものであることから、「鱗茎肥大促進作用」には、生殖成長の抑制及び栄養成長の維持といった作用を包含し得る。
[本発明の一態様の組成物の概要]
本発明の一態様の組成物は、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として少なくとも含有する。本発明の一態様の組成物は、用途別に、第1態様の組成物として植物の抽だい抑制用組成物と、第2態様の組成物として植物の鱗茎肥大促進用組成物とに大別される。
本発明の一態様の組成物は、(1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として少なくとも含有する。本発明の一態様の組成物は、用途別に、第1態様の組成物として植物の抽だい抑制用組成物と、第2態様の組成物として植物の鱗茎肥大促進用組成物とに大別される。
本明細書では、本発明の第1態様の組成物及び本発明の第2態様の組成物を総称して「本発明の一態様の組成物」とよぶ場合がある。また、本発明の第1態様の組成物が含有する有効成分及び本発明の第2態様の組成物が含有する有効成分を総じて「有効成分」とよぶ場合があり、本発明の第1態様の組成物が有し得る作用及び本発明の第2態様の組成物が有し得る作用を総じて「有効作用」とよぶ場合がある。
(1S,2S)−ジャスモン酸メチルは、その入手方法について特に限定されず、市販されているものであっても、非特許文献1やKitahara,T.らの文献(Kitahara, T. et al., (1991) Tetrahedron 47, pp.6999-7006)などに記載の方法などの任意の方法で製造したものであっても良い。
本発明の一態様の組成物は、本発明の課題解決を妨げない限り、(1S,2S)−ジャスモン酸メチル以外にその他の成分を含有し得る。その他の成分は、植物用栄養剤や農薬などに含まれる成分などの植物に適用可能な成分であれば特に限定されないが、例えば、クレー、タルク、ベントナイト、カオリン、珪藻土、シリカなどの固体担体;水、ジメチルスルホキシドなどの(1S,2S)−ジャスモン酸メチル可溶性の有機溶媒、ベンゼン、キシレン、トルエン、ケロシン、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒、水及び有機溶媒の混合溶媒などの液体担体;増量剤;糖類;含窒素化合物;酸類;ビタミン類;微量要素;金属塩;キレート剤;防腐剤;防黴剤;界面活性剤;安定化剤;展着剤;湿展剤;分散剤;固着剤;崩壊剤などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
本発明の一態様の組成物は、それ自体単独で使用してもよく、その他の活性成分を含有する組成物、例えば、植物生長調節剤、殺虫剤、殺菌剤などと混和するなどして併用してもよい。
本発明の一態様の組成物は、本発明の課題解決を達成し得る限り、その使用態様(剤形)については特に限定されないが、例えば、水和剤、粒剤、粉剤などの固形製剤及び乳剤、液剤、懸濁剤などの液状製剤などが挙げられる。本発明の一態様の組成物は、有効成分が植物に接触することにより有効作用を生じ得ることから、植物の葉面に散布するのに適した製剤や土壌中での易崩壊性を有する製剤であることが好ましく、液状製剤であることがより好ましい。
本発明の一態様の組成物は、その製造方法について特に限定されず、例えば、採用する使用態様に応じて、当業者に知られる一般的な植物用栄養剤や農薬の製造方法などに準じて、有効成分と任意にその他の成分とを混合することなどにより、製造することができる。
本発明の一態様の組成物は、容器に詰めて密封した容器詰組成物とすることができる。容器は特に限定されないが、例えば、アルミなどの金属、紙、PETやPTPなどのプラスチック、一層又は積層(ラミネート)のフィルム袋、レトルトパウチ、真空パック、アルミ容器、プラスチック容器、ガラス容器、瓶、缶などの包装容器が挙げられる。本発明の一態様の組成物は、経時的な変質を避けるために、容器に詰めて密封した後に、加圧及び/又は加熱などにより殺菌処理したものであることが好ましい。容器詰組成物は、製造して得られた組成物を、分注、充填及び/又は個装して、それ自体で独立して、流通におかれて市販され得るものであることが好ましい。
[第1態様の組成物]
本発明の第1態様の組成物は、有効成分を含有することにより、植物の抽だい抑制作用を示す。
本発明の第1態様の組成物は、有効成分を含有することにより、植物の抽だい抑制作用を示す。
本発明の第1態様の組成物が有する有効作用は、後述の実施例に記載されるような、殺菌した植物の種子を播種培地上にて春化処理条件及び長日条件で順次培養して得た胚軸について、長日条件で2週間培養した後の子葉から頂芽の節間までの長さを測定することによって確認することができる。この際、本発明の第1態様の組成物を加えない系をコントロールとして、本発明の第1態様の組成物を加えた系がコントロールよりも該長さが小さければ、本発明の第1態様の組成物は有効作用を有すると評価できる。
本発明の第1態様の組成物の適用対象となる植物は、低温などの環境ストレスにより抽だいを生じ得る植物であれば特に限定されないが、例えば、葉菜類や根菜類などの野菜類;ユリ、フリージア、アイリスなどの花卉類;コムギ、オオムギ、ライムギなどのムギ類;エンドウなどの豆類などが挙げられるが、抽だいを抑えることにより生殖生長を抑制して、栄養器官かつ可食部である葉や根の品質の維持及び改善、収量の増大などが見込めることから、野菜類であることが好ましく、葉菜類及び根菜類であることがより好ましい。
葉菜類及び根菜類の具体例としては、アカザ科としてはホウレンソウ、テンサイ;アブラナ科としてはアブラナ、コマツナ、ハクサイ、キャベツ、チンゲンサイ、ダイコン、ハツカダイコン、カブ、カブラ、ノザワナ、ミズナ、タカナ、ワサビナ、カラシナ;オモダカ科としてはクワイ;キク科としてはレタス、シュンギク、ゴボウ、ヤーコン、フキ;ヒユ科としてはホウレンソウ;ユリ科としてはタマネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、ネギ、ラッキョウ、アサツキ、ワケギ;ナス科としてはジャガイモ;セリ科としてはニンジン、セルリー、パースニップ、セロリアック;ショウガ科としてはショウガ、ミョウガ;ヤマノイモ科としてはヤマノイモ;サトイモ科としてはサトイモ;スイレン科としてはレンコン;ヒルガオ科としてはサツマイモ;シソ科としてはシソ、チョロギ;イネ科としてはタケノコなどを挙げることができるがこれらに限定されない。これらのうち、抽だいにより収量、風味、栄養素といった品質が著しく劣化し得るものであることから、ダイコン、ホウレンソウ、チンゲンサイ、ハクサイ、キャベツ、コマツナ、レタス及びテンサイであることが好ましい。
本発明の第1態様の組成物を適用する植物は、抽だいが誘導される条件におかれた植物であってもよいが、該条件におかれていない植物であってもよい。抽だいが誘導される条件とは、例えば、植物の生長にとって適した栽培条件とは異なる条件などが挙げられ、具体的には低温、高温、長日、短日、低照度、長期栽培、肥料不足などの条件をいうが、これらに限定されない。
本発明の第1態様の組成物を適用する時期は、適用する植物に対して、植物の抽だい抑制作用が発揮し得る時期であれば特に限定されないが、例えば、植物の抽だいが生じる前又は最中であり、好ましくは植物の抽だいが生じる前である。したがって、本発明の第1態様の組成物は、植物の抽だいが誘導される前の期間、具体的には発芽から栄養成長にある期間又は花芽分化といった生殖成長の段階に移行する前の期間であることが好ましい。
発芽前であっても、植物の種子や球根などに本発明の第1態様の組成物を適用することにより、冬期間中の低温による自然な不可避的な春化処理の影響を回避又は緩和して、発芽後であっても抽だいが抑制され栄養成長を続ける可能性がある。
本発明の第1態様の組成物を適用する方法は、本発明の第1態様の組成物と植物の葉及び/又は根とが接触する方法であれば特に限定されないが、例えば、経根吸収処理、茎葉散布処理、土壌潅注処理、水耕潅注処理などが挙げられるが、これらに限定されない。処理の回数は特に限定されず、1回又は複数回の処理であり得るが、植物の栄養成長に合わせて複数回で処理することにより効果を高めることが期待できる。
本発明の第1態様の組成物の適用量は、適用対象となる植物の種類及び数、剤型、適用の時期及び期間、気象条件、適用方法などに応じて適宜に設定し得るものであり、特に限定されない。例えば、有効成分の濃度として0.0001mM〜10mM、好ましくは0.001mM〜1mMになるように調製した本発明の第1態様の組成物を、圃場栽培においては10アールあたり10L〜1,000L、好ましくは50L〜300Lの量で、又は鉢植え栽培においてはこれを1株あたり1ml〜10L、好ましくは10ml〜1Lの量で、定期的に、好ましくは週に1回〜複数回散布することなどが挙げられるが、これに限定されない。
本発明の第1態様の組成物を用いて、経根吸収処理などの植物を浸漬処理に供する場合の浸漬時間は特に限定されないが、例えば、数秒〜数日間、好ましくは数分〜数時間である。
[第2態様の組成物]
本発明の第2態様の組成物は、有効成分を含有することにより、植物の鱗茎肥大促進作用を示す。
本発明の第2態様の組成物は、有効成分を含有することにより、植物の鱗茎肥大促進作用を示す。
本発明の第2態様の組成物が有する有効作用は、後述の実施例に記載されるような、植物の幼植物体を長日条件で4週間培養した後の葉鞘基部の直径を測定することによって確認することができる。この際、本発明の第2態様の組成物を加えない系をコントロールとして、本発明の第2態様の組成物を加えた系がコントロールよりも該直径が大きければ、本発明の第2態様の組成物は有効作用を有すると評価できる。
本発明の第2態様の組成物の適用対象となる植物は、鱗茎を有する植物であれば特に限定されないが、例えば、鱗茎菜類などの野菜類;ユリ、チューリップ、マイヅルソウ、イヌサフラン、ヒヤシンス、スズラン、フリージア、アイリスなどの花卉類などが挙げられるが、鱗茎を肥大化することにより可食部が増えることから、野菜類であることが好ましく、鱗茎菜類であることがより好ましく、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ及びネギがさらに好ましい。
本発明の第2態様の組成物を適用する時期は、適用する植物に対して、植物の鱗茎肥大促進作用が発揮し得る時期であれば特に限定されないが、例えば、発芽から栄養成長にある期間などが挙げられる。ただし、発芽前であっても、植物の種子や球根などに本発明の第2態様の組成物を適用することにより、発芽後に栄養成長を続け、鱗茎の肥大化が生じる可能性がある。
本発明の第2態様の組成物を適用する方法は、本発明の第2態様の組成物と植物の葉及び/又は根とが接触する方法であれば特に限定されないが、例えば、経根吸収処理、茎葉散布処理、土壌潅注処理、水耕潅注処理などが挙げられるが、これらに限定されない。処理の回数は特に限定されず、1回又は複数回の処理であり得るが、植物の栄養成長に合わせて複数回で処理することにより効果を高めることが期待できる。
本発明の第2態様の組成物の適用量は、適用対象となる植物の種類及び数、剤型、適用の時期及び期間、気象条件、適用方法などに応じて適宜に設定し得るものであり、特に限定されない。例えば、有効成分の濃度として0.0001mM〜10mM、好ましくは0.001mM〜1mMになるように調製した本発明の第2態様の組成物を、圃場栽培においては10アールあたり10L〜1,000L、好ましくは50L〜300Lの量で、又は鉢植え栽培においてはこれを1株あたり1ml〜10L、好ましくは10ml〜1Lの量で、定期的に、好ましくは週に1回〜複数回散布することなどが挙げられるが、これに限定されない。
本発明の第2態様の組成物を用いて、経根吸収処理などの植物を浸漬処理に供する場合の浸漬時間は特に限定されないが、例えば、数秒〜数日間、好ましくは数分〜数時間である。
本発明の第2態様の組成物は、パクロブトラゾールなどのジベレリン生合成阻害剤を含有することにより、又はジベレリン生合成阻害剤と併用することにより、相乗的な鱗茎肥大促進作用を発揮することが期待できる。
[本発明の一態様の方法]
本発明の一態様の組成物の使用方法は、別の一態様として本発明に包含される。
本発明の一態様の組成物の使用方法は、別の一態様として本発明に包含される。
本発明の一態様の方法は、有効成分である(1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の抽だいの抑制方法である。本発明の別の一態様の方法は、有効成分である(1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の鱗茎の肥大促進方法である。
本発明の一態様の方法において、各作用を効果的に発揮させるために、適用する植物は、栄養成長の段階にある幼植物体であることが好ましい。
本発明の一態様の方法は、本発明の課題を解決し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
1.一般操作
(1−1)育成条件
長日条件は、光源として蛍光灯を用いた。照度は1,500lxとし、光合成有効光量子束密度は10μmol/(m2・sec)とした。25℃明所にて16時間日長として植物体を育成した。
(1−1)育成条件
長日条件は、光源として蛍光灯を用いた。照度は1,500lxとし、光合成有効光量子束密度は10μmol/(m2・sec)とした。25℃明所にて16時間日長として植物体を育成した。
春化処理条件は、4℃暗所にて植物体を育成した。
暗室処理条件は、25℃暗所にて植物体を育成した。
(1−2)培地の作製
以下の手順に従って、表1に示す処方のStock A溶液、Stock B溶液及びStock C溶液を用いて、Murasige−Skoog培地のStock A濃度を1/2にした1/2MS培地を基本培地として調製した。
以下の手順に従って、表1に示す処方のStock A溶液、Stock B溶液及びStock C溶液を用いて、Murasige−Skoog培地のStock A濃度を1/2にした1/2MS培地を基本培地として調製した。
イオン交換水にStock A 5vol%(最終濃度)、Stock B 0.5vol%(最終濃度)及びStock C 0.5vol%(最終濃度)、並びにショ糖(通常は3wt%(最終濃度)、異なる場合は追記)を加えて、混合溶液を得た。
得られた混合溶液を、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを5.8に調整した。pH調整した混合溶液に、寒天 0.6wt%を加えて、121℃で20分間オートクレーブ滅菌することにより、1/2MS培地を調製した。
(1−3)試験溶液の調製
被験物質として、ジャスモン酸メチルの鏡像異性体である(1S,2S)−ジャスモン酸メチル(ent−JMe)を用いた。ent−JMeをジメチルスルホキシドに溶解して、0.01M ent−JMeである被験溶液を調製した。また、比較物質として、(1R,2R)−ジャスモン酸メチル(JMe)を用いた。また、同様にして、JMeをジメチルスルホキシドに溶解して、0.01M JMeである比較溶液を調製した。
被験物質として、ジャスモン酸メチルの鏡像異性体である(1S,2S)−ジャスモン酸メチル(ent−JMe)を用いた。ent−JMeをジメチルスルホキシドに溶解して、0.01M ent−JMeである被験溶液を調製した。また、比較物質として、(1R,2R)−ジャスモン酸メチル(JMe)を用いた。また、同様にして、JMeをジメチルスルホキシドに溶解して、0.01M JMeである比較溶液を調製した。
ジベレリン生合成阻害剤として、パクロブトラゾールを用いた。パクロブトラゾールをジメチルスルホキシドに溶解して、0.03M パクロブトラゾールであるジベレリン生合成阻害溶液を調製した。
2.ダイコン抽だい阻害活性試験法
試験法の概要を図1に示す。
試験法の概要を図1に示す。
(2−1)播種培地
1/2MS培地を300mL容カルチャーボトルに30mLずつ分注した。
1/2MS培地を300mL容カルチャーボトルに30mLずつ分注した。
(2−2)検定培地
100mL容コニカルビーカーに、被験溶液 20μL(ent−JMe処理区)又は比較溶液 20μL(JMe処理区)を添加した後、1/2MS培地をコニカルビーカーに20mLずつ分注した(ent−JMe及びJMeの最終濃度 10−5M)。なお、被験溶液等を添加していない検定培地を無処理区とした。
100mL容コニカルビーカーに、被験溶液 20μL(ent−JMe処理区)又は比較溶液 20μL(JMe処理区)を添加した後、1/2MS培地をコニカルビーカーに20mLずつ分注した(ent−JMe及びJMeの最終濃度 10−5M)。なお、被験溶液等を添加していない検定培地を無処理区とした。
(2−3)生物検定に用いるダイコン幼植物体の無菌培養法
ダイコンの種子(耐病総太り) 約100粒を不織布で作製した袋に密閉し、80vol%エタノール(1秒間)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度 0.5%、0.1vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、40分間)に順次浸漬して表面殺菌した。
ダイコンの種子(耐病総太り) 約100粒を不織布で作製した袋に密閉し、80vol%エタノール(1秒間)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度 0.5%、0.1vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、40分間)に順次浸漬して表面殺菌した。
殺菌した種子を滅菌蒸留水で十分洗浄した後、播種培地に約10粒ずつ播種し、春化処理条件にて4週間、次いで長日条件にて1週間無菌培養した。培養して得られた子葉から約1cmの長さで胚軸を切断して得た。
(2−4)生物検定法
得られた胚軸を検定培地へ3本ずつ移植し、長日条件で2週間無菌培養した。培養終了後、子葉から頂芽までの節間の長さを測定した。
得られた胚軸を検定培地へ3本ずつ移植し、長日条件で2週間無菌培養した。培養終了後、子葉から頂芽までの節間の長さを測定した。
3.コムギ老化促進活性試験法
試験法の概要を図2に示す。
試験法の概要を図2に示す。
(3−1)生物検定に用いるコムギ第一葉の育成法
コムギ(ハルユタカ)種子 20gを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度 0.5%、0.1vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、40分間)に浸漬して表面殺菌した後、流水で20分間洗浄し、2時間吸水させた。このように処理した種子を、水道水で湿らせたバーミキュライトを敷いた腰高シャーレに、胚を上にして播種し、長日条件で7日間育成した。育成して得られた第一葉の先端から3cmの葉片を切断して得た。
コムギ(ハルユタカ)種子 20gを、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度 0.5%、0.1vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、40分間)に浸漬して表面殺菌した後、流水で20分間洗浄し、2時間吸水させた。このように処理した種子を、水道水で湿らせたバーミキュライトを敷いた腰高シャーレに、胚を上にして播種し、長日条件で7日間育成した。育成して得られた第一葉の先端から3cmの葉片を切断して得た。
(3−2)生物検定法
9cm径シャーレにろ紙を敷き、被験溶液 5μL(ent−JMe処理区)又は比較溶液 5μL(JMe処理区)をろ紙に塗布した。シャーレへ、コムギの葉片の切断による老化を防止するためにサイトカイニンとしてベンジルアデニンを2×10−6Mになるように添加したMcllvainのリン酸・クエン酸緩衝液(5×10−3Mクエン酸、10−2Mリン酸水素ナトリウム、0.2vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、pH 4.8) 5mLを加えた。シャーレ中のろ紙の上に、得られた葉片を葉の裏面を下にして並べ、暗室処理条件にて4日間静置した。
9cm径シャーレにろ紙を敷き、被験溶液 5μL(ent−JMe処理区)又は比較溶液 5μL(JMe処理区)をろ紙に塗布した。シャーレへ、コムギの葉片の切断による老化を防止するためにサイトカイニンとしてベンジルアデニンを2×10−6Mになるように添加したMcllvainのリン酸・クエン酸緩衝液(5×10−3Mクエン酸、10−2Mリン酸水素ナトリウム、0.2vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、pH 4.8) 5mLを加えた。シャーレ中のろ紙の上に、得られた葉片を葉の裏面を下にして並べ、暗室処理条件にて4日間静置した。
静置した葉片を試験管に移した後、5mLの80vol%エタノールを加えて80℃で5分間加熱し、クロロフィルを抽出した。抽出後直ちに冷却し、次いで80vol%エタノールで20倍に希釈して、クロロフィル量として665nmの吸光度を測定した。
4.タマネギ鱗茎肥大促進活性試験法
試験法の概要を図3に示す。
試験法の概要を図3に示す。
(4−1)播種培地
水道水でバーミキュライトを湿らせ、これをカルチャーボトルに詰めた。
水道水でバーミキュライトを湿らせ、これをカルチャーボトルに詰めた。
(4−2)育成培地
1/2MS培地をカルチャーボトルに30mLずつ分注した。
1/2MS培地をカルチャーボトルに30mLずつ分注した。
(4−3)検定培地
100mL容コニカルビーカーに、ジベレリン生合成阻害溶液 20μL及び被験溶液 20μL(ent−JMe処理区)若しくは比較溶液 20μL(JMe処理区)を添加した後、1/2MS培地(ショ糖濃度:9wt%)をコニカルビーカーに20mLずつ分注した(ent−JMe及びJMeの最終濃度 10−5M)。なお、被験溶液等を添加していない検定培地を無処理区とした。
100mL容コニカルビーカーに、ジベレリン生合成阻害溶液 20μL及び被験溶液 20μL(ent−JMe処理区)若しくは比較溶液 20μL(JMe処理区)を添加した後、1/2MS培地(ショ糖濃度:9wt%)をコニカルビーカーに20mLずつ分注した(ent−JMe及びJMeの最終濃度 10−5M)。なお、被験溶液等を添加していない検定培地を無処理区とした。
(4−4)生物検定に用いるタマネギ幼植物体の無菌培養法
タマネギの種子(ラッキー) 約400粒を不織布で作製した袋に密閉し、該袋を80vol%エタノール(1秒間)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度0.5%、0.1vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、4時間)に順次浸漬して表面殺菌した。殺菌した種子を滅菌蒸留水で十分洗浄した後、播種培地上に約40粒ずつ播種した。
タマネギの種子(ラッキー) 約400粒を不織布で作製した袋に密閉し、該袋を80vol%エタノール(1秒間)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度0.5%、0.1vol%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、4時間)に順次浸漬して表面殺菌した。殺菌した種子を滅菌蒸留水で十分洗浄した後、播種培地上に約40粒ずつ播種した。
次いで長日条件で7日間発芽させた後、発芽体を育成培地に移植し、長日条件でさらに2週間育成させた。得られたタマネギ幼植物体について、根は基部を残して切除し、葉はその先端を切除して該幼植物体の長さを約3cmに調整して得た。
(4−5)生物検定法
得られた幼植物体を、検定培地へ5本ずつ移植し、長日条件で4週間無菌培養した。培養終了後、葉鞘基部の直径を測定した。
得られた幼植物体を、検定培地へ5本ずつ移植し、長日条件で4週間無菌培養した。培養終了後、葉鞘基部の直径を測定した。
5.試験結果及び評価
(5−1)ダイコン抽だい阻害活性試験結果
ダイコン抽だい阻害活性試験の結果を図4に示す。図4に示すとおり、JMe及びent−JMeは抽だい阻害作用を有することがわかった。しかし、ent−JMeが有する抽だい阻害作用は、JMeが有する作用と比べて大きいことがわかった。
(5−1)ダイコン抽だい阻害活性試験結果
ダイコン抽だい阻害活性試験の結果を図4に示す。図4に示すとおり、JMe及びent−JMeは抽だい阻害作用を有することがわかった。しかし、ent−JMeが有する抽だい阻害作用は、JMeが有する作用と比べて大きいことがわかった。
(5−2)コムギ老化促進活性試験結果
コムギ老化促進活性試験の結果を図5に示す。図5に示すとおり、JMe試験区は葉が枯死しており、JMeはクロロフィル量を減じ、葉の老化を促進することがわかった。一方、ent−JMeはコムギの老化を促進させなかった。
コムギ老化促進活性試験の結果を図5に示す。図5に示すとおり、JMe試験区は葉が枯死しており、JMeはクロロフィル量を減じ、葉の老化を促進することがわかった。一方、ent−JMeはコムギの老化を促進させなかった。
ダイコン抽だい阻害活性試験の結果と合わせると、JMeは抽だい阻害作用を有するものの、葉の老化促進作用(黄化作用)を有することから、抽だい阻害剤として利用できないことがわかった。一方、ent−JMeは抽だい阻害作用を有し、さらに葉への老化促進作用がほとんどみられないことから、抽だい阻害剤の有効成分として有用であることがわかった。
(5−3)タマネギ鱗茎肥大促進活性試験結果
タマネギ鱗茎肥大促進活性試験の結果を図6に示す。図6に示すとおり、ent−JMeには鱗茎肥大促進作用を有することがわかった。それに対して、JMeはむしろ鱗茎の肥大を阻害する活性があることがわかった。したがって、ent−JMeをタマネギ鱗茎肥大促進剤の有効成分として用いることにより、タマネギの生産性を高めることや育成期間を短くすることなどが期待できる。
タマネギ鱗茎肥大促進活性試験の結果を図6に示す。図6に示すとおり、ent−JMeには鱗茎肥大促進作用を有することがわかった。それに対して、JMeはむしろ鱗茎の肥大を阻害する活性があることがわかった。したがって、ent−JMeをタマネギ鱗茎肥大促進剤の有効成分として用いることにより、タマネギの生産性を高めることや育成期間を短くすることなどが期待できる。
本発明の一態様の組成物及び方法によれば、経済性を高くして、さらに環境に配慮して、野菜類や花卉類などの植物を効率良く栽培することが可能である。
Claims (10)
- (1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の生長調節用組成物。
- (1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の抽だい抑制用組成物。
- 前記植物は、根菜類又は葉菜類である、請求項2に記載の組成物。
- 前記植物は、ダイコン、ホウレンソウ、チンゲンサイ、ハクサイ、キャベツ、コマツナ、レタス及びテンサイからなる群から選ばれる植物である、請求項2に記載の組成物。
- (1S,2S)−ジャスモン酸メチルを有効成分として含有する、植物の鱗茎肥大促進用組成物。
- 前記植物は、鱗茎菜類である、請求項5に記載の組成物。
- 前記鱗茎菜類は、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ及びネギからなる群から選ばれる鱗茎菜類である、請求項6に記載の組成物。
- (1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の抽だいの抑制方法。
- (1S,2S)−ジャスモン酸メチルを植物に適用することを含む、植物の鱗茎の肥大促進方法。
- 前記植物は、幼植物体である、請求項8又は9に記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019005418A JP2020110130A (ja) | 2019-01-16 | 2019-01-16 | 植物の生長調節用組成物及び植物の生長の調節方法 |
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JP2019005418A JP2020110130A (ja) | 2019-01-16 | 2019-01-16 | 植物の生長調節用組成物及び植物の生長の調節方法 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113647554A (zh) * | 2021-08-20 | 2021-11-16 | 武汉轻工大学 | 一种黄化抑制剂及其应用于鲜切荸荠的冷藏方法 |
CN114532337A (zh) * | 2022-03-23 | 2022-05-27 | 华中农业大学 | 一种促进杂交稻父母本颖花开放的复配剂 |
-
2019
- 2019-01-16 JP JP2019005418A patent/JP2020110130A/ja active Pending
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